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特開2022-186569加齢による黄斑変性症用の分類モデルを学習させる電子機器及び方法
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  • 特開-加齢による黄斑変性症用の分類モデルを学習させる電子機器及び方法 図1
  • 特開-加齢による黄斑変性症用の分類モデルを学習させる電子機器及び方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186569
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】加齢による黄斑変性症用の分類モデルを学習させる電子機器及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20221208BHJP
   G16H 50/20 20180101ALI20221208BHJP
   A61B 3/14 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G06N20/00
G16H50/20
A61B3/14
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021152961
(22)【出願日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】110120194
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】522096916
【氏名又は名称】宏碁智醫股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】▲チェン▼ 孟哲
(72)【発明者】
【氏名】▲イン▼ 銘佐
(72)【発明者】
【氏名】謝 易庭
【テーマコード(参考)】
4C316
5L099
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB16
4C316FB27
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】加齢による黄斑変性症の段階を異なるグループに属するものとして誤判定することを防止する。
【解決手段】加齢による黄斑変性症(AMD)用の分類モデルを学習させる電子機器及び方法を提供する。この方法は次のステップを含む。学習データを取得する。学習データに対応する損失関数ベクトルを機械学習アルゴリズムに基づいて計算し、損失関数ベクトルは、AMDの第1分類に対応する第1損失関数値、及びAMDの第2分類に対応する第2損失関数値を含み、第1分類は第1グループに対応し、第2分類は第1グループ及び第2グループの一方に対応する。第2分類が第2グループに対応することに応答して、第1損失関数値を第2損失関数値及びグループ・ペナルティ重み値により更新して、更新した損失関数ベクトルを生成する。更新した損失関数ベクトルにより分類モデルを学習させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加齢による黄斑変性症用の分類モデルを学習させる電子機器であって、
トランシーバと、
前記トランシーバに結合されたプロセッサとを具え、
前記プロセッサは、
前記トランシーバを通して学習データを取得し、
前記学習データに対応する損失関数ベクトルを機械学習アルゴリズムに基づいて計算し、該損失関数ベクトルは、前記加齢による黄斑変性症の第1分類に対応する第1損失関数値、及び前記加齢による黄斑変性症の第2分類に対応する第2損失関数値を含み、該第1分類は第1グループに対応し、該第2分類は前記第1グループ及び第2グループの一方に対応し、
前記第2損失関数値が前記第2グループに対応することに応答して、前記第1損失関数値を前記第2損失関数値及びグループ・ペナルティ重み値により更新して、更新した損失関数ベクトルを生成し、
前記更新した損失関数ベクトルにより前記分類モデルを学習させる
ように構成されている電子機器。
【請求項2】
前記プロセッサが、
前記第2分類が前記第1グループに対応することに応答して、前記第1損失関数値を前記第2損失関数値により更新して、前記更新した損失関数ベクトルを生成するようにさらに構成されている、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1分類及び前記第2分類が、それぞれ、前記加齢による黄斑変性症の異なる段階に対応し、前記プロセッサが、
前記第1分類と前記第2分類との段階差に基づいて第1ペナルティ重み値を生成し、
前記第1損失関数値を前記第2損失関数値及び前記第1ペナルティ重み値により更新して、前記更新した損失関数ベクトルを生成する
