(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186457
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】試料加工装置および試料加工方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/305 20060101AFI20221208BHJP
H01J 37/244 20060101ALI20221208BHJP
H01J 37/22 20060101ALI20221208BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01J37/305 A
H01J37/244
H01J37/22 502H
G01N1/28 G
G01N1/28 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094688
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】小塚 心尋
(72)【発明者】
【氏名】根岸 勉
(72)【発明者】
【氏名】木村 達人
(72)【発明者】
【氏名】石川 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】河原 尚
【テーマコード(参考)】
2G052
5C101
【Fターム(参考)】
2G052AA13
2G052AD32
2G052AD52
2G052EC18
2G052GA34
2G052HA19
2G052HC04
2G052JA08
5C101AA34
5C101GG10
5C101GG37
5C101HH22
5C101HH28
5C101HH36
5C101HH49
(57)【要約】
【課題】加工の終了のタイミングを正確に判断できる試料加工装置を提供する。
【解決手段】試料にイオンビームを照射して試料を加工する試料加工装置であって、試料にイオンビームを照射するイオン源と、試料を保持する試料ステージと、試料を撮影するカメラと、カメラで撮影された画像に基づいて、加工の終了を判断する処理部と、を含み、処理部は、画像を取得する処理と、加工の目標位置の情報を取得する処理と、画像において加工領域のエッジを検出する処理と、画像において加工領域に形成された孔を検出する処理と、加工領域のエッジまたは孔が目標位置に到達したか否かを判定する処理と、加工領域のエッジまたは孔が目標位置に到達したと判定した場合に、加工を終了する処理と、を行う。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置であって、
前記試料に前記イオンビームを照射するイオン源と、
前記試料を保持する試料ステージと、
前記試料を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影された画像に基づいて、加工の終了を判断する処理部と、
を含み、
前記処理部は、
前記画像を取得する処理と、
加工の目標位置の情報を取得する処理と、
前記画像において加工領域のエッジを検出する処理と、
前記画像において前記加工領域に形成された孔を検出する処理と、
前記加工領域のエッジまたは前記孔が前記目標位置に到達したか否かを判定する処理と、
前記加工領域のエッジまたは前記孔が前記目標位置に到達したと判定した場合に、加工を終了する処理と、
を行う、試料加工装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記処理部は、前記孔を検出する処理において、
前記画像の第1領域の輝度、および前記第1領域を挟む第2領域および第3領域の輝度に基づいて、前記第1領域が前記孔か否かを判定する、試料加工装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記処理部は、前記第1領域の輝度と、前記第2領域の輝度と前記第3領域の輝度の平均値との差を、前記第1領域の信号強度とし、前記信号強度が所定値以上の場合に、前記第1領域を前記孔と判断する、試料加工装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記処理部は、
前記加工領域のエッジと前記目標位置との間の距離が前記孔と前記目標位置との間の距離よりも小さい場合には、前記加工領域のエッジと前記目標位置との間の距離に基づいて、加工の終了時間を予測する処理を行い、
前記孔と前記目標位置との間の距離が前記加工領域のエッジと前記目標位置との間の距離よりも小さい場合には、前記孔と前記目標位置との間の距離に基づいて、加工の終了時間を予測する処理を行う、試料加工装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記試料は、加工対象物と、前記加工対象物に接着された保護部材と、を含み、
前記処理部は、前記目標位置の情報を取得する処理において、
前記画像上において前記加工対象物と前記保護部材との境界を特定し、
前記境界の位置を前記目標位置に設定する、試料加工装置。
【請求項6】
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置を用いた試料加工方法であって、
カメラで撮影された前記試料の画像を取得する工程と、
加工の目標位置の情報を取得する工程と、
前記画像において加工領域のエッジを検出する工程と、
前記画像において前記加工領域に形成された孔を検出する工程と、
前記加工領域のエッジまたは前記孔が前記目標位置に到達したか否かを判定する工程と、
前記加工領域のエッジまたは前記孔が前記目標位置に到達したと判定した場合に、加工を終了する工程と、
を含む、試料加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料加工装置および試料加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンビームを用いて試料を加工する試料加工装置として、試料の断面を加工するためのクロスセクションポリッシャ(登録商標)や、薄膜試料を作製するためのイオンスライサ(登録商標)などが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、バルク試料上に遮蔽ベルトを配置し、遮蔽ベルトを介して試料にイオンビームを照射し、遮蔽ベルトで遮蔽されなかった部分をイオンミリングすることによって、透過電子顕微鏡用の薄膜試料を作製する試料作製装置が開示されている。
【0004】
特許文献1では、CCDカメラで試料のエッチング断面を撮影し、イオンミリング終了判定回路が試料の形状変化を監視する。イオンミリング終了判定回路が試料に貫通孔が開いたことを検出した場合、イオンビームの放出が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような試料加工装置において、例えば、ウエハ表面に形成された配線やトランジスタなどの構造物を断面方向から観察するための試料を作製する方法として、二段ミリング法が知られている。二段ミリング法では、試料を全体的に薄くする一次ミリングと、観察目的である構造物が形成されたウエハ表面を透過電子顕微鏡で観察可能な厚さまで薄くする二次ミリングと、を行う。
【0007】
一次ミリングでは、遮蔽ベルトの下に試料を配置し、ウエハ表面側からイオンビームを照射する。二次ミリングでは、試料の上下を反転させて、ウエハ裏面側からイオンビームを照射する。このとき、遮蔽ベルトを用いずに直接試料にイオンビームを照射する。これにより、ウエハ表面側から試料が徐々に薄くなる。二次ミリングでは、目的の構造物が透過電子顕微鏡で観察可能な厚さとなるまで加工を行う。
【0008】
このようにして一次ミリングと二次ミリングを行うことで、断面観察が可能な試料を作製できる。このような試料加工装置では、加工を終了するタイミングを正確に判断できることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る試料加工装置の一態様は、
