(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186401
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】対象物の変位量測定方法および変位量測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
G01B11/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094601
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】松本 高明
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA09
2F065AA14
2F065BB15
2F065BB28
2F065FF04
2F065FF61
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065JJ03
2F065LL50
2F065MM07
2F065QQ03
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065UU09
(57)【要約】
【課題】新たな対象物の変位量測定方法の提供
【解決手段】
対象物の変位量測定方法は、以下の工程A~Dを含んでいる。
(A)マークAと、マークAから予め定められた距離に配置されたマークBとを一平面に有するマーカ12を測定対象物Mに取り付ける工程、
(B)カメラ11の撮像方向にマーカ12の一平面が向けられた測定対象物Mの基準画像を得る工程
(C)測定対象物Mの基準画像から、マークAとマークBとをパターンマッチングで認識する工程
(D)測定対象物Mの基準画像におけるマークAとマークBとの距離に基づいて、基準解像度を得る工程
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マークAと、前記マークAから予め定められた距離に配置されたマークBとを一平面に有するマーカを測定対象物に取り付ける工程と、
カメラの撮像方向に前記マーカの前記一平面が向けられた測定対象物の基準画像を得る工程と、
前記測定対象物の基準画像から、前記マークAと前記マークBとをパターンマッチングで認識する工程と、
前記測定対象物の基準画像における前記マークAと前記マークBとの距離に基づいて、基準解像度を得る工程と
を含む、対象物の変位量測定方法。
【請求項2】
前記マークAと前記マークBとの距離は、前記マークAで特定される1つの点と、前記マークBで特定される1つの点との距離で定められる、請求項1に記載された対象物の変位量測定方法。
【請求項3】
前記マークAと前記マークBが異なる模様で印されており、前記マークAと前記マークBとは、パターンマッチングで特定される、請求項1または2に記載された対象物の変位量測定方法。
【請求項4】
前記基準画像から前記測定対象物が変位した変位画像を得る工程と、
前記変位画像における前記マークAと前記マークBとの距離の変化量と、基準解像度とに基づいて、前記測定対象物の変位量を得る工程と
をさらに含む、請求項3に記載された対象物の変位量測定方法。
【請求項5】
前記マークAと前記マークBが同じ模様で印されており、前記マークAと前記マークBとは、パターンマッチングで特定される、請求項1または2に記載された対象物の変位量測定方法。
【請求項6】
前記一平面には、前記マークAと前記マークBとは異なる模様が印されたマークCが含まれており、前記マークCがパターンマッチングで特定され、
前記変位画像における前記マークAと前記マークCとの距離の変化量と、基準解像度とに基づいて、前記測定対象物の変位量を得る工程と
をさらに含む、請求項5に記載された対象物の変位量測定方法。
【請求項7】
前記マークAと前記マークCとの距離は、前記マークAで特定される1つの点と、前記マークCで特定される1つの点との距離で定められる、請求項6に記載された対象物の変位量測定方法。
【請求項8】
カメラと、
測定対象物に取り付けられるマーカと、
画像処理装置と
を備え、
前記マーカは、マークAと、前記マークAから予め定められた距離に配置されたマークBとを一平面に有し、
前記画像処理装置は、
前記カメラの撮像方向に前記マーカの前記一平面が向けられた測定対象物の基準画像を得る処理と、
前記測定対象物の基準画像から、前記マークAと前記マークBとをパターンマッチングで認識する処理と、
前記測定対象物の画像の前記マークAと前記マークBとの距離に基づいて、基準解像度を得る処理と
が実行されるように構成された、変位量測定装置。
【請求項9】
前記マークAと前記マークBとの距離は、前記マークAで特定される1つの点と、前記マークBで特定される1つの点との距離で定められるように構成された、請求項8に記載された変位量測定装置。
【請求項10】
前記マークAと前記マークBが異なる模様で印されており、前記マークAと前記マークBとは、パターンマッチングで特定されるように構成された、請求項8または9に記載された変位量測定装置。
【請求項11】
前記基準画像から前記測定対象物が変位した変位画像を得る処理と、
前記変位画像における前記マークAと前記マークBとの距離の変化量と、基準解像度とに基づいて、前記測定対象物の変位量を得る処理と
がさらに実行されるように構成された、請求項10に記載された変位量測定装置。
【請求項12】
前記マークAと前記マークBが同じ模様で印されており、前記マークAと前記マークBとは、パターンマッチングで特定されるように構成された、請求項8または9に記載された変位量測定装置。
【請求項13】
前記マーカは、前記マークAとマークBが印刷されたシールで構成されている、請求項8から12までの何れか一項に記載された変位量測定装置。
【請求項14】
前記一平面には、前記マークAと前記マークBとは異なる模様が印されたマークCが含まれており、前記マークCがパターンマッチングで特定され、
前記変位画像における前記マークAと前記マークCとの距離の変化量と、基準解像度とに基づいて、前記測定対象物の変位量が得られるように構成された、請求項12または13に記載された変位量測定装置。
【請求項15】
前記マークAと前記マークCとの距離は、前記マークAで特定される1つの点と、前記マークCで特定される1つの点との距離で定められるように構成された、請求項14に記載された変位量測定装置。
【請求項16】
前記マーカは、前記マークAと前記マークBと前記マークCが印刷されたシールで構成されている、請求項14または15に記載された変位量測定装置。
【請求項17】
前記カメラが、前記一平面と正対していることを判定するように構成された判定部を備えた、請求項8から16までの何れか一項に記載された変位量測定装置。
【請求項18】
前記判定部は、カメラの撮影方向に沿って照射されるレーザを照射する照射部と、反射したレーザを受光する受光部とを有し、前記一平面で反射したレーザが前記受光部で受光されることによって、カメラがマーカの一平面に対して正対していることが判定されるように構成された、請求項17に記載された変位量測定装置。
【請求項19】
