(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186400
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】入出力遮断機構
(51)【国際特許分類】
F16H 35/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
F16H35/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094600
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】多田隈 建二郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 将広
(72)【発明者】
【氏名】恩田 一生
(72)【発明者】
【氏名】西城 直人
(72)【発明者】
【氏名】剱持 優人
(72)【発明者】
【氏名】昆陽 雅司
(72)【発明者】
【氏名】田所 諭
(57)【要約】
【課題】比較的簡単な構造で、直動運動での出力側からの逆入力を遮断することができる入出力遮断機構を提供する。
【解決手段】1対のフレーム部11が、所定の方向に伸びて互いに平行に設けられている。スライド部12が、各フレーム部11との間に間隔をあけて各フレーム部11の間に配置され、各フレーム部11に対して相対的にスライド可能に設けられている。切替部13が、スライド部12から各フレーム部11に向かって力を加えて、スライド部12を各フレーム部11の間で固定する固定状態と、スライド部12が各フレーム部11に対して相対的に移動可能に、その力を弱めた開放状態とを切替可能に、各フレーム部11とスライド部12との間に設けられている。入力部14が、スライド部12に力を伝達可能に設けられ、常態で切替部13が固定状態のとき、切替部13を固定状態から開放状態に切替可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に伸びて互いに平行に設けられた1対のフレーム部と、
各フレーム部との間に間隔をあけて各フレーム部の間に配置され、前記所定の方向に沿って、各フレーム部に対して相対的にスライド可能に設けられたスライド部と、
前記スライド部から各フレーム部に向かって力を加えて、前記スライド部を各フレーム部の間で固定する固定状態と、前記スライド部が各フレーム部に対して相対的に移動可能に、前記力を弱めた、または前記力がかからない開放状態とを切替可能に、各フレーム部と前記スライド部との間に設けられ、常態で前記固定状態または前記開放状態に保持された切替部と、
前記スライド部または各フレーム部に力を伝達可能に設けられ、常態で前記切替部が前記固定状態のとき、前記切替部を前記固定状態から前記開放状態に切替可能に構成され、または、常態で前記切替部が前記開放状態のとき、前記切替部を前記開放状態から前記固定状態に切替可能に構成された入力部とを、
有することを特徴とする入出力遮断機構。
【請求項2】
前記スライド部は、各フレーム部に対向する1対の側面に、前記所定の方向に沿って、中央部側から両方の端部側に向かって、それぞれ各フレーム部との間隔が狭くなるよう傾斜して設けられた傾斜面を有し、
前記切替部は、各フレーム部に対応して、それぞれ各フレーム部と前記スライド部の各傾斜面との間に配置された2対の挟持部材を有し、各挟持部材は、各フレーム部に対向する方向の幅が、各フレーム部と前記スライド部の各傾斜面の各端部側との間隔より大きく、各フレーム部と前記スライド部の各傾斜面の前記中央部側との間隔より小さい大きさを有し、前記固定状態のとき、各挟持部材が、対応するフレーム部と前記スライド部の各傾斜面の各端部側との間にそれぞれ挟まり、前記開放状態のとき、各フレーム部に対応する各挟持部材の少なくともいずれか一方が、前記スライド部の各傾斜面の前記中央部側に配置されるよう構成されており、常態で前記固定状態に保持されるよう、各挟持部材が、それぞれ対応する前記スライド部の各傾斜面の各端部側に向かって付勢されており、
前記入力部は、前記切替部を前記固定状態から前記開放状態に切り替えるよう、各フレーム部に対応する各挟持部材の少なくともいずれか一方を、その挟持部材への付勢力に抗して、前記スライド部の前記中央部側に移動可能に設けられていることを
特徴とする請求項1記載の入出力遮断機構。
【請求項3】
各挟持部材は、対応するフレーム部に接触して回転可能に設けられた回転体を有し、前記回転体の回転により各フレームに沿って移動するよう構成されていることを特徴とする請求項2記載の入出力遮断機構。
【請求項4】
前記入力部は、前記スライド部の一方の端部側から、各フレーム部と前記スライド部の各傾斜面との隙間に挿入して、前記一方の端部側で各フレーム部と前記スライド部の各傾斜面との間に挟まった各挟持部材を、前記スライド部の各傾斜面の前記中央部側に移動可能に設けられた1対の挿入部と、各挿入部で各挟持部材を前記スライド部の各傾斜面の前記中央部側に移動させた状態で、前記スライド部の前記一方の端部側の端面に接するよう設けられた接触部とを有することを特徴とする請求項2または3記載の入出力遮断機構。
【請求項5】
前記スライド部は、各フレーム部に対向する1対の側面に、前記所定の方向に沿って、中央部から両方の端部に向かって、それぞれ各フレーム部との間隔が狭くなるよう傾斜して設けられた傾斜面を有し、
前記切替部は、各フレーム部に対応して、それぞれ各フレーム部と前記スライド部の各傾斜面との間に配置された1対の挟持部材と、各挟持部材の前記所定の方向への移動を制限するよう設けられた保持部材とを有し、各挟持部材は、各フレーム部に対向する方向の幅が、各フレーム部と前記スライド部の各傾斜面の各端部との間隔より大きく、各フレーム部と前記スライド部の前記中央部との間隔より小さい大きさを有し、前記固定状態のとき、各挟持部材が、対応するフレーム部と前記スライド部の各傾斜面のいずれかの端部側との間にそれぞれ挟まり、前記開放状態のとき、各フレーム部に対応する各挟持部材が、前記スライド部の前記中央部に配置されるよう構成されており、常態で前記開放状態に保持されるよう、前記保持部材が各挟持部材を前記開放状態での位置の方向に付勢するよう構成されており、
前記入力部は、前記切替部を前記開放状態から前記固定状態に切り替えるよう、前記保持部材の付勢力に抗して、前記スライド部を前記所定の方向に沿って往復移動可能に設けられていることを
特徴とする請求項1記載の入出力遮断機構。
【請求項6】
