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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186524
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】搬送機
(51)【国際特許分類】
   E04D 15/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
E04D15/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094794
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】藤丸 晃二
(57)【要約】      (修正有)
【課題】長尺な折板タイプの屋根の施工現場において、長尺の折板タイプの屋根板を、施工開始位置から所望の施工位置まで簡単,迅速且つ最小限の労力で搬送することができ、施工効率を格段と向上させることができる搬送機を提供する。
【解決手段】金属で且つ断面円形状の芯棒部1と、外周側面を円滑面とする共に摺動性を有する樹脂製の外被部2を有し、芯棒部1に外被部2が被覆されてなる直線棒状の2つの摺動走行具A1と、両摺動走行具A1が平行状に配列される構成となるように支持する支持体A2を備え、2つの摺動走行具A2は平行状を維持して配列されてなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属で且つ断面円形状の芯棒部と、外周側面を円滑面とする共に摺動性を有する樹脂製の外被部とを有し、前記芯棒部に前記外被部が被覆されてなる直線棒状の2つの摺動走行具と、両該摺動走行具が平行状に配列される構成となるように支持する支持体とを備え、2つの前記摺動走行具は平行状を維持して配列されてなることを特徴とする搬送機。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送機において、前記摺動走行具の前記外被部の外周には複数の三角山形状の突起条が円周方向に沿って周方向に所定間隔をおいて設けられ、前記芯棒部は、中空管材としてなることを特徴とする搬送機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の搬送機において、前記支持体は、接続軸状部とし、該接続軸状部が複数備えられ、所定間隔をおいて平行に配列された両前記摺動走行具の間に前記接続軸状部が配列されると共に該接続軸状部の軸方向両端が両前記摺動走行具に固着されてなることを特徴とする搬送機。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の搬送機において、建築用材を載置可能とした搬送ベースと前記支持体が備えられ、前記搬送ベースの下面側に前記支持体を介して前記摺動走行具が平行に装着されてなることを特徴とする搬送機。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送機において、前記支持体における前記搬送ベースは方形状の筐体状とし、前記支持体は揺動連結具とし、該揺動連結具を介して両前記摺動走行具は前記搬送ベースの内外に出没可能としてなることを特徴とする搬送機。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の搬送機において、前記搬送ベースは、2つ備えられ、両該搬送ベース同士は、直列状且つ直線状の配列となるように連結されると共に両前記搬送ベースは、連結箇所を中心として折り畳み自在とされ、両前記搬送ベース同士が開いた直列状態では、両搬送ベースの摺動走行具同士は直列状且つ直線状に配列され、両前記搬送ベースの折り畳み状態では、両前記搬送ベースの前記摺動走行具同士は、分離されてなることを特徴とする搬送機。
【請求項7】
請求項6に記載の搬送機において、連結された両前記搬送ベースの両前記摺動走行具の対向する軸端の一方には凸部が設けられ、他方には該凸部が挿入する凹部が設けられ、両前記摺動走行具同士が開いて直列状に配列されるときには前記凸部が前記凹部に挿入してなることを特徴とする搬送機。
【請求項8】
請求項1,2,3,4,5,6又は7の何れか1項に記載の搬送機において、前記摺動走行具又は支持体の何れか一方に手押しハンドルが設けられてなることを特徴とする搬送機。
【請求項9】
請求項8に記載の搬送機において、前記手押しハンドルは前記摺動走行具又は支持体の何れか一方に対して着脱自在としてなることを特徴とする搬送機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺な折板タイプの屋根の施工現場において、長尺の折板タイプの屋根板を、施工開始位置から所望の施工位置まで簡単,迅速且つ最小限の労力で搬送することができ、施工効率を格段と向上させることができる搬送機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の大型面積の折板タイプの金属屋根の施工現場では、まず折板タイプの長尺な屋根板を成形する成形機が建築構造物の屋根施工箇所に据え付られる。この成形機により長尺の折板タイプの屋根板を成形し、この屋根板の長手方向と同一方向に沿って、適宜の間隔をおいて作業員が配属され、作業員がその屋根板を鉄骨梁等の構造材上の所定の施工箇所まで搬送し、所定の位置に屋根板を施工し、これを何度も繰り返して金属製の折板屋根を施工するものである。
【0003】
以上述べた折板屋根の施工において、屋根板の成形機は大型の機械であり、この成形機は、強固なる足場によって、高所に据え付けられている。そのため、成形機自体を移動することは困難であり、通常は、成形機の据付箇所は不動である。そこで、成形機の設置位置と、この成形機によって成形された屋根板の施工位置との間を作業員の人力により往復して屋根板を構造材上の所定の施工位置まで搬送していた。
【0004】
