(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186413
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】プッシュボタン錠
(51)【国際特許分類】
E05B 37/16 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
E05B37/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094623
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】594182627
【氏名又は名称】敷島金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 良三
(72)【発明者】
【氏名】岸本 直也
(72)【発明者】
【氏名】岸本 康史
(72)【発明者】
【氏名】黄 健勇
(72)【発明者】
【氏名】ファン カイウェイ
(57)【要約】
【課題】施錠された状態で設定変更スイッチが強引に操作されたとしても故障することを抑制可能なプッシュボタン錠を提供する。
【解決手段】複数の押しボタンと、複数の操作用ロッドと、初期基準位置と離脱位置とに変位可能なガイドプレートと、各操作用ロッドにおける第1保持位置と第2保持位置に対して選択的かつ着脱自在に装着される複数の付け替え部材と、使用者によって操作される操作部と、操作部と一体に設けられて操作部が初期位置から設定位置に変更される過程でガイドプレートを押し込む押し込み部とを有する設定変更スイッチと、施錠状態のときに設定変更スイッチの被係合部と係合することによって押し込み部によるガイドプレートの押し込みを制限し、解錠状態のときに被係合部との係合が解除される規制手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに出没可能に取り付けられた複数の押しボタンと、
前記押しボタンの出没方向へスライド自在かつ前記押しボタンの各々に対応して前記ハウジングに設けられ、対応する前記押しボタンが押動された際に前記ハウジング内に押し込まれる複数の操作用ロッドと、
前記操作用ロッドの押し込み方向と直交する方向にスライド自在に前記ハウジング内に設けられ、所定の初期基準位置と、所定の離脱位置とに変位可能なガイドプレートと、
各操作用ロッドにおける第1保持位置と第2保持位置に対して選択的かつ着脱自在に装着される複数の付け替え部材であって、前記ガイドプレートに形成された収容孔に各々が収容された複数の付け替え部材と、
を備え、
前記ガイドプレートが前記初期基準位置から前記離脱位置に切り替えられた際に各付け替え部材が各操作用ロッドから離脱し、前記ガイドプレートが前記離脱位置から前記初期基準位置に切り替えられた際に各付け替え部材が各操作用ロッドに対して前記第1保持位置と前記第2保持位置の何れかに選択的に装着されることによって前記押しボタンの解錠符号が任意の符号に設定されるように構成されており、
前記解錠符号を設定変更する際に操作される設定変更スイッチであって、使用者によって操作される操作部と、前記操作部と一体に設けられ、前記操作部が所定の初期位置から所定の設定位置に変更される過程で前記ガイドプレートを押し込むことによって当該ガイドプレートを前記初期基準位置から前記離脱位置へとスライドさせる押し込み部と、を有する設定変更スイッチと、
前記ハウジング内に収容され、前記押しボタンが前記解錠符号に合致していない施錠状態のときに前記設定変更スイッチの被係合部と係合することによって前記押し込み部による前記ガイドプレートの押し込みを制限し、前記押しボタンが前記解錠符号に合致した解錠状態のときに前記被係合部との係合が解除される規制手段と、
を更に備える、
プッシュボタン錠。
【請求項2】
前記ガイドプレートは、前記施錠状態のときに少なくとも一部の前記付け替え部材が前記ハウジング内における不動部に係止されることによって前記初期基準位置から前記離脱位置へのスライドが規制されている
請求項1に記載のプッシュボタン錠。
【請求項3】
前記係合手段は、前記施錠状態のときに前記押し込み部と係合する係合姿勢をとり、前記解錠状態のときに前記押し込み部との係合が解除される退避姿勢へと切り替えられる、
請求項1又は2に記載のプッシュボタン錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュボタン錠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアや扉等の施錠対象物を施錠する錠前装置において、押しボタンを用いた解錠符号(解錠番号、暗証番号)入力式のプッシュボタン錠が広く知られている。これに関連して、解錠符号を任意に設定することができる解錠符号設定機構を備えたものが知られている(例えば、特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-129679号公報
【特許文献2】特開2019-82078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のプッシュボタン錠では、押しボタンが解錠符号に合致した解錠状態のときに限り解錠符号の設定変更操作を可能とする構造となっている。しかしながら、特許文献1記載のプッシュボタン錠においては、施錠された状態で設定変更スイッチを強引に操作しようとするとプッシュボタン錠が故障する虞があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、施錠された状態で設定変更スイッチが強引に操作されたとしても故障することを抑制可能なプッシュボタン錠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、以下の手段を採用した。すなわち、本発明に係るプッシュボタン錠は、ハウジングと、前記ハウジングに出没可能に取り付けられた複数の押しボタンと、前記押しボタンの出没方向へスライド自在かつ前記押しボタンの各々に対応して前記ハウジングに設けられ、対応する前記押しボタンが押動された際に前記ハウジング内に押し込まれる複数の操作用ロッドと、前記操作用ロッドの押し込み方向と直交する方向にスライド自在に前記ハウジング内に設けられ、所定の初期基準位置と、所定の離脱位置とに変位可能なガイドプレートと、各操作用ロッドにおける第1保持位置と第2保持位置に対して選択的かつ着脱自在に装着される複数の付け替え部材であって、前記ガイドプレートに形成された収容孔に各々が収容された複数の付け替え部材と、を備え、前記ガイドプレートが前記初期基準位置から前記離脱位置に切り替えられた際に各付け替え部材が各操作用ロッドから離脱し、前記ガイドプレートが前記離脱位置から前記初期基準位置に切り替えられた際に各付け替え部材が各操作用ロッドに対して前記第1保持位置と前記第2保持位置の何れかに選択的に装着されることによって前記押しボタンの解錠符号が任意の符号に設定されるように構成されており、前記解錠符号を設定変更する際に操作される設定変更スイッチであって、使用者によって操作される操作部と、前記操作部と一体に設けられ、前記操作部が所定の初期位置から所定の設定位置に変更される過程で前記ガイドプレートを押し込むことによって当該ガイドプレートを前記初期基準位置から前記離脱位置へとスライドさせる押し込み部と、を有する設定変更スイッチと、前記ハウジング内に収容され、前記押しボタンが前記解錠符号に合致していない施錠状態のときに前記設定変更スイッチの被係合部と係合することによって前記押し込み部による前記ガイドプレートの押し込みを制限し、前記押しボタンが前記解錠符号に合致した解錠状態のときに前
記被係合部との係合が解除される規制手段と、を更に備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、施錠された状態で設定変更スイッチが強引に操作されたとしても故障することを抑制可能なプッシュボタン錠を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図6】アッパーケースの内面側からハウジングの内部を眺めた図である。
【
図8】ボタン錠の操作用ロッドと押しボタンとの相対関係を示す図である。
【
図9】操作用ロッドに可動ブロックが装着された状態を示す図である。
【
図11】操作用ロッドに可動ブロックが装着された状態を示す図である。
【
図15】ミドルプレートと操作用ロッドとの関係を示す図である。
【
図16】ガイドプレートおよびスライドロッドを示す図である。
【
図17】スライドロッドとロッドリターンプレートを示す図である。
【
図18】リテーナおよびスイングプレートを説明する斜視図である。
【
図19】ボタン錠のハウジングに対するリテーナの固定構造を示す図である。
【
図20】互いに組み付けられた状態のリテーナおよびスイングプレートがハウジングに組み込まれた状態を示す図である。
【
図21】スイングプレートおよびリテーナの第1姿勢および退避姿勢を示す図である。
【
図22】スイングプレートおよびリテーナの第1姿勢および退避姿勢を示す図である。
【
図23】スイングプレートおよびリテーナの第2姿勢および係合姿勢を示す図である。
【
図24】スイングプレートおよびリテーナの第2姿勢および係合姿勢を示す図である。
【
図25】初期基準位置に配置された状態のガイドプレートおよびロッドリターンプレートを示す図である。
【
図26】ロッドリターンプレートにおける前面の下部領域を示す図である。
【
図27】フック付きアームと外筒の係合部との関係を示す図である。
【
図28】ロッド第1保持状態にある操作用ロッドを示す図である。
【
図29】ロッド第2保持状態にある操作用ロッドを示す図である。
【
図30】可動ブロックの凹部とスライドロッドの突起部との相対関係を示す図である。
【
図31】アームと外筒の外周突起片とが係合している状態を示す図である。
【
図32】ボタン錠の押しボタンが解錠符号に揃っている状態を説明する図である。
【
図33】フック付きアームと外筒の係合部との係合が解除された状態を示す図である。
【
図34】ロッドリターンプレートのピン受け部と設定変更スイッチのピンとの関係を示す図である。
【
図35】ロッドリターンプレートのピン受け部と設定変更スイッチのピンとの関係を示す図である。
【
図36】解錠符号設定時において、操作用ロッドに対する可動ブロックの嵌め合いが解除された状態を示す図である。
【
図37】解錠符号設定時において、操作用ロッドに対する可動ブロックの嵌め合いが解除された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。なお、本実施の形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
<全体構成>
図1は、実施形態に係る機械式のプッシュボタン錠(以下、単に「ボタン錠」という)100の正面図(前面図)である。
図2は、実施形態に係るボタン錠100の背面図(後面図)である。
図3は、ボタン錠100の分解斜視図である。ボタン錠100は、当該ボタン錠100を構成する各種部品を収容、保護するハウジングとしてアッパーケース2およびロアケース3等を有する。アッパーケース2およびロアケース3は、
図3に示す各種部品を内部に配置した状態で、互いに嵌め合わされることで、ハウジングを構成している。なお、ハウジングの構造、形状等には、言うまでも無く種々の変更を加えることができる。また、
図1および
図2に示すように、アッパーケース2の外面にはフロントパネル21が装着され、ロアケース3の外面にはリアパネル30が装着されている。
【0011】
