(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186458
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】2段型遊星歯車機構およびホイール駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/46 20060101AFI20221208BHJP
B60K 7/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
F16H1/46
B60K7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094691
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000107147
【氏名又は名称】日本電産シンポ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】奥村 幹太
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 仁孝
【テーマコード(参考)】
3D235
3J027
【Fターム(参考)】
3D235AA21
3D235BB20
3D235BB32
3D235CC42
3D235GA08
3D235GA13
3D235GA32
3D235GA42
3D235GB04
3J027FA11
3J027FA17
3J027FB01
3J027GA03
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC24
3J027GE01
3J027GE29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】組み立て時の作業性を向上し、製造コストの抑制を可能にする2段型遊星歯車機構を提供する。
【解決手段】第1遊星歯車装置は、第1太陽歯車、第1遊星歯車、第1キャリア、及び第1内歯歯車を有する。第1遊星歯車は、第1太陽歯車の第1太陽外歯に径方向外側から噛み合う第1遊星外歯を有する。第1キャリアは、第1遊星歯車を、中心軸を中心として公転可能に支持しつつ回転する。第1内歯歯車は、第1遊星外歯に径方向外側から噛み合う第1内歯を内周面に有する。第2遊星歯車装置は、第1キャリアに繋がる第2太陽歯車、第2遊星歯車、第2キャリア、及び第2内歯歯車を有する。第2遊星歯車は、第2太陽歯車の第2太陽外歯に径方向外側から噛み合う第2遊星外歯を有する。第2内歯歯車は、第2遊星外歯に径方向外側から噛み合う第2内歯を内周面に有する。第1内歯歯車は、第2キャリアの内周面に形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力回転数を、前記入力回転数よりも低い中間回転数に変換する第1遊星歯車装置と、
前記中間回転数を、前記中間回転数よりも低い出力回転数に変換する第2遊星歯車装置と、
を有し、
前記第1遊星歯車装置は、
中心軸を中心として前記入力回転数で回転する第1太陽歯車と、
前記第1太陽歯車の外周面に形成された第1太陽外歯に径方向外側から噛み合う第1遊星外歯を有する第1遊星歯車と、
前記第1遊星歯車を、第1自転軸を中心として自転可能に支持する第1キャリアピンと、
前記第1キャリアピンが固定され、前記第1キャリアピンおよび前記第1遊星歯車を、前記中心軸を中心として周方向に公転可能に支持しつつ、前記第1キャリアピンおよび前記第1遊星歯車の前記公転に伴って、前記中心軸を中心として前記中間回転数で回転する第1キャリアと、
前記中心軸と同軸上に配置され、前記第1遊星歯車の前記第1遊星外歯に径方向外側から噛み合う第1内歯を内周面に有する第1内歯歯車と、
を有し、
前記第2遊星歯車装置は、
前記第1キャリアの軸方向他方側に繋がり、前記第1キャリアとともに前記中心軸を中心として前記中間回転数で回転する第2太陽歯車と、
前記第2太陽歯車の外周面に形成された第2太陽外歯に径方向外側から噛み合う第2遊星外歯を有する第2遊星歯車と、
前記第2遊星歯車を、第2自転軸を中心として自転可能に支持する第2キャリアピンと、
前記第2キャリアピンが固定される第2キャリアと、
前記中心軸と同軸上に配置され、前記第2遊星歯車の前記第2遊星外歯に径方向外側から噛み合う第2内歯を内周面に有する第2内歯歯車と、
を有し、
前記第2キャリアおよび前記第2内歯歯車の一方は、前記第2キャリアおよび前記第2内歯歯車の他方から、軸受を介して、前記中心軸を中心として相対回転可能に支持されつつ、前記中心軸を中心として前記出力回転数で回転し、
前記第1内歯歯車は、前記第2キャリアの内周面に形成される、2段型遊星歯車機構。
【請求項2】
請求項1に記載の2段型遊星歯車機構であって、
前記入力回転数は、駆動モータの回転数であり、
前記第1太陽歯車は、前記駆動モータの回転を受けて前記中心軸を中心として前記入力回転数で回転する、2段型遊星歯車機構。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の2段型遊星歯車機構であって、
前記第2キャリアは単一部材から構成されている、2段型遊星歯車機構。
【請求項4】
請求項2に記載の2段型遊星歯車機構であって、
前記駆動モータの静止部に直接的または間接的に固定され、径方向外側に拡がるフランジ部
を有し、
前記第2キャリアは、前記フランジ部に回転不能に固定され、
前記第2内歯歯車は、前記第2キャリアの外周面に前記軸受を介して回転可能に支持されつつ、前記第2遊星歯車の前記第2自転軸を中心とした自転に伴って前記中心軸を中心として前記出力回転数で回転する、2段型遊星歯車機構。
【請求項5】
請求項2に記載の2段型遊星歯車機構であって、
前記駆動モータの静止部に直接的または間接的に固定され、径方向外側に拡がるフランジ部
を有し、
前記第2内歯歯車は、前記フランジ部に回転不能に固定され、
