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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186535
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】微細バブル発生装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 23/2326 20220101AFI20221208BHJP
   B01F 25/30 20220101ALI20221208BHJP
   B01F 25/10 20220101ALI20221208BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B01F3/04 F
B01F5/04
B01F5/00 G
C02F1/50 510A
C02F1/50 520K
C02F1/50 520L
C02F1/50 531B
C02F1/50 531J
C02F1/50 531N
C02F1/50 531R
C02F1/50 540A
C02F1/50 550C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094812
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】519187104
【氏名又は名称】株式会社ナノバブル研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100103148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 輝美
(72)【発明者】
【氏名】本田 正
(72)【発明者】
【氏名】小森 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳一郎
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AB20
4G035AC23
4G035AC44
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】 本発明はナノレベルの微細な気泡を発生させる微細バブル発生装置に関する。
【解決手段】 旋回流を生成する旋回流生成部と、液体の流れを利用してベンチュリ効果によって負圧状態を作り出すアスピレーターと、上記負圧状態の旋回流の流れに所望の気体を供給する気体供給部と、この気体供給部から供給された気体を含む高速の旋回流が供給され、内周面の長手方向に溝が形成された吐出管とを備えた微細バブル発生装置であって、上記高速の旋回流によって気体を細かな微細気泡に生成すると共に、吐出管の内周面に形成された上記溝によって溝近傍に多くの渦流を生成し、旋回流を回る気泡を更に破砕すると共に、渦流による低圧部を形成して多数の気泡核を生成し、ナノレベルの微細気泡を生成することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回流を生成する旋回流生成部と、
液体の流れを利用してベンチュリ効果によって負圧状態を作り出すアスピレーターと、
前記負圧状態の旋回流の流れに所望の気体を供給する気体供給部と、
該気体供給部から供給された気体を含む高速の旋回流が供給され、内周面の長手方向に溝が形成された吐出管と、を備え、
前記高速の旋回流によって前記気体を細かな微細気泡に生成すると共に、前記吐出管の内周面に形成された前記溝によって前記旋回流を回る気泡を更に破砕し、渦流による低圧部を形成して多数の気泡核を生成し、ナノレベルの微細気泡を生成することを特徴とする微細バブル発生装置。
【請求項2】
前記溝は前記吐出管の長手方向に所定の間隔を有し、所定の深さに形成され、前記に所定の間隔、及び所定の深さを適宜設定することによって、前記微細気泡のサイズの調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の微細バブル発生装置。
【請求項3】
前記気体供給部には異なる気体が収納された複数のボンベが接続され、前記気体供給部に選択した気体を供給できることを特徴とする請求項1、又は2に記載の微細バブル発生装置。
【請求項4】
前記アスピレーターの先端の直径は、前記液体に含まれる残渣が通過可能な大きさに設定されていることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の微細バブル発生装置。
【請求項5】
