IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中日本高速技術マーケティング株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社日本ピーエムアールの特許一覧

<>
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図1
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図2
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図3
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図4
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図5
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図6
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図7
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図8
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図9
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図10
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図11
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図12
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図13
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図14
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図15
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図16
  • 特開-仮設防護柵及び仮設防護柵連結体 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186551
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】仮設防護柵及び仮設防護柵連結体
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/02 20060101AFI20221208BHJP
   E01F 15/04 20060101ALI20221208BHJP
   E01F 15/08 20060101ALI20221208BHJP
   E01F 15/12 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
E01F15/02
E01F15/04 A
E01F15/08
E01F15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094831
(22)【出願日】2021-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】514250078
【氏名又は名称】中日本高速技術マーケティング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521246792
【氏名又は名称】株式会社日本ピーエムアール
(74)【代理人】
【識別番号】100096611
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 清
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】今井 巧
(72)【発明者】
【氏名】許斐 氏康
【テーマコード(参考)】
2D101
【Fターム(参考)】
2D101CA03
2D101CA06
2D101DA04
2D101EA07
2D101FA11
2D101FA22
2D101FB04
2D101FB23
2D101GA17
2D101HA06
(57)【要約】
【課題】路面上に設置され、規制された領域への車両の侵入を防止するための仮設防護柵であって、短時間で所定の位置に設置することができる仮設防護柵及び複数の仮設防護柵を連結した仮設防護柵連結体を提供する。