前記判定部は、カメラの撮影方向に沿って照射される十字や予め定められた形状のレーザ光を照射する照射部と、前記一平面に照射された十字や予め定められた形状の精度が評価されることによって、カメラがマーカの一平面に対して正対していることが判定されるように構成された、請求項17に記載された変位量測定装置。
【請求項20】
前記判定部は、マーカに印されたマークの形状が精度良く写っているかが撮影画像を基に判定されるように構成された、請求項17に記載された変位量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の変位量測定方法および変位量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2017/029905A1には、単一のデジタルカメラによる面外変位分布計測方法、単一のデジタルカメラによる面内・面外変位同時計測方法なる発明が開示されている。同公報によれば、単一デジタル(ビデオ)カメラから物体表面に貼り付けたまたは転写した格子マーカをデジタル(ビデオ)カメラで撮影し、画像処理により画像上の格子ピッチの位相の面外変位による微小変化からサンプリングモアレ法を利用してその面外変位量を定量的に求める。また同様に同一格子の位相の面内・面外変位による微小変化からサンプリングモアレ法を利用してその面外・面内変位量を定量的に求め見かけ上の面内変位の影響を除外して3次元変位量を求めるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開番号WO2017/029905A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者は、WO2017/029905A1に開示される技術について、モアレ模様の面外変位測定では1ピクセル単位で格子幅が計測されているため精度が向上しにくく誤差が生じやすい、と考えている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示される対象物の変位量測定方法は、以下の工程A~Dを含んでいる。
(A)マークAと、マークAから予め定められた距離に配置されたマークBとを一平面に有するマーカを測定対象物に取り付ける工程
(B)カメラの撮像方向にマーカの一平面が向けられた測定対象物の基準画像を得る工程
(C)測定対象物の基準画像から、マークAとマークBとをパターンマッチングで認識する工程
(D)測定対象物の基準画像におけるマークAとマークBとの距離に基づいて、基準解像度を得る工程
【0006】
かかる変位量測定方法によれば、パターンマッチングを利用した画像処理によって、測定対象物Mの基準画像の解像度が基準解像度として得られる。
【0007】
マークAとマークBとの距離は、マークAで特定される1つの点と、マークBで特定される1つの点との距離で定められてもよい。マークAとマークBが異なる模様で印されており、マークAとマークBとがパターンマッチングで特定されてもよい。この場合、基準画像から測定対象物が変位した変位画像を得る工程と、変位画像におけるマークAとマークBとの距離の変化量と、基準解像度とに基づいて、測定対象物の変位量を得る工程とがさらに含まれていてもよい。
【0008】
また、マークAとマークBが同じ模様で印されており、マークAとマークBとがパターンマッチングで特定されてもよい。この場合、マーカの一平面には、マークAとマークBとは異なる模様が印されたマークCが含まれており、マークCがパターンマッチングで特定されてもよい。この場合、変位画像におけるマークAとマークCとの距離の変化量と、基準解像度とに基づいて、測定対象物の変位量を得る工程とがさらに含まれていてもよい。マークAとマークCとの距離は、マークAで特定される1つの点と、マークCで特定される1つの点との距離で定められてもよい。
【0009】
このように、ここでは対象物の変位量測定方法に関し、新たな方法が提案されている。
【0010】
また、ここで開示される変位量測定装置は、カメラと、測定対象物に取り付けられるマーカと、画像処理装置とを備えている。マーカは、マークAと、マークAから予め定められた距離に配置されたマークBとを一平面に有している。画像処理装置は、以下の処理a~cが実行されるように構成されているとよい。
(a)カメラの撮像方向にマーカの一平面が向けられた測定対象物の基準画像を得る処理
(b)測定対象物の基準画像から、マークAとマークBとをパターンマッチングで認識する処理
(c)測定対象物の画像のマークAとマークBとの距離に基づいて、基準解像度を得る処理
【0011】
かかる変位量測定装置によれば、パターンマッチングを利用した画像処理によって、測定対象物Mの基準画像の解像度が基準解像度として得られる。
【0012】
マークAとマークBとの距離は、マークAで特定される1つの点と、マークBで特定される1つの点との距離で定められるように構成されてもよい。マークAとマークBとは異なる模様で印されており、マークAとマークBとは、パターンマッチングで特定されるように構成されていてもよい。
【0013】
画像処理装置は、基準画像から測定対象物が変位した変位画像を得る処理と、変位画像におけるマークAとマークBとの距離の変化量と、基準解像度とに基づいて、測定対象物の変位量を得る処理とがさらに実行されるように構成されていてもよい。
【0014】
一平面には、マークAとマークBとが同じ模様で印されており、マークAとマークBとは、パターンマッチングで特定されるように構成されていてもよい。マーカは、マークAとマークBが印刷されたシールで構成されていてもよい。
【0015】
一平面には、マークAとマークBとは異なる模様が印されたマークCが含まれており、マークCがパターンマッチングで特定され、変位画像におけるマークAとマークCとの距離の変化量と、基準解像度とに基づいて、測定対象物の変位量が得られるように構成されていてもよい。マークAとマークCとの距離は、マークAで特定される1つの点と、マークCで特定される1つの点との距離で定められるように構成されていてもよい。マーカは、マークAとマークBとマークCが印刷されたシールで構成されていてもよい。
【0016】
変位量測定装置は、カメラが、一平面と正対していることを判定するように構成された判定部を備えていてもよい。
【0017】
判定部は、カメラの撮影方向に沿って照射されるレーザを照射する照射部と、反射したレーザを受光する受光部とを有し、一平面で反射したレーザが受光部で受光されることによって、カメラがマーカの一平面に対して正対していることが判定されるように構成されてもよい。
【0018】
判定部は、カメラの撮影方向に沿って照射される十字や予め定められた形状のレーザ光を照射する照射部と、一平面に照射された十字や予め定められた形状の精度が評価されることによって、カメラがマーカの一平面に対して正対していることが判定されるように構成されてもよい。判定部は、マーカに印されたマークの形状が精度良く写っているかが撮影画像を基に判定されるように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、ここで開示される変位量測定装置10の模式図である。
【
図2】
図2は、
図1においてカメラ11で撮影された画像の変化の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、カメラ11の撮影範囲の変化を示す模式図である。