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置であって、
前記試料に前記イオンビームを照射するイオン源と、
前記試料を保持する試料ステージと、
前記試料を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影された画像に基づいて、加工の終了を判断する処理部と、
を含み、
前記処理部は、
前記画像を取得する処理と、
加工の目標位置の情報を取得する処理と、
前記画像において加工領域のエッジを検出する処理と、
前記画像において前記加工領域に形成された孔を検出する処理と、
前記加工領域のエッジまたは前記孔が前記目標位置に到達したか否かを判定する処理と、
前記加工領域のエッジまたは前記孔が前記目標位置に到達したと判定した場合に、加工を終了する処理と、
を行う。
【0010】
このような試料加工装置では、加工領域のエッジおよび孔を検出し、加工領域のエッジまたは孔が目標位置に到達したと判定した場合に、加工を終了する。したがって、このような試料加工装置では、加工を終了するタイミングを正確に判断できる。さらに、このような試料加工装置では、再現性高く、試料を加工できる。
【0011】
本発明に係る試料加工方法の一態様は、
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置を用いた試料加工方法であって、
カメラで撮影された前記試料の画像を取得する工程と、
加工の目標位置の情報を取得する工程と、
前記画像において加工領域のエッジを検出する工程と、
前記画像において前記加工領域に形成された孔を検出する工程と、
前記加工領域のエッジまたは前記孔が前記目標位置に到達したか否かを判定する工程と、
前記加工領域のエッジまたは前記孔が前記目標位置に到達したと判定した場合に、加工を終了する工程と、
を含む。
【0012】
このような試料加工方法では、加工領域のエッジおよび孔を検出し、加工領域のエッジまたは孔が目標位置に到達したと判定した場合に、加工を終了する。したがって、このような試料加工方法では、加工を終了するタイミングを正確に判断できる。さらに、このような試料加工方法では、再現性高く、試料を加工できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る試料加工装置の構成を示す図。
【
図7】二次ミリングにおける試料の加工の様子を模式的に示す断面図。
【
図8】加工幅を測定する位置を指定するためのカーソルを模式的に示す図。
【
図9】一次ミリング処理の一例を示すフローチャート。
【
図10】カメラで撮影された画像を模式的に示す図。
【
図11】加工幅を測定する処理を説明するための図。
【
図12】加工幅を測定する処理を説明するための図。
【
図13】加工幅を測定する処理を説明するための図。
【
図14】隙間の大きさを測定する処理を説明するための図。
【
図15】加工の終了時間を予測する手法を説明するための図。
【
図16】位置P1の座標および位置P2の座標をプロットしたグラフ。
【
図17】目標位置を指定する処理を説明するための図。
【
図18】情報処理装置の二次ミリング処理の一例を示すフローチャート。
【
図19】カメラで撮影された画像を模式的に示す図。
【
図20】加工領域の下端のエッジを検出する処理を説明するための図。
【
図21】加工領域のエッジを所定の色で描画する処理を説明するための図
【
図22】加工領域に形成された孔を検出する処理を説明するための図。
【
図23】加工領域に形成された孔を検出する処理を説明するための図。
【
図24】孔を所定の色で描画する処理を説明するための図
【
図25】残留膜厚と加工を開始してからの経過時間との関係を示すグラフ。
【
図26】情報処理装置の二次ミリング処理の変形例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0015】
1. 試料加工装置
まず、本発明の一実施形態に係る試料加工装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る試料加工装置100の構成を示す図である。
図1には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
【0016】
試料加工装置100は、試料2にイオンビームIBを照射して試料2を加工し、観察や分析用の試料を作製するための装置である。試料加工装置100では、透過電子顕微鏡で観察可能な薄膜試料を作製できる。
【0017】
試料加工装置100は、
図1に示すように、イオン源10と、制御回路12と、試料ステージ20と、遮蔽部材30と、透過照明装置40と、照明調光回路42と、同軸落射照明装置44と、照明調光回路46と、光学系50と、カメラ60と、情報処理装置70(処理部の一例)と、表示部80と、を含む。
【0018】
イオン源10は、試料2にイオンビームIBを照射する。イオン源10は、不図示のチャンバーの上部に取り付けられており、チャンバー内に収容された試料2にイオンビームIBを照射する。チャンバー内は、真空状態である。イオン源10は、例えば、所定の加速電圧でイオンを加速させてイオンビームIBを放出するイオン銃である。イオン源10は、Z軸に沿ってイオンビームIBを照射する。イオン源10は、例えば、イオンビームIBを試料2に照射する際に、X軸に平行な軸を回転軸として揺動する。イオン源10は、制御回路12で制御される。
【0019】
試料ステージ20は、試料2を保持する。試料ステージ20には、遮蔽部材30が取り付けられている。試料ステージ20上において遮蔽部材30は、試料2上に配置されている。遮蔽部材30の厚さは、例えば、10μm程度であり、加工前の試料2の厚さは、例えば、100μm程度である。遮蔽部材30は、試料2の厚さ方向の中心に配置される。
【0020】
試料ステージ20は、試料2および遮蔽部材30を揺動させるスイング機構を備えている。スイング機構は、試料2および遮蔽部材30をスイング軸(傾斜軸)を回転軸として傾斜させる。スイング軸は、例えば、Y軸に平行である。スイング機構は、例えば、一定の周期で、試料2および遮蔽部材30を揺動させる。
【0021】
試料ステージ20に保持される試料2は、板状の形状を有している。試料2は、例えば、直方体である。試料2については後述する。
【0022】
遮蔽部材30は、イオンビームIBを遮蔽する。イオン源10から放出されたイオンビームIBは、遮蔽部材30を介して試料2に照射される。遮蔽部材30は、例えば、帯状である。遮蔽部材30は、例えば、イオンビームIBでミリングされ難い材料からなる。遮蔽部材30は、試料2の上(+Z方向)に位置している。
【0023】
透過照明装置40は、試料2を透過照明する照明光を発する。すなわち、透過照明装置40は、試料2の背後から照明光を照射する。透過照明装置40が発する照明光の強度は、照明調光回路42で制御される。
【0024】
透過照明装置40、試料2、光学系50、およびカメラ60は、この順に、Y軸に沿って並んでいる。
【0025】
同軸落射照明装置44は、試料2を同軸落射照明する照明光を発する。すなわち、同軸落射照明装置44は、カメラ60の光軸に沿って照明光を試料2に照射する。図示の例では、光学系50は、ハーフミラー52を有しており、ハーフミラー52を用いて、照明光の光軸とカメラ60の光軸とを一致させている。同軸落射照明装置44が発する照明光の強度は、照明調光回路46で制御される。
【0026】
カメラ60は、光学系50を介して、試料2および遮蔽部材30を撮影する。カメラ60は、例えば、CCDカメラ、CMOSカメラなどのデジタルカメラである。光学系50は、カメラ60で試料2を撮影するための光学系である。
【0027】
情報処理装置70は、カメラ60で撮影された画像を取得し、表示部80に表示させる処理を行う。また、情報処理装置70は、カメラ60で撮影された画像を取得し、当該画像に基づいて加工の終了を判断する処理を行う。また、情報処理装置70は、制御回路12を介してイオン源10を制御する。
