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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186479
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】真空断熱パネル
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/065 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
F16L59/065
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094734
(22)【出願日】2021-06-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】592115940
【氏名又は名称】オータニ通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐田 智道
【テーマコード(参考)】
3H036
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB15
3H036AB23
3H036AB24
3H036AB28
3H036AC03
3H036AE07
(57)【要約】
【課題】良好な断熱性能を長期に亘って発揮できる真空断熱パネルを提供する。
【解決手段】真空断熱パネル1は、断熱性を有する芯材と、第1の金属パネルと、第2の金属パネル5とを含む。第2の金属パネル5の平板状部6の外表面5aには、4つの四角環状溝11,12,13,14が形成される。環状の四角環状溝11,12,13,14によって、第2の金属パネル5の平板状部6が、内側部分20と、第1の外側部分21と、第2の外側部分22と、第3の外側部分23と、第4の外側部分24とに区画される。環状の溶接部8に、第1の金属パネルの中央側に向かう引っ張り力が作用すると、外側部分21,22,23,24が第2の金属パネル5の周縁側に向けて放射状に移動し、かつ第1の金属パネルの中央側に向けて環状の溶接部8が移動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温領域で使用される真空断熱パネルであって、
一方主面および他方主面を有する芯材であって断熱性を有する芯材と、
前記芯材を収容する内部空間を有し、前記芯材を収容した状態で前記内部空間が真空に保たれる収容パネルとを含み、
前記収容パネルが、
前記低温領域に配置され、金属板を用いて形成されたパネルであって、前記芯材の前記一方主面を包囲する平面視矩形の第1の金属パネルと、
前記低温領域よりも高温の第2の低温領域に配置され、金属板を用いて形成されたパネルであって、前記芯材の前記他方主面を包囲する平面視矩形の第2の金属パネルと、
前記第1の金属パネルの周縁部と前記第2の金属パネルの周縁部とを溶接により接合する環状の溶接部とを含み、
前記第2の金属パネルの外表面および内表面の少なくとも一方には、前記第2の金属パネルの4つの辺に対向する直線状の4つの直線溝であって、前記第2の金属パネルの前記周縁部よりも中央側に隔てられた位置を当該周縁部に平行に延びる直線溝を有する四角環状溝が形成されている、真空断熱パネル。
【請求項2】
前記四角環状溝が、互いに大きさの異なる同心の複数の四角環状溝であって、互いに所定の間隔を隔てて形成された複数の四角環状溝を含む、請求項1に記載の真空断熱パネル。
【請求項3】
前記第1の金属パネルおよび前記第2の金属パネルが、互いに同じ材質および厚みを有する前記金属板を用いて形成されている、請求項1または2に記載の真空断熱パネル。
【請求項4】
前記溶接部に、前記第1の金属パネルの中央側に向かう引っ張り力が作用すると、前記第2の金属パネルにおける前記四角環状溝よりも周縁側の部分である外側部分が前記第2の金属パネルの周縁側に向けて放射状に移動し、かつ前記第1の金属パネルの中央側に向けて前記溶接部が移動する、請求項1~3のいずれか一項に記載の真空断熱パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、低温領域で使用される真空断熱パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内部空間を真空状態して気体による伝熱を零に近づけることにより、高い断熱性能を発揮する真空断熱パネルが知られている。従来から、この真空断熱パネルは、低温領域で使用されている。このような低温領域用の真空断熱パネルは、低温環境下での保冷を目的とするものであり、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機、保冷ボックス等に用いられる。
【0003】
このような真空断熱パネルは、板状の芯材と、芯材の両方の主面を覆う一対の板状のパネルとを備えている。一対の板状のパネルは、高い剛性を得るべく金属製であり、所定の板厚を有している。一対のパネルの間に形成される内部空間に芯材が収容された状態で、当該内部空間が真空に保たれる。一対のパネルが高い剛性を有しているので、内部空間を高真空にできる。内部を高真空にすることで、金属製のパネルを伝って移動する熱量の低減を図ることができる。これにより、真空断熱パネルが、高い断熱性能を発揮できる。一対の金属製のパネルの周縁部の全域が溶接により接合される。これにより、内部空間を真空に維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-228803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
真空断熱パネルを低温領域で使用する場合、その使用状態において、真空断熱パネルの2つの主面の温度は互いに異なるようになり、一方側の金属パネルの温度と、他方側の金属パネルの温度とが互いに異なるようになる。すなわち、一方側の金属パネルが低温領域に配置され、かつ他方側の金属パネルが、低温領域よりも高温の領域に配置されるようになる。
