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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186392
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】貼付剤支持体、及び貼付剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
A61L15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094582
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】桜庭 真依子
(72)【発明者】
【氏名】日下部 純一
(72)【発明者】
【氏名】小松 隆志
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AA03
4C081BB02
4C081BB09
4C081CA162
4C081DA02
4C081DC02
(57)【要約】
【課題】粘着層の塗工時の浸み出しが少なく、高い投錨性を持ち、また、支持体が層間剥離することなく、さらには肌違和感を生じにくい貼付剤支持体、及びそれを含む貼付剤の提供。
【解決手段】ストライクスルーの値が0.1sec/cc以上2000ec/cc以下である不織布を含むことを特徴とする、貼付剤支持体、及び該貼付剤支持体の少なくとも片面に、薬効成分を含有する粘着層を備えている、貼付剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライクスルーの値が0.1sec/cc以上2000sec/cc以下である不織布を含むことを特徴とする、貼付剤支持体。
【請求項2】
前記不織布の比表面積(m2/g)が0.05m2/g以上4.5m2/g以下である、請求項1に記載の貼付剤支持体。
【請求項3】
前記不織布が、繊維径が0.1μm以上4μm未満の繊維で構成される層iと、繊維径が4μm以上30μm以下の繊維で構成される層iiを含む、少なくとも2層以上で構成される、請求項1又は2に記載の貼付剤支持体。
【請求項4】
前記不織布が、前記層iiを2層以上含み、かつ、前記層iが、前記層iiの2層の中間層として存在している、請求項3に記載の貼付剤支持体。
【請求項5】
前記層iiが、連続長繊維で構成されている、請求項3又は4に記載の貼付剤支持体。
【請求項6】
前記層iがメルトブロウン不織布である、請求項3~5のいずれか1項に記載の貼付剤支持体。
【請求項7】
前記不織布が熱的に接着し、一体化している、請求項1~6のいずれか1項に記載の貼付剤支持体。
【請求項8】
前記不織布の熱的に接着している部分の面積(接着面積)が0%以上30%以下である、請求項7に記載の貼付剤支持体。
【請求項9】
前記不織布がポリエステル系繊維を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の貼付剤支持体。
【請求項10】
前記不織布の通気度が2250cc/cm2/s以上250cc/cm2/s以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の貼付剤支持体。
【請求項11】
前記不織布の平均流量孔径が3μm以上45μm以下であり、かつ、最大孔径が10μ以上90μm以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の貼付剤支持体。
【請求項12】
前記不織布の嵩密度が0.13g/cm3以上0.85g/cm3以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載の貼付剤支持体。
【請求項13】
前記不織布のシール強度が3.0N/50mm以上である、請求項1~12のいずれか1項に記載の貼付剤支持体。
【請求項14】
前記不織布の少なくとも片面に、ポリエステルフィルムが積層している、請求項1~13のいずれか1項に記載の貼付剤支持体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の貼付剤支持体の少なくとも片面に、薬効成分を含有する粘着層を備えている、貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤支持体、及び貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
貼付剤は、薬物を経皮的に体内へ吸収し、局所的に又は全身へ薬効を作用させることができる薬品であり、パップ剤、プラスター剤、パッチ剤、或いは医療用粘着テープ等として広く知られている。これらの貼付剤は薬物を含有する粘着剤を、種々の支持体片面に塗布・複合した層構造を有している。
【0003】
貼付剤用支持体に求められる役割は、主に次の5つである。まず、第1に、薬物を含む粘着層が支持体裏面並びに支持体によって被覆される範囲外に滲出することを防ぐことである。第2に、ライナーや人体から剥離する際に粘着剤が非支持体側に残留しないよう十分な投錨性を有することである。このため支持体には液バリア性と高い剥離強度の両立が求められる。第3に、外気に薬物を揮発・放散させることなく長時間断続的かつ定量的薬効成分を徐放することである。第4に、長時間の貼付において肌違和感が少ないことである。そして第5に、支持体は薬剤との化学的・物理的な吸着・反応により薬効や粘着剤等の成分に対して作用したり、当該作用が生じることによって薬効が低減したり、副作用を引き起こしてはならないことである。したがって、貼付剤用支持体には、選択される種々の薬物耐性を考慮した素材が求められる。
