(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186405
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ドライバドリル
(51)【国際特許分類】
B23B 31/02 20060101AFI20221208BHJP
B23B 45/02 20060101ALI20221208BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20221208BHJP
B25B 21/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B23B31/02 601E
B23B45/02
B25F5/00 G
B25B21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094609
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】長坂 英紀
【テーマコード(参考)】
3C032
3C036
3C064
【Fターム(参考)】
3C032BB03
3C032BB06
3C036EE18
3C036EE19
3C064AA01
3C064AA03
3C064AB02
3C064AC02
3C064AC03
3C064AD02
3C064BA01
3C064BB22
3C064BB32
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA29
3C064CA53
3C064CA60
3C064CA61
3C064CB07
3C064CB13
3C064CB17
3C064CB19
3C064CB28
3C064CB32
3C064CB62
3C064CB73
3C064CB76
3C064CB83
3C064CB93
(57)【要約】
【課題】スピンドルの軸線方向での全長を短くしてコンパクト化を図る。
【解決手段】ドライバドリル1は、モータ16と、モータ16の駆動で回転するスピンドル32と、スピンドル32と一体に回転するチャック部30とを含む。チャック部30は、チャックボディ31と、チャックボディ31に外装されるチャックスリーブ80と、チャックボディ31に設けられ、チャックスリーブ80の回転操作によってスピンドル32の軸線方向に対して拡縮動作する複数のチャック爪67とを備えている。そして、チャックボディ31にスピンドル32が一体に形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータの駆動で回転するスピンドルと、前記スピンドルと一体に回転するチャック部とを含み、
前記チャック部は、チャックボディと、前記チャックボディに外装されるチャックスリーブと、前記チャックボディに設けられ、前記チャックスリーブの回転操作によって前記スピンドルの軸線方向に対して拡縮動作する複数のチャック爪とを備えたドライバドリルであって、
前記チャックボディに前記スピンドルが一体に形成されているドライバドリル。
【請求項2】
前記スピンドルは、前方へ突出する筒状のハウジング内へ前後方向に配置されて後端が前記ハウジング内の軸受によって支持され、
前記チャックボディは、前記ハウジング内で前記軸受より前方に配置された第2の軸受によって支持されている請求項1に記載のドライバドリル。
【請求項3】
前記チャックボディは、前記第2の軸受よりも前方部分が前記ハウジングから前方へ突出し、その突出部分に前記チャックスリーブが外装されている請求項2に記載のドライバドリル。
【請求項4】
前記チャックスリーブを含む前記チャック部の外径は、前記ハウジングの外径よりも小径となっている請求項2乃至3の何れかに記載のドライバドリル。
【請求項5】
前記第2の軸受は、前記ハウジングの内周面に形成された受け面に嵌合して前記ハウジング内で保持され、前記第2の軸受の前方で前記受け面にねじ込まれたベアリングリテーナによって抜け止めされる請求項2乃至4の何れかに記載のドライバドリル。
【請求項6】
