(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186475
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】天井下地材の端部支持金具
(51)【国際特許分類】
E04B 9/22 20060101AFI20221208BHJP
E04B 9/30 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
E04B9/22 E
E04B9/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094717
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000121729
【氏名又は名称】奥地建産株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000174884
【氏名又は名称】三井ホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135437
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 哲三
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 諭
(72)【発明者】
【氏名】松本 英樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 渉
(72)【発明者】
【氏名】斧出 雄太
(57)【要約】
【課題】片側支持タイプの天井下地材の両端部を固定する端部支持金具を提供する。
【解決手段】金属製の長尺状の枠体からなり、当該枠体の長手方向の一側縁部が階上の床根太に固定される固定枠部と、この固定枠部から下方に起立する起立部と、この起立部から略水平方向に延長する天井板固定部と、この天井板固定部から床根太方向の上方に折曲する折曲部とから成る天井下地材の端部を支持する端部支持金具10である。この端部支持金具10は、梁部の上面に載置される載置部11と、この載置部11から略直角に下方に折曲する背面部12と、背面部12の両側に配置される側面部13と、前記天井下地材の天井固定部を載置する天井下地材載置部14とから成る。背面部12を梁部に螺着し、天井下地材の天井固定部を前記両側面部13の下縁部と天井下地材載置部14とによって挟持且つ保持される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の長尺状の枠体からなり、当該枠体の長手方向の一側縁部が階上の床根太に固定される固定枠部と、この固定枠部から下方に起立する起立部と、この起立部から略水平方向に延長する天井板固定部と、この天井板固定部から床根太方向の上方に折曲する折曲部とから成る天井下地材の端部を支持する端部支持金具であって、
この端部支持金具は、梁部の上面に載置される載置部と、この載置部から略直角に下方に折曲する背面部と、背面部の両側に配置される側面部と、前記天井下地材の天井固定部を載置する天井下地材載置部とから成り、
前記載置部が梁部に載置されると、前記背面部は梁部の側面部に接し、背面部の下方部分には固定用の螺子孔が設けられ、
これにより前記天井下地材の天井固定部が前記両側面部の下縁部と天井下地材載置部とによって挟持且つ保持されることを特徴とする天井下地材の端部支持金具。
【請求項2】
前記天井下地材載置部の上面と前記背面部との成す角度を90度未満としたことを特徴とする請求項1に記載の天井下地材の端部支持金具。
【請求項3】
前記天井下地材載置部を前記背面部の中央部を略矩形形状に手前側に切り起こして形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の天井下地材の端部支持金具。
【請求項4】
前記両側面部を前記背面部の両側部分を手前側に折曲して形成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の天井下地材の端部支持金具。
【請求項5】
前記両側面部の折曲部に補強用リブを1又は2以上設けたことを特徴とする請求項4に記載の天井下地材の端部支持金具。
【請求項6】