アッパーケース2に装着されたフロントパネル21は、アッパーケース2の正面側を覆っている。本実施形態では、ボタン錠100における上下、左右方向を
図1に示すように定義する。また、上下、左右方向に直交する方向を前後方向として定義し、フロントパネル21側が前方であり、ロアケース3側が後方として扱うものとする。但し、ボタン錠100の上下、左右、前後方向は、外部的な参照基準に対する位置関係を特定するものではなく、ボタン錠100における各部同士の相対的な位置関係を特定しているに過ぎない。
【0012】
ボタン錠100のフロントパネル21には、複数の押しボタン22、クリアボタン23、操作摘み4、表示窓24等が設けられている。また、フロントパネル21における各押しボタン22の近傍には、押しボタン22に対応する符号(数字、記号、文字等を含む)が印字、刻印などされている。
図1に示す例では、ボタン錠100は、11個の押しボタン22を有しており、0~9、および※マークが対応する押しボタン22の隣に印字されている。但し、ボタン錠100が備える押しボタン22の個数や、フロントパネル21に印字する符号の種類はボタン錠100の仕様に応じて変更できる。なお、フロントパネル21には、押しボタン22やクリアボタン23等を出没可能とするために適した形状および大きさを有するボタン用開口部211が設けられており、このボタン用開口部211を通じて押しボタン22等が出没可能となっている。クリアボタン23は、全ての押しボタン22を一旦クリアするためのボタンである。
【0013】
押しボタン22は、フロントパネル21に形成されたボタン用開口部211を通じて、ハウジングの内外に進退(出没)自在となっている。後述するように、ボタン錠100は、解錠符号(いわゆる暗証番号)に則した押しボタン22の押動操作がなされることによって解錠することができる。ボタン錠100の押しボタン22が解錠符号に合致した解錠状態にある場合、使用者(扱い者)は、操作摘み4を回動させ、ボタン錠100のストッパー10の開閉操作を行うことができる。ストッパー10は、ハウジングに取り付けられ、施錠対象物の相手側部材に係脱可能である。操作摘み4は、ストッパー10に連結され
ており、操作摘み4を回動させることでストッパー10の姿勢を変更できる。使用者は、操作摘み4の目印41を、OPEN位置と、LOCK位置(
図1を参照)の何れかに合わせることで、施錠対象物の相手側部材に対するストッパー10の係止、離脱状態を切り替える切り替え操作を行うことができる。
【0014】
例えば、
図1に示す状態では、操作摘み4の目印41は、OPEN位置の位置に合わせられているため、この状態ではストッパー10は施錠対象物の相手側部材から離脱している。一方、使用者が、操作摘み4を回動させて、目印41をLOCK位置に合わせると、ストッパー10の姿勢が
図1にて実線で示す離脱位置から破線で示す係止位置に変更され、ストッパー10が施錠対象物の相手側部材に係止される。また、ボタン錠100が施錠状態にある場合、操作摘み4の回動操作が規制される。
【0015】
通常使用時において、ボタン錠100の施錠および解錠操作(以下、あわせて「施錠・解錠操作」ともいう。)は、使用者が押しボタン22を解錠符号に合わせて押動することによって行われる。例えば、解錠符号が「1246」である場合、フロントパネル21に表示されている符号のうち、解錠符号に該当する「1」、「2」、「4」、「6」に対応する押しボタン22のみが押下され、かつ、それ以外の押しボタン22が押下されない場合に、ボタン錠100が解錠される。この場合、上記のように、操作摘み4を回動させることによる開閉操作が可能となる。詳しくは後述するが、ボタン錠100は、操作摘み4の動作を規制可能であって、押しボタン22の押動操作に伴い、解錠符号に対応する操作用ロッドのみが押込み位置にあるときに前記操作摘みの動作の規制を解除する規制手段を有する。ここでいう操作摘み4の開閉操作とは、操作摘み4の位置をOPEN位置からLOCK位置、或いはLOCK位置からOPEN位置へと切り替える操作をいう。以下では、前者の操作を「閉操作」と称し、後者の操作を「開操作」と称する。なお、本明細書の図面において、便宜上、複数の同一部材について一部の部材のみに符号を付し、残りの同一部材についての符号を省略して作図する場合がある。
【0016】
また、
図2に示した様に、ボタン錠100の背面側には、設定変更スイッチ11が設けられている。設定変更スイッチ11は、ボタン錠100の解錠符号の設定を変更する際に使用されるスイッチである。ボタン錠100は、この設定変更スイッチ11を使用して、ボタン錠100の解錠符号を任意に設定することができる。なお、ボタン錠100の通常使用時においては、設定変更スイッチ11は、固定位置に合わせられている。ボタン錠100における解錠符号の設定方法の詳細については、後述する。
【0017】
<シリンダー錠機構>
ボタン錠100は、使用者が解錠符号を忘れた場合、ボタン錠100を強制的に解錠するためのシリンダー錠機構(以下、「シリンダー」という)5を備える(
図4を参照)。シリンダー5は、操作摘み4とストッパー10との間に介在し、所定の解錠鍵を使用することで、後述する規制手段が規制している操作摘み4の動作の規制を強制的に解除可能である。
【0018】
図4は、シリンダー5における軸線方向に沿った縦断面を通るボタン錠100の断面図である。シリンダー5は、その軸線方向に沿って形成された鍵穴51を有する錠機構であり、外筒6の内側に回動自在に保持されている。外筒6は、アッパーケース2の一部として形成される円筒スリーブ部27の内側に配置されている。シリンダー5の後端部には駆動シャフト12が連結されており、この駆動シャフト12を介してストッパー10がシリンダー5に取り付けられている。言い換えると、ストッパー10は、駆動シャフト12を介してシリンダー5と一体に固定されている。また、
図1に示すように、シリンダー5および外筒6の前端側は、操作摘み4によって覆われている。外筒6は、アッパーケース2の円筒スリーブ部27に対して回動自在に取り付けられている。また、外筒6の内周側に
は、シリンダー5が回動自在かつ摺動自在に装着されている。但し、通常時においては、外筒6に対してシリンダー5は係止されており、シリンダー5の鍵穴51に非常解錠鍵またはシリンダー交換鍵が挿入された場合を除いて、外筒6に対するシリンダー5の相対回動および摺動は規制(禁止)されるように構成されている。本実施形態に係るシリンダー5、外筒6、非常解錠鍵、シリンダー交換鍵等の各構成は、本出願人による先願である特開2014-129679に開示されているプッシュボタン錠に係る構造と共通であり、ここでの詳しい説明を省略する。
【0019】
<ボタン錠機構>
次に、ボタン錠100におけるボタン錠機構について詳しく説明する。
図3の分解図から明らかなように、ボタン錠100のハウジング内部には、ガイドプレート7、ミドルプレート8、ロッドリターンプレート9等の各種プレートが収容されている。
図3に示すように、ガイドプレート7、ミドルプレート8、ロッドリターンプレート9は、アッパーケース2側からこれらの順に並んで配置されている。
図5は、シリンダー5における軸線方向に沿ったボタン錠100の縦断面の構造を示している。ミドルプレート8は、ロアケース3に固定されたプレート部材であり、ハウジングの内部を2つの空間に分割している。以下、ハウジング内部のうち、ミドルプレート8よりも前方、すなわちミドルプレート8とアッパーケース2によって画定される収容空間を第1収容部と称する。また、ハウジング内部のうち、ミドルプレート8よりも後方、すなわちミドルプレート8とロアケース3によって画定される収容空間を第2収容部と称する。ハウジング内部において、ガイドプレート7は第1収容部内に収容され、ロッドリターンプレート9は第2収容部内に収容されている。
【0020】
[操作用ロッド]
図6は、ボタン錠100の内部構造を説明する説明図であり、具体的には、アッパーケース2の内面(裏面)側からハウジングの内部を眺めた状態を示している。
図5および
図6に示すように、アッパーケース2には、複数の貫通孔であるロッド挿通孔31が設けられており、このロッド挿通孔31には操作用ロッド32の一部が挿通可能となっている。
図5に示すように、ボタン錠100のハウジング内部には、複数の操作用ロッド32がボタン錠100の前後方向に沿って延設されている。各操作用ロッド32は、アッパーケース2に設けられた各ロッド挿通孔31に挿通されており、頭部側がアッパーケース2とフロントパネル21との間の空間に突出した状態で配置されている。
【0021】
図7は、ボタン錠100の操作用ロッド32を示す図である。操作用ロッド32は、長手方向の一端側から胴部本体321、首部322および頭部323を有している。操作用ロッド32における胴部本体321は略四角柱形状を有している。一方、首部322および頭部323は略円柱形状を有し、これらは胴部本体321に比べて横断面が小さい。操作用ロッド32は、アッパーケース2のロッド挿通孔31に対して、首部322および頭部323を挿通可能となっているが、胴部本体321を挿通させることはできないようになっている。また、操作用ロッド32における首部322および頭部323の境界部分には、括れ形状を有するくびれ部が形成されている。
【0022】
操作用ロッド32は、頭部323を、アッパーケース2の内面側からロッド挿通孔31を挿通させた状態で、ロッド保持用のロッドスプリング324がアッパーケース2の前壁2a(
図5、
図6等を参照)と操作用ロッド32のくびれ部との間に介装されている。ロッドスプリング324は、アッパーケース2に対して、操作用ロッド32を引き抜く方向に弾性力を作用させている。また、
図8に示すように、各操作用ロッド32の頭部323には押しボタン22が位置付けられている。また、操作用ロッド32における胴部本体321の後端には、溝部325が設けられている。溝部325の溝底は、操作用ロッド32の軸方向に対して傾斜した傾斜面325aとして形成されており、後述するロッドリター
ンプレート9における傾斜突部94と係合可能となっている。
【0023】
また、
図7に示すように、操作用ロッド32の胴部本体321には、複数対の凹部が設けられている。符号321a,321aは第1凹部対、符号321b,321bは第2凹部対である。第1凹部対321a,321aおよび第2凹部対321b,321bは、胴部本体321の底面と側面との境界をなす角部に形成されており、胴部本体321の軸方向(長手方向)に関しては、第1凹部対321a,321aに比べて第2凹部対321b,321bの方が内側に形成されている。また、第1凹部対321a,321aと第2凹部対321b,321bの形状および大きさは同等である。なお、第1凹部対321a,321aおよび第2凹部対321b,321bは、後述するロッドリターンプレート9の爪部91と係合可能である。ロッドリターンプレート9の爪部91は、第1凹部対321a,321aおよび第2凹部対321b,321bと、選択的に係合することができる。
【0024】
更に、操作用ロッド32の胴部本体321には、第3凹部対321c,321c、および第4凹部対321d,321dが設けられている。第3凹部対321c,321cおよび第4凹部対321d,321dも、第1凹部対321a,321aおよび第2凹部対321b,321bと同様に、胴部本体321の底面と側面との境界をなす角部に形成されている。操作用ロッド32における胴部本体321の軸方向において、第3凹部対321c,321cは第2凹部対321b,321bよりも前端側に配置され、第4凹部対321d,321dは更に第3凹部対321c,321cよりも前端側に配置されている。なお、第3凹部対321c,321cと第4凹部対321d,321dの形状および大きさは同等である。
【0025】