【
図4】
図4は、カメラ11と測定対象物Mの距離が変化した際のポイントPa、ポイントPcの動きを示す模式図である。
【
図5】
図5は、カメラ11の撮影範囲S3とS4の変化を示す模式図である。
【
図6】
図6は、撮影範囲S4におけるポイントPdとPeの動きを示す模式図である。
【
図7】
図7は、撮影範囲がS3からS4に変化したことに起因する、ポイントPdとPeの変位量を示す模式図である。
【
図8】
図8は、マーカ12の一例を示す平面図である。
【
図9】
図9は、他の形態に係るマーカ12Aの模式図である。
【
図10】
図10は、他の形態に係るマーカ12Bを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、ここで開示される発明の一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。本発明は、特に言及されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、ここで開示される変位量測定装置10の模式図である。
図2は、
図1においてカメラ11で撮影された画像の変化の一例を示す模式図である。
【0022】
〈変位量測定装置10〉
変位量測定装置10は、カメラ11と、測定対象物Mに取り付けられるマーカ12と、画像処理装置13とを備えている。
【0023】
〈カメラ11〉
カメラ11は、測定対象物Mを撮影するための撮影装置である。カメラ11は、
図1に示されているように、撮影方向を測定対象物Mに向けてように配置されているとよい。カメラ11は、図示は省略するが、例えば、イメージセンサとレンズを備えており、ピント調整機構などを備えているとよい。このようなカメラ11は、適宜に市販のカメラが採用されうる。カメラ11は、一台の単眼カメラでもよい。カメラ11のイメージセンサには、CCDやCMOSセンサが採用されうる。
【0024】
本発明者は、カメラ11で測定対象物Mを撮影し、カメラ11で撮影された測定対象物Mの画像を基に、測定対象物Mの変位を解析することを考えている。測定対象物Mの変位を精度良く得るには、カメラ11の撮影範囲の変化を考慮して測定対象物Mの変位を求める必要がある。
【0025】
例えば、
図1および
図2に示されているように、カメラ11で撮影された画像の面外方向zに測定対象物Mが変位すると、測定対象物Mの変位に応じてカメラ11の撮影範囲が変化する。測定対象物Mが、カメラ11に対して移動すると、カメラ11の撮影範囲は、カメラ11と測定対象物Mとの距離に応じて変化する。つまり、測定対象物Mにピントを合わせると、撮影範囲が変化する。撮影範囲が変化すると、カメラ11で撮影された画像における測定対象物Mの位置が変化する。これに限らず、カメラ11と測定対象物Mの相対的な位置が変化した場合などで、測定対象物Mの同一平面上で撮影範囲が変化しうる。カメラ11で撮影された画像に基づいて、測定対象物Mの変位を精度良く得るには、カメラ11の撮影範囲の変化を考慮して解析する必要がある。
【0026】
図3は、カメラ11の撮影範囲の変化を示す模式図である。
図4は、カメラ11と測定対象物Mの距離が変化した際のポイントPa、ポイントPcの動きを示す模式図である。
図3では、カメラ11と測定対象物Mの距離(撮影距離)が遠い時の撮影範囲S1が太線で示されおり、撮影距離が近い時の撮影範囲S2が2点鎖線で示されている。また、カメラ11と測定対象物Mの距離が近い時の撮影範囲S2の目盛りが細線で示されている。
図4では、カメラ11と測定対象物Mの距離が近づいた後の撮影範囲S2において、撮影距離が近づく前のポイントPaの位置Pa1とポイントPcの位置Pc1と、におけるポイントPaの位置Pa2とマークCの位置Pc2とがそれぞれ示されている。
【0027】
図3および
図4に示されているように、カメラ11と測定対象物Mの距離が変化することによって、撮影範囲がS1からS2に変化する。撮影範囲がS1からS2に変化すると、
図4に示されているように、撮影画像においてポイントPaとポイントPcの位置が動く。ポイントPaとポイントPcの実際の距離は変わらない。しかし、
図3に示されているように、撮影距離が変化するとカメラ11の撮影範囲S1,S2が変わる。このため、カメラ11で撮影された画像において、ポイントPaとポイントPcの距離は、K1からK2に変化する。しかし、かかるK1からK2への距離の変化は、S1からS2への撮影範囲の変化もある。このため、ポイントPaの変位(マーカ12の変位)は、不明である。
【0028】
カメラ11の撮影範囲におけるポイントPaの面内座標を直交するXY座標で表す。カメラ11と測定対象物Mの距離が近づく前のポイントPaの位置Pa1の面内座標は、(X1,Y1)である。撮影画像においてポイントPa,Pc間のピクセル数がaであるとする。また、ポイントPa,Pc間の実際の距離がsであるとする。s=a×qで計算されうる。ここで、qは、画像の解像度である。解像度qは、q=s/aで計算されうる。つまり、ポイントPa,Pc間の実際の距離sが予め分かっていれば、解像度qは計算できる。
【0029】
カメラ11と測定対象物Mの距離が近づいた後のポイントPaの位置Pa2の面内座標は、(X2,Y2)である。撮影画像における2点の実際の距離sが既知である場合、撮影画像における2点の座標が分かれば、撮影画像における2点の座標間のx軸方向のピクセル数と、y軸方向のピクセル数とが得られる。撮影画像における2点の座標間のx軸方向のピクセル数と、y軸方向のピクセル数とが得られると、撮影画像における2点の距離をピクセル数で得られる。撮影画像における2点の実際の距離が既知であるので、撮影画像における2点の距離がピクセル数で得られると、画像の解像度が分かる。撮影画像におけるマーカ12のうち2点の実際の距離sが既知である場合、画像の解像度の変化が分かり、さらにポイントPaの変位を割り出すことができる。さらに、マーカ12のうち2点がパターンマッチング処理で特定できる場合、コンピュータによる画像処理によって、カメラ11の撮影画像から、マーカ12の変位,測定対象物Mの変位が割り出される。また、マーカ12のうち2点は、一平面に設けられているとよい。
【0030】
図5から
図7は、撮影範囲が変化した場合の事象をさらに示す図である。
図5は、カメラ11の撮影範囲S3とS4の変化を示す模式図である。
図6は、撮影範囲S4におけるポイントPdとPeの動きを示す模式図である。
図7は、撮影範囲がS3からS4に変化したことに起因する、ポイントPdとPeの変位量を示す模式図である。
図5から
図7に示された例では、ポイントPdは、Pd1からPd2に移動する。ポイントPeは、Pe1からPe2に移動する。
【0031】
ポイントPdとポイントPeは、
図5に示されているように、カメラ11の撮影範囲において、X方向にu1,Y方向にそれぞれv1変化している。ポイントPdとポイントPeが、例えば、測定対象物Mに取り付けられマーカ12の同一平面に記されている場合(
図1参照)、ポイントPdとポイントPeは、X方向およびY方向にそれぞれ同じ量変位する。
【0032】