【解決手段】長手方向に所定の長さを有し、路面上に設置される本体部2と、本体部の長手方向の両端部に設けられ、他の仮設防護柵の本体部と着脱が可能に連結するための連結機構4と、本体部に対して上下方向に可動に設けられキャスター3と、を有するものとする。キャスター3は、本体部2の下端より上昇し、本体部が路面上に接触して支持された状態と、本体部の下端より突き出し、本体部が路面から離脱して該キャスターよって支持された状態と、に操作可能とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面上に設置され、規制された領域への車両の侵入を防止するための仮設防護柵であって、
長手方向に所定の長さを有し、路面上に設置される本体部と、
前記本体部の長手方向の両端部に設けられ、他の仮設防護柵の本体部と着脱が可能に連結するための連結機構と、
前記本体部に対して上下方向に可動に設けられキャスターと、を有し、
前記キャスターは、前記本体部の下端より上昇し、該本体部が路面上に接触して支持された状態と、前記本体部の下端より突き出し、該本体部が路面から離脱して該キャスターよって支持された状態と、に操作可能であることを特徴とする仮設防護柵。
【請求項2】
前記連結機構は、該仮設防護柵と他の仮設防護柵との双方の本体部を、水平方向に回動が可能に連結するものであることを特徴とする請求項1に記載の仮設防護柵。
【請求項3】
前記連結機構は、該仮設防護柵と他の仮設防護柵との双方の本体部が水平方向に回動する角度を制限する角度制限部材を有することを特徴とする請求項2に記載の仮設防護柵。
【請求項4】
前記連結機構は、前記本体部から水平方向に突き出した第1の連結板を有し、
該第1の連結板は、連結される他の仮設防護柵の本体部に支持された第2の連結板と水平方向の位置を重ねることが可能に突き出しており、
前記第1の連結板と前記第2の連結板との双方に設けられた円孔を鉛直方向に貫通する連結棒を備えることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の仮設防護柵。
【請求項5】
前記本体部は、長手方向の両端部において鉛直方向に支持された鋼からなる端板と、
双方の端板を水平方向に連結する結合部材と、
前記端板と前記結合部材とで構成される構造体の長手方向の両側面に取り付けられた側面板と、を有し、
前記側面板は、両端部に設けられた端板間で水平方向に連続する凸部を有するものであり、該凸部の下向きの面に上方への揚力を作用させて前記本体部を押し上げることができる強度を有するものであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の仮設防護柵。
【請求項6】
前記キャスターは、
前記本体部に固定された外筒と、前記外筒の内周面に形成された雌ネジにねじり合わされる雄ネジを備えた昇降軸と、該昇降軸の下端に、該昇降軸の軸線回りに相対的な回転が可能に結合されたキャスター基板と、を有するキャスター支持機構によって支持されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の仮設防護柵。
【請求項7】
前記本体部に着脱が可能となった付加重量ブロックを有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の仮設防護柵。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の仮設防護柵が長手方向に複数連結された仮設防護柵連結体であって、
該仮設防護柵連結体の両端部が、地盤に固定された柱体に連結されていることを特徴とする仮設防護柵連結体。
【請求項9】
前記柱体と該仮設防護柵連結体の端部とを連結する連結装置は、
前記柱体に取り付けられる第1の連結縦板と、
該仮設防護柵連結体の端部に、前記連結機構によって前記本体部に取り付けられる第2の連結縦板と、を有し、
前記第1の連結縦板と前記第2の連結縦板とを重ね合わせ、結合することによって端部が前記柱体と連結されていることを特徴とする請求項8に記載の仮設防護柵連結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路や作業エリアにおいて車両等の侵入を規制する領域の境界部に配列され、規制領域を防護するために設置される仮設防護柵及び仮設防護柵の連結体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
供用されている道路の工事に際して車線規制を行うとき等には、走行に供用する車線と規制する車線とを隔て、規制車線での作業を安全に行うために仮設防護柵が設置される。また、仮設防護柵は、建設工事等が行われる作業エリアにおいても車両の進入を規制する領域と車両が通行する領域とを区画するために用いられることがある。
