(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186587
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】段積み用箱型土嚢、段積み用箱型土嚢を用いた構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/18 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
E02D17/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024712
(22)【出願日】2022-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2021093806
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521240952
【氏名又は名称】森田 久子
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 久子
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044CA00
(57)【要約】
【課題】積み重ねられる段積み用箱型土嚢の上下方向の接続部を強化した段積み用箱型土嚢、段積み用箱型土嚢を用いた構造物の構築方法を提供する。
【解決手段】内部に内容物が充填される空間Sが形成されており、積み重ねられて構造物を構築する段積み用箱型土嚢100である。段積み用箱型土嚢100は、それぞれが矩形の金網部111,123を有し、空間Sの周囲を区画する複数の側壁110,120を備える。複数の側壁110,120の少なくとも一部は、金網部111,123の上縁に沿って溶接付けされた平板部を有する上縁部補強材113,125と、金網部111,123の下縁に沿って溶接付けされた平板部を有する下縁部補強材114,126とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に内容物が充填される空間が形成されており、積み重ねられて構造物を構築する段積み用箱型土嚢であって、
それぞれが矩形の金網部を有し、前記空間の周囲を区画する複数の側壁を備え、
複数の前記側壁の少なくとも一部は、前記金網部の上縁に沿って溶接付けされた平板部を有する上縁部補強材と、前記金網部の下縁に沿って溶接付けされた平板部を有する下縁部補強材とを有する、
段積み用箱型土嚢。
【請求項2】
前記金網部は、格子状に組まれた上下方向に延びる複数の縦棒と、左右方向に延びる複数の横棒とを有し、
前記上縁部補強材は、最も上方に配置された前記横棒と、前記横棒の長手方向に沿って溶接されており、
前記下縁部補強材は、最も下方に配置された前記横棒と、前記横棒の長手方向に沿って溶接されている、
請求項1に記載の段積み用箱型土嚢。
【請求項3】
前記上縁部補強材及び前記下縁部補強材には、積み重ねられた前記段積み用箱型土嚢を接続するための連接ピンが挿通される、互いに同じ配置であけられた複数の貫通孔が形成されている、
請求項1または2に記載の段積み用箱型土嚢。
【請求項4】
前記上縁部補強材にあけられた貫通孔と前記下縁部補強材にあけられた貫通孔とのうち、少なくともいずれか一方は長孔である、
請求項3に記載の段積み用箱型土嚢。
【請求項5】
前記上縁部補強材及び前記下縁部補強材のうち、一方には凸部が形成され、他方には前記凸部が嵌まり積み重ねられた前記段積み用箱型土嚢を接続するための係合部が形成されている、
請求項1または2に記載の段積み用箱型土嚢。
【請求項6】
前記上縁部補強材及び前記下縁部補強材は、L字型鋼である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の段積み用箱型土嚢。
【請求項7】
前記上縁部補強材及び前記下縁部補強材は、平板鋼である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の段積み用箱型土嚢。
【請求項8】
前記上縁部補強材及び前記下縁部補強材は、溝型鋼である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の段積み用箱型土嚢。
【請求項9】
内部に内容物が充填される空間が形成されており、積み重ねられて構造物を構築する段積み用箱型土嚢であって、
それぞれが矩形の金網部を有し、前記空間の周囲を区画する複数の側壁を備え、
複数の前記側壁は、前記金網部の上縁と下縁とのいずれかに沿って溶接付けされた平板部を有した補強材を有する、
段積み用箱型土嚢。
【請求項10】
前記金網部は、格子状に組まれた上下方向に延びる複数の縦棒と、左右方向に延びる複数の横棒とを有し、
前記補強材は、最も上方に配置された前記横棒の長手方向に沿って、あるいは最も下方に配置された前記横棒の長手方向に沿って溶接されている、
請求項9に記載の段積み用箱型土嚢。
【請求項11】
前記金網部の上縁と下縁とのうち、前記補強材が溶接付けされていない縁には、前記横棒とともに前記複数の縦棒を挟みこむ補強横棒が設けられている、
請求項10に記載の段積み用箱型土嚢。
【請求項12】
前記補強材には、積み重ねられた前記段積み用箱型土嚢を接続するための連接ピンが挿通される複数の貫通孔が形成されており、
前記貫通孔は、前記補強材に突き当たる前記縦棒の両サイドに形成されている、
請求項10または11に記載の段積み用箱型土嚢。
【請求項13】
前記連接ピンは、二股に分かれた形状を有し、前記縦棒の両サイドに形成された対の前記貫通孔に差し込まれることで、積み重ねられた前記段積み用箱型土嚢を接続する、
請求項12に記載の段積み用箱型土嚢。
【請求項14】
隣接する前記側壁の縁部同士を互いに回転可能に接続する接続手段を備える、
請求項1から13のいずれか1項に記載の段積み用箱型土嚢。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の段積み用箱型土嚢を用いた構造物の構築方法であって、
段積み用箱型土嚢を配置する工程と、
配置した段積み用箱型土嚢に内容物を充填する工程と、
内容物を充填した段積み用箱型土嚢の上に、別の段積み用箱型土嚢を積み重ねる工程と、
積み重ねた段積み用箱型土嚢に内容物を充填する工程と、を備える、