前記第2キャリアは、前記第2内歯歯車の内周面に前記軸受を介して回転可能に支持され、前記第2キャリアピンおよび前記第2遊星歯車を、前記中心軸を中心として周方向に公転可能に支持しつつ、前記第2キャリアピンおよび前記第2遊星歯車の前記公転に伴って、前記中心軸を中心として前記出力回転数で回転する、2段型遊星歯車機構。
【請求項6】
請求項4に記載の2段型遊星歯車機構であって、
前記フランジ部は、前記第2キャリアの外周面に嵌め合う円筒形状のインロー部を有する、2段型遊星歯車機構。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の2段型遊星歯車機構であって、
前記第1キャリアは前記第2キャリアの軸方向一方側に、1または複数の第1ワッシャを介して接触する、2段型遊星歯車機構。
【請求項8】
請求項4または請求項5に記載の2段型遊星歯車機構であって、
前記第1遊星歯車は前記フランジ部の軸方向他方側に、1または複数の第2ワッシャを介して接触する、2段型遊星歯車機構。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の2段型遊星歯車機構であって、
前記第2キャリアピンは、前記第1遊星歯車よりも径方向外側に配置される、2段型遊星歯車機構。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の2段型遊星歯車機構であって、
前記第1内歯歯車を含む前記第2キャリアの材料はクロムモリブデン鋼である、2段型遊星歯車機構。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の2段型遊星歯車機構であって、
前記第1遊星歯車は、はすば歯車である、2段型遊星歯車機構。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の2段型遊星歯車機構であって、
前記第2遊星歯車は、はすば歯車である、2段型遊星歯車機構。
【請求項13】
請求項4に記載の2段型遊星歯車機構と、前記駆動モータとを有し、前記駆動モータの回転を減速してホイールに伝達するホイール駆動装置であって、
前記第2内歯歯車に前記ホイールが固定されている、ホイール駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2段型遊星歯車機構と、2段型遊星歯車機構を有するホイール駆動装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場の生産ライン、病院、およびオフィス等のさまざまな場所において、資材等の被搬送物を搬送する無人のホイール駆動装置が知られている。ホイール駆動装置は、電動機から得られる回転運動を、減速機を用いて減速しつつ出力トルクを増加させて、タイヤを回転させることによって移動する。近年、使用環境に応じたニーズの多様化により、高い減速比が得られ、かつ、減速機の回転時の騒音および振動を抑制できる減速機が求められている。そこで、2段階の減速を行うことによって、高い減速比を実現しつつ、騒音を抑制する装置が、特表平11-505309号公報に開示されている。
【特許文献1】特表平11-505309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特表平11-505309号公報の2段式遊星歯車装置は、第1段の減速機構として、第1の遊星歯車(13)が、第1のピニオン(12)の外周面に噛合いつつ、第1のリング歯車(9)の内周面に係合し、これにより、第1の遊星歯車(13)と、第1の遊星歯車(13)を保持する第1のキャリア(4)とが回転する構成を有する。また、第2段の減速機構として、第2の遊星歯車(7)が、第1のキャリア(4)の一部である第2のピニオン(14)の外周面に噛合いつつ、第2のリング歯車(8)に噛合い、これにより、第2の遊星歯車(7)と、第2の遊星歯車(7)を保持する第2のキャリア(3)とが回転する構成を有する。また、第1のリング歯車(9)は、ねじ(10)を介して、第2のキャリア(3)に固定される。
【0004】
昨今、市場競争の激化により、より高い減速比や、より低騒音および低振動を実現する技術に加え、さらに製造コストの抑制が求められている。そこで、2段型遊星歯車機構の組み立て時の作業性の向上が課題となっている。
【0005】
本発明の目的は、2段型遊星歯車機構を構成する部材の構造を変更することによって、組み立て時の作業性を向上し、製造コストの抑制を可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の例示的な第1発明は、入力回転数を、前記入力回転数よりも低い中間回転数に変換する第1遊星歯車装置と、前記中間回転数を、前記中間回転数よりも低い出力回転数に変換する第2遊星歯車装置と、を有する2段型遊星歯車機構であって、前記第1遊星歯車装置は、中心軸を中心として前記入力回転数で回転する第1太陽歯車と、前記第1太陽歯車の外周面に形成された第1太陽外歯に径方向外側から噛み合う第1遊星外歯を有する第1遊星歯車と、前記第1遊星歯車を、第1自転軸を中心として自転可能に支持する第1キャリアピンと、前記第1キャリアピンが固定され、前記第1キャリアピンおよび前記第1遊星歯車を、前記中心軸を中心として周方向に公転可能に支持しつつ、前記第1キャリアピンおよび前記第1遊星歯車の前記公転に伴って、前記中心軸を中心として前記中間回転数で回転する第1キャリアと、前記中心軸と同軸上に配置され、前記第1遊星歯車の前記第1遊星外歯に径方向外側から噛み合う第1内歯を内周面に有する第1内歯歯車と、を有し、前記第2遊星歯車装置は、前記第1キャリアの軸方向他方側に繋がり、前記第1キャリアとともに前記中心軸を中心として前記中間回転数で回転する第2太陽歯車と、前記第2太陽歯車の外周面に形成された第2太陽外歯に径方向外側から噛み合う第2遊星外歯を有する第2遊星歯車と、前記第2遊星歯車を、第2自転軸を中心として自転可能に支持する第2キャリアピンと、前記第2キャリアピンが固定される第2キャリアと、前記中心軸と同軸上に配置され、前記第2遊星歯車の前記第2遊星外歯に径方向外側から噛み合う第2内歯を内周面に有する第2内歯歯車と、を有し、前記第2キャリアおよび前記第2内歯歯車の一方は、前記第2キャリアおよび前記第2内歯歯車の他方から、軸受を介して、前記中心軸を中心として相対回転可能に支持されつつ、前記中心軸を中心として前記出力回転数で回転し、前記第1内歯歯車は、前記第2キャリアの内周面に形成される。
