(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186570
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】壁面作業装置および方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20221208BHJP
G05D 1/10 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
E04G21/16
G05D1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165204
(22)【出願日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2021093511
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000167233
【氏名又は名称】光洋機械産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517011065
【氏名又は名称】株式会社アイ・ロボティクス
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千坂 修
(72)【発明者】
【氏名】立田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】坂本 義宣
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼下 太志
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼崎 綾信
(72)【発明者】
【氏名】安藤 嘉康
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 健一
(72)【発明者】
【氏名】宮川 泰
【テーマコード(参考)】
2E174
5H301
【Fターム(参考)】
2E174DA14
2E174DA52
5H301AA06
5H301BB10
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD13
5H301GG09
(57)【要約】
【課題】壁面に対する作業を簡便且つ好適に実行し得る壁面作業装置を提供する。
【解決手段】壁面Wに対し走行可能に構成された走行体2と、走行体2の左右に設置された支持柱3aおよび該支持柱3aに沿って昇降する昇降体3bを備えた昇降支持装置3と、昇降体3bの位置から繰り出され、走行体2を左右から支持すると共に走行体2の位置を操作する支持操作索4と、走行体2に搭載され、壁面Wに対し作業を行う作業機器7とを備えて壁面作業装置1を構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に対し走行可能に構成された走行体と、
前記走行体に搭載され、壁面に対し作業を行う作業機器と
を備え、
前記走行体は、前記走行体の左右に設置された支持柱、および該支持柱に沿って昇降する昇降体を備えた昇降支持装置における前記昇降体の位置から繰り出される支持操作索により、左右から支持されると共に位置を操作されるよう構成されたこと
を特徴とする壁面作業装置。
【請求項2】
壁面に対し走行可能に構成された走行体と、
前記走行体に搭載され、壁面に対し作業を行う作業機器と
を備え、
前記走行体は、少なくとも前記走行体の左右から繰り出される支持操作索によって支持されると共に位置を操作されるよう構成されていること
を特徴とする壁面作業装置。
【請求項3】
前記走行体は、壁面に対する押付力を発生させるプロペラを備えていること
を特徴とする請求項1または2に記載の壁面作業装置。
【請求項4】
前記プロペラは可変ピッチプロペラであること
を特徴とする請求項3に記載の壁面作業装置。
【請求項5】
前記走行体に、前記支持操作索とは別の方向から前記走行体に対し張力を加えるよう補助索が接続されること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の壁面作業装置。
【請求項6】
前記走行体から吊り下げられた錘を備えていること
を特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の壁面作業装置。
【請求項7】
前記走行体は、壁面に対し吸着する吸着部を備えていること
を特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の壁面作業装置。
【請求項8】
前記走行体の左右に設置された支持柱および該支持柱に沿って昇降する昇降体を備えた昇降支持装置と、
前記昇降体の位置から繰り出され、前記走行体を左右から支持すると共に前記走行体の位置を操作する支持操作索と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の壁面作業装置。
【請求項9】
前記昇降体の高さおよび前記支持操作索の繰出し長さに基づき、壁面における前記走行体の位置を把握し得るよう構成されたこと
を特徴とする請求項8に記載の壁面作業装置。
【請求項10】
前記支持操作索は、前記昇降体に積載された前記支持操作索の繰出装置から繰り出されること
を特徴とする請求項8または9に記載の壁面作業装置。
【請求項11】
前記走行体に、壁面に対し吸着する吸着部を備えると共に、
前記昇降体に、前記吸着部の動作に使用する吸着関連機器を積載し、前記吸着部と前記吸着関連機器の間を連絡索で接続したこと
を特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の壁面作業装置。