段積み用箱型土嚢を用いた構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段積み用箱型土嚢、段積み用箱型土嚢を用いた構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
戦闘地域においては、隊員や装備品を敵の砲爆撃等から防護するため、箱型土嚢を用いて防御用掩体等の構造物を構築することが求められている。特許文献1は、縦棒と横棒とを組み合わせた金網を側壁に用いた箱型土嚢を開示している。この箱型土嚢の内部には土砂、砕石等の内容物が充填され、さらにその上に箱型土嚢が積み重ねられていくことで、複数段に積み重ねられた箱型土嚢を有する構造物が構築される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、より高さの高い構造物が求められており、それに伴い、より多くの段数を積み重ねることができる箱型土嚢が求められている。しかしながら、箱型土嚢の積み重ねる段数が多くなればなるほど、攻撃を受けた際に爆風、飛んできた破片、衝撃波などで上下の箱型土嚢を接続する接続部に大きな力が作用する。そのため、従来の箱型土嚢を用いて、より高い構造物を構築することは難しかった。
【0005】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、積み重ねられる段積み用箱型土嚢の上下方向の接続部を強化した段積み用箱型土嚢、段積み用箱型土嚢を用いた構造物の構築方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る段積み用箱型土嚢は、内部に内容物が充填される空間が形成されており、積み重ねられて構造物を構築する段積み用箱型土嚢であって、それぞれが矩形の金網部を有し、前記空間の周囲を区画する複数の側壁を備え、複数の前記側壁の少なくとも一部は、前記金網部の上縁に沿って溶接付けされた平板部を有する上縁部補強材と、前記金網部の下縁に沿って溶接付けされた平板部を有する下縁部補強材とを有する。
【0007】
前記金網部は、格子状に組まれた上下方向に延びる複数の縦棒と、左右方向に延びる複数の横棒とを有し、前記上縁部補強材は、最も上方に配置された前記横棒と、前記横棒の長手方向に沿って溶接されており、前記下縁部補強材は、最も下方に配置された前記横棒と、前記横棒の長手方向に沿って溶接されていてもよい。
【0008】
前記上縁部補強材及び前記下縁部補強材には、積み重ねられた前記段積み用箱型土嚢を接続するための連接ピンが挿通される、互いに同じ配置であけられた複数の貫通孔が形成されていてもよい。
【0009】
前記上縁部補強材にあけられた貫通孔と前記下縁部補強材にあけられた貫通孔とのうち、少なくともいずれか一方は長孔であってもよい。
【0010】
前記上縁部補強材及び前記下縁部補強材のうち、一方には凸部が形成され、他方には前記凸部が嵌まり積み重ねられた前記段積み用箱型土嚢を接続するための係合部が形成されていてもよい。
【0011】
前記上縁部補強材及び前記下縁部補強材は、L字型鋼であってもよい。
【0012】
前記上縁部補強材及び前記下縁部補強材は、平板鋼であってもよい。
【0013】
前記上縁部補強材及び前記下縁部補強材は、溝型鋼であってもよい。
【0014】
本発明の別の観点に係る段積み用箱型土嚢は、内部に内容物が充填される空間が形成されており、積み重ねられて構造物を構築する段積み用箱型土嚢であって、それぞれが矩形の金網部を有し、前記空間の周囲を区画する複数の側壁を備え、複数の前記側壁は、前記金網部の上縁と下縁とのいずれかに沿って溶接付けされた平板部を有した補強材を有する。
【0015】
前記金網部は、格子状に組まれた上下方向に延びる複数の縦棒と、左右方向に延びる複数の横棒とを有し、前記補強材は、最も上方に配置された前記横棒に沿って、あるいは最も下方に配置された前記横棒の長手方向に沿って溶接されていてもよい。
【0016】
前記金網部の上縁と下縁とのうち、前記補強材が溶接付けされていない縁には、前記横棒とともに前記複数の縦棒を挟みこむ補強横棒が設けられていてもよい。
【0017】
前記補強材には、積み重ねられた前記段積み用箱型土嚢を接続するための連接ピンが挿通される複数の貫通孔が形成されており、前記貫通孔は、前記補強材に突き当たる前記縦棒の両サイドに形成されていてもよい。
【0018】
前記連接ピンは、二股に分かれた形状を有し、前記縦棒の両サイドに形成された対の前記貫通孔に差し込まれることで、積み重ねられた前記段積み用箱型土嚢を接続してもよい。
【0019】
隣接する前記側壁の縁部同士を互いに回転可能に接続する接続手段を備えてもよい。
【0020】
本発明に係る段積み用箱型土嚢を用いた構造物の構築方法は、上記の段積み用箱型土嚢を用いた構造物の構築方法であって、段積み用箱型土嚢を配置する工程と、配置した段積み用箱型土嚢に内容物を充填する工程と、内容物を充填した段積み用箱型土嚢の上に、別の段積み用箱型土嚢を積み重ねる工程と、積み重ねた段積み用箱型土嚢に内容物を充填する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、積み重ねられる段積み用箱型土嚢の上下方向の接続部を強化した段積み用箱型土嚢、段積み用箱型土嚢を用いた構造物の構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施の形態1に係る段積み用箱型土嚢100の使用時の概略を示した斜視図
【
図2】
図1中の切断線II-IIで切断した側壁110の断面図
【
図3】
図2で示した側壁110の図であり、(a)は
図2中の切断線IIIa-IIIaで切断した断面図、(b)は
図2中の矢印IIIbからみた図
【
図4】
図1で示した側壁120の図であり、(a)は
図2中の切断線IIIa-IIIaに相当するラインで切断した側壁120下部の断面図、(b)は上方からみた図
【
図5】段積み用箱型土嚢100を用いて構造物を構築している様子を工程順((a)~(b))に示した概略図
【
図6】
図5に示す工程の続きであり、段積み用箱型土嚢100を用いて構造物を構築している様子を工程順((a)~(c))に示した概略図
【
図7】積み重ねられた段積み用箱型土嚢の接続部に着目した断面図
【
図8】段積み用箱型土嚢100を用いて構築された構造物150(
図8(a))、及び構造物160(
図8(b))を示した図
【
図9】実施の形態2に係る段積み用箱型土嚢200の使用時の概略を示した斜視図
【
図12】積み重ねられた実施の形態5の段積み用箱型土嚢の接続部に着目した概略図
【