【0004】
現在用いられている貼付剤支持体としては、一般に樹脂フィルム、微多孔フィルム、不織布やこれらの複合シートなどが挙げられる。
【0005】
例えば、樹脂フィルムを支持体とした貼付剤として、以下の特許文献1には、薬剤耐性に優れたポリエステルフィルムを支持体とした貼付剤が開示されている。
【0006】
また、以下の特許文献2には、緻密構造の異なる2種の不織布を積層した支持体を有することで、テープ支持体として使用した際に、粘着層の滲出が少なく、不織布の空隙層をある程度担保した、肌違和感の少ない粘着テープ又はシート支持体が開示されている。
【0007】
また、以下の特許文献3には、貼付剤用の不織布支持体として、不織布とフィルムを組み合わせた複合支持体が開示されている。特許文献3に記載された貼付剤用支持体は、熱変形性の良好な繊維長15mm以下のポリエステル繊維(未延伸ポリエステル繊維ウェブ、及び延伸ポリエステル繊維ウェブ)からなるポリエステル不織布層とポリエステルフィルムとが結着された支持体であり、投錨性を向上させ適度な空隙を有することで肌違和感を大きく低減している。
【0008】
また、以下の特許文献4では、特許文献3に記載された複合不織布に用いられる繊維の繊維長を20mm以上とし、さらに不織布層のみの厚さを100μm以上とすることで、加工時及び貼付剤としての使用時における粘着層の平面方向における滲出を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58-164506号公報
【特許文献2】特開2005-194231号公報
【特許文献3】特開2009-269821号公報
【特許文献4】特開2016-88855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の支持体は、樹脂フィルムのため投錨性が不十分であり、皮膚等への粘着層残りが発生する問題があった。
また、特許文献2に記載された支持体は、貼付剤として使用した際に、異なる2層の不織布が層間剥離し、非支持体側に粘着層が残留するといった問題や、目止め剤を使用していることで薬効成分が吸着されて薬効が低下するといった問題があった。
また、特許文献3に記載された支持体は、短繊維のため使用時に毛羽立ちが生じやすく、ハンドリング性に劣り、また、繊維が脱落しやすく、支持体平面方向へ繊維と共に粘着層が浸み出してしまうといった問題があった。
また、特許文献4に記載された貼付剤は、支持体の厚みの効果によって粘着層の非滲出性が担保される一方、毛細管現象により不織布層厚み方向への粘着層の浸み出しは大きくなることから、粘着層をより多く使用する必要があり、その結果、不織布と粘着層が混在する層が厚くなり、不織布の空隙が損なわれ、貼付剤が硬くなることで肌違和感を生じやすいといった問題があった。
【0011】
以上の従来技術の問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、粘着層の塗工時の浸み出しが少なく、高い投錨性を持ち、また、支持体が層間剥離することなく、さらには肌違和感を生じにくい貼付剤支持体及びそれを含む貼付剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意研究し実験を重ねた結果、ストライクスルーの値が特定範囲にある不織布を含む貼付剤支持体であれば前記課題を解決することができることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]ストライクスルーの値が0.1sec/cc以上2000sec/cc以下である不織布を含むことを特徴とする、貼付剤支持体。
[2]前記不織布の比表面積(m2/g)が0.05m2/g以上4.5m2/g以下である、前記[1]に記載の貼付剤支持体。
[3]前記不織布が、繊維径が0.1μm以上4μm未満の繊維で構成される層iと、繊維径が4μm以上30μm以下の繊維で構成される層iiを含む、少なくとも2層以上で構成される、前記[1]又は[2]に記載の貼付剤支持体。
[4]前記不織布が、前記層iiを2層以上含み、かつ、前記層iが、前記層iiの2層の中間層として存在している、前記[3]に記載の貼付剤支持体。
[5]前記層iiが、連続長繊維で構成されている、前記[3]又は[4]に記載の貼付剤支持体。
[6]前記層iがメルトブロウン不織布である、前記[3]~[5]のいずれかに記載の貼付剤支持体。
[7]前記不織布が熱的に接着し、一体化している、前記[1]~[6]のいずれかに記載の貼付剤支持体。
[8]前記不織布の熱的に接着している部分の面積(接着面積)が0%以上30%以下である、前記[7]に記載の貼付剤支持体。
[9]前記不織布がポリエステル系繊維を含む、前記[1]~[8]のいずれかに記載の貼付剤支持体。
[10]前記不織布の通気度が2250cc/cm2/s以上250cc/cm2/s以下である、前記[1]~[9]のいずれかに記載の貼付剤支持体。
[11]前記不織布の平均流量孔径が3μm以上45μm以下であり、かつ、最大孔径が10μ以上90μm以下である、前記[1]~[10]のいずれかに記載の貼付剤支持体。
[12]前記不織布の嵩密度が0.13g/cm3以上0.85g/cm3以下である、前記[1]~[11]のいずれかに記載の貼付剤支持体。
[13]前記不織布のシール強度が3.0N/50mm以上である、前記[1]~[12]のいずれかに記載の貼付剤支持体。
[14]前記不織布の少なくとも片面に、ポリエステルフィルムが積層している、前記[1]~[13]のいずれかに記載の貼付剤支持体。