図5に示されているように、ポイントPdの移動元の位置をPd1とし、その座標を(d1x,d1y)とする。ポイントPdの移動先の位置をPd2とし、その座標を(d2x,d2y)とする。ポイントPeの移動元の位置をPe1とし、その座標を(e1x,e1y)とする。ポイントPeの移動先の位置をPe2とし、その座標を(e2x,e2y)とする。
【0033】
図5に示されているように、撮影範囲S3が変化しない場合、ポイントPdとポイントPeが移動しても、ポイントPdとポイントPeの見かけ上の距離t3は変わらない。つまり、
図5に示された移動前の位置Pd1とPe1の距離と、移動後の位置Pd2とPe2の距離は、撮影範囲S3では、見かけ上では変わらず、ともにt3である。
【0034】
ポイントPdとポイントPeが、それぞれPd2、Pe2に移動すると、撮影範囲がS3からS4に変化しうる。撮影範囲がS3からS4に変化すると、
図6に示されているように、カメラ11(
図1参照)の撮影範囲S4において、ポイントPdは、位置Pd1からPd2に移動する。ポイントPeは、位置Pe1からPe2に移動する。
図6では、ポイントPdの変位量MdのうちX方向の変位量はXdMとされ、Y方向の変位量はYdMとされている。ポイントPeの変位量MeのうちX方向の変位量はXeMとされ、Y方向の変位量はYeMとされている。
【0035】
撮影範囲S4では、見かけ上、ポイントPdとポイントPeの距離t3が距離t4に変化する。距離t3が距離t4に変化するのは、
図5に示されているように、ポイントPdとポイントPeとがそれぞれ移動し、かつ、撮影範囲S3からS4に変化した結果である。ここで、撮影範囲が変化する前のポイントPdとポイントPeの見かけ上の距離t3は、ピクセル数β3と撮影範囲S3の解像度を基に把握される。撮影範囲が変化した後のポイントPdとポイントPeの見かけ上の距離t4は、ピクセル数β4と撮影範囲S4の解像度を基に取得されうる。ピクセル数β3,β4は、それぞれX方向およびY方向のピクセル数を基に取得されうる。
【0036】
ポイントPdとポイントPeの実際の距離tが既知である場合には、ポイントPdとポイントPeの見かけ上の距離t3が分かると、撮影範囲S3の解像度q3が分かる。また、撮影範囲が変化した後のポイントPdとポイントPeの見かけ上の距離t4が分かると、撮影範囲S4の解像度q4が分かる。さらに、撮影範囲S3とS4との間での解像度の変化量(q4-q3)が分かる。また、カメライメージセンサ水平距離(isk)と、レンズ焦点距離(rsk)は、カメラ11の仕様を基に得られる。面外変位量Δzは、解像度変化とカメライメージセンサ水平距離をiskとし、レンズ焦点距離をrskとすると
Δz=(q4-q3)×(isk/rsk)となる。
【0037】
次に、
図7を説明する。撮影範囲S3での移動後のポイントPdの位置Pd2(
図5参照)は、
図7では、撮影範囲S4ではPd3で示されている。さらに、撮影範囲S3での移動後のポイントPeの位置Pe2(
図5参照)は、
図7では、Pe3で示されている。
図7に示されているように、撮影範囲がS3からS4に変化したことに起因する、ポイントPdの変位量はMd1である。撮影範囲がS3からS4に変化したことに起因する、ポイントPeの変位量はMe1である。変位量Md1をXY方向に分解すると、X方向成分はXd1であり、Y方向成分はYd1である。
図7に示された例では、Yd1=0である。変位量Me1をXY方向に分解すると、X方向成分はXe1であり、Y方向成分はYe1である。
【0038】
ここで、
図7に示されているように、XdM=u1+Xd1,YdM=v1+Yd1,XeM=u1+Xe1,YeM=v1+Ye1である。このように、{実際に計測された変位量(XdM,YdMなど)=実際の変位量(u1,v1)+カメラ11の撮影範囲の変化に起因する変位量(Xd1,Yd1など)}の関係が成り立つ。このため、実際に計測された変位量(XdM,YdMなど)と、カメラ11の撮影範囲の変化に起因する変位量(Xd1,Yd1など)とが得られると、ポイントPdとPeの実際の動き(u1,v1)(
図5参照)が得られる。
【0039】
変位量(XdM,YdMなど)は、カメラ11で撮影された画像における2点のポイント(Pd,Pe)の座標から算出される。カメラ11の撮影範囲の変化(つまり、面外方向における撮影範囲の変化Δz)は、上述のようにΔz=(q4-q3)×(isk/rsk)で得られる。撮影範囲S3での2点のポイント(Pd,Pe)の距離がt3であり、撮影範囲S4での2点のポイント(Pd,Pe)の距離がt4である。この場合、カメラ11の撮影範囲の変化に起因する変位量(Xd1,Yd1など)は、撮影範囲S3におけるPdとPeの移動元の座標(d1x,d1y),(e1x,e1y)に対して、(t4/t3-1)の関係がある。
【0040】
図7に示された例では、
Xd1=d1x(t4/t3-1);
Xe1=e1x(t4/t3-1);
Yd1=d1y(t4/t3-1);
Ye1=e1y(t4/t3-1);
となる。ここで、撮影範囲S3におけるPdとPeの移動元の座標(d1x,d1y),(e1x,e1y)が代入されることによって、Xd1,Xe1,Yd1およびYe1が得られる。このように、カメラ11の撮影範囲の変化に起因する変位量(Xd1,Yd1など)は、演算で求められる。
【0041】
2点間距離(t)が既知である少なくとも2点のポイント(Pd,Pe)が撮影された画像において把握されると、カメラ11の撮影範囲が変化する場合でも、カメラ11で撮影された2点間距離(t)が既知である2点のポイント(Pd,Pe)の動きが分かる。実際に計測された変位量(XdM,YdMなど)は、カメラ11で撮影された画像から把握される2点のポイント(Pd,Pe)に基づいて把握される。2点のポイント(Pd,Pe)の実際の変位量(u1,v1)は、同じである。また、2点のポイント(Pd,Pe)の2点間距離(t)は既知であることから、カメラ11の撮影範囲の変化に起因する解像度の変化量が分かる。カメラ11の撮影範囲の変化に起因する変位量(Xd1,Yd1など)は、演算で求められる。さらに、XdM=u1+Xd1,YdM=v1+Yd1,XeM=u1+Xe1,YeM=v1+Ye1が成り立つ。このため、実際に計測された変位量(XdM,YdMなど)と、カメラ11の撮影範囲の変化に起因する変位量(Xd1,Yd1など)とが得られると、実際の変位量(u1,v1)が演算で求められる。
【0042】
このように、2点間距離(t)が既知である少なくとも2点のポイント(Pd,Pe)が撮影された画像において把握されると、カメラ11の撮影範囲が変化する場合でも、カメラ11で撮影された2点のポイント(Pd,Pe)の動きから、ポイントPdとPeの実際の動き(u1,v1)が得られる(
図7参照)。
【0043】
このため、2点間距離(t)が既知である少なくとも2点のポイント(Pd,Pe)が撮影された画像において把握されるようなマーカ12が用意されるとよい。そして、
図1に示されているように、マーカ12が、測定対象物Mに取り付けられており、マーカ12と測定対象物Mとが一緒に撮影されると、測定対象物Mが移動するとともにカメラ11の撮影範囲が変化する場合でも、マーカ12に付された2点のポイント(Pd,Pe)が、撮影された画像から取得される。そして、カメラ11で撮影された2点のポイント(Pd,Pe)の動きから、ポイントPdとPeの実際の動き(u1,v1)が得られる(