【請求項12】
前記昇降体に、前記作業機器による作業に関連して使用する作業関連機器を積載し、前記作業機器と前記作業関連機器の間を連絡索で接続したこと
を特徴とする請求項8~11のいずれか一項に記載の壁面作業装置。
【請求項13】
壁面に対し走行可能に構成された走行体と、
前記走行体に搭載され、壁面に対し作業を行う作業機器と
を用い、
少なくとも前記走行体の左右から繰り出される支持操作索により、前記走行体を支持すると共に前記走行体の位置を操作すること
を特徴とする壁面作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に対し点検や塗装等の作業を行うための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物やその他の構造物、自然物等の壁面に対して何らかの作業(塗装や機械の組付け、点検等)を行う場合には、前記壁面に沿って人が行き来できる足場を組み、該足場に人が登って前記作業を行うことが一般的である。しかしながら、人が安全に作業を行うのに十分な強度を有する足場を組むには相応の手間と費用がかかるし、人の手による前記作業自体にもやはり手間と費用がかかる。
【0003】
そこで、こういった作業を小型の飛行装置を用いて代替することが提案され、実用化されつつある(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-203564号公報
【特許文献2】実用新案登録第3225084号明細書
【特許文献3】特開2017-169395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般にドローンと呼称されるこうした飛行装置は、小型で飛行の安定性が高く小回りが利き、操作も容易であり、種々の分野において活用されている。一方で、搭載可能な重量には自ずと限界があり、例えば壁面等に対し何らかの作業を行う場合、対象の画像を取得するような簡単な点検作業等であればさほど支障なくこなすことができるが、ある程度の重量物の搬送が必要とされる作業には向かない。このため、例えば壁面の塗装や、壁面に対する機械類の組付けといった場面に同様の技術を導入し、作業の簡便化を図るまでには至っていなかった。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑み、壁面に対する作業を簡便且つ好適に実行し得る壁面作業装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、壁面に対し走行可能に構成された走行体と、前記走行体に搭載され、壁面に対し作業を行う作業機器とを備え、前記走行体は、前記走行体の左右に設置された支持柱、および該支持柱に沿って昇降する昇降体を備えた昇降支持装置における前記昇降体の位置から繰り出される支持操作索により、左右から支持されると共に位置を操作されるよう構成されたことを特徴とする壁面作業装置にかかるものである。
【0008】
また、本発明は、壁面に対し走行可能に構成された走行体と、前記走行体に搭載され、壁面に対し作業を行う作業機器とを備え、前記走行体は、少なくとも前記走行体の左右から繰り出される支持操作索によって支持されると共に位置を操作されるよう構成されていることを特徴とする壁面作業装置にかかるものである。
【0009】
本発明の壁面作業装置において、前記走行体は、壁面に対する押付力を発生させるプロペラを備えて構成することができる。
【0010】
本発明の壁面作業装置において、前記プロペラは可変ピッチプロペラとすることができる。
【0011】
本発明の壁面作業装置においては、前記走行体に、前記支持操作索とは別の方向から前記走行体に対し張力を加えるよう補助索を接続することができる。
【0012】
本発明の壁面作業装置は、前記走行体から吊り下げられた錘を備えることもできる。
【0013】
本発明の壁面作業装置において、前記走行体は、壁面に対し吸着する吸着部を備えて構成することができる。
【0014】
本発明の壁面作業装置は、前記走行体の左右に設置された支持柱および該支持柱に沿って昇降する昇降体を備えた昇降支持装置と、前記昇降体の位置から繰り出され、前記走行体を左右から支持すると共に前記走行体の位置を操作する支持操作索とをさらに備えることができる。
【0015】
本発明の壁面作業装置は、前記昇降体の高さおよび前記支持操作索の繰出し長さに基づき、壁面における前記走行体の位置を把握し得るよう構成することができる。
【0016】
本発明の壁面作業装置において、前記支持操作索は、前記昇降体に積載された前記支持操作索の繰出装置から繰り出される構成とすることができる。
【0017】
本発明の壁面作業装置においては、前記走行体に、壁面に対し吸着する吸着部を備えると共に、前記昇降体に、前記吸着部の動作に使用する吸着関連機器を積載し、前記吸着部と前記吸着関連機器の間を連絡索で接続することができる。
【0018】
本発明の壁面作業装置においては、前記昇降体に、前記作業機器による作業に関連して使用する作業関連機器を積載し、前記作業機器と前記作業関連機器の間を連絡索で接続することができる。
【0019】
また、本発明は、壁面に対し走行可能に構成された走行体と、前記走行体に搭載され、壁面に対し作業を行う作業機器とを用い、少なくとも前記走行体の左右から繰り出される支持操作索により、前記走行体を支持すると共に前記走行体の位置を操作することを特徴とする壁面作業方法にかかるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の壁面作業装置および方法によれば、壁面に対する作業を簡便且つ好適に実行するという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施による壁面作業装置の全体的な構成の一例(第一実施例)を示す概要図である。