[15]前記[1]~[14]のいずれかに記載の貼付剤支持体の少なくとも片面に、薬効成分を含有する粘着層を備えている、貼付剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明の貼付剤支持体は、薬物を含む粘着層が支持体裏面や支持体によって被覆される範囲外へ浸み出すことを防ぎ、高い投錨性を持ち、不織布の空隙を損なうことなく、また、肌違和感を生じにくい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の1の実施形態は、ストライクスルーの値が0.1sec/cc以上2000sec/cc以下である不織布を含むことを特徴とする、貼付剤支持体である。
【0016】
ストライクスルー法によって測定される液浸透時間が0.1sec/cc以上であれば、不織布裏面への粘着層の浸み出しを防ぎやすくなり、同測定による液浸透時間が2000sec/cc以下であれば、粘着層は支持体の繊維ネットワーク内に浸透しやすく、投錨効果を発揮しやすくなる。すなわち、ストライクスルーで測定される液浸透時間を適切な範囲に設計した不織布は、貼付剤支持体として貼付剤粘着層の浸み出しが少なく、高い投錨性を有し、また不織布の空隙構造を損なわず、肌違和感を生じにくいといった効果を発揮することができる。ストライクスルー法によって測定される液浸透時間が2000sec/ccより大きいと、粘着層と不織布支持体を一体化させた際に、粘着層が不織布繊維の間隙に入り込みにくくなり、投錨性が低下しやすくなる。また、ストライクスルー法によって測定される液浸透時間が0.1sec/cc未満であると、粘着層が支持体厚み方向に浸みだしやすくなる、薬効が低下する、貼付剤としての加工性が著しく低下するといった傾向があり、また、不織布の繊維の間隙に粘着層が過剰に浸潤することで、空隙が損なわれ、貼付剤として使用した際に肌違和感を生じやすくなる。上記の観点から、ストライクスルーの値は0.1sec/cc以上2000sec/cc以下であり、10sec/cc~1000sec/ccであることが好ましく、30sec/cc~400sec/ccであることがより好ましい。
【0017】
本実施形態の貼付剤支持体を構成する不織布の、比表面積は0.05m2/g以上であることが好ましく、0.10m2/g以上がより好ましく、0.15m2/g以上がさらに好ましい。比表面積が0.05m2/g以上であれば、粘着層が不織布繊維の間隙に均一に入り込みやすく、かつ、使用時の浸み出しを防ぎ、面全体に均一な粘着層を形成しやすい。単位面積当たりの表面積の好ましい値に特に上限はなく、比表面積が大きいほど不織布繊維表面と粘着剤の接面積が大きくなり、投錨効果をより大きく発揮することができるが、4.5m2/gが技術的な限界である。
【0018】
本実施形態の貼付剤支持体を構成する不織布は、単層からなる不織布、又は、2層以上の不織布が積層されてなる積層不織布のいずれであってもよい。
【0019】
本実施形態の貼付剤支持体を構成する不織布の製造方法は特に限定されず、例えばスパンボンド法、乾式法、湿式法等とすることができる。スパンボンド法を用いる場合、ウェブの均一性を向上させるために、コロナ設備などにより繊維を帯電させる方法や、平板状の分散板などのような気流を制御する装置を用いてエジェクターの噴出し部分の気流の速度分布を調整するなどして、繊維を開繊させた後にウェブを吹き付けウェブの飛散を抑制しながら捕集面に積層することが好ましい。また、不織布のストライクスルーの値を適切な範囲とするために、紡糸口金から牽引部入口までの糸温度の変化量を適正範囲で制御することが好ましく、具体的には糸吐出部分から牽引部直前の糸温度差は、150℃~270℃の範囲とすることが好ましい。これにより、積層ウェブの結晶性が向上し、ウェブを一体化させる工程で嵩高さを適切に維持し、ストライクスルーの値を適正範囲に収めることが可能となる。
【0020】
また、湿式法を用いる場合、繊維を水中に分散して均一な抄紙スラリーとし、この抄紙スラリーを円網式、長網式、傾斜式等の抄紙方式の少なくとも1つを有する抄紙機を用いて、繊維ウェブを得る方法が好ましい。この時繊維ウェブから不織布を用いて製造する方法としては、水流交絡法、ニードルパンチ法、バインダー接着法、サーマルボンド法を用いることができるが、特にサーマルボンド法を用いることが好ましく、バインダー成分による薬効の損失や変性を抑制することができる。
また、極細繊維不織布層を含む場合、その製法は、好ましくは乾式法、湿式法等の製法、エレクトロスピニング、メルトブロウン法、遠心紡糸法等とすることができる。この際、極細繊維不織布層を容易かつ緻密に形成できるという観点から、特に好ましくはメルトブロウン法で形成される。また、極細繊維不織布層を形成するために、叩解、部分溶解等による割繊、フィブリル化をさせた繊維を用いてもよい。
【0021】
本実施形態の貼付剤支持体を構成する不織布は、繊維径0.1μm以上4μm未満の繊維で構成される層iと、繊維径が4μm以上30μm以下の繊維で構成される層iiとを含む、少なくとも2層以上で構成されることが好ましい。前記の積層構造を有する不織布は、機械強度に優れ、フィルムや粘着層に対する投錨性に優れる。また、層iiの緻密かつ微細な二次元ネットワーク構造によって非滲出性が高まり、層iの有する空隙を完全に損なうことがないため、皮膚貼付時の肌違和感を低減しやすい。尚、本明細書において、用語「極細繊維」とは、上記の0.1μm以上4μm未満の範囲の繊維径を有する繊維を意図している。
【0022】
