(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186390
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】インキ供給装置および方法並びに印刷機
(51)【国際特許分類】
B41F 31/08 20060101AFI20221208BHJP
B41F 7/02 20060101ALI20221208BHJP
B41F 13/60 20060101ALI20221208BHJP
B41F 33/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B41F31/08
B41F7/02 414
B41F13/60 466
B41F33/00 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094577
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】年藤 孝英
(72)【発明者】
【氏名】西山 浩司
(72)【発明者】
【氏名】中原 大
【テーマコード(参考)】
2C034
2C250
【Fターム(参考)】
2C034AA16
2C034AA44
2C250DB14
2C250DB19
(57)【要約】
【課題】インキ供給装置および方法並びに印刷機において、印刷中におけるプランジャの動作不良を早期に解消して不良紙の低減を図る。
【解決手段】インキを吐出可能なデジタルインキポンプと、デジタルインキポンプの動作不良を検出する動作不良検出部と、印刷機が起動した後の印刷中にデジタルインキポンプの動作不良が検出されるとデジタルインキポンプの動作不良を解消する復帰動作を行う復帰動作制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキを吐出可能なデジタルインキポンプと、
前記デジタルインキポンプの動作不良を検出する動作不良検出部と、
印刷機が起動した後の印刷中に前記デジタルインキポンプの動作不良が検出されると前記デジタルインキポンプの動作不良を解消する復帰動作を行う復帰動作制御部と、
を備えるインキ供給装置。
【請求項2】
前記復帰動作制御部は、予め設定された所定の第1時間だけ前記復帰動作を行う第1復帰動作制御部と、前記第1時間だけ前記復帰動作を行っても動作不良が解消されないときに前記第1時間より長い第2時間だけ前記復帰動作を行う第2復帰動作制御部とを有する、
請求項1に記載のインキ供給装置。
【請求項3】
前記デジタルインキポンプは、円筒形状をなして周方向に間隔を空けてインキ吸入口とインキ吐出口が設けられるバレルと、インキ貯留部を有して前記バレルの内部で前記バレルの周方向に沿って回転自在に支持されると共に前記バレルの軸方向に移動自在に支持されるプランジャとを有し、
前記プランジャは、所定角度回転したとき、前記インキ吸入口と前記インキ吐出口が前記インキ貯留部に交互に連通させるものであり、
前記第1復帰動作制御部は、印刷品質に影響を与えない範囲の時間で前記インキ貯留部が前記インキ吸入口と前記インキ吐出口を連通しない回転範囲で前記プランジャの周方向往復回動動作を行う、
請求項2に記載のインキ供給装置。
【請求項4】
前記デジタルインキポンプの動作不良が検出されると、検紙用の印刷物を排紙するための検紙用排紙開始信号を出力し、
前記第1復帰動作制御部が前記復帰動作を行うことで動作不良が解消されたときに検紙用の印刷物の排紙を終了するための検紙用排紙終了信号を出力する、
請求項3に記載のインキ供給装置。
【請求項5】
前記復帰動作制御部の制御内容を表示する表示装置を有し、前記表示装置は、前記検紙用排紙開始信号または前記検紙用排紙終了信号が入力されると、印刷物を排紙することを表示する、
請求項4に記載のインキ供給装置。
【請求項6】
前記第2復帰動作制御部は、印刷品質に影響を与えない範囲の時間を超えて前部プランジャの周方向往復動作を行う、
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のインキ供給装置。
【請求項7】
前記第2復帰動作制御部が前記復帰動作を行うと、不良紙として印刷物の排紙を開始するための不良紙排紙開始信号を出力し、
前記第2復帰動作制御部が前記復帰動作を行うことで動作不良が解消されたときに不良紙としての印刷物の排紙を終了するための不良紙排紙終了信号を出力する、
請求項6に記載のインキ供給装置。
【請求項8】
前記第2復帰動作制御部が前記復帰動作を行うと、印刷媒体の印刷品質を判定する判定値を低下させるための判定値低下信号を出力し、
前記第2復帰動作制御部が前記復帰動作を行うことで動作不良が解消されたときに印刷媒体の印刷品質を判定する判定値を前記復帰動作の前の値に戻すための判定値復帰信号を出力する、
請求項6または請求項7に記載のインキ供給装置。
【請求項9】
前記第2復帰動作制御部が前記復帰動作を行うと、印刷濃度の制御量を抑制させるための印刷濃度調整量低下信号を出力し、
印刷濃度を調整する印刷濃度調整装置を有し、前記印刷濃度調整装置は、印刷濃度調整量低下信号が入力されると、印刷濃度の制御量を抑制し、前記第2復帰動作制御部が前記復帰動作を行うことで動作不良が解消されると、印刷濃度の制御量を復帰させるための印刷濃度調整量復帰信号を出力し、印刷濃度の制御量を復帰する、
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のインキ供給装置。
【請求項10】
デジタルインキポンプによりインキを吐出するステップと、
前記デジタルインキポンプの動作不良を検出するステップと、
印刷機が起動した後の印刷中に前記デジタルインキポンプの動作不良を検出すると前記デジタルインキポンプの動作不良を解消する復帰動作を行うステップと、
を有するインキ供給方法。
【請求項11】
印刷媒体を供給する給紙装置と、
前記印刷媒体に印刷を行う印刷装置と、
印刷済の前記印刷媒体を縦裁断して重ねると共に搬送経路および経路長を変更するウェブパス装置と、
縦裁断して重ねられた前記印刷媒体を縦折りした後に横断裁して折帖を形成する折機と、
を備え、
前記印刷装置は、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のインキ供給装置を有する、
印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のローラを用いてインキを版胴に供給するインキ供給装置および方法、インキ供給装置を備える印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、新聞用オフセット輪転印刷機は、給紙装置と、インフィード装置と、印刷装置と、ウェブパス装置と、折機と、排紙装置とを備える。印刷装置は、複数の印刷ユニットを有する。印刷ユニットは、インキ供給部と、複数のローラと、版胴と、ブランケット胴を有する。そして、インキ供給部は、デンタルインキポンプにより構成されるものがある。デンタルインキポンプは、モータと、クランクレバーと、プランジャと、吸入口および吐出口が設けられるバレルとを有する。モータによりクランクレバーが回転すると、バレルの内部でプランジャが回転すると共に軸方向に移動し、吸入口からインキを吸入し、所定のタイミングで吐出口からインキを吐出する。吐出されたインキは、配管を通してインキレールに供給され、インキレールに設けられた吐出部からインキ元ローラの外周面に供給される。このようなインキ供給装置としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デジタルインキポンプは、例えば、8個の吐出口を有し、インキ元ローラの軸方向に沿って4個配置される。そして、印刷するウェブの幅に応じて使用するデジタルインキポンプの個数が設定される。そのため、幅の狭いウェブに対して印刷を行うとき、一部のデジタルインキポンプは、長時間にわたって運転停止状態になる。運転停止状態にあるデジタルインキポンプは、プランジャとバレルとの間に残留するインキが固化する。すると、デジタルインキポンプを運転するとき、インキの固化によりプランジャが動作不良を起こすことがある。特許文献1では、印刷開始前に、デジタルインキポンプをインキ固着防止運転モードで作動することで、印刷中におけるデジタルインキポンプの動作不良の発生を抑制している。ところが、印刷開始前に、デジタルインキポンプをインキ固着防止運転モードで作動すると、印刷開始に時間がかかり、その分、印刷機の起動時間が長くなるという課題がある。
【0005】
また、インキ固着防止運転モードを行った後の印刷中においても、インキの流動性のばらつきや、長時間の印刷継続によるプランジャとバレルの隙間変動が原因で、プランジャとバレルの隙間が過小となり、動作不良が発生することがある。加えて、プランジャはクランクレバーを介してモータにより回転されるが、このクランクレバーの動作に不良が発生すると、プランジャが適正に回転しない。そのため、インキの供給不良が発生し、印刷品質の低下によって、不良紙が増加してしまうという課題がある。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、印刷中におけるプランジャの動作不良を早期に解消して不良紙の低減を図るインキ供給装置および方法並びに印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示のインキ供給装置は、インキを吐出可能なデジタルインキポンプと、前記デジタルインキポンプの動作不良を検出する動作不良検出部と、印刷機が起動した後の印刷中に前記デジタルインキポンプの動作不良が検出されると前記デジタルインキポンプの動作不良を解消する復帰動作を行う復帰動作制御部と、を備える。