【
図2】壁面作業装置を構成する走行体の形態の一例を示す正面図である。
【
図4】壁面作業装置を構成する走行体の位置の算出について説明する概念図である。
【
図5】本発明の実施による壁面作業装置の全体的な構成の別の一例(第二実施例)を示す概要図である。
【
図6】本発明の実施による壁面作業装置の全体的な構成のさらに別の一例(第三実施例)を示す概要図である。
【
図7】本発明の実施による壁面作業装置の全体的な構成のさらに別の一例(第四実施例)を示す概要図である。
【
図8】本発明の実施による壁面作業装置の全体的な構成のさらに別の一例(第五実施例)を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1~
図3は本発明の実施による壁面作業装置の形態の一例(第一実施例)を示している。本第一実施例の壁面作業装置1は、走行体2と、一対の昇降支持装置3とを備えており、作業対象の壁面Wに沿って走行体2を走行させつつ、左右の昇降支持装置3から伸びる支持操作索4で走行体2を支持し、該走行体2の位置を操作するようになっている。
【0024】
尚、本明細書において「壁面」とは、建築物の外面または仕切りとしての壁や、屋外の領域を区切る塀、あるいは発電所の炉などの機械や設備の内壁、さらに自然の構造物における崖面、その他、垂直面に沿った向きを有する各種の面を指すものとする。「垂直面に沿った向きを有する面」とは、重力方向に関し厳密に垂直な平面のみを指すのではなく、曲面であってもよいし、ある程度傾斜していてもよい。人間が感覚的に壁面あるいはそれに類似する面と認識し得る面状の構造であれば、本明細書における「壁面」に該当し得る。
【0025】
走行体2は、棒状の構造材を方形に組み合わせて構成された本体2aの四隅にそれぞれ走行部としての車輪2bを備えており、
図3に示す如く車輪2bを壁面Wに接して壁面W上を走行できるようになっている。各車輪2bは、例えば走行体2の裏側(尚、ここでは、走行体2に関して壁面Wと向かい合う側を「裏側」、その反対側を「表側」と称することとする)に取り付けられたボールキャスタとして構成されており、該車輪2bの回転により、走行体2が壁面に沿って任意の方向に自在に走行できるようになっている。尚、本明細書でいう「走行」とは、車輪による走行のみを指すものではなく、壁面に沿って移動する動作一般を意味するものとする。すなわち、本発明の実施において、走行体を壁面に沿って走行させるにあたり、走行のための機構はここに示したような車輪に限定されない。また、本体2aや走行部(車輪)2bの具体的な構成としては、後に説明するように作業を支障なく行える限りにおいて、ここに説明した以外にも種々の形態を採用し得る。
【0026】
また、走行体2の表側には、走行体2全体を壁面Wに向かって押し付ける押付力を発生させるためのプロペラ2cが設けられている。プロペラ2cは、回転によって走行体2から表側へ送風を行うようになっており、その反作用によって走行体2全体を裏側へ押し付け、これにより、走行体2を壁面Wに対し保持するようになっている。
【0027】
ここで、走行体2の操作に関する応答性を向上させる観点から、プロペラ2cとしては、いわゆる可変ピッチプロペラを採用すると特に好適である。可変ピッチプロペラは、ピッチを自在に変更できるよう構成されたプロペラであり、回転方向や回転数を一定にしながら推力の大きさや向きを変化させることができる。すなわち、プロペラ2cを可変ピッチプロペラとした場合、プロペラ2cは、壁面Wに対する押付力の大きさを様々に変化させることができるほか、同じ向きに回転したまま押付力をゼロにすることもできるし、さらに負の押付力(壁面Wから離れる向きの力)を生じさせることもできる。
【0028】
走行体2における2本の支持操作索4の取付位置は、本第一実施例の場合、本体2aの右上および左上としている。例えば本体2aの上部の一点に2本の支持操作索4を接続して走行体2を吊下支持することも可能であるが、そのようにした場合、壁面Wに沿った走行体2の動作に伴い、走行体2が支持操作索4による支持点の下方で壁面Wに向かって左右方向に揺れる動きが生じる可能性がある。そこで
図1に示すように、異なる2点にそれぞれ支持操作索4を接続し、その2点からの張力で走行体2を吊り下げるようにすれば、走行体2の動きが2点において拘束され、これにより左右方向の揺れの発生を抑制することができる。
【0029】
さらに本第一実施例の場合、走行体2には壁面Wに対し吸着するための吸着部5が設けられている。吸着部5としては、例えば「真空グリッパ」や「真空吸着グリッパ」「真空吸着パッド」、あるいは「サクションリフタ」等の名称で販売されている装置と同じ装置、また、これらと共通する原理を利用した装置を用いることができる。すなわち、吸着部5を、壁面Wとの間の空気を吸引して陰圧を発生させる空気式の吸着装置として構成し、これによって吸着部5を取り付けた走行体2の全体を壁面Wに保持する。あるいは、作業対象である壁面Wとして鉄などの磁性体による構造体(例えば、火力発電所の炉壁など)を想定する場合には、吸着部5を電磁式の吸着装置として構成してもよい。すなわち、吸着部5に電磁石を備え、該電磁石に通電することで磁性体である壁面Wに対し電磁力によって吸着する。その他、例えば静電力によって壁面Wに吸着する型式など、壁面Wに対して適当に吸着し得る限りにおいて、吸着部5としては各種の仕組みや原理による装置を採用し得る。
【0030】
