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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018646
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】船外機
(51)【国際特許分類】
   B63H 5/16 20060101AFI20220120BHJP
   B63H 20/00 20060101ALI20220120BHJP
   B63H 20/34 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B63H5/16 C
B63H20/00 610
B63H5/16 D
B63H20/34 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121892
(22)【出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】塚田 隼也
(72)【発明者】
【氏名】安川 光
(57)【要約】
【課題】プロペラの支持剛性を向上させると共に、船外機の推進性能を向上させる。
【解決手段】船外機は、ダクトと、プロペラと、中心軸と、複数のフィンとを備える。ダクトは、円形の孔を有する。プロペラは、孔内に配置される。プロペラは、ボスと、ボスから放射状に延びる複数の羽根とを含む。中心軸は、プロペラを回転可能に支持する。複数のフィンは、中心軸から放射状に延びている。複数のフィンは、中心軸とダクトとを接続する。フィンは、翼形状を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の孔を有するダクトと、
ボスと、前記ボスから放射状に延びる複数の羽根とを含み、前記孔内に配置されるプロペラと、
前記プロペラを回転可能に支持する中心軸と、
前記中心軸から放射状に延び、前記中心軸と前記ダクトとを接続する複数のフィンと、
を備え、
前記フィンは、翼形状を有する、
船外機。
【請求項2】
前記フィンは、前記羽根からの旋回流が前記フィンを押す力により前方へ向かう推力を前記フィンに生じさせる翼型を有する、
請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記フィンは、前記羽根よりも後方に位置する、
請求項1に記載の船外機。
【請求項4】
前記フィンの負圧側の表面と前記羽根の負圧側の表面とは、互いに反対方向を向いて配置される、
請求項1に記載の船外機。
【請求項5】
前記フィンの数と前記羽根の数との一方は奇数であり、他方は偶数である、
請求項1に記載の船外機。
【請求項6】
前記ダクトは、ステータコイルを含み、
前記プロペラは、永久磁石を含む、
請求項1に記載の船外機。
【請求項7】
前記フィンのピッチ角は、4度以下、且つ-7度以上である。
請求項1に記載の船外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
船外機は、プロペラを備えており、プロペラを回転させることで、船舶を航行させる推進力を発生させる。例えば、特許文献1の船外機は、ダクトとプロペラとを備えている。ダクトは、円形の孔を有している。プロペラは、孔内に配置されている。プロペラは、流体軸受けを介して、ダクトに支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-244993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の船外機において、流体軸受けを介さずに、中心軸を介してプロペラをダクトに支持させる場合、複数のフィンを介して中心軸をダクトに接続することで、プロペラの支持剛性を向上させることができる。しかし、その場合、フィンが、プロペラの後流に干渉することで、プロペラの回転に対して抵抗が発生する。それにより、船外機の推進性能が低下してしまう。本開示の目的は、プロペラの支持剛性を向上させると共に、船外機の推進性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る船外機は、ダクトと、プロペラと、中心軸と、複数のフィンとを備える。ダクトは、円形の孔を有する。プロペラは、孔内に配置される。プロペラは、ボスと、ボスから放射状に延びる複数の羽根とを含む。中心軸は、プロペラを回転可能に支持する。複数のフィンは、中心軸から放射状に延びている。複数のフィンは、中心軸とダクトとを接続する。フィンは、翼形状を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る船外機では、複数のフィンが、中心軸とダクトとを接続している。そのため、プロペラの支持剛性を向上させることができる。また、複数のフィンは、翼形状を有している。そのため、プロペラからの旋回流による力を、フィンによって、船外機を推進させる力として回収することができる。それにより、船外機の推進性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】船外機の側面図である。