ところで、層iは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記極細繊維以外の繊維を含有してもよいが、典型的には上記極細繊維のみからなることが好ましい。繊維径が4μm未満であれば、不織布の繊維間隙が大きくなりすぎず、繊維と粘着層の接触表面積が適切に保てるため、結果として投錨性に優れた貼付剤用不織布となる。他方、繊維径が0.1μm以上であると、繊維を比較的容易に形成でき、且つ形成された繊維が、表面摩擦等で毛羽立ったり、糸くずを作ったりしない傾向にある。この意味で、層iの繊維径は、より好ましくは0.1~3.8μm、さらに好ましくは0.2~3.0μm、よりさらに好ましくは0.3~2.5μmである。尚、本明細書で記載する繊維径は、マイクロスコープによる繊維直径の測定によって評価できる。
【0023】
本実施形態の貼付剤支持体を構成する不織布は、長繊維不織布及び短繊維不織布のいずれであってもよく、又は長繊維と短繊維とが混合して構成されていてもよいが、機械的強度の観点、並びに毛羽立ちによる貼付剤支持体としての摩耗・接触の不快感や、貼付剤加工時の繊維脱落のしにくさという観点から、長繊維不織布が好ましい。尚、本明細書における「長繊維不織布」及び「短繊維不織布」の定義は、JIS L 0222:2001に従う。
【0024】
また、本実施形態の貼付剤支持体を構成する不織布は、前記層iの不織布が、前記層iiの不織布2層の中間層として存在していることが好ましい。前記積層構造を有する不織布は、機械強度により優れ、層iiのいずれか片面にフィルムを複合する際や、貼付剤として粘着層を塗工等で一体化させる際に、接着面に大きな空隙を有していることから、不織布の繊維の間隙に粘着剤やフィルムが三次元的に浸潤しやすく、より優れた投錨性を発揮する傾向にあり、さらには当該投錨性の向上より、支持体平面方向における薬剤の滲出の防止もしやすい傾向にあり、粘着層の体積減少を阻止し、薬効成分を定量保持することが容易である。
【0025】
複数の不織布層を積層して積層不織布を形成する方法としては、例えば、粒子状又は繊維状の接着剤により一体化させる方法、熱的結合による一体化による方法、高速水流を噴射して三次元交絡させる方法等が挙げられる。積層不織布を一体化する工程は、各層をそれぞれ製造した後に積層しても、同一工程内で積層してもよく、積層方法やその順序については特に限定されない。但し、本実施形態の不織布においてはストライクスルーによって測定される液浸透時間の値をコントロールし、投錨性・非滲出性を制御するという点から、製造工程における間接的な熱の付加、例えば、積層工程における加熱空気の影響の有無などが繊維の結晶化度や三次元的な構造を変化させることを鑑みて、同一工程内で一体化されることが好ましい。
【0026】
本実施形態の貼付剤支持体を構成する不織布が積層不織布である場合、各層の繊維が熱的に接着・一体化されていることが好ましい。熱的な接着による一体化は、不織布の引張強度と曲げ柔軟性、及び突き刺し強度を維持し、耐熱安定性を維持することができるという観点や、化学的結合と比較して薬効成分や粘着剤と反応しにくいという観点から好ましい。熱的接着を形成させる方法としては、熱エンボスによる一体化(熱エンボスロール方式)、及び高温の熱風による一体化(エアースルー方式)が挙げられ、特に、本実施形態の不織布においては、各層の層間剥離を防ぎつつ投錨性を担保する観点から、熱エンボスによる一体化が好ましい。熱エンボスによる一体化は、例えば不織布を構成する樹脂の融点よりも50~120℃の低い温度で、線圧100~1000N/cmで、行うことができる。熱エンボスによる一体化における線圧が100N/cm以上であると、十分な接着を得て十分な強度を発現することができ、他方、1000N/cm以下であると、繊維の変形が小さく、見掛け密度を保持するため、所望の効果が十分に発揮される。
【0027】
本実施形態の貼付剤支持体を構成する不織布は、不織布面積に対する熱的に接着している部分の面積の比率(以下、熱接着面積率、単に接着面積ともいう。)が0%以上30%以下であることが好ましく、0%以上22%以下がより好ましく、0%以上15%以下がさらに好ましい。熱接着面積率は、エンボスの凸部面積、形状、ロール表面粗度等によって決定される。熱接着面積率が変化することにより、孔径の均一性が変化しこれによりストライクスルー法によって測定される液浸透時間がコントロールされる。接着面積が30%以下の場合、接着時の繊維の溶融面積が小さくなることで繊維集合体が形成する三次元的なネットワーク構造が保たれ、孔径を適切な範囲に制御することができ、また糸融着による比表面積の減少の抑制が可能なため浸透性と投錨性を両立することが可能である。
尚、本発明内で「熱的に接着している」とは、布表面の繊維構造が破壊され、樹脂フィルム化している部分と定義する。
【0028】
ここで使用される熱ロールは、エンボスや梨地柄のような表面が凹凸性のある金属ロールであっても、平滑性を有するフラットロールであってもよい。表面凹凸性のあるロールの表面柄については、ポイント柄、織目柄、梨地柄、矩形柄、線柄等、繊維同士を熱により結合できるものであれば、特に限定しない。
【0029】
また、積層不織布が一体化されたのち、意匠性や表面粗度のコントロールのために、カレンダー加工等が施されていても構わない。
【0030】
本実施形態の貼付剤支持体を構成する不織布を形成する樹脂は、貼付剤支持体として、薬効薬物、粘着層の塗工時に使用される溶剤、粘着剤成分等に対して耐性を持つという点から、ポリエステル系樹脂が好ましい。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等)又はその誘導体や、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が好適に使用可能である。また、所望の効果を阻害しない程度に、ポリオレフィン系樹脂、他のポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂が添加されてもよく、また、顔料、酸化チタン、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤等の添加剤が添加されてもよい。