前記吐出管の直径は、後端に向けて大きくなるようなテーパが設定されていることを特徴とする請求項1、2、3、又は4に記載の微細バブル発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノレベルの微細な気泡を発生させる微細バブル発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、ナノレベルの微細気泡について、その物性や発生(気泡微細化)のメカニズム、具体的な用途、及びその実用化に関して研究が急速に進んでいる。例えば、汚染水の浄化や殺菌等の研究や、ナノオーダの微細気泡を含有する微細バブル含有水を用いた水性生物の育成、水田に微細バブルの含有水を供給して水質の向上を図る等の研究が行われている。
【0003】
また、オゾンを含むナノバブル化された水による抗菌効果の研究や、窒素を含むナノバブル化された水による腐敗防止の研究も行われている。
【0004】
従来このような微細バブルの発生方法として、加圧溶解方式や、オリフィスやベンチュリー管方式、超音波振動の利用や、微細孔フィルタの使用等、多くの方式が提案されている。例えば、一例として、特許文献1がベンチュリ管方式の微細バブル発生装置を開示する。
【0005】
この微細バブル発生装置は、流入した水や汚染水を一端貯留し、流路を介してベンチュリー管に供給し、このベンチュリー管を高速で通過させることによって負圧状態を生成し、水や汚染水に溶解している過飽和の空気が分離し、微細な気泡となることを利用する発明である。この為、極めて細い管径のベンチュリー管を使用し、ベンチュリー管内の速度を上げることにより高真空を発生させ、微細気泡を発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011―115771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の微細バブル発生装置では、微細気泡を生成する為、極めて細い管径のベンチュリー管を使用する為、例えば汚染水に含まれる汚れやゴミ等の残渣によってベンチュリー管が詰まり、微細バブルの生成処理が不可能になる。例えば、3mm程度以下の直径のベンチュリー管を使用した場合、浴槽等の水施設や流水中に含まれるゴミ等の残渣によってベンチュリー管が詰まり、効率よく微細バブルの生成を行うことができない。
【0008】
そこで、本発明はベンチュリー管を使用する微細バブル発生装置であっても残渣によって詰まりを起こすことが無く、旋回流と後述する吐出管に設けられた溝によって渦流を発生させ、ナノレベルの微細気泡を効率良く生成することができる微細バブル発生装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は本発明によれば、旋回流を生成する旋回流生成部と、液体の流れを利用してベンチュリ効果によって負圧状態を作り出すアスピレーターと、上記負圧状態の旋回流の流れに所望の気体を供給する気体供給部と、この気体供給部から供給された気体を含む高速の旋回流が供給され、内周面の長手方向に溝が形成された吐出管とを備え、上記高速の旋回流によって気体を細かな微細気泡に生成すると共に、吐出管の内周面に形成された上記溝によって溝近傍に多くの渦流を生成し、旋回流を回る気泡を更に破砕すると共に、渦流による低圧部を形成して多数の気泡核を生成し、ナノレベルの微細気泡を生成する微細バブル発生装置を提供することによって達成できる。
【0010】
上記溝は吐出管の長手方向に所定の間隔を有し、所定の深さに形成され、上記所定の間隔、及び所定の深さを適宜設定することによって、生成する微細気泡のサイズの調整を行うことを特徴とする。また、上記アスピレーターの先端の直径は、流れる液体に含まれる残渣が通過可能な大きさに設定されていることを特徴とする。
【0011】
尚、上記気体供給部には異なる気体が収納された複数のボンベが接続され、上記気体供給部に選択された気体が供給されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の微細バブル発生装置の断面図である。
図2】旋回流生成部に設けられた旋回流生成部材(羽根)の一例を示す図である。
図3図1のA-A´断面図であり、吐出管に設けられた溝の構成を具体的に説明する拡大図である。
図4】溝が形成された吐出管内の微細気泡の生成、及び渦流による気泡核の生成過程を説明する図である。
図5】アスピレーターの管径を説明する図であり、(a)は断面図であり、(b)は左側面図であり、(c)は右側面図である。
図6】変形例のアスピレーターの管径を説明する図である。
図7】本例の吐出管の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本実施形態の微細バブル発生装置の構成図である。同図において、本実施形態の微細バブル発生装置1は液体入力管2、吐出管3、気体供給部4、及び液体入力管2と吐出管3を接合する接合部材5で構成されている。