このような仮設防護柵として、例えば特許文献1又は特許文献2に記載されるものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の仮設防護柵はH型鋼を基礎とし、この上に立設した柱体にガードレールを取り付けたものである。また、特許文献2にはコンクリートブロックを基礎とし、この基礎上に防護用の柵を取り付けたものであり、コンクリートブロックは隣接する他のコンクリートブロックと連結が可能となっている。
このような仮設防護柵は、路面上の所定の位置に据え置くことによって設置することができ、路面の加工等は不要である。そして、工事等が終了したときには仮設防護柵を移動することによって車両等の走行の規制を解除することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3008876号公報
【特許文献2】特開2011-26915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の仮設防護柵には、次のような解決が望まれる課題がある。
上記の仮設防護柵は、H型鋼からなる基礎又はコンクリートブロックからなる基礎の重量によってガードレール又は防護用の柵を安定して支持し、車両が誤って侵入するのに抵抗するものとなっている。このため、仮設防護柵の設置にはH型鋼又はコンクリートブロックからなる基礎を、揚重機等を用いて吊り上げて所定の位置に設置することになる。そして、所定の長さの仮設防護柵を順次に設置して配列するのに長い時間を要する。
また、H型鋼やコンクリートブロックからなる基礎を吊り上げて設置するときには、近接位置例えば近接車線を走行する車両に危険が及ぶのを回避するために、広範囲の長時間に及ぶ走行規制が必要になることがある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、短時間で所定の位置に設置することができ、車両等の走行が規制されない状態から規制された状態に短時間で移行することを可能とする仮設防護柵及び仮設防護柵連結体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 路面上に設置され、規制された領域への車両の侵入を防止するための仮設防護柵であって、 長手方向に所定の長さを有し、路面上に設置される本体部と、 前記本体部の長手方向の両端部に設けられ、他の仮設防護柵の本体部と着脱が可能に連結するための連結機構と、 前記本体部に対して上下方向に可動に設けられキャスターと、を有し、 前記キャスターは、前記本体部の下端より上昇し、該本体部が路面上に接触して支持された状態と、前記本体部の下端より突き出し、該本体部が路面から離脱して該キャスターよって支持された状態と、に操作可能である仮設防護柵を提供する。
【0008】
この仮設防護柵では、複数を連結した状態で本体部をキャスターに支持させ、連結した状態で移動することができる。したがって、長い距離に短時間で仮設防護柵を設置することが可能となる。例えば、2車線以上の道路の一部車線を規制するときには、路肩等において本発明の仮設防護柵を配列し、連結した状態でそれぞれの仮設防護柵をキャスターによって支持させる。そして、連結された複数の仮設防護柵を規制する車線と車両の通行を許容する車線との境界に移動し、キャスターを上昇させ本体部を路面上に下降させることによって短時間で仮設防護柵を設置することができる。また、移動に仮設防護柵を吊り上げる必要がないので通行を許容する車線の車両に危険が及ぶのを回避することができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、 請求項1に記載の仮設防護柵において、 前記連結機構は、該仮設防護柵と他の仮設防護柵との双方の本体部を、水平方向に回動が可能に連結するものとする。
【0010】
この仮設防護柵では、複数を連結した連結部分が回動可能となっていることにより、曲線的に配置することが容易となる。また、連結した状態で仮設防護柵を順次に移動することができ、人力又は簡易な装置で円滑な設置が可能となる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の仮設防護柵において、 前記連結機構は、該仮設防護柵と他の仮設防護柵との双方の本体部が水平方向に回動する角度を制限する角度制限部材を有するものとする。
【0012】