【0031】
本実施形態の貼付剤支持体を構成する不織布が積層不織布である場合、各層を形成する樹脂は、同じ物質でも、異なる物質でもよいが、積層不織布をより均一に形成し、フィルムや粘着層と均一に一体化させるためには、同じ物質であることが好ましい。
【0032】
本実施形態の貼付剤支持体を構成する不織布の目付は4.0g/m2以上250g/m2未満であることが好ましい。目付が250g/m2未満であれば、目付が大き過ぎず繊維空隙が十分に確保される傾向にあり、粘着層の投錨性に優れた貼付剤とすることができる。他方、不織布の目付が4.0g/m2以上であれば、機械強度を高くでき、製造時に掛かる張力などに対して耐性が強く、また塗布した際の裏抜けが抑制できるという点で取扱がしやすい傾向にある。
【0033】
本実施形態の貼付剤支持体を構成する不織布の地合CV値(地合変動係数)は、0以上2.7以下であることが好ましい。地合CV値が2.7以下である場合、貼付剤支持体として均一な薬剤徐放性を保持することが可能である。
【0034】
本実施形態の貼付剤支持体を構成する不織布の平均流量孔径は、3~45μmが好ましく、また、最大孔径は、10~90μmであることが好ましい。平均流量孔径が3~45μmである場合、貼付剤支持体として一体化した際に、粘着層中に含まれる薬剤を外部へ過剰に揮発・放散させることなく適切な薬剤徐放性を保ちやすい。また、最大孔径が10~90μmである場合、粘着層が不織布裏面に浸み出すことを抑制しやすい。
【0035】
本実施形態の貼付剤支持体を構成する不織布の通気度は、2cc/cm2/s以上250cc/cm2/s以下であることが好ましい。2cc/cm2/s以上である場合、貼付剤支持体として粘着層と一体化した際に粘着層中に含まれる薬剤を外部へ過剰に揮発・放散させることなく、適切な薬剤徐放性を保つことができる。他方、250cc/cm2/s以下である場合、不織布の空隙が損なわれず、貼付時の肌違和感を抑制することができる。
【0036】
本実施形態の貼付剤支持体を構成する不織布の嵩密度は0.13g/cm3以上0.85g/cm3以下であることが好まし。不織布の嵩密度が、0.13g/cm3以上であれば、粘着層やフィルム等との一体化の際に浸み出しが生じにくく、他方、0.85g/cm3であれば、貼付時の肌違和感を軽減できる傾向にある。
【0037】
本実施形態の貼付剤支持体を構成する不織布の投錨性の良さを示す指標としては、シール剥離強度がある。シール強度は3.0N/50mm以上であることが好ましく、5.0N/50mm以上がより好ましく、11N/50mmがさらに好ましい。
【0038】
本実施形態の貼付剤支持体は、不織布の少なくとも片面に、ポリエステルフィルムを積層していることが好ましい。ポリエステルフィルムを積層することによって、更なる薬剤の揮発・放散の低減が可能となり、また、不織布の毛羽立を抑制し、肌ざわりに優れる。ポリエステルフィルムとしては、不織布との接着性等から、少なくとも1軸延伸されたポリエステルフィルムであるのが好ましい。
【0039】
本発明の他の実施形態は、前記貼付剤支持体の少なくとも片面に、薬効成分を含有する粘着層を備えている、貼付剤である。
貼付剤には、薬剤や薬効成分として、また、粘着剤として、公知のものを用いることができる。
【0040】
例えば、本実施形態の貼付剤に用いる薬剤又は薬効成分は、経皮吸収性を有するものが好ましく、局所性薬物や全身性薬物のいずれであってもよい。より具体的には、コルチコステロイド類、鎮痛消炎剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌剤、抗真菌剤、ビタミン剤、冠血管拡張剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、性ホルモン、抗鬱剤、脳循環改善剤、制吐剤、抗腫瘍剤、生体医薬などの薬物を例示でき、これら薬物を1種類、又は2種類以上を併用することができる。
【0041】
また、粘着剤として、例えば、アクリル系重合体からなるアクリル系粘着剤;スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のゴム系粘着剤;シリコーンゴム、ジメチルシロキサンベース、ジフェニルシロキサンベース等のシリコーン系粘着剤;ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系粘着剤;酢酸ビニル-エチレン共重合体等のビニルエステル系粘着剤;ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、ジメチルフタレート等のカルボン酸成分とエチレングリコール等の多価アルコール成分からなるポリエステル系粘着剤等を例示することができ、粘着剤は1種類、又は2種類以上から構成されていてもよい。
【0042】
本実施形態の貼付剤は、前述の貼付剤支持体の片面に対して、薬物を含有する粘着剤溶液を塗布し、乾燥する方法や、離型紙上に粘着剤溶液を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した後に、粘着剤層を前述の支持体の不織布面に転写する方法によって製造することができる。