前記切替部は、2つのアームが中央部で交わった4つのL字型部材を有し、各L字型部材は、それぞれ前記スライド部の各フレーム部に対向する両側縁の、前記所定の方向に沿った両方の端部に、各アームが各フレーム部を含む平面に沿って、前記スライド部の対応する端部の外側に向かって伸びるよう取り付けられ、前記中央部を中心として前記平面に対して垂直な軸周りに回転可能に構成され、前記固定状態のとき、各L字型部材が回転して、各L字型部材の対応するフレーム部側のアームが、対応するフレーム部に接触し、前記開放状態のとき、各L字型部材が反対側に回転して、各L字型部材の対応するフレーム部側のアームと前記フレーム部との間に隙間が生じるよう構成されており、常態で前記固定状態に保持されるよう、各L字型部材が前記固定状態のときの回転方向に付勢されており、
前記入力部は、前記切替部を前記固定状態から前記開放状態に切り替えるよう、各L字型部材の対応するフレーム部とは反対側のアームを、各L字型部材への付勢力に抗して回転可能に設けられていることを
特徴とする請求項1記載の入出力遮断機構。
【請求項7】
各L字型部材は、対応するフレーム部とは反対側のアームが、前記対応するフレーム部とは反対側のフレーム部に向かって伸びており、
前記入力部は、前記スライド部の前記所定の方向に沿った各端部側から、対応する端部側の各L字型部材の前記反対側のアームを、前記スライド部に向かって同時に押すことにより、各L字型部材の前記反対側のアームを、各L字型部材への付勢力に抗して回転可能に構成されていることを
特徴とする請求項6記載の入出力遮断機構。
【請求項8】
前記切替部は、細長い4つのアーム部材を有し、各アーム部材は、それぞれ前記スライド部の各フレーム部に対向する両側縁の、前記所定の方向に沿った両方の端部に、各フレーム部を含む平面に沿って、中央部を中心として前記平面に対して垂直な軸周りに回転可能に構成され、前記固定状態のとき、各アーム部材が回転して、各アーム部材の対応するフレーム部側の一端部が、対応するフレーム部に接触し、前記開放状態のとき、各アーム部材が反対側に回転して、各アーム部材の前記一端部と前記フレーム部との間に隙間が生じるよう構成されており、常態で前記開放状態に保持されるよう、各アーム部材が前記固定状態のときの回転方向に付勢されており、
前記入力部は、前記切替部を前記開放状態から前記固定状態に切り替えるよう、各アーム部材の対応するフレーム部とは反対側の他端部を、各アーム部材への付勢力に抗して回転可能に設けられていることを
特徴とする請求項1記載の入出力遮断機構。
【請求項9】
各アーム部材は、前記一端部が、前記スライド部の対応する端部とは反対側の端部に向かって伸びており、前記他端部が、前記スライド部の対応する端部の外側に向かって伸びており、
前記入力部は、前記スライド部の前記所定の方向に沿った各端部の少なくともいずれか一方の側から、対応する端部側の各アーム部材の前記他端部を、前記スライド部に向かって同時に押すことにより、各アーム部材の前記他端部を、各アーム部材への付勢力に抗して回転可能に構成されていることを
特徴とする請求項8記載の入出力遮断機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入出力遮断機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットハンドやロボットアームの関節部や、ブレーキシステム、ギアなど、入力側から出力側に力を伝える動力の伝達機構では、外部から過大なトルクや力を受けたとき、関節等を逆回転させるような逆入力が出力側から入力側にまで伝達されてしまい、関節等の伝達機構や入力部側の構造が破壊されるという問題があった。そこで、このような問題を解決するために、トルクダイオードや、ブレーキにアクチュエータを組み合わせたもの等、入力側と出力側とを遮断する機構が開発されている(例えば、特許文献1、2、または、非特許文献1参照)。
【0003】
これらの入力側と出力側とを遮断する機構には、いわゆる通常ロック式と通常フリー式の2種類の機構がある。通常ロック式の機構は、常態で、入力側から出力側にはトルクを伝達可能であるが、出力側からトルクが逆入力されたときに、そのトルクを固定されたフレーム等で受けとめ、入力側には伝わらない構造になっている。また、通常フリー式の機構は、常態で、出力側がフリーに可動するようになっており、入力側が駆動するときにのみ、出力側に入力側からのトルクが伝達される構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-210104号公報、
【特許文献2】特開2014-172546号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】川合正浩、「トルクダイオードの基本原理と適用例(動力伝動に関わる昨今の機械要素~縁の下を支える装置~)」、日本機械学会年次大会講演資料集 2006.8(0)、2006年、p.186-187
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2、および、非特許文献1に記載のような従来のトルクダイオード等は、回転運動に対するものであり、直動運動での出力側からの逆入力を遮断する機構の開発が求められている。例えば、従来のトルクダイオード等を改良して、回転運動を直動運動に変換するためには、ラックギアやボールねじ等を利用した変換機構が必要となり、構造が複雑になってしまい、製造費用やメンテナンス費用が嵩むという課題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、比較的簡単な構造で、直動運動での出力側からの逆入力を遮断することができる入出力遮断機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る入出力遮断機構は、所定の方向に伸びて互いに平行に設けられた1対のフレーム部と、各フレーム部との間に間隔をあけて各フレーム部の間に配置され、前記所定の方向に沿って、各フレーム部に対して相対的にスライド可能に設けられたスライド部と、前記スライド部から各フレーム部に向かって力を加えて、前記スライド部を各フレーム部の間で固定する固定状態と、前記スライド部が各フレーム部に対して相対的に移動可能に、前記力を弱めた、または前記力がかからない開放状態とを切替可能に、各フレーム部と前記スライド部との間に設けられ、常態で前記固定状態または前記開放状態に保持された切替部と、前記スライド部または各フレーム部に力を伝達可能に設けられ、常態で前記切替部が前記固定状態のとき、前記切替部を前記固定状態から前記開放状態に切替可能に構成され、または、常態で前記切替部が前記開放状態のとき、前記切替部を前記開放状態から前記固定状態に切替可能に構成された入力部とを、有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る入出力遮断機構は、常態で切替部が固定状態のとき、入力部に力を加えて、切替部を固定状態から開放状態に切り替えることにより、スライド部を各フレーム部に対して相対的に移動させることができる。このとき、入力部から力を伝達可能なスライド部または各フレーム部を出力にすることにより、入力部から出力側に力を伝達することができる。これにより、スライド部または各フレーム部を、各フレーム部の伸張方向に沿って直動運動させることができる。また、常態で切替部が固定状態のとき、スライド部が各フレーム部の間で固定されているため、出力側のスライド部または各フレーム部に力が加わっても、入力部には力が伝わらない。このように、本発明に係る入出力遮断機構は、常態で切替部が固定状態のとき、通常ロック式の機構となり、比較的簡単な構造で、直動運動での出力側からの逆入力を遮断することができ、入力部側の構造等が破壊されるのを防ぐことができる。