図7参照)。
【0044】
〈マーカ12〉
マーカ12は、
図1に示されているように、測定対象物Mに取り付けられる部材である。
図8は、マーカ12の一例を示す平面図である。マーカ12は、
図8に示されているように、マークA,マークBおよびマークCを有している。マークA,マークBおよびマークCは、マーカ12の一平面に設けられている。ここで、マークAとマークBは、同じ模様である。同じ模様であるマークAとマークBは、マークAから予め定められた距離sに配置されている。マークCは、マークAとマークBとは異なる模様である。マークAとマークCとの距離は、予め分かっていなくてもよい。
【0045】
図8に示された形態では、マーカ12は、矩形のマークであり、8×2の格子の区画が設定されている。当該8×2の格子の区画には、
図8に示されているように、黒色に塗られた正方形の領域と、白色に塗られた正方形の領域とが、千鳥に配置されている。このマーカ12では、黒色に塗られた正方形の領域が左上と右下に配置される部分の矩形領域12a,12bと、黒色に塗られた正方形の領域が右上と左下に配置される部分の矩形領域12cとが生じる。ここで、矩形領域12a、12bは、黒色に塗られた正方形の領域が左上と右下に配置されており、画像処理において局所的には同じ模様と認識されうる。矩形領域12cは、黒色に塗られた正方形の領域が右上と左下に配置される。矩形領域12cと、矩形領域12a,12bとは鏡面対称性を有するが一致しない。このため、矩形領域12cは、画像処理において矩形領域12a,12bとは異なる模様と認識される。マーカ12は、測定対象物Mに設定されるX,Yの直交する2方向に沿って格子の区画が配置されるとよい。
【0046】
〈測定対象物M〉
ここで、測定対象物Mは、例えば、振動テストでテストされる被検査対象物でありうる。この場合、加振機に取り付けられ、振動が加えられる。振動テストでテストされる被検査対象物は、種々、挙げられる。被検査対象物は、車載される電池、機器、装置などでありうる。被検査対象物には、複数の電池が組み込まれた電池パックのような車載電池が含まれる。マーカ12は、かかる被検査対象物としての測定対象物Mに取り付けられているとよい。カメラ11は、
図1に示されているように、測定対象物Mに取り付けられたマーカ12に向けられているとよい。
図1では、測定対象物Mは、カメラ11の撮影範囲においてM1からM2で示されているように移動する。
【0047】
ここで、測定対象物Mは、
図1に示されているように、カメラ11の撮影領域において面内方向および面外方向の任意の方向に移動しうる。ここで面内方向は、撮影領域における水平面に沿った移動であり、x方向、y方向で表されうる。面外方向は、撮影領域における撮影方向に沿った移動であり、z方向で表されうる。測定対象物Mは、カメラ11の撮影領域において面内方向および面外方向に移動する。測定対象物Mが撮影された画像では、
図2に示されているように、マーカ12の位置や大きさが変化する。マーカ12は、かかる被検査対象物としての測定対象物Mの予め定められた位置にそれぞれ取り付けられていてもよい。この場合、マーカ12が取り付けられた部位の局所的な変位が観察できる。例えば、電池パックの筐体や、筐体に固定された電池モジュールや各電池セルなどに、それぞれマーカ12が取り付けられていてもよい。
【0048】
〈画像処理装置13〉
画像処理装置13は、変位量測定装置10において測定対象物Mの画像を処理する装置である。画像処理装置13は、例えば、予め定められたプログラムに沿って駆動するコンピュータによって具現化されうる。具体的には、画像処理装置13の各機能は、画像処理装置13を構成する各コンピュータの演算装置(プロセッサ、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-processing unit)とも称される)や記憶装置(メモリーやハードディスクなど)と、ソフトウエアとの協働によって処理される。例えば、画像処理装置13の各構成および処理は、コンピュータによって具現化されるデータを予め定められた形式で記憶するデータベース、データ構造、予め定められたプログラムに従って所定の演算処理を行う処理モジュールなどとして、または、それらの一部として具現化されうる。画像処理装置13の処理は、1つのコンピュータで実行されてもよい。また、画像処理装置13の処理は、複数のコンピュータで実行されてもよい。また、画像処理装置13の処理は、カメラ11の内部に組み込まれたコンピュータや外部のコンピュータと協働で実行されてもよい。例えば、画像処理装置13に記憶される情報または一部の情報を、外部のコンピュータが記憶してもよい。また、画像処理装置13が実行する処理または処理の一部を、外部のコンピュータが実行してもよい。
【0049】
画像処理装置13は、変位量を測定するのに必要な処理が実行されるように構成されている。変位量を測定するのに必要な処理には、例えば、以下の処理13a~13cが含まれる。処理13a~13cは、変位量を測定するのに必要な処理のうち、基準解像度を得るための処理である。処理13a~13cは、画像処理装置13に組み込まれた処理モジュールによる処理で具現化されうる。
【0050】
〈処理13a〉
処理13aは、カメラ11の撮像方向にマーカ12の一平面が向けられた測定対象物Mの基準画像を得る処理である。マーカ12の一平面の法線方向が、カメラ11の撮像方向に向けられているとよい。ここで処理13aは、
図1において、例えば、初期の位置M1における測定対象物Mの画像が、基準画像として得られるとよい。
図1に示された例では、測定対象物Mの位置M1は、移動後の測定対象物Mの位置M2よりもカメラ11からの距離が遠い。このため、
図2に示されているように、カメラ11の撮影範囲において片側に寄っている。
【0051】
〈処理13b〉
処理13bは、測定対象物Mの基準画像から、マークAとマークBとをパターンマッチングで認識する処理である。
図2および
図8に示された形態では、マークAとマークBとの模様が、画像処理装置13に予め定め記憶されている。マークAとマークBとには、同じ模様で印されており、パターンマッチングで特定される。このため、画像処理装置13において、マークAとマークBは容易に精度良く特定される。処理13bでは、例えば、マーカ12の中から矩形領域12aの模様が画像処理でマークAとして認識される。次に、パターンマッチングによって、マーカ12のうちマークAと同じ模様が付された矩形領域12bの模様がマークBとして認識される。
【0052】
〈処理13c〉
処理13cは、測定対象物Mの画像のマークAとマークBとの距離に基づいて、基準解像度を得る処理である。処理13cでは、撮影された基準画像における測定対象物Mの画像のマークAとマークBとの距離が演算される。
図2および
図8に示された形態では、マークAでは、黒色に塗られた正方形の領域が対角に配置されている。当該正方形の領域の交点が、マークAの中心位置Paとして認識されるように構成されている。マークBについても、同様に対角に配置された黒塗りの正方形領域の交点が、マークBの中心位置Pbとして認識されるように構成されている。マークAの中心位置PaやマークBの中心位置Pbは、対角に配置された黒色に塗られた正方形の領域の連続した辺が交差する点として認識されてもよい。この実施形態では、マークAとマークBとの距離は、マークAの中心位置Paと、マークBの中心位置Pbとの距離として演算される。