図13】積み重ねられた実施の形態6の段積み用箱型土嚢の接続部に着目した概略図
【
図14】積み重ねられた実施の形態7の段積み用箱型土嚢の接続部に着目した断面図
【
図15】実施の形態8に係る段積み用箱型土嚢800の使用時の概略を示した斜視図
【
図16】
図15中の切断線XVI-XVIで切断した側壁810の断面図
【
図17】
図16で示した側壁810の図であり、(a)は
図16中の切断線XVIIIa-XVIIIaで切断した断面図、(b)は
図16中の切断線XVIIIb-XVIIIbで切断した断面図
【
図18】積み重ねられた段積み用箱型土嚢800の接続部に着目した断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態に係る段積み用箱型土嚢、段積み用箱型土嚢を用いた構造物の構築方法について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
(実施の形態1)
まず、段積み用箱型土嚢100の概要について説明する。使用時の段積み用箱型土嚢100は、
図1に示すように、対向する2つの矩形状の側壁110と、対向する2つの矩形状の側壁120とを有している。側壁110、側壁120、側壁110、及び側壁120はこの順で隣接する側壁に直交した状態で接続されることで、段積み用箱型土嚢100は正方形の筒状体を形成している。なお、段積み用箱型土嚢100の上方、及び下方は、開放されている。隣接する側壁110と側壁120とは、縁部である互いの辺を一致させた状態で接続手段としてのコイル130が巻き回されることで接続されている。これにより、隣接する側壁110と側壁120とは、互いに一致させた縁部を中心として回転可能である。段積み用箱型土嚢100には、コイル130を介して側壁110と側壁120とを接続した箇所が合計4箇所設けられている。これにより段積み用箱型土嚢100は、使用していないときは折り畳むことができ、コンパクトにした状態で収納することができる。
【0025】
なお、段積み用箱型土嚢100には、側壁110,120に周囲を囲まれた内部の空間Sに、内容物が詰められる。内容物は、例えば、土、砂、砕石、琉球石灰、瓦礫、コンクリート、或いはこれらの混合物である。また、段積み用箱型土嚢100は、その内部の空間Sに内容物が充填されるが、それに先立ち、段積み用箱型土嚢100の内部の空間Sの周囲に、内部の空間Sの周囲を覆う不織布が配置され、内容物が段積み用箱型土嚢100から漏れ出さないようにしてもよい。
【0026】
次に、側壁110,120の構成について説明する。段積み用箱型土嚢100における全ての側壁110及び側壁120の横幅は同じであり、高さについても全てで同じである。なお、側壁110及び側壁120の横幅と高さは任意に設定することができるが、例えば0.5メートル、あるいは1メートル程度である。なお、側壁110を説明するにあたり、使用状態にある筒状の段積み用箱型土嚢100の内、外を、そのまま側壁110,120の内、外として用いる。また、側壁110,120を外側からみたときの左右方向を、側壁110,120の左右方向として説明する。
【0027】
側壁110は、上下方向に延び左右方向に平行に配列された複数の縦棒111aと、左右方向に延び上下方向に平行に配列された複数の横棒111bとを有する矩形の金網部111を備えている。縦棒111a及び横棒111bは、例えば鋼製の丸棒から構成されている。縦棒111aは、左右方向に同じ間隔をあけて複数配列されており、横棒111bは上下方向に同じ間隔をあけて複数配列されている。
図2に示すように、複数の縦棒111aは複数の横棒111bの内側から重ね合わされ、縦棒111aと横棒111bとの交差部は、例えば溶接により固定されている。これにより、金網部111は、複数の縦棒111aと複数の横棒111bとが格子状に組まれて形成されており、形成されている矩形の目の大きさは同じである。
【0028】
金網部111における複数の縦棒111aは、同一の長さを有しており、
図2に示すように、その両端部には横棒111bが外側に配置され固定されている。また金網部111における複数の横棒111bは、同一の長さを有しており、
図3(a)に示すように、その両端部には縦棒111aが内側に配置され固定されている。このように、矩形状の金網部111には、各辺に沿って延びる縦棒111a及び横棒111bが設けられている。
【0029】
また、側壁110は、
図1及び
図2に示すように、金網部111の上縁に沿って溶接付けされた上縁部補強材113を有しているとともに、金網部111の下縁に沿って溶接付けされた下縁部補強材114を有している。
【0030】
上縁部補強材113は、例えば鋼製のL字型鋼であり、互いに直交する第1平板部113aと第2平板部113bとを有している。上縁部補強材113は、第1平板部113aの内面が金網部111の上縁に接触するように、第2平板部113bの内面が金網部111の内側に接触するようにして設けられている。上縁部補強材113の長さは、金網部111の横幅よりも短い。そのため、金網部111の上縁の一部(左右端)には上縁部補強材113が設けられていない区間が形成されている。これにより、上縁部補強材113は、後述するように段積み用箱型土嚢100を折り畳む際に支障とはならず、段積み用箱型土嚢100を容易に折り畳むことができる。上縁部補強材113は、第2平板部113bの内面で縦棒111aと溶接され、第1平板部113aの内面で最も上方の横棒111bと溶接されている。なお、第1平板部113aと最も上方に配置された横棒111bとは、横棒111bの両サイドから、横棒111bの長手方向に沿って線状に溶接されている。これにより、上縁部補強材113と金網部111との溶接において十分な溶接長を確保することができ、上縁部補強材113を金網部111の上縁で強固に固定することができる。このように、金網部111の上縁は、縦棒111aの外側に設けられた横棒111bに加えて、上縁部補強材113により補強されている。
【0031】
また、上縁部補強材113の第1平板部113aには、
図3(b)に示すように、長手方向に沿って複数の貫通孔113cが形成されている。貫通孔113cは、長孔であり、長手方向は上縁部補強材113の長手方向と一致する。貫通孔113cは、
図3(b)に示すように、側壁110を上方からみて第2平板部113bと横棒111bとの間に形成されており、すなわち縦棒111aが配置されたライン上に形成されている。
【0032】