更に、操作用ロッド32の胴部本体321には、第1凸部対321e,321e、第2凸部対321f,321f、第3凸部対321g,321gが設けられている。第1凸部対321e,321e、第2凸部対321f,321f、第3凸部対321g,321gは、胴部本体321の上面と側面との境界をなす角部に形成されており、胴部本体321の後端側からこれらの順に配置されている。第1凸部対321e,321e、第2凸部対321f,321f、第3凸部対321g,321gの形状および大きさは同等である。
【0026】
図8は、ボタン錠100の操作用ロッド32と押しボタン22との相対関係を示す図である。押しボタン22は、フロントパネル21に形成されたボタン用開口部211に比べて断面積が小さなボタン部221と、ボタン用開口部211に比べて断面積が大きなベース部222とを有する。押しボタン22のベース部222は、フロントパネル21の裏側に配置されており、押しボタン22がフロントパネル21のボタン用開口部211から抜け落ちることを防止している。また、押しボタン22のベース部222の裏側には、ボタンスプリング223が装着されている。このボタンスプリング223は、押しボタン22のベース部222とアッパーケース2との間に縮んだ状態で挟まれており、押しボタン22を、フロントパネル21の前方側に突出させる方向に押圧している。なお、
図8において、ロッドスプリング324の図示を省略している。
【0027】
以上のように、ボタン錠100における押しボタン22は、ボタンスプリング223によってボタン用開口部211から押し出される方向に常に押圧されている。また、操作用ロッド32は、ロッドスプリング324によって、ロッド挿通孔31から押し出される方向に常に押圧されている。使用者がボタンスプリング223の付勢力に抗して押しボタン22を押動した場合、押しボタン22のベース部222が操作用ロッド32の頭部323をハウジング内部側に押し込む結果、押しボタン22の押動操作に連動して操作用ロッド32も軸方向に変位することとなる。その後、使用者の指を押しボタン22から離すと、ボタンスプリング223の弾性力によって、押しボタン22が
図8に示す初期位置まで戻される。なお、押しボタン22の初期位置とは、
図8に示すように、押しボタン22がハ
ウジング内に埋没していない位置をいう。
【0028】
次に、操作用ロッド32に対して着脱自在に装着される可動ブロック33について説明する。操作用ロッド32における第3凹部対321c,321c、第4凹部対321d,321d、第1凸部対321e,321e、第2凸部対321f,321f、第3凸部対321g,321gは、
図3に示される可動ブロック33(可動体)を嵌め合いによって装着する際に用いられる。
【0029】
図9は、操作用ロッド32に可動ブロック33が装着された状態を示す図である。
図9において、押しボタン22の図示は省略している。
図10は、可動ブロック33の斜視図である。ボタン錠100は、各操作用ロッド32に、1つの可動ブロック33が着脱自在に装着されるように構成されている。
図10に示すように、可動ブロック33は、略コの字形の形状を有する部材であり、底壁部331と、この底壁部331の両端から立設する一対の側壁部332を有する。
【0030】
可動ブロック33における側壁部332の上端内側には、ブロック側第1凹部対333a,333a、ブロック側第2凹部対333b,333bが、所定間隔だけ離れて設けられている。また、ブロック側第1凹部対333a,333aおよびブロック側第2凹部対333b,333bの略中間位置であって、底壁部331における下端内側には、ブロック側凸部対333c,333cが設けられている。可動ブロック33のブロック側第1凹部対333a,333aは、操作用ロッド32における第1凸部対321e,321e又は第2凸部対321f,321fを選択的に受け入れ可能であり、ブロック側第2凹部対333b,333bは、操作用ロッド32における第2凸部対321f,321f又は第3凸部対321g,321gを選択的に受け入れ可能である。また、可動ブロック33のブロック側凸部対333c,333cは、操作用ロッド32における第3凹部対321c,321c又は第4凹部対321d,321dに対して選択的に嵌合可能である。
【0031】
図9に示す例では、可動ブロック33におけるブロック側第1凹部対333a,333a、ブロック側第2凹部対333b,333b、ブロック側凸部対333c,333cがそれぞれ、操作用ロッド32における第1凸部対321e,321e、第2凸部対321f,321f、第3凹部対321c,321cと係合することで、操作用ロッド32の第1保持位置に可動ブロック33が保持されている。一方、操作用ロッド32は、
図11に示すように、第1保持位置に比べて前端側(頭部323側)の第2保持位置に可動ブロック33を保持することが可能である。ここで、操作用ロッド32における第2保持位置は、第1保持位置に比べて、相対的に押しボタン22に近接した位置といえる。可動ブロック33が操作用ロッド32の第2保持位置に保持される場合、ブロック側第1凹部対333a,333a、ブロック側第2凹部対333b,333bがそれぞれ操作用ロッド32における第2凸部対321f,321f、第3凸部対321g,321gを受け入れ、ブロック側凸部対333c,333cが操作用ロッド32における第4凹部対321d,321dに嵌合された状態となる。以上のように、可動ブロック33は、操作用ロッド32に対して保持される位置を、第1保持位置と第2保持位置との間で選択的に切り替えることが可能である。また、可動ブロック33の底壁部331の外面には、略四角錐形状を有する凹部334が設けられている。
【0032】
[ミドルプレート]
図12~
図14は、ミドルプレート8を説明する図である。
図12は、ミドルプレート8の前面側の斜視図である。
図13は、ミドルプレート8の前面図である。
図14は、ミドルプレート8の後面側の斜視図である。ミドルプレート8の前面8Aは、ハウジングにおける第1収容部側を臨む方の面でありアッパーケース2側に対向して配置される。また、ミドルプレート8の後面8Bは、ハウジングにおける第2収容部側を臨む方の面であり
、ロアケース3側に対向して配置される。
図15は、ミドルプレート8と操作用ロッド32との関係を示す図である。ミドルプレート8は、アッパーケース2に固定された略矩形の平面形状を有するプレート部材である。また、ミドルプレート8は、ハウジング内で位置が固定された不動部である。ミドルプレート8には、可動ブロック33を収容可能なブロック収容凹部81が操作用ロッド32の数だけ設けられている。ブロック収容凹部81は、ハウジング内の第1収容部側に面して開口している。ブロック収容凹部81は、可動ブロック33よりも僅かに大きな横断面を有している。また、符号81bは、ブロック収容凹部81の底壁である。また、ブロック収容凹部81の底壁81bによって、当該ブロック収容凹部81に収容される可動ブロック33が支持されるようになっている。また、ブロック収容凹部81の底壁81bにはロッド挿通孔81aが形成されており、このロッド挿通孔81aに対して各操作用ロッド32の胴部本体321を挿通させることができるようになっている。
【0033】
ミドルプレート8におけるロッド挿通孔81aの開口断面積は、可動ブロック33の断面よりも小さく、操作用ロッド32の胴部本体321の断面よりも僅かに大きい。操作用ロッド32は、頭部323および首部322がアッパーケース2のロッド挿通孔31に挿通され、胴部本体321がミドルプレート8のロッド挿通孔81aに挿通される。その結果、操作用ロッド32は、ハウジングの第1収容部内で姿勢が斜めに傾くことがなく、
図15に示すような正規の姿勢に保持される。
【0034】
[ガイドプレート/スライドロッド/ロッドリターンプレート]
図16は、ガイドプレート7の後面7A、すなわちミドルプレート8に対向する方の面を示す図である。ガイドプレート7は、ハウジング内における第1収容部、すなわちアッパーケース2とミドルプレート8との間に配置されている。
図3および
図15からも明らかなように、ガイドプレート7は、ミドルプレート8と対向して配置される。そして、ガイドプレート7の後面は、ミドルプレート8の前面8Aに摺接しつつ、ハウジング内において上下方向に所定の範囲内でスライド自在であり、後述する初期基準位置と離脱位置に変位可能である。また、ガイドプレート7は、ハウジングの第1収容部の内部において、上下方向にスライド自在に収容されている。
【0035】
ガイドプレート7には、四角形と楕円形を連結したような形状の貫通孔71を複数有している。ガイドプレート7における貫通孔71は、ボタン錠100の押しボタン22に対応する数だけ、押しボタン22に対応するような位置に設けられている。ここで、貫通孔71のうち、略四角形を有する部分を「ブロック収容孔部71a」と称する。上記のように、ガイドプレート7はハウジング内(第1収容部)の上下方向、すなわち操作用ロッド32のスライド方向と直交する方向にスライド可能であるところ、ガイドプレート7のブロック収容孔部71aのそれぞれがミドルプレート8のブロック収容凹部81と位置が合致した状態、すなわち対応するブロック収容孔部71aとブロック収容凹部81との位置が前後に重なった状態となるようなガイドプレート7の位置を「初期基準位置(通常位置)」として定義する。なお、本実施形態においては、アッパーケース2の内面側にも、ミドルプレート8における各ブロック収容凹部81と対応する位置に複数のブロック収容凹部201が設けられている。アッパーケース2のブロック収容凹部201については、
図5に図示されている。ガイドプレート7が初期基準位置(通常位置)に配置された状態において、ガイドプレート7の各ブロック収容孔部71aの前方側にブロック収容凹部201が位置付けられ、各ブロック収容孔部71aの後方側にブロック収容凹部81が位置付けられた状態となる。アッパーケース2のブロック収容凹部201、ガイドプレート7のブロック収容孔部71a、ミドルプレート8における各ブロック収容凹部81には、操作用ロッド32に装着された可動ブロック33を収容することができる。なお、ガイドプレート7が上述した初期基準位置にあるときには操作用ロッド32に可動ブロック33が装着された状態に維持される。一方、ガイドプレート7が初期基準位置から下方の離脱位置
に変位すると、各ブロック収容孔部71aに収容されている各可動ブロック33がガイドプレート7と連動することによって、各操作用ロッド32から各可動ブロック33が離脱するように構成されている。
【0036】
更に、ガイドプレート7の下側短辺には、下方に向けてピン状のスプリング保持部72が突出しており、このスプリング保持部72にガイドスプリング73が装着されている。スプリング保持部72に装着されたガイドスプリング73は、ガイドプレート7の下側短辺とアッパーケース2の内壁面との間に挟まれ、縮んだ状態で保持されている。その結果、ガイドプレート7に対して、ガイドスプリング73が伸びようとする方向への付勢力が作用する。また、ガイドプレート7の下側角部には、略矩形状の貫通孔である角穴部74が設けられている。この角穴部74には、設定変更スイッチ11の扇形状を有する押し込み部111が挿入されている(
図3、16等を参照)。
【0037】
図16に示されるように、ガイドプレート7の後面7Aには、スライドロッド40を収容可能な収容凹部75が形成されている。収容凹部75は、スライドロッド40を、その軸方向にスライド自在に収容している。より具体的には、ガイドプレート7に対するスライドロッド40の相対スライド方向は、ハウジングの第1収容部内におけるガイドプレート7のスライド方向と一致している。すなわち、ガイドプレート7の収容凹部75に沿ってスライドロッド40が移動することで、当該スライドロッド40はハウジングの第1収容部内を上下方向にスライドすることとなる。なお、スライドロッド40は、ガイドプレート7に対して所定の範囲内でスライド自在に収容凹部75内に収容されている。また、