尚、吸着部5を空気式の吸着装置とする場合には、空気を吸引するためのポンプやチューブが別途必要であるし、吸着部5を電磁式あるいは静電式の吸着装置とする場合には、要求される吸着力にもよるが、外部から電力を供給するための電源装置や電源ケーブルが別途必要である。本第一実施例の壁面作業装置1において、吸着部5の動作に使用するポンプや電源装置といった機器は、吸着関連機器5aとしてカゴ3bに積載することができる。また、走行体2に搭載された吸着部5と、カゴ3bに積載された吸着関連機器5aとの間は、連絡索6としてのチューブや電源ケーブルで接続することができる。連絡索6は、走行体2に搭載された機器と、カゴ3bに積載された機器の間を接続するケーブルやホース、チューブ、あるいはそれらの束である。
【0031】
このように、本第一実施例において、走行体2はプロペラ2cによる押付力と、吸着部5による吸着力の両方により、壁面Wに対して保持されるようになっている。尚、本発明の壁面作業装置を実施するにあたり、走行体に対する機器類の搭載重量等の条件によっては、プロペラまたは吸着部のいずれかのみを走行体に備えるようにしてもよい。
【0032】
また、走行体2には、壁面Wに対して作業を行うための作業機器7が搭載される。作業機器7の具体的な構成は作業の内容に応じて様々であり、例えば、壁面Wの塗装を行う場合には作業機器7は塗料を噴射するノズル等であり、壁面Wの検査を行う場合には作業機器7は壁面Wの画像を取得するためのカメラやその他の測定機器であり、壁面Wに対して何らかの部品や装置等の組付けを行う場合には作業機器7は工具等である。作業機器7には、該作業機器7の構成や作業の内容に応じ、電力供給のための電源ケーブル、作業機器7によって取得したデータや作業機器7に対し入力する操作信号等のやり取りを行うための通信ケーブル、塗料を供給するための供給チューブ等が連絡索6として接続される。
【0033】
昇降支持装置3は、走行体2の左右に壁面Wに沿って設置される支持柱3aと、該支持柱3aに沿って昇降する昇降体としてのカゴ3bを備えている。支持柱3aの適宜位置には、図示しない巻揚機等が設置されており、該巻揚機等の作動によりカゴ3bを支持柱3aに沿って上下に昇降できるようになっている。尚、昇降体としてここではカゴ3bを例示したが、昇降体の構成はこれに限定されない。例えば、支持柱3aに沿って昇降する台として昇降体を構成してもよい。また、昇降体を昇降させる仕組みとしては巻揚機に限らず、例えば自昇式の昇降装置を採用してもよい。
【0034】
尚、昇降支持装置3としては、例えば足場作業用の装置として販売されている各種装置と同様の装置を使用することができる。例えば本願出願人は、壁面作業用の足場を支持柱に沿って上下させる「パワーマスト」(商品名)や「パワーリフト」(商品名)、壁面作業用の足場に対し荷揚げ用のカゴを支持柱に沿って上下させる「パワークライマー」(商品名)といった装置を販売しており、これらの装置をそのまま、あるいは一部を改変して本発明の壁面作業装置における昇降支持装置に転用することができる。
【0035】
カゴ3bには、支持操作索4を介して走行体2を操作する支持操作索4の繰出装置としての巻揚機8が積載されている。支持操作索4は、走行体2を支持するワイヤロープであり、巻揚機8は、支持操作索4を繰り出し、巻き取る装置である。左右のカゴ3bの位置から繰り出される一対の支持操作索4の先端は走行体2に接続されており、これにより走行体2を左右から支持し、その位置を操作するようになっている。カゴ3bには、巻揚機8の動力としてのモータ(図示せず)も共に積載される。尚、巻揚機8や図示しないモータを設置する位置はカゴ3bでなくてもよいが、後述するようにカゴ3bを上下に昇降させながら支持操作索4によって走行体2を操作するには、巻揚機8をカゴ3bに積載するのが簡便である。
【0036】
また、カゴ3bには、走行体2に搭載された作業機器7による作業に関連して使用する機器類(作業関連機器7a)が積載される。例えば、作業機器7の電源装置や、作業機器7を有線で操作する場合にはその通信ケーブル、作業機器7が塗装のためのノズルである場合には塗料タンク等が、作業関連機器7aに相当する。カゴ3bに積載した作業関連機器7aと作業機器7の間は、連絡索6によって接続される。
【0037】
また、壁面作業装置1には、昇降支持装置3に備えたカゴ3bの高さを測定するための高さセンサ13が設けられている。高さセンサ13は、例えばレーザ式の測距センサである。本第一実施例の場合、高さセンサ13は
図1における左右の昇降支持装置3の設置された位置の地面の高さに設けられており、上方に位置するカゴ3bに向けて垂直に照射光を照射し、カゴ3bからの反射光を検出することで、カゴ3bの高さを把握することができる。尚、高さセンサ13は地面の高さでなく、カゴ3b側に取り付けてもよい。
【0038】
また、カゴ3bの少なくとも一方(本第一実施例の場合、向かって左側にあたるカゴ3b)には、他方のカゴ3bとの間の距離を検出する距離センサ9が設けられている。距離センサ9は、例えばレーザ式の測距センサであり、一方のカゴ3bから他方のカゴ3bに向けて水平に照射光を照射し、他方のカゴ3bからの反射光を検出することで、左右の昇降支持装置3に取り付けられたカゴ3b,3b同士の距離を把握することができる。尚、高さセンサ13や距離センサ9としては、高さや距離を適切に把握し得る限りにおいて、その他の仕組みの計器類(例えば、超音波式の測距センサ等)を適宜使用してもよい。
【0039】
壁面作業装置1を構成する上記各機器は、制御部10によって制御される。制御部10は、壁面作業装置1を構成する各機器の動作を監視し、制御する制御装置であり、昇降支持装置3のカゴ3bを上下に昇降させる巻揚機のモータ(図示せず)、支持操作索4の繰出し・巻取りを行う巻揚機8のモータ(図示せず)、走行体2に搭載されたプロペラ2cや吸着部5、作業機器7、吸着関連機器5aや作業関連機器7aといった機器類に対し制御信号を入力し、これらのオンオフや動作の制御を行う。また、制御部10に対しては、距離センサ9や高さセンサ13の測定値がデータ信号として入力される。
【0040】