下縁部補強材114は、例えば鋼製のL字型鋼であり、互いに直交する第1平板部114aと第2平板部114bとを有している。下縁部補強材114は、第1平板部114aの内面が金網部111の下縁に接触するように、第2平板部114bの内面が金網部111の内側に接触するように設けられている。下縁部補強材114の長さは、金網部111の横幅よりも短い。そのため、金網部111の下縁の一部(左右端)には下縁部補強材114が設けられていない区間が形成されている。下縁部補強材114は、第2平板部114bの内面で縦棒111aと溶接され、第1平板部114aの内面で横棒111bに溶接されている。なお、第1平板部114aと最も下方に配置された横棒111bとは、横棒111bの両サイドから、横棒111bの長手方向に沿って線状に溶接されている。これにより、下縁部補強材114と金網部111との溶接において十分な溶接長を確保することができ、下縁部補強材114を金網部111の下縁で強固に固定することができる。このように、金網部111の下縁は、縦棒111aの外側に設けられた横棒111bに加えて、下縁部補強材114により補強されている。
【0033】
また、下縁部補強材114の第1平板部114aには、
図3(a)に示すように、長手方向に沿って複数の貫通孔114cが形成されている。貫通孔114cは、丸孔であり、
図3(b)に示すように、第2平板部114bと横棒111bの間に形成されており、すなわち縦棒111aが配置されたライン上に形成されている。
【0034】
貫通孔113cと貫通孔114cは、段積み用箱型土嚢100の上に段積み用箱型土嚢100が積み重ねる際に、互いの位置が一致するように同じ配置で形成されている。このように一致した貫通孔113cと貫通孔114cには、
図7に示すように連接ピン131が挿通される。これにより、積み重ねられた上下の段積み用箱型土嚢100を接続することができる。
【0035】
側壁120は、
図1に示すように、コイル130で接続された辺を中心に回転する観音開き式の第1側壁121と第2側壁122とを有している。第1側壁121と第2側壁122とは同じ大きさであり、第1側壁121と第2側壁122とを回転させることで、側壁120の中央部から開くことができる。なお、第1側壁121と第2側壁122との基本構成は、側壁110と共通する部分が多い。そのため、以下では構成が異なる点を中心に説明する。
【0036】
側壁120を外側から見た場合、第1側壁121は側壁120の左側を構成し、第2側壁122は側壁120の右側を構成している。第1側壁121及び第2側壁122は、側壁110と同様に、上下方向に延びる縦棒123aと、左右方向に延びる横棒123bとが格子状に組まれた金網部123を有している。
【0037】
また、第1側壁121及び第2側壁122は、
図1に示すように、金網部123の上縁に沿って溶接付けされた上縁部補強材125と、金網部123の下縁に沿って溶接付けされた下縁部補強材126を有している。
【0038】
図4(b)に示すように上縁部補強材125の基本構成は、
図3(b)に示す金網部111に取りつけられた上縁部補強材113の基本構成と同様である。第1側壁121及び第2側壁122は、側壁110よりも短いことから、上縁部補強材125は上縁部補強材113よりも短い。上縁部補強材125は、第2平板部125bの内面で縦棒123aと溶接されており、第1平板部125aの内面で最も上方に配置された横棒123bと溶接されている。なお、第1平板部125aと最も上方に配置された横棒123bとは、横棒123bの両サイドから、横棒123bの長手方向に沿って線状に溶接されている。また、上縁部補強材125には、貫通孔113c(
図3(b))と同様の長孔である貫通孔125cが形成されている。
【0039】
また、
図4(a)に示すように下縁部補強材126の基本構成は、
図3(a)に示す金網部111に取りつけられた下縁部補強材114の基本構成と同様である。第1側壁121及び第2側壁122は、側壁110よりも短いことから、下縁部補強材126は下縁部補強材114よりも短い。下縁部補強材126は、第2平板部126bの内面で縦棒123aと溶接されており、第1平板部126aの内面で最も下方に配置された横棒123bと溶接されている。なお、第1平板部126aと最も下方に配置された横棒123bとは、横棒123bの両サイドから、横棒123bの長手方向に沿って線状に溶接されている。また、下縁部補強材126には、貫通孔114c(
図3(a))と同様の丸孔である貫通孔126cが形成されている。
【0040】
図4(b)に示す貫通孔125cと
図4(a)に示す貫通孔126cは、段積み用箱型土嚢100の上に段積み用箱型土嚢100が積み重ねる際に、互いの位置が一致するように同じ配置で形成されている。このように一致した貫通孔125cと貫通孔126cには、連接ピン131(
図7)が挿通される。これにより、積み重ねられた上下の段積み用箱型土嚢100を接続することができる。
【0041】
また、
図1に示すように、第1側壁121の下部と第2側壁122の上部には、固定具129が設けられている。固定具129は、金網部123に取りつけられており、側壁120の中央部で第1側壁121の縁部と第2側壁122の縁部とに巻き回したワイヤ128を、図示しないネジで締め付けることで固定する。これにより、
図1に示すような第1側壁121と第2側壁122との閉状態を維持することができる。
【0042】
次に段積み用箱型土嚢100を用いて構造物を構築する方法について説明する。なお、構造物は、一例として戦地にて構築する掩体である。
図1に示す段積み用箱型土嚢100において、側壁110と側壁120とはコイル130により回転可能に接続され、第1側壁121と第2側壁122とはワイヤ128により回転可能に接続されている。そのため、段積み用箱型土嚢100は、これらの回転可能な箇所を操作することで折り畳むことが可能である。段積み用箱型土嚢100は、収納時には
図5(a)に示すように、第1側壁121と第2側壁122とが内側に向けて谷を形成するような状態にされて折り畳まれた状態にされている。そして、使用時には段積み用箱型土嚢100を展開し、
図5(b)に示すように、段積み用箱型土嚢100を平面視して正方形の筒状にして地面に設置する。
【0043】
続いて、
図6(a)に示すように、段積み用箱型土嚢100の内部を内容物で充填する。なお、
図6において、内部が内容物で充填された段積み用箱型土嚢100にはハッチングを施しており、内容物が充填されてない段積み用箱型土嚢100と区別している。
【0044】
次に、