【0008】
本開示のインキ供給方法は、デジタルインキポンプによりインキを吐出するステップと、前記デジタルインキポンプの動作不良を検出するステップと、印刷機が起動した後の印刷中に前記デジタルインキポンプの動作不良を検出すると前記デジタルインキポンプの動作不良を解消する復帰動作を行うステップと、を有する。
【0009】
また、本開示の印刷機は、印刷媒体を供給する給紙装置と、前記印刷媒体に印刷を行う印刷装置と、印刷済の前記印刷媒体を縦裁断して重ねると共に搬送経路および経路長を変更するウェブパス装置と、縦裁断して重ねられた前記印刷媒体を縦折りした後に横断裁して折帖を形成する折機と、を備え、前記印刷装置は、前記インキ供給装置を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示のインキ供給装置および方法並びに印刷機によれば、印刷中におけるプランジャの動作不良を早期に解消して不良紙の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機におけるインキ供給制御を表すブロック構成図である。
【
図2】
図2は、新聞の発送設備を表す概略図である。
【
図3】
図3は、デジタルインキポンプにおける復帰動作を説明するための断面図である。
【
図4】
図4は、インキ供給制御を表すフローチャートである。
【
図5】
図5は、インキ供給制御における第1復帰動作を表すタイムチャートである。
【
図6】
図6は、インキ供給制御における第2復帰動作を表すタイムチャートである。
【
図7】
図7は、本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機を表す概略構成図である。
【
図8】
図8は、新聞用オフセット輪転印刷機における印刷ユニットを表す概略構成図である。
【
図9】
図9は、印刷ユニットにおけるローラ配列を表す概略図である。
【
図10】
図10は、デジタルインキポンプを表す断面図である。
【
図11】
図11は、デジタルインキポンプの吸入開始状態を表す概略図である。
【
図12】
図12は、デジタルインキポンプの吸入終了状態を表す概略図である。
【
図13】
図13は、デジタルインキポンプの吐出開始状態を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0013】
[新聞用オフセット輪転印刷機]
図7は、本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機を表す概略構成図である。本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機は、印刷装置の版胴のサイズが4頁幅×1頁周長に設定された4×1輪転印刷機であるが、版胴のサイズが4頁幅×2頁周長に設定された4×2輪転印刷機であってもよい。
【0014】
図7に示すように、本実施形態の印刷機は、新聞用オフセット輪転印刷機Pである。新聞用オフセット輪転印刷機Pは、給紙装置Rと、インフィード装置Iと、印刷装置Uと、ウェブパス装置Dと、折機Fとを備える。
【0015】
給紙装置Rは、複数(本実施形態では、5台)の給紙ユニットR1~R5を有する。インフィード装置Iは、複数(本実施形態では、5台)のインフィードユニットI1~I5を有する。印刷装置Uは、複数(本実施形態では、5台)の印刷ユニットU1~U5を有する。ウェブパス装置Dは、1台のウェブパスユニットD1を有する。折機Fは、1台の折ユニットF1を有する。
【0016】
給紙装置Rにおいて、給紙ユニットR1~R5は、ほぼ同様の構成をなし、ウェブ(印刷媒体)Wがロール状に巻かれた3つの巻取紙を保持する保持アームを有する。保持アームを回動することで、巻取紙を給紙位置に回動することができる。インフィード装置Iにおいて、インフィードユニットI1~I5は、ほぼ同様の構成をなし、印刷装置Uの各印刷ユニットU1~U5に送り込むウェブWの張力を調整することで、印刷装置Uを走行するウェブWの張力を適正値に安定して維持する。なお、給紙装置Rからインフィード装置IまでのウェブWの張力は、給紙ユニットR1~R5に設けられた図示しないブレーキ装置により行われる。
【0017】
印刷装置Uにおいて、印刷ユニットU1~U5は、両面4色印刷を行うことができる多色刷印刷ユニットである。但し、各印刷ユニットU1~U5は、上下に分割することで、両面2色印刷を行うことができる印刷ユニットU11~U52とすることができる。印刷ユニットU11~U52は、ほぼ同様の構成をなし、インキ供給装置、版胴、ブランケット胴などを有する。
【0018】
ウェブパス装置Dにおいて、ウェブパスユニットD1は、印刷ユニットU1~U5に対して設けられる。ウェブパスユニットD1は、ウェブWを縦方向(ウェブWの搬送方向)に沿ってその幅方向の中央部で裁断(縦裁断)するスリッタ、縦裁断したウェブWの搬送経路を設定するターンバー、ウェブWにおける天地長手方向における絵柄位置を調整するコンペンセータなどを有する。印刷ユニットU1~U5で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD1にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより絵柄位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。
【0019】
折機Fにて、折ユニットF1は、ウェブパスユニットD1から複数のウェブWが重ねられて導入されたウェブWを縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙する。
【0020】
<印刷ユニット>
ここで、印刷ユニットU1について説明するが、他の印刷ユニットU2~U5もほぼ同様の構成であるため、説明は省略する。
図8は、新聞用オフセット輪転印刷機における印刷ユニットを表す概略構成図である。
【0021】
図8に示すように、印刷ユニットU1は、4色印刷が可能となるように、H型のタワーユニットをなす。印刷ユニットU1は、ウェブWの搬送方向が鉛直方向の下方から上方に向かう方向である。印刷ユニットU1は、下方から上方に向けて墨、藍、紅、黄に対応する4個のスタック21,22,23,24が配置されて構成される。各スタック21,22,23,24は、それぞれ左右対称となるローラ配列をなす。
【0022】
スタック21,22,23,24は、ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bがウェブWの搬送経路を挟んで左右に対接するように配置される。ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bは、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bが対接する。スタック21,22,23,24は、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して、インキ供給装置51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54bが設けられる。また、スタック21,22,23,24は、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して、湿し装置61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64bが設けられる。
【0023】
<スタック>
ここで、スタック24について説明するが、他のスタック21~23もほほ同様の構成である。但し、スタック22は、スタック24と同様のローラ配列であるが、スタック21,23は、スタック24と上下関係がほぼ逆になるローラ配列である。
図9は、印刷ユニットにおけるローラ配列を表す概略図である。
【0024】
図9に示すように、スタック24は、ウェブWの搬送方向における最下流側(最上方側)に配置され、黄色のインキを印刷可能である。スタック24は、鉛直方向に沿うウェブWの搬送経路に対して、左側が表面印刷を行う表面印刷ユニットであり、右側が裏面印刷を行う裏面印刷ユニットである。
【0025】
スタック24は、ブランケット胴34a,34bと、版胴44a,44bと、インキ供給装置54a,54bと、湿し装置64a,64bを有する。インキ供給装置54a,54bは、インキ元ローラ71a,71bと、デジタルインキポンプ72a,72bと、インキ受渡しローラ73a,73bと、インキ練りローラ74a,74bと、インキ往復ローラ75a,75bと、インキ練りローラ76a,76bと、インキ往復ローラ77a,77bと、2つのインキ着けローラ78a,78b,79a,79bとを有する。湿し装置64a,64bは、水ライダローラ81a,81bと、水往復ローラ82a,82bと、水着けローラ83a,83bと、スプレーノズル84a,84bとを有する。
【0026】
但し、インキ供給装置54a,54bと湿し装置64a,64bは、上述した構成に限定されるものではなく、特に、インキ供給装置54a,54bは、上述したローラ配列に限定されるものではない。
【0027】
インキ供給装置54a,54bは、1個のインキ元ローラ71a,71bに対して複数のデジタルインキポンプ72a,72bが配置されて構成される。デジタルインキポンプ72a,72bは、インキ元ローラ71a,71bに所定量のインキを送り出すことができる。インキ元ローラ71a,71bは、所定膜厚のインキを保持することができる。