【発明の効果】
【0007】
本願の例示的な第1発明によれば、第1遊星歯車装置の第1遊星歯車に径方向外側から噛み合う第1内歯歯車は、第2遊星歯車装置の第2遊星歯車を保持する第2キャリアの内周面に形成される。これにより、第1内歯歯車と第2キャリアとを固定する作業が不要となるため、組み立て時の作業性を向上し、製造コストを抑制できる。また、第1内歯歯車と、第1内歯歯車を含む第2キャリア全体との同軸精度を向上し、さらに騒音や振動を抑制することができる。また、仮に第1内歯歯車と第2キャリアとを別々に形成して軸方向に繋ぐ場合に生じ得る、第1内歯歯車と第2キャリアとの間の段差により、第1遊星歯車と第1内歯歯車との噛合い不良が発生することを抑制できる。さらに、第1内歯歯車と第2キャリアとを別々に形成して軸方向に繋ぐ場合に比べて、これらを含む2段型遊星歯車機構全体を軸方向に薄型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るホイール駆動装置の縦断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るホイール駆動装置の部分縦断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る2段型遊星歯車機構の横断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る2段型遊星歯車機構の横断面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る2段型遊星歯車機構の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、本発明に係る2段型遊星歯車機構およびホイール駆動装置の中心軸と平行な方向を「軸方向」、2段型遊星歯車機構およびホイール駆動装置の中心軸に直交する方向を「径方向」、2段型遊星歯車機構およびホイール駆動装置の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。また、本願では、
図1,
図2,
図5において、軸方向を左右方向とし、右側を「軸方向一方側」、左側を「軸方向他方側」として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、この左右方向の定義により、本発明に係る2段型遊星歯車機構およびホイール駆動装置の製造時や使用時の向きを限定する意図はない。また、本願において「平行な方向」とは、略平行な方向も含む。また、本願において「直交する方向」とは、略直交する方向も含む。
【0010】
<1.第1実施形態>
以下では、本発明の第1実施形態に係る2段型遊星歯車機構1を含むホイール駆動装置100の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係るホイール駆動装置100の縦断面図である。
図2は、第1実施形態に係るホイール駆動装置100の部分縦断面図である。
図3は、
図1のA-A位置から見たときの2段型遊星歯車機構1の横断面図である。
図4は、
図1のB-B位置から見たときの2段型遊星歯車機構1の横断面図である。
【0011】
本発明のホイール駆動装置100は、例えば、工場の生産ライン、病院、およびオフィス等のさまざまな場所において、資材および部品等の被搬送物が載置された台車フレーム(図示省略)を移動させる装置である。ホイール駆動装置100は、駆動モータ(図示省略)と、2段型遊星歯車機構1と、ホイール6と、タイヤ7と、枠体を有する。ホイール駆動装置100は、駆動モータから得られる回転運動を、2段型遊星歯車機構1を用いて減速させながらホイール6に伝達し、タイヤ7を回転させることによって移動する。
【0012】
駆動モータは、ステータを含む静止部と、静止部に対して水平方向(
図1における左右方向)に延びるモータ中心軸20を中心として回転する回転部とを有する。当該回転部の一部である回転シャフトの軸方向他方側の端部は、キャップ22に固定される。キャップ22の外周面は、モータ中心軸20に沿って筒状に拡がる。
【0013】
続いて、2段型遊星歯車機構1の詳細な構成について説明する。2段型遊星歯車機構1は、軸方向に延びる中心軸90に沿って配置される。本実施形態では、中心軸90と、駆動モータのモータ中心軸20とは、互いに一致するものとする。2段型遊星歯車機構1は、入力回転数N1の回転運動を、入力回転数N1よりも低い出力回転数N3の回転運動に変換しつつ、出力トルクを増加させる装置である。また、本実施形態では、駆動モータの回転数が、入力回転数N1となっている。しかしながら、駆動モータと2段型遊星歯車機構1とは、プーリ等を介して間接的に接続されていてもよい。この場合、駆動モータの回転数と入力回転数N1とが、異なっていてもよい。2段型遊星歯車機構1は、フランジ部5と、第1遊星歯車装置30と、第2遊星歯車装置40とを有する。
【0014】
フランジ部5は、駆動モータの回転シャフトよりも径方向外側に円環板状に拡がる部材である。本実施形態のフランジ部5は、ホイール駆動装置100の枠体に固定される。このため、フランジ部5自体は回転することなく、タイヤ7の回転に伴って水平方向に移動するのみである。また、枠体には、駆動モータの静止部が固定される。すなわち、フランジ部5は、駆動モータの静止部に、枠体を介して間接的に固定される。ただし、フランジ部5は、駆動モータの静止部に直接的に固定されてもよい。