この仮設防護柵では、複数を連結して設置されている状態で車両等が衝突したときに、衝突した部分の仮設防護柵が衝撃によって移動するが、連結部分の回動が可能な角度が所定の値に制限されていることによって、隣接して連結されている仮設防護柵に衝撃力が有効に伝達さる。これにより、仮設防護柵の移動量が過大となるのが抑制される。また、衝突した部分の仮設防護柵及び隣接して連結された仮設防護柵は、路面との間に摩擦抵抗力が作用した状態で移動し、衝突車両の衝撃が緩和される。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の仮設防護柵において、 前記連結機構は、前記本体部から水平方向に突き出した第1の連結板を有し、 該第1の連結板は、連結される他の仮設防護柵の本体部に支持された第2の連結板と水平方向の位置を重ねることが可能に突き出しており、 前記第1の連結板と前記第2の連結板との双方に設けられた円孔を鉛直方向に貫通する連結棒を備えるものとする。
【0014】
この仮設防護柵では、第1の連結板と連結する他の仮設防護柵の第2の連結板との位置を調整し、連結棒を上方から円孔に挿入することによって2つの仮設防護柵を容易に連結することができる。そして、連結棒を回動軸として2つの仮設防護柵は水平方向に回動が可能となる。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の仮設防護柵において、 前記本体部は、長手方向の両端部において鉛直方向に支持された鋼からなる端板と、 双方の端板を水平方向に連結する結合部材と、 前記端板と前記結合部材とで構成される構造体の長手方向の両側面に取り付けられた鋼からなる側面板と、を有し、 前記側面板は、両端部に設けられた端板間で水平方向に連続する凸部を有するものであり、該凸部の下向きの面に上方への揚力を作用させて前記本体部を押し上げることができる強度を有するものとする。
【0016】
この仮設防護柵では、端板及び側面板が鋼からなるものであり、簡単に組み立てることができる。そして、凸部の下向きの面に上方への揚力を作用させ、本体部を持ち上げることができ、この状態で水平方向に移動することができる。このとき、上方への揚力は、凸部に沿って水平方向に移動が可能なローラーを介して作用させることにより、仮設防護柵間の連結部を越えて連結された仮設防護柵の持ち上げる部分を移動し、連結された仮設防護柵を順次に移動させることもできる。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5までのいずれかに記載の仮設防護柵において、 前記キャスターは、 前記本体部に固定された外筒と、前記外筒の内周面に形成された雌ネジにねじり合わされる雄ネジを備えた昇降軸と、該昇降軸の下端に、該昇降軸の軸線回りに相対的な回転が可能に結合されたキャスター基板と、を有するキャスター支持機構によって支持されているものとする。
【0018】
この仮設防護柵では、昇降軸を軸線回りに回転駆動することにより迅速に本体部を昇降させ、本体部が路面に支持された状態と、キャスターを介して支持された状態とを迅速に切り換えることが可能となる。
【0019】
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6までのいずれかに記載の仮設防護柵において、 前記本体部に着脱が可能となった付加重量ブロックを有するものとする。
【0020】
この仮設防護柵では、本体部を軽量として輸送や設置を容易にするとともに、設置したのちの移動に対する抵抗力を、付加重量ブロックの質量によって増大させることができる。
【0021】
請求項8に係る発明は、 請求項1から請求項7までのいずれかに記載の仮設防護柵が長手方向に複数連結された仮設防護柵連結体であって、 該仮設防護柵連結体の少なくとも一方の端部が、地盤に固定された柱体に連結されている仮設防護柵連結体を提供するものである。
【0022】
複数の仮設防護柵が連結された連結体の端部が拘束されていない状態であると、端部付近に車両等が衝突すると連結体の端部付近の移動量が過大となるおそれが生じるが、本請求項に係る発明の仮設防護柵連結体では、端部が地盤に固定された柱体に連結されていることにより、移動量を抑制し、仮設防護柵で規制された範囲内の安全を確保することができる。なお、柱体は新たに設置されるものであってもよいし、既存のガードレールの支柱等を用いることもできる。
【0023】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の仮設防護柵連結体において、 前記柱体と該仮設防護柵連結体の端部とを連結する連結装置は、 前記柱体に取り付けられる第1の連結縦板と、 該仮設防護柵連結体の端部に、前記連結機構によって取り付けられる第2の連結縦板と、を有し、 前記第1の連結縦板と前記第2の連結縦板とを重ね合わせ、結合することによって端部が前記柱体と連結されているものとする。
【0024】
