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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186397
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】流体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/14 20060101AFI20221208BHJP
   B05B 3/00 20060101ALI20221208BHJP
   A62C 31/05 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
B05B1/14 Z
B05B3/00
A62C31/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094596
(22)【出願日】2021-06-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・ウェブサイトのアドレス https://ieeexplore.ieee.org/document/9435971 ウェブサイトの掲載日 2021年(令和3年)5月19日
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】安部 祐一
(72)【発明者】
【氏名】山内 悠
(72)【発明者】
【氏名】昆陽 雅司
(72)【発明者】
【氏名】多田隈 建二郎
(72)【発明者】
【氏名】田所 諭
【テーマコード(参考)】
2E189
4F033
【Fターム(参考)】
2E189KA07
2E189KA08
4F033AA04
4F033AA12
4F033BA04
4F033CA01
4F033DA01
4F033EA02
4F033LA01
4F033LA13
4F033NA01
4F033PB41
4F033PD01
4F033PD02
(57)【要約】
【課題】比較的簡単な構造で索状体の動きを制御することができ、軽量化を図ることができる流体噴射装置を提供する。
【解決手段】回転噴射体12が、索状体11に回転可能に設けられている。姿勢センサ13が、回転噴射体12の回転軸周りの傾きを検出可能に設けられている。各噴射ノズル23が、回転噴射体12の回転軸を含む中間平面27に対して対称の位置に、回転噴射体12の回転軸に平行な軸を中心として回転可能に設けられている。各噴射ノズル23は、索状体11の流路を流れる流体を、自身の軸に対して垂直方向に噴射するよう構成されている。姿勢制御部14が、回転噴射体12の回転軸に直交する平面内で、姿勢センサ13で検出される回転噴射体12の傾きに応じて、各噴射ノズル23を回転させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を有する索状体と、
1対の噴射ノズルを有し、前記索状体に回転可能に取り付けられた回転噴射体と、
前記回転噴射体の回転軸周りの傾きを検出可能に設けられた姿勢センサと、
各噴射ノズルと前記姿勢センサとに接続された姿勢制御部とを有し、
各噴射ノズルは、所定の間隔をあけて、前記回転噴射体の回転軸を含む中間平面に対して対称の位置に、前記回転噴射体の回転軸に平行な軸を中心として回転可能に設けられ、前記流路を流れる流体を、自身の前記軸に対して垂直方向に噴射するよう構成され、
前記姿勢制御部は、前記回転噴射体の回転軸に直交する平面内で、前記姿勢センサで検出される前記回転噴射体の傾きに応じて、各噴射ノズルを回転させるよう構成されていることを
特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記姿勢制御部は、各噴射ノズルの反力の合力が所望の角度および大きさになるよう、各噴射ノズルからの前記流体の噴射方向が前記中間平面に平行な方向から前記中間平面に向いた方向の成分を有する範囲で、各噴射ノズルを回転させて、前記回転噴射体の姿勢を制御するよう構成されていることを特徴とする請求項1記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記回転噴射体は、その回転軸を中心として、各噴射ノズルの反力により、前記索状体に対して回転可能に設けられ、
各噴射ノズルは、それぞれ回転駆動手段を有し、前記軸を中心として、各回転駆動手段により回転可能に構成されており、
前記姿勢制御部は、各回転駆動手段を制御することにより各噴射ノズルを回転させるよう構成されていることを