【0010】
また、常態で切替部が開放状態のとき、入力部に力を加えて、切替部を開放状態から固定状態に切り替えることにより、スライド部を各フレーム部の間で固定することができる。このとき、入力部から力を伝達可能なスライド部または各フレーム部を出力にすることにより、入力部から出力側に力を伝達することができ、スライド部および各フレーム部を移動させることができる。また、常態で切替部が開放状態のとき、スライド部が各フレーム部に対して相対的に移動可能であるため、スライド部および各フレーム部のうち、入力部から力を伝達されない方を出力にすることにより、出力側に力が加わっても入力部には力が伝わらない。このように、本発明に係る入出力遮断機構は、常態で切替部が開放状態のとき、通常フリー式の機構となり、比較的簡単な構造で、直動運動での出力側からの逆入力を遮断することができ、入力部側の構造等が破壊されるのを防ぐことができる。
【0011】
本発明に係る入出力遮断機構は、直動運動での出力側からの逆入力を遮断することができるものであれば、いかなる構成を有していてもよい。本発明に係る入出力遮断機構は、例えば、前記スライド部が、各フレーム部に対向する1対の側面に、前記所定の方向に沿って、中央部側から両方の端部側に向かって、それぞれ各フレーム部との間隔が狭くなるよう傾斜して設けられた傾斜面を有し、前記切替部は、各フレーム部に対応して、それぞれ各フレーム部と前記スライド部の各傾斜面との間に配置された2対の挟持部材を有し、各挟持部材は、各フレーム部に対向する方向の幅が、各フレーム部と前記スライド部の各傾斜面の各端部側との間隔より大きく、各フレーム部と前記スライド部の各傾斜面の前記中央部側との間隔より小さい大きさを有し、前記固定状態のとき、各挟持部材が、対応するフレーム部と前記スライド部の各傾斜面の各端部側との間にそれぞれ挟まり、前記開放状態のとき、各フレーム部に対応する各挟持部材の少なくともいずれか一方が、前記スライド部の各傾斜面の前記中央部側に配置されるよう構成されており、常態で前記固定状態に保持されるよう、各挟持部材が、それぞれ対応する前記スライド部の各傾斜面の各端部側に向かって付勢されており、前記入力部は、前記切替部を前記固定状態から前記開放状態に切り替えるよう、各フレーム部に対応する各挟持部材の少なくともいずれか一方を、その挟持部材への付勢力に抗して、前記スライド部の前記中央部側に移動可能に設けられていてもよい。この場合、通常ロック式の機構として、直動運動での出力側からの逆入力を遮断することができる。
【0012】
また、この挟持部材を有する場合、各挟持部材は、対応するフレーム部に接触して回転可能に設けられた回転体を有し、前記回転体の回転により各フレームに沿って移動するよう構成されていることが好ましい。このとき、入力部により開放状態に切り替えることにより、少なくとも各挟持部材の一方が、スライド部の中央部側に移動しているため、各挟持部材の他方が、対応するフレーム部とスライド部の各傾斜面の各端部側との間にそれぞれ挟まって、スライド部から各フレーム部に向かって力が加わった状態であっても、各回転体の回転により、比較的容易に、スライド部を各フレーム部に対して相対的に移動させることができる。
【0013】
また、この挟持部材を有する場合、前記入力部は、前記スライド部の一方の端部側から、各フレーム部と前記スライド部の各傾斜面との隙間に挿入して、前記一方の端部側で各フレーム部と前記スライド部の各傾斜面との間に挟まった各挟持部材を、前記スライド部の各傾斜面の前記中央部側に移動可能に設けられた1対の挿入部と、各挿入部で各挟持部材を前記スライド部の各傾斜面の前記中央部側に移動させた状態で、前記スライド部の前記一方の端部側の端面に接するよう設けられた接触部とを有していてもよい。このとき、スライド部を出力にすることにより、入力部から出力側に力を伝達することができると共に、出力側からの逆入力を遮断することができる。
【0014】
また、本発明に係る入出力遮断機構は、例えば、前記スライド部が、各フレーム部に対向する1対の側面に、前記所定の方向に沿って、中央部から両方の端部に向かって、それぞれ各フレーム部との間隔が狭くなるよう傾斜して設けられた傾斜面を有し、前記切替部は、各フレーム部に対応して、それぞれ各フレーム部と前記スライド部の各傾斜面との間に配置された1対の挟持部材と、各挟持部材の前記所定の方向への移動を制限するよう設けられた保持部材とを有し、各挟持部材は、各フレーム部に対向する方向の幅が、各フレーム部と前記スライド部の各傾斜面の各端部との間隔より大きく、各フレーム部と前記スライド部の前記中央部との間隔より小さい大きさを有し、前記固定状態のとき、各挟持部材が、対応するフレーム部と前記スライド部の各傾斜面のいずれかの端部側との間にそれぞれ挟まり、前記開放状態のとき、各フレーム部に対応する各挟持部材が、前記スライド部の前記中央部に配置されるよう構成されており、常態で前記開放状態に保持されるよう、前記保持部材が各挟持部材を前記開放状態での位置の方向に付勢するよう構成されており、前記入力部は、前記切替部を前記開放状態から前記固定状態に切り替えるよう、前記保持部材の付勢力に抗して、前記スライド部を前記所定の方向に沿って往復移動可能に設けられていてもよい。この場合、通常フリー式の機構として、直動運動での出力側からの逆入力を遮断することができる。また、各フレーム部を出力にすることにより、出力側からの逆入力を遮断することができる。
【0015】
また、本発明に係る入出力遮断機構は、例えば、前記切替部が、2つのアームが中央部で交わった4つのL字型部材を有し、各L字型部材は、それぞれ前記スライド部の各フレーム部に対向する両側縁の、前記所定の方向に沿った両方の端部に、各アームが各フレーム部を含む平面に沿って、前記スライド部の対応する端部の外側に向かって伸びるよう取り付けられ、前記中央部を中心として前記平面に対して垂直な軸周りに回転可能に構成され、前記固定状態のとき、各L字型部材が回転して、各L字型部材の対応するフレーム部側のアームが、対応するフレーム部に接触し、前記開放状態のとき、各L字型部材が反対側に回転して、各L字型部材の対応するフレーム部側のアームと前記フレーム部との間に隙間が生じるよう構成されており、常態で前記固定状態に保持されるよう、各L字型部材が前記固定状態のときの回転方向に付勢されており、前記入力部は、前記切替部を前記固定状態から前記開放状態に切り替えるよう、各L字型部材の対応するフレーム部とは反対側のアームを、各L字型部材への付勢力に抗して回転可能に設けられていてもよい。この場合にも、通常ロック式の機構として、直動運動での出力側からの逆入力を遮断することができる。また、スライド部を出力にすることにより、入力部から出力側に力を伝達することができると共に、出力側からの逆入力を遮断することができる。