【0028】
インキ受渡しローラ73a,73bは、インキ元ローラ71a,71bからインキが受け渡される。インキ練りローラ74a,74bは、インキ受渡しローラ73a,73bから受け渡されたインキを練る。インキ往復ローラ75a,75bは、インキ練りローラ74a,74bにより練られたインキを幅方向に広げる。インキ練りローラ76a,76bは、インキ往復ローラ75a,75bから受け渡されたインキを練る。インキ往復ローラ77a,77bは、インキ練りローラ76a,76bにより練られたインキを幅方向に広げる。インキ着けローラ78a,78b,79a,79bは、インキ往復ローラ77a,77bにより幅方向に広げられたインキを受け取って版胴44a,44bに供給する。
【0029】
スプレーノズル84a,84bは、水往復ローラ82a,82bに湿し水を供給する。水ライダローラ81a,81bは、ローラ間で受け渡される湿し水を均すものである。水往復ローラ82a,82bは、隣接するローラ間で受け渡される湿し水を幅方向に広げる。水着けローラ83a,83bは、水往復ローラ82a,82bにより幅方向に広げられた湿し水を受け取って版胴44a,44bに供給する。
【0030】
版胴44a,44bは、表面に図示しない刷版が巻き付けられる金属ローラである。版胴44a,44bは、水着けローラ83a,83bの湿し水が刷版の非画線部に受け渡された後、インキ着けローラ78a,78b,79a,79bのインキが刷版の画線部に受け渡される。ブランケット胴34a,34bは、表面に図示しないブランケット(ゴム)が巻き付けられる。ブランケット胴34a,34bは、版胴44a,44bから受け渡されたインキをウェブWに転写する。
【0031】
そのため、デジタルインキポンプ72a,72bは、インキ元ローラ71a,71bにインキを供給し、供給されたインキは、インキ受渡しローラ73a,73b、インキ練りローラ74a,74b、インキ往復ローラ75a,75b、インキ練りローラ76a,76b、インキ往復ローラ77a,77bを介してインキ着けローラ78a,78b,79a,79bに供給される。一方、スプレーノズル84a,84bは、水往復ローラ82a,82bに湿し水を供給し、供給された湿し水は、水ライダローラ81a,81bで均されながら、水往復ローラ82a,82bから水着けローラ83a,83bに供給される。
【0032】
水着けローラ83a,83bは、版胴44a,44bの刷版の非画線部のみに湿し水を転写する。インキ着けローラ78a,78b,79a,79bは、版胴44a,44bの刷版の画線部のみにインキを転写する。版胴44a,44bは、刷版の画線部にあるインキをブランケット胴34a,34bに受け渡す。ウェブWがブランケット胴34a,34bの間のニップ部を通過すると、印圧によりブランケット胴34a,34bのインキ(絵柄)がウェブWの表裏に転写され、ウェブWへの両面印刷が行われる。
【0033】
<デジタルインキポンプの構成>
ここで、デジタルインキポンプ72bについて説明するが、デジタルインキポンプ72aもほぼ同様の構成であるため、説明は省略する。
図10は、デジタルインキポンプを表す断面図である。
【0034】
図10に示すように、デジタルインキポンプ72bは、ハウジング91と、インキ供給部92と、インキ吐出部93と、駆動モータ94と、クランクレバー95と、プランジャ96と、バレル97とを備える。
【0035】
ハウジング91は、水平方向の一端部にインキ供給部92が設けられる。インキ供給部92は、図示しないインキ供給源に接続される。ハウジング91は、鉛直方向の上端部にインキ吐出部93が設けられる。インキ吐出部93は、ホース98を介してインキレール99(いずれも
図9参照)に接続される。インキレール99は、インキ元ローラ71bの外周面に対向して配置される。
【0036】
駆動モータ94は、ハウジング91における水平方向の他端部に装着される。駆動モータ94は、回転軸O1に沿って配置され、駆動回転可能な出力軸94aを有する。バレル97は、ハウジング91における水平方向の一端部から他端部にかけて固定される。バレル97は、円筒形状をなし、軸方向の一端部側に吸入口(インキ吸入口)97aおよび吐出口(インキ吐出口)97bが設けられる。吸入口97aと吐出口97bは、周方向にずれて配置される。そして、吸入口97aは、インキ供給部92に連通し、吐出口97bは、インキ吐出部93に連通する。
【0037】
プランジャ96は、バレル97の内部に配置される。プランジャ96は、円柱形状をなし、軸方向の一端部にインキ貯留部96aが設けられる。インキ貯留部96aは、プランジャ96の外周面の一部が切り欠かれることで形成される。プランジャ96は、軸方向の他端部に径方向の外方に突出する連結部96bが設けられる。プランジャ96は、バレル97に対して周方向に沿って回転自在に支持されると共に、軸方向に沿って移動自在に支持される。プランジャ96は、周方向の回転動作と軸方向の移動動作を連動して行うことで、インキ貯留部96aが吸入口97aと吐出口97bに交互に連通する。
【0038】
プランジャ96およびバレル97は、回転軸O2に沿って配置される。プランジャ96およびバレル97は、回転軸O2が駆動モータ94の回転軸O1に対して傾斜して配置される。クランクレバー95は、駆動モータ94の出力軸94aとプランジャ96とを駆動連結する。クランクレバー95は、一端部が連結軸95aを介して駆動モータ94の出力軸94aに固定される。クランクレバー95は、他端部が球面軸受95bを介してプランジャ96の連結部96bに揺動自在に連結される。そのため、駆動モータ94が駆動すると、出力軸94aと共にクランクレバー95が回転し、回転力が球面軸受95bを介してプランジャ96に伝達される。すると、プランジャ96は、回転軸O2が駆動モータ94の回転軸O1に対して傾斜していることから、一方向に回転しながら軸方向に往復移動する。
【0039】
<デジタルインキポンプの作動>
図11は、デジタルインキポンプの吸入開始状態を表す概略図、
図12は、デジタルインキポンプの吸入終了状態を表す概略図、
図13は、デジタルインキポンプの吐出開始状態を表す概略図である。
【0040】
図11は、デジタルインキポンプの吸入開始状態を表している。プランジャ96は、インキ貯留部96aがバレル97の吸入口97aに連通している。そのため、インキ供給部92のインキが吸入口97aおよびインキ貯留部96aを介してプランジャ96とバレル97とに区画された空間部に吸入される。この状態から、プランジャ96が回転すると、プランジャ96のインキ貯留部96aとバレル97の吸入口97aとの連通が解除される。
図12は、デジタルインキポンプの吸入終了状態を表している。プランジャ96は、インキ貯留部96aとバレル97の吸入口97aが連通していない。そのため、インキがプランジャ96とバレル97とに区画された空間部に貯留される。この状態から、さらにプランジャ96が回転すると、プランジャ96のインキ貯留部96aとバレル97の吐出口97bとが連通する。
図13は、デジタルインキポンプの吐出開始状態を表している。プランジャ96は、インキ貯留部96aがバレル97の吐出口97bに連通している。そのため、バレル97の内部に貯留されるインキがインキ貯留部96aおよび吐出口97bからインキ吐出部93に吐出される。
【0041】
<インキ供給装置>
以下、本実施形態のインキ供給装置51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54b(
図9参照)について詳細に説明するが、インキ供給装置51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54bは、ほぼ同様の構成であることから、インキ供給装置54bについてのみ説明する。
【0042】
図1は、本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機におけるインキ供給制御を表すブロック構成図である。
【0043】
インキ供給装置54bは、回転検出センサ101と、制御装置102と、印刷濃度調整装置103と、ポンプ駆動装置104と、デジタルインキポンプ72bと、複数のインキローラとを備える。ここで、複数のインキローラは、前述したように、インキ元ローラ71bと、インキ受渡しローラ73bと、インキ練りローラ74bと、インキ往復ローラ75bと、インキ練りローラ76bと、インキ往復ローラ77bと、2つのインキ着けローラ78b,79bとから構成される。但し、複数のインキローラは、この組み合わせや数などに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0044】
そして、制御装置102は、動作不良検出部111と、復帰動作制御部112とを備える。復帰動作制御部112は、第1復帰動作制御部121と、第2復帰動作制御部122とを有する。
【0045】
回転検出センサ101は、デジタルインキポンプ72bにおける駆動モータ(
図10参照)94の回転速度(回転位置)を検出する。この場合、回転検出センサ101は、出力軸94aの回転により旋回する検出片105の挙動を検出する。回転検出センサ101は、検出結果を制御装置102に出力する。動作不良検出部111は、回転検出センサ101が検出した駆動モータ94の回転速度に基づいてデジタルインキポンプ72bの動作不良を検出する。すなわち、デジタルインキポンプ72bが正常に作動しているとき、駆動モータ94は、一方向に所定の回転速度で駆動回転する。動作不良検出部111は、駆動モータ94が一方向に所定の回転速度で駆動回転しているか否かを検出し、一方向に所定の回転速度で駆動回転していないときに動作不良であると判定する。