【0053】
基準解像度を得る処理では、パターンマッチングを利用した画像処理によって、測定対象物Mの基準画像の解像度が基準解像度として得られる。
図2および
図8に示された形態では、マーカ12におけるマークAとマークBとの実際の距離x0が、画像処理装置13に予め記憶されている。測定対象物Mの基準画像の解像度は、マーカ12におけるマークAとマークBとの実際の距離x0と、測定対象物Mの基準画像におけるマークAとマークBとの距離x1との比(x1/x0)によって得られる。かかる解像度は、基準解像度あるいは初期解像度とも称されうる。
【0054】
この実施形態では、マークAで特定される1つの点Paは、マークAの中心位置で規定されている。マークBで特定される1つの点Pbは、マークBの中心位置で規定されている。マークAとマークBにおいて、画像処理によって認識可能な1つの点がそれぞれ特定されるとよい。マークAとマークBとの距離は、マークAで特定される1つの点と、マークBで特定される1つの点との距離で定められるように構成されているとよい。かかる観点において、マークAで特定される1つの点Paは、マークAの中心位置で規定されていなくてもよい。また、マークBで特定される1つの点Pbは、マークBの中心位置で規定されていなくてもよい。マーカ12におけるマークAとマークBとの実際の距離s(
図8参照)は、既知であるとよく、画像処理装置13に予め記憶されているとよい。
【0055】
次に、測定対象物Mの基準画像においてマークAとマークBとは異なるマークCを探索する。マークCとしての矩形領域12cでは、黒色に塗られた正方形の領域が右上と左下に配置されている。矩形領域12cは、矩形領域12a、12bとは鏡面対称性を有する。このため、矩形領域12cは、画像処理において矩形領域12a、12bとは異なる模様と認識される。また、マークCとしての矩形領域12cは、矩形領域12a、12bに対して鏡面対称性を有する模様として、パターンマッチングによって探索できる。探索されたマークCのうち、対角に配置された黒塗りの正方形領域の交点が、マークCの中心位置Pcとして認識されるように構成されているとよい。マークAとマークCとの距離x2は、マークAで特定される1つの点Paと、マークCで特定される1つの点Pcとの距離で定められるように構成されているとよい。測定対象物Mの基準画像においてマークAとマークCとの距離がα1として記録されるとよい。
【0056】
なお、矩形領域12a、12bに対してパターンマッチングによって探索できる模様は、ここで挙げられる鏡面対称性を有する模様に限定されない。例えば、矩形領域12a、12bに対してパターンマッチングによって探索できる模様は、矩形領域12a、12bに対して180度未満の回転対称性を有する模様などでもよい。また、画像処理装置13において、各マークに採用された模様の画像データが予め記憶されていてもよい。この場合には、各マークがパターンマッチング処理で探索できるので、任意の模様を採用してもよい。例えば、各マークは、それぞれ同一でない異形形状で、対称性などの関係性がなくてもよい。
【0057】
次に、加振機などで振動が与えられることによって、測定対象物Mの画像が変化する。この際、測定対象物Mにマーカ12が取り付けられていることによって、測定対象物Mの変位を得ることができる。しかし、測定対象物Mにピントを合わせると、カメラ11と測定対象物Mとの距離L1に応じてカメラ11の撮影範囲が変化する。このため、単純に撮影画像から測定対象物Mの変位が得られない。
【0058】
図2および
図8に示された形態では、マーカ12の一平面には、マークAとマークBとは異なる模様が印されたマークCが含まれている。上述のようにマークCは、パターンマッチングで特定される。加振機などで振動が与えられることによって、測定対象物Mの画像が変化する。つまり、カメラ11で撮影された画像における測定対象物Mの位置は、カメラ11の向きと、カメラ11と測定対象物Mとの距離L1と、カメラ11の焦点距離と、画角と、イメージセンサのサイズとによって決まる。このうち、カメラ11の向きと、カメラ11の焦点距離と、画角と、イメージセンサのサイズとが一定であるとすると、カメラ11の撮影された画像における測定対象物Mの位置は、カメラ11に対する測定対象物Mの変位によって変化する。
【0059】
カメラ11で撮影された画像の面外方向のマーカ12の変位に応じて、カメラ11で撮影された画像においてマークAとマークCとの距離がα1からα2に変化する。カメラ11で撮影された画像においてマークAとマークCとの距離の変化から、マーカ12の面外方向の変位が得られる。
図8に示されたマーカ12によれば、一平面には、マークAとマークBとは異なる模様が印されたマークCを含み、マークCがパターンマッチングで特定される。そして、変位画像におけるマークAとマークCとの距離の変化量と、基準解像度とに基づいて、マーカ12の変位量が得られる。このように、マークAの位置の変化と、マークAとマークCとの距離の変化に基づいて、測定対象物Mの変位(面内変位および面外変位)が把握される。
【0060】
このように、ここで提案される変位量測定方法は、以下の工程(A)~(C)が含まれているとよい。
(A) マークAと、マークAから予め定められた距離に配置されたマークBとを一平面に有するマーカ12を測定対象物Mに取り付ける。
(B) カメラ11の撮像方向にマーカ12の一平面が向けられた測定対象物Mの基準画像を得る。
(C) 測定対象物Mの基準画像から、マークAとマークBとをパターンマッチングで認識する。
(D) 測定対象物Mの基準画像におけるマークAとマークBとの距離に基づいて、基準解像度を得る。
【0061】
このように、変位量測定装置および変位量測定方法によれば、パターンマッチングを利用した画像処理によって、測定対象物Mの基準画像の解像度が基準解像度として得られる。この実施形態では、マークAと、マークAから予め定められた距離に配置されたマークBとを一平面に有するマーカ12が測定対象物Mに取り付けられている。カメラ11の撮像方向にマーカ12の一平面が向けられ、カメラ11によって基準画像が得られる。マーカ12のマークAとマークBとは、パターンマッチングで認識される。基準画像におけるマークAとマークBとの距離に基づいて、基準解像度が精度良く得られる。
【0062】
この場合、マークAとマークBとの距離は、マークAで特定される1つの点と、マークBで特定される1つの点との距離で定められるとよい。マーカ12の一平面には、マークAとマークBとが同じ模様で印されていてもよい。この場合、マークAとマークBとは、パターンマッチングで特定されるとよい。さらに、一平面には、マークAとマークBとは異なる模様が印されたマークCが含まれていてもよい。マークCは、パターンマッチングで特定されるとよい。また、変位画像におけるマークAとマークCとの距離の変化量と、基準解像度とに基づいて、測定対象物Mの変位量が得られるとよい。ここで提案される変位量測定方法によれば、測定対象物Mにマーカ12が取り付けられており、パターンマッチングによって、マーカ12に印されたマークAとマークBとマークCとが特定される。そして、カメラ11で撮影された画像を基に、基準解像度および測定対象物Mの変位量が精度良く得られる。つまり、測定対象物Mの面内移動と面外移動の量が精度良く得られる。