即ち、その成形機の据付箇所付近の施工済箇所から未施工箇所まで屋根板を作業員が搬送しなければならなかった。屋根板の施工済み箇所が拡がるにつれ、成形機から成形された屋根板の搬送する距離が延び、作業員に対する負担が増えてゆくものである。その搬送作業は、搬送時に長尺な屋根板に変形等を生じさせないように、作業員全員が歩調を合わせて移動しなければならず、これは作業員の歩幅、歩く速度が夫々異なり、これらを合わせなければならないと共に、特に、屋根板が長尺の場合には、重量も重くなり、作業員を多数必要とし、以上のことから馳締屋根板の搬送は困難なものであった。
【0005】
折板タイプの金属屋根を施工する現場において、屋根板等の多数の折板屋根板を施工開始の位置から所望の施工位置まで搬送することは、人力に頼って行うことは、作業員に大きな負担がかかり、そのため工事の作業効率も悪くなる。そこで、施工現場で折板屋根板を搬送する専用の搬送機が種々開発され、台車等の搬送機が使用されることが多くなっている。
【0006】
このような搬送機は多くのものが存在し、その代表的なものとして特許文献に示すようなものが存在する。しかし、従来の搬送機の多くは、重量があり、価格も高いものであった。その結果、屋根板等の折板屋根板では、折板屋根板同士の極めて重要な連結部分である馳部或いは屋根表面を傷つけたり損傷させることがあり、施工後にタッチアツプ等の後処理が必要であった。
【0007】
従来、折板屋根板の搬送手段としては、そろばん式やソリ,スキータイプの台車や、角パイプや屋根材をレールとし、このレール上に車輪式の台車を載せて搬送作業を行うことが一般的であった。従来のレールを用いるものは、資材の種類が多くなるため調達が大変であり、レールの調整等セットをする手間がかかる等の問題があつた。
【0008】
また、そろばんタイプでは、それ自体の重量が重く、そこに取り付けたキャスターにより折版を傷つけるという問題があった。ソリタイプは、そろばんタイプに比べて騒音もなく、馳部の損傷も少ないため有効な施正機器である。 しかしながら、ソリに用いられる樹脂の板材は価格が高く、頻繁に交換するには不向きなものであった。
【0009】
例えば、脚部の交換で1足2万円程度となり、複数台使用するとなると、かなりの金額となる。そのため一度購入すると脚部のソリの交換はほとんど行われることなく使用され続けられるため、経年変化により板材が脆くなり、それによる折板屋根板(特にその馳部)に対する傷の発生が大きな問題となるおそれも十分にあつた。
【0010】
ソリを塩ビパイプ製としたものでは、パイプ自体の価格は安いものの、耐熱性がないため、屋根搬送時の往復回数が多くなるとソリの表面が摩擦で溶けて変形し、それにより折板屋根板(特にその馳部)を傷つけるという問題があつた。また、夏場での使用では、屋根表面温度は60~80℃となるため使用することができなかった。市販されているものにおける仕様では、ソリ部分にポリエチレン樹脂(PE)からなる板をとりつけたもので、塩ビよりも耐熱性が高く、滑動性もよいものである。
【0011】
しかしながら、ポリエチレン樹脂(PE)の板材はエンジニアリングプラスティック(通称エンプラ)といい価格が高く、板材の場合、端部が脆くなるという欠点がある。 また、屋根材 (特に馳部)との接触部が面接触となり、その分だけ抵抗も大きくなるという問題があつた。
【0012】
上記の塩ビパイプは、価格は安いものの、耐熱性がないため、折板屋根板の搬送時の往復回数が多くなると表面が溶けるという問題もあつた。塩ビパイプの融点は、約60℃であり、耐熱タイプでも80℃であり、夏場では日昼で、金属屋根の表面温度 が約60℃~ 約80℃ となることが多く、夏場での使用も午前中や夕方といった涼しくなる時間帯でしか使用ができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2019-183616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来における建設用の搬送機は、前述したように種々のものが開発されており、その主なものの一例として特許文献に開示されている。その主なものを含めて、従来のものでは、ほとんどのものは構造が極めて複雑で、重量が大きいものであった。また、従来のものは取扱いも面倒であり、そのため作業員が使いこなせるまでには、長い時間と技量が必要であった。さらに、加えて、搬送機の使用時における騒音,振動等も大きく、作業環境及び周辺環境への及ぼす影響も問題となっている。
【0015】
本発明の目的は、屋根等の施工現場で成形機にて形成された長尺の折板タイプの屋根板等の建築資材を施工開始位置から未施工箇所付近まで簡易,迅速且つ最小限の労力で搬送することができ、さらに、搬送作業時における騒音,振動等も最小限に抑え、施工位置で折板屋根板を施工し易い状態で配置することができ、しかも装置の構造も極めて簡単である搬送機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、金属で且つ断面円形状の芯棒部と、外周側面を円滑面とする共に摺動性を有する樹脂製の外被部とを有し、前記芯棒部に前記外被部が被覆されてなる直線棒状の2つの摺動走行具と、両該摺動走行具が平行状に配列される構成となるように支持する支持体とを備え、2つの前記摺動走行具は平行状を維持して配列されてなる搬送機としたことにより、上記課題を解決した。
【0017】
請求項2の発明を、請求項1に記載の搬送機において、前記摺動走行具の前記外被部の外周には複数の三角山形状の突起条が円周方向に沿って周方向に所定間隔をおいて設けられ、前記芯棒部は、中空管材としてなる搬送機としたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2に記載の搬送機において、前記支持体は、接続軸状部とし、該接続軸状部が複数備えられ、所定間隔をおいて平行に配列された両前記摺動走行具の間に前記接続軸状部が配列されると共に該接続軸状部の軸方向両端が両前記摺動走行具に固着されてなる搬送機としたことにより、上記課題を解決した。
【0018】
請求項4の発明を、請求項1又は2に記載の搬送機において、建築用材を載置可能とした搬送ベースと前記支持体が備えられ、前記搬送ベースの下面側に前記支持体を介して前記摺動走行具が平行に装着されてなる搬送機としたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項4に記載の搬送機において、前記支持体における前記搬送ベースは方形状の筐体状とし、前記支持体は揺動連結具とし、該揺動連結具を介して両前記摺動走行具は前記搬送ベースの内外に出没可能としてなる搬送機としたことにより、上記課題を解決した。