図16には、収容凹部75にスライドロッド40を収容した状態のガイドプレート7が示されている。
【0038】
図17は、スライドロッド40およびロッドリターンプレート9の詳細構造を説明する図である。
図17に示されるように、スライドロッド40は、軸本体部41と、この軸本体部41の側方から突設される複数の腕部42を有している。スライドロッド40の腕部42は、押しボタン22に対応して設けられている。また、各腕部42の先端には、側面視略三角形状を有する突起部43が形成されている。腕部42の突起部43は、可動ブロック33に形成された略角錐形状を有する凹部334と係合可能である。スライドロッド40における突起部43と可動ブロック33における凹部334との係合、およびその解除については後述する。
【0039】
スライドロッド40における軸本体部41の下端部近傍には、矩形状のロッド貫通孔44が形成されている。軸本体部41の軸方向へのロッド貫通孔44の開口幅は、ロッドリターンプレート9の立ち上り部92の幅よりも大きい。これにより、ロッドリターンプレート9の立ち上り部92をロッド貫通孔44に挿通させた状態で、立ち上り部92を所定の範囲でスライドさせることができる。なお、
図3、
図16等に示すように、ガイドプレート7側にも、スライドロッド40のロッド貫通孔44と同等の貫通孔76が形成されている。ガイドプレート7に設けられた貫通孔76は、収容凹部75にスライドロッド40を収容した状態で、スライドロッド40のロッド貫通孔44と平面的な位置が合致するように配置されている。なお、ロッドリターンプレート9における立ち上り部92の詳細については後述する。
【0040】
更に、スライドロッド40の軸本体部41の下端部には、棒形状を有するアーム制御部45が下方に向けて突設されている。アーム制御部45の途中には、鍔部451が形成されており、この鍔部451によって、アーム制御部45が先端側の第1領域部452と、基端側の第2領域部453とに区分されている。スライドロッド40のアーム制御部45は、
図6に示されるアーム36の姿勢を制御(変更)することができる。ここで、
図6を参照してアーム36を説明すると、アーム36は、円筒形状を有する軸受け部361と、
この軸受け部361から突設される連結部362と回転ストッパー363とを有している。
【0041】
軸受け部361は、アッパーケース2の裏面から突設された回転軸37に回転自在に軸支されている。また、アーム36の連結部362および回転ストッパー363は、互いに反対方向に軸受け部361から突出している。連結部362の端部には、略U字形を有する連結用爪が形成されており、この連結用爪にアーム制御部45の鍔部451を連結することで、アーム制御部45およびアーム36を接続している。その結果、ガイドプレート7に保持(収容)されたスライドロッド40が、ハウジング内を上下方向にスライドする際、これに連動してアーム36の姿勢を変更することができるように構成されている。なお、アーム36の作動状況に関する詳細は、後述する。
【0042】
また、
図6に示すように、アーム制御部45の第2領域部453には、スプリング454が縮んだ状態で装着されている。スプリング454は、アーム36の連結部362と軸本体部41の下端部との間に挟まれており、スライドロッド40を常時上方に向かって付勢している。アーム36の回転ストッパー363は、その姿勢に応じて、外筒6の外周部に設けられた扇形の外周突起片66と係合することが可能である。詳しくは後述するが、外筒6の外周突起片66が回転ストッパー363によって係止されている状態では、操作摘み4の開操作に対応する方向への外筒6の回動動作が規制(制限)される。一方、外筒6の外周突起片66が回転ストッパー363に係止されていない状態では、操作摘み4の開操作に対応する方向への外筒6の回動動作は規制されない。
【0043】
[スイングプレート/リテーナ]
次に、ボタン錠100が備えるリテーナ16およびスイングプレート17について説明する。リテーナ16およびスイングプレート17は、ハウジングの下部領域に収容される部材である。リテーナ16およびスイングプレート17の組み合わせは規制手段に相当する。
【0044】
図18は、リテーナ16およびスイングプレート17を説明する斜視図である。上段の(a)にはリテーナ16およびスイングプレート17を組み合わせた状態を示し、下段の(b)には組み合わせる前の状態のリテーナ16およびスイングプレート17を示す。リテーナ16は、円柱状の軸部161と、当該軸部と一体に形成された腕部162とを含んでいる。
図19は、ボタン錠100のハウジングに対するリテーナ16の軸部161の固定構造を示す図である。
図20は、互いに組み付けられた状態のリテーナ16およびスイングプレート17がハウジングに組み込まれた状態を示す図である。
図6に表されているように、本実施形態においては、リテーナ16およびスイングプレート17は組み合わされた状態で、ボタン錠100の下部領域A1に配置されている。スイングプレート17およびリテーナ16は、スライドロッド40の相対スライド移動に連動して、その姿勢(位置)が変更される。詳しくは後述するが、スライドロッド40が初期基準位置から下方に押し下げられたときに、スイングプレート17が第1姿勢から第2姿勢に切り替えられ、それに連動してリテーナ16が退避姿勢から係合姿勢に切り替えられる。
図21および
図22は、スイングプレート17およびリテーナ16の第1姿勢および退避姿勢を示す図である。
図23および
図24は、スイングプレート17およびリテーナ16の第2姿勢および係合姿勢を示す図である。
【0045】
リテーナ16の軸部161は、一方の第1端部161A側がアッパーケース2の内壁面に形成された第1凹部25に対して回動自在に軸受けされ、他方の第2端部161B側がリアパネル30の内壁面に形成された第2凹部30Aに対して回動自在に軸受けされている。以上のようにして、リテーナ16は、ボタン錠100の前後方向に沿って配置された軸部161が第1凹部25および第2凹部30Aによって軸支されることにより、軸部1
61の中心軸を中心としてハウジングに対して回動自在となっている。
【0046】
リテーナ16の腕部162は、概略S字形状を有しており、その先端部に回転規制用ストッパー163が形成されている。
図18に示す例では、リテーナ16の腕部162は、軸部161の第2端部161B寄りの部位に接合されている。また、
図18および
図19に示すように、リテーナ16における軸部161のうち、第1端部161Aと腕部162との間に位置する領域には、スイングプレート17における円筒状の装着スリーブ171を遊嵌することでスイングプレート17を揺動自在に取り付け可能な取付部164が形成されている。
図19において、軸部161の取付部164は、第1端部161Aおよび第2端部161Bに比べて一回り直径の大きな外周面を有しているが、この態様には限定されない。
【0047】
また、
図18に示す符号162Aは、リテーナ16の腕部162における前面である。腕部162の前面162Aは、ハウジング内においてアッパーケース2の内面側を向いて配置される方の面である。腕部162の前面162Aには、円柱状の突起165が突設されている。
【0048】
スイングプレート17は、
図18に示すように、円筒状の装着スリーブ171と、当該装着スリーブ171と一体に設けられた板状のプレート部172を有する。符号172Aは、プレート部172の被押圧面である。プレート部172の被押圧面172Aは、後述するようにスライドロッド40が初期基準位置からら下方にスライドした際に、アーム制御部45の先端側に位置する第1領域部452によって押圧される面である。また、スイングプレート17におけるプレート部172の被押圧面172A側には、リブ状の突起173が突設されている。スイングプレート17における突起173は、後述するようにリテーナ16の腕部162側に設けられた突起165と係合可能である。スイングプレート17の装着スリーブ171の内径は、リテーナ16の軸部161における取付部164の外径よりも僅かに大きい。リテーナ16の軸部161は、スイングプレート17の装着スリーブ171に取付部164を挿入した状態で両端をそれぞれ第1凹部25および第2凹部30Aに軸受け固定される。これにより、スイングプレート17およびリテーナ16を組み合わせた状態でハウジング内に装着することができる。
【0049】
本実施形態においては、
図18の(a)に示すように、組み合わされた状態のスイングプレート17における装着スリーブ171およびリテーナ16における軸部161の間には、トーションスプリングTSが組み込まれており、プレート部172に設けられた突起173とリテーナ16に設けられた突起165が当接するように、トーションスプリングTSがスイングプレート17およびリテーナ16を付勢している。また、プレート部172における被押圧面172Aの反対側に位置する裏面172Bには突起174が設けられており、この突起174にコイルスプリング175の一端側が装着されている。例えば、突起174は半球形状を有する突起であり、突起174の直径はコイルスプリング175の直径よりも僅かに小さな寸法に設定されていてもよい。これにより、突起174に装着されたコイルスプリング175がずれたり、突起174から外れてしまうことが抑制される。また、
図21~
図24に示すように、スイングプレート17におけるコイルスプリング175は、その他端側がロアケース3の内壁面に設けられた反力部310に当接するように配置されている。これにより、スイングプレート17のプレート部172はコイルスプリング175の弾性力によって常に上方に向けて付勢される。その結果、プレート部172における被押圧面172Aがスライドロッド40のアーム制御部45における第1領域部452に対して押し付けられた状態に維持される。
【0050】
次に、
図3、
図17等に基づいてロッドリターンプレート9の詳細について説明する。ロッドリターンプレート9は、ハウジングの第2収容部において、上下方向にスライド自
在に収容されている。ロッドリターンプレート9のスライド方向は、操作用ロッド32のスライド方向と直交する方向であって、ガイドプレート7のスライド方向と一致する。ロッドリターンプレート9は、本発明におけるプレート部材に相当する。
【0051】
ロッドリターンプレート9は、略矩形板状のプレート本体部93と、プレート本体部93から立設する立ち上り部92を有する。立ち上り部92は、プレート本体部93における幅方向中央部かつ下端寄りの部分に設けられており、プレート本体部93の長辺方向に沿って伸びている。また、
図17に示されるように、立ち上り部92の先端は、クリアボタン23が装着されている。クリアボタン23は、使用者が把持するための操作部231と、ロッドリターンプレート9における立ち上り部92の先端に固定されるベース部232を有している。ロッドリターンプレート9の立ち上り部92にクリアボタン23が取り付けられることで、クリアボタン23が使用者によってスライド操作された際、これに連動してロッドリターンプレート9がスライドすることとなる。
【0052】
また、ロッドリターンプレート9のプレート本体部93の表面には、複数の爪部91、および複数の傾斜突部94が突設されている。プレート本体部93における爪部91と傾斜突部94は、各押しボタン22に対応するように、互いに近接して配置されている。ここで、ロッドリターンプレート9の爪部91は、操作用ロッド32の胴部本体321における第1凹部対321a,321aおよび第2凹部対321b,321bの何れかに選択的に嵌合されるようになっている。ロッドリターンプレート9の爪部91が、第1凹部対321a,321aおよび第2凹部対321b,321bの何れかに嵌合されることで、操作用ロッド32がロッドリターンプレート9に保持された状態となる。そして、第1凹部対321a,321aと第2凹部対321b,321bとの間で爪部91が嵌合する相手が切り替えられることで、ロッドリターンプレート9による操作用ロッド32の保持状態が変更される。