前記第2の軸受は、前記チャック爪よりも前記ハウジングの径方向外側に配置されている請求項2乃至5の何れかに記載のドライバドリル。
【請求項7】
前記チャックスリーブは、前方から前記チャックボディに外装されて、前記チャックボディに係合させた止め部材によって抜け止めされている請求項5又は6に記載のドライバドリル。
【請求項8】
前記チャックスリーブは、前記チャックボディの外周に設けたストッパ部に当接して後方への位置決めがなされている請求項7に記載のドライバドリル。
【請求項9】
モータと、前記モータの駆動で回転するスピンドルと、前記スピンドルと一体に回転するチャック部とを含み、
前記チャック部は、チャックボディと、前記チャックボディに外装されるチャックスリーブと、前記チャックボディに設けられ、前記チャックスリーブの回転操作によって前記スピンドルの軸線方向に対して拡縮動作する複数のチャック爪とを備えたドライバドリルであって、
前記チャックボディは、筒状のハウジング内で前記チャック爪よりも径方向外側に配置された軸受によって支持されているドライバドリル。
【請求項10】
前記チャックボディに前記スピンドルが一体に形成されている請求項9に記載のドライバドリル。
【請求項11】
前記軸受は、前記ハウジングの内周面に形成された受け面に嵌合して前記ハウジング内で保持され、前記軸受の前方で前記受け面にねじ込まれたベアリングリテーナによって抜け止めされる請求項9又は10に記載のドライバドリル。
【請求項12】
前記チャックスリーブは、前方から前記チャックボディに外装されて、前記チャックボディに係合させた止め部材によって抜け止めされている請求項9乃至11の何れかに記載のドライバドリル。
【請求項13】
前記チャックスリーブは、前記チャックボディに設けたストッパ部に当接して後方への位置決めがなされている請求項12に記載のドライバドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドライバドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバドリルは、前後方向に延びるハウジングの後方にモータを収容し、その前方に、減速機構を介してスピンドルを配置するものが知られている(例えば特許文献1参照)。スピンドルは、ハウジングから前方に突出し、その前端に設けた取付部(ネジ部)に、ドリルチャックが取り付けられている。ドリルチャックは、回転操作によって軸心に対して拡縮動作する複数(例えば3つ)のチャック爪を有している。チャック爪によってビットがスピンドルと同軸で把持可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のドライバドリルでは、ハウジングの前方でスピンドルの前端に別体のドリルチャックが取り付けられるため、前後方向(スピンドル軸線方向)での全長が長くなっている。また、ドリルチャックを取り付けたスピンドルのみがハウジング内で軸受によって支持されるため、軸受よりも前方へ大きく突出するドリルチャックの振れ精度の向上が図れない。
【0005】
そこで、本開示は、スピンドルの軸線方向での全長を短くしてコンパクト化を図ることができるドライバドリルを提供することを目的としたものである。
また、本開示は、振れ精度の向上を達成できると共に、径方向のコンパクト化も達成できるドライバドリルを提供することを別の目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の構成は、モータと、前記モータの駆動で回転するスピンドルと、前記スピンドルと一体に回転するチャック部とを含むものが望ましい。
前記チャック部は、チャックボディと、前記チャックボディに外装されるチャックスリーブと、前記チャックボディに設けられ、前記チャックスリーブの回転操作によって前記スピンドルの軸線方向に対して拡縮動作する複数のチャック爪とを備えるものが望ましい。
そして、前記チャックボディに前記スピンドルが一体に形成されていることが望ましい。
上記別の目的を達成するために、本開示の第2の構成は、モータと、前記モータの駆動で回転するスピンドルと、前記スピンドルと一体に回転するチャック部とを含むものが望ましい。