前記載置部の中央部に位置決め用の切欠又は刻印を設けたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の天井下地材の端部支持金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の天井部を構成する天井下地材の両端部を支持するための端部支持金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物の天井構造としては、天井面材(以下、「天井板」という。)を梁等の構造躯体から吊り下げて形成する吊天井や、天井板が上部の構造躯体に直接固定される直天井構造が知られている。
【0003】
吊天井の場合には、上階の振動が階下に伝達することが防止される。
他方、直天井構造では、天井構造の高さを小さくすることはできるが、2階の床根太に1階の天井板を直接固定するために、2階の振動が階下に直接伝達してしまう。
【0004】
下記特許文献に記載の天井構造は、階上の振動の伝達を防止すべく、床根太と天井板の間に金属製枠体からなる天井下地材を利用し、この天井下地材の構造を改良したものである。
【0005】
即ち、天井板の固定構造であって、その天井下地材は、ビスを介して床根太に固定される第一固定板部と、第一固定板部に対して略平行に形成され、ビスを介して天井板が固定される第二固定板部と、第一固定板部と第二固定板部の一端側とを連結する連結板部と、第二固定板部の他端側から床根太側に立ち上がる立上り部とを有し、立上り部は、床根太に近接する位置まで延設されていることを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5は、上記天井下地材を床根太に複数略平行に固定した状態を示す説明図であり、
図6は、上記天井下地材の一方端部の拡大説明図である。
上記従来の天井下地材50は、略平行に設置された床根太40、40、…に対して直交するように複数列に配設され、これらの天井下地材50の底面である第二固定部50t(
図6)に天井板が螺着される。
【0008】
図6から解る通り、上記金属製枠体から成る天井下地材50は、長尺木材を適宜寸法に切断した木材42により梁部41等に取り付けられており、この所定寸法の木材42に前記天井下地材50の両端部をビス等で固定していた。
この両端部の固定においても、上記天井下地材50は、片持ち式にその第1固定部50dの一側縁部でのみ上記木材42に螺着されていた。
【0009】
そこで、本発明においては、金属製の上記天井下地材の端部を上記木材による固定ではなく、金属製の金具によって簡単に取り付け、固定することができるようにすることをその第一の課題とする。
【0010】
更には、当該金具によって天井下地材の取付位置決めをも容易に行えるようにすること、天井下地材の仮置き又は仮止め効果をも発揮させること、取り付け固定も容易であること、その金具自体の製造も容易であること等により、金具自体の製造容易性、当該金具の取り扱いの容易性又は作業性の向上をその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明の第1のものは、金属製の長尺状の枠体からなり、当該枠体の長手方向の一側縁部が階上の床根太に固定される固定枠部と、この固定枠部から下方に起立する起立部と、この起立部から略水平方向に延長する天井板固定部と、この天井板固定部から床根太方向の上方に折曲する折曲部とから成る天井下地材の端部を支持する端部支持金具であって、
この端部支持金具は、梁部の上面に載置される載置部と、この載置部から略直角に下方に折曲する背面部と、背面部の両側に配置される側面部と、前記天井下地材の天井固定部を載置する天井下地材載置部とから成り、
前記載置部が梁部に載置されると、前記背面部は梁部の側面部に接し、背面部の下方部分には固定用の螺子孔が設けられ、
これにより前記天井下地材の天井固定部が前記両側面部の下縁部と天井下地材載置部とによって挟持且つ保持されることを特徴とする天井下地材の端部支持金具である。
【0012】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、前記天井下地材載置部の上面と前記背面部との成す角度を90度未満としたことを特徴とする天井下地材の端部支持金具である。
【0013】
本発明の第3のものは、上記第1又は第2の発明において、前記天井下地材載置部を前記背面部の中央部を略矩形形状に手前側に切り起こして形成したことを特徴とする天井下地材の端部支持金具である。
【0014】
本発明の第4のものは、上記第1乃至第3のそれぞれの発明において、前記両側面部を前記背面部の両側部分を手前側に折曲して形成したことを特徴とする天井下地材の端部支持金具である。
【0015】
本発明の第5のものは、上記第4の発明において、前記両側面部の折曲部に補強用リブを1又は2以上設けたことを特徴とする天井下地材の端部支持金具である。