ようにさらに構成されている、請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記損失関数ベクトルが、前記加齢による黄斑変性症の第3分類に対応する第3損失関数値をさらに含み、前記プロセッサが、
前記第1分類と前記第3分類との第2段階差に基づいて第2ペナルティ重み値を生成し、
前記第1損失関数値を前記第3損失関数値及び前記第2ペナルティ重み値により更新して、前記更新した損失関数ベクトルを生成する
ようにさらに構成されている、請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記第3分類が前記第1グループ及び前記第2グループの一方に対応し、前記プロセッサが、
前記第3分類が前記第1グループに対応することに応答して、前記第1損失関数値を前記第3損失関数値及び前記第2ペナルティ重み値により更新し、
前記第3分類が前記第2グループに対応することに応答して、前記第1損失関数値を、前記第3損失関数値、前記第2ペナルティ重み値、及び前記グループ・ペナルティ重み値により更新して、前記更新した損失関数ベクトルを生成する
ようにさらに構成されている、請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記第2段階差が前記段階差よりも大きく、前記第2ペナルティ重み値が前記第1ペナルティ重み値よりも大きい、請求項4に記載の電子機器。
【請求項7】
前記第1ペナルティ重み値が前記段階差に比例する、請求項3に記載の電子機器。
【請求項8】
前記学習データが、加齢による黄斑変性症の段階の注記を付けた眼底像をさらに含み、前記損失関数ベクトルがバイナリ交差エントロピー関数に対応する、請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記第2損失関数値と前記グループ・ペナルティ重み値との乗算値を計算して、前記更新した損失関数ベクトルを生成する、請求項1に記載の電子機器。
【請求項10】
加齢による黄斑変性症用の分類モデルを学習させる方法であって、
学習データを取得するステップと、
前記学習データに対応する損失関数ベクトルを機械学習アルゴリズムに基づいて計算するステップであって、該損失関数ベクトルが、前記加齢による黄斑変性症の第1分類に対応する第1損失関数値及び前記加齢による黄斑変性症の第2分類に対応する第2損失関数値を含み、該第1分類は第1グループに対応し、該第2分類は前記第1グループ及び第2グループの一方に対応するステップと、
前記第2分類が前記第2グループに対応することに応答して、前記第1損失関数値を前記第2損失関数値及びグループ・ペナルティ重み値により更新して、更新した損失関数ベクトルを生成するステップと、
前記更新した損失関数ベクトルにより前記分類モデルを学習させるステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加齢による黄斑変性症用の分類モデルを学習させる電子機器及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
加齢による黄斑変性症(AMD:age-related macular degeneration)は、臨床症状の重症度に応じた4つの分類を含む。これら4つの分類は、それぞれ第1段階、第2段階、第3段階、及び第4段階である。現在、一部の関係者は、人工知能(AI:artificial intelligence)モデルを用いて眼底像を分析して、加齢による黄斑変性症の重症度を分類している。これらの関係者は、医療関係者が注記を付けた学習データを用いて人工知能モデルを学習させることができる。一般に、医療関係者は、加齢による黄斑変性症を、眼底像中の黄斑領域に応じて分類している。しかし、異なる医療関係者は黄斑領域の異なる識別を有し得る。従って、異なる医療関係者が注記を付けた学習データによって学習させた人工知能モデルは過学習の問題を有することがあり、これにより人工知能モデルの分類精度を低下させる。
【0003】
一方、医療関係者は、加齢による黄斑変性症の異なる段階に対して異なる治療を行う。第3段階及び第4段階はより重症の段階である。患者が第3段階または第4段階の臨床症状を有する際には、医療関係者は専門医への患者の紹介を直ちに手配して、患者の疾患をさらに確認しなければならない。これとは対照的に、患者が第1段階または第2段階の臨床症状を有する際には、専門医への患者の紹介を手配する緊急性は低い。従って、上記分類モデルが、加齢による黄斑変性症の第3段階(または第4段階)を第1段階(または第2段階)として誤って分類すると、このことは患者を最適に治療するに当たり遅れを生じさせ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
技術課題
上記分類モデルが加齢による黄斑変性症の第3段階(または第4段階)を第1段階(または第2段階)として誤って分類すると、患者を最適に治療するに当たり遅れが存在し得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題の解決策