【0028】
情報処理装置70は、例えば、パーソナルコンピューター(PC)等であり、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などの記憶装置(メモリ)と、操作部と、を含む。記憶装置には、各種画像処理や制御処理を行うためのプログラム、およびデータが記憶されている。情報処理装置70(処理部)の機能は、プロセッサでプログラムを実行することにより実現できる。操作部は、ユーザーが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報をプロセッサに出力する。操作部の機能は、例えば、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネルなどのハードウェアにより実現することができる。
【0029】
表示部80は、情報処理装置70で取得された画像や、情報処理装置70で生成された画像を表示する。表示部80の機能は、LCD、CRT、操作部としても機能するタッチパネルなどにより実現できる。
【0030】
2. 試料加工装置の動作
2.1. 二段ミリング法
二段ミリング法は、例えば、基板上に形成された薄膜や、基板上に形成された、配線やトランジスタなどが形成された積層膜など、を断面方向から観察するための試料を作製する手法である。二段ミリング法では、試料を全体的に薄くする一次ミリングと、加工対象物である薄膜や積層膜を透過電子顕微鏡で観察可能な厚さまで薄くする二次ミリングと、を行う。
【0031】
2.2. 一次ミリング
図2~
図4は、一次ミリングを説明するための図である。
図2は、試料2および遮蔽部材30を模式的に示す斜視図である。
図3は、試料2の揺動動作について説明するための図である。
図4は、イオン源10の動作を説明するための図である。
【0032】
図2に示すように、試料2は、基板4と、積層膜6と、保護部材8と、を含む。基板4は、例えば、シリコン基板、化合物基板などの半導体基板である。積層膜6は、例えば、基板4上に半導体製造技術によって形成された、配線やトランジスタなどを含む。図示の例では、基板4上に形成された積層膜6の断面を観察するための透過電子顕微鏡用の試料を作製することができる。保護部材8は、加工時に積層膜6を保護するための部材であり、例えば、ガラス基板である。保護部材8は、エポキシ樹脂などで積層膜6に接着されている。保護部材8の厚さは、例えば、100μm程度である。
【0033】
試料2は、高さ(Z方向の大きさ)が500μm~800μm、幅(Y方向の大きさ)が100μm程度になるように、事前に板状に加工されている。
【0034】
なお、試料2の構成は、
図2に示す例に限定されず、二段ミリング法を用いて、様々な構成の試料を透過電子顕微鏡で観察可能に加工できる。
【0035】
一次ミリングでは、試料2は、試料2の第1端部2aが上、試料2の第2端部2bが下になるように配置される。試料2の第1端部2aは、試料2の保護部材8側の端部であり、試料2の第2端部2bは、試料2の基板4側の端部である。試料2は、遮蔽部材30の下に配置され、試料2の第1端部2a側からイオンビームIBが照射される。イオンビームIBは、遮蔽部材30を介して、試料2に照射される。
【0036】
イオンビームIBを照射して試料2を加工しているときには、
図3に示すように、試料ステージ20のスイング機構を動作させて、試料2および遮蔽部材30を軸Aを回転軸として揺動させる。すなわち、試料ステージ20のスイング機構は、試料2および遮蔽部材30を、軸Aを傾斜軸(回転軸)として、往復傾斜(回転)運動させる。軸Aは、例えばY軸に平行な軸である。軸Aは、例えば、試料2と遮蔽部材30の境界に位置している。
【0037】
なお、
図3では、試料2の傾斜角度θ1が0°のとき、試料2の傾斜角度θ1が-30°のとき、試料2の傾斜角度θ1が+30°のときを図示している。なお、
図3では、傾斜角度θ1は、試料2がX軸に平行なときをθ1=0°として、反時計回りを「+」、時計回りを「-」で表している。
【0038】
試料2の加工時には、
図4に示すように、イオン源10も揺動させる。例えば、イオン源10をZ軸に対して所定の角度の範囲で傾斜させる。イオン源10を揺動させることによって、試料2の加工面に対して斜め方向からイオンビームIBを照射できる。例えば、試料2の加工面に対するイオンビームIBの入射角度が0.4°程度になるようにイオン源10を傾斜させる。すなわち、イオン源10の傾斜角度θ2の範囲は、-0.4°から+0.4°の範囲である。イオン源10の傾斜角度θ2は、例えば、試料2の材質等に応じて適宜変更可能である。
【0039】
このように、試料加工装置100では、試料2を揺動させ、かつ、イオン源10を揺動させながら、試料2にイオンビームIBを照射して、試料2の加工を行う。一次ミリングでは、加工によって、2つの傾斜面3と、2つの傾斜面3の間の加工領域5と、が形成される。一次ミリングでは、加工領域5の全体が遮蔽部材30の厚さとほぼ同じ厚さとなるように加工される。なお、一次ミリングにおいて、加工領域5が遮蔽部材30とほぼ同じ厚さであって、第1端部2aから第2端部2bに向かうにしたがって膜厚が大きくなるように加工されてもよい。
【0040】
一次ミリングでは、試料2の第2端部2bが二次ミリングに適した厚さになった場合に、加工を終了する。後述するように、二次ミリングでは、第2端部2bが上、第1端部2aが下になるように試料2を配置して、第2端部2b側からイオンビームIBを照射する。そのため、例えば、試料2の第2端部2b側の厚さが大きい場合には、第2端部2b側に照射されるイオンビームIBの量が多くなり、第2端部2b側が急速に削れてしまう。この結果、目的の積層膜6が薄くなるまえに、試料2がなくなってしまう可能性がある。そのため、一次ミリングにおいて、試料2の第2端部2bを二次ミリングに適した厚さにしなければならない。
【0041】
ここで、試料2の第2端部2bの厚さは、カメラ60で撮影された画像からは確認できない。そのため、試料2の第2端部2b側の加工領域5の幅、すなわち、
図2に示す加工幅Wを目安として、一次ミリングの加工を終了するタイミングを判断する。試料加工装置100では、加工が進むにしたがって試料2の加工領域5が薄くなり、加工幅Wが拡がる。そのため、加工幅Wから加工領域5の厚さを推定できる。
【0042】
例えば、加工幅Wを300μm~600μm程度にすることによって、試料2の第2端部2bの厚さを、二次ミリングに適した厚さである10μm程度にできる。
【0043】
加工中の試料2の様子は、カメラ60で撮影される。カメラ60で撮影された試料2の画像は、情報処理装置70に送られる。情報処理装置70は、カメラ60で撮影された画像を取得し、表示部80に表示する。
【0044】
図5は、カメラ60で撮影された画像I2の一例を示す図である。
図5に示す画像I2は、同軸落射照明および透過照明された試料2をカメラ60で撮影して得られた画像である。
【0045】
試料2は、同軸落射照明されているため、
図5に示すように、画像I2では、試料2の加工領域5、試料2の未加工領域、および遮蔽部材30が明るくなるのに対して、傾斜面3が暗くなる。これは、同軸落射照明では、観察方向(カメラ60の光軸)に対して垂直な面のみで、カメラ60に向かって照明光が反射するためである。傾斜面3は、観察方向に対して垂直な面ではないため、傾斜面3で反射した照明光は、カメラ60に向かわない。そのため、画像I2では傾斜面3が暗くなる。試料加工装置100では、試料2を揺動させても、試料2の各領域の面の向きは変化しない。そのため、同軸落射照明では、加工時に試料2を揺動させても、常に、傾斜面3が暗い画像が得られる。
【0046】
また、試料2は、透過照明されているため、
図5に示すように、試料2と遮蔽部材30との間の隙間から照明光が漏れる。また、試料2の下から照明光が回り込む。したがって、画像I2では、試料2と遮蔽部材30との間の隙間および試料2の下の空間が明るくなる。この結果、画像I2では、傾斜面3のみが暗くなる。
【0047】