【0016】
本発明の第6のものは、上記それぞれの発明において、前記載置部の中央部に位置決め用の切欠又は刻印を設けたことを特徴とする天井下地材の端部支持金具である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1のものにおいては、その端部支持金具の両側縁部の下縁部と天井下地材載置部との間で、天井下地材の天井板固定部を挟持して保持することが容易に可能となる。
即ち、天井下地材の両端部を挟持して仮置きすることできる。
その後、この天井下地材の固定枠部を複数の床根太に順次容易に螺着することができることとなる。
【0018】
また、この端部支持金具では、天井下地材の天井板固定部の全体をその下から天井下地材載置部によって支持することができるために、天井下地材を片持ち式に固定する床根太固定部分と異なり、片持ち式支持による回転モーメント力が付加されないこととなる。
【0019】
本発明の第2のものにおいては、前記天井下地材載置部の上面と前記背面部との成す角度を90度未満にしたため、天井下地材載置部の前端縁部が支持金具の両側縁部の下縁部よりも上方に位置することとなり、両者の挟持がより強固となり、仮置き又は仮止め効果が向上する。
【0020】
本発明の第3のものにおいては、本件金具の製造方法をより容易となすものであり、前記天井下地材載置部を前記背面部の中央部を略矩形形状に手前側に切り起こして形成した
である。
【0021】
本発明の第4のものにおいては、上記第3の発明と同様に、本件金具の製法をより容易となすものであり、前記両側面部を前記背面部の両側部分を手前側に折曲して形成したものである。
【0022】
本発明の第5のものにおいては、本件金具の前記両側面部の折曲部に補強用リブを1又は2以上設けて、当該折曲部の強度を向上させたものである。
である。
【0023】
本発明の第6のものにおいては、本件金具の前記載置部の中央部に位置決め用の切欠又は刻印を設けたものであり、この切欠等により天井下地材の取付位置を容易に決定することができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る天井下地材の端部支持金具の一実施形態を図示しており、その(A)が平面図、その(B)が左側面図、その(C)が斜視図、その(D)が正面図である。
【
図2】上記実施形態に係る端部支持金具によって天井下地材の端部を支持している状態を示す説明図である。
【
図3】
図2に示した実施形態の反対側端部を上方から見た状態を示す拡大説明図である。
【
図4】上記実施形態に係る端部支持金具と天井下地材との組み付け状態を示す説明図である。
【
図5】従来の天井下地材を床根太に複数略平行に固定した状態を示す説明図である。
【
図6】従来の天井下地材の一方端部の拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面と共に本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る天井下地材の端部支持金具の一実施形態を図示しており、その(A)が平面図、その(B)が左側面図、その(C)が斜視図、その(D)が正面図である。
【0026】
本発明に係る端部支持金具10(以下、単に「支持金具」とも言う。)は、金属製板材を裁断し、適宜プレス加工を行うことにより製作される。
この支持金具10は、その上端部に位置する載置部11と、この載置部11と略直角に下方に折曲する背面部12と、この背面部12の両側で手前側に略直角に折曲する側面部13、13と、背面部12の略中央部を矩形形状に手前側に切り起こして形成した天井下地材載置部14とから構成される。
【0027】
背面部12の下方部分の中央には螺子を挿通させるために螺子孔15が穿設されている。
両側面部13,13の背面部12との折曲部には補強リブ13r、13rが設けられている。
また、載置部11の側縁部の中央部に位置決め用の切欠11kを設けている。
【0028】
天井板載置部14の上面と背面部12との成す角度は、90度未満にしており、即ち、
図1(B)から見て取れるように、天井板載置部14の先端部(図中右端部)が上方に少し傾斜した状態に形成されている。
天井下地材の天井固定部は、上記両側面部13の下縁部と天井下地材載置部14との間で挟持されるため、上記構成により堅固に挟持されることとなる。
天井下地材の天井固定部は
図1(B)中の矢印Yの部分に挟持される。
【0029】
以上の構成から成る端部支持金具10は、次図の
図2に示すように、梁部で天井下地材の端部を支持することができる。
【0030】