【0006】
この場合、低温領域に配置される金属パネルと、低温領域よりも高温の領域に配置される金属パネルとの間に、熱による金属の収縮量に差異が生じる。そのため、低温側に配置されるパネルの収縮量が大きくなる。一対の金属パネルの周縁部同士が互いに溶接されている状態で、低温側に配置されるパネルだけが大きく熱収縮すると、第1の金属パネルに歪が生じ、低温側に配置されるパネルに局所的な応力が発生し、当該パネルに歪が生じるおそれがある。その結果、低温側に配置されるパネルに応力が集中し、当該パネルに割れ等の損傷が生じるおそれがある。その場合、断熱性能を保つことができない。すなわち、真空断熱パネルの断熱性能を長期に亘って発揮できないおそれがある。
【0007】
一方、種々の分野において、極低温(-(マイナス)180℃以下)の保冷・冷凍技術が用いられている。この極低温の保冷・冷凍技術に、上記のような真空断熱パネルを用いることが検討されている。上記の種々の分野として、原子力、医療、プラント、輸送船舶、宇宙ロケット、磁気浮上列車、超電導技術等の分野を挙げることができる。
真空断熱パネルが使用される領域の温度が低ければ低いほど、一対の金属パネルの温度差が大きくなる。すなわち、真空断熱パネルを極低温領域において使用する場合に上記の問題が顕在化する。しかし、上記の問題は、極低温領域で使用される真空断熱パネルに限られず、低温領域で使用される真空断熱パネルに共通する課題である。
【0008】
そこで、この発明の目的は、良好な断熱性能を長期に亘って発揮できる真空断熱パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一実施形態は、低温領域で使用される真空断熱パネルであって、一方主面および他方主面を有する芯材であって断熱性を有する芯材と、前記芯材を収容する内部空間を有し、前記芯材を収容した状態で前記内部空間が真空に保たれる収容パネルとを含み、前記収容パネルが、前記低温領域に配置され、金属板を用いて形成されたパネルであって、前記芯材の前記一方主面を包囲する平面視矩形の第1の金属パネルと、前記低温領域よりも高温の第2の低温領域に配置され、金属板を用いて形成されたパネルであって、前記芯材の前記他方主面を包囲する平面視矩形の第2の金属パネルと、前記第1の金属パネルの周縁部と前記第2の金属パネルの周縁部とを溶接により接合する溶接部とを含み、前記第2の金属パネルの外表面および内表面の少なくとも一方には、前記第2の金属パネルの4つの辺に対向する直線状の4つの直線溝であって、前記第2の金属パネルの前記周縁部よりも中央側に隔てられた位置を当該周縁部に平行に延びる直線溝を有する四角環状溝が形成されている、真空断熱パネルを提供する。
【0010】
この構成によれば、第2の金属パネルの外表面および内表面の少なくとも一方に四角環状溝が形成されている。第2の金属パネルにおける四角環状溝の形成部位は、溝(四角環状溝)が形成されているために変形し易い。また、四角環状溝が環状であるので、四角環状溝によって、第2の金属パネルが、環状溝よりも中央側の部分と、環状溝よりも周縁側の部分とに仕切られる。これらにより、外側部分(四角環状溝よりも周縁側の部分)を、四角環状溝よりも中央側の部分に対して周縁側に移動し易くすることが可能である。
【0011】
第1の金属パネルが低温領域に配置され、かつ第2の金属パネルが低温領域よりも高温の第2の低温領域に配置される状態について検討する。この状態では、第1の金属パネルおよび第2の金属パネル間の温度差によって第1の金属パネルが熱収縮する。この熱収縮に伴って、環状の溶接部に、第1の金属パネルの中央側に向かう引っ張り力が作用する。外側部分が四角環状溝よりも中央側の部分に対して周縁側に移動し易い場合には、第1の金属パネルの中央側に向かう引っ張り力を受けて、外側部分が外方に向けて放射状に移動し、かつ第1の金属パネルの中央側に向けて環状の溶接部が移動することが可能である。この場合、第1の金属パネルが熱収縮した場合であっても、第1の金属パネルに大きな歪が生じることを抑制または防止できる。第1の金属パネルにおける局所的な応力の発生を抑制または防止できる結果、第1の金属パネルの耐久性の低下を抑制または防止できる。ゆえに、良好な耐久性を維持できる真空断熱パネルを提供できる。
【0012】
また、第2の金属パネルに形成される環状溝が、4つの辺に対向し、対応する周縁部に平行に延びる4つの直線溝を有する四角環状溝である。そのため、環状溝を、四角環状溝とは別の環状溝の態様(たとえば円形の環状溝)で設ける場合と比較して、変形後の第2の金属パネルの四隅に、応力が残留することを防止できる。
この発明の一実施形態では、前記四角環状溝が、互いに大きさの異なる同心の複数の四角環状溝であって、互いに所定の間隔を隔てて形成された複数の四角環状溝を含む。
【0013】
この構成によれば、第2の金属パネルに形成される四角環状溝が、互いに大きさの異なる同心の複数の四角環状溝である。そのため、第2の金属パネルの変形量をより一層大きく確保でき、これにより、第1の金属パネルにおける局所的な応力の発生をより効果的に抑制または防止できる。
また、複数の四角環状溝が互いに所定の間隔を隔てて形成されている。そのため、第2の金属パネルに四角環状溝を間隔をほとんど空けずに形成する場合と比較して、変形後の第2の金属パネルに応力が残留することをより一層防止できる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記第1の金属パネルおよび前記第2の金属パネルが、共通の材質および共通の厚みを有する前記金属板を用いて形成されている。
この構成によれば、第1の金属パネルおよび第2の金属パネルを、互いに同じの材質および厚みを有する金属板を用いて形成するので、これらを互いに異ならせる場合と比較して、コストダウンを図ることが可能である。
【0015】