【0063】
かかる変位量測定装置および変位量測定方法によれば、測定対象物Mにマーカ12を取付け、カメラ11で撮影することによって、画像から測定対象物Mの変位が得られる。例えば、測定対象物Mの予め定められた複数の位置に、それぞれマーカ12が取り付けられていることによって、測定対象物Mのそれぞれの位置での局所的な変位が取得できる。例えば、電池パックや電池モジュールのように複数の電池セルが、筐体に収められている場合には、各電池セルと、筐体の複数の位置にそれぞれマーカ12が取り付けられるとよい。そして、マーカ12を含む画像を撮影し、画像処理装置13で予め定められたプログラムに沿って画像処理を実行することによって、各電池セルと、筐体の複数の位置のそれぞれの変位が取得できる。このため、画像処理によって、筐体に対する各電池セルの固定の程度などが適切に取得できる。
【0064】
〈マーカ12A〉
図9は、他の形態に係るマーカ12Aの模式図である。
図2および
図8に示された形態では、測定対象物Mに取り付けられるマーカ12の一形態が例示されている。マーカ12は、かかる形態に限定されない。例えば、
図2および
図8に示されたマーカ12は、
図9に示されるマーカ12Aに置き換えられうる。
【0065】
マーカ12Aは、
図9に示されているように、マークAと、マークAと同じ模様であるマークBと、マークA,Bとは異なる模様であるマークCとが、マーカ12の一平面に形成されている。マークAとマークBは、黒色に塗られた正方形の領域が左上と右下に配置される部分の矩形領域12a,12bを有している。同じ模様であるマークA,マークBの矩形領域12a,12bの中心位置Pa,Pbは、予め定められた距離に配置されている。マークCは、黒色に塗られた正方形の領域が左下と右上に配置される部分の矩形領域12cを有している。マークCの矩形領域12cと、マークAとマークBの矩形領域12aと、12bとは、鏡面対称性を有するが一致しない。このため、矩形領域12cは、画像処理において矩形領域12aと、12bとは異なる模様と認識される。
【0066】
このように、マーカ12Aは、
図2および
図8に示されたマーカ12のように8×2の格子の区画に設けられていない。しかし、マーカ12Aは、マーカ12と同様の矩形領域12a,12b,12cをそれぞれ有しており、マーカ12と同様に機能する。つまり、マーカ12Aは、測定対象物Mに取り付けられる。そして、撮影画像の基準解像度を得ること、および、撮影画像から測定対象物Mの変位を得ることに用いられる。
【0067】
マーカ12Aによれば、マークAとマークBの距離は、画像処理装置13において予め記憶されている。基準画像上のマークAとマークBの距離s0から基準解像度q0が得られる。ここで、画像上の2点間の距離は、2点間のピクセル数に換算されうる。マークAとマークBは、同じ模様であり、パターンマッチングによって特定され、中心位置Pa,Pbが特定される。マークAとマークBの中心位置Pa,Pb間のピクセル数がaであると、マークAとマークBの距離sは、s=a×qで計算されうる。ここで、qは、画像の解像度であり、q=s/aで計算されうる。つまり、マークAとマークBの距離sが予め分かっていれば、解像度qは、計算できる。
【0068】
マークAとマークCは、鏡面対称性を有する異なる模様であり、パターンマッチングによって特定される。なお、この実施形態では、マークCは、鏡面対称性を有する異なる模様であるが、マークCの模様が画像処理装置13に予め記憶されていてもよい。マークAとマークCの中心位置Pa,Pcの距離tは、q=t/β=s/aの関係がある。ここでβは、マークAとマークCの中心位置Pa,Pcの間のピクセル数である。
【0069】
測定対象物Mが面外方向に変位した場合など、解像度qが変わると、画像範囲が変わる。例えば、解像度qがq1からq2に変化し、撮影画像におけるマークAとマークBの中心位置Pa,Pb間の距離tがt1からt2に変化したとする。撮影画像におけるマークAとマークCの中心位置Pa,Pb間のピクセル数βは、β1からβ2に変化する。それぞれの関係は、t1/q1=β1,t2/q1=β2,t1/β2=q2である。
t2/q1=β2は、解像度を初期基準での二点間距離変化によるピクセル変化が示されたものである。t1/β2=q2は、2点間の実際の距離が一定なので、ピクセル数が変化しているとしたときに変化した解像度を計算するための計算式が示されている。
【0070】
面外方向の変位量Δzは、解像度の変化Δq=(q2-q1)と、カメラ11のイメージセンサの水平距離(isk)と、カメラ11(レンズ)の焦点距離(rsk)とによって、Δz=(q2-q1)×(isk/rsk)で得られる。
【0071】
〈マーカ12B〉
図10は、他の形態に係るマーカ12Bを示す平面図である。マーカ12Bは、
図10に示されているように、一平面に、マークAとマークBとが設けられている。ここで、マークAは、黒色に塗られた正方形の領域が左上と右下に配置されている。マークBは、黒色に塗られた正方形の領域が右上と左下に配置されている。マークAとマークBは、鏡面対称性を有しており、画像処理において異なる模様と認識される。また、この実施形態では、マークBは、マークAに対して鏡面対称性を有する模様であり、マークAを基にパターンマッチングによって探索できる。このように、マーカ12Bでは、マークAとマークBとは異なる模様で印されている。また、マークAとマークBとは、パターンマッチングで特定される。また、この実施形態では、マークAの黒色に塗られた正方形の領域と、マークBの黒色に塗られた正方形の領域とが重ならないように、マークAとマークBとが配置されている。詳しくは、マークAの右上の領域に、マークBの左下の黒色に塗られた正方形の領域が配置されている。これにより、マーカ12Bは、全体としてコンパクトに収められ、省スペース化が図られている。
【0072】
マークAとマークBは、それぞれ対角に配置された黒塗りの正方形領域の交点が、マークの中心位置Pa,Pbとして認識される。マークBは、マークAから予め定められた距離に配置されている。マークA,Bの中心位置Pa,Pbの距離は、画像処理装置13において予め記憶されている。
【0073】
このマーカ12Bは、
図1に示されているように、測定対象物Mに取り付けられる。そして、カメラ11の撮像方向にマーカ12の一平面が向けられた測定対象物Mの基準画像が得られる。測定対象物Mの基準画像から、マークAとマークBとがパターンマッチングによって認識される。測定対象物Mの基準画像におけるマークAとマークBとの距離に基づいて基準解像度が得られる。さらに、基準画像から測定対象物が変位すると変位画像が得られる。変位画像におけるマークAとマークBとの距離の変化量と、基準解像度とに基づいて、測定対象物の変位量が得られる。このように、マーカ12Bにおいても、画像処理装置13において、パターンマッチングによってマークAとマークBとが認識され、基準解像度が得られる。さらに、基準画像から測定対象物が変位すると、測定対象物の変位量が得られる。つまり、測定対象物Mの面内移動と面外移動の量が得られる。
【0074】