図6(b)に示すように、内容物で充填した段積み用箱型土嚢100の上に、展開した段積み用箱型土嚢100を積み重ねて段積みする。このとき、内容物を充填した段積み用箱型土嚢100の上縁部補強材113,125(
図1)の上に、積み重ねる段積み用箱型土嚢100の下縁部補強材114,126(
図1)を接触させる。このとき、積み重ねた上側の段積み用箱型土嚢100に形成された貫通孔114c、126c(
図3、
図4)を、対応する下側の段積み用箱型土嚢100に形成された貫通孔113c、125c(
図3、
図4)に一致させる。そして、
図7に示すように、一致した貫通孔113c、114cに、上部に曲部131aが形成された連接ピン131を挿通する。なお、図示は省略するが、一致させた貫通孔125c、126cにも、同様に連接ピン131を挿通する。これにより、積み重ねた段積み用箱型土嚢100を接続することができる。
【0045】
続いて、
図6(c)に示すように、上方に積み重ねた段積み用箱型土嚢100に内容物を充填する。なお、地面には複数の段積み用箱型土嚢100を配置していき、内容物の充填、段積み用箱型土嚢の積み重ね接続といった作業を繰り返していき、段積み用箱型土嚢100を段積みにしていく。これにより、
図8(a)に示すような段積み用箱型土嚢100を用いた構造物150を構築することができる。あるいは、
図8(b)に示すような段積み用箱型土嚢100を用いた構造物160を構築することができる。
図8(a)に示す構造物150は、段積み用箱型土嚢100が6段積み重ねられており、上方からみてコ字状に形成されている。積み重ねる段積み用箱型土嚢100の高さが1mである場合、構造物150の高さは6mとなる。このように、6m程度の高さを有する掩体としての構造物150を構築することができる。この構造物150には、人員や大型の装備品だけでなく、車両も内部に収容することができ、これらを敵の砲爆撃等の攻撃から防護することができる。また、
図8(b)に示す2つの構造物160は、それぞれ段積み用箱型土嚢100を6段積み重ねられて形成されており、互いの間隔をあけて平行に配置されている。なお、2つの構造物160の間隔は、任意に設定することができる。この2つの構造物160は、その間に配置された戦闘機や大型輸送ヘリ等を防護する航空機用掩体として用いることができる。
【0046】
以上説明したように、本発明の実施の形態1によれば、上下方向に積み重ねられた段積み用箱型土嚢100を上縁部補強材113,125と下縁部補強材114,126と(以下、これらを区別しない場合は、補強材113,114,125,126と記載する)を接触させた状態で接続している。これらの補強材113,114,125,126は、縦棒111aとの溶接に加えて、横棒111bの両サイドから長手方向に沿って線状に溶接されている。そのため、補強材113,114,125,126を強固に金網部111,123に固定することができ、上下方向に積み重ねた段積み用箱型土嚢100の接続部を強化することができる。これにより、より多くの段積み用箱型土嚢100を積み重ねることができる。
【0047】
また、上下方向に積み重ねた段積み用箱型土嚢100の接続を、補強材113,114,125,126に形成された貫通孔113c,114c,125c,126cに連接ピン131を挿入するだけで実現することができる。これにより、段積み用箱型土嚢100の積み重ねが容易となり、段積み用箱型土嚢100を用いた構造物150を容易に構築することができる。
【0048】
また、上縁部補強材113,125に形成された貫通孔113c,125cを長孔とすることにより、貫通孔113c,125cと対応する貫通孔114c,126cとに連接ピン131を挿通させやすくすることができる。これにより、段積み用箱型土嚢100を積み重ねることが容易となり、段積み用箱型土嚢100を用いた構造物150を容易に構築することができる。
【0049】
また
図3(a)に示すように、下縁部補強材114に形成された貫通孔114cは、第2平板部114b、横棒111b、及び縦棒111aに囲まれて十分な強度を有する領域に形成されている。その他の貫通孔113c,125c,126cも同様に、十分な強度を有する領域に形成されている。そのため、貫通孔113c,114c,125c,126cに連接ピン131を挿通することで、上下に積み重ねられた段積み用箱型土嚢100を強固に接続することができる。
【0050】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る段積み用箱型土嚢200について説明する。なお、段積み用箱型土嚢200を構成する各部材は、実施の形態1に係る段積み用箱型土嚢100のものと同じである。そのため、両形態で共通する部材には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0051】
実施の形態2に係る段積み用箱型土嚢200は、
図9に示すように、内容物を充填する内部の空間Sが2つ形成されており、この点が内部の空間Sを1つしか有していない実施の形態1の段積み用箱型土嚢100と異なっている。段積み用箱型土嚢200は、実施の形態1における2つの段積み用箱型土嚢100を、1つの側壁110を共有させて連結したもので、平面視して正方形の筒状体が2つ並んだ形状を有している。すなわち、段積み用箱型土嚢200は、間隔をあけて配置された3つの側壁110と、3つの側壁110間に配置されて平面視して正方形の筒状体が2つ並んだ形状を形成する4つの側壁120とを有している。3つの側壁110のうち、中央に配置された側壁110の両サイドにはそれぞれ、2つの側壁120がコイル130を介して接続されている。段積み用箱型土嚢100は、収納時に4つの側壁120が内側に向けて谷を形成するように変形することで、折りたたまれた状態にされる。
【0052】
実施の形態2に係る段積み用箱型土嚢200においても、金網部111,123に強固に固定した補強材113,114,125,126を介して積み重ねた段積み用箱型土嚢200を上下に接続できる。そのため、上記の実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
また、1つの段積み用箱型土嚢200を展開し設置するだけで、内容物を充填するための内部の空間Sを2つ形成することができる。そのため、段積み用箱型土嚢200を用いて構造物を素早く構築することができる。