情報処理装置70では、画像I2において、2つの傾斜面3のみが暗くなることを利用して、2つの傾斜面3を抽出し、抽出した2つの傾斜面3の間を測定することによって、加工幅Wを測定する。
【0048】
2.3. 二次ミリング
図6は、二次ミリングを説明するための図である。
【0049】
図6に示すように、二次ミリングでは、試料2の第2端部2bが上、試料2の第1端部2aが下になるように配置される。二次ミリングでは、試料2の第2端部2b側からイオ
ンビームIBが照射される。二次ミリングでは、遮蔽部材30を用いずに、直接、試料2にイオンビームIBを照射する。
【0050】
図7は、二次ミリングにおける試料2の加工の様子を模式的に示す断面図である。
【0051】
図7に示すように、二次ミリングでは、まず、保護部材8が薄膜化する。保護部材8が薄膜化する過程において、保護部材8に孔が形成されたり、保護部材8がめくれたりする場合がある。そして、保護部材8が除去されると、不図示のエポキシ樹脂の層が薄膜化して除去され、最終的に、目的の積層膜6が薄膜化する。
【0052】
3. 試料加工方法
3.1. 一次ミリングの準備
3.1.1. 試料のセット
図1および
図2に示すように、試料ステージ20に試料2をセットし、試料2上に遮蔽部材30を配置する。そして、チャンバー内を真空排気する。試料2および遮蔽部材30を透過照明装置40で透過照明し、同軸落射照明装置44で同軸落射照明する。
【0053】
3.1.2. ノイズレベル測定
カメラ60で撮影された画像I2のノイズレベルを測定する。情報処理装置70は、例えば、カメラ60の視野内の同一箇所の輝度を複数回測定し、最大輝度から最小輝度を引いた値をノイズレベルとする。このようにして、ノイズレベルを数値化する。
【0054】
ノイズレベルは、例えば、照明光の明るさや、カメラ60の露光時間、カメラ60のゲインの調整などによって変化する。画像I2のノイズレベルが高い場合、加工の終了を判断する処理において判断を誤ってしまう可能性が高くなってしまう。
【0055】
情報処理装置70は、測定したノイズレベルを表示部80に表示し、ノイズレベルがあらかじめ設定された閾値よりも高い場合には、透過照明装置40および同軸落射照明装置44による試料2の照明条件やカメラ60の設定を再調整させるための通知を表示部80に表示する。
【0056】
このように試料加工装置100では、ノイズレベルを測定することによって、試料2の照明条件やカメラ60の設定を、最適な状態にすることができる。これにより、ノイズの少ない画像I2を取得でき、加工の終了を判断する処理において判断を誤ってしまう可能性を低減できる。
【0057】
3.1.3. 加工幅を測定する位置の指定
ユーザーは、画像I2において、加工幅Wを測定する位置を指定する。
図8は、加工幅Wを測定する位置を指定するためのカーソルCを模式的に示す図である。
【0058】
情報処理装置70は、
図8に示すように、表示部80に表示された画像I2上に、カーソルCを表示させる。カーソルCは、画像I2において加工幅Wを測定する位置を指定するためのものである。図示の例では、カーソルCには、ラインLが引かれており、ラインLが示す位置が加工幅Wを測定する位置となる。カーソルCによる加工幅Wを測定する位置の指定は、ユーザーが情報処理装置70の操作部を介して、カーソルCを移動させることで行う。
【0059】
3.1.4. 目標加工幅の指定
ユーザーは、目標加工幅TWを指定する。例えば、情報処理装置70は、表示部80にGUI(Graphical User Interface)画面を表示させる。GUI画面は、目標加工幅TW
を入力するためのテキストボックスを含み、ユーザーが操作部を介してテキストボックスに目標加工幅TWを入力することで、情報処理装置70に目標加工幅TWの情報が入力される。目標加工幅TWが入力されると、
図8に示すように、ラインL上に目標加工幅TWに対応するマーカーMが表示される。なお、目標加工幅TWの設定方法はこれに限定されない。
【0060】
3.2. 一次ミリング
3.2.1. 一次ミリングの流れ
試料加工装置100では、情報処理装置70が一次ミリングにより試料2を加工するための一次ミリング処理を行う。
図9は、情報処理装置70の一次ミリング処理の一例を示すフローチャートである。
【0061】
ユーザーが情報処理装置70に一次ミリングを開始する指示を入力すると、情報処理装置70は加工幅Wを測定する位置の情報を取得する(S100)。ユーザーは、操作部を介して、カーソルCの位置を移動させることで、加工幅Wを測定する位置を指定できる。情報処理装置70は、操作部を介して、カーソルCによって指定された、加工幅Wを測定する位置の情報を取得する。
【0062】
また、情報処理装置70は、目標加工幅TWの情報を取得する(S102)。ユーザーは、操作部を介して、目標加工幅TWの値を入力することで、目標加工幅TWを指定できる。情報処理装置70は、操作部を介して、入力された目標加工幅TWの情報を取得する。
【0063】
次に、情報処理装置70は、イオンビームIBの照射を開始する処理を行う(S104)。具体的には、情報処理装置70は、イオンビームIBを照射するための制御信号を生成し、制御回路12に送る。制御回路12は、制御信号に基づいて駆動信号を生成し、イオン源10に出力する。これにより、イオン源10からイオンビームIBが試料2に照射される。このとき、試料ステージ20のスイング機構は、試料2および遮蔽部材30を揺動させる。
【0064】
試料加工装置100では、上述したように、試料2および遮蔽部材30を揺動させながら、遮蔽部材30を介して試料2にイオンビームIBを照射して、試料2を加工する。試料2の加工中には、カメラ60が試料2を撮影する。
【0065】
加工(イオンビームIBの照射)が開始されると、情報処理装置70は、カメラ60で撮影された試料2の画像I2を取得する(S106)。
【0066】
図10は、カメラ60で撮影された画像I2を模式的に示す図である。
【0067】
情報処理装置70は、
図10に示すように、試料2が水平になったときにカメラ60で撮影された画像I2を取得する。これにより、後述する画像処理において、試料2の傾斜を考慮しなくてよい。また、情報処理装置70は、試料2の揺動動作の1周期に1回、画像I2を取得する。
【0068】
例えば、
図3に示す例において、傾斜角度θ1=-30°で試料2を傾斜させた後に、試料2を水平(傾斜角度θ1=0°)にして画像I2を撮影した場合と、傾斜角度θ1=+30°で試料2を傾斜させた後に、試料2を水平(傾斜角度θ1=0°)にして画像I2を撮影した場合では、スイング機構の機械的な動作ガタによって、画像間にずれが生じる場合がある。上記のように、試料2の揺動動作の1周期に1回、画像I2を取得することによって、動作ガタによる画像間のずれを低減できる。
【0069】
次に、情報処理装置70は、試料2と遮蔽部材30との間の隙間の大きさを測定し、当該隙間が拡大しているか否かを判定する(S108)。なお、隙間が拡大していか否かを判定する処理S108の詳細については、後述する「3.2.2. 隙間が拡大しているか否かを判定する処理」で説明する。
【0070】
情報処理装置70は、隙間が拡大していると判定した場合(S108のYes)、イオンビームIBの照射を停止させ、加工を終了する(S120)。
【0071】
情報処理装置70は、イオンビームIBの照射を停止させるための制御信号を生成し、制御回路12に送る。制御回路12は、制御信号に基づいて駆動信号の出力を停止する。これにより、イオン源10においてイオンビームIBの照射が停止される。このとき、情報処理装置70は、加工が正常に進んでいなかった旨の通知を表示部80に表示させてもよい。
【0072】
情報処理装置70は、隙間が拡大していないと判定した場合(S108のNo)、画像I2上において加工幅Wを測定する。
【0073】
図11~
図13は、加工幅Wを測定する処理を説明するための図である。
【0074】
加工幅Wを測定する処理では、情報処理装置70は、まず、画像I2を二値化する(S110)。
【0075】
情報処理装置70は、