【0016】
このL字型部材を有する場合、各L字型部材は、対応するフレーム部とは反対側のアームが、前記対応するフレーム部とは反対側のフレーム部に向かって伸びており、前記入力部は、前記スライド部の前記所定の方向に沿った各端部側から、対応する端部側の各L字型部材の前記反対側のアームを、前記スライド部に向かって同時に押すことにより、各L字型部材の前記反対側のアームを、各L字型部材への付勢力に抗して回転可能に構成されていてもよい。これにより、比較的簡単な構造で、固定状態から開放状態に切り替えることができる。
【0017】
また、本発明に係る入出力遮断機構は、例えば、前記切替部が、細長い4つのアーム部材を有し、各アーム部材は、それぞれ前記スライド部の各フレーム部に対向する両側縁の、前記所定の方向に沿った両方の端部に、各フレーム部を含む平面に沿って、中央部を中心として前記平面に対して垂直な軸周りに回転可能に構成され、前記固定状態のとき、各アーム部材が回転して、各アーム部材の対応するフレーム部側の一端部が、対応するフレーム部に接触し、前記開放状態のとき、各アーム部材が反対側に回転して、各アーム部材の前記一端部と前記フレーム部との間に隙間が生じるよう構成されており、常態で前記開放状態に保持されるよう、各アーム部材が前記固定状態のときの回転方向に付勢されており、
前記入力部は、前記切替部を前記開放状態から前記固定状態に切り替えるよう、各アーム部材の対応するフレーム部とは反対側の他端部を、各アーム部材への付勢力に抗して回転可能に設けられていてもよい。この場合、通常フリー式の機構として、直動運動での出力側からの逆入力を遮断することができる。また、各フレーム部を出力にすることにより、出力側からの逆入力を遮断することができる。
【0018】
このアーム部材を有する場合、各アーム部材は、前記一端部が、前記スライド部の対応する端部とは反対側の端部に向かって伸びており、前記他端部が、前記スライド部の対応する端部の外側に向かって伸びており、前記入力部は、前記スライド部の前記所定の方向に沿った各端部の少なくともいずれか一方の側から、対応する端部側の各アーム部材の前記他端部を、前記スライド部に向かって同時に押すことにより、各アーム部材の前記他端部を、各アーム部材への付勢力に抗して回転可能に構成されていてもよい。これにより、比較的簡単な構造で、開放状態から固定状態に切り替えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、比較的簡単な構造で、直動運動での出力側からの逆入力を遮断することができる入出力遮断機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の入出力遮断機構の、(a)常態の固定状態、(b)入力部の挿入部を、挟持部材に接触させた状態、(c)開放状態を示す平面図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態の入出力遮断機構の、(a)常態の開放状態、(b)固定状態を示す平面図である。
【
図3】本発明の第3の実施の形態の入出力遮断機構の、(a)常態の固定状態、(b)開放状態を示す平面図である。
【
図4】本発明の第4の実施の形態の入出力遮断機構の、(a)常態の開放状態、(b)固定状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態の入出力遮断機構10を示している。
図1に示すように、入出力遮断機構10は、1対のフレーム部11とスライド部12と切替部13と入力部14とを有している。
【0022】
1対のフレーム部11は、所定の方向に伸びて互いに平行に設けられている。各フレーム部11は、別々の部材により形成されていてもよく、円筒の内壁面など、1つの部材に形成されていてもよい。また、各フレーム部11は、例えば、レール状であってもよい。
【0023】
スライド部12は、各フレーム部11との間に間隔をあけて、各フレーム部11の間に配置されている。スライド部12は、各フレーム部11の伸張方向に沿って、各フレーム部11に対してスライド可能に設けられている。スライド部12は、各フレーム部11に対向する1対の側面に、各フレーム部11の伸張方向に沿って、中央部側から両方の端部側に向かって、それぞれ各フレーム部11との間隔が狭くなるよう傾斜して設けられた傾斜面12aを有している。スライド部12は、出力部を構成している。
【0024】
切替部13は、各フレーム部11に対応して、それぞれ各フレーム部11とスライド部12の各傾斜面12aとの間に配置された2対の挟持部材13aと、同じフレーム部11の側に配置された2つの挟持部材13aを連結した1対の弾性部材13bとを有している。各挟持部材13aは、円柱状の回転体から成り、対応するフレーム部11に接触して回転することにより、各フレームに沿って移動するよう設けられている。各挟持部材13aは、各フレーム部11に対向する方向の幅、すなわち直径が、スライド部12を各フレーム部11の中央に配置したとき、各フレーム部11とスライド部12の各傾斜面12aの各端部側との間隔より大きく、各フレーム部11とスライド部12の各傾斜面12aの中央部側との間隔より小さい大きさを有している。
【0025】
各弾性部材13bは、各挟持部材13aを回転可能に連結している。
図1(a)に示すように、各弾性部材13bは、連結した各挟持部材13aが、対応するフレーム部11とスライド部12の各傾斜面12aの各端部側との間に挟まれるよう、各挟持部材13aを互いに外側に向かって付勢している。なお、各弾性部材13bは、各挟持部材13aを互いに外側に向かって付勢可能であれば、いかなるものであってもよく、例えば、コイルスプリングや空気式のバネなどから成っていてもよい。また、各弾性部材13bは、バネ定数を調整可能であってもよい。
【0026】
図1(a)に示すように、切替部13は、常態で、各挟持部材13aが、それぞれ対応するスライド部12の各傾斜面12aの各端部側に向かって付勢されて、対応するフレーム部11とスライド部12の各傾斜面12aの各端部側との間にそれぞれ挟まっている。これにより、切替部13は、常態で、スライド部12から各フレーム部11に向かって力を加え、スライド部12を各フレーム部11の間で固定した固定状態に保持している。また、
図1(b)および(c)に示すように、切替部13は、各フレーム部11に対応する各挟持部材13aのいずれか一方を、スライド部12の各傾斜面12aの中央部側に配置することにより、スライド部12から各フレーム部11に向かって加えられた力を弱めた開放状態になり、スライド部12を各フレーム部11に対して移動可能になっている。