この仮設防護柵連結体では、柱体に取り付けられた第1の連結縦板と仮設防護柵連結体側に取り付けられた第2の連結縦板との長さの調整又はこれらを重ね合わせる範囲の調整によって、柱体と仮設防護柵連結体の端部との間隔が異なる場合にも容易に対応して連結することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明の仮設防護柵では、複数を連結した状態で本体部をキャスターに支持させ、連結した状態で移動することができ、長い距離に短時間で仮設防護柵を設置することが可能となる。また、本発明の仮設防護柵連結体では、複数の仮設防護柵を連結した状態で長手方向と直角の方向へ容易に移動することができるとともに、車両の衝突等に対して規制領域の安全性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態である仮設防護柵の概略斜視図であり、本体部のA端が手前に見えるように描いた図である。
図2図1に示す仮設防護柵の概略斜視図であり、本体部のB端が手前に見えるように描いた図である。
図3図1及び図2に示す仮設防護柵の正面図及び断面図である。
図4図1及び図2に示す仮設防護柵の平面図及び側面図である。
図5図1及び図2に示す仮設防護柵の構造体の組み立て図である。
図6図1及び図2に示す仮設防護柵の側面板の取り付け状態を示す概略斜視図である。
図7図1及び図2に示す仮設防護柵のキャスターが設けられた部分の断面図であって、キャスターが本体部に対して下降し、本体部がキャスターを介して支持された状態を示す図である。
図8】2つの仮設防護柵を連結した部分を示す平面図である。
図9】本発明の仮設防護柵を設置する工程を示す概略平面図である。
図10】本発明の仮設防護柵を設置する工程を示す概略平面図である。
図11】本発明の仮設防護柵を連結した状態で移動する他の方法を示す概略図である。
図12図11に示す車両を用い、仮設防護柵を連結した状態で移動する方法を示す概略平面図である。
図13】仮設防護柵連結体に車両が衝突したときの状態を示す概略図である。
図14】本発明の仮設防護柵連結体の端部をガードレールの支柱に連結した状態を示す概略平面図である。
図15】本発明の仮設防護柵連結体の端部をガードレールの支柱に連結した状態を示す側面図である。
図16】本発明の仮設防護柵防護柵連結体の端部を柱体に連結するために用いられる連結装置を示す平面図及び側面図である。
図17】質量付加のためのコンクリートブロックを本体部に取り付けた状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施形態である仮設防護柵を示す概略斜視図であり、図3は正面図及び断面図、図4は平面図及び側面図である。また、この仮設防護柵を構成する構造体の組み立て及び側面板の取り付け状態を図5及び図6に示す。
この仮設防護柵1は、本体部2が鋼によって形成され、この本体部2に対して昇降が可能となるようにキャスター3が装備されている。また、本体部2の長手方向の両端部には連結機構4を備え、同じ構成の仮設防護柵を長手方向に複数を連結することができるものとなっている。上記キャスター3は、図3(b)及び図7に示すように本体部2が路面に接触して支持された状態から該キャスター3を下降させることによって本体部2を支持し、容易に移動することを可能とするものである。
【0028】
上記本体部2は、鋼から成る構造体11とこの構造体11に支持される側面板12とを有するものである。構造体11は、長手方向の両端部で鉛直に設けられた端板13a,13bと、2つの端板13a,13bの間の中央部に長手方向の軸線とほぼ直角に設けられた中間板14と、端板13a,13bと中間板14との間に中間板14とほぼ平行に設けられた2つの中間補強板15と、端板13a,13b、中間板14及び中間補強板15の上部を水平方向に連結する上部結合部材16と、端板13a,13b、中間板14及び中間補強板15の下部を連結する下部結合部材17と、で主要部が構成されている。そして、この構造体11の両側面に鋼からなる側面板12が取り付けられている。
【0029】
上記端板13a,13bは、図3(a)に示すように上部に側方に張り出す複数の凸状部13cを有し、下部は下方に向かって拡幅される形状の鋼板であり、中央部には鉛直方向の折り曲げ線13dによって鉛直方向に連続する凹部が形成されている。この凹部には複数の連結板21a,21bがほぼ水平に突き出すように取り付けられており、それぞれには円孔22が設けられている。これらの連結板21a,21bは、上記連結機構4を構成するものであり、本体部2の一方の端部つまりA端に設けられる連結板21aの高さ位置は、他方の端部つまりB端に設けられる連結板21bの高さと異なるものとなっている。そして、A端に設けられた連結板21aは、同じ構成の他の仮設防護柵のB端に設けられた連結板21bと上下に重ね合わせ、円孔22の水平方向の位置を一致させることができるように突き出している。