図11に示すように、画像I2の輝度ヒストグラムから最小の輝度のピークが選択されるように閾値を設定し、画像I2を二値化する。これにより、
図12に示す二値化画像I2Bを生成できる。なお、画像I2を二値化する前に、画像I2のノイズを除去する画像処理を行ってもよい。
【0076】
ここで、試料2は、同軸落射照明および透過照明されているため、画像I2では、傾斜面3のみが暗くなる。そのため、画像I2の輝度ヒストグラムから最小の輝度のピークを選択して二値化することによって、傾斜面3を抽出できる。
図12に示す例では、閾値未満の輝度のピクセルを白、閾値以上の輝度のピクセルを黒にして、画像I2を二値化している。
【0077】
次に、情報処理装置70は、二値化画像I2Bにおいて、傾斜面3に対応する白のピクセルの集合体を特定し、集合体の数が2つか否かを判定する(S112)。
【0078】
加工の初期では、加工領域5が試料2の第2端部2bまで到達していないため、集合体の数は1つになる。加工領域5が試料2の第2端部2bに到達することで、集合体が2つになる。
【0079】
また、加工の初期では、傾斜面3が小さいため、輝度ヒストグラムにおいて傾斜面3に相当するピークを選択できない場合がある。このような場合には、集合体の数が3以上になる。そのため、集合体の数が2つか否かを判定することで、傾斜面3を抽出できたか否かを判定することができる。
【0080】
なお、ここでは、集合体の数が2つか否かで傾斜面3を抽出できたか否かを判定したが、その他の条件で判断してもよい。例えば、集合体を構成するピクセル数が所定数よりも少ない場合や、加工時間が設定された時間よりも短い場合、集合体の領域の変化が大きい場合などに、傾斜面3を抽出できていないと判定してもよい。
【0081】
情報処理装置70は、集合体の数が2つではないと判定した場合(S112のNo)、画像I2を取得する処理S106に戻る。
【0082】
情報処理装置70は、集合体の数が2つと判定した場合(S112のYes)、
図13に示すように、2つの集合体の各々について集合体のエッジを直線近似して、近似線L1および近似線L2を引く(S114)。
【0083】
情報処理装置70は、処理S100で取得した加工幅Wを測定する位置の情報から、二値化画像I2B上において加工幅Wを測定する位置Pを特定し、位置Pにおいて近似線L1と近似線L2との間の距離を測定することによって、加工幅Wを測定する(S116)。
【0084】
加工幅Wを測定する位置Pは、例えば、二値化画像I2Bの縦方向の位置座標で特定される。
【0085】
次に、情報処理装置70は、測定された加工幅Wが目標加工幅TW以上になったか否かを判定する(S118)。すなわち、情報処理装置70は、W≧TWを満たすか否かを判定する。
【0086】
情報処理装置70は、W≧TWを満たさないと判定した場合(S118のNo)、画像I2を取得する処理S106に戻る。
【0087】
情報処理装置70は、W≧TWを満たすと判定されるまで、または隙間が拡大していると判定されるまで、画像を取得する処理S106、隙間が拡大しているか否かを判定する処理S108、二値化処理S110、集合体が2つか否かを判定する処理S112、集合体のエッジを直線近似計算する処理S114、加工幅Wを測定する処理S116、W≧TWを満たすか否かを判定する処理S118を繰り返す。
【0088】
情報処理装置70は、隙間が拡大していると判定した場合(S108のYes)、またはW≧TWを満たすと判定した場合(S118のYes)、イオン源10に対してイオンビームIBの照射を停止させる(S120)。
【0089】
以上の処理により、情報処理装置70は、一次ミリング処理を終了する。
【0090】
3.2.2. 隙間が拡大しているか否かを判定する処理
一般的に加工が正常に進むと、試料2と遮蔽部材30との間の隙間にミリングされた試料2等が付着するため、隙間が小さくなる。これに対して、加工が進むにしたがって、隙間が大きくなる場合には、試料2の加工領域5の上端が、遮蔽部材30の直下からずれてミリングされている可能性がある。すなわち、加工が正常に進んでいない可能性が高い。
【0091】
したがって、情報処理装置70は、例えば、画像I2の各ピクセルの輝度に基づいて隙間の大きさを測定する。例えば、画像I2の縦方向の輝度プロファイルから隙間の大きさを測定する。ここで、隙間の大きさは、画像I2の縦方向における隙間の大きさである。すなわち、隙間の大きさは、試料2と遮蔽部材30との間の距離である。
【0092】
図14は、隙間の大きさを測定する処理を説明するための図である。
図14には、画像I2の隙間に相当する領域の輝度プロファイルを示している。
【0093】
図14に示すように、画像I2の縦方向の輝度プロファイルに基づいて、隙間の大きさ
を測定できる。例えば、隙間の輝度が最大となることを利用して、隙間の大きさGを求める。具体的には、輝度がピークPKの輝度に対して強度S1だけ下がった位置E1と、輝度がピークPKの輝度に対して強度S2だけ下がった位置E2を求め、|E2-E1|を計算して、隙間の大きさGを求める。
【0094】
隙間が拡大しているか否かの判定は、以下のようにして行われる。まず、カメラ60で撮影された基準となる第1画像と、第1画像よりも後に取得された第2画像を取得する。次に、第1画像における隙間の大きさG1を測定し、第2画像における隙間の大きさG2を測定する。次に、第2画像における隙間の大きさG1を第1画像における隙間の大きさG2と比較して、第2画像における隙間の大きさG2が第1画像における隙間の大きさG1よりも大きい場合(G2>G1)に、隙間が拡大していると判定する。
【0095】
なお、第2画像における隙間の大きさG2から第1画像における隙間の大きさG1を引いた値(G2-G1)が、所定値以上である場合に、隙間が拡大していると判定してもよい。また、例えば、隙間の大きさGの測定結果をプロットして、隙間の大きさGと加工の経過時間との関係を示す関数を求め、当該関数から隙間が拡大しているか否かを判定してもよい。
【0096】
また、上記では、隙間の大きさが拡大しているか否かを判定したが、隙間の大きさGが所定の範囲内か否かを判定してもよい。試料2と遮蔽部材30との間の隙間の大きさGは、試料作製に適した範囲がある。例えば、隙間の大きさGは、40μm以上80μm以下程度が好ましい。隙間の大きさGがこの範囲から外れる場合には、正常に加工が進まない可能性が高い。したがって、情報処理装置70は、隙間の大きさGが所定の範囲から外れているか否かを判定し、当該範囲から外れている場合には、その旨を通知して、加工を終了する処理を行ってもよい。
【0097】
3.2.3. 加工の終了時間を予測する処理
情報処理装置70は、上述した一次ミリング処理と並行して、加工の終了時間を予測する処理を行う。
【0098】
例えば、情報処理装置70は、加工幅Wを測定する処理S116で測定された加工幅Wの情報を取得し、加工幅Wが増加する増加速度を計算する。この増加速度から加工の終了時間を計算する。
【0099】
情報処理装置70は、加工幅Wが目標加工幅TWに近づく様子を、プログレスバー等で表して、表示部80に表示してもよい。これにより、ユーザーは加工の進捗状況を把握できる。
【0100】
また、情報処理装置70は、横軸を時間、縦軸を加工幅Wで表した加工幅Wの変化のグラフを作成し、表示部80に表示してもよい。このとき、情報処理装置70は、現在の加工幅Wの変化のグラフを、過去に作成した加工幅Wの変化のグラフと並べて表示してもよい。これにより、加工が正常に進んでいるか否かを判断できる。例えば、現在のグラフと過去のグラフを比較することで、加工速度の異常に気づくことができる。
【0101】
なお、加工が開始されてから傾斜面3が2つ形成されるまでの時間は、加工幅Wを測定する処理S116で測定された加工幅Wの情報を得ることができない。そのため、情報処理装置70は、二値化画像I2Bにおいて集合体が1つの場合には、集合体の外側のエッジの位置の変化または集合体の内側のエッジの位置の変化から加工の終了時間を予測してもよい。
【0102】