特徴とする請求項1または2記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記回転噴射体は、その回転軸を中心とした回転に対して、回転抵抗を付与可能に設けられた抵抗付加手段を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記回転噴射体の回転軸と各噴射ノズルの前記軸とが同一平面上に配置されるよう設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記回転噴射体の重心の位置は、ほぼ前記回転噴射体の回転軸上にあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記回転噴射体は、その回転軸が前記索状体への取付位置での前記索状体の中心軸とほぼ一致しており、前記索状体の外側面に、前記索状体の周方向に沿って回転可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
【請求項8】
補助姿勢センサを有し、
前記回転噴射体は、1対の補助ノズルを有し、前記回転軸に直交する直交軸を中心として、前記索状体に対して回転可能に設けられ、
各補助ノズルは、所定の間隔をあけて、前記直交軸を含む直交平面に対して対称の位置に、前記直交軸に平行な軸を中心として回転可能に設けられ、前記流路を流れる流体を、自身の前記軸に対して垂直方向に噴射するよう構成され、
前記補助姿勢センサは、前記回転噴射体の前記直交軸周りの傾きを検出可能に設けられ、
前記姿勢制御部は、各補助ノズルおよび前記補助姿勢センサにも接続され、前記回転噴射体の前記直交軸に直交する平面内で、前記補助姿勢センサで検出される前記回転噴射体の傾きに応じて、各補助ノズルを回転させるよう構成されていることを
特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
【請求項9】
前記姿勢制御部は、各補助ノズルの反力の合力が所望の角度および大きさになるよう、各補助ノズルからの前記流体の噴射方向が前記直交平面に平行な方向から前記直交平面に向いた方向の成分を有する範囲で、各補助ノズルを回転させて、前記回転噴射体の姿勢を制御するよう構成されていることを特徴とする請求項8記載の流体噴射装置。
【請求項10】
前記回転噴射体は、前記中間平面に対して垂直な軸を中心として回転可能に設けられた推進用ノズルを有し、
前記推進用ノズルは、前記流路を流れる流体を、前記中間平面に沿って平行な方向に噴射可能であり、前記中間平面上に1つ、および/または、所定の間隔をあけて、前記中間平面に対して対称の位置に1対または複数対設けられていることを
特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火災現場や災害現場などでは、ホース等により液体や気体を噴射することにより、消火作業や清掃作業、洗浄作業、移動作業などを行うことが多い。作業者が近づくことが危険な現場では、例えば、ホースの先端に反力や方向を調整可能に設けられた複数の噴射ノズルを有するノズルユニットを搭載し、遠隔操作で各噴射ノズルによる反力を制御することにより、浮上して直接火元等の現場に到達するものが開発されている(例えば、特許文献1、2、非特許文献1または2参照)。また、長尺のホースを浮上させるために、噴射ノズルを有するノズルユニットを、ホースの中間部に複数に取り付けたものも開発されている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
このようなホース等の索状体に取り付けられた噴射装置では、例えば、索状体が浮上する場合には、索状体の形状が変わるにつれて噴射装置の姿勢がねじれてしまう。このため、従来の噴射装置は、多くのノズルを搭載して噴射反力の実現範囲を増やしたうえで、索状体との間に受動ジョイントを搭載することにより、索状体のねじれに対処している(例えば、特許文献1または2参照)。しかし、この噴射装置では、噴射範囲を増やすために、多くのノズルが必要であり、各ノズルの制御が難しく、必要以上に噴射量が増加してしまうという問題がある。
【0004】
そこで、ノズルの数を増やすことなく、索状体のねじれに対応可能なものとして、索状体とノズルユニットとの間に、索状体の長軸方向に能動回転可能なアクチュエータを取り付けることにより、索状体がねじれたときでもノズルユニットの長軸周りの姿勢を調整し、索状体の動きを制御可能なものが開発されている(例えば、特許文献4または非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2016/016880号
【特許文献2】米国特許第10150562号明細書
【特許文献3】特許第6620371号公報
【特許文献4】国際公開WO2015/189738号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】H. Ando, Y. Ambe, T. Yamaguchi, Y. Yamauchi, M. Konyo, K. Tadakuma, S. Maruyama, and S. Tadokoro, “Fire extinguishment using a 4m long flying-hose-type robot with multiple water-jet nozzles”, Advanced Robotics, 2020, vol. 34, no. 11, p. 700-714