【0046】
復帰動作制御部112は、新聞用オフセット輪転印刷機Pが起動した後の印刷中に、動作不良検出部111がデジタルインキポンプ72bの動作不良を検出すると、デジタルインキポンプ72bの動作不良を解消する復帰動作を行うように制御する。ここで、第1復帰動作制御部121は、予め設定された所定の第1時間だけ復帰動作を行うようにデジタルインキポンプ72bを制御する。第2復帰動作制御部122は、第1時間だけ復帰動作を行っても動作不良が解消されないときに、第1時間より長い第2時間だけ復帰動作を行うようにデジタルインキポンプ72bを制御する。第1復帰動作制御部121は、第1復帰動作信号をポンプ駆動装置104に出力する。第2復帰動作制御部122は、第2復帰動作信号をポンプ駆動装置104に出力する。なお、デジタルインキポンプ72bの具体的な復帰動作については、後述する。
【0047】
印刷濃度調整装置103は、印刷ユニットU1(
図8参照)に配置される。印刷濃度調整装置103は、濃度センサを有する。濃度センサは、例えば、カメラであり、ウェブWに印刷された絵柄を撮影する。制御装置102は、印刷情報に基づいて基準の印刷絵柄の濃度を設定し、印刷濃度調整装置103に出力する。印刷濃度調整装置103は、ウェブWにおける基準の印刷絵柄の濃度と、カメラが撮影したウェブWの実際の印刷絵柄の濃度とを比較する。印刷濃度調整装置103は、基準の印刷絵柄の濃度と実際の印刷絵柄の濃度との偏差に応じた印刷濃度修正信号を出力する。印刷濃度修正信号は、基準の印刷絵柄の濃度と実際の印刷絵柄の濃度との偏差を減少させるための印刷濃度修正量を含む。印刷濃度調整装置103は、印刷濃度修正信号をポンプ駆動装置104に出力する。
【0048】
ポンプ駆動装置104は、印刷濃度調整装置103からの印刷濃度修正信号に基づいてデジタルインキポンプ72bを作動制御することで、インキ供給量を調整し、ウェブWの印刷濃度のずれを修正する。また、ポンプ駆動装置104は、第1復帰動作制御部121からの第1復帰動作信号や第2復帰動作制御部122からの第2復帰動作信号に基づいてデジタルインキポンプ72bを作動制御することで、デジタルインキポンプ72bの第1復帰動作や第2復帰動作を行う。
【0049】
デジタルインキポンプ72bは、インキ元ローラ71b(
図9参照)の軸方向、つまり、ウェブWの幅方向に沿って4個設けられる。デジタルインキポンプ72bは、4個のデジタルインキポンプ72b1,72b2,72b3,72b4から構成される。また、図示しないが、デジタルインキポンプ72b1,72b2,72b3,72b4は、それぞれに8個の吐出口を有し、8個の吐出口に対応して、後述するハウジング91とインキ供給部92とインキ吐出部93と駆動モータ94とクランクレバー95とプランジャ96とバレル97(いずれも
図10参照)が設けられる。ポンプ駆動装置104は、4個のデジタルインキポンプ72b1,72b2,72b3,72b4を個別に制御可能であり、また、8個の駆動モータ94を個別に制御可能である。そのため、4個のデジタルインキポンプ72b1,72b2,72b3,72b4は、それぞれ8個の駆動モータ94に回転検出センサ101a,101b,101c,101dが8個ずつ接続され、回転検出センサ101a,101b,101c,101dは、検出結果を制御装置102に出力する。
【0050】
また、インキ供給装置54bは、警報装置(表示装置)131を有する。警報装置131は、復帰動作制御部112から警報信号が入力することで作動する。警報装置131の作動内容については、後述する。なお、本実施形態では、警報装置131を設けたが、警報装置131に加えてまたは代えて復帰動作制御部112の制御内容を表示する表示装置としてのディスプレイやスピーカなどを設けてもよい。
【0051】
制御装置102は、紙面検査装置132が接続される。紙面検査装置132は、印刷後のウェブWの印刷状態の異常を検出する。ここで、印刷状態の異常とは、例えば、濃度異常、紙面や余白部の汚れなどである。すなわち、制御装置102は、印刷情報に基づいてウェブWにおける基準画像を設定し、紙面検査装置132に出力する。紙面検査装置132は、ウェブWにおける基準画像と、カメラが撮影したウェブWの実際の画像とを比較することで異常を検出する。また、制御装置102は、紙面検査装置132によるウェブWの検査結果が入力される。
【0052】
制御装置102は、搬送切替装置133が接続される。搬送切替装置133は、新聞の発送設備140(
図2参照)に配置される。搬送切替装置133は、紙面検査装置132により検査された良紙のウェブWと不良紙のウェブWとの搬送先を切り替えるものである。
【0053】
<発送設備>
図2は、新聞の発送設備を表す概略図である。
【0054】
図2に示すように、発送設備140は、裁荷装置141と、キャリア装置142と、カウンタスタッカ143と、配送コンベア144とを備える。
【0055】
裁荷装置141は、新聞用オフセット輪転印刷機Pに隣接して配置される。新聞用オフセット輪転印刷機Pにより印刷された印刷物(新聞)は、排紙コンベア151により裁荷装置141に搬送される。裁荷装置141は、排紙コンベア151により搬送された印刷物をキャリア装置142に供給する。キャリア装置142は、図示しないグリッパ装置が印刷物の端部を把持して搬送し、カウンタスタッカ143に受け渡す。カウンタスタッカ143は、計数センサ152を有する。カウンタスタッカ143は、キャリア装置142により搬送された印刷物の1バッチを計数センサ152により計数し、縦列に集積する。カウンタスタッカ143は、縦列に集積された印刷物を1バッチごとに180度回転して積み上げ、1スタックとして搬出する。配送コンベア144は、1スタックの印刷物を発送トラック153まで搬送する。
【0056】
搬送切替装置133は、裁荷装置141に配置される。新聞用オフセット輪転印刷機Pによる印刷中、紙面検査装置132(
図1参照)の検査結果に応じて不良紙が発生する。紙面検査装置132は、印刷後のウェブWの印刷状態の異常を検出する。印刷状態の異常とは、例えば、濃度異常、紙面や余白部の汚れなどである。搬送切替装置133は、紙面検査装置132により印刷物が不良紙であると判定されると、不良紙である印刷物をキャリア装置142に供給せずに、矢印141bで表すように、外部に排出する。一方、搬送切替装置133は、紙面検査装置132により印刷物が良紙であると判定されると、矢印141aで表すように、印刷物の搬送先を切り替え、良紙である印刷物をキャリア装置142に供給する。
【0057】
新聞用オフセット輪転印刷機Pは、印刷制御装置PC(プレスコントロール)により制御される。制御装置102は、印刷制御装置PCに含まれる。すなわち、印刷制御装置PC(制御装置102)は、デジタルインキポンプ72bの動作不良信号に基づいて搬送切替装置133を切替制御する。
【0058】
<デジタルインキポンプの復帰動作制御>
図3は、デジタルインキポンプにおける復帰動作を説明するための断面図である。
【0059】
図1、
図3、
図10に示すように、デジタルインキポンプ72bは、プランジャ96と、バレル97とを有する。プランジャ96は、インキ貯留部96aを有する。バレル97は、周方向に間隔を空けて吸入口97aと吐出口97bが設けられる。デジタルインキポンプ72bが動作不良でない通常の印刷時、
図10のX方向から見て、プランジャ96は、バレル97の内部を時計回り方向に連続回転する。すると、プランジャ96は、インキ貯留部96aが吸入口97aと吐出口97bに交互に連通し、所定のタイミングでインキを吐出する。
【0060】
一方、動作不良検出部111がデジタルインキポンプ72bの動作不良を検出すると、第1復帰動作制御部121は、第1時間だけデジタルインキポンプ72bに第1復帰動作させる。第1復帰動作制御部121によるデジタルインキポンプ72bの第1復帰動作は、ウェブWの印刷品質に影響を与えない範囲の時間で、プランジャ96の周方向往復回動動作および軸方向往復移動動作である。この場合、ウェブWの印刷品質に影響を与えない範囲の時間でのプランジャ96の周方向往復回動動作とは、例えば、プランジャ96が1回転する時間内で、インキ貯留部96aがバレル97の吸入口97aおよび吐出口97bに連通しない角度範囲θ内を1往復回動する動作である。インキは、デジタルインキポンプ72bから複数のインキローラを経て、版胴44bに供給されるが、このとき、複数のインキローラには、版胴44bに供給される以上のインキが膜状に残留し、インキ膜厚を形成している。そのため、デジタルインキポンプ72bからのインキの供給が一定時間途絶えたとしても、複数のインキローラに形成されるインキ膜厚により、印刷を継続することが可能である。但し、ウェブWの印刷品質に影響を与えない範囲の時間でのプランジャ96の周方向往復回動動作は、この動作に限定されるものではなく、印刷速度などに応じて設定すればよい。
【0061】
また、動作不良検出部111がデジタルインキポンプ72bの動作不良を検出すると、制御装置102は、検紙用の印刷物を所定部数(数部程度)だけ排紙するための検紙用排紙開始信号を出力する。デジタルインキポンプ72bに動作不良が発生すると、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚でウェブWに印刷される。搬送切替装置133は、検紙用排紙開始信号が入力すると、デジタルインキポンプ72bの動作不良時に印刷されたウェブWに相当する印刷物が裁荷装置141に到達したとき、この印刷物の外部への排出を開始する。
【0062】