この発明の一実施形態では、前記溶接部に、前記第1の金属パネルの中央側に向かう引っ張り力が作用すると、前記第2の金属パネルにおける前記四角環状溝よりも周縁側の部分である外側部分が前記第2の金属パネルの周縁側に向けて放射状に移動し、かつ前記第1の金属パネルの中央側に向けて前記溶接部が移動してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る真空断熱パネルの斜視図である。
図2図2は、前記真空断熱パネルの平面図である。
図3図3は、前記真空断熱パネルの底面図である。
図4図4は、前記真空断熱パネルの断面図である。
図5図5は、前記真空断熱パネルの製造工程を説明するための図である。
図6図6は、この発明の第1の変形例を説明するための断面図である。
図7図7は、この発明の第2の変形例を説明するための斜視図である。
図8図8は、この発明の第3の変形例を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る真空断熱パネル1の斜視図である。図2は、真空断熱パネル1の平面図である。図3は、真空断熱パネル1の底面図である。図4は、真空断熱パネル1の断面図である。
以下、図1図4を参照しながら、真空断熱パネル1について説明する。
【0018】
真空断熱パネル1は、低温領域、とくに酸素の沸点(約-180℃)以下の極低温領域で使用される断熱パネルである。真空断熱パネル1は、第1の主面1aおよび第2の主面1bを備えている。真空断熱パネル1を低温領域(極低温領域)に使用する場合、第1の主面1aを低温領域(極低温領域)に配置する。
真空断熱パネル1は、断熱性を有する芯材2と、芯材2を収容する内部空間3aを有する収容パネル3とを含む。
【0019】
芯材2は、たとえば板状である。芯材2は、平面視で矩形である。この実施形態では、芯材2は、平面視で略正方形である。芯材2は、互いに平行な一方主面2a(図4で示す下側の主面)および他方主面2b(図4で示す上側の主面)を備えている。一方主面2aおよび他方主面2bは、平坦面によって構成されている。芯材2は、耐冷性および断冷性(断熱性)に優れた材料を用いて形成されている。芯材2は、たとえばシリカ、ガラスウール、ロックウール、セラミックウール、アルミナ等の無機繊維を用いて形成されている。芯材2の材料になる無機繊維は、繊維状であってもよいし、粉末状であってもよい。芯材2は、無機繊維を高圧で圧縮することにより形成されていてもよい。図1図4の例では、シリカ粉末を圧縮して固形の矩形板状の芯材2が形成されている。芯材2の厚みが大きく、その結果、芯材2が厚板状をなしていてもよい。芯材2は、一方主面2aおよび他方主面2bを有していれば、板状でなくてもよい。
【0020】
収容パネル3は、平面視矩形(具体的には、平面視略正方形)の二枚の金属パネルを含む。二枚の金属パネルは、芯材2の一方主面2aを包囲する(覆う)第1の金属パネル4と、芯材2の他方主面2bを包囲する(覆う)第2の金属パネル5とを含む。第1の金属パネル4の外表面4aが、真空断熱パネル1の第1の主面1aをなす。第1の金属パネル4の内表面4bが、芯材2の一方主面2aに対向する。第2の金属パネル5の外表面5aが、真空断熱パネル1の第2の主面1bをなす。第2の金属パネル5の内表面5bが、芯材2の他方主面2bに対向する。
【0021】
第1の金属パネル4は、矩形の板状である。第1の金属パネル4は、略正方形状の金属板である。第1の金属パネル4の平面寸法は、X方向(第2の金属パネル5の互いに対向する一対の辺5dに沿う方向)の長さLXがたとえば531mmであり、Y方向(第2の金属パネル5の互いに対向する一対の辺5dに沿う方向)の長さLYがたとえば563.6mmである。第1の金属パネル4は、ステンレス材(たとえばSUS304L等)を用いて形成されている。第1の金属パネル4の厚みは、50μm~300μm(より具体的には、たとえば100μm~200μm)であることが好ましい。この実施形態では、第1の金属パネル4には、次に述べる第2の金属パネル5とは異なり、四角環状溝(四角環状溝11,12,13,14)は形成されない。
【0022】
第2の金属パネル5は、浅底の容器状である。第2の金属パネル5は、平面視矩形である。第2の金属パネル5は、平面視矩形の平板状部6と、四角円錐台状のテーパ部7と、第2の金属パネル5の周縁部5cの全周に形成されるフランジ部9とを含む。平板状部6およびテーパ部7によって、内部空間3aを区画するための容器状部が構成される。第2の金属パネル5の平面寸法は、第1の金属パネル4と同じである。第2の金属パネル5は、平板状の金属板をプレス加工することにより形成される。第2の金属パネル5は、ステンレス材(たとえばSUS304L等)を用いて形成されている。第2の金属パネル5の板厚tは、50μm~300μm(より具体的には、たとえば100μm~200μm)であることが好ましい。第2の金属パネル5の平板状部6には、四角環状溝(四角環状溝11,12,13,14)が形成されている。フランジ部9は後述するように、溶接部8のための領域として用いられる。
【0023】
第1の金属パネル4および第2の金属パネル5に用いられる金属板(後述する第1および第2の金属板104,105)は、同じ材質であり、同じ板厚を有している。金属パネル4,5の材質としてステンレス材を挙げることができるが、ステンレス材以外にも、金属パネル4,5の材質として、鉄、アルミ合金、銅等の金属を用いることができる。
収容パネル3は、第1の金属パネル4の周縁部4cと第2の金属パネル5の周縁部5cとを溶接(たとえばシーム溶接)により接合する溶接部8をさらに含む。
【0024】
溶接部8は、第1の金属パネル4の周縁部4cおよび第2の金属パネル5の周縁部5cの周方向の全域に亘って形成されており、四角環状である。溶接部8は、4つの周縁部4c,5cに沿っている。すなわち、溶接部8は、直線状の4つの直線溶接部を含む。4つの直線溶接部は、Y方向に対向する一対の直線溶接部8aと、X方向に対向する一対の直線溶接部8bとを含む。直線溶接部8a,8bの溶接幅は、たとえば数百μm~数mmである。溶接部8によって、第1の金属パネル4の周縁部4cと第2の金属パネル5の周縁部5cとの間が密封される。
【0025】