前記チャック部は、チャックボディと、前記チャックボディに外装されるチャックスリーブと、前記チャックボディに設けられ、前記チャックスリーブの回転操作によって前記スピンドルの軸線方向に対して拡縮動作する複数のチャック爪とを備えるものが望ましい。
そして、前記チャックボディは、筒状のハウジング内で前記チャック爪よりも径方向外側に配置された軸受によって支持されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本開示の第1の構成によれば、スピンドルに別体のドリルチャックを結合する従来の構造に比べて、スピンドルを含むチャック部の全長が短くなる。よって、スピンドルの軸線方向での全長が短くなってコンパクト化を図ることができる。
本開示の第2の構成によれば、チャックボディが直接軸受に支持されるため、振れ精度の向上が期待できる。また、チャック爪を含むチャックボディを径方向にコンパクト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態において、スピンドルは、前方へ突出する筒状のハウジング内へ前後方向に配置されて後端がハウジング内の軸受によって支持され、チャックボディは、ハウジング内で軸受より前方に配置された第2の軸受によって支持されていてもよい。この構成によれば、振れ精度の向上が図られる。また、チャックボディの一部をハウジング内に収納できるため、全長の一層のコンパクト化が期待できる。
本開示の一実施形態において、チャックボディは、第2の軸受よりも前方部分がハウジングから前方へ突出し、その突出部分にチャックスリーブが外装されていてもよい。この構成によれば、チャックスリーブをチャックボディへ後組み付けでき、組み立て作業が容易となる。
本開示の一実施形態において、チャックスリーブを含むチャック部の外径は、ハウジングの外径よりも小径となっていてもよい。この構成によれば、チャック部が径方向にもコンパクトとなる。
【0010】
本開示の一実施形態において、第2の軸受は、ハウジングの内周面に形成された受け面に嵌合してハウジング内で保持され、第2の軸受の前方で受け面にねじ込まれたベアリングリテーナによって抜け止めされていてもよい。この構成によれば、ハウジング内への第2の軸受の組み付けと位置決めとが前方から簡単に行える。
本開示の一実施形態において、第2の軸受は、チャック爪よりもハウジングの径方向外側に配置されていてもよい。この構成によれば、チャック爪を含むチャックボディが径方向にコンパクトとなる。
本開示の一実施形態において、チャックスリーブは、前方からチャックボディに外装されて、チャックボディに係合させた止め部材によって抜け止めされていてもよい。この構成によれば、チャックスリーブをチャックボディへ簡単に後組み付けできる。
本開示の一実施形態において、チャックスリーブは、チャックボディに設けたストッパ部に当接して後方への位置決めがなされていてもよい。この構成によれば、チャックスリーブの後方への位置決めが容易に行える。
【実施例0011】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、ドライバドリルの一例を示す前方からの斜視図、
図2は側面図、
図3は正面図、
図4は
図3のA-A線断面図である。
ドライバドリル1は、本体2とグリップ部3とを備える。本体2は、前後方向に延びる。グリップ部3は、本体2の下側から突出する。本体2とグリップ部3とは、左右何れかの方向から見ると、T字状である。
ドライバドリル1のハウジングは、本体ハウジング4とリアカバー5とギヤハウジング6とを含む。本体ハウジング4には、筒状のモータハウジング部7とグリップ部3とが連設される。本体ハウジング4は、左右の半割ハウジング4a,4bをネジ止めして形成される。リアカバー5は、モータハウジング部7に後方からネジ止めされる。ギヤハウジング6は、筒状で、後部がモータハウジング部7に前方からネジ止めされる。
【0012】
グリップ部3の下端には、バッテリ装着部8が形成されている。バッテリ装着部8には、バッテリパック9が前方からスライド装着される。バッテリ装着部8の下面には、端子台10が保持されている。端子台10の上側でバッテリ装着部8の内部には、コントローラ11が収容されている。端子台10には、バッテリパック9が電気的に接続される。コントローラ11は、後述するモータ16の制御用のマイコンやスイッチング素子等が搭載される制御回路基板を備えている。