【0054】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。上記の実施の形態では、金網部111及び金網部123に固定された補強材113,114,125,126は、L字型鋼から形成されていると説明した。しかしながら、補強材113,114,125,126に他の形状の部材を使用してもよい。例えば、
図10に示すように、金網部111の上縁に設けられる上縁部補強材313と下縁に設けられる下縁部補強材314を平板鋼から形成してもよい。上縁部補強材313に、複数の貫通孔313cが形成されている点、及び下縁部補強材314に、複数の貫通孔314cが形成されている点は、上記実施の形態と同様である。また、
図10では、側壁110の構成についてのみ図示しているが、側壁120についても同様に、平板鋼から形成された補強材が上縁及び下縁に設けられていてもよい。本実施の形態3においても、上縁部補強材313及び下縁部補強材314と横棒111bとの溶接を、横棒111bの両サイドから、横棒111bの長手方向に沿って線状に溶接することができ、上記実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0055】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について説明する。本実施の形態では、
図11に示すように、金網部111の上縁に設けられる上縁部補強材413と下縁に設けられる下縁部補強材414をみぞ形鋼から形成してもよい。上縁部補強材413は、平板部であるウェブ413aと、第1フランジ413bと、第2フランジ413cとを有している。上縁部補強材413は、ウェブ413aの内面が金網部111の上縁に接触するように、第1フランジ413bの内面が金網部111の内側に接触するようにして設けられている。また、下縁部補強材414は、平板部であるウェブ414aと、第1フランジ414bと、第2フランジ414cとを有している。下縁部補強材414は、ウェブ414aの内面が金網部111の下縁に接触するように、第1フランジ414bの内面が金網部111の内側に接触するようにして設けられている。なお、上縁部補強材413に、複数の貫通孔413dが形成されている点、及び下縁部補強材414に、複数の貫通孔414dが形成されている点は、上記実施の形態と同様である。また、
図11では、側壁110の構成についてのみ図示しているが、側壁120も同様に、溝型鋼から形成された補強材が金網部123の上縁及び下縁に設けられていてもよい。本実施の形態4においても、上縁部補強材413のウェブ413a及び下縁部補強材414のウェブ414aと横棒111bとの溶接を、横棒111bの両サイドから、横棒111bの長手方向に沿って線状に溶接することができ、上記実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0056】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5について、
図12を参照しながら説明する。なお、
図12においては、発明を容易に理解することができるように、金網部111及び金網部123に設けられる上縁部補強材513及び下縁部補強材514の一部のみを図示している。上記の実施の形態では、補強材に形成された貫通孔に連接ピンを挿通して、積み重ねられた段積み用箱型土嚢を接続した。しかしながら、段積み用箱型土嚢の接続方法は、貫通孔に連接ピンを挿通する方法に限定されない。例えば、
図12に示すように、上縁部補強材513の上面には円形状の凸部513aを設けられ、下縁部補強材514には凸部513aが嵌合する係合部としての嵌合孔514aが設けられている。段積み用箱型土嚢を積み重ねるときは、凸部513aと嵌合孔514aとを合致させて嵌合させることで、上下に積み重なった段積み用箱型土嚢を接続することができる。これにより、段積み用箱型土嚢を積み重ねる作業を容易に行うことができ、構造物の構築をスムーズに行える。なお、下縁部補強材514には嵌合孔514aに代えて、下面に形成された凸部513aと嵌合する係合部としての凹部を形成してもよい。また、下縁部補強材514の下面に凸部を形成し、上縁部補強材513に嵌合孔を形成する態様であってもよい。また、上縁部補強材513及び下縁部補強材514は平板鋼に限定されず、L字型鋼、溝型鋼を採用することができる。
【0057】
(実施の形態6)
次に、実施の形態6について、
図13を参照しながら説明する。なお、
図13においても、発明を容易に理解することができるように、金網部111及び金網部123に設けられる上縁部補強材613及び下縁部補強材614の一部のみを図示している。
図13に示すように、上縁部補強材613の上面には長手方向に沿って延びる係合部としての溝613aが形成されており、下縁部補強材614の下面には長手方向に沿って延びる線状の凸部614aが形成されている。段積み用箱型土嚢を積み重ねるときは、凸部614aと溝613aとを一致させて嵌め合わすことで、上下に積み重なった段積み用箱型土嚢を接続することができる。これにより、段積み用箱型土嚢を積み重ねる作業を容易に行うことができ、構造物の構築をスムーズに行える。また、凸部614aと溝613aとを反対に配置し、すなわち下縁部補強材614の下面に溝を形成し、上縁部補強材613の上面に凸部を形成する態様であってもよい。また、上縁部補強材613及び下縁部補強材614は平板鋼に限定されず、L字型鋼、溝型鋼を採用することができる。
【0058】
(実施の形態7)
次に、実施の形態7について、
図14を参照しながら説明する。本実施の形態では、実施の形態1と異なり、上縁部補強材713に形成された長孔の貫通孔713cは、横棒111bよりも外側であり上縁部補強材713の先端部に形成されている。同様に、下縁部補強材714に形成された丸孔の貫通孔714cは、横棒111bよりも外側であり下縁部補強材714の先端部に形成されている。このように貫通孔713c,714cを補強材の先端部に形成することにより、貫通孔713c及び貫通孔714cが視認し易くなり、両者が一致したか否かを容易に判断できるとともに、連接ピン131を挿通させる作業も容易に行える。
【0059】
この発明は、上記実施の形態に限定されず、様々な変形及び応用が可能である。上記実施の形態では、側壁110,120の横幅は同じであると説明したが、側壁110の横幅と側壁120の横幅とを異ならせて、平面視して長方形の筒状の形状としてもよい。
【0060】
また、連接ピン131を挿通する貫通孔として、上縁部補強材には長孔が形成され、下縁部補強材には丸孔が形成されていると説明したが、上縁部補強材に丸孔が形成され、下縁部補強材に長孔が形成された態様であってもよい。また、上縁部補強材及び下縁部補強材の両方に長孔が形成された態様であってもよい。