【0053】
なお、ロッドリターンプレート9は、ハウジング内において上下方向にスライド自在に保持されているところ、「初期基準位置」にあるときに、爪部91がそれぞれ対応する操作用ロッド32の後方に位置し、第1凹部対321a,321aおよび第2凹部対321b,321bの何れかに嵌合可能な位置に配置されている。
図25は、初期基準位置に配置された状態のガイドプレート7およびロッドリターンプレート9を示す図である。
図26は、ロッドリターンプレート9における前面の下部領域を示す図である。プレート本体部93における下側の短辺には、ロッドリターンプレート用スプリング97を保持するための保持ピン98が、下方に向けて突出している。ロッドリターンプレート用スプリング97は、ロアケース3の内面から突出する突出片300とプレート本体部93との間に介装されている。ロッドリターンプレート9は、ロッドリターンプレート用スプリング97の付勢力によって、常に上方に向かって押圧されている。
【0054】
また、ロッドリターンプレート9は、プレート本体部93の長辺中間部から側方へ向けて突出する側方アーム95を有している(
図17を参照)。この側方アーム95は、フックベース38における略コの字形の係合凹部に嵌合されている。このフックベース38は、
図27に示されるフック付きアーム39に連結される部材である。
図27に示すように、ロアケース3には、略矩形状の開口窓301が設けられている。開口窓301は、ボタン錠100の上下方向に縦長の開口部である。
【0055】
フックベース38は、ロアケース3の裏面側すなわちハウジングの内部側に配置されるベース部381と、ベース部381に設けられるとともに開口窓301に挿入可能なスライド部382と、スライド部382に突設されるとともにハウジングの外部に露出する軸部383と、を有している。ベース部381は、開口窓301よりも大きな投影面積を有し、開口窓301を通り抜けることはできない。一方、スライド部382は、開口窓30
1に挿入されており、開口窓301の長辺方向すなわちボタン錠100の上下方向に沿って、所定の範囲内でスライド可能となっている。スライド部382に突設された軸部383は、ロアケース3とリアパネル30との間に形成された空間に収容され、
図27に示すように、フック付きアーム39の連結部391を相対回動自在に軸支するとともに、ネジ等によって連結部391と連結されている。また、フック付きアーム39は、ロッドリターンプレート用スプリング97によって常時上方に向かって付勢されている。また、フック付きアーム39の先端側にはフック393が形成されている。
図27に示される符号121は、駆動シャフト12に形成された係合部である。駆動シャフト12の係合部121は、フック付きアーム39のフック393と係合可能である。
【0056】
<解錠・施錠時の動作>
[解錠時の動作]
次に、ボタン錠100の解錠・施錠時における作動内容について詳しく説明する。まず、施錠されているボタン錠100を解錠する際の動作について説明する。ボタン錠100が施錠されている状態では、操作摘み4はLOCK位置に合わせられている。また、後述するように、ボタン錠100の施錠時には、全ての操作用ロッド32が自動でクリアされ、押動されていない状態のクリア位置に戻される(
図15を参照)。なお、クリア位置に戻された操作用ロッド32は、
図28に示すように、第1凹部対321a,321aにロッドリターンプレート9の爪部91が嵌合された状態(以下、「ロッド第1保持状態」という)となっている。
【0057】
この状態から、ボタン錠100の解錠に際して、使用者は、設定されている解錠符号に則して押しボタン22の押動操作を行う。ボタン錠100の押しボタン22が押されると、押された押しボタン22に組み込まれた操作用ロッド32がクリア位置から軸方向にスライドし、ハウジング内部に押し込まれる。以下、このときの操作用ロッド32の位置を「押込み位置」という。クリア位置から押込み位置まで変位した操作用ロッド32は、
図29に示すように、ロッドリターンプレート9の爪部91が第2凹部対321b,321bに嵌合された状態(以下、「ロッド第2保持状態」という)となる。ロッドリターンプレート9の爪部91は、操作用ロッド32がクリア位置から押込み位置へと変位した際、当該操作用ロッド32を当該押込み位置に保持する保持手段に相当する。また、ロッドリターンプレート9の爪部91は、操作用ロッド32が押込み位置に変位した際に当該操作用ロッド32に形成された被係合部としての第2凹部対321b,321bに係合する係合部ともいえる。
【0058】
操作用ロッド32は、対応する押しボタン22が押動された際にハウジング内に押し込まれることでクリア位置から押込み位置へと変位する。こうして、押しボタン22の押動操作によって、押し込まれた押しボタン22に対応する操作用ロッド32のみがロッド第2保持状態となり(
図29を参照)、押されなかった押しボタン22に対応する操作用ロッド32はロッド第1保持状態に維持される(
図28を参照)。なお、ボタン錠100の解錠時において、使用者による押し込まれた押しボタン22は、常にボタンスプリング223によって押し上げられているため、使用者の指が離れた時点で、ボタン用開口部211に埋没した状態から外部に突出した状態へと移行する。
【0059】
ボタン錠100は、解錠符号を任意に設定することができる構造となっている。解錠符号の設定方法については後述するが、ボタン錠100は、解錠符号に対応する押しボタン22に装着された操作用ロッド(以下、単に「解錠符号に対応する操作用ロッド」ともいう)32と、解錠符号に対応しない押しボタン22に装着された操作用ロッド(以下、単に「解錠符号に対応しない操作用ロッド」ともいう)32とにおいて、操作用ロッド32に対する可動ブロック33の係合位置(保持位置)が異なっている。具体的には、解錠符号に対応しない操作用ロッド32は第1保持位置(
図9を参照)に可動ブロック33が保
持され、解錠符号に対応する操作用ロッド32は第2保持位置(
図11を参照)に可動ブロック33が保持される。解錠符号に対応するか否かに応じた操作用ロッド32に対する可動ブロック33の保持位置の変更動作に関しては後述する。
【0060】
上記のように、可動ブロック33には凹部334が設けられており、凹部334はスライドロッド40の突起部43と相補的な形状を有している。操作用ロッド32における可動ブロック33の装着位置と、ロッドリターンプレート9の爪部91による操作用ロッド32の保持状態との関係について言及すると、まず、ロッド第1保持状態にある操作用ロッド32は、可動ブロック33を第1保持位置に装着した状態のときに、可動ブロック33の凹部334とスライドロッド40の突起部43との位置が合致し、凹部334に突起部43を嵌め込むことができる。可動ブロック33の凹部334は、本発明における被嵌合部に対応している。また、可動ブロック33の凹部334に嵌合可能なスライドロッド40の突起部43が本発明における嵌合部に対応している。
【0061】
図25に示す例では、符号A~Eで示す操作用ロッド32のうち、B、Eで示す操作用ロッド32が第2保持位置に可動ブロック33が保持されており、A、C、Dで示す操作用ロッド32が第1保持位置に可動ブロック33が保持されている。この図の例では、A~Eで示す操作用ロッド32のうち、第2保持位置に可動ブロック33が保持されたB、Eで示す操作用ロッド32が解錠符号に対応する操作用ロッド32であるのに対して、当該B、Eで示す操作用ロッド32はいずれも押動されていない。従って、
図25に示す状態では、ボタン錠100の押しボタン22が解錠符号に揃っていない。
【0062】
また、第1保持位置から第2保持位置に変更したときの操作用ロッド32に対する可動ブロックの変位ずれ量は、操作用ロッド32をロッド第1保持状態からロッド第2保持状態へ変更したときの操作用ロッド32の相対移動量に一致するように調整されている。従って、図示はしないが、操作用ロッド32がロッド第2保持状態にある場合には、可動ブロック33を第1保持位置ではなく第2保持位置に装着することで、可動ブロック33の凹部334とスライドロッド40の突起部43との位置が合致し、突起部43をちょうど凹部に嵌め込むことができる。
【0063】
以上のように、解錠符号に対応する操作用ロッド32、すなわち第2保持位置に可動ブロック33を保持する操作用ロッド32(
図25の例ではB、E)が押込み位置にあるときには可動ブロック33の凹部334にスライドロッド40の突起部43を嵌め込むことができるが、クリア位置にあるときには
図30に示すように可動ブロック33の凹部334と突起部43の位置が前後方向にずれた状態となり、凹部334に突起部43を嵌め込むことができない。
図30は、可動ブロック33が第2保持位置に装着された操作用ロッド32が第1保持状態にあるときの凹部334と突起部43との相対関係を示す図である。この場合、スライドロッド40における突起部43の頂部が可動ブロック33における凹部334の縁部と干渉する結果、凹部334の深さだけ突起部43が下方に押し下げられる。
【0064】
なお、上記のように解錠符号に対応する操作用ロッド32が押込み位置にあるときには第2保持位置に装着された可動ブロック33がガイドプレート7のブロック収容孔部71aのみに収容された状態となる。一方、解錠符号に対応する操作用ロッド32がクリア位置にあるときには、第2保持位置に装着された可動ブロック33がアッパーケース2におけるブロック収容凹部201とガイドプレート7におけるブロック収容孔部71aの双方に跨って収容される。
【0065】
一方、解錠符号に対応しない操作用ロッド32、すなわち第1保持位置に可動ブロック33を保持する操作用ロッド32(
図25の例ではA、C、D)がクリア位置にあるとき
には可動ブロック33の凹部334にスライドロッド40の突起部43を嵌め込むことができるが、押込み位置にあるときには可動ブロック33の凹部334と突起部43の位置が前後方向にずれた状態となり、凹部334に突起部43を嵌め込むことができない。なお、解錠符号に対応しない操作用ロッド32がクリア位置にあるときには第1保持位置に装着された可動ブロック33がガイドプレート7のブロック収容孔部71aのみに収容された状態となる。一方、解錠符号に対応しない操作用ロッド32が押込み位置にあるときには、第1保持位置に装着された可動ブロック33がガイドプレート7におけるブロック収容孔部71aとミドルプレート8におけるブロック収容凹部81の双方に跨って収容される。
【0066】
ここで、何れかの操作用ロッド32に装着された可動ブロック33がアッパーケース2におけるブロック収容凹部201とガイドプレート7におけるブロック収容孔部71aに跨るように、或いは、ガイドプレート7におけるブロック収容孔部71aとミドルプレート8におけるブロック収容凹部81に跨るように収容されている状態は、少なくとも何れかの可動ブロック33がハウジング内における不動部(アッパーケース2におけるブロック収容凹部201、ミドルプレート8におけるブロック収容凹部81)に係止された状態といえる。この場合、ミドルプレート8に対してガイドプレート7が固定された状態となる。すなわち、ガイドプレート7が初期基準位置(通常位置)に固定された状態となり、初期基準位置(通常位置)から離脱位置へのスライド移動が規制される。言い換えると、全ての操作用ロッド32に装着された可動ブロック33がガイドプレート7におけるブロック収容孔部71aのみに収納されたときに限り、ミドルプレート8に対するガイドプレート7の固定が解除され、この状態で初期基準位置(通常位置)から下方へのガイドプレート7のスライド移動が許容される。