また、制御部10には操作部11が接続されており、壁面作業装置1のオペレータは、この操作部11の操作を通じて制御部10に操作信号を入力し、制御部10では、この操作信号に応じて各機器の制御を行うようになっている。また、制御部10には必要に応じて液晶ディスプレイ等である表示部12を接続し、各機器の運転状況(カゴ3bの高さや昇降速度、走行体2の位置、吸着部5や作業機器7の作動状況、巻揚機8からの支持操作索4の繰出し状況等)を表示するようにしてもよい。尚、操作部11としては、例えばゲーム機等のコントローラとして市販されている製品を使用することもできるし、スマートホンやタブレット等のタッチパネル式のディスプレイを使用することもできる。操作部11をタッチパネル式のディスプレイとして構成する場合、操作部11が表示部12の機能を兼ねることができる。
【0041】
次に、上記した本第一実施例の作動を説明する。
【0042】
壁面作業装置1の使用にあたっては、まず、作業対象である壁面Wの左右に支持柱3aを設置する。支持柱3aに取り付けられたカゴ3bにはそれぞれ巻揚機8を積載し、該巻揚機8から繰り出される一対の支持操作索4に走行体2を取り付ける。走行体2には必要な作業機器7を搭載する一方、カゴ3bには作業関連機器7aと吸着関連機器5aを積載し、吸着部5と吸着関連機器5aの間、および作業機器7と作業関連機器7aの間を連絡索6で接続する。
【0043】
この状態で、昇降支持装置3の図示しない巻揚機を動作させ、左右のカゴ3bを支持柱3aに沿って上昇させる。走行体2は、左右の巻揚機8から繰り出される支持操作索4によって吊り下げられ、カゴ3bと共に上昇する。
【0044】
走行体2を適当な高さまで吊り上げたら、左右のカゴ3bに積載した巻揚機8から支持操作索4の繰出し・巻取りを行い、これによって走行体2の位置を操作する。カゴ3bに対する走行体2の上下左右方向における高さと位置は、左右の巻揚機8からの支持操作索4の繰出し量によって決まる。すなわち、支持操作索4の繰出し量が小さいほど走行体2はカゴ3bに近い高さに支持され、支持操作索4の繰出し量が大きければ走行体2はカゴ3bに対し下方に吊り下げられる。また、左右の支持操作索4の張力によって巻揚機8を支持した状態において、左の巻揚機8からの支持操作索4の繰出し量が右の巻揚機8からの繰出し量より大きければ走行体2は左右の支持柱3a,3aの間の右寄りに位置するし、左の巻揚機8からの繰出し量が右の巻揚機8からの繰出し量より小さければ走行体2は左右の支持柱3a,3aの間の左寄りに位置する。
【0045】
このような操作を行う際、壁面Wにおける走行体2の位置は、例えば次のような計算により簡便に把握することができる。
【0046】
左右の昇降支持装置3のカゴ3bに設けられた巻揚機8同士の距離をdとする(
図4参照)。左右の巻揚機8から走行体2までの距離を、それぞれl
1,l
2とする。左右の巻揚機8の高さをそれぞれh
1,h
2とすると、左右の昇降支持装置3の間の壁面Wにおける走行体2の座標(x,y)について、以下の等式が成り立つ。
x
2+(h
1-y)
2=l
1
2 ……(1)
(d-x)
2+(h
2-y)
2=l
2
2 ……(2)
【0047】
距離l
1,l
2は、各巻揚機8からの支持操作索4の繰出し長さを通じて把握でき、支持操作索4の繰出し長さは、各巻揚機8に備えられたエンコーダ(図示せず)によって把握できる。高さh
1,h
2は、高さセンサ13(
図1参照)の測定値によって把握できる。よって、上記の等式(1)(2)を連立方程式として解くことで、走行体2の座標(x,y)を把握することができる。尚、
図4では、を単純にするために走行体2および巻揚機8を点で示しているが、実際の走行体2や巻揚機8には大きさがあるので、実際の運用においてはこれらを適宜加味してもよい。
【0048】
また、巻揚機8同士の距離dは、昇降支持装置3の各支持柱3aを常に垂直な剛体と考えれば一定であるが、実際には走行体2を吊るすことで左右の支持柱3aが支持操作索4の張力によって撓み、これによって距離dが変動する場合がある。走行体2の精密な位置を把握する必要があるなど、この距離dの変動を考慮したいときには、カゴ3bに取り付けた距離センサ9(
図1参照)によってカゴ3b同士の正確な距離dを測定し、これを走行体2の座標の算出時に加味すればよい。また、その際には、壁面Wや支持柱3aの設置面に対するカゴ3bの位置等を測定し、これを加味してもよい。壁面Wや支持柱3aの設置面に対するカゴ3bの位置を測定する場合、距離センサ9や高さセンサ13の機能を利用してもよいし、図示しないセンサ類を別途設けてもよい。
【0049】
尚、上の計算手順では走行体2の座標を表すにあたり原点の位置を図中左側の支持柱3aの根本に設定したが、原点の位置はこれに限らず適宜設定してよい。
【0050】
ここで、走行体2を操作する際、左右の巻揚機8と走行体2との間に高さの差はある程度あってもよいが、差が大きすぎると走行体2を左右から支持する支持操作索4の張力の水平成分が小さくなり、支持操作索4による走行体2の左右位置の操作が難しくなってしまう虞がある。また、連絡索6の長さにも限りがあるため、左右の巻揚機8と走行体2との高さの差があまり大きくなることは好ましくない。一方、巻揚機8と走行体2の高さの差が小さすぎると、走行体2の重量を支持するために必要な支持操作索4の張力が大きくなり、これによって支持柱3aに大きく撓みが生じる場合がある。そこで、走行体2を操作するにあたっては、カゴ3bと走行体2の高さの差が適度な範囲となるように注意するとよい。
【0051】
走行体2は、自身をプロペラ2cおよび吸着部5の動作によって壁面Wに保持しつつ、上に述べたように支持操作索4によって壁面Wに対する上下左右方向の位置を操作され、壁面Wに沿って走行する。そして、作業機器7により、壁面Wに対し点検や塗装など各種の作業を実行する。