図15は、加工の終了時間を予測する手法を説明するための図である。
【0103】
二値化画像I2Bの集合体が1つの場合、集合体の外側のエッジの位置P2の座標をプロットし、位置P2の変化に基づいて加工の終了時間を予測する。そして、加工が進んで集合体の内側のエッジが明瞭になったら、集合体の内側のエッジの位置P1の座標をプロットし、位置P1の変化に基づいて加工の終了時間を予測する。位置P1は、例えば、集合体の内側のエッジと、目標加工幅TWに対応する間隔で引かれた、縦方向に延びる2つの直線のうちの一方と、が交わった位置である。位置P2は、集合体の外側のエッジと、目標加工幅TWに対応する間隔で引かれた、縦方向に延びる2つの直線のうちの一方と、が交わった位置である。
【0104】
図16は、位置P1の座標および位置P2の座標をプロットしたグラフである。
図16に示すグラフの横軸は、加工(イオンビームIBの照射)を開始してから経過時間であり、縦軸は、加工深さである。なお、位置P1の加工深さは、位置P1と試料2の第1端部2aとの間の距離であり、位置P2の加工深さは、位置P2と第1端部2aとの間の距離である。
【0105】
位置P1の変化に基づいて終了時間を予測する場合には、例えば、位置P1と加工幅Wを測定する位置Pとの間の距離が減少していく速度を計算し、当該速度に基づいて位置P1が位置Pに到達する時間を計算して、加工の終了時間を予測する。
【0106】
また、位置P2に変化に基づいて終了時間を予測する場合には、例えば、位置P2と位置Pとの間の距離が減少していく速度を計算する。そして、計算された速度から、位置P1と位置Pとの間の距離が減少していく速度を推定し、加工の終了時間を予測する。
【0107】
図16に示す例では、加工が開始されてから40分までは、傾斜面3の内側の加工領域5が形成されていないため、位置P2の変化に基づいて加工の終了時間Tを予測する。これにより、加工の初期であっても、加工の終了時間Tを予測できる。
【0108】
加工が開始されてから40分以降は、位置P1に基づいて加工の終了時間Tを予測する。これにより、位置P1に基づいて加工の終了時間Tを予測できる。
【0109】
なお、加工を開始する前の試料2の厚さが常に同じであれば、内側のエッジの位置P1と外側のエッジの位置P2との間の距離はほぼ一定である。そのため、加工中のすべての時間において、外側のエッジの位置P2から、内側のエッジの位置P1を算出して、加工の終了時間Tを予測してもよい。
【0110】
通常、集合体の外側のエッジは、集合体の内側のエッジよりも明瞭である。これは、傾斜面3と加工領域5の境界は、イオンビームIBの強度の分布によってなだらかに傾斜するためである。そのため、二値化画像では、集合体の外側のエッジは集合体の内側のエッジよりも明瞭になる。すなわち、位置P2は、位置P1よりも正確に位置を特定できる。したがって、加工中のすべての時間において、位置P2に基づいて加工の終了時間Tを予測することによって、加工の終了時間Tを正確に予測できる。
【0111】
3.3. 二次ミリングの準備
3.3.1. 試料のセット
一次ミリングが終了した後、二次ミリングを開始する前に、
図6に示すように、試料2の上下を反転させて、試料2の第2端部2bを上、第1端部2aを下にする。例えば、チャンバーを大気開放した後、ユーザーが試料ステージ20に配置された試料2の上下を反転させる。試料2の上下を反転して試料ステージ20に試料2を固定した後、遮蔽部材3
0を取り外す。そして、チャンバー内を真空排気する。
【0112】
なお、試料ステージ20が試料2の上下を反転させる反転機構を有していてもよい。これにより、チャンバーを大気開放することなく、試料2の上下を反転させることができる。
【0113】
3.3.2. 目標位置の指定
図17は、目標位置TPを指定する処理を説明するための図である。
【0114】
ユーザーは、加工の目標位置TPを指定する。二次ミリングでは、加工領域5のエッジまたは、加工領域5に形成された孔が指定された目標位置TPに到達した場合に、加工を終了する。
【0115】
情報処理装置70は、表示部80にGUI画面を表示させる。GUI画面のウィンドウには画像I2、および加工の目標位置TPを入力するためのカーソルCが表示されている。また、ウィンドウには、カーソルCとともに、加工が進む方向を示す矢印C2が表示されている。ユーザーが操作部を介してカーソルCを移動させることで、目標位置TPを指定できる。ユーザーがカーソルCで目標位置TPを指定することで、情報処理装置70に目標位置TPの情報が入力される。なお、目標位置TPの設定方法はこれに限定されない。
【0116】
目標位置TPを指定するときの画像I2は、例えば、透過照明および同軸落射照明された試料2を撮影して得られた画像である。なお、二次ミリングによる加工時には、試料2を透過照明する。
【0117】
3.4. 二次ミリング
3.4.1. 二次ミリングの流れ
試料加工装置100では、情報処理装置70が二次ミリングにより試料2を加工するための二次ミリング処理を行う。
図18は、情報処理装置70の二次ミリング処理の一例を示すフローチャートである。
【0118】
ユーザーが情報処理装置70に二次ミリングを開始する指示を入力すると、情報処理装置70は、目標位置TPの情報を取得する(S200)。ユーザーは、操作部を介して、カーソルCの位置を移動させることで、目標位置TPを指定できる。情報処理装置70は、操作部を介して、カーソルCによって指定された、目標位置TPの情報を取得する。
【0119】
次に、情報処理装置70は、イオンビームIBの照射を開始する処理を行う(S202)。これにより、イオン源10からイオンビームIBが試料2に照射される。このとき、試料ステージ20のスイング機構は、試料2を揺動させる。
【0120】
試料加工装置100では、上述したように、試料2を揺動させながら、試料2にイオンビームIBを照射して、試料2を加工する。試料2の加工中には、カメラ60が試料2を撮影する。
【0121】
加工が開始されると、情報処理装置70は、カメラ60で撮影された試料2の画像I2を取得する(S204)。
【0122】
図19は、カメラ60で撮影された画像I2を模式的に示す図である。
【0123】
加工時に撮影された画像I2は、透過照明された試料2を撮影して得られた画像である
。情報処理装置70は、
図19に示すように、試料2が水平になったタイミングでカメラ60で撮影された画像I2を取得する。これにより、後述する画像処理において、試料2の傾斜を考慮しなくてよい。また、情報処理装置70は、試料2の揺動動作の1周期に1回、画像I2を取得する。これにより、動作ガタによる画像間のずれを低減できる。
【0124】
なお、
図19に示す円形のカーソルは、後述する加工領域5のエッジを検出する処理および孔を検出する処理において、処理を行う範囲を規定するためのものである。ユーザーは、操作部を介してカーソルの位置を移動させることで、処理を行う範囲を変更できる。なお、カーソルで処理を行う範囲を規定せずに、画像I2全体で処理を行ってもよい。
【0125】
次に、情報処理装置70は、画像I2において加工領域5のエッジを検出する(S206)。
【0126】
図20は、加工領域5の下端のエッジEを検出する処理を説明するための図である。
図20には、加工領域5の下端のエッジEを検出するための輝度プロファイルを取得するラインを、破線で示している。
【0127】
情報処理装置70は、
図20に示すように、画像I2の縦方向の輝度プロファイルを複数取得し、加工領域5の下端のエッジEの位置を特定する。画像I2の縦方向の輝度プロファイルでは、加工領域5の下端のエッジEにおいて輝度が大きく変化するため、この輝度の変化からエッジEを検出する。情報処理装置70は、複数の輝度プロファイルにおけるエッジEの検出結果から最も目標位置TPとの間の距離が小さいエッジE0を特定する。情報処理装置70は、エッジE0と目標位置TPとの間の距離D1を計算する。
【0128】
図21は、エッジEを所定の色で描画する処理を説明するための図である。
【0129】
情報処理装置70は、