【0014】
液体入力管2は液体(例えば、水)が勢いよく供給される液体供給部6、旋回流を生成する旋回流生成部7、及び液体の流れを利用してベンチュリ効果によって減圧状態を作り出すアスピレーター8で構成されている。
【0015】
液体供給部6には、不図示のポンプ等を利用して加圧された液体(以下、水で示す)が勢いよく供給され、旋回流生成部7によって旋回流が生成され、アスピレーター8に供給される。
【0016】
図2は、上記旋回流生成部7に設けられた旋回流生成部材9の一例を示す図である。この様な旋回流生成部材9を旋回流生成部7の内周面に取り付けることによって、液体供給部6から供給された水はこの旋回流生成部材9に形成された羽根によって旋回流となり、アスピレーター8に供給される。尚、図2に示す旋回流生成部材9は一例であり、この形状に限定されるものではない。
【0017】
図1に示すようにアスピレーター8の先端部8aの直径は小さく、供給される旋回流の流速を増加させる構成である。後に図面を使用して説明するが、アスピレーター8の先端部8aの直径φは、例えば7mmに設定され、浴槽やプール、冷却装置(例えば、エアコン)等の循環水に含まれる残渣が、先端部8aを詰まらせることがない大きさに設定されている。
【0018】
すなわち、前述の従来例で説明した、残渣によって詰まる原因である先端部の直径(例えば3mm)より大きいサイズのアスピレーター8を使用している。
【0019】
接合部材5は液体入力管2(アスピレーター8)と吐出管3を接合する。この接合は、接合部材5に設けられた螺子部5aに液体入力管2に設けられた螺子部2aを締着し、接合部材5に設けられた螺子部5bに吐出管3に設けられた螺子部3aを締着することによって固定されている。
【0020】
図1に示す様に、更に接合部材5には気体供給部4もナット10によって取り付けられている。液体供給部4は、本例の微細バブル発生装置1に所望の気体を供給し、液体供給部4には、例えばチューブを介して選択されたボンベから気体が供給される。
【0021】
例えば、同図に示すように、ボンベ12a、12b、12cには異なる気体、例えばオゾンや、窒素、水素等の気体が収納され、夫々のボンベ12a~12cに設けられたバルブ13a、13b、13cを選択して開放することによって、所望の気体を気体供給部4に供給することができる。尚、同図に示すバルブ13dは、更に他の気体が入ったボンベを取り付ける場合に使用するための予備のバルブである。
【0022】
接合部材5には貫通孔15が設けられ、この貫通孔15の先端は吐出管3の先端部3bに設けられた給気口16に通じている。この給気口16は吐出管3の先端部3bに位置し、上記アスピレーター8の狭い先端部8aとの接続部である。この位置は、高速の水流によって負圧状態となる領域であり、選択された気体は給気口16から自動的に吸引される構成である。
【0023】
一方、吐出管3は、例えばステンレスで構成され、内周面に多数の溝13が形成されている。この溝13は吐出管3の長手方向に沿って所定の間隔で形成されている。図3図1のA-A´断面図であり、吐出管3に設けられた溝13の構成を具体的に説明する拡大図である。
【0024】
同図に示すように、吐出管3の内周面には多数の溝13が所定に間隔で形成され、溝13の深さも、所定の深さに設定されている。例えば、本例では溝13の間隔が1mmに設定され、溝13の深さも1mmに設定されている。尚、この吐出管3の溝13の間隔及び深さは適宜設定可能である。
【0025】
この吐出管3には、前述のように前述の旋回流生成部6によって旋回流となり、更にアスピレーター8によって高速になった水流が流れ込む。この水流には接合部材5に設けられた前述の貫通孔15を通して所望の気体が吸引され、吸引された気体は吐出管3を流れる旋回流によって砕け、細かい気泡となる。
【0026】
吐出管3の内周面には上記溝13が設けられており、吐出管3の周面近傍の水流は高速で回転しており、旋回流によって砕けた気泡は更に溝13に衝突して微細な気泡となり、微細気泡含有水となって、吐出管3から放出される。
【0027】
以上の構成の本例の微細バブル発生装置1を使用した場合、微細バブルの生成は以下のような処理手順で行われる。
先ず、不図示のポンプ等によって加圧された液体(例えば、水)を液体入力管2の液体供給部6から供給し、旋回流生成部6(旋回流生成部材9)に設けられた羽根によって、旋回流を生成する。この旋回流は前述のようにアスピレーター8によって流れが絞られ、流速を増し、高速の旋回流となって吐出管3に流れ込む。
【0028】
この時、ボンベ12a~12cの何れかのバルブ13a、13、13cを開放しておくことによって、気体供給部4に選択された気体が送られ、気体供給部4送られた気体は、気体供給部4内の貫通孔15を通して給気口16に達する。この時、給気口16近傍は前述のように負圧状態となっており、給気口16に達した気体は自動的に吐出管3内に吸引される。