【非特許文献2】H. Ando, Y. Ambe, A. Ishii, M. Konyo, K. Tadakuma, S. Maruyama, and S. Tadokoro, “Aerial hose type robot by water jet for fire fighting”, IEEE Robotics and Automation Letters, April 2018, vol. 3, no. 2, p. 1128-1135
【非特許文献3】D. Eberl and F. Majdic, “Hose manipulation with jet forces”, SILA CURKA, 2015, p. 442-449
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献4および非特許文献3に記載の噴射装置では、アクチュエータの構造が複雑であり、装置全体が重くなってしまうという課題があった。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、比較的簡単な構造で索状体の動きを制御することができ、軽量化を図ることができる流体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る流体噴射装置は、流路を有する索状体と、1対の噴射ノズルを有し、前記索状体に回転可能に取り付けられた回転噴射体と、前記回転噴射体の回転軸周りの傾きを検出可能に設けられた姿勢センサと、各噴射ノズルと前記姿勢センサとに接続された姿勢制御部とを有し、各噴射ノズルは、所定の間隔をあけて、前記回転噴射体の回転軸を含む中間平面に対して対称の位置に、前記回転噴射体の回転軸に平行な軸を中心として回転可能に設けられ、前記流路を流れる流体を、自身の前記軸に対して垂直方向に噴射するよう構成され、前記姿勢制御部は、前記回転噴射体の回転軸に直交する平面内で、前記姿勢センサで検出される前記回転噴射体の傾きに応じて、各噴射ノズルを回転させるよう構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る流体噴射装置は、索状体の流路を流れる流体を、各噴射ノズルから噴射することにより、索状体の長軸回りの任意の方向に複数の流体を噴射することができる。また、回転噴射体の姿勢を制御して、索状体の動きを制御することができる。本発明に係る流体噴射装置は、例えば、回転噴射体を、ホースなどの柔軟な索状体や、多リンク構造を持つ索状体の先端部や中間部に取り付けることにより、索状体を浮上させることができる。また、回転噴射体を、剛性の高い索状体の先端部に取り付けてもよい。
【0011】
本発明に係る流体噴射装置は、以下の原理に従って、回転噴射体の姿勢を制御することができる。すなわち、図1(a)および(b)に示すように、回転噴射体が回転軸を中心として回転可能に設けられ、回転噴射体の回転軸を含む中間平面に対して対称の位置に、所定の間隔をあけて1対の噴射ノズルが設けられ、各噴射ノズルが、回転噴射体の回転軸に平行な軸を中心として回転可能に設けられ、自身のその軸に対して垂直方向に流体を噴射するものとする。また、各噴射ノズルが、流体の噴射方向が、中間平面に平行な方向から中間平面に向いた方向の成分を有する範囲、すなわち互いに内向きになる範囲で、流体を噴射するよう構成されているものとする。
【0012】
図1(a)および(b)に示すように、各噴射ノズルからの流体噴射の反力をf,f、それらの合力をF、各反力の合力方向の成分をf1N,f2N、各反力の合力に対して垂直方向の成分をf1V,f2Vとする。このとき、f1Nおよびf2Nは同じ方向となり、f1Vおよびf2Vは互いに外向きになる。また、fとfは大きさが同じであり、F=f1N+f2Nである。そこで、例えば、索状体が柔軟なものから成る場合、回転噴射体を移動させたい方向に、所望の大きさの合力Fが得られるよう、各噴射ノズルを回転制御することにより、その合力の方向に回転噴射体を移動させることができる。また、このとき、f1V,f2Vの方向が互いに外向きになるため、各噴射ノズルの並び方向が合力方向に対して垂直になるよう、回転噴射体にトルクが発生し、回転噴射体を自動的に回転させることができる。こうして、回転噴射体を所望の方向(合力Fの方向)に移動させつつ、回転噴射体の姿勢を自動的に調整することができる。また、噴射方向が鉛直下方の成分を有するよう、各噴射ノズルから流体を噴射することにより、回転噴射体を浮上させることができる。
【0013】
なお、図1(c)および(d)に示すように、各噴射ノズルが互いに外向きに流体を噴射したときには、f1V,f2Vの方向が互いに内向きになるため、各噴射ノズルの並び方向が合力方向に対して平行になるよう、回転噴射体に回転トルクが発生する。このため、回転噴射体が回転しやすくなり、回転噴射体の姿勢の制御が困難になる。
【0014】
このように、本発明に係る流体噴射装置で、前記姿勢制御部は、各噴射ノズルの反力の合力が所望の角度および大きさになるよう、各噴射ノズルからの前記流体の噴射方向が前記中間平面に平行な方向から前記中間平面に向いた方向の成分を有する範囲で、各噴射ノズルを回転させて、前記回転噴射体の姿勢を制御するよう構成されていることが好ましい。また、このとき、姿勢制御部は、中間平面が鉛直面に対して所望の角度を成すよう、各噴射ノズルを回転させることが好ましい。