本発明は、加齢による黄斑変性症用の分類モデルを学習させる電子機器及び方法を提供し、これらの電子機器及び方法は、加齢による黄斑変性症用の分類モデルが高い精度で得られるように学習することができる。
【0006】
本発明による、加齢による黄斑変性症用の分類モデルを学習させる電子機器は、プロセッサ及びトランシーバを含む。プロセッサは受信機に結合されている。プロセッサは次のステップを実行するように構成されている。トランシーバを通して学習データを取得する。学習データに対応する損失関数ベクトルを機械学習アルゴリズムに基づいて計算し、この損失関数ベクトルは、加齢による黄斑変性症の第1分類に対応する第1損失関数値、及び加齢による黄斑変性症の第2分類に対応する第2損失関数値を含む。第1分類は第1グループに対応し、第2分類は第1グループ及び第2グループの一方に対応する。第2分類が第2グループに対応することに応答して、第1損失関数値を第2損失関数値及びグループ・ペナルティ重み値により更新して、更新した損失関数ベクトルを生成する。次に、上記分類モデルを、更新した損失関数ベクトルにより学習させる。
【0007】
本発明の1つの好適例では、プロセッサが次のステップを実行するようにさらに構成されている。第2分類が第1グループに対応することに応答して、第1損失関数値を第2損失関数値により更新して、更新した損失関数ベクトルを生成する。
【0008】
本発明の1つの好適例では、第1分類及び第2分類が、それぞれ、加齢による黄斑変性症の異なる段階に対応する。プロセッサは次のステップを実行するようにさらに構成されている。第1分類と第2分類との段階差に応じて第1ペナルティ重み値を生成する。次に、第1損失関数値を第2損失関数値及び第1ペナルティ重み値により更新して、更新した損失ベクトルを生成する。
【0009】
本発明の1つの好適例では、損失関数ベクトルが、加齢による黄斑変性症の第3分類に対応する第3損失関数値をさらに含み、プロセッサは次のステップを実行するようにさらに構成されている。第1分類と第3分類との第2段階差に応じて第2ペナルティ重み値を生成する。次に、第3損失関数値及び第2ペナルティ重み値により第1損失関数値を更新して、更新した損失ベクトルを生成する。
【0010】
本発明の1つの好適例では、第3分類が第1グループ及び第2グループの一方に対応する。プロセッサは次のステップを実行するようにさらに構成されている。第3分類が第1グループに対応することに応答して、第1損失関数値を第3損失関数値及び第2ペナルティ重み値により更新して、更新した損失関数値を生成する。それに加えて、第3分類が第2グループに対応することに応答して、第1損失関数値を、第3損失関数値、第2ペナルティ重み値、及びグループ・ペナルティ重み値により更新して、更新した損失ベクトルを生成する。
【0011】
本発明の1つの好適例では、第2段階差が上記段階差よりも大きく、第2ペナルティ重み値が第1ペナルティ重み値よりも大きい。
【0012】
本発明の1つの好適例では、第1ペナルティ重み値が上記段階差に比例する。
【0013】
本発明の1つの好適例では、上記学習データが、加齢による黄斑変性症の段階の注記を付けた眼底像を含む。上記損失関数ベクトルはバイナリ交差(クロス)エントロピー関数に対応する。
【0014】
本発明の1つの好適例では、プロセッサが第2損失関数値と上記グループ・ペナルティ重み値との乗算値を計算して、更新した損失関数ベクトルを生成する。
【0015】
本発明による、加齢による黄斑変性症用の分類モデルを学習させる方法は、次のステップを含む。学習データを取得する。この学習データに対応する損失関数ベクトルを機械学習アルゴリズムに基づいて計算し、この損失関数ベクトルは、加齢による黄斑変性症の第1分類に対応する第1損失関数値、及び加齢による黄斑変性症の第2分類に対応する第2損失関数値を含む。第1分類は第1グループに対応し、第2分類は第1グループ及び第2グループの一方に対応する。第2分類が第2グループに対応することに応答して、第1損失関数値を第2損失関数値及びグループ・ペナルティ重み値により更新して、更新した損失関数ベクトルを生成する。次に、更新した損失関数ベクトルにより分類モデルを学習させる。
【発明の効果】
【0016】
以上に基づけば、本発明の電子機器は、分類重み値を用いて機械学習アルゴリズムの損失関数値を更新し、更新した損失関数値により分類モデルを学習させることができる。本発明の分類モデルは、より重度の症状を伴う加齢による黄斑変性症の第3段階(または第4段階)を、比較的軽度の症状を伴う第1段階(または第2段階)として誤判定する可能性がより小さい。医療関係者は、分類結果に応じて、専門医への患者の紹介を手配する必要があるか否かを適時に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による、加齢による黄斑変性症用の分類モデルを学習させる電子機器の概略ブロック図である。