【0015】
なお、
図1および
図2に示すように、フランジ部5には、貫通孔50が設けられている。貫通孔50は、フランジ部5の一部を軸方向に貫通する。また、フランジ部5には、さらにインロー部52が設けられている。インロー部52は、フランジ部5の軸方向他方側の端面において、中心軸90を中心として軸方向他方側へ突出する円筒形状の部位である。
【0016】
フランジ部5とキャップ22との径方向の間には、第1軸受23が配置されている。
図2に示すように、第1軸受23は、内輪231と、複数のボール232と、外輪233とを有する。内輪231は、キャップ22の外周面に固定される。複数のボール232は、内輪231と外輪233との間に介在する。外輪233は、フランジ部5の内周面に固定される。これにより、キャップ22は、駆動モータの回転シャフトとともに、フランジ部5に対して、第1軸受23を介して、モータ中心軸20を中心として回転可能に支持される。このように、第1軸受23には、ボールベアリングが用いられる。ただし、ボールベアリングに代えて、ローラベアリング等の他方式の軸受が用いられてもよい。
【0017】
第1遊星歯車装置30は、入力回転数N1の回転運動を、入力回転数N1よりも低い中間回転数N2の回転運動に変換する装置である。
図1および
図2に示すように、第1遊星歯車装置30は、第1太陽歯車31と、複数(本実施形態では、3つ)の第1遊星歯車32と、複数(本実施形態では、3つ)の第1キャリアピン33と、第1キャリア34と、第1内歯歯車35とを有する。第1遊星歯車装置30は、第1太陽歯車31の後述する第1太陽外歯311と複数の第1遊星歯車32の第1遊星外歯321、および複数の第1遊星歯車32の第1遊星外歯321と第1内歯歯車35の第1内歯351が、互いに噛み合いながら回転することで動力を伝達する。
【0018】
第1太陽歯車31は、中心軸90と略同軸に配置されたギアである。第1太陽歯車31は、キャップ22の軸方向他方側に、互いに相対回転不能に固定される。これにより、第1太陽歯車31は、駆動モータの回転を受けて、回転シャフトおよびキャップ22とともに、中心軸90を中心として入力回転数N1で回転する。ただし、第1太陽歯車31と、回転シャフトまたはキャップ22とは、単一部材から形成されてもよい。すなわち、第1太陽歯車31は、駆動モータの回転部に繋がっていればよい。また、第1太陽歯車31は、外周面に複数の外歯(以下「第1太陽外歯311」と称する)を有する。複数の第1太陽外歯311はそれぞれ、径方向外側に向かって突出する。複数の第1太陽外歯311は、周方向に沿って、一定のピッチで配列される。
【0019】
第1遊星歯車32は、第1太陽歯車31の周囲において、第1自転軸91に沿って配置される。本実施形態では、第1自転軸91は、中心軸90と略平行である。また、本実施形態の第1遊星歯車32には、はすば歯車が用いられる。また、
図3に示すように、本実施形態では、第1太陽歯車31の周囲に、3個の第1遊星歯車32が等間隔に配置されている。ただし、第1遊星歯車装置30が有する第1遊星歯車32の数は、2個であってもよく、4個以上であってもよい。各第1遊星歯車32は、外周面に複数の外歯(以下「第1遊星外歯321」と称する)を有する。複数の第1遊星外歯321はそれぞれ、外側に向かって突出する。
【0020】
各第1遊星歯車32の第1遊星外歯321は、第1太陽歯車31の第1太陽外歯311に対して径方向外側から噛み合っている。これにより、第1太陽歯車31が中心軸90を中心として回転すると、各第1遊星歯車32は、第1太陽歯車31からの動力を受け、第1自転軸91を中心として、第1太陽歯車31の回転方向とは逆方向に自転する。また、各第1遊星歯車32は、貫通孔320を有する。各貫通孔320は、第1自転軸91に沿って、第1遊星歯車32を貫通する。
【0021】
3つの第1キャリアピン33はそれぞれ、1つの第1遊星歯車32を自転可能に支持するための部材である。各第1キャリアピン33には、例えば、第1自転軸91に沿って延びる柱状の部材が用いられる。第1キャリアピン33は、第1遊星歯車32の貫通孔320に挿入される。また、第1キャリアピン33と第1遊星歯車32との間には、第2軸受325が挿入される。本実施形態の第2軸受325には、ニードルベアリングが用いられる。これにより、第1遊星歯車32は、第1キャリアピン33に対して、第1自転軸91を中心として自転可能に支持される。
【0022】
また、
図2に示すように、第1遊星歯車32および第1キャリアピン33と、フランジ部5との軸方向の間には、ワッシャ36(第2ワッシャ)が配置されている。第1遊星歯車32および第1キャリアピン33は、フランジ部5の軸方向他方側に、ワッシャ36を介して接触する。これにより、フランジ部5に対して、第1遊星歯車32および第1キャリアピン33が摺動することが可能となり、摺動時のこれらの部材に掛かる負荷を抑制することができる。なお、2段型遊星歯車機構1を組み上げる途中の調整段階において、第1遊星歯車32および第1キャリアピン33とフランジ部5との軸方向の間に、ワッシャ36を介在させる。ワッシャ36の枚数は、1枚であってもよく、複数枚であってもよい。また、ワッシャ36の枚数は0枚(すなわち、挟み込まない)であってもよい。これにより、フランジ部5に対する、第1遊星歯車32および第1キャリアピン33の軸方向の位置を容易に調整することができる。なお、ワッシャ36を配置する代わりに、シム等を配置してもよい。さらに、第1遊星歯車32および第1キャリアピン33とフランジ部5との軸方向の間に、ワッシャ36またはシム等に加え、グリスを介在させてもよい。
【0023】
第1キャリア34は、中心軸90の周囲を円環板状に拡がる部材である。