【0019】
請求項6の発明を、請求項4又は5に記載の搬送機において、前記搬送ベースは、2つ備えられ、両該搬送ベース同士は、直列状且つ直線状の配列となるように連結されると共に両前記搬送ベースは、連結箇所を中心として折り畳み自在とされ、両前記搬送ベース同士が開いた直列状態では、両搬送ベースの摺動走行具同士は直列状且つ直線状に配列され、両前記搬送ベースの折り畳み状態では、両前記搬送ベースの前記摺動走行具同士は、分離されてなる搬送機としたことにより、上記課題を解決した。
【0020】
請求項7の発明を、請求項6に記載の搬送機において、連結された両前記搬送ベースの両前記摺動走行具の対向する軸端の一方には凸部が設けられ、他方には該凸部が挿入する凹部が設けられ、両前記摺動走行具同士が開いて直列状に配列されるときには前記凸部が前記凹部に挿入してなる搬送機としたことにより、上記課題を解決した。
【0021】
請求項8の発明を、請求項1,2,3,4,5,6又は7の何れか1項に記載の搬送機において、前記摺動走行具又は支持体の何れか一方に手押しハンドルが設けられてなる搬送機としたことにより、上記課題を解決した。請求項9の発明を、請求項8に記載の搬送機において、前記手押しハンドルは前記摺動走行具又は支持体の何れか一方に対して着脱自在としてなる搬送機としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明では、摺動走行具は、金属で且つ断面円形状の芯棒部と、外周側面を円滑面とする共に摺動性を有する樹脂製の外被部とを有し、前記芯棒部に前記外被部が被覆された構成としたものである。そして、2つの摺動走行具と支持体とを備え、両摺動走行具が平行状に配列される構成としたものである。
【0023】
これによって、平行に並列された摺動走行具により搬送機は建設現場における施工済みの折板屋根板の頂部を円滑に摺動走行することができる。そして、折板屋根板等の建設資材を搬送移動させるときには、極めて少ない労力で搬送作業を行うことができ、作業員の負担を減少させ、作業効率を向上させることができ、さらに、折板屋根板は摺動走行具状を搬送移動するときに極めて低騒音にすることができ、作業環境も良好にすることができる。
【0024】
請求項2の発明では、前記摺動走行具の前記外被部の外周には複数の突起条が円周方向に沿って周方向に所定間隔をおいて設けられたことにより、搬送機の摺動走行具と、折板屋根板との接触において、突起条と折板屋根板とは、略線接触状態となり、前記突起条と前記折板屋根板との接触面を極めて少なくすることができ、搬送機は折板屋根板上を極めて円滑に摺動走行することができる。
【0025】
さらに、請求項2の発明では、摺動走行具と、折板屋根板との当接において、前記突起条の先端部分と前記折板屋根板との当接(接触)部分は極めて小さくすることができ、相互の摩擦を最小とすることができる。そして、突起条は断面が三角山形状に形成されたことにより、摺動走行具と、該摺動走行具上を搬送移動する折板屋根板との当接状態は略線接触状態となり、相互の摩擦が最も小さくなり、摺動走行具は折板屋根板の頂部上を極めて円滑に摺動移動することができる。
【0026】
また、前記芯棒部は、中空管材とした構成により、摺動走行具を軽量化でき、ひいては搬送機全体を軽量化でき、新たな折板屋根板等の建設資材の摺動搬送による労力を最小限とし、作業員の労働的負担を軽減させることができる。また、搬送機の軽量化により、搬送機が施工済み折板屋根板上に設置されたときに、施工済みの該折板屋根板に対して、重量的負担を最小限にすることができる。
【0027】
請求項3の発明では、軸状部とした同一形状の接続軸状部が複数備えられ、所定間隔をおいて平行に配列された両前記摺動走行具の間に前記接続軸状部が配列されると共に該接続軸状部の軸方向両端が両前記摺動走行具に固着されてなる搬送機としたことにより、搬送機の構造として最も簡単にすることができる。
【0028】
請求項4の発明では、上面側に建築用材を載置可能とした搬送ベースが備えられ、該搬送ベースの下面側に前記支持体を介して前記摺動走行具が平行に装着されてなる搬送機としたことにより、摺動走行を良好なものとし、折板屋根板等の建設用資材の載置及び積載を行いやすいものにできる。
【0029】
請求項5の発明では、搬送ベースは方形状の筐体状とし、両前記摺動走行具は前記搬送ベースに出入且つ収納可能としたことにより、摺動走行具が搬送ベース内に収納された状態は、搬送機自体が略平坦状の板材状となり、よって搬送機は建設現場への持ち運びを極めて容易にできる。
【0030】
請求項6の発明では、搬送ベースは、前後方向中間箇所で折り畳み且つ重合可能とすると共に、両前記摺動走行具は、前記搬送ベースの折り畳み状態で、2つに分離する構成としてなる搬送機としたことにより、搬送作業時においては、2つの搬送ベースが直列状に配列された状態となり、搬送ベース上の積載量を増やすことができ、非使用時では、搬送機自体を極めてコンパクトな形状にでき、したがって、搬送機は建設現場への持ち運び及び持ち帰りを極めて行い易くできる。
【0031】
請求項7の発明では、摺動走行具は、軸方向中間箇所で2つに分離され、一方側及び他方側を前記摺動走行半体部とし、一方側の前記摺動走行半体部と他方側の前記摺動走行半体部の対向する端部同士の一方は凸部が設けられ、他方は凹部が設けられてなる搬送機としたことにより、搬送機の未使用時は小型にまとめることができ、使用時では2つの摺動走行具が連結された状態を極めて安定した状態にできる。なお、前記凸部は、半球形状とすれば、2つの摺動走行具同士を分離及び接続が行い易くできる。
【0032】
請求項8の発明では、両前記摺動走行具に亘って手押しハンドルが設けられる搬送機としたことにより、搬送作業を行いやすいものとした。請求項9の発明では、前記手押しハンドルは両前記摺動走行具に対して着脱自在としたことにより、搬送機を未使用のときに管理保管し易いものとした。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】(A)は本発明における搬送機の第1実施形態の平面図、(B)は(A)の(α)部拡大断面図、(C)は摺動走行具の拡大縦断面図、(D)は第1実施形態の斜視図である。