【0015】
図1(a)および(b)に示すように、本発明に係る流体噴射装置は、合力Fの方向が、回転噴射体の回転軸を含む中間平面上になるよう、回転噴射体を回転制御することができる。このため、合力F、すなわち中間平面が鉛直面に対して所望の角度を成すよう、姿勢センサで検出される回転噴射体の傾きに応じて、姿勢制御部で各噴射ノズルの回転を制御することにより、例えば、索状体が柔軟なものから成る場合、回転噴射体を所望の方向(合力Fの方向)に移動させつつ、回転噴射体の姿勢を制御することができる。例えば、中間平面が鉛直面となるよう制御することにより、各噴射ノズルが水平な位置に配置されるよう回転噴射体の姿勢を制御して、回転噴射体を鉛直方向で移動させることができる。また、中間平面が鉛直面から斜めになるよう制御することにより、その斜めの方向に対して垂直方向に各噴射ノズルが並んで配置されるよう回転噴射体の姿勢を制御して、回転噴射体を鉛直面から斜め方向に移動させることができる。
【0016】
本発明に係る流体噴射装置は、回転噴射体が索状体に対して回転可能に取り付けられているため、索状体がねじれたときでも、回転噴射体の姿勢を制御することができ、索状体の動きを制御することができる。このように、本発明に係る流体噴射装置は、複雑な構造のアクチュエータにより姿勢を制御する従来のものと比べて、簡単な構造で、索状体がねじれたときでもその動きを制御することができる。また、複雑な構造のアクチュエータが不要であり、軽量化を図ることができる。なお、姿勢制御部は、各噴射ノズルと姿勢センサとにそれぞれ有線で接続されていてもよく、無線で接続されていてもよい。
【0017】
本発明に係る流体噴射装置は、例えば、索状体が柔軟なものから成る場合、流体を噴射しながら自力で安定して浮上することができるため、火災現場や災害現場など、作業者が近づくことが危険な現場や障害物がある場所でも、上空から近づくことができる。また、噴射する流体を利用して、消火作業や清掃作業、洗浄作業、移動作業など、様々な作業を行うこともできる。また、索状体が剛体から成る場合にも、長軸まわりの全方向に流体を複数噴射することができるため、消火作業や清掃作業、洗浄作業など、様々な作業を比較的容易に行うことができる。
【0018】
本発明に係る流体噴射装置で、回転噴射体は、その回転軸が重心位置からずれていてもよいが、精度良く回転噴射体の姿勢を制御するためには、回転軸が重心位置に一致または、できるだけ近接していることが好ましい。また、前記回転噴射体は、その回転軸が前記索状体への取付位置での前記索状体の中心軸からずれていてもよいが、その回転軸が索状体の中心軸とほぼ一致していることが好ましい。回転噴射体の回転軸が索状体の中心軸とずれていても、回転噴射体の姿勢を制御することはできるが、回転噴射体の回転軸が索状体の中心軸とほぼ一致している方が、容易かつ精度良く回転噴射体の姿勢を制御することができる。また、回転噴射体は、前記索状体の外側面に、前記索状体の周方向に沿って回転可能に設けられていることが好ましい。この場合、回転噴射体を、その取付位置の索状体を中心として回転させることができる。
【0019】
本発明に係る流体噴射装置で、前記回転噴射体の回転軸と各噴射ノズルの前記軸とが同一平面上に配置されていなくてもよいが、同一平面上に配置されるよう設けられていることが好ましい。回転噴射体の回転軸と各噴射ノズルの軸とが同一平面上に配置されていなくとも、回転噴射体の姿勢を制御することはできるが、同一平面上に配置されている方が、容易かつ精度良く回転噴射体の姿勢を制御することができる。
【0020】
本発明に係る流体噴射装置で、前記回転噴射体は、その回転軸を中心として、各噴射ノズルの反力により、前記索状体に対して回転可能に設けられ、各噴射ノズルは、それぞれ回転駆動手段を有し、前記軸を中心として、各回転駆動手段により回転可能に構成されており、前記姿勢制御部は、各回転駆動手段を制御することにより各噴射ノズルを回転させるよう構成されていてもよい。回転噴射体は、索状体に対して回転可能、かつ、索状体の流路を流れてきた流体を各噴射ノズルに供給可能であれば、いかなる構成で索状体に取り付けられていてもよい。回転噴射体は、例えば、スイベルジョイントを有し、スイベルジョイントを介して索状体に回転可能に取り付けられていてもよい。また、前記回転噴射体は、その回転軸を中心とした回転に対して、回転抵抗を付与可能に設けられた抵抗付加手段を有していてもよい。
【0021】
本発明に係る流体噴射装置は、補助姿勢センサを有し、前記回転噴射体は、1対の補助ノズルを有し、前記回転軸に直交する直交軸を中心として、前記索状体に対して回転可能に設けられ、各補助ノズルは、所定の間隔をあけて、前記直交軸を含む直交平面に対して対称の位置に、前記直交軸に平行な軸を中心として回転可能に設けられ、前記流路を流れる流体を、自身の前記軸に対して垂直方向に噴射するよう構成され、前記補助姿勢センサは、前記回転噴射体の前記直交軸周りの傾きを検出可能に設けられ、前記姿勢制御部は、各補助ノズルおよび前記補助姿勢センサにも接続され、前記回転噴射体の前記直交軸に直交する平面内で、前記補助姿勢センサで検出される前記回転噴射体の傾きに応じて、各補助ノズルを回転させるよう構成されていてもよい。