図2に示すように、第1キャリア34は、複数(本実施形態では、3つ)の貫通孔340を有する。各貫通孔340は、中心軸90よりも径方向外側において、第1キャリア34を第1自転軸91に沿って貫通する。また、3つの貫通孔340は、中心軸90を中心として互いに周方向に略120度の間隔を空けて設けられている。そして、3つの第1キャリアピン33はそれぞれ、軸方向他方側の部位において、貫通孔340に挿入される。また、本実施形態では、各第1キャリアピン33は、貫通孔340において接着または圧入等により第1キャリア34に固定される。これにより、各第1キャリアピン33は、中心軸90よりも径方向外側において、第1キャリア34と互いに相対回転不能に固定される。第1キャリア34が中心軸90を中心として回転すると、第1キャリア34に固定される3つの第1キャリアピン33と、各第1キャリアピン33に支持される第1遊星歯車32とが、中心軸90を中心として周方向に公転する。
【0024】
また、
図2に示すように、第1キャリア34と、後述する第2キャリア44の突出部447との軸方向の間には、ワッシャ37(第1ワッシャ)が配置されている。第1キャリア34は、第2キャリア44の突出部447の軸方向一方側に、ワッシャ37を介して接触する。これにより、第1キャリア34と第2キャリア44の突出部447とが互いに摺動することが可能となり、摺動時のこれらの部材に掛かる負荷を抑制することができる。なお、2段型遊星歯車機構1を組み上げる途中の調整段階において、第1キャリア34と第2キャリア44の突出部447との軸方向の間に、ワッシャ37を介在させる。ワッシャ37の枚数は、1枚であってもよく、複数枚であってもよい。また、ワッシャ37の枚数は0枚(すなわち、挟み込まない)であってもよい。これにより、第2キャリア44の突出部447に対する、第1キャリア34の軸方向の位置を容易に調整することができる。なお、ワッシャ37を配置する代わりに、シム等を配置してもよい。さらに、第1キャリア34と第2キャリア44との軸方向の間に、ワッシャ37またはシム等に加え、グリスを介在させてもよい。
【0025】
上記のとおり、第1キャリア34は、第2キャリア44の突出部447の軸方向一方側の端面に、ワッシャ37を介して接触する。また、第1キャリア34に固定された3つの第1キャリアピン33の軸方向一方側の端部は、フランジ部5の軸方向他方側の端面に、ワッシャ36を介して接触する。これにより、3つの第1キャリアピン33および第1キャリア34は、軸方向に振れることなく安定して配置される。また、第1キャリア34において、3つの第1キャリアピン33が周方向に略120度の間隔を空けて固定され、各第1キャリアピン33は第1遊星歯車32を支持し、さらに第1遊星歯車32の第1遊星外歯321は、第1太陽歯車31の第1太陽外歯311に対して径方向外側から噛み合うとともに、後述のとおり、第1内歯歯車35の第1内歯351に対して径方向内側から噛み合う。これにより、第1キャリア34は、径方向に振れることなく安定して配置され、中心軸90を中心として周方向に安定して回転する。
【0026】
第1内歯歯車35は、中心軸90と略同軸に配置される。第1内歯歯車35は、中心軸90を中心として円環筒状に拡がる部材である。また、第1内歯歯車35の内周面には、複数の第1内歯351が形成されている。複数の第1内歯351はそれぞれ、径方向内側に向かって突出する。複数の第1内歯351は、周方向に沿って、一定のピッチで配列される。また、第1内歯歯車35の第1内歯351は、3つの第1遊星歯車32のそれぞれの第1遊星外歯321に対して径方向外側から噛み合っている。なお、後述のとおり、本実施形態の第1内歯歯車35は、フランジ部5に相対回転不能に固定されるため、中心軸90を中心として回転しない構造となっている。
【0027】
第1太陽歯車31が中心軸90を中心として入力回転数N1で回転すると、第1太陽歯車31と第1内歯歯車35との双方に噛み合う3つの第1遊星歯車32は、それぞれ第1自転軸91を中心として自転する。また、3つの第1遊星歯車32はそれぞれ、第1自転軸91を中心として自転しながら、第1太陽歯車31および第1内歯歯車35との噛み合いにより、第1キャリアピン33とともに、中心軸90を中心として中間回転数N2で公転する。これにより、3つの第1キャリアピン33が固定された第1キャリア34は、中心軸90を中心として中間回転数N2で回転する。すなわち、第1キャリア34は、3つの第1遊星歯車32および第1キャリアピン33を、中心軸90を中心として周方向に公転可能に支持しつつ、3つの第1遊星歯車32および第1キャリアピン33の公転に伴って、中心軸90を中心として中間回転数N2で回転する。
【0028】
第2遊星歯車装置40は、中間回転数N2の回転運動を、中間回転数N2よりも低い出力回転数N3の回転運動に変換する装置である。
図1および
図2に示すように、第2遊星歯車装置40は、第2太陽歯車41と、複数(本実施形態では、3つ)の第2遊星歯車42と、複数(本実施形態では、3つ)の第2キャリアピン43と、第2キャリア44と、第2内歯歯車45とを有する。第2遊星歯車装置40は、第2太陽歯車41の後述する第2太陽外歯411と複数の第2遊星歯車42の第2遊星外歯421、および複数の第2遊星歯車42の第2遊星外歯421と第2内歯歯車45の第2内歯451が、互いに噛み合いながら回転することで動力を伝達する。
【0029】
第2太陽歯車41は、中心軸90と略同軸に配置されたギアである。第2太陽歯車41は、第1キャリア34の軸方向他方側に、互いに相対回転不能に固定される。これにより、第2太陽歯車41は、第1キャリア34とともに、中心軸90を中心として中間回転数N2で回転する。ただし、第2太陽歯車41と、第1キャリア34とは、単一部材から形成されてもよい。すなわち、第2太陽歯車41は、第1キャリア34の軸方向他方側に繋がっていればよい。また、第2太陽歯車41は、外周面に複数の外歯(以下「第2太陽外歯411」と称する)を有する。複数の第2太陽外歯411はそれぞれ、径方向外側に向かって突出する。複数の第2太陽外歯411は、周方向に沿って、一定のピッチで配列される。