上記連結機構4については後述する。
【0030】
上記中間板14及び中間補強板15は、本体部2の長手方向の軸線とほぼ直角に配置される平鋼板であり、これらの中間板14、中間補強板15及び上記端板13a,13bには、図5に示すように、それぞれ側縁から本体部の長手方向に突き出した複数の張出固定部18a,18b,18cが設けられている。これの張出固定部18によって上部結合部材16、下部結合部材17及び側面板12と接合することができるものとなっている。
【0031】
上部結合部材16は、端板13a,13bと中間板14とを連結するものであり、幅方向の中央部に平面部を有し両側縁付近は斜め下方に曲げ下げられた形状となっている。そして、端板13a,13bの背面及び中間板14の立面に取り付けられた取付部材19にボルトによって固定されている。
下部結合部材17は、鋼板を曲げ加工したものであり、端板13a,13bの下部の両側縁に設けられた張出固定部18cにボルトで固定され、双方の端板を両側縁部で連結するものである。
双方の端板13a,13b間では、中間板14の下部及び中間補強板15の下部が下部結合部材17に固定されており、中間補強板15の上部は上部結合部材16の下面に当接して固定されている。
【0032】
上記側面板12は、水平方向の複数の折り曲げ線で鋼板を曲げ加工し、断面が波形となって水平方向に連続する凸部と凹部とが交互に形成されたものである。凸部及び凹部の形状は端板13a,13bの両側縁の上部に形成された複数の凸状部13cと対応するものとなっている。そして、端板の凸状部13cから本体部の軸線方向に張り出した張出固定部18cにボルトによって固定され、2つの端板間の両側部に支持される。
【0033】
上記キャスター3は、キャスター支持機構31によって支持されており、キャスター支持機構31は、外筒32と、この外筒32の内側に装着される昇降軸33と、昇降軸33を軸線回りに回転させるハンドル34と、昇降軸33の下端に該昇降軸に対して軸線回りに回転が可能に接合されたキャスター基板35と、外筒32を本体部2に固定するための固定部材36と、を有するものである。キャスター3は上記キャスター基板35の下面に複数が取り付けられ、キャスター基板35に対して水平方向の旋回が可能となっている。
【0034】
上記外筒32の内周面には雌ネジが形成されており、昇降軸33に形成された雄ネジとねじり合わされている。昇降軸33はハンドル34の回転によって軸線回りに回転駆動され、外筒32に対して上下方向に相対的な変位をする。したがってハンドル34を回転することにより昇降軸33、キャスター基板35及びキャスター3を本体部2に対して下降させ、図7に示すように本体部2を路面5から上昇させて、キャスター3を介して本体部2を支持することができる。このとき昇降軸33とキャスター基板35とは相対的な回転が可能に接合されており、昇降軸33の回転はキャスター基板35に伝達されないものとなっている。そして、キャスター3がキャスター基板35に対して旋回が可能となっていることにより本体部2を任意の方向に移動させることができるものである。
【0035】
連結機構4は、仮設防護柵1のA端と、同じ構成の他の仮設防護柵のB端とを連結するものであり、順次に多数の仮設防護柵を直列に連結することができるものである。この連結機構4は、図5に示すように端板13a,13bに固定された複数の連結板21a,21bと連結板の円孔22に挿通される連結棒23と、連結部に装着される角度制限部材24とで主要部が構成される。
角度制限部材24は、連結棒23が挿通される筒状部24aと、筒状部24aに支持された板状部24bとを有するものである。板状部24bは、2つの仮設防護柵を連結した状態の連結棒24に装着されたときに、対向するA端の端板13aと他の仮設防護柵のB端の端板13bとの間で、双方の端板の側部と近接又は接触する位置に支持されるものである。
【0036】
上記連結機構4により、該仮設防護柵1のA端と同じ構成の他の仮設防護柵のB端とを次のように連結することができる。
上記仮設防護柵のA端と同じ構成の他の仮設防護柵のB端を突き合わせ、双方の連結板21a,21bの円孔22の平面位置が一致するように配置する。そして、連結棒23を上方から挿入することにより、2つの仮設防護柵を連結することができる。
このように連結された2つの仮設防護柵1,1’は、図8に示すように連結棒23を軸として水平方向の相互間の回動が可能となる。そして、角度制限部材24の板状部24bが対向する双方の端板13a,13b間に介挿され、回動可能な角度が規制される。規制する角度αは板状部24bの厚さによって調整することができ、3度から15度までに規制するのが望ましい。より望ましくは、4度から8度までとするものであり、図8に示す実施の形態では6度としている。