【0022】
この補助ノズルを有する場合、回転噴射体を回転軸および直交軸の2つの軸周りに回転させることができる。また、各軸に対してそれぞれ各噴射ノズルおよび各補助ノズルにより、回転噴射体の姿勢を制御することができる。このとき、中間平面と直交平面とが直交しており、各噴射ノズルの噴射方向が中間平面に対して平行な方向であり、各補助ノズルの噴射方向が直交平面に対して平行な方向であるため、互いに影響を及ぼすことなく、回転噴射体の姿勢を制御することができる。なお、前記姿勢制御部は、各補助ノズルの反力の合力が所望の角度および大きさになるよう、各補助ノズルからの前記流体の噴射方向が前記直交平面に平行な方向から前記直交平面に向いた方向の成分を有する範囲で、各補助ノズルを回転させて、前記回転噴射体の姿勢を制御するよう構成されていることが好ましい。また、このとき、姿勢制御部は、直交平面が鉛直面に対して所望の角度を成すよう、各補助ノズルを回転させることが好ましい。
【0023】
本発明に係る流体噴射装置で、前記回転噴射体は、前記中間平面に対して垂直な軸を中心として回転可能に設けられた推進用ノズルを有し、前記推進用ノズルは、前記流路を流れる流体を、前記中間平面に沿って平行な方向に噴射可能であり、前記中間平面上に1つ、および/または、所定の間隔をあけて、前記中間平面に対して対称の位置に1対または複数対設けられていてもよい。この場合、推進用ノズルにより、回転噴射体を中間平面に沿って移動させることができる。また、各噴射ノズルにより、中間平面を鉛直面から斜めにして、回転噴射体を移動させることができるため、各噴射ノズルと推進用ノズルとを組み合わせることにより、索状体を任意の方向に移動させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、比較的簡単な構造で索状体の動きを制御することができ、軽量化を図ることができる流体噴射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a)本発明に係る流体噴射装置の、回転噴射体の姿勢を制御する原理を示す回転噴射体が一方に傾いたときの正面図、および(b)回転噴射体が他方に傾いたときの正面図、ならびに、(c)比較として、各噴射ノズルが互いに外向きに流体を噴射したときの、回転噴射体が一方に傾いたときの正面図、および(b)回転噴射体が他方に傾いたときの正面図である。
図2】本発明の実施の形態の流体噴射装置の(a)正面図、(b)右側面図、(c)底面図、(d)斜視図である。
図3】本発明の実施の形態の流体噴射装置の、スイベルジョイントを示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態の流体噴射装置の、制御方法を説明するための正面図である。
図5】本発明の実施の形態の流体噴射装置の、推進用ノズルを有する変形例を示す(a)斜視図、(b)底面図である。
図6】本発明の実施の形態の流体噴射装置の、補助ノズルを有する変形例を示す斜視図である。
図7】本発明の実施の形態の流体噴射装置の、各種の実験用の構成を示す全体構成図である。
図8】本発明の実施の形態の流体噴射装置の、各噴射ノズルの反力を求める実験の(a)実験時の配置を示す正面図、(b)回転噴射体の取付位置を拡大した拡大正面図、(c)回転噴射体の取付位置を拡大した拡大右側面図である。
図9図8に示す各噴射ノズルの反力を求める実験結果である、1つの噴射ノズルの噴射の反力と送水圧力との関係を示すグラフである。
図10】本発明の実施の形態の流体噴射装置の、回転噴射体の回転制御試験結果である、入力した各噴射ノズルの反力の合力の方向と、回転噴射体の実際の回転角度との関係を示すグラフである。
図11】本発明の実施の形態の流体噴射装置の、飛行実験用の構成を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図2乃至図11は、本発明の実施の形態の流体噴射装置を示している。
図2に示すように、流体噴射装置10は、索状体11と回転噴射体12と姿勢センサ13と姿勢制御部14とを有している。
【0027】
索状体11は、細長く可撓性を有するホースから成り、内側に長さ方向に沿って設けられた流路を有している。回転噴射体12は、基体21とスイベルジョイント22と1対の噴射ノズル23と1対の回転モータ24と分岐パイプ25とダンパ26とを有している。基体21は、前後方向が短く左右方向が長い、左右対称のほぼ矩形状の平面形状を成し、上下方向の厚みが小さい形状を成している。なお、索状体11は、ホースに限らず、剛体パイプなどであってもよい。
【0028】
図3に示すように、スイベルジョイント22は、円筒状の回転部22aと円筒状の固定部22bとを、それぞれの中心軸を一致させて互いに前後に連結して形成されている。スイベルジョイント22は、回転部22aと固定部22bとが同軸でそれぞれ独立して滑らかに回転するよう構成されている。また、スイベルジョイント22は、回転部22aの内側面と固定部22bの内側面との間にほとんど段差がなくなるよう形成されている。図3に示す具体的な一例では、スイベルジョイント22は、アルミニウム合金製である。スイベルジョイント22は、回転部22aを後方に向けた状態で、基体21の左右方向の中心に沿って、基体21に固定部22bを固定して取り付けられている。