この実施形態では、第1の金属パネル4の周縁部4cと第2の金属パネル5のフランジ部9とが溶接により接合されている。溶接部8の周囲の部分は、金属パネル4,5の周縁部4c,5cによって構成されており、伝熱度が高い。そのため、溶接部8の周囲の部分は、断熱材としての機能は弱い。溶接部8の周囲の部分は、第1の金属パネル4側に折り返されて折り返し部10を構成している。溶接部8の周囲の部分は、X方向およびY方向にそれぞれ折り返されている。
【0026】
第2の金属パネル5の板厚が大きいため、第2の金属パネル5の剛性が比較的高い。そのため第2の金属パネル5は、自由状態で、容器状を保持している。内部空間3aが略真空に保たれた状態でも、第2の金属パネル5は容器状を保持している。
真空断熱パネル1の収容パネル3の内部空間3aは、芯材2を収容した状態で略真空に保たれている。後述するように、内部空間3aに芯材2を収容した後、収容パネル3を構成する第1の金属パネル4の周縁部4cと第2の金属パネル5の周縁部5c同士とを互いに溶接によって密封した状態で真空引きが行われる。これにより、芯材2を収容する内部空間3aが略真空に保たれる。この状態では、第1の金属パネル4と第2の金属パネル5との間で対流や輻射によっては熱が伝播しない。芯材2が断熱性能を有することと、内部空間3aが略真空に保たれることとにより、真空断熱パネル1が高い断熱性能を発揮するようになる。
【0027】
なお、真空断熱パネル1の芯材2として、シリカ以外の無機繊維(ガラスウール、セラミックウール等)を用いる場合、芯材2に併せて吸着剤(図示しない)を内部空間3aに収容することが好ましい。この吸着剤は、芯材2および金属パネル4,5の内壁から発生する水分や放出ガスを吸着するためのものである。この吸着剤として、ゼオライト、アルミナ等が用いられる。
【0028】
図1図2および図4に示すように、第2の金属パネル5の平板状部6の外表面5aには、四角環状溝が形成されている。この四角環状溝は、互いに大きさの異なる4つの四角環状溝11,12,13,14を含む。
複数の環状溝は、最も内側の矩形の第1の四角環状溝11と、第1の四角環状溝11を包囲する矩形の第2の四角環状溝12と、第2の四角環状溝12を包囲する矩形の第3の四角環状溝13と、矩形の第3の四角環状溝13を包囲する矩形の第4の四角環状溝14とを備えている。4つの四角環状溝11,12,13,14は、矩形状の平板状部6の中心部を中心として同心に形成されている。
【0029】
第1の四角環状溝11は、両端を有する直線状の4つの直線溝16を含む。4つの直線溝16は、それぞれ第2の金属パネル5の4つの辺5dに平行に延びている。4つの直線溝16の端部同士が円弧状部を介して接続されることにより、矩形の第1の四角環状溝11が形成されている。第1の四角環状溝11のX方向に対向する一対の直線溝16同士の間隔WX1は、第1の四角環状溝11のY方向に対向する一対の直線溝16同士の間隔WY1と同等か僅かに小さい。
【0030】
第1の四角環状溝11はV溝である。第1の四角環状溝11の溝深さD1は、第2の金属パネル5の板厚tよりも大きくかつ板厚tの10倍よりも小さい。第1の四角環状溝11の溝深さD1は、第1の四角環状溝11の溝幅W1よりも小さい。第1の四角環状溝11の溝深さD1が第2の金属パネル5の板厚tよりも大きいので、第2の金属パネル5の内表面5bには、第1の四角環状溝11の形成部位に先尖状の凸部25が形成される。第1の四角環状溝11の溝幅W1は、第1の四角環状溝11の周囲の間隔WX1,WY1,WX2,WY2よりも小さい。第1の四角環状溝11の溝深さD1および溝幅W1は、その全周において同じである。
【0031】
第2の四角環状溝12は、両端を有する直線状の4つの直線溝17を含む。4つの直線溝17は、それぞれ第2の金属パネル5の4つの辺5dに平行に延びている。4つの直線溝17の端部同士が円弧状部を介して接続されることにより、矩形の第2の四角環状溝12が形成されている。第2の四角環状溝12は、その内側に位置する第1の四角環状溝11と、X方向に関して間隔WX2を介して隔てられている。第2の四角環状溝12は、第1の四角環状溝11と、Y方向に関して間隔WY2を介して隔てられている。
【0032】
第2の四角環状溝12はV溝である。第2の四角環状溝12の溝深さD2は、第2の金属パネル5の板厚tよりも大きくかつ板厚tの10倍よりも小さい。第2の四角環状溝12の溝深さD2は、第2の四角環状溝12の溝幅W2よりも小さい。第2の四角環状溝12の溝深さD2が第2の金属パネル5の板厚tよりも大きいので、第2の金属パネル5の内表面5bには、第2の四角環状溝12の形成部位に先尖状の凸部25が形成される。第2の四角環状溝12の溝幅W2は、第2の四角環状溝12の周囲の間隔WX2,WY2,WX3,WY3よりも小さい。第2の四角環状溝12の溝深さD2および溝幅W2は、その全周において同じである。
【0033】
第3の四角環状溝13は、両端を有する直線状の4つの直線溝18を含む。4つの直線溝18は、それぞれ第2の金属パネル5の4つの辺5dに平行に延びている。4つの直線溝18の端部同士が円弧状部を介して接続されることにより、矩形の第3の四角環状溝13が形成されている。第3の四角環状溝13は、その内側に位置する第2の四角環状溝12と、X方向に関して間隔WX3を介して隔てられている。第3の四角環状溝13は、第2の四角環状溝12と、Y方向に関して間隔WY3を介して隔てられている。
【0034】
第3の四角環状溝13はV溝である。第3の四角環状溝13の溝深さD3は、第2の金属パネル5の板厚tよりも大きくかつ板厚tの10倍よりも小さい。第3の四角環状溝13の溝深さD3は、第3の四角環状溝13の溝幅W3よりも小さい。第3の四角環状溝13の溝深さD3が第2の金属パネル5の板厚tよりも大きいので、第2の金属パネル5の内表面5bには、第3の四角環状溝13の形成部位に先尖状の凸部25が形成される。第3の四角環状溝13の溝幅W3は、第3の四角環状溝13の周囲の間隔WX3,WY3,WX4,WY4よりも小さい。第3の四角環状溝13の溝深さD3および溝幅W3は、その全周において同じである。
【0035】