【0061】
また、補強材113,114,125,126と、横棒111b,123bとは、横棒111bの両サイドから、横棒111bの長手方向に沿って線状に溶接されていると説明した。しかしながら、接続部の強度が十分に確保できるのであれば、横棒111bの両サイドから溶接されていなくてもよく、横棒111bの片側のみからの溶接であってもよい。
【0062】
また、構築する構造物の大きさ及び形状は特に限定されるものではなく、積み重ねる段積み用箱型土嚢の数を多くして、
図8に示す構造物150の高さ6mよりも高い構造物を構築してもよいし、6mよりも低い構造物を構築してもよい。また、
図8(a)に示す構造物150の図中左右方向の幅を大きくして、人員や装備品等を収容する空間をより大きくしてもよい。また、
図8(b)に示す構造物160の間隔は、収容物に応じて任意に設定することができる。また、構築する構造物は、人員や装備品等を防護する掩体として使用されると説明したが、他の用途としても使用できる。例えば、重要防護施設等の建物の周囲に構造物を構築して、周囲を包囲した建物を敵の砲爆撃等から防護してもよい。
【0063】
また、上記実施の形態では、側壁の全てに上縁部補強材及び下縁部補強材を設けたが、上下に積み重ねた段積み用箱型土嚢の接続部にそれほどの強度を求めない場合には、一部の側壁のみに上縁部補強材及び下縁部補強材を設けてもよい。
【0064】
また、平板部を有する補強材を、側壁の上縁と下縁との両方に設けるか否かは任意であり、上縁及び下縁のうちいずれか一方のみに設けてもよい。次に、実施の形態8として、平板部を有する補強材を側壁の下縁のみに設けた形態について、
図15から
図18を参照しながら説明する。
【0065】
(実施の形態8)
図15に示す側壁820は、上記の実施の形態と同様に中央部で開閉できるという点で側壁810と異なるが、その他の構成は側壁810と同じである。そのため、
図18において、側壁810に関する符号と側壁820に関する符号とを併記し、側壁820に関する符号についてはかっこ書きで記載している。
【0066】
本実施の形態の段積み用箱型土嚢800では、
図15に示すように、金網部111,123の下縁のみに平板部を有する下縁部補強材814,826(単に、補強材814,826と記載する場合もある)が溶接付けされている。具体的には、対向する2つの側壁810は、
図16に示すように、金網部111と、金網部111の上縁に設けられた補強横棒811(単に、横棒811と記載する場合もある)と、金網部111の下縁に設けられた下縁部補強材814とを有している。
【0067】
補強横棒811は、横棒111bと同様に鋼製の丸棒から構成されており、横棒111bの長さと同じ長さを有している。補強横棒811は、
図16及び
図17(b)に示すように、複数本並んだ縦棒111aに内側から溶接付けされている。すなわち、金網部111の上縁には、縦棒111aを挟んで2本の横棒111b,811が溶接付けされている。これにより、側壁810の上縁部には、
図17(b)に示すように、2本の横棒111b、811と、隣接する縦棒111aとによって囲まれた複数の隙間S1が形成されている。このように側壁810は、2本の横棒111b、811によって上縁部が補強されている。
【0068】
下縁部補強材814は、
図2に示す下縁部補強材114と同様に、例えば鋼製のL字型鋼から形成され、
図16に示すように互いに直交する第1平板部814aと第2平板部814bとを有している。
図2に示す構成では、鉛直方向に立設する第2平板部114bが側壁110の内側に位置しているのに対し、本実施の形態では、
図16に示すように鉛直方向に立設する第2平板部814bが側壁810の外側に位置している。すなわち、下縁部補強材814は、第1平板部814aの内面が金網部111の下縁に接触するように、第2平板部814bの内面が金網部111の外側に接触するように設けられている。
【0069】
また、下縁部補強材814の第1平板部814aには、
図17(a)に示すように、長手方向に沿って、かつ縦棒111aの両サイドに間隔d1をあけて、複数の貫通孔814cが形成されている。このように貫通孔814cは、第1平板部814aに突き当たる縦棒111aの両サイドに対となってあけられた丸孔であり、
図17(b)に示すように、平面視すると横棒111bと補強横棒811の間に設けられている。
【0070】
図15に示す側壁820を構成する第1側壁821及び第2側壁822も、側壁810と同様の構成を有しており、
図18に示すように金網部123の上縁は、横棒123b及び補強横棒825により補強されている。また、金網部123の下縁は、例えば鋼製のL字型鋼からなる下縁部補強材826が溶接付けされている。なお、下縁部補強材826の金網部123への取り付け方法や、下縁部補強材826に形成された貫通孔826cの配置は、側壁810に設けられた下縁部補強材814のそれらの態様と同様である。
【0071】
段積み用箱型土嚢800を積み重ねていく場合、上記実施の形態と同様に、まず、段積み用箱型土嚢800を平面視して正方形の筒状にして地面に設置する。そして、段積み用箱型土嚢800の内部空間の周囲に不織布を配置する。続いて、段積み用箱型土嚢800の内部を内容物で充填する。
【0072】
次に、展開した段積み用箱型土嚢800を、内容物で充填した段積み用箱型土嚢800の上に段積みする。このとき、
図18(a)に示すように、側壁810においては横棒111b及び補強横棒811の上に、積み重ねる段積み用箱型土嚢800の下縁部補強材814を接触させるとともに、側壁820においては横棒123b及び補強横棒825の上に、積み重ねる段積み用箱型土嚢800の下縁部補強材826を接触させる。そして、連接ピン850を用いて段積みした段積み用箱型土嚢800を接続する。
【0073】
連接ピン850は、
図18(b)に示すように、U字状のU字部850aと、U字部850aに屈曲した状態で接続された2つの直部850bとを有している。2つの直部850bは、間隔d2をあけて互いに平行であり、U字部850aに対して同じ方向に屈曲している。この2つの直部850bの間隔d2は、
図17(a)に示す縦棒111aの両サイドにあけられた貫通孔814cの間隔d1と同じである。
【0074】
積み重ねた段積み用箱型土嚢800を接続する際、側壁810の箇所において、連接ピン850の2つの直部850bを、縦棒111aの両サイドにあけられた貫通孔814cに通し、さらに