すなわち、デジタルインキポンプ72bの動作不良が発生するまで、インキ供給が適正に実施されているため、インキ膜厚は適正厚さである。しかし、デジタルインキポンプ72bの動作不良が発生すると、インキ供給が途絶えるため、インキ膜厚は薄くなる。そのため、制御装置102は、デジタルインキポンプ72bの動作不良が発生したとき、デジタルインキポンプ72bの動作不良が発生するまでに印刷された印刷物が裁荷装置141を通過するのを待つ。そして、制御装置102は、所定部数の印刷物が裁荷装置141を通過したら、搬送切替装置133は、デジタルインキポンプ72bの動作不良が発生したときの印刷物の外部への排出を開始する。
【0063】
この場合、制御装置102による搬送切替装置133の切替タイミングは、動作不良が発生したデジタルインキポンプ72bより下流のインキローラのインキ経路長と、印刷ユニットU1から裁荷装置141(搬送切替装置133)までのウェブパス長とに基づいて算出される。つまり、デジタルインキポンプ72bの動作不良が発生したとき、その直前までの印刷部数、つまり、適正なインキ膜厚で印刷された印刷物のインキ経路長における第1印刷部数を算出する。また、デジタルインキポンプ72bの動作不良が発生したとき、動作不良が発生したデジタルインキポンプ72bの下流のブランケット胴から裁荷装置141までのウェブパス長における第2印刷部数を算出する。搬送切替装置133は、第1印刷部数と第2印刷部数の合計部数が裁荷装置141を通過したら、搬送切替装置133を作動して印刷物の外部への排出を開始する。
【0064】
なお、制御装置102は、デジタルインキポンプ72bの動作不良を検出したとき、搬送切替装置133に検紙用排紙開始信号を出力し、制御装置102または搬送切替装置133は、所定の印刷部数が裁荷装置141を通過したら、搬送切替装置133の切替動作を開始する。但し、制御装置102は、デジタルインキポンプ72bの動作不良を検出したとき、所定の印刷部数が裁荷装置141を通過したら、搬送切替装置133に検紙用排紙開始信号を出力し、搬送切替装置133の切替動作を開始してもよい。また、制御装置102は、印刷速度、つまり、ウェブWの搬送速度が入力している。そのため、制御装置102は、デジタルインキポンプ72bの動作不良を検出したとき、所定の印刷部数が裁荷装置141を通過する所定時間の経過を待って、搬送切替装置133の切替動作を開始してもよい。
【0065】
そして、デジタルインキポンプ72bの第1復帰動作により動作不良が解消されると、制御装置102は、検紙用の印刷物の排紙を終了するための検紙用排紙終了信号を出力する。搬送切替装置133は、検紙用排紙終了信号が入力すると、デジタルインキポンプ72bの動作不良から第1復帰動作の終了までの間の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚で印刷されたウェブWに相当する印刷物の、外部への排出を停止する。この場合、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消され、適正なインキ膜厚にて印刷が開始されたウェブWに相当する印刷物が、裁荷装置141に到達したタイミングで、印刷物の外部への排出を停止する。制御装置102による搬送切替装置133の切替タイミングは、動作不良が発生したデジタルインキポンプ72bより下流のインキローラのインキ経路長と、印刷ユニットU1から裁荷装置141(搬送切替装置133)までのウェブパス長とに基づいて算出される。
【0066】
すなわち、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消するまで、インキ供給が途絶えるため、インキ膜厚は薄くなる。しかし、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消すると、インキ供給が適正に実施されているため、インキ膜厚は適正厚さに戻る。そのため、制御装置102は、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消したとき、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消するまでに印刷された印刷物が裁荷装置141を通過するのを待つ。そして、制御装置102は、所定部数の印刷物が裁荷装置141を通過したら、搬送切替装置133は、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消したときの印刷物の外部への排出を停止する。
【0067】
この場合、制御装置102による搬送切替装置133の切替タイミングは、動作不良が解消したデジタルインキポンプ72bより下流のインキローラのインキ経路長と、印刷ユニットU1から裁荷装置141(搬送切替装置133)までのウェブパス長とに基づいて算出される。つまり、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消したとき、その直前までの印刷部数、つまり、薄いインキ膜厚で印刷されたンキ経路長における第1印刷部数を算出する。また、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消したとき、動作不良が解消したデジタルインキポンプ72bの下流のブランケット胴から裁荷装置141までのウェブパス長における第2印刷部数を算出する。搬送切替装置133は、第1印刷部数と第2印刷部数の合計部数が裁荷装置141を通過したら、搬送切替装置133を作動して印刷物の外部への排出を停止する。
【0068】
なお、制御装置102は、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消したとき、搬送切替装置133に検紙用排紙終了信号を出力し、制御装置102または搬送切替装置133は、所定の印刷部数が裁荷装置141を通過したら、搬送切替装置133の切替動作を開始する。但し、制御装置102は、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消したとき、所定の印刷部数が裁荷装置141を通過したら、搬送切替装置133に検紙用排紙終了信号を出力し、搬送切替装置133の切替動作を開始してもよい。また、制御装置102は、印刷速度、つまり、ウェブWの搬送速度が入力している。そのため、制御装置102は、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消したとき、所定の印刷部数が裁荷装置141を通過する所定時間の経過を待って、搬送切替装置133の切替動作を開始してもよい。
【0069】
そして、制御装置102は、検紙用排紙開始信号または検紙用排紙終了信号が出力されたこと、つまり、搬送切替装置133が検紙用のウェブWを外部に排出したことを警報装置131によりオペレータに知らせる。オペレータは、警報装置131の警報により検紙用の印刷物が排紙されたことを知り、搬送切替装置133により排出された印刷物を目視により検紙を行う。この場合、第1復帰動作は、印刷品質に影響を与えない範囲の時間で実施されるものの、念のためオペレータの目視による検紙を実施する。目視による検紙で問題がない印刷物は良紙としてオペレータによりキャリア装置142に移動されるか、予備の印刷物として保管される。
【0070】
なお、上述した実施形態では、デジタルインキポンプ72bの第1復帰動作により動作不良が解消されると、制御装置102は、検紙用の印刷物の排紙を終了するための検紙用排紙終了信号を出力しているが、これに限定されない。デジタルインキポンプ72bの動作不良が発生し、第1復帰動作行った場合、動作不良発生から第1復帰動作終了までの間の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚で印刷されたウェブWに相当する印刷物は、予め実験等で所定部数と決めておき、例えば20部検紙用に排紙した結果を検紙用排紙終了信号として出力してもよい。
【0071】
第1復帰動作制御部121がデジタルインキポンプ72bの第1復帰動作を行っても、動作不良が解消されないとき、第2復帰動作制御部122は、第1時間より長い第2時間だけデジタルインキポンプ72bの第2復帰動作を行う。第2復帰動作制御部122によるデジタルインキポンプ72bの第2復帰動作は、ウェブWの印刷品質に影響を与えない範囲の時間を超えて、プランジャ96の周方向往復回動動作および軸方向往復移動動作である。この場合、ウェブWの印刷品質に影響を与えない範囲の時間を超えたプランジャ96の周方向往復回動動作とは、例えば、プランジャ96が2回転以上する時間内で、インキ貯留部96aがバレル97の吸入口97aおよび吐出口97bに連通しない角度範囲θ内を2往復以上回動させる動作である。
【0072】
また、第2復帰動作制御部122が第2復帰動作を行うと、制御装置102は、不良紙排紙開始信号を出力する。搬送切替装置133は、不良紙排紙開始信号が入力すると、デジタルインキポンプ72bの第2復帰動作中の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚で印刷されたウェブWに相当する印刷物が、裁荷装置141に到達したとき、この印刷物を不良紙として外部への排出を開始する。なお、制御装置102による搬送切替装置133の切替タイミングは、前述した第1復帰動作と同様のタイミングであり、第2復帰動作を行ったデジタルインキポンプ72bより下流のインキローラのインキ経路長と、印刷ユニットU1から裁荷装置141(搬送切替装置133)までのウェブパス長とに基づいて算出される。
【0073】