第4の四角環状溝14は、両端を有する直線状の4つの直線溝19を含む。4つの直線溝19は、それぞれ第2の金属パネル5の4つの辺5dに平行に延びている。4つの直線溝19の端部同士が円弧状部を介して接続されることにより、矩形の第4の四角環状溝14が形成されている。第4の四角環状溝14は、その内側に位置する第3の四角環状溝13と、X方向に関して間隔WX4を介して隔てられている。第4の四角環状溝14は、第3の四角環状溝13と、Y方向に関して間隔WY4を介して隔てられている。第4の四角環状溝14は、矩形状の平板状部6のX方向に対向する一対の辺からそれぞれ、間隔WX5を介して隔てられている。第4の四角環状溝14は、矩形状の平板状部6のY方向に対向する一対の辺からそれぞれ、間隔WY5を介して隔てられている。
【0036】
第4の四角環状溝14はV溝である。第4の四角環状溝14の溝深さD4は、第2の金属パネル5の板厚tよりも大きくかつ板厚tの10倍よりも小さい。第4の四角環状溝14の溝深さD4は、第4の四角環状溝14の溝幅W4よりも小さい。第4の四角環状溝14の溝深さD4が第2の金属パネル5の板厚tよりも大きいので、第2の金属パネル5の内表面5bには、第4の四角環状溝14の形成部位に先尖状の凸部25が形成される。第4の四角環状溝14の溝幅W4は、第4の四角環状溝14の周囲の間隔WX4,WY4よりも小さい。第4の四角環状溝14の溝幅W4は、第4の四角環状溝14の周囲の間隔WX4,WY4,WX5,WY5よりも小さい。
【0037】
この実施形態では、複数の四角環状溝11,12,13,14の溝深さD1,D2,D3,D4は、互いに同じであり、複数の四角環状溝11,12,13,14の溝幅W1,W2,W3,W4は、互いに同じである。
この実施形態では、複数の間隔WX2,WX3,WX4は、互いに同じであり、間隔WX1は間隔WX2の約2倍であり、間隔WX5は間隔WX4と同等である。また、複数の間隔WY2,WY3,WY4は、互いに同じであり、間隔WY1は間隔WY2の約2倍であり、間隔WY5は間隔WY4と同等である。
【0038】
第2の金属パネル5の平板状部6において、最も内側の第1の四角環状溝11の外側には、外側部分が形成されている。外側部分は、第1の外側部分21と、第2の外側部分22と、第3の外側部分23と、第4の外側部分24とを含む。第1の外側部分21は、第1の四角環状溝11と第2の四角環状溝12とによって区画された四角環状の部分である。第2の外側部分22は、第2の四角環状溝12と第3の四角環状溝13とによって区画された四角環状の部分である。第3の外側部分23は、第3の四角環状溝13と第4の四角環状溝14とによって区画された四角環状の部分である。第4の外側部分24は、平板状部6における第4の四角環状溝14の外側に形成された、四角環状の部分である。
【0039】
第2の金属パネル5における四角環状溝11,12,13,14の形成部位は、溝(四角環状溝11,12,13,14)の形成のために変形し易い。また、環状の四角環状溝11,12,13,14によって、第2の金属パネル5の平板状部6が、内側部分20と、第1の外側部分21と、第2の外側部分22と、第3の外側部分23と、第4の外側部分24とに区画される。これらにより、第1の外側部分21が内側部分20に対して外側に移動し易く、第2の外側部分22が第1の外側部分21に対して周縁側に移動し易い。また、第3の外側部分23が第2の外側部分22に対して外側に移動し易く、第4の外側部分24が第3の外側部分23に対して周縁側に移動し易い。すなわち、四角環状溝11,12,13,14によって区画された第1の外側部分21、第2の外側部分22、第3の外側部分23および第4の外側部分24は、それぞれ、内側部分20、第1の外側部分21、第2の外側部分22および第3の外側部分23に対して、周縁側に移動し易くなっている。
【0040】
真空断熱パネル1の製造工程について説明する。
図5は、真空断熱パネル1の製造工程を説明するための図である。
第1および第2の金属パネル4,5は、金属板からなる第1および第2の金属板104,105をそれぞれ用いて形成されている。第1の金属板104は所定の寸法に切断される。第2の金属板105も所定の寸法に切断される。切断後の第2の金属板105に対し、プレス加工が施され、このプレス加工により、平板状部6およびテーパ部7が形成され(すなわち、容器状部が形成され)、かつ四角環状溝11,12,13,14が形成される。平板状部6、テーパ部7、四角環状溝11,12,13,14は、一回のプレス加工により同時に形成される。
【0041】
そして、第1の金属板104の上に芯材2を載置し、第2の金属板105を、平板状部6およびテーパ部7からなる容器状部の開口部を下方に向けた状態で、第2の金属板105および芯材2の上から被せる。これにより、第1の金属板104と第2の金属板105とが重なり合う。そして、第1の金属板104と第2の金属板105との間に内部空間(内部空間3a)が区画され、その内部空間に芯材2が収容された状態になる。
【0042】
次いで、重なり合っている第1および第2の金属板104,105に対し第1の溶接工程が施される。第1の溶接工程において、シーム溶接により、直線溶接部8aと、一対の直線溶接部8bと、平板状部6およびテーパ部7を挟んでY方向に対向する直線溶接部8cとが形成される。図5(a)には、第1の溶接工程後の第1および第2の金属板104,105を示す。
【0043】
次いで、第1の溶接工程後の第1および第2の金属板104,105の内部空間に対し、真空引き用の小穴109を介して真空引きが行われる。
芯材2の材料として無機繊維を圧縮したものを用いているので、真空引きによっても、芯材2の体積はほとんど減少しない。また、第2の金属パネル5の元の素材である第2の金属板105の剛性が比較的高いため、内部空間(内部空間3aに相当)が略真空に保たれた状態でも容器状を保持できる。しかし、真空引きにより、第1の金属板104(第1の金属パネル4)および第2の金属板105(第2の金属パネル5)がそれぞれ芯材2側に若干変形し、第1の金属パネル4の内表面4bおよび第2の金属パネル5の平板状部6の内表面5bが、それぞれ芯材2の一方主面2aおよび他方主面2bに当接(あるいはより接近)した状態となる。しかし、真空引き後も、四角環状溝11,12,13,14の形体にほとんど変化はない。真空引き後は、小穴109が封止される。この封止には、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が用いられてもよいし、ロウ付けの手法が用いられてもよい。