【0027】
入力部14は、各フレーム部11との間に間隔をあけて、各フレーム部11の間に配置されている。入力部14は、スライド部12の一方の端部側に配置され、各フレーム部11の伸張方向に沿って、各フレーム部11に対してスライド可能に設けられている。入力部14は、1対の挿入部14aと接触部14bとを有している。各挿入部14aは、スライド部12に向かって突出するよう設けられている。各挿入部14aは、スライド部12の一方の端部側から、それぞれ各フレーム部11とスライド部12の各傾斜面12aとの隙間に挿入可能に設けられている。
図1(b)および(c)に示すように、各挿入部14aは、その隙間に挿入したとき、各フレーム部11とスライド部12の各傾斜面12aとの間に挟まった各挟持部材13aに接触し、各挟持部材13aをスライド部12の各傾斜面12aの中央部側に移動可能に設けられている。
【0028】
接触部14bは、各挿入部14aの間に、スライド部12に向かって突出するよう設けられている。接触部14bは、突出量が、各挿入部14aの突出量よりも小さく形成されている。
図1(c)に示すように、接触部14bは、各挿入部14aで各挟持部材13aをスライド部12の各傾斜面12aの中央部側に移動させた状態で、スライド部12の一方の端部側の端面に接するよう設けられている。
【0029】
入力部14は、
図1(b)に示すように、各挿入部14aを、スライド部12の一方の端部側の各挟持部材13aに接触させて、その各挟持部材13aを、切替部13の各弾性部材13bによる付勢力に抗して、スライド部12の中央部側に移動させることにより、切替部13を固定状態から開放状態に切替可能になっている。また、
図1(c)に示すように、入力部14は、各挿入部14aで切替部13を開放状態に切り替えた後、接触部14bをスライド部12の一方の端部側の端面に接触させることにより、スライド部12に力を伝達可能になっている。
【0030】
次に、作用について説明する。
入出力遮断機構10は、通常ロック式の機構であり、スライド部12が出力になっている。入出力遮断機構10は、常態で切替部13が
図1(a)に示す固定状態のとき、入力部14をスライドさせて、切替部13を、固定状態から
図1(b)を経て、
図1(c)に示す開放状態に切り替えることにより、スライド部12を各フレーム部11に対して、各フレーム部11の伸張方向に沿って直動運動させることができる。このとき、各挟持部材13aの一方が、スライド部12の中央部側に移動しているため、各挟持部材13aの他方が、対応するフレーム部11とスライド部12の各傾斜面12aの各端部側との間にそれぞれ挟まって、スライド部12から各フレーム部11に向かって力が加わった状態であっても、回転体から成るその挟持部材13aの回転により、比較的容易に、スライド部12を各フレーム部11に対して移動させることができる。こうして、入出力遮断機構10は、入力部14から出力側のスライド部12に力を伝達することができる。
【0031】
また、入出力遮断機構10は、常態で切替部13が
図1(a)に示す固定状態のとき、スライド部12が各フレーム部11の間で固定されているため、出力側のスライド部12に力が加わっても、入力部14には力が伝わらない。このように、入出力遮断機構10は、比較的簡単な構造で、直動運動での出力側からの逆入力を遮断することができ、入力部14の側の構造等が破壊されるのを防ぐことができる。また、入出力遮断機構10は、
図1(c)に示す開放状態で入力部14に加えている力を除くことにより、各弾性部材13bの付勢力で、
図1(a)に示す常態の固定状態に戻すことができる。
【0032】
入出力遮断機構10は、各挟持部材13aの軸方向の幅を大きくすることにより、固定状体での保持力を高めることができる。これにより、例えば人を持ち上げるアームなど、大きい荷重がかかる作業を行う場合には効果的である。また、入出力遮断機構10は、重心の位置を中央に設定可能であり、対称形状にしやすい。このため、部品数を極力抑えることができ、比較的簡単な構造にすることができる。また、各弾性部材13bを、バネ定数が可変の空気式のバネにすることにより、固定状態から開放状態にする際に必要な最低限の力を変更することができる。また、入出力遮断機構10は、円筒部材の内壁面に各フレーム部11を配置することにより、円筒部材の軸方向には寸法を取るものの、径方向にはコンパクトな回転型の構造にすることもできる。また、複数の入出力遮断機構10を連結し、1つの加圧・減圧手段で全ての入出力遮断機構10の入力部14を往復移動するよう構成することにより、構造全体で固定状態と開放状態とを同時に切替可能にすることができる。
【0033】
なお、切替部13は、各挟持部材13aが、本体と回転体から成る車輪とを有し、回転体が対応するフレーム部11の側に配置され、各フレーム部11に対向する方向の幅が、各フレーム部11とスライド部12の各傾斜面12aの各端部側との間隔より大きく、各フレーム部11とスライド部12の各傾斜面12aの中央部側との間隔より小さい大きさを有していてもよい。この場合にも、開放状態のとき、車輪の各回転体の回転により、比較的容易に、スライド部12を各フレーム部11に対して移動させることができる。
【0034】
また、
図1(a)に示すように、入力部14は、2つから成り、スライド部12の他方の端部側にも設けられ、互いに内側向きおよび外側向きに、一体的に移動可能に構成されていてもよい。この場合、開放状態のとき、全ての挟持部材13aをスライド部12の中央部側に移動させることができるため、スライド部12を各フレーム部11に対して容易に移動させることができる。
【0035】
図2は、本発明の第2の実施の形態の入出力遮断機構を示している。
図2に示すように、入出力遮断機構20は、1対の支持部21と1対のフレーム部22とスライド部23と切替部24と入力部25とを有している。
【0036】
1対の支持部21は、所定の方向に伸びて互いに平行に設けられている。1対のフレーム部22は、各支持部21の間に配置され、支持部21の伸張方向と同じ方向に伸びて互いに平行に設けられている。各フレーム部22は、伸張方向に沿ってスライド可能に、各支持部21に支持されている。各フレーム部22は、別々の部材により形成されていてもよく、円筒の内壁面など、1つの部材に形成されていてもよい。また、各フレーム部22は、例えば、レール状であってもよい。各フレーム部22は、出力部を構成している。
【0037】
スライド部23は、各フレーム部22との間に間隔をあけて、各フレーム部22の間に配置されている。スライド部23は、各フレーム部22の伸張方向に沿って、各フレーム部22に対してスライド可能に設けられている。スライド部23は、各フレーム部22に対向する1対の側面に、各フレーム部22の伸張方向に沿って、中央部から両方の端部側に向かって、それぞれ各フレーム部22との間隔が狭くなるよう傾斜して設けられた傾斜面23aを有している。