【0029】
図2に示すように、回転噴射体12は、基体21の左右方向の中心線に沿って、後方から前方に向けて索状体11が取り付けられ、索状体11の先端部がスイベルジョイント22の回転部22aに固定されている。これにより、回転噴射体12は、スイベルジョイント22を介して、索状体11の外側面に、索状体11の周方向に沿って回転可能に取り付けられている。回転噴射体12は、索状体11を中心として回転可能であり、その回転軸が索状体11への取付位置での索状体11の中心軸とほぼ一致している。また、回転噴射体12は、その回転軸を含む中間平面27に対して、基体21が左右対称に設けられている。
【0030】
1対の噴射ノズル23は、それぞれ基体21の左右の、中間平面27に対して対称の位置に、所定の間隔をあけて取り付けられている。各噴射ノズル23は、回転噴射体12の回転軸に平行な軸を中心として回転可能に、スイベルジョイントを介して取り付けられている。各噴射ノズル23は、自身の回転軸が回転噴射体12の回転軸とほぼ同一平面上に配置されるよう取り付けられている。また、各噴射ノズル23は、自身の回転軸に対して垂直方向に、流体を噴射するよう取り付けられている。各噴射ノズル23は、同じ量の流体を、同じ速度で噴射するよう構成されている。
【0031】
1対の回転モータ24は、サーボモータから成り、それぞれ各噴射ノズル23に対応して、基体21の左右の、中間平面27に対して対称の位置に取り付けられている。各回転モータ24は、対応する噴射ノズル23を、その回転軸を中心として回転可能に取り付けられている。
【0032】
分岐パイプ25は、回転噴射体12に取り付けられた索状体11の流路に連通するよう、スイベルジョイント22の固定部に取り付けられている。分岐パイプ25は、基体21の前方の側面に沿って左右に分岐し、分岐した部分の先端がそれぞれ各噴射ノズル23に接続されている。こうして、分岐パイプ25は、流路を索状体11の先端に向かって流れてきた流体を、各噴射ノズル23に供給するよう構成されている。ダンパ26は、市販のロータリーダンパから成り、索状体11に対する回転噴射体12の回転時の力を緩和し、回転による振動を抑制するよう、スイベルジョイント22に接続されている。なお、ダンパ26は、抵抗付加手段を構成している。
【0033】
姿勢センサ13は、市販の慣性計測ユニットから成り、基体21の上部の、左右方向の中心線に沿って取り付けられている。姿勢センサ13は、鉛直方向からの回転噴射体12の傾きを検出可能に設けられている。
【0034】
姿勢制御部14は、各回転モータ24と姿勢センサ13とにケーブルで接続されている。姿勢制御部14は、各回転モータ24を介して、各噴射ノズル23に接続されている。姿勢制御部14は、各噴射ノズル23からの流体の噴射方向が、中間平面27に平行な方向から中間平面27に向いた方向の成分を有する範囲で、各噴射ノズル23を回転させるよう構成されている。姿勢制御部14は、姿勢センサ13で検出される回転噴射体12の傾きに応じて、各噴射ノズル23の反力の合力が鉛直面に対して所望の角度および大きさになるよう、各噴射ノズル23を回転させて、回転噴射体12の姿勢を制御するよう構成されている。なお、姿勢制御部14は、各回転モータ24と姿勢センサ13とに、無線で接続されていてもよい。
【0035】
次に、作用について説明する。
流体噴射装置10は、索状体11の流路を流れてきた流体を、各噴射ノズル23から噴射することにより、図1(a)および(b)に示す原理に従って、回転噴射体12の姿勢を自動調整することができる。流体噴射装置10は、合力Fの方向が、回転噴射体12の回転軸を含む中間平面27上になるよう、回転噴射体12を回転制御することができる。このため、合力F、すなわち中間平面27が鉛直面に対して所望の角度を成すよう、姿勢センサ13で検出される回転噴射体12の傾きに応じて、姿勢制御部14で各噴射ノズル23の回転を制御することにより、例えば、索状体11がホースなどの柔軟なものから成る場合、回転噴射体12を所望の方向(各噴射ノズル23の反力の合力Fの方向)に移動させつつ、回転噴射体12の姿勢を制御することができる。また、噴射方向が鉛直下方の成分を有するよう、各噴射ノズル23から流体を噴射することにより、回転噴射体12を浮上させることができる。
【0036】
流体噴射装置10は、例えば、以下のようにして、姿勢制御部14により、回転噴射体12の姿勢を自動調整することができる。すなわち、図4に示すように、各噴射ノズル23の反力の合力の大きさをF、その合力Fの鉛直方向からの角度をθ、各噴射ノズル23の反力の大きさをR、各噴射ノズル23が水平に並んだ位置からの回転噴射体12の回転角度をθ、各噴射ノズル23の並び方向からの各噴射ノズル23の回転角度をそれぞれφおよびφとすると、φおよびφは、(1)式で表すことができる。