グリップ部3内の上部には、スイッチ12が収容されている。スイッチ12は、前方へ突出するトリガ13を備えている。スイッチ12の上側には、モータ16の正逆切替ボタン14が設けられている。正逆切替ボタン14の前方には、ライト15が設けられている。
【0013】
モータハウジング部7には、モータ16が収容されている。モータ16は、ステータ17と、ステータ17の内側に配置されるロータ18とを有するインナロータ型のブラシレスモータである。ロータ18は、前後方向へ延びる回転軸19を備えている。
モータ16の前方でモータハウジング部7内には、ギヤケース20が設けられている。ギヤケース20内には、減速機構21が設けられている。減速機構21は、インターナルギヤ22A~22Cと、複数の遊星歯車23A~23Cと、キャリア24A~24Cとを軸方向に3段備えている。1段目の遊星歯車23Aには、回転軸19に設けたピニオン25が噛合している。
2段目のインターナルギヤ22Bは、前後移動可能に設けられている。モータハウジング部7の上面には、インターナルギヤ22Bの前後位置を切り替える速度切替レバー26が設けられている。速度切替レバー26を前方へスライドさせると、インターナルギヤ22Bが前進して低速モード(1速)となる。速度切替レバー26を後方へスライドさせると、インターナルギヤ22Bが後退して高速モード(2速)となる。
【0014】
ギヤハウジング6は、最も小径の前端部6aを有している。前端部6aにチャック部30が保持されている。チャック部30は、チャックボディ31を備えている。チャックボディ31の後部には、スピンドル32が一体に設けられている。
スピンドル32は、ギヤケース20と同軸で後方へ突出している。減速機構21の前方でギヤケース20には、軸受保持部33が設けられている。スピンドル32は、軸受保持部33に保持された軸受34によって回転可能に支持される。スピンドル32の後端は、ロックカム35にスプライン結合されている。ロックカム35は、軸受34の後方で3段目のキャリア24Cと回転方向で一体に設けられている。ロックカム35の前側には、ロックリング36が設けられている。ロックリング36は、軸受保持部33に係合して回転規制されている。
キャリア24Cの前面には、図示しない複数の爪が設けられている。爪の間には、図示しない楔ピンが設けられている。モータ16の停止状態でチャックボディ31を回転させると、楔ピンがロックカム35とロックリング36との間に噛み込むことでスピンドル32の回転がロックされる。
【0015】
チャックボディ31は、
図5及び
図6,7に示すように、後側の円板状部40と、前側の筒状部41とを備えている。円板状部40の中心からスピンドル32が後方へ一体に設けられている。
円板状部40は、ギヤハウジング6の前端部6aの内径より小径に形成されている。円板状部40は、ギヤハウジング6内で、軸受42によって支持されている。軸受42は、円板状部40に後方から外装されている。軸受42は、前端部6aの内周面に前端から形成された受け面43に、前方から挿入されている。軸受42は、内輪42aと外輪42bとを有する。受け面43の後端には、軸受42の外輪42bの後面が当接する段部44が形成されている。受け面43の前方側には、雌ネジ部45が形成されている。雌ネジ部45には、ベアリングリテーナ46が螺合されている。ベアリングリテーナ46は、外周にネジ部47を有するリング状である。ベアリングリテーナ46は、軸受42の外輪42bの前面に当接している。よって、軸受42は、段部44とベアリングリテーナ46との間で前後方向に位置決めされる。この状態で段部44とベアリングリテーナ46とは、軸受42の内輪42aに接触していない。
【0016】