【0067】
また、本実施形態におけるスライドロッド40は、突起部43を先端に有する各腕部42は軸本体部41を介して一体となっているため、スライドロッド40における突起部43のうちの一つでも可動ブロック33の凹部334に対する相対位置がずれている場合には、スライドロッド40が初期基準位置から下方にスライドすることになる。なお、その際、ガイドプレート7は初期基準位置に固定された状態であるため、ガイドプレート7の収容凹部75に沿ってスライドロッド40が下方にスライドすることになる。
【0068】
上記のように、ボタン錠100の押しボタン22が解錠符号に揃っていない場合、少なくとも何れかの操作用ロッド32に関して、可動ブロック33の凹部334とスライドロッド40の突起部43とにおける位置が合致せず、スライドロッド40が初期基準位置から下方に押し下げられた状態となる。そうすると、
図31に示すように、スライドロッド40におけるアーム制御部45がアーム36の連結部362を押し下げる。アーム36は、アッパーケース2の回転軸37に軸支されているため、アーム制御部45によって押し下げられる連結部362とは逆に、回転ストッパー363が押し上げられる。その結果、アーム36の回転ストッパー363が、外筒6の外周突起片66に係止され、外筒6の開方向(
図31でいうと、時計廻り方向)への回動が規制される。その結果、ボタン錠100の押しボタン22が解錠符号に揃っていない場合、すなわち押しボタン22が解錠符号に則して押動操作されていない場合に、アーム36の回転ストッパー363が外筒6の外周突起片66に係止されることにより、操作摘み4の開操作を規制できる。
【0069】
なお、解錠符号に対応する押しボタン22の全てが押動され、解錠符号に対応しない押しボタン22が何れも押動されていない状態のときには、ボタン錠100の押しボタン22が解錠符号に揃った状態となる。例えば、
図32に示す例では、B、Eで示す操作用ロッド32が解錠符号に対応する操作用ロッドであり、他の操作用ロッド32が解錠符号に対応しない操作用ロッドであるとすると、図示の状態では解錠符号に対応する操作用ロッドの全てが押動され、且つ、解錠符号に対応しない操作用ロッドの何れも押動されていな
い状態となっている。つまり、
図32に示す状態ではボタン錠100の押しボタン22が解錠符号に揃っている。この状態では、全ての操作用ロッド32に関し、可動ブロック33の凹部334とスライドロッド40の突起部43との相対位置が一致することとなり、可動ブロック33との干渉に起因するスライドロッド40の押し下げは起こらない。したがって、スライドロッド40は、アーム制御部45の第2領域部453に装着されたスプリング454によって上方に向かって付勢され、初期基準位置に位置付けられる。この状態では、
図6に示すように、外筒6の外周突起片66は回転ストッパー363に係止されない。すなわち、ボタン錠100が内部機構的に解錠された状態となり、外筒6およびシリンダー5に連結されている操作摘み4を開操作することができる状態となる。この状態から操作摘み4の開操作を行うと、ストッパー10が係止位置から離脱位置に切り替えられ、その結果、ストッパー10が施錠対象物の相手側部材から離脱する。これにより、ボタン錠100を外部機構的にも解錠することができる。
【0070】
以上のように、ボタン錠100は、解錠符号に対応する操作用ロッド32のみが押込み位置にあるときに操作摘み4の動作の規制が解除される。そして、ボタン錠100の押しボタン22が解錠符号に揃った状態、つまり、可動ブロック33が第1保持位置に装着されている操作用ロッド32の全てがクリア位置にあり、かつ、可動ブロック33が第2保持位置に装着されている操作用ロッド32の全てが押込み位置にあるときに、操作摘み4の動作の規制が解除される。
【0071】
[施錠時の動作]
次に、ボタン錠100を施錠する際の動作について説明する。ボタン錠100は、内部機構的に解錠状態、すなわち、押しボタン22が解錠符号に揃った状態にあるボタン錠100の操作摘み4をOPEN位置からLOCK位置に合わせる閉操作を行うことで、自動的に施錠される構造となっている。
【0072】
使用者が、解錠状態にあるボタン錠100に対して、操作摘み4の閉操作を行うと、操作摘み4と一体となって、シリンダー5、外筒6、および駆動シャフト12が閉方向に回動する。ここで、
図27を参照すると、操作摘み4の閉操作を行うことで、操作摘み4に連動して駆動シャフト12が図中反時計廻りに回転する。その際、駆動シャフト12に設けられた係合部121も図中反時計廻りに回転することとなり、フック付きアーム39のフック393を係止することが可能となっている。なお、操作摘み4の開操作に伴って駆動シャフト12が
図27において時計廻りの方向(以下、「開方向」という)に回動する際には、フック付きアーム39のフック393は駆動シャフト12の係合部121によって係止されないように、双方の部材の相対関係が規定されている。
【0073】
そして、上記のように操作摘み4の閉操作に伴い、駆動シャフト12の係合部121が閉方向に回動すると、
図27に示すように、駆動シャフト12の係合部121によってフック付きアーム39のフック393が係止されるため、フック付きアーム39がロッドリターンプレート用スプリング97に抗して下方に引き下げられる。このようフック付アーム39が下方へスライドすると、ロアケース3を挟んでフック付アーム39と連結されているフックベース38も連動して下方にスライドする。その際、
図17に示した様に、フックベース38は、その係合凹部がロッドリターンプレート9の側方アーム95に嵌合されているため、フックベース38に連動してロッドリターンプレート9も初期基準位置から下方にスライドする。なお、ロッドリターンプレート9の立ち上り部92には、クリアボタン23が装着されている。そのため、外筒6が閉方向に回動すると、これに連動してクリアボタン23もスライドする。
【0074】
上記のように、操作摘み4(駆動シャフト12)の閉方向への回動に連動して、ロッドリターンプレート9が初期基準位置から下方にスライドすると、操作用ロッド32の第1
凹部対321a,321aまたは第2凹部対321b,321bに嵌合しているロッドリターンプレート9の爪部91の嵌合状態が解除される。そして、操作用ロッド32は、前述のロッドスプリング324(
図7を参照)の付勢力によって前方に向けて引っ張られるため、押動されていた操作用ロッド32が所定のクリア位置に戻される。ロッドリターンプレート9の爪部91による操作用ロッド32の保持が解除されるまでは、解錠符号に対応する操作用ロッド32のみが押し込まれているため、ここでは解錠符号に対応する操作用ロッド32のみがクリア位置に戻されることになる(解錠符号に対応しない操作用ロッド32は、元々クリア位置にある)。
【0075】
以上のように、ボタン錠100は、操作用ロッド32をクリア位置に変位させるクリア手段を備える。このクリア手段は、操作用ロッド32を押込み位置からクリア位置に戻す方向に付勢する付勢部材としてのロッドスプリング324と、ロッドリターンプレート9をスライドさせることで、可動ブロック33の凹部334とスライドロッド40の突起部43との嵌合を解除させるスライド手段とを含む。なお、スライド手段は、ストッパー10の姿勢が離脱姿勢にある状態での操作摘み4の閉操作に、協働してロッドリターンプレート9を下方にスライドさせる、外筒6の係合部67、フック付きアーム39のフック393、フックベース38等を含んで構成されている。
【0076】
ここで、ロッドリターンプレート9は、プレート本体部93に傾斜突部94が突設されている。そのため、操作摘み4の閉操作に伴いロッドリターンプレート9が下方にスライドすると、傾斜突部94の斜面が、操作用ロッド32の端部に設けられた溝部325(
図7を参照)の傾斜面325aと衝突する。つまり、ロッドリターンプレート9の傾斜突部94が操作用ロッド32を押込み位置からクリア位置に向かって押し上げることにより、操作用ロッド32に対する爪部91の嵌合状態を確実に解除することができる。よって、解錠符号に対応する操作用ロッド32を確実にクリアすることができる。
【0077】
このように、解錠符号に対応する操作用ロッド32がクリア位置に戻されると、ボタン錠100の押しボタン22が解錠符号に揃っていない状態に移行する。つまり、全ての操作用ロッド32が第1保持状態となるため、解錠符号に対応する操作用ロッド32に関して、可動ブロック33の凹部334の位置とスライドロッド40の突起部43の位置が互いにずれ、スライドロッド40が初期基準位置から下方にスライドする。その結果、
図31で説明したように、スライドロッド40におけるアーム制御部45によってアーム36の姿勢が変更され、その回転ストッパー363が押し上げられることで外筒6の外周突起片66に係止される。その結果、外筒6の開方向への回動が規制されるようになり、操作摘み4の開操作が制限される。
【0078】
その後、操作摘み4をLOCK位置まで回動させる過程において、
図33に示すように、駆動シャフト12の係合部121からフック付きアーム39のフック393が外れることで、両者の係止状態が解除される。その結果、ロッドリターンプレート用スプリング97の付勢力によって、フック付きアーム39が押し上げられ、フックベース38、ロッドリターンプレート9、クリアボタン23が一体となって元の通常位置まで押し上げられる。そして、操作摘み4の位置がLOCK位置に至った後は、操作摘み4の開方向への回動ができなくなることで、ボタン錠100の内部機構的な施錠が完了する。また、操作摘み4、シリンダー5、ストッパー10は一体となっているため、操作摘み4を閉操作によってLOCK位置まで回転することで、ストッパー10が係止位置まで回転する。これにより、ストッパー10が施錠対象物の相手側部材に係止されることで、外部機構的にもボタン錠100の施錠が完了する。
【0079】
[解錠符号の設定]
次に、ボタン錠100における解錠符号の設定方法について説明する。上記のように、
ボタン錠100は、解錠符号を任意に設定することができる。解錠符号の設定変更は、ボタン錠100が解錠された状態で行われる。より詳しくは、解錠符号の設定変更は、後述するように設定変更スイッチ11を操作することで行われる。通常時、設定変更スイッチ11は、リアパネル30に印字された固定位置302に位置が合わせられている。そして、設定変更スイッチ11は、使用者によって、固定位置302の他、リセット位置303、設定位置304に切り替え操作が可能となっている(
図2を参照)。設定変更スイッチ11は、本発明における操作スイッチ部に相当する。
【0080】
設定変更スイッチ11は、ボタン錠100が内部機構的に解錠されている場合に限り固定位置302(初期位置)からリセット位置303や設定位置304への切り替え操作が可能である。つまり、ボタン錠100が内部機構的に施錠されている場合、設定変更スイッチ11は、固定位置302からリセット位置303や設定位置304への切り替え操作が規制される構造となっており、ボタン錠100が解錠されている場合に限り、解錠符号の設定変更操作が可能となる。なお、このような機能は、後述するようにスイングプレート17、リテーナ16等が協働して実現されている。
【0081】
解錠符号の設定に際しては、ボタン錠100が内部機構的に解錠されている状態、すなわち押しボタン22が解錠符号に揃っている状態で、ボタン錠100の背面にある設定変更スイッチ11を、リアパネル30に印字された固定位置302からリセット位置303まで回転させる。