図18(a)に示すように、横棒111bと補強横棒811の間に通す。側壁820の箇所においても
図18(a)に示すように、連接ピン850の2つの直部850bを、縦棒123aの両サイドにあけられた貫通孔826cに通し、さらに横棒123bと補強横棒825の間に通す。これにより、積み重ねられた上下の段積み用箱型土嚢800を接続することができる。
【0075】
続いて、上方に積み重ねた段積み用箱型土嚢800に内容物を充填する。このようにして、段積み用箱型土嚢800を配置、内容物の充填、段積み用箱型土嚢800の積み重ね及び接続といった作業を繰り返していき、構造物を構築する。
【0076】
実施の形態8に係る段積み用箱型土嚢800によれば、二股に分かれた連接ピン850を、補強材814,826に形成された貫通孔814c,826cと、上縁部に設けられた2本の横棒の間に挿入することにより、上下方向に積み重ねた段積み用箱型土嚢800を接続することができる。特に、段積み用箱型土嚢800の上縁部には、
図17(b)に示すように、連接ピン850を挿入可能な複数の隙間S1が形成されているため、連接ピン850を容易に差し込むことができる。そのため、連接ピン850の設置を容易に行え、作業性を向上させることができる。
【0077】
また、段積み用箱型土嚢800の上縁部において、例えばL型鋼等の平板部を有する補強材の代わりに丸棒を配置している。これにより、段積み用箱型土嚢800の重量を減らすことができ、段積み用箱型土嚢800を搬送したり段積みしたりする際の労力を低減することができる。また、段積み用箱型土嚢800を製造のために使用する鋼材量を減らすことができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0078】
また、
図16に示すように下縁部補強材814において、鉛直方向に立設する第2平板部814bを側壁810の外側に位置させ、第1平板部814aを段積み用箱型土嚢800の内側に向けている。これにより、段積み用箱型土嚢800を接続する際に、側壁810の内側に立設する平板部が存在しないため、段積み用箱型土嚢800の内側で作業する作業員は連接ピン850を差し込みやすい。これにより、段積み用箱型土嚢800の接続作業をスムーズに実施することができる。
【0079】
また、金網部の上縁に設けられた補強横棒811,825と、金網部の下縁に設けられた補強材814,826により縁部が補強されていることから、上下方向に積み重ねた段積み用箱型土嚢800の接続部を強化することができる。
【0080】
また、金網部の上縁に補強横棒811,825を配置することで、連接ピン850を挿入可能な複数の隙間S1を形成することができる。これにより、内容物を充填する際に段積み用箱型土嚢800の内側に配置した不織布が隙間S1に被さったとしても、複数箇所に形成した隙間S1の位置は把握しやすい。これにより、連接ピン850の挿入に支障を来しにくく、段積み用箱型土嚢800の接続作業をスムーズに実施することができる。
【0081】
また、金網部の上縁に複数の隙間S1を形成したことから、様々な異なる態様で貫通孔が配置された段積み用箱型土嚢を上方に積み重ねて接続することができる。例えば、本実施の形態の段積み用箱型土嚢800の上に、
図1に示す実施の形態1に係る段積み用箱型土嚢100を重ねて接続することができる。
【0082】
この発明は、実施の形態8の形態に限定されず、様々な変形及び応用が可能である。本実施の形態では、金網部の下縁に設けた補強材814,826をL字型鋼から形成したが、他の補強材から形成してもよく、例えば溝型鋼から形成したり、あるいは平板鋼から形成したりしてもよい。
【0083】
また、下縁部補強材814,826に形成した貫通孔814c,826cを丸穴としたが、長手方向を横棒が延びる方向と一致する長孔としてもよい。これにより、段積み用箱型土嚢800を接続する際、連接ピン850を容易に差し込むことができる。
【0084】
また、下縁部補強材814,826に形成した貫通孔814c,826cの配置は、
図17(a)に示したように縦棒の両サイドにあけたものに限定されない。例えば、実施の形態1に係る段積み用箱型土嚢100に形成された貫通孔の配置と同じ配置としてもよい。これにより、本実施の形態8に係る段積み用箱型土嚢800を、実施の形態1に係る段積み用箱型土嚢100の上に重ね、
図7に示す連接ピン131を介して接続することができる。このように、上下に重ねた段積み用箱型土嚢の接続部における貫通孔の配置を互いに一致させることで、連接ピンを介して接続することができる。
【0085】
また、実施の形態8では平板部を有する補強材を、側壁の下縁のみに設けたが、他の変形例として上縁のみに設ける構成とし、下縁は補強横棒により補強された構成としてもよい。これにより、下縁に連接ピンを挿入するための複数の隙間S1を設けることができ、下方にある段積み用箱型土嚢の貫通孔の様々な配置態様に適応して連接ピンを差しこむことができる。
【0086】
また、
図16に示すように下縁部補強材において、鉛直方向に立設する第2平板部814bを側壁810の外側に位置させるという点は、
図1に示す実施の形態1に係る段積み用箱型土嚢100についても適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
100,200,800…段積み用箱型土嚢
110,120,810,820…側壁
111,123…金網部
111a,123a…縦棒
111b,123b…横棒
113,125,313,413,513,613,713…上縁部補強材
113a,114a,125a,126a,814a…第1平板部
113b,114b,125b,126b,814b…第2平板部
113c,114c,125c,126c,313c,314c,413d,414d,713c,714c,814c,826c…貫通孔
114,126,314,414,514,614,714,814,826…下縁部補強材
121,821…第1側壁
122,822…第2側壁
128…ワイヤ
129…固定具
130…コイル
131…連接ピン
131a…曲部
150、160…構造物
413a,414a…ウェブ
413b,414b…第1フランジ
413c,414c…第2フランジ
513a,614a…凸部
514a…嵌合孔
613a…溝
811,825…補強横棒
850…連接ピン
850a…U字部
850b…直部
S…空間
S1…隙間
d1,d2…間隔