図21に示すように、検出したエッジEを強調するために、画像I2上において、エッジEと隣接する領域9を、所定の色で描画する。これにより、エッジEを強調することができる。図示の例では、画像I2の領域9は、試料2の下の空間に相当する領域である。
【0130】
なお、エッジEを強調する手法はこれに限定されない。例えば、エッジEを所定の色で描画してもよい。
【0131】
次に、情報処理装置70は、画像I2において加工領域5に形成された孔を検出する(S208)。
【0132】
図22および
図23は、加工領域5に形成された孔Hを検出する処理を説明するための図である。
図22には、孔Hを検出するための輝度プロファイルを取得するラインを、破線で示している。
図23は、輝度プロファイルの一例を示している。
【0133】
図22に示すように、加工を進めると、加工領域5のエッジEと目標位置TPとの間に孔Hが形成される場合がある。
【0134】
情報処理装置70は、画像I2の横方向の輝度プロファイルを複数取得し、加工領域5に形成された孔Hを検出する。
【0135】
例えば、画像I2の任意の第1領域A1が孔Hか否かを判断する場合、第1領域A1の輝度と、第1領域A1を挟む第2領域A2および第3領域A3の輝度と、に基づいて、第1領域A1が孔Hか否かを判断する。第1領域A1、第2領域A2、および第3領域A3
は、それぞれ1つのピクセルであってもよいし、複数のピクセルの集合であってもよい。また、第1領域A1と第2領域A2との間の距離、第1領域A1と第3領域A3との間の距離は、それぞれ適宜設定可能である。
【0136】
具体的には、
図23に示すように、第1領域A1の輝度Lu1と、第2領域A2の輝度Lu2および第3領域A3の輝度Lu3の平均値の差を第1領域A1の信号強度とする。すなわち、第1領域A1の信号強度は、信号強度=Lu1-(Lu2+Lu3)/2で表される。第1領域A1の位置を変更して信号強度を求める処理を、画像I2の全部の領域に対して行う。この結果、画像I2の全領域の信号強度が得られる。
【0137】
次に、画像I2の全領域の信号強度から、信号強度の最大値の情報を取得する。当該最大値は、例えば、透過照明された照明光が直接検出された領域の信号強度である。次に、情報処理装置70は、信号強度が所定値以上の領域を、孔Hと判定する。所定値は、例えば、取得した信号強度の最大値の90%の値とする。
【0138】
ここで、ノイズなどによって局所的に信号強度が高くなった領域が孔Hと判定される場合がある。そのため、信号強度が所定値以上の領域の面積が、設定値よりも大きくなった場合に、孔Hと判定してもよい。設定値は任意に設定可能である。また、上記の輝度プロファイルを取得する前に、画像I2に対してフィルターをかけることでノイズの除去や、緩やかな明るさムラの除去を行ってもよい。
【0139】
情報処理装置70は、孔Hを検出した場合、孔Hと目標位置TPとの間の距離(最短距離)D2を計算する。
【0140】
また、情報処理装置70は、検出された孔Hを所定の色で描画する。
図24は、エッジEを所定の色で描画する処理を説明するための図である。
【0141】
図24に示すように、情報処理装置70は、画像I2上において、検出された孔Hを所定の色で描画する。これにより、孔Hを強調できる。
【0142】
次に、情報処理装置70は、加工領域5のエッジEまたは孔Hが目標位置TPに到達したか否かを判定する(S210)。
【0143】
情報処理装置70は、まず、エッジE0と目標位置TPとの間の距離と、孔Hと目標位置TPとの間の距離を比較する。情報処理装置70は、エッジE0と目標位置TPとの間の距離が、孔Hと目標位置TPとの間の距離よりも小さい場合には、画像I2におけるエッジE0の座標および目標位置TPの座標に基づいて、エッジE0が目標位置TPに到達したか否かを判定する。例えば、画像I2の縦方向におけるエッジE0の座標および目標位置TPの座標から、エッジE0が目標位置TPに到達したか否かを判定できる。
【0144】
情報処理装置70は、孔Hと目標位置TPとの間の距離が、エッジE0と目標位置TPとの間の距離よりも小さい場合には、画像I2における孔Hの座標および目標位置TPの座標に基づいて、孔Hが目標位置TPに到達したか否かを判定する。
【0145】
情報処理装置70は、加工領域5のエッジEまたは孔Hが目標位置TPに到達していないと判定された場合(S210のNo)、画像I2を取得する処理S204に戻る。
【0146】
情報処理装置70は、加工領域5のエッジEまたは孔Hが目標位置TPに到達したと判定されるまで、画像を取得する処理S204、加工領域5のエッジEを検出する処理S206、孔Hを検出する処理S208、および目標位置TPに到達したか否かを判定する処
理S210を繰り返す。
【0147】
情報処理装置70は、加工領域5のエッジEまたは孔Hが目標位置TPに到達したと判定した場合(S210のYes)、イオン源10に対してイオンビームIBの照射を停止させる(S212)。
【0148】
以上の処理により、情報処理装置70は、二次ミリング処理を終了する。
【0149】
3.4.2. 加工の終了時間を予測する処理
情報処理装置70は、上述した二次ミリング処理と並行して、加工の終了時間を予測する処理を行う。
【0150】
例えば、情報処理装置70は、加工領域5のエッジEと目標位置TPとの間の距離、孔Hと目標位置TPとの間の距離のうちの小さい方の距離を残留膜厚とし、残留膜厚の変化に基づいて、加工の終了時間を予測する。
【0151】
図25は、残留膜厚と加工を開始してからの経過時間との関係を示すグラフである。
【0152】
図25に示すように、残留膜厚を計算して、横軸が経過時間、縦軸が残留膜厚を示すグラフにプロットすることで、残留膜厚と経過時間との関係を示す関数を計算できる。
図25に示す例では、直線近似計算によって、残留膜厚と経過時間との関係を示す関数を計算した。この関数を用いて、残留膜厚がゼロになる時間を計算できる。情報処理装置70は、残留膜厚がゼロになる時間、すなわち、加工の終了予定時間をGUI画面に表示する。
【0153】
情報処理装置70は、残留膜厚がゼロに近づく様子を、プログレスバー等で表して、表示部80に表示してもよい。これにより、ユーザーは加工の進捗状況を把握できる。
【0154】
3.4.3. 目標位置の自動設定
上述した
図18に示す二次ミリング処理では、
図17に示すように、ユーザーがカーソルCを用いて目標位置TPを指定することによって目標位置TPを設定した。これに対して、情報処理装置70が自動で目標位置TPを設定してもよい。例えば、情報処理装置70は、積層膜6と保護部材8の境界に、自動で目標位置TPを設定する。
【0155】
図26は、情報処理装置70の二次ミリング処理の変形例を示すフローチャートである。
【0156】
図26に示す二次ミリング処理の変形例は、孔を検出する処理S208の後に、目標位置TPを設定する処理S209を行う点で、
図18に示す二次ミリング処理と異なる。その他の処理は、
図18に示す処理と同様でありその説明を省略する。
【0157】
目標位置TPを設定する処理S209は、
図20に示す加工領域5のエッジEを検出する処理S206と同様に、画像I2の縦方向の輝度プロファイルを複数取得し、積層膜6と保護部材8の境界における輝度の変化から境界を検出する。情報処理装置70は、検出した境界を目標位置TPに設定する。情報処理装置70は、このようにして境界を設定すると、画像I2上の境界に相当する位置に、目標位置TPを示すマーカーを表示する。
【0158】
このようにして、情報処理装置70は、自動で目標位置TPを設定できる。
【0159】
4. 効果
4.1. 一次ミリングにおける効果
試料加工装置100では、情報処理装置70は、目標加工幅TWの情報を取得する処理と、同軸落射照明された試料2を撮影して得られた画像I2を取得する処理と、取得した画像I2において、加工幅Wを測定する処理と、測定された加工幅Wが目標加工幅TW以上になった場合に、加工を終了する処理と、を行う。
【0160】
上述したように、試料2を同軸落射照明することによって、