図3および
図20等に示すように、設定変更スイッチ11は、円板状の操作部112と、この操作部112に連結される軸部113とを有する。操作部112は、
図2に示すようにリアパネル30の開口部を通じて外部に露出している。操作部112は使用者によって操作される部位であり、その表面には操作用の溝部が形成されている。使用者は、操作部112の溝部にコイン等を嵌めて回転させることで、設定変更スイッチ11を、
図2に示す固定位置302、リセット位置303、設定位置304の何れかに切り替え可能となっている。
【0082】
また、
図3および
図20等に示すように、設定変更スイッチ11における軸部113のうち、操作部112との接続される基端部近傍には、略半円形状を有する半円板部114が設けられており、この半円板部114の裏面には、棒状のピン115が突出している。また、軸部113における半円板部114よりも先端側の領域には、扇形(略4分の1円)の横断面を有する押し込み部111が形成されている。また、軸部113の先端側は、アッパーケース2に対して軸部113の中心軸周りに回転自在に取り付けられている。また、
図26に示すように、ロッドリターンプレート9のプレート本体部93には、設定変更スイッチ11における軸部113(押し込み部111)とプレート本体部93とが干渉することを回避するための切欠き凹部96が形成されている。なお、設定変更スイッチ11の各部は、
図20、21、23等にも図示されている。
【0083】
図34および
図35は、ロッドリターンプレート9と設定変更スイッチ11の押し込み部111との相対関係を示す図である。両図には、ロッドリターンプレート9の裏面、すなわち上述した爪部91が突設されていない方の面を示している。
図34、
図35等に示すように、プレート本体部93の下方隅部には、設定変更スイッチ11の操作部112を反時計廻りに回動させた際に、半円板部114から突出するピン115を受け止めて係止するピン受け部97が形成されている。また、
図16に示すように、ガイドプレート7の角穴部74には、設定変更スイッチ11の押し込み部111が挿入されている。
図16には、設定変更スイッチ11が固定位置302に合わせられている状態での押し込み部111と角穴部74との相対関係が示されている。また、
図34には、設定変更スイッチ11が固定位置302に合わせられている状態でのピン115とピン受け部97との相対関係が示されている。
【0084】
上記のように、設定変更スイッチ11の位置は、使用者によって、固定位置302からリセット位置303まで変更される。その際、まず、設定変更スイッチ11の位置が固定位置302から設定位置304に至る過程で、設定変更スイッチ11の押し込み部111がその側面111A(
図16を参照)でガイドプレート7の角穴部74の縁部を押圧する。その結果、ガイドプレート7が初期基準位置から下方にスライドする。なお、ボタン錠100が解錠状態にあるときには、上記のように全ての操作用ロッド32について、可動ブロック33がガイドプレート7におけるブロック収容孔部71aのみに収納された状態となっており、初期基準位置から下方へのガイドプレート7のスライドが許容される。
【0085】
また、ガイドプレート7の収容凹部75にはスライドロッド40が収容されているため、スライドロッド40もガイドプレート7に連動して初期基準位置から下方にスライドする。つまり、設定変更スイッチ11の位置が固定位置302から設定位置304に至る過程で、ハウジング内におけるガイドプレート7、および、スライドロッド40が一体となって初期基準位置から下方にスライド移動する。なお、固定位置302から設定位置304に切り替えられた状態においても、ロッドリターンプレート9は初期基準位置に保持されている。
【0086】
上記のように、ガイドプレート7が初期基準位置から下方の離脱位置にスライドすることにより、操作用ロッド32に対して装着されていた可動ブロック33の装着状態が解除され、操作用ロッド32から可動ブロック33が離脱する。このように、ハウジング内をスライドするガイドプレート7のうち、ブロック収容孔部71aに収容する可動ブロック33が操作用ロッド32から離脱する位置を「離脱位置」と称する。そうすると、
図36、
図37に示す状態のように、操作用ロッド32に対する可動ブロック33の嵌め合いが解除され、ボタン錠100における解錠符号の設定が可能な状態となる。本実施形態においては、設定変更スイッチ11の押し込み部111が第1プレート部材としてのガイドプレート7をスライドさせることによって、可動ブロック33が操作用ロッド32に装着された状態に維持される初期基準位置(初期位置)と可動ブロック33が操作用ロッド32から離脱した状態に維持される離脱位置との間で、操作用ロッド32に対する可動ブロック33の着脱状態を切り替える切り替え手段に相当する。そして、設定変更スイッチ11(操作スイッチ部)が初期位置(通常位置)としての固定位置302に操作されているときにガイドプレート7を初期基準位置に保持し、設定変更スイッチ11が固定位置302から設定位置304に切り替えられたときにガイドプレート7を初期基準位置から離脱位置にスライドさせる。
【0087】
ところで、現在、ボタン錠100は解錠状態にあるため、解錠符号に対応する操作用ロッド32はロッド第2保持状態にあり、解錠符号に対応しない操作用ロッド32は第1保持状態にある。つまり、解錠符号を設定する際、ボタン錠100は解錠状態にあるため、ロッド第1保持状態とロッド第2保持状態とにある操作用ロッド32が混在している。そこで、本実施形態においては、設定変更スイッチ11の位置を、更に設定位置304からリセット位置303まで変更する。設定変更スイッチ11の位置を設定位置304からリセット位置303まで変更する過程で、
図35に示すように設定変更スイッチ11の半円板部114に設けられたピン115がロッドリターンプレート9のピン受け部97と係合し、その結果、ロッドリターンプレート9を初期基準位置から下方へとスライドさせる。ロッドリターンプレート9が初期基準位置から下方にスライドすると、係合部としての爪部91が、被係合部としての操作用ロッド3の第1凹部対321a,321a又は第2凹部対321b,321bから離脱し、双方の係合が解除される。
【0088】
更に、ロッドリターンプレート9には、傾斜突部94が設けられているため、第2保持状態にある操作用ロッド32の傾斜面325aにロッドリターンプレート9の傾斜突部94が衝突することで、第2保持状態にある操作用ロッド32を押し上げる。その結果、全
ての操作用ロッド32が確実にクリア位置にクリアされる(第1保持状態にある操作用ロッド32は、もともとクリア位置に保持されている)。
【0089】
設定変更スイッチ11の操作手順としては、次に、設定変更スイッチ11を逆方向に回転させ、リセット位置303から設定位置304に戻す操作が行われる。この操作によって、設定変更スイッチ11におけるピン115とロッドリターンプレート9のピン受け部97との関係が、
図35に示す関係から
図34に示す関係に戻る。つまり、設定変更スイッチ11におけるピン115とロッドリターンプレート9におけるピン受け部97との係合状態が解除される。これにより、設定変更スイッチ11のピン115によってロッドリターンプレート9が下方に押圧されなくなるため、ロッドリターンプレート用スプリング97の付勢力によって、ロッドリターンプレート9が初期基準位置まで上方に押し上げられる。つまり、ハウジング内において、ロッドリターンプレート9が上方にスライドすることで、元の位置(初期基準位置)に戻される。
【0090】
その結果、全ての操作用ロッド32において、ロッドリターンプレート9の爪部91が操作用ロッド32の第1凹部対321a,321aに嵌合されたロッド第1保持状態となる(
図28を参照)。このとき、ガイドプレート7およびこれに保持されたスライドロッド40は、依然として、下方にスライドした状態に保持されており、可動ブロック33は操作用ロッド32から離脱した状態となっている。
【0091】
この状態から、使用者は、新たに設定する解錠符号に対応する押しボタン22を押し込む操作を行う。そうすると、新たな解錠符号に対応する操作用ロッド32のみが、ロッド第1保持状態からロッド第2保持状態へと移行される。つまり、新たな解錠符号に対応する操作用ロッド32のみが、
図29に示すように、胴部本体321の第2凹部対321b,321bにロッドリターンプレート9の爪部91が嵌合されることで、ロッド第2保持状態へと変更される。一方、その他の操作用ロッド32については、ロッド第1保持状態に保持されている(
図28を参照)。
【0092】
ここで、各操作用ロッド32に対して可動ブロック33は離脱した状態に保持されている。この状態から、使用者は、設定変更スイッチ11を設定位置304から固定位置302へと回転させる。そうすると、それまで角穴部74の縁部を押圧していた設定変更スイッチ11の押し込み部111による押圧状態が解除される。その結果、ガイドスプリング73の付勢力によって、ガイドプレート7およびスライドロッド40が一体となって押し上げられ、初期基準位置に戻る。その際、ガイドプレート7のブロック収容孔部71aには可動ブロック33が収容されているため、ガイドプレート7がスライドして元の初期基準位置に戻ることで、操作用ロッド32に可動ブロック33が装着される。その際、各可動ブロック33は、各操作用ロッド32に対して上述した第1保持位置と第2保持位置の何れかに選択的に装着されることとなる。また、設定変更スイッチ11が設定位置304から固定位置302に回転させた際に、スライドロッド40も元の初期基準位置にスライドする。そのため、スライドロッド40の突起部43は、各操作用ロッド32の第1保持位置又は第2保持位置に装着された可動ブロック33の凹部334に嵌め込まれる。
【0093】
例えば、解錠符号の設定変更時において、設定変更スイッチ11を設定位置304に合わせた際、使用者が、「2」、「5」、「7」、「8」に対応する押しボタン22を押動した場合、これらに対応する操作用ロッド32がロッドリターンプレート9の爪部91との関係でロッド第2保持状態となり、それ以外の操作用ロッド32がロック第1保持状態となる。そして、この状態から設定変更スイッチ11が固定位置302へと合わせられると、ロッド第2保持状態にある「2」、「5」、「7」、「8」に対応する操作用ロッド32に対しては第2保持位置に可動ブロック33が装着され、それ以外の操作用ロッド32に対しては第1保持位置に可動ブロック33が装着される。
【0094】
以上のように、操作用ロッド32に対する可動ブロック33の装着位置が、使用者により選択された新たな解錠符号に基づいて変更されることで、解錠符号の設定変更が完了する。以上のように、本実施形態に係るボタン錠100によれば、解錠符号を任意の符号に設定することができる。なお、解錠符号の設定が完了した時点では、ボタン錠100は解錠状態にあるため、上述したように、操作摘み4をOPEN位置からLOCK位置に合わせる閉操作を行うことで、自動的にボタン錠100を施錠することができる。
【0095】
なお、上述したボタン錠100における解錠符号の設定方法において、設定変更スイッチ11を固定位置302から一旦リセット位置303まで回転させるのは、解錠符号の設定変更を行う際にはボタン錠100が解錠状態にあり、かつ、ボタン錠100を解錠する際には少なくとも1つの操作用ロッド32が押し込まれていることによる。このように、少なくとも1つの操作用ロッド32がロッド第2保持状態にあるため、本実施形態では、一度全ての操作用ロッド32をクリア位置にクリアしてから、設定変更スイッチ11を設定位置に合わせて押しボタン22を押し込む操作を行う。これにより、ボタン錠100に係る解錠符号の設定変更に際して、解錠符号を確実に所望の設定に変更することができる。