【0029】
吐出管3に吸引された気体は、気液混合効果によって気泡となって流れに沿って流れ、高速の旋回流によって砕け、細かな気泡となって旋回流内を流れる。この時、水流の外側を流れる気泡は吐出管3の周面に形成された溝13に衝突し、気泡が更に破砕される。
【0030】
図4はこの状態を具体的に説明する図である。旋回流17に乗って高速に回転する気泡は、吐出管3の内周面に形成された溝13に直角に衝突して砕け、より細かい気泡となる。さらに、吐出管3に形成された溝13の近傍に渦流18が生成され、この渦流18に沿って気泡が回転し、更に砕けてナノレベルの微細気泡となる。
【0031】
また、渦流により低圧部を形成し、多数の気泡核を生成し、ナノレベルの微細気泡を生成する。本例の微細バブル発生装置1においては、上記渦流18が吐出管3の全周面に形成され、効率良くナノレベルの気泡を生成することができる。
【0032】
このようにして、旋回流に混じった気泡はナノオーダの微細気泡となり、微細気泡含有水として、吐出管3から放出され、必要な用途に使用される。
【0033】
すなわち、本例の微細バブル発生装置1によれば、アスピレーター8によって吐出管3の入力部に負圧状態を作り、所望する気体を水流に吸引し、旋回流生成部6によって生成した旋回流によって気泡を細かく砕くと共に、旋回流によって吐出管3の周面に達した気泡を周面に設けられた溝13によって更に破砕し、効率良くナノレベルの気泡を生成することができる発明である。
【0034】
尚、吐出管3の長手方向に形成された溝13の間隔や、溝13の深さを適宜設定することによって、必要なサイズの微細気泡を生成させることも可能である。また、旋回流17の流速を調整することによっても、微細気泡のサイズの設定が可能である。
【0035】
また、本例で使用するアスピレーター8の先端8aの直径は、前述のように従来の装置に比べて広く、例えば本例の微細バブル発生装置1を浴槽や、プール、エアコン等の循環水の殺菌や浄化に使用する場合、循環水には汚れや、多くの細かなゴミ、残渣が含まれており、詰まり等を防止することができる。
【0036】
図5はアスピレーター8の近傍の構成を示す図であり、図5(a)は断面図であり、同図(b)は左側面図であり、同図(c)は右側面図である。同図に示すように本例の微細バブル発生装置1に使用するアスピレーター8の先端8aの直径は、7mmであり、循環水に含まれる残渣による詰まりを防止することができる。
【0037】
尚、図6は他のアスピレーターの例を示し、アスピレーター8´の先端部8a´の直径を、例えば10mmとした例であり、このように先端部8a´の直径を大きくすることによって、循環水に含まれる残渣による詰まりを更に防止することができる。
【0038】
また、図7は前述の吐出管3の変形例であり、この吐出管3´の直径は、後端3c´に向けて広がりのある領域となっている。このように構成することによって、吐出管3´は後端3c´に向けて負圧が徐々に解放され、ナノオーダの微細気泡の生成を促進することができる。
【0039】
尚、上記実施形態の説明では気体としてボンベ12a~12cに収納したオゾンや窒素、水素の例を使用したが、他の気体、例えば重水素、酸素、二酸化炭素、塩素、二酸化窒素、硫化水素、ヘリウム、アルゴン、ネオン等の希ガスを収納し、用途に応じて使用する構成としてもよい。
【0040】
また、上記説明では微細バブル発生装置1に使用する液体として水を使用したが、水に限らず、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、ヘキサン、トルエン等の有機溶媒や石油等の鉱油でもよい。また、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の塩基、塗料や乳等のコロイド、塩酸、硫酸、炭酸、リン酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸等の有機酸を使用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1・・・微細バブル発生装置
2・・・液体入力管
2a・・螺子部
3、3´・・・吐出管
3a・・螺子部
3b・・先端部
3c・・後端部
5・・・接合部材
5a、5b・・螺子部
6・・・液体供給部
7・・・旋回流生成部
8、8´・・・アスピレーター
8a、8a´・・・先端部
9・・・旋回流生成部材
10・・ナット
12a~12c・・ボンベ
12a´~12d´・・バルブ
13・・溝
15・・貫通孔
16・・給気口
17・・旋回流
18・・渦流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7