円板状部40の前端には、軸受42の内輪42aが当接するフランジ48が形成されている。フランジ48は、軸受42の内径よりも大径に形成されている。円板状部40の後面には、規制板50が、3つのネジ51,51・・によって固定されている。規制板50も、フランジ48と同様に軸受42の内径よりも大径に形成されている。規制板50の中心には、スピンドル32の貫通孔52が形成されている。貫通孔52の周囲には、ネジ51,51・・が貫通する3つの透孔53,53・・が同心円上に等間隔で形成されている。透孔53,53の間で規制板50の外周には、3つの切欠部54,54・・が、周方向に等間隔で形成されている。
軸受42は、内輪42aがフランジ48に当接する位置で、円板状部40の後面と軸受42の後面とが略面一となる。この状態で円板状部40の後面に規制板50がネジ51によって固定されると、軸受42は、内輪42aに前後から当接するフランジ48と規制板50との間で前後方向に位置決めされて円板状部40と一体化される。
【0017】
筒状部41は、前方へ向かうに従って段階的に小径となる先細り形状となっている。筒状部41は、円板状部40よりも小径で、中心に、前方へ開口して後端が底60aとなる有底孔60を備えている。有底孔60には、円板状部40の後面まで貫通する3つの傾斜孔61,61・・が形成されている。各傾斜孔61は、後方へ向かうに従って筒状部41の軸線から離れる方向へ傾斜している。規制板50は、円板状部40の後面に開口する各傾斜孔61に各切欠部54が位置する位相でネジ止めされる。
筒状部41の根元には、くびれ部62が形成されている。くびれ部62には、傾斜孔61,61・・と連通する3つの連通口63,63・・が開口している。くびれ部62の前方で筒状部41の外周には、リング状の後突条64と前突条65とが、前後方向に所定間隔をおいて形成されている。前突条65の前方には、係止溝66がリング状に形成されている。
各傾斜孔61には、チャック爪67がそれぞれ設けられている。各チャック爪67は、前端に、互いに対向する把持部68を備えている。各チャック爪67の後部外面には、曲面状のネジ部69が形成されている。各チャック爪67は、傾斜孔61内でその傾斜に沿って直線移動可能に収容されている。ネジ部69は、連通口63を介してくびれ部62に露出している。
【0018】
筒状部41の根元でくびれ部62の後側には、スラストワッシャ70が外装されている。スラストワッシャ70には、複数のボール71,71・・が周方向に等間隔で配置されている。
スラストワッシャ70の前側でくびれ部62には、ネジリング72が回転可能に外装されている。ネジリング72は、左右に分割される半円状の半割部72a,72bとからなる。ネジリング72は、内周に、くびれ部62に嵌合する嵌合部73を備えている。嵌合部73の内周面には、雌ネジ部74が形成されている。雌ネジ部74は、チャック爪67の傾斜に合わせてテーパ状に傾斜して、各チャック爪67のネジ部69に螺合している。
ネジリング72は、半割部72a,72bが連結筒75に圧入されることでリング状に結合される。連結筒75は、後側の大径部76と前側の小径部77とを備えている。ネジリング72の半割部72a,72bは、大径部76に圧入されている。
小径部77には、2つの開口部77a,77bが形成されている。開口部77a,77bは、連結筒75の軸心を中心とした点対称位置に配置されている。開口部77a、77bは、小径部77の周方向に延びている。開口部77aの周方向の長さは、開口部77bよりも長くなっている。
【0019】
小径部77の前端には、3つの折り返し部78,78・・と3つの係止板部79,79・・とが設けられている。折り返し部78は、小径部77の周方向へ等間隔をおいて配置されて、それぞれ中心側へ円弧状に折り返し形成されている。各折り返し部78は、筒状部41の後突条64の前側に係止している。係止板部79は、折り返し部78,78の間で周方向へ等間隔をおいて配置されている。各係止板部79は、前方へ向けて形成されている。
小径部77内には、板バネ55が保持されている。板バネ55は、小径部77の周方向に延びて正面視C字状に形成されている。板バネ55には、径方向外側へ突出して周方向に延びる2つの突起部56a,56bが形成されている。突起部56a,56bは、板バネ55の周方向に離間して配置されている。突起部56aの周方向の長さは、突起部56bよりも長くなっている。
板バネ55は、