図2】本発明の一実施形態による、損失関数ベクトルを更新することの概略図である。
図3】本発明の一実施形態による、加齢による黄斑変性症用の分類モデルを学習させる方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態の説明
前述したことをより分かり易くするために、図面を伴ういくつかの実施形態を以下のように詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を実現することができる例として具体的に引用する。それに加えて、可能な際には常に、図面及び実施形態中の同じ参照番号を有する要素/構成要素/ステップは、同一または同様の構成要素を表す。
【0019】
加齢による黄斑変性症を分類するための分類モデルは、医療関係者が注記を付けた学習データ(例えば、加齢による黄斑変性症の段階の注記を付けた眼底像)に基づいて生成することができる。しかし、医療関係者が決定した注記付きの学習データは、必ずしも正しくないことがある。例えば、医療関係者は、加齢による黄斑変性症の第1段階を加齢による黄斑変性症の第2段階として分類することがある。分類モデルが、これらの容易に混同されるデータに過度に焦点を当てると、分類モデルは過学習によりその一般化(汎化)能力を失い得る。一方、加齢による黄斑変性症の第1段階及び第2段階は専門医の紹介を必要としない段階であるのに対し、加齢による黄斑変性症の第3段階及び第4段階は専門医の紹介を必要とする段階である。従って、分類モデルが第3段階(または第4段階)を第1段階(または第2段階)として誤判定すると、専門医への照会が遅れ、これにより患者を治療する最適なタイミングを失うことがある。以上に基づいて、本発明は、加齢による黄斑変性症用の学習モデルを学習させる方法を目的とし、この方法は過学習の分類モデルを得ることを回避することができる。それに加えて、本発明の分類モデルは、第1グループ(例えば、専門医への紹介を必要としない段階のグループ)を、第2グループ(例えば、専門医への紹介を必要とする段階のグループ)に対応するものとして誤判定する可能性がより小さい。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態による、加齢による黄斑変性症用の分類モデルを学習させるための電子機器100の概略図である。電子機器100は、プロセッサ110、記憶媒体120、及びトランシーバ130を含むことができる。分類モデルは、入力されたデータに応じて加齢による黄斑変性症の分類を生成するように構成することができる。この分類は、加齢による黄斑変性症の第1段階、第2段階、第3段階、または第4段階を含むことができる。
【0021】
プロセッサ110は、例えば、中央処理装置(CPU:central processing unit)、または他のプログラマブルな汎用または専用マイクロコントロールユニット(MCU:micro control unit)、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP:digital signal processor)、プログラマブル・コントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、グラフィックス・プロセシングユニット(GPU:graphics processing unit)、イメージシグナルプロセッサ(ISP:image signal processor)、イメージ・プロセシングユニット(IPU:image processing unit)、数値演算ユニット(ALU:arithmetic logic unit)、結合プログラマブル論理回路(CPLD:complex programmable logic unit)、フィールドプログラマブル・ゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)、または他の同様な素子、あるいは上記の素子の組合せである。プロセッサ110は、記憶媒体120及びトランシーバ130に結合することができ、記憶媒体120に記憶されている複数のモジュール及び種々のアプリケーションプログラムにアクセスしこれらを実行して、電子機器100の機能を実行することができる。
【0022】
記憶媒体120は、例えば、あらゆる種類の固定または着脱可能なランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)、読出し専用メモリ(ROM:read-only memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ(HDD:hard disc drive)、半導体ドライブ(SSD:solid state drive)、または同様な素子、あるいは上記の素子の組合せであり、プロセッサ110によって実行することができる複数のモジュールまたは種々のアプリケーションプログラムを記憶するように構成されている。