【0037】
次に、上記仮設防護柵を設置する工程の例について説明する。これは複数の車線を有する高速道路で一部の車線を規制して舗装の改修工事等のために仮設防護柵を設置するものである。
まず、図9(a)に示すように道路の線形に沿ってパイロン41(例えば登録商標:カラーコーン)等を配列して路肩42の侵入規制を行う。続いて、図9(b)に示すように路肩42に複数の仮設防護柵1を搬入し、キャスターを介して支持した状態で移動し、道路の線形に沿って配列する。そして、連結機構により複数の仮設防護柵1を直列に連結し、図9(c)に示すように仮設防護柵連結体10とする。その後、パイロン41を規制する車線43と車両の通行を許容する車線44との境界部に移動する。路肩で複数の仮設防護柵を連結した仮設防護柵連結体10は、図10(a)に示すように車両の通行を規制した範囲を道路の幅方向に移動する。移動は本体部がキャスターに支持された状態で行うものであり、人力で順次に押し進めてもよいし、車両等を用いて押し進めるものであってもよい。
【0038】
図10(b)に示すように仮設防護柵連結体10を所定の位置に移動した後、図3(b)に示すようにキャスター3を本体部2に対して上昇させ、本体部2を路面上に支持されるまで下降させる。また、必要に応じて一部の仮設防護柵間の連結を解放し、図10(c)に示すように一部の仮設防護柵1aを規制範囲内に移動して工事車両等の進入路とすることもできる。
【0039】
仮設防護柵連結体10を、車両を用いて移動するときには、次のような方法を採用することもできる。
この方法は、仮設防護柵1の本体部2は直接路面に支持された状態としておき、図11に示すように車両45によって仮設防護柵連結体10の一部を持ち上げて移動するものである。そして、図12に示すように車両45の走行によって持ち上げる領域を移動させながら直列に連結された仮設防護柵連結体10を全長にわたって順次に移動するものである。
【0040】
車両45は、図11に示すように、仮設防護柵1を持ち上げるためのアーム51を有するものであり、アーム51には仮設防護柵1の両側部に当接されるローラー52を備えている。ローラー52は仮設防護柵1の側面板12に設けられた凸部の下向きの面に当接され、仮設防護柵1を持ち上げた状態で支持することができるものである。そして、車両45の走行にともなってローラー52が回転し、仮設防護柵1の長手方向に連続する凸部に沿って移動することよって仮設防護柵連結体10の持ち上げる部分を移行する。したがって、図12に示すように仮設防護柵連結体10の軸線方向に車両45を走行させるとともに、持ち上げられた部分の仮設防護柵連結体10の位置を道路の幅方向に連続して移動させてゆくことができる。
【0041】
このような仮設防護柵1は、キャスター3によって支持された状態で容易に移動することができ、少ない作業量で連結して仮設防護柵連結体10とすることができる。そして、連結した状態で容易に移動することができ、短時間で所定の長い範囲にわたって仮設防護柵1を設置することができる。
また、仮設防護柵1を直列に連結した仮設防護柵連結体10は、図13に示すように走行する車両46等が衝突したときに、衝撃によって移動するするとともに連結されて隣接する仮設防護柵に衝突による力が伝達される。このとき、連結されて隣接する仮設防護柵間の回動角が制限されていることによって複数の仮設防護柵が緩やかな曲線状に移動し、それぞれの仮設防護柵が過度に移動するのが抑制される。これにより、それぞれの仮設防護柵を軽量にしても車両が衝突したときの移動量を抑制して、規制領域内の作業者等の安全を確保することが可能となる。
【0042】
一方、仮設防護柵連結体10の端部付近に車両等が衝突したときには、仮設防護柵の移動量が大きくなるおそれがある。このときには、図14に示すように仮設防護柵連結体10の端部を地盤に固定された柱体に連結することができる。柱体は新たに設けるものであってもよいが、既存のガードレール47の支柱48を使用することができる。
【0043】
図15は、仮設防護柵連結体10の端部をガードレール47の支柱48に連結した状態を示す側面図である。また、図16は仮設防護柵連結体10の端部をガードレールの支柱48に連結するための連結装置60の各部材を示す側面図及び平面図である。
この連結装置60は鋼から成るものであり、支柱48に取り付けられる第1の連結縦板61と、仮設防護柵連結体10の端部に連結される第2の連結縦板62と、を備えるものである。
【0044】
第1の連結縦板61は、縦板部71と支柱48に取り付けるための取付部72とを有するものである。