【0038】
切替部24は、各フレーム部22に対応して、それぞれ各フレーム部22とスライド部23の各傾斜面23aとの間に配置された1対の挟持部材24aと、各挟持部材24aを各フレーム部22の伸張方向で挟むよう、各フレーム部22とスライド部23の各傾斜面23aとの間に配置された2対の保持部材24bとを有している。各挟持部材24aは、円柱状を成しており、各フレーム部22に対向する方向の幅、すなわち直径が、スライド部23を各フレーム部22の中央に配置したとき、各フレーム部22とスライド部23の各傾斜面23aの各端部側との間隔より大きく、各フレーム部22とスライド部23の中央部との間隔より小さい大きさを有している。
【0039】
各保持部材24bは、互いの相対的な配置が変わらないよう互いに連結されている。各保持部材24bは、各挟持部材24aの各フレーム部22の伸張方向への移動範囲を制限するよう設けられている。各保持部材24bは、各支持部21に接触しており、各フレーム部22の伸張方向に沿って、各支持部21との間の摩擦力より大きい力がかかったとき、その力の方向に移動するよう構成されている。また、各保持部材24bは、各挟持部材24aをスライド部23の中央部に向かって付勢するよう、弾性部材24cを介して、スライド部23に接続されている。弾性部材24cは、各保持部材24bと各支持部21との間の摩擦力より小さい力で、各挟持部材24aを付勢するよう構成されている。
【0040】
図2(a)に示すように、切替部24は、常態で、各保持部材24bの付勢力により、各挟持部材24aが対応するスライド部23の中央部に位置付けられており、各フレーム部22がスライド部23に対して移動可能な開放状態に保持されている。また、
図2(b)に示すように、切替部24は、各挟持部材24aが、対応するフレーム部22とスライド部23の各傾斜面23aのいずれかの端部側との間にそれぞれ挟まることにより、スライド部23に対して各フレーム部22を固定した固定状態になるよう構成されている。
【0041】
入力部25は、スライド部23を各フレーム部22の伸張方向に沿って往復移動可能に、スライド部23に取り付けられている。入力部25は、
図2(b)に示すように、スライド部23を各フレーム部22の伸張方向に沿ってスライドさせることにより、各保持部材24bの付勢力に抗して、各挟持部材24aをスライド部23の各傾斜面23aのいずれかの端部側に移動させ、切替部24を開放状態から固定状態に切替可能になっている。また、入力部25は、切替部24を固定状態に切り替えた後、各保持部材24bと各支持部21との間の摩擦力より大きい力でスライド部23をスライドさせることにより、スライド部23から各フレーム部22に力を伝達して、スライド部23と共に各保持部材24bおよび各フレーム部22をスライド可能になっている。
【0042】
次に、作用について説明する。
入出力遮断機構20は、通常フリー式の機構であり、各フレーム部22が出力になっている。入出力遮断機構20は、常態で切替部24が
図2(a)に示す開放状態のとき、入力部25によりスライド部23をスライドさせて、切替部24を開放状態から、
図2(b)に示す固定状態に切り替えることにより、スライド部23を各フレーム部22の間で固定し、スライド部23と共に各フレーム部22を、その伸張方向に沿って直動運動させることができる。こうして、入出力遮断機構20は、入力部25から出力側の各フレーム部22に力を伝達することができる。
【0043】
また、入出力遮断機構20は、常態で切替部24が
図2(a)に示す開放状態のとき、各フレーム部22がスライド部23に対して移動可能になっているため、出力側の各フレーム部22に力が加わっても、入力部25には力が伝わらない。このように、入出力遮断機構20は、比較的簡単な構造で、直動運動での出力側からの逆入力を遮断することができ、入力部25の側の構造等が破壊されるのを防ぐことができる。また、入出力遮断機構20は、
図2(b)に示す固定状態で入力部25に加えている力を除くことにより、各保持部材24bの付勢力で各挟持部材24aがスライド部23の中央部に移動するため、
図2(a)に示す常態の開放状態に戻すことができる。
【0044】
入出力遮断機構20は、重心の位置を中央に設定可能であり、対称形状にしやすい。このため、部品数を極力抑えることができ、比較的簡単な構造にすることができる。また、入出力遮断機構20は、円筒部材の内壁面に各フレーム部22を配置することにより、円筒部材の軸方向には寸法を取るものの、径方向にはコンパクトな回転型の構造にすることもできる。また、複数の入出力遮断機構20を連結し、1つの加圧・減圧手段で全ての入出力遮断機構20の入力部25を往復移動するよう構成することにより、構造全体で固定状態と開放状態とを同時に切替可能にすることができる。
【0045】
図3は、本発明の第3の実施の形態の入出力遮断機構を示している。
図3に示すように、入出力遮断機構30は、1対のフレーム部31とスライド部32と切替部33と入力部34とを有している。
【0046】
1対のフレーム部31は、所定の方向に伸びて互いに平行に設けられている。各フレーム部31は、別々の部材により形成されていてもよく、円筒の内壁面など、1つの部材に形成されていてもよい。また、各フレーム部31は、例えば、レール状であってもよい。
【0047】
スライド部32は、各フレーム部31との間に間隔をあけて、各フレーム部31の間に配置されている。スライド部32は、各フレーム部31の伸張方向に沿って、各フレーム部31に対してスライド可能に設けられている。スライド部32は、各フレーム部31に対向する両側縁の、各フレーム部31の伸張方向に沿った両方の端部に、各フレーム部31の伸張方向に沿って突出した4つの取付部32aを有している。スライド部32は、出力部を構成している。
【0048】
切替部33は、2つのアーム33b、33cが中央部で交わった4つのL字型部材33aと、4つの弾性部材33dとを有している。各L字型部材33aは、それぞれスライド部32の各取付部32aに、中央部で回転可能に取り付けられている。各L字型部材33aは、中央部を中心として、各フレーム部31を含む平面に対して垂直な軸周りに回転可能になっている。各L字型部材33aは、各アーム33b、33cが各フレーム部31を含む平面に沿って、スライド部32の対応する端部の外側に向かって伸びると共に、対応するフレーム部31とは反対側のアーム33cが、対応するフレーム部31とは反対側のフレーム部31に向かって斜めに伸びるよう取り付けられている。また、各L字型部材33aは、スライド部32を各フレーム部31の中央に配置したとき、対応するフレーム部31の側のアーム33bが、各フレーム部31とスライド部32の各取付部32aとの間隔より長く形成されている。
【0049】