図2】(A)は搬送機の第1実施形態の側面図、(B)は(A)の(β)部の一部切除及び断面とした拡大図、(C)は搬送機の第1実施形態の変形例を示す側面図、(D)は搬送機の第1実施形態に着脱自在の手押ハンドルを装着した要部斜視図、(E)は搬送機の第1実施形態に折り畳み自在の手押ハンドルを装着した要部側面図、(F)は搬送機の第1実施形態に着脱自在の手押ハンドルを装着した要部側面図である。
図3】(A)は搬送機の第1実施形態を折板屋根板の搬送に使用する状態を示す略示図、(B)は(A)の(γ)部拡大図、(C)は(B)のY1-Y1矢視断面図、(D)は(C)の(δ)部拡大図、(E)は(C)の(δ)部の別の状態を示す拡大図である。
図4】搬送機の第1実施形態を折板屋根の施工に使用した平面略示図である。
図5】(A)は本発明の搬送機における第2実施形態の斜視図、(B)は搬送ベース内に摺動走行具を収納した状態の底面から見た斜視図、(C)搬送ベース内に摺動走行具を突出させた状態の底面から見た斜視図である。
図6】(A)は搬送機の第2実施形態の底面図、(B)は(A)の(ε)部拡大図、(C)は(A)の(ζ)部拡大図である。
図7】(A)は図6(B)のX1-X1矢視断面図、(B)は図6(C)のX2-X2矢視断面図、(C)は(B)の(η)部拡大図、(D)は(B)の(η)部の摺動走行具を突出させた状態の拡大図である。
図8】(A)乃至(C)は搬送機の第2実施形態における折り畳み工程を示す縦断側面図、(D)は摺動走行具が搬送ベースから突出した状態及び収納された状態を示す要部縦断側面図である。
図9】(A)は搬送機の第2実施形態における折り畳み状態を示す斜視図、(B)は搬送機の第2実施形態に手押しハンドルを装着した斜視図、(C)は(B)の(κ)部拡大図である。
図10】(A)は搬送機の第2実施形態における変形例の斜視図、(B)は搬送機の第2実施形態における変形例の底面から見た斜視図、(C)は搬送機の第2実施形態における変形例の要部縦断面図である。
図11】(A)乃至(E)はレール材の実施形態の縦断面図である。
図12】(A),(B)は搬送機の第1実施形態によって新たな折板屋根板を未施工位置に適正に配置する工程図、(C),(D)は搬送機の第2実施形態によって新たな折板屋根板を未施工位置に適正に配置する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。なお、本発明における搬送機Aは、主に金属製の折板屋根の施工現場で、新たな折板屋根板8nを搬送することに多く使用されるものであり、以下、折板屋根の施工現場で使用されるものとして説明する。また搬送方法についても、本発明における搬送機Aを使用して新たな折板屋根板を所定に未施工位置に搬送する方法について説明するものである。
【0035】
搬送機Aは、建築現場の屋根施工現場にて、施工開始位置から施工済みの複数の折板屋根板8,8,…の頂部を搬送路として利用し、新たな折板屋根板8nを未施工位置まで搬送する役目をなすものである〔図3(A),図4参照〕。本発明の搬送機Aが適用される屋根施工現場における折板屋根板8及び新たな折板屋根板8nは、折板タイプの金属製の部材であり、長手方向に長尺であって、一般に約50m乃至約100m程度のものである。
【0036】
折板屋根板8には、隣接する屋根板同士の連結箇所を馳とした馳締タイプ,隣接する屋根板同士の連結箇所にキャップ材を被せる嵌合タイプ及び隣接する屋根板同士の山形同士を重合する重合タイプ等のものが存在する。以下の説明では、折板屋根板8は主に馳締タイプとして説明する。
【0037】
また、施工済みの折板屋根板8は、屋根施工現場等の建設現場において、既に、梁等の構造材91上の受具92への適正な設置施工が完了されたものを言う。また、新たな折板屋根板8nとは、屋根施工現場において、設置予定位置に未だ設置施工されておらず、これから設置しようとする屋根板のことを言う。また、施工開始位置とは、施工を開始する起点のことを言う。未施工位置とは、新たな折板屋根板8nが設置施工されていない箇所のことを言う(図4参照)。
【0038】
本発明における搬送機Aは、摺動走行具A1と、支持体A2とを備えている。そして、2つの摺動走行具A1,A1は、略棒状体であり、これらが平行状に並列され、支持体A2によって平行状態の並列が維持されて搬送機Aが構成されるものである。本発明では、摺動走行具A1,A1を平行状に配列させる支持体A2の構成によって、大きく分けて第1実施形態及び第2実施形態が存在する。
【0039】
まず、2つの実施形態で共通する摺動走行具A1について説明する。摺動走行具A1は、略棒状であり、その長手方向(又は軸方向)に直交する断面は、略円形状であり、さらに詳しくは、外周が略ギザギザの歯車形状をなしている〔図1(C),(D),図7等参照〕。摺動走行具A1は、芯棒部1と外被部2を備えて構成されている〔図1(C)参照〕。芯棒部1は、金属製であり、断面円形状の棒状材であり、中空状の管材であり、鋼管等が使用される。
【0040】
芯棒部1は、直径が約20mm乃至約30mm程度で、さらに具体的には外径が約27.5mm程度で、内径約24mm程度である。また、芯棒部1は、前述したように、中空管材としているが、これに限定されず、中実とすることもある。芯棒部1が中実軸にされることで、耐久性を有することができ、また中空軸よりも重量がある程度増加するので、搬送機Aが摺動走行するときに風にあおられたりしたときでも走行における安定性が得られる。
【0041】
外被部2は、樹脂製であり、前記芯棒部1の外周に被覆する構成となる。外被部2による芯棒部1外周への被覆手段として塗布による被覆が存在し、この塗布手段により、外被部2を構成する樹脂の量は極めて少量となり安価にできる。また、外被部2はチューブ状に形成され、このチューブ状に形成された外被部2を前記芯棒部1に被せるようにして被覆することもある。
【0042】
外被部2の外周側面は、円滑面とする共に摺動性を有するものである。具体的には、外被部2の外周面は、摩擦係数が極めて小さくなるように形成され、これに加えて、耐久性,強度共に優れた性質を備えた材質のものが使用される。外被部2の材質は、具体的には高機能且つ高密度のポリエチレン樹脂である。なお、高機能且つ高密度のポリエチレン樹脂は、その融点は約120乃至約140℃程度であり、真夏の酷暑にたいしても十分に耐え得るものである。