【0052】
カゴ3bの高さの調整や、支持操作索4による走行体2の位置の調整、作業機器7による各種の作業といった一連の操作は、操作部11から操作信号を入力することで実行できる。また、作業の間、各種機器の運転状況は表示部12に表示され、走行体2や昇降支持装置3を目視するほか、表示部12に表示された視覚情報によっても、詳しい運転状況を把握することができる。尚、上記各種の操作のうち、操作部11では一部のみを受け持つようにしてもよい。例えば、カゴ3bの昇降については、昇降支持装置3に備えられた別のコントローラを通じて実行してもよい。
【0053】
壁面作業装置1の操作中、走行体2を壁面で大きく移動させたいような場合には、プロペラ2cによる押付力や、吸着部5による吸着力が移動の妨げとなり得る。そういった場合、プロペラ2cや吸着部5の作動をオフにし(あるいは出力を小さくし)、押付力や吸着力を切った(小さくした)状態でカゴ3bの高さや支持操作索4の繰出し長さを操作するようにすれば、走行体2をより円滑且つ迅速に動かすことができる。ここで、プロペラ2cを可変ピッチプロペラとして構成してあれば、プロペラ2cの作動をオフにすることなく、回転を保ったまま押付力を小さくし、あるいはゼロにすることができるので、さらに応答性よくプロペラ2cおよび走行体2の操作を実行できる。
【0054】
また壁面Wには、例えば柱のような突起物など、走行体2の走行にとって妨げになるような障害物が存在する場合がある。その際、プロペラ2cが可変ピッチプロペラであれば、負の押付力を発生させて走行体2を壁面Wから離反させ、障害物を迂回することなく回避させて迅速に移動させることもできる。
【0055】
このような壁面作業装置1を用いて壁面Wに対し各種の作業を行う場合、壁面Wに沿って人が行き来できるような足場を組む必要がなく、壁面Wに対しては昇降支持装置3の支持柱3aを設置すれば済むので、人力で作業を行う場合と比較して足場の設置に係る手間と時間を大幅に節減することができる。また、壁面Wに対し点検や塗装等の実作業を行うにあたっても、人が昇降台や足場を用いて上下左右に移動するような手間が不要であり、作業量を減らして工期を短縮することができる。また、壁面Wに対する実作業を直接行うのは人ではなく走行体2であるため、走行体2を壁面Wに対して支持するにあたり、人が実作業を行う場合と比較して要求される支持強度は低い。したがって、上述の如く足場を組む作業に係る手間や時間を節減できる上に、支持柱3a自体の設置にかかるコストもいっそう低減し得る。
【0056】
尚、本第一実施例の如き壁面作業装置1では、支持柱3aの近傍においては走行体2による作業が困難であるため、支持柱3a付近の壁面Wに関しては、例えばカゴ3bに人が搭乗して作業してもよいし、支持柱3aの設置位置を変更して作業を行うようにしてもよい。
【0057】
また、本第一実施例の壁面作業装置1は、壁面Wに対しある程度の重量物を支持する必要のある作業も実行可能である。例えば上記特許文献1、2に記載されているような飛行装置を用いた技術では、使用可能な作業機器類の重量が飛行装置の搬送能力に依存するため、現実的に行い得るのは例えば壁面Wの画像を取得するような簡単な作業のみであり、重量のある機器を使用する作業には向かなかった。本第一実施例の壁面作業装置1の場合、走行体2や、該走行体2に搭載される吸着部5、作業機器7の重量の大部分は、走行体2の飛行能力や壁面Wに対する保持力ではなく、走行体2に取り付けられた支持操作索4の張力により支持されるため、より大きい重量を支持することができる。さらに、吸着部5の動作に使用する吸着関連機器5aや、作業機器7による作業に使用する作業関連機器7aについては適宜カゴ3bに積載し、これらの間を連絡索6で繋ぐようにすれば、吸着部5の動作や作業機器7による作業に必要な重量を走行体2とカゴ3bとの間で分担し、走行体2にかかる荷重を軽減しながら、吸着部5や作業機器7を作動させることができる。こうして、ある程度の重量のある機器を用いた広範な作業を無理なく実行することができる。
【0058】
図5は本発明の実施による壁面作業装置の別の形態(第二実施例)を示している。本第二実施例の壁面作業装置1は、基本的な構成は
図1に示した上記第一実施例と共通しているが、本第二実施例の場合、走行体2を支持し操作する支持操作索4に加え、2本の補助索14を走行体2に接続してある。補助索14は、壁面作業装置1における右下および左下の位置に(支持操作索4を繰り出す巻揚機8とは別に)設けた繰出装置15から繰り出され、先端は走行体2の本体2aの右下および左下にそれぞれ接続されている。尚、補助索14を繰り出す繰出装置15の位置は、
図5では左右の支持柱3aの基部付近としてあるが、その他の位置に適宜設置してよい。
【0059】
本第二実施例の壁面作業装置1における補助索14の役割は、支持操作索4とは別の方向から走行体2に対し張力を加えることで、走行体2の動きを抑えて位置を安定させることである。上記第一実施例(
図1参照)の如く、左右から伸びる支持操作索4のみで走行体2を支持する場合、走行体2に壁面Wに対して前後方向に振り子状に揺れるような動きが生じ、これが作業に支障を来してしまう虞がある。そこで、本第二実施例のように、支持操作索4のほか、補助索14を走行体2に接続し、補助索14により支持操作索4とは別の方向から張力を加えれば、走行体2の不必要な動きを抑えることができる。
【0060】
補助索14を繰り出す繰出装置15としては、例えば上記特許文献3に記載されている線状体繰出装置の如き張力装置を使用することができる。このような張力装置は、索を繰り出し巻き取るリールと、索に加えられる張力の変化に応じて索に対する張力を制御するモータを備えており、前記索の繰出し・巻取りを自動的に行いながら、前記索に対し常に張力を加えるようになっている。このような機構により、前記索に接続されたドローン等の装置の動きを許容しつつ、前記装置が急な機動をした場合に、これを抑えることができるようになっている。この他、繰出装置15としては、壁面を動く走行体2に対し補助索14を介して適切な張力を加え、走行体2の走行を許容しつつ動きを抑え得るような装置である限り、適宜の装置を用いることができる。