【0030】
第2遊星歯車42は、第2太陽歯車41の周囲において、第2自転軸92に沿って配置される。本実施形態では、第2自転軸92は、中心軸90と略平行である。また、第2自転軸92は、第1自転軸91よりも径方向外側に位置する。本実施形態の第2遊星歯車42には、はすば歯車が用いられる。また、
図4に示すように、本実施形態では、第2太陽歯車41の周囲に、3個の第2遊星歯車42が等間隔に配置されている。ただし、第2遊星歯車装置40が有する第2遊星歯車42の数は、2個であってもよく、4個以上であってもよい。各第2遊星歯車42は、外周面に複数の外歯(以下「第2遊星外歯421」と称する)を有する。複数の第2遊星外歯421はそれぞれ、外側に向かって突出する。
【0031】
各第2遊星歯車42の第2遊星外歯421は、第2太陽歯車41の第2太陽外歯411に対して径方向外側から噛み合っている。これにより、第2太陽歯車41が中心軸90を中心として回転すると、各第2遊星歯車42は、第2太陽歯車41からの動力を受け、第2自転軸92を中心として、第2太陽歯車41の回転方向とは逆方向に自転する。また、各第2遊星歯車42は、貫通孔420を有する。各貫通孔420は、第2自転軸92に沿って、第2遊星歯車42を貫通する。
【0032】
3つの第2キャリアピン43はそれぞれ、1つの第2遊星歯車42を自転可能に支持するための部材である。各第2キャリアピン43には、例えば、第2自転軸92に沿って延びる円柱状のピンが用いられる。第2キャリアピン43は、第2遊星歯車42の貫通孔420に挿入される。また、第2キャリアピン43と第2遊星歯車42との間には、第3軸受425が挿入される。本実施形態の第3軸受425には、ニードルベアリングが用いられる。これにより、第2遊星歯車42は、第2キャリアピン43に対して、第2自転軸92を中心として自転可能に支持される。
【0033】
第2キャリア44は、第2キャリア円環部441と、第2キャリア円底部442と、第2キャリア連結部443とを有する。第2キャリア円環部441は、第2太陽歯車41よりも軸方向一方側において、中心軸90を中心として円環状に拡がる。第2キャリア円底部442は、第2太陽歯車41よりも軸方向他方側において、中心軸90を中心として径方向に円板状に拡がる。第2キャリア連結部443は、第2太陽歯車41よりも径方向外側において、軸方向に延びる。第2キャリア連結部443は、第2キャリア円環部441と第2キャリア円底部442とを軸方向に繋ぐ。ただし、第2キャリア連結部443は、第2遊星歯車42および第2キャリアピン43とは周方向に異なる位置にあり、第2遊星歯車42および第2キャリアピン43に接触しない。
【0034】
第2キャリア円環部441には、複数(本実施形態では、3つ)の貫通孔444が、設けられている。貫通孔444は、第2キャリア円環部441を軸方向に貫通しつつ、第2遊星歯車42の貫通孔420に連続する。また、第2キャリア円底部442には、複数(本実施形態では、3つ)の孔445が、設けられている。孔445は、第2キャリア円底部442の軸方向一方側の端面から軸方向他方側へ凹み、かつ、第2遊星歯車42の貫通孔420に連続する。上記の第2キャリアピン43は、第2キャリア円環部441の貫通孔444と、第2遊星歯車42の貫通孔420とを貫通しつつ、第2キャリア円底部442の孔445に挿入され、孔445において圧入により固定される。
【0035】
さらに、第2キャリア円環部441には、ネジ孔446が設けられている。ネジ孔446は、貫通孔444とは周方向に異なる位置において、第2キャリア円環部441の軸方向一方側の端面から軸方向他方側へ凹み、かつ、フランジ部5の貫通孔50に連続する。第2キャリア44は、フランジ部5の貫通孔50を貫通するボルト51を、第2キャリア円環部441のネジ孔446にボルト止めすることにより、フランジ部5に相対回転不能に固定される。
【0036】
さらに、フランジ部5のインロー部52は、第2キャリア円環部441の軸方向一方側の端部の外周面に嵌め合う。これにより、フランジ部5と第2キャリア44とを、相対的に容易に位置決めすることができる。また、フランジ部5と第2キャリア44との同軸精度を向上し、各部の回転時の騒音や振動をさらに抑制できる。なお、本実施形態において、フランジ部5と第2キャリア44とは、単一部材から構成されていてもよい。また、第2キャリア円環部441は、突出部447を有する。突出部447は、第2キャリア円環部441の軸方向他方側の端部(第2キャリア連結部443との境界付近)において、径方向内側へ全周に亘って突出する。
【0037】
さらに、第1遊星歯車装置30の第1内歯歯車35は、第2キャリア円環部441のうち突出部447よりも軸方向一方側に位置する部位の内周面に形成されている。そして、第1内歯歯車35を含む第2キャリア44は、単一部材から構成されている。第1内歯歯車35は、第2キャリア44の内周面に、例えば、ギヤシェーパ加工またはスカイビング加工によって形成される。これにより、仮に第1内歯歯車35と第2キャリア44とを別々に形成して繋ぐ場合に生じ得る、第1内歯歯車35と第2キャリア44とを固定する作業が不要となる。この結果、これらを固定するボルト等の部品点数を削減しつつ、2段型遊星歯車機構およびホイール駆動装置100の組み立て時の作業性を向上でき、製造コストの抑制に繋げることができる。また、第1内歯歯車35と、第1内歯歯車35を含む第2キャリア44との同軸精度を向上し、回転時の騒音や振動をさらに抑制できる。また、第1内歯歯車35と第2キャリア44とを別々に形成して軸方向に繋ぐ場合に生じ得る、第1内歯歯車35と第2キャリア44との間の段差により、回転時の第1遊星歯車32と第1内歯歯車35との噛合い不良が発生することをさらに抑制できる。
【0038】