【0043】
摺動走行具A1の外被部2の外周には、その複数の突起条21,21,…が摺動走行具A1の長手方向(又は軸方向)に沿って形成されている。また、その複数の突起条21,21,…は、摺動走行具A1における円周方向に沿って、円周方向に所定間隔をおいて設けられている〔図1(C)参照〕。さらに、具体的には、多数の突起条21,21,…が、円周方向に沿って等間隔をおいて形成されている。複数の突起条21,21,…は、外被部2の外周において、隣接する突起条21,21同士の間隔が極めて近接するように形成されている。
【0044】
さらに、隣接する突起条21,21の頂部同士を結ぶ仮想の直線は、隣接する突起条21,21間の谷底部22より直径方向外方に位置する構成とすることが好ましい。これによって、摺動走行具A1上に載置且つ搬送移動される折板屋根板8は、突起条21の頂部にのみ当接し、谷底部22には当接しないようにすることができる〔図3(D),(E)参照〕。なお、本発明において、当接は、接触と称しても構わない。
【0045】
外被部2における突起条21は、略三角山形状に形成される。さらに、突起条21の形状を三角形とした場合では、略「八」字状とした扁平三角山形状〔図1(D)参照〕及び、略逆「V」字形状とした、先端が先鋭とした逆V字山形状としたものが存在する〔図11(A)参照〕。さらに、突起条21を略台形状としたものも存在する〔図11(B)参照〕。
【0046】
外被部2に円周方向に複数の突起条21,21,…が設けられることによって、摺動走行具A1と該摺動走行具A1上に載置される折板屋根板8との相互の当接においては、突起条21の先端を介して当接するので、摺動走行具A1とが摺動走行具A1上を摺動する新たな折板屋根板8nとの接触面積が極めて少ない線接触状態となり、相互間の摩擦が極めて微小なものにでき、新たな折板屋根板8nは摺動走行具A1上を極めて円滑に搬送移動されるものである〔図3(A),(B),図4参照〕。
【0047】
また、突起条21を略台形状とした場合でも、突起条21と折板屋根板8との当接状態についても、略線接触状態に含まれ、線接触とする。さらに、外被部2の外周に、突起条21,21,…が形成されず、略真円状の断面となる実施形態も存在する〔図11(C)参照〕。この場合、外被部2の外周面は円滑且つ摺動性を有する面であり、折板屋根板8は摺動走行具A1上を極めて円滑に搬送移動されるものである。
【0048】
摺動走行具A1は、金属製の芯棒部1と、樹脂製の外被部2とから構成されるものとしたが、単一部材のみで構成される実施形態も存在する。この場合、摺動走行具A1は、金属製又は樹脂製のみで構成されることになる〔図11(D),(E)参照〕。また、この実施形態においても、摺動走行具A1の外周は、突起条21,21,…が形成される場合と、突起条21,21,…が存在しない場合とが存在する。
【0049】
次に、本発明における第1実施形態を説明する(図1図2参照)。搬送機Aの第1実施形態は梯子(ラダー)タイプのものである。2つの摺動走行具A1,A1が所定間隔をおいて平行且つ並列に配置され、両摺動走行具A1,A1が支持体A2によって梯子形状を構成している。
【0050】
ここで、搬送機Aには前後方向が存在し、通常の直進状の摺動走行を行うときにおける前後方向のことであり、横滑りや旋回走行は、前後方向の走行の概念には含まれない。また、前後方向における前方側及び後方側は、特に限定されるものではなく、状況に応じて適宜設定されるものである。前後方向は、主要図面に記載されている。
【0051】
このタイプにおいて、支持体A2を構成する実施形態として、複数の接続軸状部3,3,…であり、両摺動走行具A1,A1が接続軸状部3にて接続されている〔図1(A)参照〕。該接続軸状部3は、少なくとも2つ必要であり、3本以上とすることが多い。図示されたものでは、接続軸状部3は、5本備わっている。該接続軸状部3は、接続軸片31,接続管32及びナット33にて構成されている〔図1(B)参照〕。
【0052】
接続軸片31は、両端にネジ部が形成されたボルト軸であり、接続管32は、パイプ状の中空管であり、内部に前記接続軸片31が挿通する。摺動走行具A1には軸方向に直交する方向に貫通孔3aが形成されている。接続管32を有する接続軸片31の軸方向両端が2つの摺動走行具A1,A1のそれぞれの前記貫通孔3aに挿入される。
【0053】
このとき、摺動走行具A1における芯棒部1,外被部2を直交方向に貫通する貫通孔3aの両側から2つのナット33,33にて接続軸片31のネジ部が締め付けられるようになっている〔図1(A),(B)参照〕。接続管32は、金属管、又は合成樹脂管等が存在する。両摺動走行具A1,A1の間隔は、接続軸片31とナット33によって決定されることになる。
【0054】
両摺動走行具A1,A1には手押しハンドル7が設けられることもある〔図2(D),(E),(F)参照〕。手押しハンドル7は、金属管,樹脂製パイプ等によって形成され、門(アーチ)形状又は逆U字形状に屈曲された持手部71の両下端から水平状の取付片72,72が形成され、両該取付片72,72が両前記摺動走行具A1,A1又は接続軸状部3等にビス等の固着具にて固着される〔図2(D)参照〕。
【0055】
また、手押しハンドル7は、折り畳みタイプとすることもある〔図2(E)参照〕。折り畳みタイプの手押しハンドル7は、摺動走行具A1に対して揺動自在となる持手部71とリンク部73とからなり、持手部71にはスライド溝が形成されており、リンク部73の揺動自由端側にピンが設けられ、リンク部73のピンが持手部71にはスライド溝に沿って移動自在となる。これによって、リンク部73を介して持手部71は、組立及び折り畳みができるようになっている。
【0056】
手押しハンドル7は、両摺動走行具A1,A1に対して着脱自在となる構成とすることもある〔図2(F)参照〕。着脱自在とした手押しハンドル7では、両摺動走行具A1,A1にフック74が設けられ、該フック74に手押しハンドル7の下端部分の係止部71aが係止状態で着脱自在となる構成となっている。このように、手押しハンドル7が両摺動走行具A1,A1から着脱自在となる構成によって、建設現場への持ち運びが良好となる。手押しハンドル7は、門形状の他に、椅子形状にすることができる〔図2(F)二点鎖線部分参照〕。