【0096】
なお、本実施形態に係るボタン錠100は、使用者が解錠符号を任意に設定することができるのは上記の通りであるが、特に、ボタン錠100の正面側からの押しボタン22の押動操作によって設定変更作業を行うことができる点が優れている。
【0097】
すなわち、従来のボタン錠においては、押しボタンが設けられていない背面側に、各押しボタンに対応する操作スイッチが設けられており、この操作スイッチを切り替え操作することで、解錠符号の設定を変更する構造が採用されている。このような従来方式による解錠符号の設定変更機構では、例えばボタン錠を引き出し等に適用した場合などのように、背面を視認しにくい箇所にボタン錠を設置した場合、解錠符号の設定変更作業が行いにくいという課題がある。このように、従来のボタン錠では、ボタン錠の設置条件次第では、解錠符号の設定変更を行うための操作スイッチを視認しにくい状態で操作せざるを得ないため、使用者の意図通りに新たな解錠符号が設定されない設定ミス(エラー)を招く虞がある。
【0098】
これに対して、本実施形態に係るボタン錠100によれば、ボタン錠100の正面側から、押しボタン22の押動操作によって解錠符号を設定することができるため、解錠符号の設定変更作業の作業性を従来に比べて向上させることが可能であり、かつ、より確実に新たな解錠符号を使用者が意図した符号に変更することができる。つまり、解錠符号の設定ミスが起こることを好適に抑制することができる。なお、本実施形態のボタン錠100において、設定変更スイッチ11自体はロアケース3側に設けられているものの、この設定変更スイッチ11の操作は、解錠符号の設定作業の開始時と終了時に操作すれば足りるので、解錠符号の設定変更操作の作業性が低下することはない。そして、解錠符号の設定操作自体はボタン錠100の正面側に設けられた押しボタン22の押動操作によって行われるため、解錠符号の設定ミスが起こることはない。
【0099】
ここで、ボタン錠100が内部機構的に解錠されている場合に限り解錠符号の設定変更操作を可能とする構造について説明する。上記の通り、ボタン錠100が施錠状態にある場合には、少なくとも一部の操作用ロッド32に装着されている可動ブロック33が、ガイドプレート7におけるブロック収容孔部71aのみに収まっておらず、アッパーケース2におけるブロック収容凹部201或いはミドルプレート8におけるブロック収容凹部81に跨った状態で収容されており、それがクサビとなってガイドプレート7が初期基準位置から下方にスライドできないようになっている。そのため、ボタン錠100が施錠状態
のときに、設定変更スイッチ11を固定位置302から他の位置に切り替えようとしても、基本的にはガイドプレート7の下方への(離脱位置への)スライドが規制されているため、各操作用ロッド32から可動ブロック33を離脱することができないようになっている。
【0100】
しかしながら、ボタン錠100が内部機構的に施錠された状態で使用者が設定変更スイッチ11の操作部112を強引に操作し、固定位置302から設定位置304側に向かって操作部112を強引に回転させようとした場合、仮にボタン錠100がスイングプレート17およびリテーナ16を備えていないとするならば、設定変更スイッチ11の押し込み部111が初期基準位置に固定された状態のガイドプレート7における角穴部74の縁部と干渉し、双方に過大な外力、負荷などが作用し、これに起因してこれらに変形、破損などが起こることが懸念される。また、ボタン錠100が施錠されている状態では、上記の通り少なくとも一部の可動ブロック33が、ガイドプレート7におけるブロック収容孔部71aおよびアッパーケース2におけるブロック収容凹部201の、或いは、ガイドプレート7におけるブロック収容孔部71aおよびミドルプレート8におけるブロック収容凹部81に跨った状態で配置されているため、ガイドプレート7を初期基準位置から離脱位置へと強引に押し下げようとすると、可動ブロック33や各ブロック収容孔部を形成する壁面に大きな外力、負荷が作用してこれらの変形、破損に繋がる虞がある。また、上述した各部品の変形や破損に至らないまでも、各部品にガタツキが生じたり、部品同士が噛み合ってしまい、正常に作動しなくなり、ボタン錠100が故障してしまう虞がある。
【0101】
そこで、本実施形態におけるボタン錠100は、上記のような故障対策としてスイングプレート17およびリテーナ16を搭載している。以下、
図21~
図24を参照してスイングプレート17およびリテーナ16の機能について説明する。なお、
図21および
図23には、設定変更スイッチ11の操作部112が固定位置302に位置付けられている状態を示している。また、設定変更スイッチ11の操作部112を固定位置302から設定位置304側に向かって操作する場合、
図21および
図23の例では操作部112を反時計回りに回転させることとなる。
【0102】
図21~
図24に示すように、スイングプレート17のプレート部172は、その被押圧面172Aを、スライドロッド40におけるアーム制御部45の先端側に位置する第1領域部452と当接可能に配置されている。そして、スライドロッド40が初期基準位置に配置されている状態(すなわち、ボタン錠100が解錠された状態)ではスイングプレート17におけるプレート部172はアーム制御部45によって押し下げられず、
図21および
図22に示されるような第1姿勢をとる。この状態においては、スイングプレート17のプレート部172における裏面172B側に設けられたコイルスプリング175の弾性力によって、上向きに付勢される。これにより、スイングプレート17は、装着スリーブ171が装着されているリテーナ16の軸部161(取付部164)を中心軸として上向き(
図22において時計回り)に回動した状態となる。
【0103】
一方、ボタン錠100が施錠状態に切り替えられると、スライドロッド40が初期基準位置から下方に移動するため、これに伴い、スイングプレート17におけるプレート部172の被押圧面172Aがアーム制御部45の先端(第1領域部452)と干渉する。すなわち、スライドロッド40におけるアーム制御部45は、コイルスプリング175の付勢力に抗してプレート部172を下方へと強制的に押し下げる。その結果、スイングプレート17のプレート部172の姿勢が、
図21および
図22に示す第1姿勢から
図23および
図24に示す第2姿勢に変更される。
【0104】
ここで、スイングプレート17およびリテーナ16の間にはトーションスプリングTSが組み込まれているため、スイングプレート17側の突起173とリテーナ16側の突起
165が常に当接した状態に保持される。そのため、軸部161を中心として回動自在に設置されているリテーナ16は、スイングプレート17におけるプレート部172の突起173と腕部162の突起165とを当接状態におくことで、腕部162とプレート部172とが一定の相対位置関係を維持しつつ、スイングプレート17に連動してその姿勢を変化させることができる。
【0105】
リテーナ16は、スイングプレート17(プレート部172)の姿勢に連動して、
図21および
図22に示す退避姿勢と、
図23および
図24に示す係合姿勢とに切り替えられる。具体的には、リテーナ16は、スイングプレート17(プレート部172)が第1姿勢のときに退避姿勢に維持され、スイングプレート17(プレート部172)が第1姿勢から第2姿勢に切り替わると、それに連動して退避姿勢から係合姿勢に切り替わる。
【0106】
図21に示す符号305は、ロアケース3の一部が切り欠かれることで形成されたストッパー収納部である。また、符号114Aは、設定変更スイッチ11における半円板部114に形成された被係合部である。
図21に示すように、退避姿勢のリテーナ16は、腕部162の回転規制用ストッパー163がストッパー収納部305に格納されており、この状態において設定変更スイッチ11における半円板部114の被係合部114Aから回転規制用ストッパー163が退避した状態となっている。このように、リテーナ16が退避姿勢のときには、腕部162の回転規制用ストッパー163によって設定変更スイッチ11における半円板部114の被係合部114Aは係止されず、設定変更スイッチ11の操作部112を固定位置302から設定位置304側に向かって自由に回転させることができる。
【0107】
一方、ボタン錠100が施錠状態に切り替えられた際には、上記のようにスイングプレート17(プレート部172)が第1姿勢から第2姿勢に切り替わり、これに連動してリテーナ16の姿勢が
図23および
図24に示す係合姿勢に切り替わる。
図23および
図24に示すように、スイングプレート17(プレート部172)が第2姿勢に切り替わると、トーションスプリングTSの働きによって、軸部161を中心としてリテーナ16が回動し、腕部162が設定変更スイッチ11における半円板部114側に向かって接近する。その結果、ストッパー収納部305に収納されていたリテーナ16における回転規制用ストッパー163は、
図23に示すように、設定変更スイッチ11における半円板部114の被係合部114Aの下方に位置付けられる。
図23に示す例では、半円板部114の被係合部114Aと僅かな隙間を挟んで、リテーナ16における回転規制用ストッパー163の端面(係止面)が被係合部114Aと対向して配置される。その結果、リテーナ16が係合姿勢をとっている状態では、設定変更スイッチ11の操作部112を、固定位置302から設定位置304側に向かって(
図23の例では半時計周り)回転させようとしても、114の被係合部114Aが回転規制用ストッパー163と係合し、設定変更スイッチ11の操作部112の回転が規制される。
【0108】
以上のように、ボタン錠100が内部機構的に施錠された状態では、スイングプレート17およびリテーナ16を協働させ、リテーナ16の腕部162における回転規制用ストッパー163によって設定変更スイッチ11における半円板部114の被係合部114Aを直接的に係止し、設定変更スイッチ11が固定位置302から設定位置304側に向かって回転することを規制できる。よって、ボタン錠100が施錠された状態で使用者が設定変更スイッチ11の操作部112を固定位置302から設定位置304側に向かって強引に回転させようとしても、設定変更スイッチ11の押し込み部111がガイドプレート7における角穴部74の縁部と干渉することを抑制できる。すなわち、設定変更スイッチ11の押し込み部111がガイドプレート7における角穴部74の縁部を押し込むことを抑制できる。その結果、ボタン錠100のガイドプレート7、ミドルプレート8、可動ブロック33等といった各種部品に大きな外力が加わることが無く、これらの変形や破損を
抑制でき、以ってボタン錠100が故障することを抑制できる。
【0109】
なお、本実施形態に係るプッシュボタン錠は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えることができる。また、本実施形態で説明したリテーナ16およびスイングプレート17の組み合わせは、種々のプッシュボタン錠に適用することができ、例えば、本出願人による先願である特開2019-82078号公報に開示されているような自動施錠タイプのプッシュボタン錠にも好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
2・・・アッパーケース
3・・・ロアケース
4・・・操作摘み
7・・・ガイドプレート
8・・・ミドルプレート
9・・・ロッドリターンプレート
10・・・ストッパー
11・・・設定変更スイッチ
16・・・リテーナ
17・・・スイングプレート
22・・・押しボタン
32・・・操作用ロッド
33・・・可動ブロック
40・・・スライドロッド
100・・・ボタン錠