【0044】
真空引きの後、第1および第2の金属板104,105に対し、第2の溶接工程が実行される。第2の溶接工程では、シーム溶接により、直線溶接部8cよりも中央寄りに、直線溶接部8a(図5(b)に示す下側の直線溶接部8a)が形成される。これにより、内部空間3aが略真空に保たれるようになる。
図5(b)には、第2の溶接工程後の第1および第2の金属板104,105を示す。
【0045】
次いで、切断工程が実行される。第1および第2の溶接工程時には、第1および第2の金属板104,105の周囲に所定幅の周縁部が溶接代として必要であったが、その周縁部が、小穴109が形成されている部分を含めて切断される。図5(c)には、切断工程後の第1および第2の金属板104,105を示す。切断工程後には、第1および第2の金属板104,105の外郭が矩形状に整形され、かつ、第1および第2の金属板104,105の四隅に矩形状の切り欠き107が形成される。図5(c)に示す状態において、第1および第2の金属板104,105の4つの辺を、4つの切り欠き107のうち互いに隣接する切り欠き107の交点同士を結ぶ直線上を境界として第1の金属板104側に折り返すことにより、折り返し部10が形成される。これにより、内部空間3aが略真空に保たれた真空断熱パネル1を得ることができる。
【0046】
図4に示すように、真空断熱パネル1を低温領域31に使用する場合、第1の主面1aを低温領域31に配置する。この場合、真空断熱パネル1の断熱効果により、第1の主面1aとは反対側の第2の主面1bが、低温領域31よりも高温の第2の低温領域32に配置される。低温領域31がたとえば約-250℃の極低温領域の場合、第2の低温領域32がたとえば約-150℃である。
【0047】
この状態では、第1の金属パネル4および第2の金属パネル5間の温度差により、第1の金属パネル4が熱収縮する。この熱収縮に伴って、第1の金属パネル4の周縁部4cに、第1の金属パネル4の中央側に向かう引っ張り力が作用する。第1の金属パネル4の周縁部4cと第2の金属パネル5の周縁部5cとが互いに溶接されているため、第1の金属パネル4の周縁部4cに、第1の金属パネル4の中央側に向かう引っ張り力が作用すると、溶接部8を介して、第2の金属パネル5の第4の外側部分24に、第2の金属パネル5の周縁側に向かう引っ張り力が作用する。
【0048】
前述のように、四角環状溝11,12,13,14によって区画された第1の外側部分21、第2の外側部分22、第3の外側部分23および第4の外側部分24は、それぞれ、内側部分20、第1の外側部分21、第2の外側部分22および第3の外側部分23に対して、第2の金属パネル5の周縁側に移動し易くなっている。そのため、第2の金属パネル5の第4の外側部分24に、第2の金属パネル5の周縁側に向かう引っ張り力が作用すると、第1の外側部分21、第2の外側部分22、第3の外側部分23および第4の外側部分24が、それぞれ、第2の金属パネル5の周縁側に向けて放射状に移動し、かつ第1の金属パネル4の中央側に向けて環状の溶接部8が移動する。
【0049】
以上によりこの実施形態によれば、四角環状溝11,12,13,14によって区画された第1の外側部分21、第2の外側部分22、第3の外側部分23および第4の外側部分24は、それぞれ、内側部分20、第1の外側部分21、第2の外側部分22および第3の外側部分23に対して、第2の金属パネル5の周縁側に移動し易くなっている。そのため、第1の金属パネル4および第2の金属パネル5間の温度差によって第1の金属パネル4が熱収縮し、環状の溶接部8に、第1の金属パネル4の中央側に向かう引っ張り力が作用したとき、この熱収縮に伴う引っ張り力を受けて、第1の外側部分21、第2の外側部分22、第3の外側部分23、第4の外側部分24が第2の金属パネル5の周縁側に向けて放射状に移動し、かつ第1の金属パネル4の中央側に向けて環状の溶接部8が移動する。すなわち、第1の金属パネル4の熱収縮に伴って、第1の金属パネル4の周縁部4cが第1の金属パネル4の中央側に向けて移動可能である。これにより、第1の金属パネル4が熱収縮した場合であっても、第1の金属パネル4に大きな歪が生じることを抑制または防止できる。第1の金属パネル4における局所的な応力の発生を抑制または防止できる結果、第1の金属パネル4の耐久性の低下を抑制または防止できる。ゆえに、良好な耐久性を維持できる真空断熱パネル1を提供できる。
【0050】
また、第2の金属パネル5に形成されている環状溝が、四角環状溝11,12,13,14である。個々の四角環状溝11,12,13,14は、第2の金属パネル5の4つの辺5dに対向し、対応する辺5dに平行に延びる4つの直線溝16,17,18,19を有している。そのため、第2の金属パネル5に形成される環状溝を、四角環状溝11,12,13,14とは別の環状溝の態様(たとえば円形の環状溝)で設ける場合と比較して、変形後の第2の金属パネル5の四隅に、応力が残留することを防止できる。
【0051】
また、第2の金属パネル5に形成される四角環状溝が、互いに大きさの異なる同心の複数の四角環状溝11,12,13,14である。これらの四角環状溝11,12,13,14が互いに間隔を隔てて形成されているので、これら複数の四角環状溝11,12,13,14を間隔をほとんど空けずに形成する場合と比較して、外側部分21,22,23,24を放射状に均等に変形させることができ、これにより、変形後の第2の金属パネル5に応力が残留することを防止できる。
【0052】