【0057】
また、両摺動走行具A1,A1は、それぞれの軸方向両端に略半球面状のクッション材25が設けられたり〔図2(A),(B)参照〕、或いは軸方向両端が上方に反り上がる形状とすることもある。また、軸方向両端が水平板面状で且つ平坦状となるようにプレス形成されることもある〔図2(C)参照〕。
【0058】
次に、本発明における搬送機Aの第2実施形態を図5乃至図10に基づいて説明する。この第2実施形態では、搬送ベース5が備わり、支持体A2として、揺動連結具4が備わる構成である(図5乃至図7等参照)。第2実施形態において摺動走行具A1については、第1実施形態の搬送機Aに使用されるものと同一構成である〔図1(C)参照〕。搬送ベース5は、方形状の筐体状であり、さらに具体的には長方形状の扁平状立方体となる。搬送ベース5は、上面と下面が設定されている。上面及び下面は、図6乃至図10に表示されている。
【0059】
まず、搬送ベース5の上方側に、長方形状の載置板51が位置し、該載置板51の幅方向両端より下方に向かって横側部52及び縦側部53が形成されている。これら載置板51,横側部52及び縦側部53によって扁平状の筐体が構成される〔図5(A)参照〕。載置板51は、略長方形状で平坦状の板状体であり、搬送ベース5の上面すなわち、載置板51の上面側は積載物が載置されるための荷台としての役目をなすものである。
【0060】
載置板51の大きさは、本発明における実施形態では、全長が約1000mm程度であり、幅方向の寸法が約240mm程度としている。また、横側部52及び縦側部53の高さ寸法は約30mm程度としている。搬送ベース5は、この大きさには限定される必要はなく、全長及び全幅は、使用状況に応じて適宜変更しても構わない。
【0061】
縦側部53は、搬送機Aの前後方向端部に設けられる垂下状の側板である。縦側部53は、搬送機Aの前後方向両側に設けられる場合と、前後方向の一方側にのみ設けられる場合とがある。ここで、第2実施形態における搬送機Aの前後方向とは、通常の直進状の摺動走行を行うときにおける前後方向のことであり、横滑りや旋回走行は、前後方向の走行の概念には含まれない。
【0062】
後述するが、搬送機Aにおいて、2つの搬送ベース5を備え、両搬送ベース5を折り畳み構造とした実施形態では、それぞれの搬送ベース5には縦側部53は、前後方向の一方にのみ設けられ、且つ両搬送ベース5,5が対向する箇所、つまり両搬送ベース5,5が連結する箇所では、縦側部53は設けられていない〔図5(B),(C),図6(A),(C)等参照〕。
【0063】
横側部52は、搬送機Aの幅方向両側で且つ前後方向に沿って設けられる垂下状の側部である〔図5図6(A)参照〕。横側部52は、断面略方形状の中空管状として形成され、搬送機Aの前後方向に沿って形成されている。そして、横側部52には内側面52aと下側面52bを有している(図7参照)。両横側部52において、2つの対向する内側面52a,52aは、載置板51に対して垂直(略垂直状も含む)であり、搬送ベース5の幅方向における内方側で且つ幅方向沿って対向する面となる〔図7(A),(B)参照〕。下側面52bは、載置板51に対して平行(略平行も含む)な面となる。
【0064】
搬送ベース5の下面側には、前記支持体A2を介して2つの摺動走行具A1,A1が平行となるように装着される。摺動走行具A1については、第1実施形態に使用された摺動走行具A1と同一の構造であり、前述した第1実施形態における摺動走行具A1についての説明を参照されたい。搬送ベース5は、強度及び耐久性等を考慮して、基本的には金属製が好適であるが、これに限定されず合成樹脂製とすることもある。
【0065】
両摺動走行具A1,A1は、搬送ベース5の下面側から下方に出入自在に出没し、摺動走行具A1が突出状態においては、該摺動走行具A1の軸方向が、搬送ベース5の前後方向に沿って配置される(図5図6参照)。搬送ベース5は、両摺動走行具A1,A1によって、施工済みの折板屋根板8上を摺動走行することができる。
【0066】
搬送ベース5の載置板51は、荷台としての役目をなし、新たな折板屋根板8等の建設資材が載置可能である。また、横側部52及び縦側部53は、両摺動走行具A1,A1を搬送ベース5の内部に収納したときの囲いとしての役目と、搬送ベース5自体の強度を補強するリブ的な役目をなす。
【0067】
搬送ベース5には、主骨部54が設けられている。該主骨部54は、搬送ベース5を補強する役目をなしており、断面略方形状で、搬送ベース5の幅方向中心箇所で、且つ前後方向(長手方向)に沿って設けられている〔図5(B),(C),図6図7(A),(B)等参照〕。また、主骨部54と共に補助骨部55が設けられることもあり、該補助骨部55については後述する。
【0068】
次に、第2実施形態において両摺動走行具A1,A1を平行な並列状態に維持させる支持体A2として、揺動連結具4が使用される〔図5(B),(C),図6図7等参照〕。該揺動連結具4は、搬送ベース5の幅方向側の横側部52,52に装着され、且つ摺動走行具A1とも連結される。揺動連結具4による支持体A2によって、摺動走行具A1は、搬送ベース5の内部と、下方側の外部に出没自在な構成となる〔図5(A),(B),図7参照〕。なお、出没自在は、出入自在と称しても良い。
【0069】
揺動連結具4は、固定板41と揺動板42とが枢支部43を介して枢支連結されたものであり、具体的な物品としてヒンジ(丁番)等の金具である〔図5(B),(C),図6図7参照〕。枢支部43は軸状のピンであり、固定板41と揺動板42にはそれぞれにカール状に形成された円筒状の揺動端部41a及び揺動端部42aが形成され、両揺動端部41a及び揺動端部42aにピン材とした枢支部43が挿入されるように設けられたものである。
【0070】
固定板41が搬送ベース5の横側部52の内側面52aにビス等の固着具にて固着され、揺動板42に摺動走行具A1がビス等の固着具にて固着される。搬送ベース5内において、1つの摺動走行具A1に、2つ以上の揺動連結具4が備わる〔図5(B),図6参照〕。摺動走行具A1は、搬送ベース5内に収納される程度の長さ寸法であり、この実施形態においては約1000mm程度としている。強度及び耐久性を考慮するならば、揺動連結具4の数は3つ以上となり、さらにバランスを考慮して4つとすることもある。