【0023】
トランシーバ130は、信号を無線または有線の様式で送信し受信する。トランシーバ130は、低ノイズ増幅、インピーダンス整合、周波数混合、周波数のアップコンバージョンまたはダウンコンバージョン、フィルタ処理、増幅、及び他の類似の機能のような動作を実行することもできる。
【0024】
プロセッサ110は、上記分類モデルを学習させるための学習データ集合を、トランシーバ130を通して取得することができる。この学習データ集合は多数の学習データを含むことができる。これらの学習データは、例えば、加齢による黄斑変性症の段階の注記を付けた眼底像である。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態による、損失関数ベクトル23を更新することの概略図である。上記分類モデルは、例えば機械学習モデルである。プロセッサ110は、上記学習データに対応する損失関数ベクトル23を、機械学習アルゴリズムに基づいて計算することができる。加齢による黄斑変性症は第1段階、第2段階、第3段階、及び第4段階を含むので、損失関数ベクトル23は、それぞれ第1段階、第2段階、第3段階、及び第4段階に対応する4つの損失関数値を含むことができる。しかし、本発明はそのことに限定されない。例えば、損失関数ベクトル23は任意数の損失関数値を含むことができる。本実施形態では、損失関数ベクトル23を[e(1) e(2) e(3) e(4)]として表すことができ、ここにe(1)は第1段階に対応する損失関数値であり、e(2)は第2段階に対応する損失関数値であり、e(3)は第3段階に対応する損失関数値であり、そしてe(4)は第4段階に対応する損失関数値である。
【0026】
一実施形態では、加齢による黄斑変性症の第1段階及び第2段階が、第1グループ(即ち、専門医の紹介を必要としないグループ)に対応し、加齢による黄斑変性症の第3段階及び第4段階が、第2グループ(即ち、専門医の紹介を必要とするグループ)に対応する。プロセッサ110は、トランシーバ130を通してメッセージを受信して、加齢による黄斑変性症の段階(例えば、第1段階、第2段階、第3段階、または第4段階)及びグループ(例えば、第1グループまたは第2グループ)を取得することができる。
【0027】
上記機械学習アルゴリズムの損失関数は、例えば、バイナリ交差エントロピー関数20である。プロセッサ110は、損失関数ベクトル23をバイナリ交差エントロピー関数20により生成することができる。具体的には、上記分類モデルを学習させるプロセスでは、上記機械学習アルゴリズムのソフトマックス(Softmax:登録商標)関数が正規化確率ベクトル21を出力することができる。正規化確率ベクトル21は、それぞれ第1段階、第2段階、第3段階、及び第4段階に対応する4つの正規化確率を含むことができる。しかし、本発明はそのことに限定されない。例えば、正規化確率ベクトル21は任意数の正規化確率を含むことができる。本実施形態では、正規化確率ベクトル21を[p(1) p(2) p(3) p(4)]として表すことができ、ここにp(1)は第1段階の正規化確率であり、p(2)は第2段階の正規化確率であり、p(3)は第3段階の正規化確率であり、そしてp(4)は第4段階の正規化確率である。正規化確率は式(1)に示すように0~1の閉区間に属し、ここにp(j)は加齢による黄斑変性症の第j段階の正規化確率である。
p(j)∈[0, 1] ---(1)
【0028】
一方、プロセッサ110は、加齢による黄斑変性症の段階に対応するワンホット符号化ベクトル22を、上記学習データ(即ち、加齢による黄斑変性症の段階の注記を付けた眼底像)の注記に応じて生成することができる。ワンホット符号化ベクトル22は、それぞれ第1段階、第2段階、第3段階、及び第4段階に対応する4つの符号化値を含むことができる。しかし、本発明はそのことに限定されない。例えば、ワンホット符号化ベクトル22は任意数の符号化値を含むことができる。本実施形態では、ワンホット符号化ベクトル22を[c(1) c(2) c(3) c(4)]として表すことができ、ここにc(1)は第1段階の符号化値であり、c(2)は第2段階の符号化値であり、c(3)は第3段階の符号化値であり、そしてc(4)は第4段階の符号化値である。この符号化値は「0」または「1」とすることができる。ワンホット符号化ベクトル22は1つの符号化値「1」及び3つの符号化値「0」を含むことができ、ここに符号化値「1」は、加齢による黄斑変性症の段階のうち上記学習データ中に注記が付いた段階に対応し、符号化値「0」は、加齢による黄斑変性症の段階のうち上記学習データ中に注記が付いていない段階に対応する。例えば、上記学習データに第3段階としての注記が付いている際に、ワンホット符号化ベクトル22は[0010]として表すことができる。
【0029】
正規化確率ベクトル21及びワンホット符号化ベクトル22を取得した後に、プロセッサ110は、正規化確率ベクトル21及びワンホット符号化ベクトル22をバイナリ交差エントロピー関数20に入力して、損失関数ベクトル23を生成する。