すなわち、デジタルインキポンプ72bが第2復帰動作を行ったとき、インキ供給が途絶えるので、第1復帰動作を行ったときよりもインキ膜厚はさらに薄くなる。制御装置102は、第1復帰動作中の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚による印刷部数、つまり、第1復帰動作中の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚が形成されているインキ経路長における第1印刷部数を算出する。また、第2復帰動作を行ったデジタルインキポンプの下流のブランケット胴から裁荷装置141までのウェブパス長において、現在印刷される印刷物の第2印刷部数を算出する。搬送切替装置133は、第1印刷部数と第2印刷部数の合計部数が裁荷装置141を通過したら、外部への排出を開始する。
【0074】
そして、デジタルインキポンプ72bの第2復帰動作により動作不良が解消されると、制御装置102は、印刷物の不良紙としての排紙を終了するための不良紙排紙終了信号を出力する。搬送切替装置133は、不良紙排紙終了信号が入力されると、デジタルインキポンプ72bが第2復帰動作中の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚で印刷されたウェブWに相当する印刷物につき、不良紙として外部への排出を停止する。この場合、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消され、適正なインキ膜厚にて印刷が開始されたウェブWに相当する印刷物が、裁荷装置141(搬送切替装置133)に到達したタイミングで、不良紙として外部への排出を停止する。制御装置102による搬送切替装置133の切替タイミングは、第2復帰動作を行ったデジタルインキポンプ72bより下流のインキローラのインキ経路長と、印刷ユニットU1から裁荷装置141(搬送切替装置133)までのウェブパス長とに基づいて算出される。
【0075】
具体的には、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消した場合、インキはインキローラに再び供給されるので、インキ膜厚は動作不良発生前に戻る。制御装置102は、この戻ったインキ膜厚によって印刷が開始される直前までの印刷部数、つまり、第2復帰動作中の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚が形成されているインキ経路長における第1印刷部数を算出する。また、動作不良が発生したデジタルインキポンプの下流のブランケット胴から裁荷装置141までのウェブパス長において、現在印刷される印刷物の第2印刷部数を算出する。搬送切替装置133は、第1印刷部数と第2印刷部数の合計部数が裁荷装置141を通過したら、不良紙として外部への排出を停止する。このとき、制御装置102は、第2復帰動作切替信号、不良紙排紙終了信号が出力されたこと、つまり、搬送切替装置133が不良紙のウェブWに相当する印刷物を外部に排出したことを警報装置131によりオペレータに知らせてもよい。
【0076】
また、デジタルインキポンプ72bの第2復帰動作が開始されると、制御装置102は、紙面検査装置132がウェブWの印刷品質を判定するときに使用する判定値を低下させるための判定値低下信号を出力する。紙面検査装置132は、判定値低下信号が入力されると、デジタルインキポンプ72bの第2復帰動作中の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚で印刷されたウェブWが紙面検査装置132(
図8参照)に到達したとき、印刷品質を判定する判定値を低下させることで、印刷品質の判定基準を緩和させて紙面検査を実行する。なお、紙面検査装置132に到達するタイミングは、第2復帰動作を行ったデジタルインキポンプより下流のインキローラのインキ経路長及び紙面検査装置132までのウェブパス長から算出される。
【0077】
具体的には、デジタルインキポンプ72bが第2復帰動作を行った場合、インキ供給が途絶えるので、第1復帰動作を行ったときよりもインキ膜厚はさらに薄くなる。制御装置102は、第1復帰動作中の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚による印刷部数、つまり、第1復帰動作中の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚が形成されているインキ経路長における第1印刷部数を算出する。また、第2復帰動作を行ったデジタルインキポンプの下流のブランケット胴から紙面検査装置132までのウェブパス長において、現在印刷される印刷物の第2印刷部数を算出する。紙面検査装置132は、第1印刷部数と第2印刷部数の合計部数が紙面検査装置132を通過したら、印刷品質の判定基準を緩和させて紙面検査を実行する。
【0078】
なお、デジタルインキポンプ72bの第2復帰動作中は、インキ供給が途絶えるので、印刷品質が不安定な状態となる。例えば、印刷機の印刷開始直後、いわゆる緩動速による運転の際に、印刷品質の判定基準を緩和させて紙面検査を実行し、印刷品質が安定するにしたがって判定基準を高めていくことが知られている。これと同様に、デジタルインキポンプ72bが第2復帰動作を行った場合、いつ動作不良が解消するか不明のため、第2復帰動作中のインキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚による印刷物に対しては印刷品質の判定基準を緩和させて紙面検査を実行する。
【0079】
そして、デジタルインキポンプ72bの第2復帰動作により動作不良が解消されると、制御装置102は、低下させていた判定値を復帰させるための判定値復帰信号を出力する。紙面検査装置132は、判定値復帰信号が入力されると、印刷品質を判定する判定値を第2復帰動作前の値に戻して、紙面検査を実行する。この場合、動作不良が解消され、適正なインキ膜厚にて印刷が開始されたウェブWが、紙面検査装置132に到達したタイミングで、印刷品質を判定する判定値を第2復帰動作前の値に戻す。紙面検査装置132に到達するタイミングは、第2復帰動作を行ったデジタルインキポンプより下流のインキローラのインキ経路長及び紙面検査装置132までのウェブパス長から算出される。
【0080】
具体的には、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消した場合、インキはインキローラに再び供給されるので、インキ膜厚は動作不良発生前に戻る。制御装置102は、この戻ったインキ膜厚によって印刷が開始される直前までの印刷部数、つまり、第2復帰動作中の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚が形成されているインキ経路長における第1印刷部数を算出する。また、動作不良が発生したデジタルインキポンプの下流のブランケット胴から紙面検査装置132までのウェブパス長において、現在印刷される印刷物の第2印刷部数を算出する。紙面検査装置132は、第1印刷部数と第2印刷部数の合計部数が紙面検査装置132を通過したら、印刷品質を判定する判定値を第2復帰動作前の値に戻す。
【0081】
また、デジタルインキポンプ72bの第2復帰動作が開始されると、制御装置102は、印刷濃度の制御量を抑制させるための印刷濃度調整量低下信号を出力する。印刷濃度調整装置103は、印刷濃度調整量低下信号が入力されると、印刷濃度の制御量を抑制させる。すなわち、デジタルインキポンプ72bに対して第2復帰動作を行うと、一定時間だけインキが不足して印刷濃度が低下する。しかし、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消されると、動作不良が発生する前と同様に、所定のインキ量を供給する。このとき、印刷濃度調整装置103が印刷濃度調整を実施してしまうと、一時的に印刷濃度が高くなりすぎ、印刷濃度を低下させるための調整を行う必要が生じ、不良紙が増加してしまう。そのため、第2復帰動作制御部122がデジタルインキポンプ72bの第2復帰動作を行うとき、印刷濃度調整装置103は、印刷濃度の調整を実施しない、または、調整量を少なくする。
【0082】
印刷濃度調整装置103は、印刷濃度調整量低下信号が入力されると、デジタルインキポンプ72bの第2復帰動作中の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚で印刷されたウェブWが印刷濃度調整装置103(
図8参照)に到達したとき、印刷濃度の制御量を抑制する。なお、印刷濃度調整装置103に到達するタイミングは、第2復帰動作を行ったデジタルインキポンプより下流のインキローラのインキ経路長及び印刷濃度調整装置103までのウェブパス長から算出される。
【0083】
具体的には、デジタルインキポンプ72bが第2復帰動作を行った場合、インキ供給が途絶えるので、第1復帰動作を行ったときよりもインキ膜厚はさらに薄くなる。制御装置102は、第1復帰動作中の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚による印刷部数、つまり、第1復帰動作中の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚が形成されているインキ経路長における第1印刷部数を算出する。また、第2復帰動作を行ったデジタルインキポンプの下流のブランケット胴から印刷濃度調整装置103までのウェブパス長において、現在印刷される印刷物の第2印刷部数を算出する。印刷濃度調整装置103は、第1印刷部数と第2印刷部数の合計部数が印刷濃度調整装置103を通過したら、印刷濃度の制御量を抑制する。