図2】船外機の背面図である。
図3】駆動ユニットの斜視図である。
図4】駆動ユニットの分解図である。
図5】駆動ユニットの構成を示す模式図である。
図6】羽根とフィンとの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態にかかる船外機について説明する。図1は、実施形態に係る船外機1の側面図である。図2は、船外機1の背面図である。図1に示すように、船外機1は、船舶100の船尾に取り付けられる。船外機1は、ブラケット2と船外機本体3とを備えている。ブラケット2は、船舶100に取り付けられる。船外機1は、ブラケット2を介して船舶100に取り付けられる。船外機本体3は、ブラケット2に支持される。
【0009】
船外機本体3は、ベース11と、カウル12と、アッパハウジング13と、駆動ユニット15とを含む。ベース11は、ブラケット2に接続される。カウル12は、ベース11の上方に配置されている。カウル12は、ベース11に取り付けられる。アッパハウジング13は、ベース11の下方に配置されている。アッパハウジング13は、ベース11から下方に延びている。駆動ユニット15は、アッパハウジング13の下方に配置されている。駆動ユニット15は、船舶100を推進させるスラストを発生させる。
【0010】
駆動ユニット15は、ロアハウジング14とプロペラ16とを含む。ロアハウジング14は、アッパハウジング13の下方に配置されている。プロペラ16は、ロアハウジング14内に配置されている。
【0011】
図3は、駆動ユニット15の斜視図である。図4は、駆動ユニット15の分解図である。図3及び図4に示すように、ロアハウジング14は、ダクト21とダクトキャップ22とを含む。ダクト21は、筒状の形状を有している。ダクト21は、ダクトリング23と、中心軸24と、複数のフィン25とを含む。なお、図面においては、複数のフィン25の一部のみに符号25が付されており、他のフィン25の符号は省略されている。
【0012】
ダクトリング23は、筒状の形状を有している。ダクトリング23は、円形の孔230を含む。図4に示すように、ダクトリング23は、第1内周面31と、第2内周面32と、段部33とを含む。第2内周面32は、第1内周面31の前方に位置している。第2内周面32の内径は、第1内周面31の外形よりも大きい。段部33は、第1内周面31と第2内周面32との間に位置している。中心軸24は、ダクトリング23の中心に配置されている。中心軸24は、筒状の形状を有している。中心軸24の背面は、曲面状の形状を有している。中心軸24は、プロペラ16を回転可能に支持する。
【0013】
複数のフィン25と中心軸24とは、ダクトリング23の孔230内に配置されている。複数のフィン25は、中心軸24から放射状に延びている。複数のフィン25は、中心軸24とダクトリング23とを接続する。複数のフィン25は、第1内周面31に接続されている。本実施形態において、フィン25の数は、3つである。ただし、フィン25の数は、3つより少なくてもよく、或いは3つより多くてもよい。
【0014】
プロペラ16は、ダクトリング23の孔230内に配置されている。プロペラ16は、フィン25の前方に配置されている。プロペラ16は、ボス34と、複数の羽根35と、ロータ36とを含む。ボス34は、筒状の形状を有している。ボス34は、ロータ36の中心に配置されている。ボス34と複数の羽根35とは、ロータ36の径方向内側に配置されている。ボス34は、ダクト21の中心軸24に回転可能に支持される。複数の羽根35は、ボス34から放射状に延びている。複数の羽根35は、ボス34とロータ36とに接続されている。なお、図面においては、複数の羽根35の一部のみに符号35が付されており、他の羽根35の符号は省略されている。
【0015】
羽根35の数は、フィン25の数と異なる。フィン25の数は奇数であり、羽根35の数は偶数である。本実施形態において、羽根35の数は、4つである。しかし、羽根35の数は、4つに限らず、4つより少なくてもよい、或いは4つより多くてもよい。ロータ36は、リング状の形状を有している。ロータ36の外径は、第1内周面31の内径よりも大きい。ロータ36の外径は、第2内周面32の内径よりも小さい。従って、ロータ36の外周面は、第2内周面32に対して隙間をおいて配置される。ロータ36は、段部33の前方に配置されている。ロータ36は、段部33とダクトキャップ22との間に配置されている。