図2は、上記実施形態に係る支持金具によって天井下地材の端部を支持している状態を示す説明図である。
この図からよく解る通り、本発明に係る支持金具10は、梁部41で天井下地材50の端部を支持することができる。
【0031】
即ち、この支持金具10の載置部11を梁部41の角部の上面に載置し、その背面部12を前記梁部の角部の前面部に接合し、背面部12の下方部分に設けた螺子孔15を利用して螺子にて梁部41に固定することができる。
【0032】
支持金具10の載置部11には位置決め用の切欠11kが設けられているために、予め支持金具10の取り付け位置にマーキングを行い、そのマーク位置に前記切欠11kを合致させることにより所定の位置に支持金具10を取り付け固定することができる。
【0033】
この
図2から、本発明に係る支持金具10によって支持される天井下地材50の構成を明確に見て取ることができる。
当該天井下地材50は既に述べた通り、金属製の枠体から形成され、螺子孔50rを介して螺子により床根太に固定される第一固定板部(固定枠部50d)と、この第一固定板部(固定枠部50d)に対して略平行に形成され、螺子によって天井板が固定される第二固定板部(天井板固定部50t)と、第一固定板部(固定枠部50d)と第二固定板部(天井板固定部50t)の一端側とを連結する連結板部(起立部50k)と、第二固定板部(天井板固定部50t)の他端側から床根太側に立ち上がる立上り部(折曲部50s)とを有し、立ち上り部(折曲部50s)は、床根太に近接する位置まで延設されているものである。
【0034】
以上の構成中、折曲部50sの存在によって、この折曲部50sの上端縁部が床根太に当接できることにより、天井板固定部50tの
図2中の右回り回転モーメント力が抑止されるのである。
【0035】
他方、上記実施形態に係る端部支持金具10では、両側の側面部13、13の下縁部と天井下地材載置部14との挟持により上記回転モーメント力に対してほぼ完全に対抗することが可能となるのである。
【0036】
図3は、
図2に示した実施形態の反対側端部を上方から見た状態を示す拡大説明図である。
この
図3に示した図では天井下地材50の天井板固定部50tの下面に天井板60を螺子60rによって下方から螺着した状態を示している。
【0037】
このように天井下地材50の天井板固定部50tの端部は、その両側で端部固定金具10の両側の両側面部13、13の下縁部と天井板載置部14によって挟持され、保持されるのである。
【0038】
図4は上記実施形態に係る端部支持金具と天井下地材との組み付け状態を示す説明図である。
この図から良く解る通り、天井下地材50の天井固定部50tは、端部支持金具10の両側の側面部13、13と天井下地材載置部14との間で挟持され、保持されることとなる。
【0039】
端部支持金具10の背面部12の下方部分では螺子15rによって当該支持金具10が梁部41に螺着される。
このようにして天井下地材50はその両端部でこの支持金具10、10によって挟持・保持され、その後、天井下地材50の固定枠部50dを床根太に順次螺着して行くのである。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明においては以下の通り種々設計変更することができる。
【0041】
まず、支持金具の大きさ、各部のサイズは適宜必要に応じて設計変更することができる。
天井下地材載置部の形状も上記実施形態では略矩形形状としたが、これは背面部を切り起こして形成したため、このような形状となったが、異なる形状とすることもできる。
しかし、この天井下地材載置部は、その支持面積を大きくする必要上、矩形形状が最適であり、裁断・成形工程をも考慮してもこの形状が最適である。
【0042】
両側の側面部も、上記実施形態では側面視台形形状に形成しているが、その形状も略矩形形状であってもよいし、その他の形状でもよい。
上記実施形態では載置部の側縁部中央に切欠を設けたが、この切欠を設けずに、載置部の中央に刻印を形成することによって代えることができる。
【0043】
以上、本発明においては、簡易な構成により金属製板材から裁断とプレスにより容易に製作することができ、片持ち支持タイプの天井下地材の両端部を適切に挟持し、保持できる端部支持金具を提供することができたものである。
【符号の説明】
【0044】
10 天井下地材の端部支持金具
11 載置部
11k 切欠
12 背面部
13 側面部
13r 補強用リブ
14 天井下地材載置部
15 螺子孔
40 床根太
41 梁部
50 天井下地材
50d 固定枠部
50k 起立部
50t 天井板固定部
50s 折曲部
50r 螺子孔