【0037】
【数1】
【0038】
ここで、θは姿勢センサ13から得られ、Rはあらかじめ求めておくことができるため、所望のFおよびθを(1)式に代入することにより、各噴射ノズル23の噴射方向φおよびφを決定することができる。姿勢制御部14により、所望のFおよびθを実現するよう、(1)式を用いて求めたφおよびφに基づいて各噴射ノズル23を回転させることにより、回転噴射体12の姿勢が、θになるよう自動調整される。
【0039】
流体噴射装置10は、例えば、索状体11が柔軟なものから成る場合、中間平面27が鉛直面となるよう制御することにより、各噴射ノズル23が水平な位置に配置されるよう回転噴射体12の姿勢を制御して、回転噴射体12を鉛直方向で移動させることができる。また、中間平面27が鉛直面から斜めになるよう制御することにより、その斜めの方向に対して垂直方向に各噴射ノズル23が並んで配置されるよう回転噴射体12の姿勢を制御して、回転噴射体12を鉛直面から斜め方向に移動させることができる。
【0040】
流体噴射装置10は、回転噴射体12が索状体11に対して回転可能に取り付けられているため、索状体11がねじれたときでも、回転噴射体12の姿勢を制御することができ、索状体11の動きを制御することができる。このように、流体噴射装置10は、複雑な構造のアクチュエータにより姿勢を制御する従来のものと比べて、簡単な構造で、索状体11がねじれたときでもその動きを制御することができる。また、複雑な構造のアクチュエータが不要であり、軽量化を図ることができる。
【0041】
流体噴射装置10は、例えば、索状体11が柔軟なものから成る場合、流体を噴射しながら自力で安定して浮上することができるため、火災現場や災害現場など、作業者が近づくことが危険な現場や障害物がある場所でも、上空から近づくことができる。また、噴射する流体を利用して、消火作業や清掃作業、洗浄作業、移動作業など、様々な作業を行うこともできる。また、索状体11が剛体から成る場合にも、長軸まわりの全方向に流体を複数噴射することができるため、消火作業や清掃作業、洗浄作業など、様々な作業を比較的容易に行うことができる。
【0042】
なお、流体噴射装置10で、回転噴射体12は、索状体11の先端部ではなく、中間部に取り付けられていてもよい。また、回転噴射体12は、索状体11の先端部と、索状体11の中間部の1または複数箇所に取り付けられていてもよい。
【0043】
また、図5に示すように、流体噴射装置10で、回転噴射体12は、基体21の各噴射ノズル23よりも後方に、中間平面27に対して垂直な軸を中心として回転可能に設けられた1対の推進用ノズル31を有し、各推進用ノズル31は、所定の間隔をあけて、中間平面27に対して対称の位置に設けられていてもよい。このとき、分岐パイプ25は、各噴射ノズル23への分岐位置よりも手前でさらに左右に分岐し、分岐した部分の先端がそれぞれスイベルジョイントを介して各推進用ノズル31に接続されている。また、各推進用ノズル31は、流路を索状体11の先端に向かって流れてきた流体を、中間平面27に沿って平行な方向に噴射可能になっている。各推進用ノズル31は、それぞれに対応する推進用モータ32により、角度差が生じないよう同期して回転し、それぞれ同じ方向に流体を噴射するよう設けられている。
【0044】
この場合、各推進用ノズル31により、回転噴射体12を中間平面27に沿って移動させることができる。また、各噴射ノズル23により、中間平面27を鉛直面から斜めにして、回転噴射体12を移動させることができるため、各噴射ノズル23と各推進用ノズル31とを組み合わせることにより、索状体11を任意の方向に移動させることができる。各推進用ノズル31が、中間平面27に沿って平行な方向に流体を噴射するため、各噴射ノズル23による回転噴射体12の姿勢制御に影響を与えることなく、索状体11を移動させることができる。
【0045】
また、図6に示すように、流体噴射装置10で、補助姿勢センサ(図示せず)を有し、回転噴射体12は、1対の補助ノズル33を有し、回転軸に直交する直交軸を中心として、索状体11に対して回転可能に設けられ、各補助ノズル33は、所定の間隔をあけて、直交軸を含む直交平面に対して対称の位置に、直交軸に平行な軸を中心として回転可能に設けられ、流路を索状体11の先端に向かって流れてきた流体を、自身の軸に対して垂直方向に噴射するよう構成されていてもよい。このとき、補助姿勢センサは、回転噴射体12の直交軸周りの傾きを検出可能に設けられ、姿勢制御部14は、各補助ノズル33および補助姿勢センサにも接続され、各補助ノズル33からの流体の噴射方向が、直交平面に平行な方向から直交平面に向いた方向の成分を有する範囲で、各補助ノズル33を回転させるよう構成されている。また、姿勢制御部14は、補助姿勢センサで検出される回転噴射体12の傾きに応じて、各噴射ノズル23と共に、各補助ノズル33の反力の合力が鉛直面に対して所望の角度および大きさになるよう、各補助ノズル33を回転させて、回転噴射体12の姿勢を制御するよう構成されている。
【0046】