【実施例0043】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。特記がない限り、不織布において、長さ方向とはMD方向(マシン方向、製造ライン方法)であり、幅方向とは該長さ方向と垂直の方向である。
実施例、比較例の貼付剤用不織布について、以下の通りその特性を評価した。尚、本発明は原則的に下記方法により測定されるが、試験片のサイズを確保できない等、下記方法により測定できない事情がある場合は、適宜合理的な代替方法によって測定することが可能である。
【0044】
(1)ストライクスルー法による液浸透時間
ストライクスルー法による液浸透時間は、測定装置としてはLENZING TECHNIK社製の通液度測定器(ストライク・スルー時間測定器)型式:LISTERを用いて測定した。特定濾紙(INTEC CO.,LTD.社製 GRADE989 10cm角×1枚)の上に試験布(5cm角)を置き、その上に上記通液度測定器付属の通液検知電極を備えた通液検知プレートを置く。その後、試験布表面から25mmの高さのところで5mLの生理食塩液(大塚製薬株式会社製 日本薬局方 大塚生食注 塩化ナトリウム9g/1000mL)を25mL/3.3秒の速さで滴下した。滴下から生理食塩水が布表面を通過終了するまでの時間を通液度測定器で計測し、1mL通液速度[sec/cc]とした。
【0045】
(2)比表面積(m2/g)
不織布の比表面積(m2/g)は自動比表面積測定装置(ジェミニ2360:島津製作所製)を用い、BET多点法により測定した。吸着ガスとしては、純度99.99%のヘリウムガスを用いた。
【0046】
(3)目付(g/m2
JIS L-1906に規定の方法に従い、縦20cm×横25cmの試験片を、試料の幅方向1m当たり3箇所、長さ方向1m当たり3箇所の、計1m×1m当たり9箇所採取して質量を測定し、その平均値を単位面積当たりの質量に換算して求めた。
【0047】
(4)厚み(mm)
JIS L-1906に規定の方法に従い、幅1m当たり10箇所の厚みを測定し、その平均値を求めた。荷重は9.8kPaで行った。
【0048】
(5)平均繊維径(μm)
試料の各端部10cmを除いて、試料の幅20cm毎の区域から、それぞれ1cm角の試験片を切り取った。各試験片MD方向の断面について、マイクロスコープで繊維の直径を30点測定して、測定値の平均値(小数点第2位を四捨五入)を算出し、試料を構成する繊維の平均繊維径とした。尚、繊維径の異なる不織布層が積層された積層不織布については、各層ごとの平均繊維径を上記方法によって測定した。
【0049】
(6)見掛け密度(g/cm3
上記(3)にて測定した目付(g/m2)、上記(4)にて測定した厚み(μm)を用い、以下の式により算出した。
見掛け密度(g/cm3)=目付(g/m2)/厚み(μm)
【0050】
(7)通気度
JIS L1096 通気性A 法(フラジール形法)に規定の方法を用いて測定した。
【0051】
(8)開孔径分布(平均流量孔径及び最大流量孔径)
PMI社のパームポロメーター(型式:CFP-1200AEX)を用いた。測定には浸液にPMI社製のシルウィックを用い、試料を浸液に浸して充分に脱気した後、測定した。
本測定装置は、フィルターを試料として、表面張力が既知の液体にフィルターを浸し、フィルターの全ての細孔を液体の膜で覆った状態から、そのフィルターに圧力をかけ、液膜の破壊される圧力と液体の表面張力とから計算される細孔の孔径を測定する。計算には下記の数式を用いる。
d=C・r/P
{式中、d(単位:μm)はフィルターの孔径であり、r(単位:N/m)は、液体の表面張力であり、P(単位:Pa)は、その孔径の液膜が破壊される圧力であり、そしてCは定数である。}。
【0052】
ここで、液体に浸したフィルターにかける圧力Pを低圧から高圧に連続的に変化させた場合の流量(濡れ流量)を測定する。初期の圧力では、最も大きな細孔の液膜でも破壊されないので流量は0である。圧力を上げていくと、最も大きな細孔の液膜が破壊され、流量が発生する(バブルポイント)。さらに圧力を上げていくと、各圧力に応じて流量は増加する。最も小さな細孔の液膜が破壊されたときの圧力における流量が、乾いた状態の流量(乾き流量)と一致する。
【0053】
本測定装置による測定方法では、ある圧力における濡れ流量を、同圧力での乾き流量で除した値を累積フィルター流量(単位:%)と呼ぶ。累積フィルター流量が50%となる圧力で破壊される液膜の孔径を、平均流量孔径と呼ぶ。この平均流量孔径を、不織布の平均流量孔径とした。
【0054】
不織布の最大孔径は、不織布を上記フィルター試料として測定し、累積フィルター流量が50%の-2σの範囲、すなわち、累積フィルター流量が2.3%となる圧力で破壊される液膜の孔径とした。上記測定方法にて、各サンプルについて3点測定を行い、その平均値を最大孔径とした。
【0055】
(9)シール強度(投錨性)
JIS K6854-2に規定の方法を用い、剥離接着強さ、すなわち投錨性の指標としてシール強度を用いた。試料(不織布)の各端部10cmを除き、幅5cm×長さ20cmの試験片を、1m幅につき5箇所切り取り、アスクル社製クラフトテープを幅5cmx長さ15cmで貼付した。接着部分が12.5cmになるまで接着部分を剥がし、テープもしくは試料が破断するか、テープと試料が完全に剥離するまでMD方向に荷重を加え、MD方向の試験片の最大荷重時の強さの平均値を求めた。尚、本実施例においては、シール強度として3.0N/50mm以上を合格とした。
【0056】
(10)粘着層の浸み出し/べたつき
以下、実施例で得られた貼付剤用不織布に疑似膏体としてニチバン社製NW-15を片面に貼付し、当該不織布の幅方向20cmおきに縦1cmx横1cmの試験片を5つ作製した。これを60℃雰囲気下24時間のエイジング試験を行い、各試験片における粘着層の状態を観察及し、以下の評価基準で粘着層の浸み出し有無を評価した。