また、上記の構成を有することにより、第1内歯歯車35と第2キャリア44とを別々に形成して軸方向に繋ぐ場合に比べて、これらを含む2段型遊星歯車機構1全体を軸方向に薄型化することができる。特に、本実施形態の第2キャリアピン43は、第1遊星歯車32の径方向外側に配置される。これにより、これらを含む2段型遊星歯車機構1全体を軸方向にさらに薄型化することができる。
【0039】
なお、第1内歯歯車35が形成される位置は、第2キャリア円環部441の内周面には限定されない。第1内歯歯車35は、第2キャリア44の内周面の少なくとも一部に形成されていればよい。また、本実施形態の第1内歯歯車35を含む第2キャリア44の材料には、クロムモリブデン鋼が用いられる。ただし、第2キャリア44の材料には、他の材料が用いられてもよい。
【0040】
第2内歯歯車45は、中心軸90と略同軸に配置される。第2内歯歯車45は、中心軸90を中心として円環筒状に拡がる部材である。また、第2内歯歯車45のうち軸方向の中央部分の内周面には、複数の第2内歯451が形成されている。複数の第2内歯451はそれぞれ、径方向内側に向かって突出する。複数の第2内歯451は、周方向に沿って、一定のピッチで配列される。また、第2内歯歯車45の第2内歯451は、3つの第2遊星歯車42のそれぞれの第2遊星外歯421に対して径方向外側から噛み合っている。
【0041】
第2内歯歯車45と第2キャリア44との径方向の間には、第4軸受46が配置されている。
図2に示すように、第4軸受46は、内輪461と、複数のボール462と、外輪463とを有する。内輪461は、第2キャリア44の外周面に固定される。複数のボール462は、内輪461と外輪463との間に介在する。外輪463は、第2内歯歯車45の内周面に固定される。これにより、第2内歯歯車45は、第2キャリア44の外周面に、第4軸受46を介して、回転可能に支持される。このように、第4軸受46には、ボールベアリングが用いられる。ただし、ボールベアリングに代えて、ローラベアリング等の他方式の軸受が用いられてもよい。
【0042】
第2太陽歯車41が、第1キャリア34とともに、中心軸90を中心として中間回転数N2で回転すると、第2太陽歯車41と第2内歯歯車45との双方に噛み合う3つの第2遊星歯車42は、それぞれ第2自転軸92を中心として自転する。しかしながら、上記のとおり、第2遊星歯車42を自転可能に支持する第2キャリアピン43は、第2キャリア44に固定され、第2キャリア44は、フランジ部5に相対回転不能に固定される。また、フランジ部5は、ホイール駆動装置100の枠体に固定されているため、回転しない。このため、3つの第2遊星歯車42は、それぞれ第2自転軸92を中心として自転しつつも、中心軸90を中心として公転することはない。この結果、第2内歯歯車45が、第2遊星歯車42の第2自転軸92を中心とした自転に伴って、中心軸90を中心として出力回転数N3で回転する。すなわち、本実施形態では、2段型遊星歯車機構1における最も径方向外側に位置する第2内歯歯車45を、中心軸90を中心として出力回転数N3で回転させる構成となっている。
【0043】
なお、
図1に示すように、第2内歯歯車45には、さらにネジ孔450が設けられている。ネジ孔450は、第2内歯歯車45の軸方向他方側の端面から軸方向一方側へ凹む。
【0044】
ホイール6は、タイヤ支持部61と接続部62とを有する。タイヤ支持部61は、第2内歯歯車45の径方向外側において、中心軸90に沿って軸方向に円筒状に拡がる外周面を有する。タイヤ支持部61の外周面には、タイヤ7が固定される。接続部62は、タイヤ支持部61の軸方向他方側の端部を覆う円板状の部位である。接続部62は、貫通孔620を有する。貫通孔620は、接続部62の外周部付近の部位を軸方向に貫通しつつ、第2内歯歯車45のネジ孔450の軸方向一方側に連続する。ホイール6は、接続部62の貫通孔620を貫通するボルト63を、第2内歯歯車45のネジ孔450にボルト止めすることにより、第2内歯歯車45に相対回転不能に固定される。
【0045】
ホイール駆動装置100の使用時には、第2内歯歯車45とともに、ホイール6およびタイヤ7が、減速後の出力回転数N3で、中心軸90を中心として回転する。これにより、ホイール駆動装置100は、水平方向(
図1における手前または奥行き方向)に、低速で移動することができる。
【0046】
<2.第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態に係る2段型遊星歯車機構1Bの構成について説明する。なお、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同等の部分については、重複説明を一部省略する。
図5は、第2実施形態に係る2段型遊星歯車機構1Bの縦断面図である。
【0047】
図5に示すように、2段型遊星歯車機構1Bは、フランジ部5Bと、第1遊星歯車装置30Bと、第2遊星歯車装置40Bとを有する。
【0048】
フランジ部5Bは、駆動モータの回転シャフトよりも径方向外側に円環板状に拡がる部材である。本実施形態のフランジ部5Bは、第1実施形態のフランジ部5と、略同等の構成を有する。ただし、本実施形態のフランジ部5Bには、第1実施形態とは異なる位置において、インロー部52Bが設けられている。インロー部52Bは、フランジ部5Bの外周部において、中心軸90Bを中心として軸方向他方側へ突出する円筒形状の部位である。また、本実施形態のフランジ部5Bには、複数の貫通孔50Bが設けられている。各貫通孔50Bは、フランジ部5Bの外周部付近の部位を軸方向に貫通する。
【0049】
本実施形態の第1遊星歯車装置30Bは、第1実施形態に係る第1遊星歯車装置30と略同等の構成を有する。第1太陽歯車31Bが中心軸90Bを中心として入力回転数N1で回転すると、第1太陽歯車31Bと第1内歯歯車35Bとの双方に噛み合う3つの第1遊星歯車32Bはそれぞれ、第1自転軸91Bを中心として自転する。また、3つの第1遊星歯車32Bはそれぞれ、第1自転軸91Bを中心として自転しながら、第1太陽歯車31Bおよび第1内歯歯車35Bとの噛み合いにより、第1キャリアピン33Bとともに、中心軸90Bを中心として中間回転数N2で公転する。これにより、3つの第1キャリアピン33Bが固定された第1キャリア34Bは、中心軸90Bを中心として中間回転数N2で回転する。すなわち、第1キャリア34Bは、3つの第1遊星歯車32Bおよび第1キャリアピン33Bを、中心軸90Bを中心として周方向に公転可能に支持しつつ、3つの第1遊星歯車32Bおよび第1キャリアピン33Bの公転に伴って、中心軸90Bを中心として中間回転数N2で回転する。