【0071】
1つの摺動走行具A1に対して揺動連結具4を3つ以上設ける場合には、摺動走行具A1の軸方向(長手方向)に沿って等間隔に配置することが好ましい。搬送ベース5の横側部52に対して、搬送ベース5の内方側に揺動連結具4の固定板41がビス等の固着具にて固着され、揺動板42に摺動走行具A1がビス等の固着具にて固着される(図7参照)。
【0072】
搬送ベース5に対して揺動して出没自在とした摺動走行具A1は、揺動連結具4の揺動板42と共に揺動し、搬送ベース5の下面側において、内部と外部との間を揺動しつつ出没する構成である〔図7(C),(D)参照〕。揺動連結具4の揺動板42は、摺動走行具A1の収納状態と突出状態で、略約180度程度の範囲で揺動し、収納状態から約180度開いた時に摺動走行具A1が摺動走行可能に突出した状態となる〔図7(D)参照〕。具体的には、摺動走行具A1が搬送ベース5内に収納された状態で、揺動板42は、搬送ベース5の下面側で、且つ載置板51に対して略平行状態となる〔図7(A),(B),(C)参照〕。
【0073】
そして、搬送ベース5の下面側から、摺動走行具A1が摺動走行可能な状態に突出したときには、揺動板42は、横側部52の下側面52bに平行状態で位置する〔図7(D)参照〕。つまり、揺動板42は横側部52の下側面52bに当接状態となり、この状態によって、揺動板42は下側面52bにて固定された状態となり、摺動走行具A1は、摺動走行状態において、安定した支持状態にすることができる〔図7(D)参照〕。なお、揺動連結具4において、固定板41と揺動板42との揺動動作をきつく設定することによって、揺動連結具4の収納状態と突出状態を仮固定状態にでき、摺動走行具A1の搬送ベース5内への収納状態を安定させることができる。
【0074】
次に、第2実施形態において、2つの搬送ベース5を備えた構成のタイプについて説明する(図5図6参照)。このタイプでは、2つの搬送ベース5,5が備えられ、両搬送ベース5,5が折り畳み自在な構成となるものである。2つの搬送ベース5,5は、前後方向端部同士で連結され、搬送機Aの使用時においては、2つの搬送ベース5,5が開いて、前後方向に略直列状且つ直線状に配列される〔図5(A),図6(A)参照〕。
【0075】
そして、2つの搬送ベース5,5が、折り畳み状態のときには、2つの搬送ベース5,5の下面同士が対向するようにして、重合状態となるものである〔図8(A)乃至(C),図9(A)参照〕。2つの搬送ベース5,5には、それぞれに2つの摺動走行具A1が適正な状態で備わっている。つまり、第2実施形態は、換言するならば、単体の搬送ベース5が2つ備えられた構成であるといえる。
【0076】
まず、2つの搬送ベース5,5は、前後方向に沿って直列状態で略直線状となるように連結される。2つの搬送ベース5,5同士の連結が、折畳みヒンジ6にて行われる。該折畳みヒンジ6は、揺動板部61,61と枢支部62とからなる。揺動板部61,61には、それぞれに筒状の揺動端部61a, 61aが形成されている。
【0077】
枢支部62は、軸状のピン材であり、筒状の揺動端部61a, 61aにピン材とした枢支部62が挿入され、両揺動板部61,61が枢支部62を中心に揺動する構成である。折畳みヒンジ6の両揺動板部61,61が2つの搬送ベース5,5にビス等の固着具にてそれぞれ取り付けられ、2つの搬送ベース5,5が折り畳み可能となるように構成される〔図8(A)乃至(C)参照〕。
【0078】
2つの搬送ベース5,5において、折畳みヒンジ6が取り付けられる箇所には、2つの搬送ベース5,5の対向する側に、縦側部53は設けられていない〔図5(B),(C),図6(A),(C)参照〕。そして、両搬送ベース5に設けられた前記主骨部54及び補助骨部55に、揺動板部61,61が配置され、ビス等の固着具にて主骨部54及び補助骨部55に固着される。補助骨部55は、直列に連結された搬送ベース5,5の連結箇所における対向する箇所において、主骨部54の幅方向両側に配置される〔図5(B),(C),図7(B)参照〕。
【0079】
搬送ベース5における下面側において、主骨部54及び補助骨部55の下端面と、横側部52及び縦側部53の下端面は、略同一位置となるように設定されている。そして、折畳みヒンジ6にて連結された2つの搬送ベース5,5は、下端面同士が対向するように折り畳むことができ、2つの搬送ベース5,5の折り畳み状態では、重合された状態となる〔図8(C),図9(A)参照〕。
【0080】
そして、搬送機Aの使用時における両搬送ベース5,5の折り畳み状態において、それぞれの搬送ベース5に付属する摺動走行具A1は、搬送ベース5の内部に収納された状態である。また、搬送機Aの使用時においては、直列状に配列され、連結された2つの搬送ベース5,5のそれぞれの摺動走行具A1,A1同士は、1本の略直線状となる〔図5(B),(C),図6(A)参照〕。また、両搬送ベース5,5の折り畳み状態においては、両摺動走行具A1,A1は、両搬送ベース5,5と共に2つに分離且つ折り畳みができる構成となる〔図8(A),(C)参照〕。
【0081】
具体的には、2つの搬送ベース5,5に、それぞれ装着された摺動走行具A1,A1は、両搬送ベース5,5同士の折り畳み中心箇所で、2つに分離される。〔図8(A)乃至(C)参照〕そして、使用時において両搬送ベース5,5同士を直列に配列したときに、一方側の搬送ベース5の摺動走行具A1と、他方側の搬送ベース5の摺動走行具A1との対向する端部同士が連結し、2つの摺動走行具A1,A1同士が直列状の1つの長尺な摺動走行具A1となる〔図8(A)参照〕。
【0082】
そして、両搬送ベース5,5同士の摺動走行具A1,A1同士を直列状且つ直線状に配列させるために、両摺動走行具A1,A1同士の連結手段が具備される。この連結手段は、一方の搬送ベース5の摺動走行具A1の軸方向端部には凸部23が設けられ、他方の搬送ベース5の摺動走行具A1で、前記一方の搬送ベース5の摺動走行具A1の軸方向端部と対向する端部には、凹部24が設けられる構成としたものである(図8参照)。
【0083】