取付部72は、支柱の外周面に当接される支柱当接部72aと、支柱当接部72aと対向する位置で支柱48の外周面に当接される補助部材72bと、支柱48を囲むように補助部材72bの両端と支柱当接部72aとを連結するボルト72cと、を有するものである。そして、この取付部72は鋼部材73によって縦板部71と結合されている。
縦板部71には、水平方向に配列して複数のボルト孔71aが設けられている。これらのボルト孔71aは、上下方向に長く湾曲した形状となっている。
第2の連結縦板62は、縦板部74と仮設防護柵連結体10と結合するための水平張出板75とを有するものであり、鋼板76を介してこれらが結合されている。上記縦板部74には、第1の連結縦板の縦板部71と同形状のボルト孔74aが設けられている。また、上記水平張出板75には、仮設防護柵の連結機構が有する連結棒23を挿通するための円孔75aが設けられている。
なお、第1の連結縦板61又は第2の連結縦板62の縦板部71,74は、仮設防護柵連結体の設置場所の状況等に応じてあらかじめ水平方向の長さを設定しておくことができる。
【0045】
仮設防護柵連結体10の端部は、上記のような連結装置60を用いて、次のようにガードレール47の支柱48に連結することができる。
ガードレールの支柱48には第1の連結縦板61を取り付ける。一方、仮設防護柵連結体10の端部には、第2の連結縦板62が有する水平張出板75の円孔75aと仮設防護柵1の連結板21aに設けられた円孔との位置を合わせ、双方に上方から連結棒23を挿通することによって第2の連結縦板62を連結する。そして、第1の連結縦板61の縦板部71と第2の連結縦板62の縦板部74とを重ね合わせ、位置が一致するボルト孔71a,74aにボルト77を挿通して締め付け、連結する。
上記のように仮設防護柵連結体10の端部は既設の柱体に容易に連結することができる。
【0046】
本発明の仮設防護柵は鋼を主要材料として構成され、軽量にして搬送及び設置を容易にすることができるが、車両等衝突時の抵抗力に寄与する質量が不足するときには、コンクリートブロック等によって質量を付加することができる。図17は、仮設防護柵1に付加質量としてコンクリートブロック81を取り付けた状態を示す概略断面図である。
このコンクリートブロック81は、構造体に取り付けられた支持部材82によって支持される。支持部材82は、仮設防護柵1の両側部に設けられた下部結合部材17間に架け渡されている。コンクリートブロック81には雌ネジ部材83が埋め込まれており、この雌ネジ部材83にねじり合わされるボルト84によって支持部材82に固定される。なお、上記コンクリリートブロック81は、一つの仮設防護柵について、長手方向に複数を取り付けるのが望ましい。
【0047】
以上、図に基づいて説明した仮設防護柵1及び仮設防護柵連結体10は、実施の形態を例示したものであって本発明はこれらの限定されるものではない。したがって、構造の寸法、形状、材料等については、本発明の範囲内において適宜に変更して実施することができるものである。
【符号の説明】
【0048】
1:仮設防護柵, 2:本体部, 3:キャスター, 4:連結機構, 5:路面,
10:仮設防護柵連結体,
11:本体部の構造体, 12:側面版, 13a:仮設防護柵のA端の端板, 13b:仮設防護柵のB端の端板, 13c:端板の凸状部, 13d:端板の折り曲げ線, 14:中間板, 15:中間補強板, 16:上部結合部材, 17:下部結合部材, 18a:中間板に設けられた張出固定部, 18b:中間補強板に設けられた張出固定部, 18c:端板に設けられた張出固定部, 19:取付部材,
21a:A端の連結板, 21b:B端の連結板, 22:円孔, 23:連結棒, 24:角度制限部材, 24a:角度制限部材の筒状部, 24b:角度制限部材の板状部,
31:キャスター支持機構, 32:外筒, 33:昇降軸, 34:ハンドル, 35:キャスター基板,
41:パイロン(例えば登録商標:カラーコーン), 42:路肩, 43:車両の通行を規制する車線, 44:車両の通行を許容する車線, 45:仮設防護柵を移動するための車両, 46:走行する車両, 47:ガードレール, 48:ガードレールの支柱,
51:アーム, 52:ローラー,
60:連結装置, 61:第1の連結縦板, 62:第2の連結縦板,
71:第1の連結縦板の縦板部, 71a:縦板部に設けられたボルト孔, 72:第1の連結縦板の取付部, 72a:支柱当接部, 72b:補助部材, 72c:ボルト, 73:鋼部材, 74:第2の連結縦板の縦板部, 74a:縦板部に設けられたボルト孔, 75:水平張出板, 75a:円孔, 76:鋼板. 77:ボルト,
81:コンクリートブロック, 82:支持部材, 83:雌ネジ部材, 84:ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17