図8に示すように、小径部77内へやや縮径された状態で収容される。このとき、突起部56aは開口部77aに、突起部56bは開口部77bにそれぞれ内側から嵌合する。この状態で突起部56a,56bは、開口部77a,77bから径方向外側へ突出する。
【0020】
筒状部41には、チャックスリーブ80が外装されている。チャックスリーブ80は、前方へ向かうに従って小径となるように形成されている。チャックスリーブ80の後端には、径方向外側へ張り出すフランジ部81が形成されている。フランジ部81は、ギヤハウジング6の前端部6aの外径よりも小径に形成されて、ベアリングリテーナ46の前面に近接している。
チャックスリーブ80の内周には、後内径部82と、後内径部82よりも小径の中内径部83と、中内径部83よりも小径の前内径部84とが段状に形成されている。後内径部82には、連結筒75の大径部76が嵌合している。
中内径部83には、
図8にも示すように、2つの係合凹部85a,85bが形成されている。係合凹部85a,85bは、中内径部83の周方向に離間して配置されている。係合凹部85aの周方向の長さは、係合凹部85bよりも長くなっている。
中内径部83には、連結筒75の小径部77が嵌合している。この嵌合状態で、中内径部83の係合凹部85a,85bに、開口部77a,77bから突出した板バネ55の突起部56a,56bが係合している。
前内径部84には、前内径部84の中心側へ突出する3つの係止突起86,86・・が、周方向へ等間隔をおいて形成されている。連結筒75の各係止板部79は、係止突起86,86・・の間で前内径部84内にそれぞれ後方から差し込まれている。よって、係止突起86は、係止板部79の相対回転方向の前後で係止板部79に係止することになる。
係止突起86の前側には、筒状部41の前突条65に係止する先端内径部87が形成されている。
【0021】
このチャック部30の組み付けは、まず、チャックボディ31の円板状部40に軸受42を外装させて規制板50でネジ止めする。次に、各チャック爪67を各傾斜孔61に挿入し、筒状部41に、スラストワッシャ70を外装する。次に、筒状部41に、ネジリング72及び連結筒75を外装してネジリング72の雌ネジ部74に各チャック爪67のネジ部69を螺合させる。この状態でチャックボディ31のスピンドル32を、ギヤハウジング6の軸受保持部33に保持される軸受34に挿入して、後端をロックカム35に結合させる。同時に、円板状部40の軸受42をギヤハウジング6の受け面43に前方から嵌合させて、ベアリングリテーナ46で抜け止めする。すると、チャックボディ31は、ギヤハウジング6に組み付けられる。
【0022】
次に、筒状部41の前方から、チャックスリーブ80を、係合凹部85a,85bを連結筒75の小径部77から突出する突起部56a,56bに位相を合わせた状態で、先端内径部87が前突条65に当接するまで外装する。すると、係合凹部85a,85bに突起部56a,56bが係合する。同時に、
図9に示すように、係止突起86,86の間に係止板部79がそれぞれ差し込まれる。
そして、筒状部41の係止溝66に止め輪88を係止させる。すると、チャックスリーブ80は、回転可能な状態で前方へ抜け止めされる。フランジ部81は、ベアリングリテーナ46に近接している。
前述のようにロックカム35とロックリング36とでスピンドル32の回転をロックした状態で、チャックスリーブ80を回転させる。すると、係合凹部85a,85bに係合する突起部56a,56bを介して、連結筒75及びネジリング72も追従して回転する。ネジリング72の回転により、ネジ部69が螺合する各チャック爪67は、同調して前後移動し、前端の把持部68を拡縮させる。よって、把持部68によるビットの把持及びその解除が可能となる。特に、ビットを把持する際、チャックスリーブ80の締め終わりには、回転負荷が高まる。すると、係合凹部85a,85bが突起部56a,56bを中心側へ押し込んで弾性変形させ、突起部56a,56bに対するチャックスリーブ80の回転を許容して、係止突起86を係止板部79に係止させる。よって、連結筒75及びネジリング72をより強い力で回転させることができる。なお、ビットの把持状態では、チャックスリーブ80に緩め方向の力が不意に加わっても、突起部56a,56bが弾性変形して力を吸収できる。よって、連結筒75及びネジリング72へ伝わる緩め方向の力が抑えられ、ビットの緩みが起こりにくくなる。