【0061】
繰出装置15としては、例えば一般的な巻揚機を用いてもよく、支持操作索4を繰り出す繰出装置8と、補助索14を繰り出す繰出装置15の全台を巻揚機として構成することも可能である。ただし、少なくとも支持操作索4を繰り出す繰出装置(本第二実施例の場合、
図5中右上および左上に位置する繰出装置8)については、巻揚機など、支持操作索4によって走行体2の重量を支持すると共に、支持操作索4の繰出し・巻取りを介して支持操作索4の位置を自在に操作できるような装置とすることが必要である。
【0062】
尚、このように補助索14を走行体2に取り付けた場合、支持操作索4の繰出し長さを操作することにより、走行体2をある程度傾斜させることも可能である。例えば、図中左側に位置する巻揚機8から支持操作索4を僅かに繰り出す動きか、右側に位置する巻揚機に支持操作索4を僅かに巻き取る動きか、あるいはその両方を実行することを考えると、上記第一実施例(
図1参照)の如く補助索14が取り付けられていない場合には、走行体2は図中右側へ僅かに移動する(その際、操作の内容によっては、上下にも僅かに移動する)ことになる。ところが、
図5に示す本第二実施例の場合、走行体2の下部の動きが繰出装置15から繰り出される補助索14によって制限されるため、巻揚機8において上記のような操作を行うと、走行体2は位置を変えないまま、壁面Wに向かって時計回りに傾斜することになる。走行体2を用いて行う作業の内容によっては、このような操作が有効となる場合も考えられる。
【0063】
図6は本発明の実施による壁面作業装置のさらに別の形態(第三実施例)を示している。本第三実施例の場合、基本的な構成は上記第二実施例(
図5参照)と同様であるが、支持操作索4および補助索14の走行体2における取付位置が異なっている。左右の巻揚機8から繰り出される一対の支持操作索4は、走行体2の本体2aの上部一箇所に取り付けられ、また、左右の繰出装置15から繰り出される一対の補助索14は、走行体2の本体2aの下部一箇所に取り付けられている。このように、走行体2における支持操作索4や補助索14の取付位置は、
図1や
図5に示した例に限定されず、適宜の位置に取り付けることができる。
【0064】
図7は本発明の実施による壁面作業装置のさらに別の形態(第四実施例)を示している。上記第二、第三実施例(
図5、
図6参照)では、2本の支持操作索4に2本の補助索14を加えた計4本の索によって走行体2を支持する形態を説明したが、本第四実施例の壁面作業装置1の場合、2本の支持操作索4に1本の補助索14を加えた計3本の索によって走行体2を支持している。補助索14は、下方に設けた繰出装置15から繰り出され、先端を走行体2の本体2aの下部に接続されている。このように、補助索14の本数は上記第二実施例の如き2本に限定されず、本第四実施例の如く1本としてもよいし、あるいは、3本以上備えてもよい。
【0065】
また、本第四実施例の場合、
図7中に実線にて示すように、補助索14を繰り出す繰出装置15をレールに沿って左右に走行可能に構成している。このようにすると、走行体2の位置に合わせて補助索14の繰出し位置を調整することで、走行体2に対し補助索14によって加える張力の向きを常にほぼ真下からにするといった操作が可能である。例えば
図7中に破線にて示すように、適当な位置に固定された繰出装置15から補助索14を繰り出すようにしてもよいが、その場合、走行体2の位置によっては走行体2に加わる張力が左右いずれかに偏り、支持操作索4による操作が多少難しくなってしまう可能性も考えられる。ここに実線にて示す例のように、補助索4の繰出し位置や走行体2に対する補助索4の向きを走行体2の位置に合わせて調整できるようにすれば、支持操作索4を介した走行体2の操作に関し良好な操作性を得ることができる。
【0066】
尚、走行体2に対しては、
図5~
図7に示したように、支持操作索4および補助索14によって走行体2を2点以上で支持すれば走行体2を好適に支持すると共にその位置を操作することができ、さらに、互いに異なる3方向以上の向きに張力を加えると、走行体2の揺れを好適に抑えることができる。
【0067】
図8は本発明の実施による壁面作業装置のさらに別の形態(第五実施例)を示している。本第五実施例では、上記第二~第四実施例(
図5~
図7参照)に示したように補助索14や繰出装置15により走行体2に張力を加える代わりに、走行体2から下方に錘16を吊り下げ、該錘16の自重によって走行体2を下方へ引っ張り、これによって走行体2の不必要な動きを抑えるようにしている。
【0068】
尚、走行体2に対して錘16を取り付けるにあたっては、例えば次のような方式が考えられるが、走行体に対する錘の取り付け方はこれらの例に限定されるものではない。
【0069】
1)走行体2の適宜位置(例えば、本体2a下部のフレーム上)に軸受等の可動の接続機構を備え、前記接続機構から下方へ伸びるように棒状の部品を取り付け、該棒状の部品の先端に錘16を接続する。錘16は、前記接続機構を中心とし、前記棒状の部品の長さを半径とする円周上を動く。
【0070】
2)走行体2の本体2aから下方へ伸びるように、棒状の部品を固定し、該棒状の部品の先端に錘16を接続する。錘16は、走行体2に対し一定の位置に固定される。
【0071】
3)走行体2の本体2aから下方へ伸びるように索を設け、該索の先端に錘16を吊り下げる。錘16は、前記索の基端部を頂点とする円錐の底面の円周上を回転するように動く。