この場合、回転噴射体12を回転軸および直交軸の2つの軸周りに回転させることができる。また、各軸に対してそれぞれ各噴射ノズル23および各補助ノズル33により、回転噴射体12の姿勢を制御することができる。このとき、中間平面27と直交平面とが直交しており、各噴射ノズル23の噴射方向が中間平面27に対して平行な方向であり、各補助ノズル33の噴射方向が直交平面に対して平行な方向であるため、互いに影響を及ぼすことなく、回転噴射体12の姿勢を制御することができる。
【実施例0047】
図2に示す流体噴射装置10を用いて各種の実験を行った。図7に示すように、索状体11は、内径25mm、長さ2mのホース11aと、内径38mm、長さ2mのホース11bとを接続して成り、内径25mmのホース11aが回転噴射体12に接続され、内径38mmのホース11bが、ポンプ41を介して水槽42に接続されている。水槽42には、流体として水が収納されている。内径38mmのホース11bには、圧力計43と流量計44が取り付けられている。回転噴射体12は、左右の長さが230mm、前後の幅が195mm、上下の高さが65mm、分岐パイプ25が水で満たされた場合の重さは1.14kgである。姿勢制御部14は、パーソナルコンピュータから成り、姿勢センサ13からのデータを1kHzでサンプリングし、フィルタを介して姿勢データ(ロール角、ピッチ角、ヨー角)に変換するよう構成されている。
【0048】
まず、各噴射ノズル23の反力Rを求めた。図8に示すように、回転噴射体12の上部に力センサ45を取り付け、下方に空間を有する試験台46の天井に、力センサ45を挟むようにして回転噴射体12を取り付けた。各噴射ノズル23を鉛直下方に向け、ポンプ41からの送水圧力を0.2MPaから1.0MPaまで、0.1MPa刻みで変化させて水を噴射し、力センサ45により、各送水圧力に対して15秒間ずつ鉛直方向の力(噴射の反力)を測定した。
【0049】
測定した力の平均値の半分を、1つの噴射ノズル23の噴射の反力とし、その噴射の反力と送水圧力との関係を、図9に示す。図9に示すように、噴射の反力は、送水圧力にほぼ比例していることが確認された。なお、送水圧力Pと噴射の反力Rとの関係を、最小二乗法で近似した直線を、図9に破線で示す。その直線の式は、R=27.568Pである。こうして求められた各噴射ノズル23の噴射の反力Rを用いることにより、(1)式を利用して、回転噴射体12の姿勢を制御することができる。
【0050】
次に、実現させたい各噴射ノズル23の反力の合力の方向(図4のθ)の入力を変化させたときに、回転噴射体12がその方向に向くことを確認する回転制御試験を行った。試験では、索状体11を剛体として固定し、回転噴射体12が回転軸周りに回転するよう設置した。水の送水圧力を0.3MPaとし、入力する各噴射ノズル23の反力の合力の方向(図4のθ)を、0度から180度まで、反時計回りに5度ずつ15秒おきに変化させ、回転噴射体12の回転軸周りの実際の角度を測定した。試験を5回行い、測定した角度の平均値を求めた。また、摩擦の影響を考慮して、同様にして、180度から0度まで、時計回りに5度ずつ15秒おきに変化させる試験も行った。
【0051】
入力した各噴射ノズル23の反力の合力の方向と、回転噴射体12の実際の回転角度(測定値の平均値)との関係を、図10に示す。なお、図10には、入力する合力の方向と実際の回転角度とが一致する場合を、実線で示している。図10に示すように、回転方向によらず、回転噴射体12が、入力した合力の方向に追従して回転し、ほぼ一致する角度に回転していることが確認された。なお、回転噴射体12の実際の回転角度と実線とがややずれているが、これは回転噴射体12の回転軸の位置と重心の位置とがずれているためであると考えられる。
【実施例0052】
図5に示す流体噴射装置10を用いて飛行実験を行った。図11に示すように、索状体11は、長さ2mのホースを、柔軟なチューブ状の剛体で覆ったものから成り、一端が回転噴射体12に接続され、他端が地面に固定されている。また、索状体11の他端には、送水ホース(長さ10m)47およびポンプ41を介して水槽42に接続されている。水槽42には、流体として水が収納されている。送水ホース47には、圧力計43と流量計44が取り付けられている。姿勢制御部14は、パーソナルコンピュータから成っている。
【0053】
姿勢制御部14により、各噴射ノズル23および各推進用ノズル31の回転を制御して、回転噴射体12を浮上させ、移動させた。その結果、回転噴射体12の姿勢を制御しながら、索状体11のねじれの影響を受けることなく、索状体11を所望の方向に移動させることができた。
【符号の説明】
【0054】
10 流体噴射装置
11 索状体
12 回転噴射体
21 基体
22 スイベルジョイント
22a 回転部
22b 固定部
23 噴射ノズル
24 回転モータ
25 分岐パイプ
26 ダンパ
27 中間平面
13 姿勢センサ
14 姿勢制御部

31 推進用ノズル
32 推進用モータ
33 補助ノズル

41 ポンプ
42 水槽
43 圧力計
44 流量計
45 力センサ
46 試験台
47 送水ホース

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11