図5に示すように、画像I2では、試料2の加工領域5、試料2の未加工領域、および遮蔽部材30が明るくなるのに対して、傾斜面3が暗くなる。そのため、画像I2において容易に傾斜面3を抽出でき、2つの傾斜面3に挟まれた加工領域5を容易に特定できる。したがって、試料加工装置100では、加工幅Wを正確に測定でき、加工幅Wに基づいて加工を終了するタイミングを正確に判断できる。この結果、一次ミリングにおいて試料2を再現性高く、かつ、精度よく加工できるため、二次ミリングにおける試料作製の成功率を向上できる。
【0161】
試料加工装置100では、情報処理装置70は、加工幅Wを測定する処理において、画像I2を二値化して二値化画像I2Bを生成し、二値化画像I2Bにおいて加工幅Wを測定する。同軸落射照明された試料2を撮影して得られた画像I2では、加工領域5は明るくなり、傾斜面3が暗くなるため、二値化処理によって、傾斜面3を抽出できる。したがって、2つの傾斜面3に挟まれた加工領域5を容易に特定でき、加工幅Wを正確に測定できる。
【0162】
試料加工装置100では、情報処理装置70は、加工幅Wを測定する処理において、画像I2を二値化して加工によって形成された傾斜面3を抽出し、抽出された傾斜面3の数が2つか否かを判定し、傾斜面3が2つの場合に、2つの傾斜面3の間の距離を測定することによって加工幅Wを測定する。そのため、試料加工装置100では、2つの傾斜面3に挟まれた加工領域5を容易に特定でき、加工幅Wを正確に測定できる。
【0163】
試料加工装置100では、情報処理装置70は、試料2を透過照明する照明光を発する透過照明装置40を含み、カメラ60は、同軸落射照明および透過照明された試料2を撮影する。試料2を透過照明することによって、画像I2において試料2と遮蔽部材30との間の隙間、および試料2の下の空間が明るくなる。この結果、画像I2では、傾斜面3のみが暗くなり、2つの傾斜面3に挟まれた加工領域5を容易に特定できる。
【0164】
試料加工装置100では、情報処理装置70は、加工幅Wの測定結果に基づいて、加工の終了時間を予測する処理を行う。そのため、試料加工装置100では、ユーザーの負担を軽減できる。
【0165】
試料加工装置100では、情報処理装置70は、画像I2を取得する処理において、試料2が水平になったタイミングでカメラ60で撮影された画像I2を取得する。そのため、試料加工装置100では、画像I2に対する画像処理において、試料2の傾斜を考慮しなくてよい。
【0166】
試料加工装置100では、情報処理装置70は、カメラ60で撮影された画像I2を取得する処理において、第1画像および第1画像よりも後に撮影された第2画像を取得し、第1画像において、隙間の大きさを測定する処理と、第2画像において、隙間の大きさを測定する処理と、第2画像における隙間の大きさを第1画像における隙間の大きさと比較する処理と、第2画像における隙間の大きさが第1画像における隙間の大きさよりも大きい場合に、加工を終了する処理と、を行う。そのため、試料加工装置100では、試料2の加工が正常に進んでいない場合に、自動で加工を中止することができる。
【0167】
4.2. 二次ミリングにおける効果
試料加工装置100では、情報処理装置70は、画像I2を取得する処理と、加工の目標位置TPの情報を取得する処理と、画像I2において加工領域5のエッジEを検出する処理と、画像I2において加工領域5に形成された孔Hを検出する処理と、加工領域5のエッジEまたは孔Hが目標位置TPに到達したか否かを判定する処理と、加工領域5のエッジEまたは孔Hが目標位置TPに到達したと判定した場合に、加工を終了する処理と、行う。
【0168】
このように、試料加工装置100では、加工領域5のエッジEおよび孔Hを検出し、加工領域5のエッジEまたは孔Hが目標位置TPに到達したと判定した場合に、加工を終了する。したがって、試料加工装置100では、加工を終了するタイミングを正確に判断できる。さらに、試料加工装置100では、再現性高く、試料2を加工できる。
【0169】
試料加工装置100では、情報処理装置70は、孔Hを検出する処理において、画像I2の第1領域A1の輝度、および第1領域A1を挟む第2領域A2および第3領域A3の輝度に基づいて、第1領域A1が孔Hか否かを判定する。具体的には、情報処理装置70は、第1領域A1の輝度と、第2領域A2の輝度と第3領域A3の輝度の平均値との差を、第1領域A1の信号強度とし、当該信号強度が所定値以上の場合に、第1領域A1を孔Hと判断する。これにより、孔Hを特定できる。
【0170】
試料加工装置100では、情報処理装置70は、加工領域5のエッジEと目標位置TPとの間の距離が孔Hと目標位置TPとの間の距離よりも小さい場合には、加工領域5のエッジEと目標位置TPとの間の距離に基づいて、加工の終了時間を予測する処理を行う。また、情報処理装置70は、孔Hと目標位置TPとの間の距離が加工領域5のエッジEと目標位置TPとの間の距離よりも小さい場合には、孔Hと目標位置TPとの間の距離に基づいて、加工の終了時間を予測する処理を行う。そのため、試料加工装置100では、正確に加工の終了時間を予測できる。
【0171】
試料加工装置100では、試料2は、加工対象物である積層膜6と、加工対象物に接着された保護部材8と、を含み、情報処理装置70は、目標位置TPの情報を取得する処理において、画像I2上において積層膜6と保護部材8との境界を特定し、当該境界の位置を目標位置TPに設定する。このように、試料加工装置100では、自動で目標位置TPを設定できる。
【0172】
5. 変形例
5.1. 第1変形例
上述した実施形態では、二次ミリングにおいて試料2の厚さに応じて、段階的に加速電圧を変更してもよい。例えば、試料2が薄くなるにしたがって、加速電圧を下げてもよい。これにより、イオンビームIBの照射による試料2の損傷の影響を低減できる。
【0173】
例えば、加工領域5のエッジEと目標位置TPとの間の距離、孔Hと目標位置TPとの間の距離のうちの小さい方の距離である残留膜厚は、試料2の厚さに対応する。
【0174】
そのため、測定された残留膜厚に応じて、段階的に加速電圧を変更する。すなわち、残留膜厚が小さくなるにしたがって、段階的に加速電圧を低下させる。これにより、イオンビームIBの照射による損傷の少ない試料を作製できる。
【0175】
5.2. 第2変形例
図9に示す一次ミリング処理において、情報処理装置70は、画像I2の位置ずれを補正する処理を行ってもよい。
【0176】
例えば、イオンビームIBの照射によるダメージを低減するために試料2を冷却すると、試料2の温度変化や試料ステージ20の温度変化によって、撮影された画像I2に位置ずれが生じる場合がある。また、例えば、試料ステージ20のスイング機構の機械的な動作ガタによっても、撮影された画像I2に位置ずれが生じる場合がある。
【0177】
そのため、試料加工装置100は、最初に取得された画像I2を基準として、その後に撮影された画像I2の位置ずれを補正する。例えば、2つの画像I2のそれぞれにおいて、試料2と遮蔽部材30との間の隙間の位置や試料2のエッジを、輝度プロファイルなどで特定し、その位置のずれを補正することで行う。なお、2つの画像I2に対してパターンマッチングを行うことで、位置ずれを補正してもよい。
【0178】
画像I2の位置ずれを補正することで、加工幅Wを測定する位置Pの位置のずれを補正できる。
【0179】
また、同様に、
図18に示す二次ミリング処理においても、同様に、情報処理装置70は、画像I2の位置ずれを補正する処理を行ってもよい。画像I2の位置ずれを補正することで、目標位置TPの位置ずれを補正できる。
【0180】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0181】
2…試料、2a…第1端部、2b…第2端部、3…傾斜面、4…基板、5…加工領域、6…積層膜、8…保護部材、10…イオン源、12…制御回路、20…試料ステージ、30…遮蔽部材、40…透過照明装置、42…照明調光回路、44…同軸落射照明装置、46…照明調光回路、50…光学系、52…ハーフミラー、60…カメラ、70…情報処理装置、80…表示部、100…試料加工装置