【0084】
デジタルインキポンプ72bの第2復帰動作により動作不良が解消されると、制御装置102は、抑制させていた制御量を復帰させるための印刷濃度調整量復帰信号を出力する。印刷濃度調整装置103は、印刷濃度調整量復帰信号が入力されると、印刷濃度の制御量を第2復帰動作前の値に戻して、印刷濃度調整を実施する。この場合、動作不良が解消され、適正なインキ膜厚にて印刷が開始されたウェブWが、印刷濃度調整装置103に到達したタイミングで、抑制させていた制御量を第2復帰動作前の値に戻す。印刷濃度調整装置103に到達するタイミングは、第2復帰動作を行ったデジタルインキポンプより下流のインキローラのインキ経路長及び印刷濃度調整装置103までのウェブパス長から算出される。
【0085】
具体的には、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消した場合、インキはインキローラに再び供給されるので、インキ膜厚は動作不良発生前に戻る。制御装置102は、この戻ったインキ膜厚によって印刷が開始される直前までの印刷部数、つまり、第2復帰動作中の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚が形成されているインキ経路長における第1印刷部数を算出する。また、動作不良が発生したデジタルインキポンプの下流のブランケット胴から印刷濃度調整装置103までのウェブパス長において、現在印刷される印刷物の第2印刷部数を算出する。印刷濃度調整装置103は、第1印刷部数と第2印刷部数の合計部数が印刷濃度調整装置103を通過したら、印刷濃度の制御量を第2復帰動作前の値に戻す。
【0086】
<インキ供給制御>
以下、インキ供給制御について具体的に説明する。
図4は、インキ供給制御を表すフローチャートである。
【0087】
図1および
図4に示すように、ステップS11にて、制御装置102は、新聞用オフセット輪転印刷機Pが運転中であるか否かを判定する。新聞用オフセット輪転印刷機Pの運転中とは、新聞用オフセット輪転印刷機Pが起動した後、良紙であるウェブWを製品として発送している状態である。ここで、制御装置102は、新聞用オフセット輪転印刷機Pが運転中でないと判定(No)すると、何もしないでこのルーチンを抜ける。一方、制御装置102は、新聞用オフセット輪転印刷機Pが運転中であると判定すると、ステップS12にて、動作不良検出部111は、デジタルインキポンプ72bが動作不良であるか否かを判定する。ここで、動作不良検出部111は、デジタルインキポンプ72bが動作不良でないと判定(No)すると、何もしないでこのルーチンを抜ける。
【0088】
一方、動作不良検出部111は、デジタルインキポンプ72bが動作不良であると判定(Yes)すると、ステップS13にて、制御装置102は、警報装置131を作動し、デジタルインキポンプ72bに動作不良が発生したことをオペレータに知らせる。そして、ステップS14にて、第1復帰動作制御部121は、ポンプ駆動装置14を制御し、デジタルインキポンプ72bに第1復帰動作を実行させてステップS15に移行する。また、ステップS12にて、動作不良検出部111は、デジタルインキポンプ72bが動作不良であると判定(Yes)すると、ステップS16にて、制御装置102は、搬送切替装置133を制御し、デジタルインキポンプ72bの動作不良の発生から第1復帰動作中の、インキ供給が一定期間途絶えたインキ膜厚で印刷されたウェブWに相当する印刷物を検紙用として数枚外部に排出作業を開始する。すなわち、制御装置102は、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚でウェブWに印刷された印刷物が裁荷装置141に到達したとき、搬送切替装置133を作動し、印刷物を外部へ排出する。そして、ステップS15に移行する。
【0089】
ステップS15にて、動作不良検出部111は、デジタルインキポンプ72bが第1復帰動作した後に、再び、デジタルインキポンプ72bが動作不良であるか否かを判定する。ここで、動作不良検出部111は、デジタルインキポンプ72bが動作不良でないと判定(No)、つまり、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消したと判定すると、ステップS17にて、制御装置102は、搬送切替装置133を制御し、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消され、適正なインキ膜厚にて印刷が開始されたウェブWに相当する印刷物が、裁荷装置141に到達したタイミングで、印刷物の外部への排出を停止する。このとき、制御装置102は、検紙用の印刷物を外部に排出したことを警報装置131によりオペレータに知らせる。
【0090】
一方、動作不良検出部111は、デジタルインキポンプ72bが動作不良であると判定(Yes)、つまり、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消していないと判定すると、ステップS18にて、制御装置102は、警報装置131を作動し、デジタルインキポンプ72bの動作不良が継続していることをオペレータに知らせる。そして、ステップS19にて、第2復帰動作制御部122は、ポンプ駆動装置14を制御し、デジタルインキポンプ72bに第2復帰動作を実行させてステップS20に移行する。
【0091】
また、ステップS15にて、動作不良検出部111は、デジタルインキポンプ72bが動作不良であると判定(Yes)すると、ステップS21にて、ステップS21にて、制御装置102は、搬送切替装置133を制御し、デジタルインキポンプ72bが第2復帰動作中の、インキ供給が一定期間途絶えたインキ膜厚で印刷されたウェブWに相当する印刷物を不良紙として外部に排出する。そして、ステップS22にて、制御装置102は、紙面検査装置132を制御し、印刷品質を判定する判定値を低下させることで、印刷品質の判定基準を緩和させる。また。ステップS23にて、制御装置102は、印刷濃度調整装置103を制御し、印刷濃度調整装置103による印刷濃度の制御量を抑制する。そして、ステップS20に移行する。
【0092】
ステップS20にて、動作不良検出部111は、デジタルインキポンプ72bが第2復帰動作した後に、再び、デジタルインキポンプ72bが動作不良であるか否かを判定する。ここで、動作不良検出部111は、デジタルインキポンプ72bが動作不良でないと判定(No)、つまり、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消したと判定すると、ステップS24にて、デジタルインキポンプ72bが第2復帰動作中の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚で印刷されたウェブWに相当する印刷物につき、不良紙として外部への排出を停止する。
【0093】
一方、ステップS20にて、動作不良検出部111は、デジタルインキポンプ72bが動作不良であると判定(Yes)、つまり、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消していないと判定すると、ステップS25にて、制御装置102は、警報装置131を作動し、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消されないことを警報装置131によりオペレータに知らせる。そして、ステップS26にて、制御装置102は、印刷濃度調整装置103を制御し、動作不良でない作動するデジタルインキポンプ72bを用いて印刷濃度制御を実行する。すなわち、デジタルインキポンプ72bは、ウェブWの幅方向に並んだ4個のデジタルインキポンプから構成される。そのため、印刷濃度調整装置103は、1個のデジタルインキポンプ72bが動作不良になると、残りの3個のデジタルインキポンプ72bによるインキ供給量を増加して印刷濃度を調整する。
【0094】
また、ステップS27にて、制御装置102は、紙面検査装置132を制御し、印刷品質を判定する判定値を低下させることで、印刷品質の判定基準を緩和させる。
【0095】
図5は、インキ供給制御における第1復帰動作を表すタイムチャート、
図6は、インキ供給制御における第2復帰動作を表すタイムチャートである。
【0096】
図5に示すように、デジタルインキポンプ72bは、予め設定された所定の吐出周期Tで、時間t1、時間t2、時間t3にて、インキを吐出する。そのため、インキ元ローラ71a,71bは、所定の周期で、時間t1、時間t2、時間t3にて、デジタルインキポンプ72bからインキが受け渡される。そして、時間t4にて、デジタルインキポンプ72bの動作不良が発生すると、デジタルインキポンプ72bは、この時間t4にて、インキを吐出しない。すると、時間t4から第1時間T1の間に、デジタルインキポンプ72bの第1復帰動作を実行させる。この第1時間T1は、時間t4から時間t5までのデジタルインキポンプ72bの吐出周期Tと同じ時間である。そして、第1復帰動作によりデジタルインキポンプ72bの動作不良が解消されると、時間t5にて、デジタルインキポンプ72bは、インキを吐出する。
【0097】
一方、
図6に示すように、時間t4にて、デジタルインキポンプ72bの動作不良が発生し、時間t4から第1時間T1の間に、デジタルインキポンプ72bの第1復帰動作を実行しても、時間t5にて、デジタルインキポンプ72bの動作不良が解消されないことがある。この場合、時間t5から第2時間T2の間に、デジタルインキポンプ72bの第2復帰動作を実行させる。この第2時間T2は、時間t5から時間t7までのデジタルインキポンプ72bの吐出周期Tの2倍の時間である。そして、第2復帰動作によりデジタルインキポンプ72bの動作不良が解消されると、時間t7にて、デジタルインキポンプ72bは、インキを吐出する。