【0030】
一般に、より小さい絶対値を有する段階差を有する2つの段階は、区別することがより困難である。より大きい絶対値を有する段階差を有する2つの段階は、区別することがより容易である。例えば、眼底像を第1段階及び第2段階の一方として分類することは、この眼底像を第1段階及び第3段階の一方として分類することよりも困難である。換言すれば、第1段階が第2段階として誤判定される確率はより高いのに対し、第1段階が第3段階として誤判定される確率はより低い。分類モデルが、より小さい段階差を有する段階どうしを区別することに過度に焦点を当てると、過学習が発生し得る。分類モデルの過学習を防止するために、プロセッサ100は、ペナルティ重み値を用いて分類モデルの損失関数値を更新し、更新した損失関数値により分類モデルを学習させることができる。それに加えて、分類モデルが、加齢による黄斑変性症の段階を異なるグループに属するものとして誤判定することを防止するために、プロセッサ110は、グループ・ペナルティ重み値を用いることによって分類モデルの損失関数値を更新し、更新した損失関数値により分類モデルを学習させることができる。
【0031】
具体的には、プロセッサ110は、損失関数ベクトル23と重み行列24とを乗算して、更新した損失関数ベクトル25を生成し、更新した損失関数ベクトル25により分類モデルを学習させることができる。更新した損失関数ベクトル25のサイズは、損失関数ベクトル23のサイズと同じにすることができる。損失関数ベクトル23が[e(1) e(2) e(3) e(4)]として表されるものと仮定すれば、プロセッサ110は、更新した損失関数ベクトルを式(2)により計算することができ、ここにMは重み行列24であり、[e(1)’ e(2)’ e(3)’ e(4)’]は更新した損失関数ベクトル25である。更新した損失関数ベクトル25は、第1段階の更新した損失関数e(1)’、 第2段階の更新した損失関数e(2)’、 第3段階の更新した損失関数e(3)’、及び第4段階の更新した損失関数e(4)’を含むことができる。
[e(1)’ e(2)’ e(3)’ e(4)’]=[e(1) e(2) e(3) e(4)]・M ---(2)
【0032】
更新した損失関数ベクトル25における更新した損失関数値は式(3)で表すことができ、ここにe(i)’は第i段階の更新した損失関数値(または更新した損失関数ベクトル25の第i行の要素)を表し、e(j)’は第j段階の損失関数値(または損失関数ベクトル23の第j行の要素)を表し、a(i,j)は第i段階及び第j段階に対応する誤差重み値を表し、b(i,j)は第i段階及び第j段階に対応するペナルティ重み値を表し、c(i,j)は第i段階及び第j段階に対応する重み指数を表し、iまたはjは1~4の閉区間に属する(即ち、i∈[1, 4]かつj∈[1, 4]である)。異なる段階に対する誤差重み値は、同じにすることも異ならせることもできる。
e(i)’=Σj,j≠ie(j)・(a(i,j)+b(i,j)+c(i,j)) ---(3)
【0033】
式(3)に示すように、プロセッサ110は、損失関数値e(2)、損失関数値e(3)、または損失関数値e(4)により、更新した損失関数値e(1)’を生成することができる。例えば、更新した損失関数値e(1)’は、損失関数値e(2)とペナルティ重み値b(1,2)との乗算値e(2)・b(1,2)、損失関数値e(3)とペナルティ重み値b(1,3)との乗算値e(3)・b(1,3)、及び損失関数値e(4)とペナルティ重み値b(1,4)との乗算値e(4)・b(1,4)を含むことができる。
【0034】
プロセッサ110は、第i段階及び第j段階に対応するペナルティ重み値b(i,j)を、第i段階と第j段階との段階差(即ち、i-j)により計算することができる。一実施形態では、ペナルティ重み値b(i,j)が、式(4)に示すように、第i段階と第j段階との段階差の絶対値に比例することができる。例えば、第1段階と第3段階との段階差|1-3|が第1段階と第2段階との段階差|1-2|よりも大きいので、第1段階及び第3段階に対応するペナルティ重み値b(1,3)は、第1段階及び第2段階に対応するペナルティ重み値b(1,2)よりも大きい。
b(i,j)∝|i-j| ---(4)
【0035】
一実施形態では、第i段階と第j段階とが同じグループに属する際には、重み指数c(i,j)が0に等しい。第i段階と第j段階とが異なるグループに属する際には、重み指数c(i,j)がグループ・ペナルティ重み値Cに等しい。換言すれば、第i段階及び第j段階が共に第1グループに属する際には、重み指数c(i,j)が0に等しい。第i段階及び第j段階が共に第2グループに属する際には、重み指数c(i,j)が0に等しい。第i段階が第1グループに属し第j段階が第2グループに属する際には、式(5)に示すように、重み指数c(i,j)がグループ・ペナルティ重み値Cに等しく、ここにS1は第1グループであり、S2は第2グループである。