【0016】
ダクトキャップ22は、ダクト21に取り付けられる。ダクトキャップ22は、リング状の形状を有している。ダクトキャップ22は、プロペラ16の前方に配置される。ダクトキャップ22の内径は、ロータ36の外径よりも小さい。第1内周面31の内径と、ロータ36の内径と、ダクトキャップ22の内径とは、略同じである。すなわち、第1内周面31と、ロータ36の内周面と、ダクトキャップ22の内周面とは、概ね面一に配置されている。ダクトキャップ22により、プロペラ16が抜け止めされる。
【0017】
図5は、駆動ユニット15の構成を示す模式図である。図5に示すように、プロペラ16は、複数の永久磁石38を含む。複数の永久磁石38は、ロータ36に配置されている。複数の永久磁石38は、ロータ36の周方向に沿って配置されている。なお、図5においては、複数の永久磁石38の1つのみに符号38が付されており、他の永久磁石38の符号は省略されている。
【0018】
ダクト21は、複数のステータコイル39を含む。複数のステータコイル39は、ダクトリング23に配置されている。複数のステータコイル39は、ダクトリング23の周方向に沿って配置されている。複数のステータコイル39に通電されることで、ロータ36を回転させる電磁力が発生する。それにより、プロペラ16が回転し、船舶100を推進させる。なお、図5においては、複数のステータコイル39の1つのみに符号39が付されており、他のステータコイル39の符号は省略されている。
【0019】
船舶100を前進させる方向にプロペラ16が回転すると、プロペラ16による水の旋回流が発生する。旋回流は、プロペラ16の羽根35から後方へ流れる。羽根35の後方にはフィン25が配置されている。そのため、フィン25は、旋回流による力を受ける。図6は、プロペラ16の羽根35およびフィン25の断面を示す図である。図6に示すように、フィン25は、翼形状を有する。
【0020】
フィン25には、羽根35からの旋回流によって、フィン25を押す力Lfが作用する。フィン25は、フィン25を押す力Lfを、前方へ向かう250に変換する翼型を有する。フィン25の負圧側の表面250と羽根35の負圧側の表面350とは、互いに反対方向を向いて配置される。
【0021】
フィン25のピッチ角は、前方へ向かう推力Fxが最大となるように設定されている。例えば、フィン25のピッチ角は、4度以下、-7度以上が好ましい。なお、図6に示されているピッチ角θは、マイナス方向のピッチ角θを示している。フィン25のコード長に対する最大キャンバーの割合は、前方へ向かう推力Fxが最大となるように設定されている。例えば、フィン25のコード長に対する最大キャンバーの割合は、5%以上、9%以下が好ましい。
【0022】
以上説明した本実施形態係る船外機1では、複数のフィン25が、中心軸24とダクトリング23とを接続している。そのため、プロペラ16の支持剛性を向上させることができる。また、複数のフィン25は、翼形状を有している。そのため、プロペラ16からの旋回流による力を、フィン25によって、船外機1を推進させる力として回収することができる。それにより、船外機1の推進性能を向上させることができる。
【0023】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0024】
船外機1の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、駆動ユニット15は、内燃エンジンを含んでもよい。すなわち、船外機1は、内燃エンジンの駆動力によってプロペラ16を回転させてもよい。内燃エンジンは、カウル12内に配置されてもよい。
【0025】
上記の実施形態では、フィン25の数は奇数であり、羽根35の数は偶数である。しかし、羽根35の数が奇数であり、フィン25の数が偶数であってもよい。フィン25は、プロペラ16の後方に限らず、プロペラ16の前方に配置されてもよい。その場合、船舶100を後進させるときに、プロペラ16からの旋回流による力を、フィン25によって、船外機1を推進させる力として回収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本開示によれば、プロペラの支持剛性を向上させると共に、船外機の推進性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0027】
16 プロペラ
23 ダクトリング
24 中心軸
25 フィン
34 ボス
35 羽根
38 永久磁石
39 ステータコイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6