【0023】
この組み付け状態でチャック部30は、
図1~3に示すように、チャックスリーブ80及び筒状部41の前部、チャック爪67の前部を除いてギヤハウジング6内に収容される。よって、ギヤハウジング6から前方への突出長さは、別体のドリルチャックがスピンドルに結合される従来構造よりも短くなる。
ギヤハウジング6内で軸受保持部33とチャックボディ31との間には、各チャック爪67の後退を許容する空間Sが形成される。この空間Sがあっても、チャックボディ31の後部はギヤハウジング6内に収まるので、スピンドル32の前後方向の長さは、ドリルチャックが別体で結合される従来構造よりも短くなる。
また、チャック部30は、チャックスリーブ80を含めて正面視でギヤハウジング6の外径内に収まり、ギヤハウジング6の径方向外側に突出しない状態となる。
【0024】
以上の如く構成されたドライバドリル1においては、チャック部30のチャック爪67にビットを把持させた状態で、作業者がトリガ13を押し込み操作する。すると、スイッチ12がONしてコントローラ11がモータ16を駆動させ、回転軸19が回転する。回転軸19の回転により減速機構21を介してスピンドル32が回転する、よって、スピンドル32と一体のチャックボディ31も回転し、把持したビットにより、穿孔やネジ締め等の作業が可能となる。
ドライバドリル1では、ギヤハウジング6からのチャック部30の突出部分は短く且つ径方向にもコンパクトとなっている。よって、狭い場所でも作業がしやすくなる。また、作業中に先端のビットが視認しやすくなる。
また、チャックボディ31は、ビットと共に回転する際、軸受42を介してギヤハウジング6に直接支持されている。よって、スピンドル32の軸線に対するビットの振れが少なくなる。
【0025】
バッテリ装着部8の上面には、操作表示パネル27が設けられている。操作表示パネル27は、コントローラ11と電気的に接続されて、自動モータ停止機能のON/OFF操作等が可能となっている。自動モータ停止機能は、モータ16の負荷電流が設定値(停止トルク)に達するとモータ16へ通電を停止する機能である。よって、操作表示パネル27で自動モータ停止機能がON操作されている状態で、ネジ締め等によってチャックボディ31及びスピンドル32のトルクが停止トルクに達すると、モータ16の駆動が停止してチャックボディ31及びスピンドル32の回転が停止する。この停止トルクは、バッテリ装着部8の前端に設けられたダイヤル28の操作によって変更可能である。
【0026】
上記ドライバドリル1は、モータ16と、モータ16の駆動で回転するスピンドル32と、スピンドル32と一体に回転するチャック部30とを含む。チャック部30は、チャックボディ31と、チャックボディ31に外装されるチャックスリーブ80と、チャックボディ31に設けられ、チャックスリーブ80の回転操作によってスピンドル32の軸線方向に対して拡縮動作する複数のチャック爪67とを備えている。そして、ドライバドリル1では、チャックボディ31にスピンドル32が一体に形成されている。
この構成によれば、スピンドルに別体のドリルチャックを結合する従来の構造に比べて、スピンドル32を含むチャック部30の全長が短くなる。よって、スピンドル32の軸線方向での全長が短くなってコンパクト化を図ることができる。
【0027】
スピンドル32は、前方へ突出する筒状のギヤハウジング6(ハウジング)内へ前後方向に配置されて後端がギヤハウジング6内の軸受34によって支持され、チャックボディ31は、ギヤハウジング6内で軸受34より前方に配置された軸受42(第2の軸受)によって支持されている。よって、振れ精度の向上が図られる。また、チャックボディ31の一部をギヤハウジング6内に収納できるため、全長の一層のコンパクト化が期待できる。
チャックボディ31は、軸受42よりも前方の筒状部41がギヤハウジング6から前方へ突出し、その筒状部41にチャックスリーブ80が外装されている。よって、チャックスリーブ80をチャックボディ31へ後組み付けでき、組み立て作業が容易となる。