【0072】
尚、上記第二~第四実施例(
図5~
図7参照)に示したような補助索14および繰出装置15と、錘16を併用してもよい。あるいは、支持操作索4や補助索14の途中に適宜プーリ等の機構を設け、走行体2に加える張力の向きを調整するといったことも可能である。例えば、走行体2の斜め下方に繰出装置としての張力装置を設置すると共に、走行体2の下方にプーリまたはそれと類似する適宜の部品を設け、前記張力装置から繰出した補助索を前記プーリ(または類似する部品)に一旦巻きかけてから、前記補助索の先端を走行体2の下部に取り付けるようにしてもよい。
【0073】
以上のように、上記各実施例の壁面作業装置1は、壁面Wに対し走行可能に構成された走行体2と、走行体2に搭載され、壁面Wに対し作業を行う作業機器7とを備え、走行体2は、走行体2の左右に設置された支持柱3a、および該支持柱3aに沿って昇降する昇降体(カゴ)3bを備えた昇降支持装置3における昇降体3bの位置から繰り出される支持操作索4により、左右から支持されると共に位置を操作されるよう構成されている。
【0074】
また、上記各実施例の壁面作業装置1は、壁面Wに対し走行可能に構成された走行体2と、走行体2に搭載され、壁面Wに対し作業を行う作業機器7とを備え、走行体2は、少なくとも走行体2の左右から繰り出される支持操作索4によって支持されると共に位置を操作されるよう構成されている。
【0075】
また、上記各実施例の壁面作業方法においては、壁面Wに対し走行可能に構成された走行体2と、走行体2に搭載され、壁面Wに対し作業を行う作業機器7とを用い、少なくとも走行体2の左右から繰り出される支持操作索4により、走行体2を支持すると共に走行体2の位置を操作するようにしている。
【0076】
このようにすれば、壁面Wに対して作業を行うにあたり、壁面Wに沿って人が行き来できるような足場を組む必要がなく、手間と時間を大幅に節減することができる。また、壁面Wに対し点検や塗装等の実作業を行うにあたっても作業量を減らすことができる。
【0077】
また、各実施例の壁面作業装置1において、走行体2は、壁面Wに対する押付力を発生させるプロペラ2cを備えている。このようにすれば、走行体2を押付力によって壁面Wに保持することができる。
【0078】
また、各実施例の壁面作業装置1において、プロペラ2cは可変ピッチプロペラとすることができる。このようにすれば、プロペラ2cによる押付力の調整を迅速に行うことができ、プロペラ2cおよび走行体2の操作を応答性よく実行できる。また、プロペラ2cにより負の押付力を発生させて走行体2を壁面Wから離反させ、迅速に移動させることができる。
【0079】
また、一部の実施例の壁面作業装置1においては、走行体2に、支持操作索4とは別の方向から走行体2に対し張力を加えるよう補助索14が接続されている。このようにすれば、補助索14により支持操作索4とは別の方向から張力を加えることにより、走行体2の不必要な動きを抑えることができる。
【0080】
また、一部の実施例の壁面作業装置1は、走行体2から吊り下げられた錘16を備えている。このようにすれば、錘16の自重によって走行体2の不必要な動きを抑えることができる。
【0081】
また、各実施例の壁面作業装置1において、走行体2は、壁面Wに対し吸着する吸着部5を備えている。このようにすれば、走行体2を吸着力によって壁面Wに保持することができる。
【0082】
また、各実施例の壁面作業装置1は、走行体2の左右に設置された支持柱3aおよび該支持柱3aに沿って昇降する昇降体3bを備えた昇降支持装置3と、昇降体3bの位置から繰り出され、走行体2を左右から支持すると共に走行体2の位置を操作する支持操作索4とをさらに備えている。このようにすれば、走行体2や、該走行体2に搭載される機器の重量の大部分を支持操作索4の張力で支持することにより、大きい重量を支持し、広範な作業を無理なく実行することができる。
【0083】
また、各実施例の壁面作業装置1は、昇降体3bの高さおよび支持操作索4の繰出し長さに基づき、壁面Wにおける走行体2の位置を把握し得るよう構成されている。このようにすれば、走行体2の操作にあたり、走行体2の位置を簡便に把握することができる。
【0084】
また、各実施例の壁面作業装置1において、支持操作索4は、昇降体3bに積載された支持操作索4の繰出装置(巻揚機)8から繰り出されている。このようにすれば、巻揚機8による支持操作索4の繰出し・巻取りにより、走行体2の位置を操作することができる。
【0085】
また、各実施例の壁面作業装置1においては、走行体2に、壁面Wに対し吸着する吸着部5を備えると共に、昇降体3bに、吸着部5の動作に使用する吸着関連機器5aを積載し、吸着部5と吸着関連機器5aの間を連絡索6で接続している。このようにすれば、吸着部5の動作に必要な重量を走行体2と昇降体3bとの間で分担し、走行体2にかかる荷重を軽減することができる。
【0086】
また、各実施例の壁面作業装置1においては、昇降体3bに、作業機器7による作業に関連して使用する作業関連機器7aを積載し、作業機器7と作業関連機器7aの間を連絡索6で接続している。このようにすれば、作業機器7による作業に必要な重量を走行体2と昇降体3bとの間で分担し、走行体2にかかる荷重を軽減することができる。
【0087】
したがって、上記各実施例によれば、壁面に対する作業を簡便且つ好適に実行し得る。
【0088】
尚、本発明の壁面作業装置および方法は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0089】
1 壁面作業装置
2 走行体
2c プロペラ
3 昇降支持装置
3a 支持柱
3b 昇降体(カゴ)
5 吸着部
5a 吸着関連機器
6 連絡索
7 作業機器
7a 作業関連機器
8 巻揚機(繰出装置)
14 補助索
16 錘
W 壁面