各弾性部材33dは、各L字型部材33aに対応して設けられ、各L字型部材33aの対応するフレーム部31とは反対側のアーム33cと、対応するスライド部32の端部とを連結するよう設けられている。各弾性部材33dは、各L字型部材33aを、対応するフレーム部31の側のアーム33bが、その対応するフレーム部31に向かって回転する方向に付勢している。なお、各弾性部材33dは、いかなるものであってもよく、例えば、コイルスプリングや空気式のバネなどから成っていてもよい。また、各弾性部材33dは、バネ定数を調整可能であってもよい。
【0050】
図3(a)に示すように、切替部33は、常態で、各弾性部材33dにより、各L字型部材33aの対応するフレーム部31の側のアーム33bが、その対応するフレーム部31に向かって回転する方向に付勢されて、対応するフレーム部31に接触して押し付けられている。これにより、切替部33は、常態で、スライド部32から各フレーム部31に向かって力を加え、スライド部32を各フレーム部31の間で固定した固定状態に保持している。また、
図3(b)に示すように、切替部33は、各L字型部材33aを各弾性部材33dによる付勢力とは反対側に回転して、各L字型部材33aの対応するフレーム部31の側のアーム33bとそのフレーム部31との間に隙間が生じるようにすることにより、スライド部32から各フレーム部31に向かって力が加わらない開放状態になり、スライド部32を各フレーム部31に対して移動可能になっている。
【0051】
入力部34は、各フレーム部31の間で、各フレーム部31の伸張方向に沿ったスライド部32の両端側にそれぞれ配置された1対の接触部34aと、スライド部32の中心部に配置された平歯車34bと、各接触部34aからスライド部32に挿入されてスライド部32の反対側まで伸びる1対のラック34cとを有している。各接触部34aは、対応するスライド部32の端部側で、各L字型部材33aの対応するフレーム部31とは反対側のアーム33cに、スライド部32とは反対側から接触可能に設けられている。平歯車34bは、各フレーム部31の伸張方向に対して垂直な軸を中心として回転可能に配置されている。各ラック34cは、歯が互いに向かい合い、スライド部32の中心部で、平歯車34bを挟んで平歯車34bと噛み合うよう配置されている。これにより、入力部34は、各フレーム部31の伸張方向に沿って、一方の接触部34aをスライドさせたとき、他方の接触部34aも同時に、互いに外側に向かってスライド可能および、互いに内側に向かってスライド可能になっている。
【0052】
入力部34は、
図3(b)に示すように、各接触部34aを互いに内側に向かってスライドさせて、各L字型部材33aの対応するフレーム部31とは反対側のアーム33cを、スライド部32に向かって同時に押し、全てのL字型部材33aを各弾性部材dの付勢力に抗して回転させることにより、切替部33を固定状態から開放状態に切替可能になっている。また、入力部34は、切替部33を開放状態に切り替えた後、いずれか一方の接触部34aを押し続けることにより、スライド部32に力を伝達して、スライド部32をスライド可能になっている。
【0053】
次に、作用について説明する。
入出力遮断機構30は、通常ロック式の機構であり、スライド部32が出力になっている。入出力遮断機構30は、常態で切替部33が
図3(a)に示す固定状態のとき、入力部34の各接触部34aをスライドさせて、切替部33を固定状態から、
図3(b)に示す開放状態に切り替えることにより、スライド部32を各フレーム部31に対して、各フレーム部31の伸張方向に沿って直動運動させることができる。こうして、入出力遮断機構30は、入力部34から出力側のスライド部32に力を伝達することができる。
【0054】
また、入出力遮断機構30は、常態で切替部33が
図3(a)に示す固定状態のとき、スライド部32が各フレーム部31の間で固定されているため、出力側のスライド部32に力が加わっても、入力部34には力が伝わらない。このように、入出力遮断機構30は、比較的簡単な構造で、直動運動での出力側からの逆入力を遮断することができ、入力部34の側の構造等が破壊されるのを防ぐことができる。また、入出力遮断機構30は、
図3(b)に示す開放状態で入力部34に加えている力を除くことにより、各弾性部材33dの付勢力で、
図3(a)に示す常態の固定状態に戻すことができる。
【0055】
入出力遮断機構30は、重心の位置を中央に設定可能であり、対称形状にしやすい。このため、部品数を極力抑えることができ、比較的簡単な構造にすることができる。また、各弾性部材33dを、バネ定数が可変の空気式のバネにすることにより、固定状態から開放状態にする際に必要な最低限の力を変更することができる。また、入出力遮断機構30は、円筒部材の内壁面に各フレーム部31を配置することにより、円筒部材の軸方向には寸法を取るものの、径方向にはコンパクトな回転型の構造にすることもできる。また、複数の入出力遮断機構30を連結し、1つの加圧・減圧手段で全ての入出力遮断機構30の入力部34の各接触部34aを往復移動するよう構成することにより、構造全体で固定状態と開放状態とを同時に切替可能にすることができる。
【0056】
図4は、本発明の第4の実施の形態の入出力遮断機構を示している。
図4に示すように、入出力遮断機構40は、支持部41と1対のフレーム部42とスライド部43と切替部44と入力部45とを有している。
【0057】
1対のフレーム部42は、所定の方向に伸びて互いに平行に設けられている。各フレーム部42は、支持部41に支持されて、伸張方向に沿ってスライド可能になっている。各フレーム部42は、別々の部材により形成されていてもよく、円筒の内壁面など、1つの部材に形成されていてもよい。また、各フレーム部42は、例えば、レール状であってもよい。各フレーム部42は、出力部を構成している。
【0058】
スライド部43は、各フレーム部42との間に間隔をあけて、各フレーム部42の間に配置されている。スライド部43は、支持部41に接触しており、支持部41との間の摩擦力より大きい力がかかったとき、各フレーム部42の伸張方向に沿って、各フレーム部42に対してスライド可能に設けられている。スライド部43は、各フレーム部42に対向する両側縁の、各フレーム部42の伸張方向に沿った両方の端部に、各フレーム部42の伸張方向に沿って突出した4つの取付部43aを有している。
【0059】
切替部44は、細長い4つのアーム部材44aと、4つの弾性部材44bとを有している。各アーム部材44aは、それぞれスライド部43の各取付部43aに、中央部で回転可能に取り付けられている。各アーム部材44aは、中央部を中心として、各フレーム部42を含む平面に対して垂直な軸周りに回転可能になっている。各アーム部材44aは、各フレーム部42を含む平面に沿って、一端部44cが、スライド部43の対応する端部とは反対側の端部、および対応するフレーム部42に向かって斜めに伸びると共に、他端部44dが、スライド部43の対応する端部の外側、および対応するフレーム部42とは反対側のフレーム部42に向かって斜めに伸びるよう取り付けられている。また、各アーム部材44aは、スライド部43を各フレーム部42の中央に配置したとき、中央部から一端部44cまでの長さが、各フレーム部42とスライド部43の各取付部43aとの間隔より長く形成されている。