【0098】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係るインキ供給装置は、インキを吐出可能なデジタルインキポンプ72a,72bと、デジタルインキポンプ72a,72bの動作不良を検出する動作不良検出部111と、新聞用オフセット輪転印刷機Pが起動した後の印刷中にデジタルインキポンプ72a,72bの動作不良が検出されるとデジタルインキポンプ72a,72bの動作不良を解消する復帰動作を行う復帰動作制御部112とを備える。
【0099】
第1の態様に係るインキ供給装置によれば、新聞用オフセット輪転印刷機Pによる印刷中に、デジタルインキポンプ72a,72bの動作不良を解消する復帰動作を行うことから、印刷開始前にデジタルインキポンプ72a,72bの復帰動作を行う必要がない。そのため、印刷機起動時間が長くなることはなく、また、印刷中におけるプランジャ96の動作不良を早期に解消して不良紙の低減を図ることができる。
【0100】
第2の態様に係るインキ供給装置は、復帰動作制御部112は、予め設定された所定の第1時間だけ第1復帰動作を行う第1復帰動作制御部121と、第1時間だけ第1復帰動作を行っても動作不良が解消されないときに第1時間より長い第2時間だけ第2復帰動作を行う第2復帰動作制御部122とを有する。これにより、デジタルインキポンプ72a,72bの動作不良に対して、段階的に復帰動作を行うことから、デジタルインキポンプ72a,72bの復帰動作時間を短縮することができる。また、新聞用オフセット輪転印刷機Pを停止させることなく、デジタルインキポンプ72a,72bの動作不良を解消することができる。
【0101】
第3の態様に係るインキ供給装置は、デジタルインキポンプ72a,72bは、円筒形状をなして周方向に間隔を空けて吸入口97aと吐出口97bが設けられるバレル97と、インキ貯留部96aを有してバレル97の内部でバレル97の周方向に沿って回転自在に支持されると共にバレル97の軸方向に移動自在に支持されるプランジャ96とを有し、プランジャ96は、所定角度回転したとき、吸入口97aと吐出口97bがインキ貯留部96aに交互に連通させるものであり、第1復帰動作制御部121は、印刷品質に影響を与えない範囲の時間でインキ貯留部96aが吸入口97aと吐出口97bを連通しない回転範囲でプランジャ96の周方向往復回動動作を行う。これにより、第1復帰動作によりデジタルインキポンプ72a,72bの動作不良を印刷品質に影響を与えないで解消することで、不良紙であるウェブWの発生を抑制することができる。
【0102】
第4の態様に係るインキ供給装置は、デジタルインキポンプ72a,72bの動作不良が検出されると、検紙用の印刷物を排紙するための検紙用排紙開始信号を出力し、第1復帰動作制御部121が第1復帰動作を行うことで動作不良が解消されたときに検紙用の印刷物の排紙を終了するための検紙用排紙終了信号を出力する。これにより、デジタルインキポンプ72a,72bが第1復帰動作で動作不良が解消されたとき、検紙用の印刷物を排紙することで、オペレータは、印刷物の印刷品質を確認することができ、不良紙である印刷物の混入を抑制することができる。
【0103】
第5の態様に係るインキ供給装置は、復帰動作制御部112の制御内容を表示する警報装置(表示装置)131を有し、警報装置131は、検紙用排紙開始信号が入力されると、印刷物を排紙することを警報(表示)する。これにより、オペレータは、検紙用の印刷物が排紙されたことを知ることができ、印刷物の検紙を確実に実施することかできる。
【0104】
第6の態様に係るインキ供給装置は、第2復帰動作制御部122は、印刷品質に影響を与えない範囲の時間を超えてプランジャ96の周方向往復動作を行う。これにより、デジタルインキポンプ72a,72bの動作不良を適切に解消することができる。
【0105】
第7の態様に係るインキ供給装置は、第2復帰動作制御部122が第2復帰動作を行うと、不良紙として印刷物の排紙を開始するための不良紙排紙開始信号を出力し、第2復帰動作制御部122が第2復帰動作を行うことで動作不良が解消されたときに不良紙としての印刷物の排紙を終了するための不良紙排紙終了信号を出力する。これにより、第2復帰動作中の、インキ供給が一定時間途絶えたインキ膜厚で印刷されたウェブWに相当する印刷物を排紙することで、不良紙であるウェブWの混入を抑制することができる。
【0106】
第8の態様に係るインキ供給装置は、第2復帰動作制御部122が第2復帰動作を行うと、印刷物の印刷品質を判定する判定値を低下させるための判定値低下信号を出力し、第2復帰動作制御部122が第2復帰動作を行うことで動作不良が解消されたときにウェブWの印刷品質を判定する判定値を第2復帰動作前の値に戻すための判定値復帰信号を出力する。これにより、不良紙の増加を抑制することができる。
【0107】
第9の態様に係るインキ供給装置は、第2復帰動作制御部122が第2復帰動作を行うと、印刷濃度の制御量を抑制させるための印刷濃度調整量低下信号を出力し、印刷濃度を調整する印刷濃度調整装置103を有し、印刷濃度調整装置103は、印刷濃度調整量低下信号が入力されると、印刷濃度の制御量を抑制し、第2復帰動作制御部122が第2復帰動作を行うことで動作不良が解消されると、印刷濃度の制御量を復帰させるための印刷濃度調整量復帰信号を出力し、印刷濃度の制御量を復帰する。これにより、デジタルインキポンプ72a,72bの第2復帰動作により一時的に印刷濃度が低下するものの、動作不良が解消されると、印刷濃度が適正値に戻ることとなり、印刷濃度調整装置103による過剰な印刷濃度調整を抑制することで、不良紙の増加を抑制することができる。
【0108】
第10の態様のインキ供給方法は、デジタルインキポンプ72a,72bによりインキを吐出するステップと、デジタルインキポンプ72a,72bの動作不良を検出するステップと、新聞用オフセット輪転印刷機Pが起動した後の印刷中にデジタルインキポンプ72a,72bの動作不良を検出するとデジタルインキポンプ72a,72bの動作不良を解消する復帰動作を行うステップとを有する。これにより、印刷機起動時間が長くなることはなく、また、印刷中におけるプランジャ96の動作不良を早期に解消して不良紙の低減を図ることができる。
【0109】
第11の態様に係る印刷機は、ウェブ(印刷媒体)Wを供給する給紙装置Rと、ウェブWに印刷を行う印刷装置Uと、印刷済のウェブWを縦裁断して重ねると共に搬送経路および経路長を変更するウェブパス装置Dと、縦裁断して重ねられたウェブWを縦折りした後に横断裁して折帖を形成する折機Fとを備え、印刷装置Uは、インキ供給装置51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54bを有する。これにより、印刷機起動時間が長くなることはなく、また、印刷中におけるプランジャ96の動作不良を早期に解消して不良紙の低減を図ることができる。
【0110】
なお、上述した実施形態では、インキ供給装置を新聞用オフセット輪転印刷機に適用して説明したが、別の印刷機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0111】
21,22,23,24 スタック
31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34b ブランケット胴
41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44b 版胴
51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54b インキ供給装置
61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64b 湿し装置
71a,71b インキ元ローラ(インキローラ)
72a,72b,72b1,72b2,72b3,72b4 デジタルインキポンプ
73a,73b インキ受渡しローラ(インキローラ)
74a,74b インキ練りローラ(インキローラ)
75a,75b インキ往復ローラ(インキローラ)
76a,76b インキ練りローラ(インキローラ)
77a,77b インキ往復ローラ(インキローラ)
78a,78b,79a,79b インキ着けローラ(インキローラ)
81a,81b 水ライダローラ
82a,82b 水往復ローラ
83a,83b 水着けローラ
84a,84b スプレーノズル
91 ハウジング
92 インキ供給部
93 インキ吐出部
94 駆動モータ
95 クランクレバー
96 プランジャ
97 バレル
98 ホース
99 インキレール
101 回転検出センサ
102 制御装置
103 印刷濃度調整装置
104 ポンプ駆動装置
111 動作不良検出部
112 復帰動作制御部
121 第1復帰動作制御部
122 第2復帰動作制御部
131 警報装置(表示装置)
132 紙面検査装置
133 搬送切替装置
140 発送設備
141 裁荷装置
142 キャリア装置
143 カウンタスタッカ
144 配送コンベア
151 排紙コンベア
152 計数センサ
153 発送トラック
P 新聞用オフセット輪転印刷機(印刷機)
PC 印刷制御装置
R 給紙装置
R1~R5 給紙ユニット
I インフィード装置
I1~I5 インフィードユニット
U 印刷装置
U1~U5,U11~U52 印刷ユニット
D ウェブパス装置
D1 ウェブパスユニット
F 折機
F1 折ユニット