ここで、マークAとマークBの位置は、それぞれ基準画像における直交座標において(XA,YA),(XB,YB)として取得されうる。各点の座標は、予め画像処理プログラムによって取得できるように構成されているとよい。マークAとマークBのx方向の距離uは、u=|XB-XA|として得られ得る。マークAとマークBのy方向の距離vは、v=|YB-YA|として得られ得る。
【0075】
基準画像におけるマークAとマークBとの距離tをt0とする。マークAとマークBとの距離のピクセル数β0で換算されうる。また、基準画像の解像度が基準解像度q0とすると、t0=β0 ×q0となる。画像処理装置13は、マークAとマークBとの距離がピクセル数β0で取得され、基準解像度q0が取得されることによって、マークAとマークBとの距離t0が得られるように構成されうる。
【0076】
マーカ12Bが、カメラ11で撮影画像の面外方向zに移動すると、上述のように撮影画像においてマークAとマークBとの距離が変化する。画像処理装置13では、上述のようにマークAとマークBとがパターンマッチングによって取得され、変位後のマークAとマークBとの距離がピクセル数β1で取得される。ここで、マークAとマークBの実際の距離tは変化しない。このため、変位後の撮影画像の解像度q1は、例えば、q1=t/β1で得られる。面外方向の変位量Δzは、上述のようにΔz=(q2-q1)×(isk/rsk)で得られる。
【0077】
以下、ここで例示されたマーカ12,12A,12Bを、マーカ12として一般化して説明する。ここで提案されるマーカ12は、
図3,
図9および
図10に示されているものに限定されない。マーカ12は、それぞれパターンマッチングによって画像処理装置13が認識可能な模様を少なくとも2つ有しているとよい。認識した模様のうち何れか1つは、他の1つと異なっている。認識した模様のうち2つの模様は、予め定められた距離に配置されている。マーカ12は、測定対象物Mに取り付けられ、カメラ11で撮影される。基準画像では、予め定められた距離に配置された2つの模様に基づいて、基準解像度が得られる。基準画像から測定対象物が変位すると、測定対象物の変位量が得られる。つまり、このようなマーカ12が用いられることによって、カメラの画角と測定範囲の情報で、カメラ11で撮影された測定対象物Mの画像を基に、パターンマッチングを利用した画像処理によって、測定対象物Mの面内移動と面外移動の量が精度良く得られる。これに対して、画像の変位との関係に関するデータを事前に取得することを必要としない。このため、カメラ11で撮影された撮影画像が画像処理されることによって、測定対象物Mの面内移動と面外移動の量が精度良く得られる。
【0078】
マーカ12に付される模様は、
図3および
図10に示されているように、全体を二単位以上として、一単位を黒い四角の1つの角同士が接触している模様でありうる。また、マーカ12に付される模様は、黒い四角の外形の2辺が十字になるとよい。このような模様によれば、小さなドットで表現できるので模様を小さくできる。模様が付される平面が小さくでき、模様が付される平面の平面度が出やすい。このため、精度良く、測定対象物Mの微小な変位量をも精度良く測定できる。また、マーカ12,12Aに付される模様は、互い違いの黒白で中心点が規定されている。このため、パターンマッチングによって画像の黒濃度の変化を読み取れる。このため、画像処理装置13(コンピュータ)による画像処理によって、高精度なパターン認識が可能であり、高精度な計測が可能である。
【0079】
マーカ12は、ラベルライターのようなテープに、上述した模様を印刷したものでもよい。また、マーカ12は、インクジェットによって印刷されるシールであってもよい。この場合、マーカ12は、測定対象物Mの平面に貼り付けられるとよい。この場合、マーカ12が軽いので、測定対象物Mの変位に影響しない。
【0080】
また、測定対象物Mに凹凸があり、そのまま貼り付けると平面度が確保できない場合には、マーカ12は、金属や樹脂のプレートに貼り、測定対象物Mに取り付けられるとよい。金属のプレートとしては、アルミ板のような軽量な金属のプレートが用いられるとよい。樹脂のプレートとしては、ポリスチレンやアクリル板のような樹脂のプレートに貼り、測定対象物Mに取り付けられるとよい。なお、マーカ12は、金属や樹脂のプレートに直接印刷されてもよい。また、マーカ12は、測定対象物Mの平坦な面に直接印刷されてもよい。
【0081】
また、
図1に示されているように、カメラ11とマーカ12の一平面が正対していることを判定するように構成された判定部30が設けられていてもよい。かかる判定部30が設けられていることによって、カメラ11とマーカ12の一平面が正対していることを判定できるので、マーカ12の変位量が精度良く測定される。
【0082】
判定部30は、例えば、マーカ12の一平面が光を反射するものであれば、カメラ11の撮影方向に沿ってレーザーポインタを当てて、マーカ12の一平面で反射したレーザ光が予め定められた範囲内に収まる場合に正対していると判定するものであってもよい。この場合、
図1に示されているように、カメラ11は、カメラ11の撮影方向に向けてレーザL1を照射する照射部31と、反射したレーザL2を受光する受光部32とを有していてもよい。そして、マーカ12の一平面で反射したレーザL2が受光部32で受光されることによって、カメラ11がマーカ12の一平面に正対していることが判定されるように構成されているとよい。
【0083】
また、カメラ11の撮影方向に沿ってマーカ12に正三角形のポインタを投射し、投射されたポインタの各辺の長さを評価し、各辺の差が予め定められた閾値よりも小さければ、カメラ11とマーカ12の一平面が正対していると判定してもよい。ポインタの形状は、正三角形に限定されず、例えば、十字や正方形のポインタであっても良い。カメラの撮影方向に沿って照射される十字や予め定められた形状のレーザ光を照射する照射部と、一平面に照射された十字や予め定められた形状の精度が評価されることによって、カメラがマーカの一平面に対して正対していることが判定されるように構成されていてもよい。
【0084】
また、判定部30は、かかる形態に限定されない。判定部30の機能は、画像処理装置13に組み込まれていてもよい。例えば、上述した実施形態では、マーカ12に黒色に塗られた正方形の領域がいくつかある。この場合、カメラ11で撮影された画像を基に、正方形の領域の各辺の差が、予め定められた閾値の範囲内であるか否かを判定し、各辺の差が予め定められた閾値よりも小さければ、カメラ11とマーカ12の一平面が正対していると判定してもよい。このように、マーカ12に印されたマークの形状が精度良く写っているかが撮影画像を基に判定されてもよい。
【0085】
以上、ここで開示される発明について、種々説明した。特に言及されない限りにおいて、ここで挙げられた実施形態などは本発明を限定しない。また、ここで開示される発明の実施形態は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。
【符号の説明】
【0086】
10 変位量測定装置
11 カメラ
12,12A,12B マーカ
12a,12b,12c 矩形領域
13 画像処理装置
30 判定部
31 照射部
32 受光部
A,B,C マーク
L1 レーザ
L2 反射したレーザ
M 測定対象物