〇:5つ全ての試験片で厚さ方向の浸み出しがなく、貼付可能である
△:1つ以上の試験片で厚さ方向の浸み出しが若干あるが、貼付可能である
×:1つ以上の試験片で厚さ方向の浸み出しがあり、貼付不可能である。
【0057】
(11)貼付時の肌違和感
ニチバン社製NW-15を疑似膏体として当該不織布縦1cmx横1cmの試験片を作製した。これを肌へ貼付し、以下の観点で肌違和感を評価した。
〇:貼付時に肌へ追従し、違和感はない
△:貼付時に肌にやや追従するが、若干違和感がある
×:貼付時に肌に追従せず、違和感がある、又は剥がれる。
【0058】
[実施例1]
OCPを溶媒として用いて温度35℃で測定した溶液粘度(ηsp/c)が0.67(溶液粘度は温度35℃の恒温水槽中の粘度管で測定した。)であるポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で、フィラメント群を、紡糸速度4500m/分で紡糸した。この際、吐出部直下と牽引部入口の糸温度差が210℃になるよう空気加熱・冷却装置を調整し、コロナ帯電で3μC/g程度帯電させてフィラメント群を十分に開繊させ、移動する捕集ネットに吹き付けた。ウェブを作製した。次いで得られたウェブを、圧着面積が17%のエンボスロールを使用し、上/下ロール=100℃/100℃として熱接着することで不織布を作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0059】
[実施例2]
熱接着工程において吐出部直下と牽引部入口の糸温度差が150℃になるよう空気加熱・冷却装置を調整したこと以外は、実施例1と同様の方法で不織布を作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0060】
[実施例3]
熱接着工程において吐出部直下と牽引部入口の糸温度差が270℃になるよう空気加熱・冷却装置を調整したこと以外は、実施例1と同様の方法で不織布を作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0061】
[実施例4]
不織布層iiとして、前記測定方法による溶液粘度(ηsp/c)が0.67であるポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で、フィラメント群を、紡糸速度4500m/分で紡糸した。この際、吐出部直下と牽引部入口の糸温度差が210℃になるよう空気加熱・冷却装置を調整し、移動する捕集ネットに吹き付けた。次いで、コロナ帯電で3μC/g程度帯電させてフィラメント群を十分に開繊させ、不織布層iiのウェブを作製した。
【0062】
次に、極細繊維不織布層iとして、不織布層iiとの目付比が6対1となるよう、前記測定方法による溶液粘度(ηsp/c)が0.50であるポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、紡糸温度300℃、加熱空気1000Nm3/hr/mの条件下でメルトブロウン法により紡糸して、移動する不織布層iiのウェブに向けて吹き付け、極細繊維で構成される不織布層iと熱可塑性樹脂長繊維で構成される不織布層ii層とからなる積層ウェブを得た。この際、メルトブロウンノズルから極細繊維ウェブまでの距離を100mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引力を0.2kPa、風速を7m/secに設定した。繊維径の調整は、加熱空気量を調整することにより行った。
【0063】
次いで、得られた積層ウェブを、接着面積が17%のロールを使用し、上/下ロール=100℃/100℃として熱接着することで積層不織布を作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0064】
[実施例5]
熱接着工程において吐出部直下と牽引部入口の糸温度差が150℃になるよう空気加熱・冷却装置を調整したこと以外は、実施例4と同様の方法で不織布を作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0065】
[実施例6]
熱接着工程において吐出部直下と牽引部入口の糸温度差が270℃になるよう空気加熱・冷却装置を調整したこと以外は、実施例4と同様の方法で不織布を作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0066】
[実施例7]
不織布層ii層として、前記測定方法による溶液粘度(ηsp/c)が0.67であるポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で、フィラメント群を、紡糸速度4500m/分で紡糸した。この際、吐出部直下と牽引部入口の糸温度差が210℃になるよう空気加熱・冷却装置を調整し、移動する捕集ネットに吹き付けた。次いで、コロナ帯電で3μC/g程度帯電させてフィラメント群を十分に開繊させ、不織布層iiのウェブを作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0067】
次に、極細繊維不織布層iとして、前記測定方法による溶液粘度(ηsp/c)が0.50であるポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、紡糸温度300℃、加熱空気1000Nm3/hr/mの条件下でメルトブロウン法により紡糸して、移動する不織布層iiに向けて吹き付け、極細繊維で構成される不織布層iと熱可塑性樹脂長繊維で構成される不織布層iiとからなる積層ウェブを得た。この際、メルトブロウンノズルから極細繊維ウェブまでの距離を100mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引力を0.2kPa、風速を7m/secに設定した。繊維径の調整は、加熱空気量を調整することにより行った。