凹部24には、凸部23が挿入又は遊挿(余裕を有して挿入)する構造となっており、両搬送ベース5,5同士が開いて直列且つ略直線状の配列となったときに、一方の摺動走行具A1の凸部23が、他方の摺動走行具A1の凹部24に挿入する構成となっている〔図8(A),(B)参照〕。また、凹部24は、摺動走行具A1が中空管状であることから、中空部をそのまま凹部24として使用される。摺動走行具A1が中実管状の場合は、凸部23が挿入可能な窪みを形成し、この窪みを凹部24とする。
【0084】
前記凸部23は、摺動走行具A1とは別部材であり、断面円形状の軸部材としたものである。凸部23は、摺動走行具A1が中空管状であることから、圧入等の手段にて凸部23の一部が摺動走行具A1の中空部、具体的には芯棒部1の中空部に圧入されて、摺動走行具A1に固着されるものである(図8参照)。
【0085】
凸部23の先端部分は、略半球形状に形成されている(図8参照)。このような略半球形状にすることで、両搬送ベース5,5の折り畳み状態から、両搬送ベース5,5を開いて直列且つ略直線状に配列するときに、一方の搬送ベース5の摺動走行具A1の凸部23が、他方の搬送ベース5の摺動走行具A1の凹部24に円滑に挿入することができ、また、両搬送ベース5,5を折り畳むときにも、凸部23は凹部24から円滑に離間することができる〔図8(B),(C)参照〕。また、凸部23の先端は円錐台等の形状としてもよい。
【0086】
図10(A),(B)は、搬送機Aの第2実施形態において1つの搬送ベース5のみから構成されたものである。図10(C)は、搬送機Aの第2実施形態において、搬送ベース5から摺動走行具A1が出没自在としたものではなく、摺動走行具A1を常時突出状態としたものである。この実施形態では、支持体A2は、摺動走行具A1を搬送ベース5の下方外部に突出させるのみの役目をするものである。
【0087】
第2実施形態の搬送機Aにおいても、手押しハンドル7が設けられることもある〔図9(B),(C)参照〕。手押しハンドル7は、金属管,樹脂製パイプ等によって形成され、第1実施形態における搬送機Aに設けられた手押しハンドル7と同様に門(アーチ)形状に屈曲形成されたものである。
【0088】
手押しハンドル7は、搬送ベース5の前後方向一端に設けられ、搬送ベース5に対して着脱自在となる構成とすることもある〔図9(C)参照〕。手押しハンドル7を着脱自在とする場合には、円筒状又はカップ状のハンドル受部76が搬送ベース5に設けられている。そして、手押しハンドル7の持手部71の付根部71bがハンドル受部76に挿入可能な構成となっている。
【0089】
これによって、手押しハンドル7の付根部71bが搬送ベース5に装着されたハンドル受部76に対して脱着可能な構成となる。ハンドル受部76は、搬送ベース5の縦側部53に2個設けられている。また、ハンドル受部76は、載置板51又は横側部52に設けられてもよい。
【0090】
このように、手押しハンドル7が搬送ベース5に対して着脱自在となる構成によって、建設現場への持ち運びが良好となる。搬送ベース5の縦側部53には、握手部77が設けられることもある。該握手部77によって、作業員は、搬送機Aの持ち運びが行い易くなり、折り畳みタイプの場合は、両搬送ベース5,5の折り畳み作業を行い易くできる。
【0091】
次に、本発明の搬送機Aを利用して施工される折板屋根の一例について説明する。折板屋根板8は、底板部81の幅方向両側に立上り側部82,82が形成されている。両立上り側部82,82は互いに外方側に向かって外方に向かって僅かに傾斜又は略水平状とした頂面部83,83が形成されている〔図1(A),図3(A),(B)参照〕。
【0092】
その一方の頂面部83には、下馳部84が形成され、他方の頂面部83には上馳部85が形成されている。折板屋根は、並列に配置された折板屋根板8,8,…において、隣接する折板屋根板8,8の下馳部84と上馳部85とが吊子及び受具92を介して馳締連結されて、施工されるものである〔図3(B)参照〕。
【0093】
折板屋根板8には、以上述べたように、隣接する屋根板同士の連結箇所を馳とした馳締タイプの他に、特に図示しないが、隣接する屋根板同士の連結箇所にキャップ材を被せる嵌合タイプ、及び隣接する屋根板同士の山形同士を重合する重合タイプ等のものが存在する。
【0094】
次に、本発明における搬送機Aを使用した搬送方法について説明する。具体的には折板屋根の施工における新たな折板屋根板の搬送方法として説明する。搬送機Aには、前述したように第1実施形態における搬送方法と〔図12(A),(B)参照〕、第2実施形態における搬送方法〔図12(C),(D)参照〕が存在し、何れもの方法においても略同様である。
【0095】
まず、構造材91上に受具92を、所定間隔をおいて配置固着し、施工開始位置から折板屋根板8が所定の個数施工した後に、施工完了済みの折板屋根板8の頂部に複数の搬送機A,A,…を並列状に配置する。次いで、並列された複数の搬送機A,A,…上に新たな折板屋根板8nを載置する〔図4図12(A),(C)参照〕。
【0096】
第1実施形態の搬送機Aでは、平行に配列された摺動走行具A1,A1上に新たな折板屋根板8nを載置し、第2実施形態の搬送機Aでは、搬送ベース5上に新たな折板屋根板8nを載置するものである。なお、図4において、使用されている搬送機Aは、第1実施形態のものであるが、第2実施形態の搬送機Aを使用する場合には、第1実施形態の搬送機Aを第2実施形態の搬送機Aに置き換えて参照されたい。
【0097】
そして、並列された複数の搬送機A,A,…を未施工位置まで移動させ、新たな折板屋根板8nを搬送機Aから降ろし、施工済みの折板屋根板8と馳締め等の連結手段にて連結する〔図12(B),(D)参照〕。この作業を繰り返し、新たな折板屋根板8nを未施工位置に搬送し、折板屋根を施工する。
【0098】
本発明における搬送装置では、主に折板屋根の施工現場において、新たな折板屋根板8nを搬送するものとして説明したが、搬送されるものは、新たな折板屋根板8nに限定されるものではなく、その他の長尺な建設資材,梁等の構造材等も施工開始位置から未施工位置又は搬送目的位置まで搬送することもできる。
【符号の説明】
【0099】
A…搬送機、A1…摺動走行具、A2…支持体、1…芯棒部、2…外被部、
21…突起条、23…凸部、24…凹部、3…接続軸状部、4…揺動連結具、
5…搬送ベース、7…手押しハンドル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12