【数1】
【0036】
第1段階及び第2段階が第1グループ(即ち、S1)に属し、第3段階及び第4段階が第2グループ(即ち、S2)に属するので、c(1,2)=c(3,4)=0であり、c(1,3)=c(2,3)=Cである。例えば、式(3)及び(5)によれば、更新した損失関数値e(1)’は損失関数値e(3)とグループ・ペナルティ重み値Cとの乗算値e(3)・Cを含むことができ、損失関数値e(4)とグループ・ペナルティ重み値Cとの乗算値e(4)・Cを含むことができる。他の一例では、更新した損失関数値e(3)’が、損失関数値e(1)とグループ・ペナルティ重み値Cとの乗算値e(1)・Cを含むことができ、失関数値値e(2)とグループ・ペナルティ重み値Cとの乗算値e(2)・Cを含むことができる。
【0037】
各誤差重み値a(i,j)が1に等しく、ペナルティ重み値b(i,j)が(式(6)に示すように)第i段階と第j段階との段階差に0.1を乗じた値に等しく、グループ・ペナルティ重み値Cが0.3に等しいものと仮定する。その結果、式(2)中の重み行列24は式(7)のように表すことができる。プロセッサ110は、損失関数ベクトル23と重み行列24とを乗算して、更新した損失関数ベクトル25を生成することができる。更新した損失関数ベクトル25を得た後に、プロセッサ110は、更新した損失関数ベクトル25により、加齢による黄斑変性症用の分類モデルを学習させることができる。
b(i,j)=0.1・|i-j| ---(6)
【数2】
【0038】
図3は、本発明の一実施形態による、加齢による黄斑変性症用の分類モデルを学習させる方法のフローチャートである。この方法は図1に示す電子機器100によって実現することができる。ステップS301では、学習データを取得する。ステップS302では、この学習データに対応する損失関数ベクトルを機械学習アルゴリズムに基づいて計算する。この損失関数ベクトルは、加齢による黄斑変性症の第1段階に対応する第1損失関数値、及び加齢による黄斑変性症の第2段階に対応する第2損失関数値を含む。第1分類は第1グループに対応し、第2分類は第1グループ及び第2グループの一方に対応する。ステップS303では、第2分類が第2グループに対応することに応答して、第1損失関数値を第2損失関数値及びグループ・ペナルティ重み値により更新する。ステップS304では、更新した損失関数ベクトルにより分類モデルを学習させる。
【0039】
要約すれば、本発明の電子機器は、分類重み値を用いて機械学習アルゴリズムの損失関数値を更新することができる。この電子機器は、他の分類の損失関数値を用いて、特定の分類の損失関数値を更新することができる。他の分類とこの特定の分類とが同じグループに属する際には、この電子機器は他の分類に分類重み値を与える必要がない。他の分類とこの特定の分類とが異なるグループに属する際には、この電子機器は他の分類に分類重み値を与える。更新した損失関数ベクトルによって学習させた分類モデルは、加齢による黄斑変性症の段階を、異なるグループに対応する他の段階として誤判定する可能性がより小さい。この分類モデルの分類結果によれば、医療関係者は、専門医への紹介を必要とする患者を専門医への紹介を必要としない患者として誤判定すること、あるいは専門医への紹介を必要としない患者を専門医への紹介を必要としする患者として誤判定することがない。
【0040】
本発明は上述した実施形態を参照しながら説明してきたが、排他的であること、あるいは本発明を開示した明確な形態または好適な実施形態に限定することは意図していない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなしに、説明した実施形態に変更を加えることができることは、通常の当業者にとって明らかである。従って、本発明の範囲は、本明細書に添付した特許請求の範囲及びその等価物によって規定され、特許請求の範囲では、特に断りのない限り、用語はその最も広義の合理的な感覚を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明による、加齢による黄斑変性症用の分類モデルを学習させる電子機器及び方法は、過学習の分類モデルを得るための学習を防止する。それに加えて、本発明の分類モデルは、第1グループ(例えば、専門医への紹介を必要としない段階のグループ)に対応する段階を第2グループ(例えば、専門医への紹介を必要とする段階のグループ)として誤判定する可能性がより小さい。このことは患者が最適な医療を最適な時点で受けることを可能にする。
【符号の説明】
【0042】
100:電子機器
110:プロセッサ
120:記憶媒体
130:トランシーバ
20:バイナリ交差エントロピー関数
21:正規化確率ベクトル
22:ワンホット符号化ベクトル
23:損失関数ベクトル
24:重み行列
25:更新した損失関数ベクトル
S301、S302、S303、S304:ステップ
図1
図2
図3
【外国語明細書】