【0068】
さらに、前記と同様の方法で不織布層iiを、コンベア上を移動する移動する前記積層ウェブに積層し、層ii/層i/層iiの積層ウェブを作製した。尚、不織布層iiと不織布i層の目付比は3:1とした。
次いで、得られた積層ウェブを、接着面積が17%のエンボスロールを使用し、上/下ロール=100℃/100℃として熱接着することで積層不織布を作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0069】
[実施例8]
不織布ii層作製において、吐出部直下と牽引部入口の糸温度差が150℃になるよう空気加熱・冷却装置を調整したこと以外は、実施例7と同様の方法で不織布を作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0070】
[実施例9]
不織布ii層作製において、吐出部直下と牽引部入口の糸温度差が270℃になるよう空気加熱・冷却装置を調整したこと以外は、実施例7と同様の方法で不織布を作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0071】
[実施例10]
熱接着工程において接着面積が26%のエンボスロールを使用したこと以外は、実施例7と同様の方法で不織布を作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0072】
[実施例11]
熱接着工程において接着面積が6%のエンボスロールを使用したこと以外は、実施例7と同様の方法で不織布を作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0073】
[実施例12]
不織布ii層作製において、吐出部直下と牽引部入口の糸温度差が270℃になるよう空気加熱・冷却装置を調整したこと以外は、実施例11と同様の方法で不織布を作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0074】
[実施例13]
熱接着工程において接着面積が0%のフラットロールを使用したこと以外は、実施例7と同様の方法で不織布を作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0075】
[比較例1]
熱接着をしなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で不織布を作製し、不織布ii層を得た。次に極細繊維不織布層iとして、前記測定方法による溶液粘度(ηsp/c)が0.50であるポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、紡糸温度300℃、加熱空気1000Nm3/hr/mの条件下でメルトブロウン法により紡糸し、移動する捕集ネットに吹き付け、不織布を作製した。この際、メルトブロウンノズルから極細繊維ウェブまでの距離を100mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引力を0.2kPa、風速を7m/secに設定した。
次に得られた不織布層i、不織布層iiをそれぞれ積層し、圧着させた不織布シートを作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0076】
[比較例2]
熱接着工程において接着面積が36%のエンボスロールを使用したこと以外は、実施例7と同様の方法で不織布を作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0077】
[比較例3]
ポリエチレンテレフタレートフィルムのみからなる貼付剤支持体の例である。
【0078】
[比較例4]
前記測定方法による溶液粘度(ηsp/c)が0.50であるポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、紡糸温度300℃、加熱空気1000Nm3/hr/mの条件下でメルトブロウン法により紡糸し、移動する捕集ネットに吹き付け、不織布を作製した。この際、メルトブロウンノズルから極細繊維ウェブまでの距離を100mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引力を0.2kPa、風速を7m/secに設定した。
【0079】
[比較例5]
不織布ii層作製において、吐出部直下と牽引部入口の糸温度差が140℃になるよう空気加熱・冷却装置を調整したこと以外は、実施例11と同様の方法で不織布を作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0080】
[比較例6]
不織布ii層作製において、吐出部直下と牽引部入口の糸温度差が285℃になるよう空気加熱・冷却装置を調整したこと以外は、実施例11と同様の方法で不織布を作製し、これを貼付剤支持体とした。
【0081】
実施例1~13、比較例1~6の結果を以下の表1に示す。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係る貼付剤支持体は、粘着層の塗工時の浸み出しが少なく、高い投錨性を持ち、また、不織布の空隙を損なうことなく肌違和感を生じにくいため、医療用貼付剤の支持体として好適に利用が可能である。