また、四角環状溝11,12,13,14の溝深さD1,D2,D3,D4が、四角環状溝11,12,13,14の周囲の間隔WX1,WY1,WX2,WY2,WX3,WY3,WX4,WY4,WX5,WY5よりも十分に小さい。すなわち、間隔WX1,WY1,WX2,WY2,WX3,WY3,WX4,WY4,WX5,WY5が、溝深さD1,D2,D3,D4よりも十分に大きい。そのため、第2の金属パネル5の変形量を所定の範囲内に抑えることができる。これにより、第2の金属パネル5の変形量が大きくなる過ぎる結果、第2の金属パネル5に応力が残留してしまうことを防止できる。
【0053】
また、第1の金属パネル4および第2の金属パネル5を、互いに同じの材質および厚みを有する金属板を用いて形成する。そのため、これらを互いに異ならせる場合と比較して、コストダウンを図ることが可能である。
また、四角環状溝11,12,13,14の溝深さD1,D2,D3,D4が、第2の金属パネル5の板厚tよりも大きくかつ板厚tの10倍よりも小さい。四角環状溝11,12,13,14の溝深さD1,D2,D3,D4が第2の金属パネル5の板厚tよりも大きいので、四角環状溝11,12,13,14の形成部位における第2の金属パネル5の変形量を大きく確保できる。そのため第1の金属パネル4における局所的な応力の発生をより一層抑制または防止できる。また、四角環状溝11,12,13,14の溝深さD1,D2,D3,D4が第2の金属パネル5の板厚tの10倍よりも小さいので、第2の金属パネル5の内表面5bにおける凸部25の突出量が大きくなり過ぎない。この場合、内部空間3aでの芯材2の収容に悪影響を与えることを抑制できる。さらに、四角環状溝11,12,13,14の溝深さD1,D2,D3,D4がそれぞれ溝幅W1,W2,W3,W4よりも小さいので、この観点からも、第2の金属パネル5の内表面5bにおける凸部25の突出量が大きくなり過ぎないから、内部空間3aでの芯材2の収容に悪影響を与えることを抑制できる。
【0054】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。
たとえば、図6に示すように、四角環状溝11,12,13,14の溝深さD1,D2,D3,D4が、第2の金属パネル5の板厚tよりも小さくてもよい。この場合、図6に示すように第2の金属パネル5の平板状部6の内表面5bに凸部25(図4参照)が形成されない。この場合、四角環状溝11,12,13,14の形成のために、必ずしも金型が雄型、雌型の合計2つ必要ではなく、1つの金型で四角環状溝11,12,13,14を形成することも可能である。
【0055】
前述の実施形態において、複数の四角環状溝11,12,13,14の溝深さD1,D2,D3,D4が互いに同じであるとしたが、少なくとも一つの溝深さD1,D2,D3,D4が他の溝深さと異なっていてもよい。また、個々の四角環状溝11,12,13,14を構成する直線溝16,17,18,19の溝深さについて、同じ四角環状溝を構成する複数の直線溝のうち少なくとも一つの直線溝の溝深さが、他の直線溝の溝深さと異なっていてもよい。
【0056】
また、複数の四角環状溝11,12,13,14の溝幅W1,W2,W3,W4が互いに同じであるとしたが、少なくとも一つの溝幅W1,W2,W3,W4が他の溝幅と異なっていてもよい。また、個々の四角環状溝11,12,13,14を構成する直線溝16,17,18,19の溝幅について、同じ四角環状溝を構成する複数の直線溝のうち少なくとも一つの直線溝の溝幅が、他の直線溝の溝幅と異なっていてもよい。
【0057】
また、複数の間隔WX2,WX3,WX4の少なくとも一つが、他と異なっていてもよい。間隔WX1は、間隔WX2の約2倍以外の寸法であってもよい。間隔WX5が間隔WX4と異なっていてもよい。
また、複数の間隔WY2,WY3,WY4の少なくとも一つが、他と異なっていてもよい。間隔WY1は、間隔WY2の約2倍以外の寸法であってもよい。間隔WY5が間隔WY4と異なっていてもよい。
【0058】
また、四角環状溝11,12,13,14の少なくとも一つがV溝でなく、他の断面形状を有していてもよい。この他の断面形状は、たとえば半円、U字状、矩形状等である。
また、折り返し部10は、第1の金属パネル4側でなく第2の金属パネル5側に折り返されていてもよい。また、切り欠き(切り欠き107に相当)を設けない金属板104,105の周縁部を折り返すことにより、折り返し部10を構成してもよい。また、折り返し部10に相当する部分を切り落とすことにより折り返し部10を廃止してもよい。
【0059】
また、四角環状溝11,12,13,14の少なくとも一つを金属パネル5の外表面5aではなく、第2の金属パネル5の内表面5bに形成してもよい。
また、第2の金属パネル5だけでなく、第1の金属パネル4も容器状としてもよい。すなわち、第1の金属パネル4が、平板状部(平板状部6に相当)と、テーパ部(テーパ部7に相当)と、フランジ部(フランジ部9に相当)とを含む構成であってもよい。この場合、第1の金属パネル4のフランジ部が第2の金属パネル5のフランジ部9と溶接により接合される。
【0060】
前述の実施形態では、第2の金属パネル5に、4つの四角環状溝11,12,13,14が形成されている場合を例に挙げたが、四角環状溝の個数は、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。金属パネル5に形成される四角環状溝が複数である場合は、同心の複数の四角環状溝であることが好ましいが、同心でなくてもよい。
四角環状溝の個数は複数であることが好ましいが、図7に示すように1つの四角環状溝(たとえば四角環状溝14)のみが形成されてもよい。この場合、第4の四角環状溝14の周縁側の外側部分(第4の外側部分24)が、第4の四角環状溝14よりも中央側の内側部分20Aに対し、第2の金属パネル5の周縁側に放射状に移動可能である。
【0061】
また、真空断熱パネル1が、平面視略正方形であるとして説明したが、図8に示すように、真空断熱パネル1が平面視長方形であってもよい。
また、四角環状溝11,12,13,14を第2の金属パネル5だけでなく、第1の金属パネル4に形成してもよい。この場合、第1の金属パネル4に形成される四角環状溝は、第2の金属パネル5に形成される四角環状溝11,12,13,14と同じ諸元を有していてもよいが、個数や寸法が、四角環状溝11,12,13,14と異なっていてもよい。