チャックスリーブ80を含むチャック部30の外径は、ギヤハウジング6の外径よりも小径となっている。よって、チャック部30が径方向にもコンパクトとなる。
【0028】
軸受42は、ギヤハウジング6の内周面に形成された受け面43に嵌合してギヤハウジング6内で保持され、軸受42の前方で受け面43にねじ込まれたベアリングリテーナ46によって抜け止めされている。よって、ギヤハウジング6内への軸受42の組み付けと位置決めとが前方から簡単に行える。
軸受42は、チャック爪67よりもギヤハウジング6の径方向外側に配置されている。よって、チャック爪67を含むチャックボディ31が径方向にコンパクトとなる。
チャックスリーブ80は、前方からチャックボディ31に外装されて、チャックボディ31に係合させた止め輪88(止め部材)によって抜け止めされている。よって、チャックスリーブ80をチャックボディ31へ簡単に後組み付けできる。
チャックスリーブ80は、チャックボディ31に設けた前突条65(ストッパ部)に当接している。よって、チャックスリーブ80の後方への位置決めが容易に行える。
【0029】
上記ドライバドリル1は、モータ16と、モータ16の駆動で回転するスピンドル32と、スピンドル32と一体に回転するチャック部30とを含む。チャック部30は、チャックボディ31と、チャックボディ31に外装されるチャックスリーブ80と、チャックボディ31に設けられ、チャックスリーブ80の回転操作によってスピンドル32の軸線方向に対して拡縮動作する複数のチャック爪67とを備えている。そして、チャックボディ31は、筒状のギヤハウジング6内でチャック爪67よりも径方向外側に配置された軸受42によって支持されている。
この構成によれば、チャックボディ31が直接軸受42に支持されるため、振れ精度の向上が期待できる。また、チャック爪67を含むチャックボディ31が径方向にコンパクト化する。
【0030】
以下、本開示の変更例について説明する。
チャックボディを支持する軸受は、1つに限らず、軸方向に2つ以上配置してもよい。
チャックボディを支持する軸受は、ボールベアリング以外の軸受も採用できる。軸受の位置決めも適宜変更できる。スピンドルを支持する軸受も、チャックボディを支持する軸受と同様の変更が可能である。
チャックスリーブは、後端をベアリングリテーナ又はギヤハウジングに当接させて後方への位置決めを行ってもよい。また、チャックスリーブの後端部をギヤハウジングの外径よりも大径に形成して、当該後端部をギヤハウジングの前端に外装させてもよい。このようにチャックスリーブをギヤハウジングに径方向へオーバーラップさせれば、チャックスリーブの回転操作に係る操作性が良好となる。また、防塵効果も得られる。
チャック爪の数や形状、チャック爪の拡縮に係る構造は、上記例に限らず、適宜変更できる。
【0031】
ハウジングは、本体ハウジングとギヤハウジングとを有するものに限らない。ギヤハウジングでなく、モータハウジング部が前方へ突出する構造であっても本開示のチャック部は適用できる。
モータは、ブラシレスモータでなく整流子モータ等であってもよい。
減速機構の段数は増減可能である。変速機構はなくてもよい。
電子クラッチは、操作表示パネルでなく、例えば本体の上面や側面に操作部を設けて選択可能としてもよい。ダイヤルの位置も変更できる。ダイヤルをなくして操作表示パネル等の操作部でクラッチ作動トルクを変更可能としてもよい。電子クラッチでなく、機械式のクラッチを採用してもよい。
本開示は、震動機構を備えたドライバドリルにも適用できる。本開示のドライバドリルは、バッテリパックでなく交流電源を用いるAC工具であってもよい。
1・・ドライバドリル、2・・本体、3・・グリップ部、4・・本体ハウジング、6・・ギヤハウジング、16・・モータ、19・・回転軸、21・・減速機構、30・・チャック部、31・・チャックボディ、32・・スピンドル、34,42・・軸受、40・・円板状部、41・・筒状部、43・・受け面、44・・段部、46・・ベアリングリテーナ、50・・規制板、51・・ネジ、55・・板バネ、61・・傾斜孔、67・・チャック爪、72・・ネジリング、75・・連結筒、80・・チャックスリーブ、88・・止め輪。