【0060】
各弾性部材44bは、各アーム部材44aに対応して設けられ、各アーム部材44aの他端部44dと、対応するスライド部43の端部とを連結するよう設けられている。各弾性部材44bは、各アーム部材44aを、他端部44dが対応するフレーム部42に向かって回転する方向、すなわち一端部44cが対応するフレーム部42から離れる方向に付勢している。各弾性部材44bは、スライド部43と支持部41との間の摩擦力より小さい力で、各アーム部材44aを付勢している。なお、各弾性部材44bは、いかなるものであってもよく、例えば、コイルスプリングや空気式のバネなどから成っていてもよい。また、各弾性部材44bは、バネ定数を調整可能であってもよい。
【0061】
図4(a)に示すように、切替部44は、常態で、各弾性部材44bにより、各アーム部材44aの一端部44cが、対応するフレーム部42から離れる方向に付勢されて、対応するフレーム部42との間に隙間が生じている。これにより、切替部44は、常態で、各フレーム部42がスライド部43に対して移動可能な開放状態に保持されている。また、
図4(b)に示すように、切替部44は、各アーム部材44aが各弾性部材44bによる付勢力とは反対側に回転して、各アーム部材44aの一端部44cが対応するフレーム部42に接触することにより、スライド部43に対して各フレーム部42を固定した固定状態になるよう構成されている。
【0062】
入力部45は、各フレーム部42の伸張方向に沿ってスライド可能に、各フレーム部42の伸張方向に沿ってスライド部43を貫通して設けられている。入力部45は、スライド部43の両端側にそれぞれ配置された1対の接触部45aを有している。各接触部45aは、それぞれ対応するスライド部43の端部側で、各アーム部材44aの他端部44dに、スライド部43とは反対側から接触可能に設けられている。
【0063】
入力部45は、
図4(b)に示すように、各フレーム部42の伸張方向に沿ってスライドさせて、いずれかの接触部45aで、その接触部45aに対応する2つのアーム部材44aの他端部44dをスライド部43に向かって同時に押し、その2つのアーム部材44aを各弾性部材44bの付勢力に抗して回転させることにより、その2つのアーム部材44aの一端部44cを対応するフレーム部42に接触させて、開放状態から固定状態に切替可能になっている。このとき、他の2つのアーム部材44aの一端部44cは、対応するフレーム部42に接触していない。また、入力部45は、切替部44を固定状態に切り替えた後、スライド部43と支持部41との間の摩擦力より大きい力で、さらに同じ方向に押してスライド部43をスライドさせることにより、スライド部43から各フレーム部42に力を伝達して、スライド部43と共に各フレーム部42をスライド可能になっている。
【0064】
次に、作用について説明する。
入出力遮断機構40は、通常フリー式の機構であり、各フレーム部42が出力になっている。入出力遮断機構40は、常態で切替部44が
図4(a)に示す開放状態のとき、入力部45をスライドさせて、切替部44を開放状態から、
図4(b)に示す固定状態に切り替えることにより、スライド部43を各フレーム部42の間で固定し、スライド部43と共に各フレーム部42を、その伸張方向に沿って直動運動させることができる。こうして、入出力遮断機構40は、入力部45から出力側の各フレーム部42に力を伝達することができる。
【0065】
また、入出力遮断機構40は、常態で切替部44が
図4(a)に示す開放状態のとき、各フレーム部42がスライド部43に対して移動可能になっているため、出力側の各フレーム部42に力が加わっても、入力部45には力が伝わらない。このように、入出力遮断機構40は、比較的簡単な構造で、直動運動での出力側からの逆入力を遮断することができ、入力部45の側の構造等が破壊されるのを防ぐことができる。また、入出力遮断機構40は、
図4(b)に示す固定状態で入力部45に加えている力を除くことにより、各弾性部材44bの付勢力で、
図4(a)に示す常態の開放状態に戻すことができる。
【0066】
入出力遮断機構40は、重心の位置を中央に設定可能であり、対称形状にしやすい。このため、部品数を極力抑えることができ、比較的簡単な構造にすることができる。また、各弾性部材44bを、バネ定数が可変の空気式のバネにすることにより、開放状態から固定状態にする際に必要な最低限の力を変更することができる。また、入出力遮断機構40は、円筒部材の内壁面に各フレーム部42を配置することにより、円筒部材の軸方向には寸法を取るものの、径方向にはコンパクトな回転型の構造にすることもできる。また、複数の入出力遮断機構40を連結し、1つの加圧・減圧手段で全ての入出力遮断機構40の入力部45を往復移動するよう構成することにより、構造全体で固定状態と開放状態とを同時に切替可能にすることができる。
【0067】
なお、入出力遮断機構40は、入力部45を、例えば、
図3に示す入力部34と同様の構成にすることにより、入力部45の一方の接触部45aを、各フレーム部42の伸張方向に沿ってスライドさせたとき、他方の接触部45aも同時に、互いに外側に向かってスライド可能および、互いに内側に向かってスライド可能になっていてもよい。この場合、一方の接触部45aをスライドさせることにより、全てのアーム部材44aの一端部44cを、それぞれ対応するフレーム部42に接触させることができ、固定状態のときに、より強固に固定することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 (本発明の第1の実施の形態の)入出力遮断機構
11 フレーム部
12 スライド部
12a 傾斜面
13 切替部
13a 挟持部材
13b 弾性部材
14 入力部
14a 挿入部
14b 接触部
20 (本発明の第2の実施の形態の)入出力遮断機構
21 支持部
22 フレーム部
23 スライド部
23a 傾斜面
24 切替部
24a 挟持部材
24b 保持部材
24c 弾性部材
25 入力部
30 (本発明の第3の実施の形態の)入出力遮断機構
31 フレーム部
32 スライド部
32a 取付部
33 切替部
33a L字型部材
33b、33c アーム
33d 弾性部材
34 入力部
34a 接触部
34b 平歯車
34c ラック
40 (本発明の第4の実施の形態の)入出力遮断機構
41 支持部
42 フレーム部
43 スライド部
43a 取付部
44 切替部
44a アーム部材
44c 一端部
44d 他端部
44b 弾性部材
45 入力部
45a 接触部