【0062】
以上、特許請求の範囲の記載内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 :真空断熱パネル
2 :芯材
2a :一方主面
2b :他方主面
3 :収容パネル
3a :内部空間
4 :第1の金属パネル
4c :周縁部
5 :第2の金属パネル
5a :外表面
5b :内表面
5c :周縁部
5d :辺
8 :溶接部
11 :第1の四角環状溝
12 :第2の四角環状溝
13 :第3の四角環状溝
14 :第4の四角環状溝
16 :直線溝
17 :直線溝
18 :直線溝
19 :直線溝
21 :第1の外側部分
22 :第2の外側部分
23 :第3の外側部分
24 :第4の外側部分
31 :低温領域
32 :第2の低温領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温領域で使用される真空断熱パネルであって、
一方主面および他方主面を有する芯材であって断熱性を有する芯材と、
前記芯材を収容する内部空間を有し、前記芯材を収容した状態で前記内部空間が真空に保たれる収容パネルとを含み、
前記収容パネルが、
前記低温領域に配置され、金属板を用いて形成されたパネルであって、前記芯材の前記一方主面を包囲する平面視矩形の第1の金属パネルと、
前記低温領域よりも高温の第2の低温領域に配置され、金属板を用いて形成されたパネルであって、前記芯材の前記他方主面を包囲する平面視矩形の第2の金属パネルと、
前記第1の金属パネルの周縁部と前記第2の金属パネルの周縁部とを溶接により接合する環状の溶接部とを含み、
前記第2の金属パネルの外表面および内表面の少なくとも一方には、前記第2の金属パネルの4つの辺にそれぞれ対向する直線状の4つの直線溝であって前記第2の金属パネルの前記周縁部よりも中央側に隔てられた位置を当該周縁部に平行に延びる4つの直線溝を有する互いに大きさの異なる同心の四角環状溝であって、互いに間隔を隔てて形成された複数の四角環状溝が形成されており、
前記複数の四角環状溝において、互いに隣接する二つの四角環状溝が、溝を介して繋がっておらず、
前記溶接部が、前記複数の四角環状溝と同心かつ相似の四角環状をなしている、真空断熱パネル。
【請求項2】
前記第1の金属パネルおよび前記第2の金属パネルが、互いに同じ材質および厚みを有する前記金属板を用いて形成されている、請求項1に記載の真空断熱パネル。
【請求項3】
前記低温領域と前記第2の低温領域との温度差に伴って、前記第1の金属パネルの中央側に向かう引っ張り力が前記溶接部に作用すると、前記第2の金属パネルにおける前記四角環状溝よりも周縁側の部分である外側部分が前記第2の金属パネルの周縁側に向けて放射状に移動し、かつ前記第1の金属パネルの中央側に向けて前記溶接部が移動する、請求項1または2に記載の真空断熱パネル。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
この発明の一実施形態は、低温領域で使用される真空断熱パネルを提供する。前記真空断熱パネルは、一方主面および他方主面を有する芯材であって断熱性を有する芯材と、前記芯材を収容する内部空間を有し、前記芯材を収容した状態で前記内部空間が真空に保たれる収容パネルとを含む。そして、前記収容パネルが、前記低温領域に配置され、金属板を用いて形成されたパネルであって、前記芯材の前記一方主面を包囲する平面視矩形の第1の金属パネルと、前記低温領域よりも高温の第2の低温領域に配置され、金属板を用いて形成されたパネルであって、前記芯材の前記他方主面を包囲する平面視矩形の第2の金属パネルと、前記第1の金属パネルの周縁部と前記第2の金属パネルの周縁部とを溶接により接合する溶接部とを含む。そして、前記第2の金属パネルの外表面および内表面の少なくとも一方には、前記第2の金属パネルの4つの辺にそれぞれ対向する直線状の4つの直線溝であって、前記第2の金属パネルの前記周縁部よりも中央側に隔てられた位置を当該周縁部に平行に延びる直線溝を有する四角環状溝が形成されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
また、第2の金属パネルに形成される環状溝が、4つの辺に対向し、対応する周縁部に平行に延びる4つの直線溝を有する四角環状溝である。そのため、環状溝を、四角環状溝とは別の環状溝の態様(たとえば円形の環状溝)で設ける場合と比較して、変形後の第2の金属パネルの四隅に、応力が残留することを防止できる。
この発明の一実施形態では、前記四角環状溝が、互いに大きさの異なる同心の複数の四角環状溝であって、互いに間隔を隔てて形成された複数の四角環状溝を含む。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
この構成によれば、第2の金属パネルに形成される四角環状溝が、互いに大きさの異なる同心の複数の四角環状溝である。そのため、第2の金属パネルの変形量をより一層大きく確保でき、これにより、第1の金属パネルにおける局所的な応力の発生をより効果的に抑制または防止できる。
また、複数の四角環状溝が互いに間隔を隔てて形成されている。そのため、第2の金属パネルに四角環状溝を間隔をほとんど空けずに形成する場合と比較して、変形後の第2の金属パネルに応力が残留することをより一層防止できる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
この発明の一実施形態では、前記低温領域と前記第2の低温領域との温度差に伴って、前記溶接部に、前記第1の金属パネルの中央側に向かう引っ張り力が作用すると、前記第2の金属パネルにおける前記四角環状溝よりも周縁側の部分である外側部分が前記第2の金属パネルの周縁側に向けて放射状に移動し、かつ前記第1の金属パネルの中央側に向けて前記溶接部が移動してもよい。
前記複数の四角環状溝において、互いに隣接する二つの四角環状溝が、溝を介して繋がっていなくてもよい。前記溶接部が、前記複数の四角環状溝と同心かつ相似の四角環状をなしていてもよい。