【0050】
第2遊星歯車装置40Bは、第2太陽歯車41Bと、複数の第2遊星歯車42Bと、複数の第2キャリアピン43Bと、第2キャリア44Bと、第2内歯歯車45Bとを有する。本実施形態の第2太陽歯車41B、複数の第2遊星歯車42B、および複数の第2キャリアピン43Bについては、第1実施形態に係る第2太陽歯車41、複数の第2遊星歯車42、および複数の第2キャリアピン43と略同等の構成を有するため、重複説明を省略する。
【0051】
本実施形態の第2キャリア44Bは、第1実施形態の第2キャリア44と、略同等の構成を有する。第2キャリアピン43Bは、第2キャリア44Bの貫通孔444B、および第2遊星歯車42Bの貫通孔420Bを貫通しつつ、第2キャリア44Bの孔445Bに挿入され、孔445Bにおいて圧入により固定される。しかしながら、本実施形態の第2キャリア44Bには、第1実施形態のネジ孔446に相当する部位は設けられていない。そして、本実施形態の第2キャリア44Bは、フランジ部5Bには固定されておらず、互いに相対回転可能となっている。また、第2キャリア44Bは、第2内歯歯車45Bの内周面に、軸方向に離間して配置された2つの第4軸受46Bを介して回転可能に支持される。なお、フランジ部5Bのインロー部52Bは、2つの第4軸受46Bのうちの軸方向一方側に位置する第4軸受46Bの外周面に嵌め合う。これにより、フランジ部5Bと当該第4軸受46Bとを、相対的に容易に位置決めすることができる。第2キャリア44Bは、3つの第2遊星歯車42Bのそれぞれを、第2自転軸92を中心として自転可能に支持しつつ、3つの第2キャリアピン43Bおよび3つの第2遊星歯車42Bを、中心軸90Bを中心として周方向に公転可能に支持する。
【0052】
第1実施形態と同様に、第1遊星歯車装置30Bの第1内歯歯車35Bは、第2キャリア44Bの内周面に形成されている。そして、第1内歯歯車35Bを含む第2キャリア44Bは、単一部材から構成されている。これにより、仮に第1内歯歯車35Bと第2キャリア44Bとを別々に形成して繋ぐ場合に生じ得る、第1内歯歯車35Bと第2キャリア44Bとを固定する作業が不要となる。この結果、これらを固定するボルト等の部品点数を削減しつつ、2段型遊星歯車機構の組み立て時の作業性を向上でき、製造コストの抑制に繋げることができる。
【0053】
本実施形態の第2内歯歯車45Bは、第1実施形態の第2内歯歯車45と、略同等の構成を有する。上記のとおり、第2キャリア44Bは、第2内歯歯車45Bの内周面に、第4軸受46Bを介して回転可能に支持される。ただし、本実施形態の第2内歯歯車45Bには、複数のネジ孔450Bが設けられている。各ネジ孔450Bは、第2内歯歯車45Bの軸方向一方側の端面から軸方向他方側へ凹み、かつ、フランジ部5Bの貫通孔50Bに連続する。第2内歯歯車45Bは、フランジ部5Bの貫通孔50Bを貫通するボルト51Bを、ネジ孔450Bにボルト止めすることにより、フランジ部5Bに回転不能に固定される。
【0054】
第2太陽歯車41Bが、第1キャリア34Bとともに、中心軸90Bを中心として中間回転数N2で回転すると、第2太陽歯車41Bと第2内歯歯車45Bとの双方に噛み合う3つの第2遊星歯車42Bは、それぞれ第2自転軸92Bを中心として自転する。また、3つの第2遊星歯車42Bは、第2太陽歯車41Bおよび第2内歯歯車45Bとの噛み合いにより、第2キャリアピン43Bとともに、中心軸90Bを中心として出力回転数N3で公転する。これにより、第2キャリア44Bは、第2キャリアピン43Bおよび第2遊星歯車42Bの公転に伴って、中心軸90Bを中心として出力回転数N3で回転する。すなわち、本実施形態では、第2キャリア44Bから出力回転を取り出すことができる。
【0055】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0056】
上記の第1実施形態および第2実施形態にて開示されたように、本発明の2段型遊星歯車機構は、第2キャリアおよび第2内歯歯車の一方が、第2キャリアおよび第2内歯歯車の他方から、軸受を介して、中心軸を中心として相対回転可能に支持されつつ、中心軸を中心として出力回転数で回転する構成を有していればよい。
【0057】
また、2段型遊星歯車機構およびホイール駆動装置の細部の形状については、上記の実施形態の各図に示された形状と相違していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本願は、2段型遊星歯車機構およびホイール駆動装置に利用できる。
【符号の説明】
【0059】
1,1B 2段型遊星歯車機構
5,5B フランジ部
6 ホイール
7 タイヤ
30,30B 第1遊星歯車装置
31,31B 第1太陽歯車
32,32B 第1遊星歯車
33,33B 第1キャリアピン
34,34B 第1キャリア
35,35B 第1内歯歯車
36 ワッシャ(第2ワッシャ)
37 ワッシャ(第1ワッシャ)
40,40B 第2遊星歯車装置
41,41B 第2太陽歯車
42,42B 第2遊星歯車
43,43B 第2キャリアピン
44,44B 第2キャリア
45,45B 第2内歯歯車
46,46B 第4軸受(軸受)
52 インロー部
90,90B 中心軸
91,91B 第1自転軸
92,92B 第2自転軸
100 ホイール駆動装置
311 第1太陽外歯
321 第1遊星外歯
351 第1内歯
411 第2太陽外歯
421 第2遊星外歯
451 第2内歯