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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186661
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】表示システム及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20221208BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B60R11/02 C
A47C7/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090454
(22)【出願日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/196,724
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/234,742
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】沼尻 浩行
(72)【発明者】
【氏名】清水 一浩
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 美香
(72)【発明者】
【氏名】余郷 広
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 祥一
(72)【発明者】
【氏名】押野 優汰
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 拓也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大貴
【テーマコード(参考)】
3B084
3D020
【Fターム(参考)】
3B084JC01
3D020BA04
3D020BB01
3D020BC01
3D020BE03
(57)【要約】
【課題】乗員にとって使い勝手の良い表示システム及び車両を提供する。
【解決手段】表示システム1は、車両Vの車内に設けられ、車内に映像を投影可能な投影装置30と、車両Vに設けられ、車両又は車両Vの乗員Hの状態を検知するセンサ50と、センサ50から信号を受信し、投影装置30を制御する制御部40と、を備え、制御部40は、センサ50からの信号に基づいて投影装置30の投影状態を変更する。投影装置30の投影状態を自動で変更することにより、乗員Hが投影装置30を操作する手間が省け、投影装置30の使い勝手が向上する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車内に設けられ、前記車内に映像を投影可能な投影装置と、
前記車両に設けられ、前記車両又は前記車両の乗員の状態を検知するセンサと、
該センサから信号を受信し、前記投影装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記センサからの信号に基づいて前記投影装置の投影状態を変更することを特徴とする表示システム。
【請求項2】
前記センサは、前記車両のドアの開閉状態を検知するドアセンサであり、
前記制御部は、前記ドアセンサが前記ドアの開放を検知した場合に前記投影装置の投影を停止することを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記センサは、前記車両の窓又はルーフウィンドウの開閉状態を検知するウィンドウセンサであり、
前記制御部は、前記ウィンドウセンサが、前記窓又は前記ルーフウィンドウの開放を検知した場合に前記投影装置の投影を停止することを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項4】
前記センサは、前記乗員の携帯電話の着信を検知する着信センサであり、
前記制御部は、前記着信センサが前記携帯電話の着信を検知した場合に前記投影装置の投影を停止することを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項5】
前記センサは、前記乗員の着座状態を検知する着座センサであり、
前記制御部は、前記着座センサが前記乗員の退座を検知した場合、前記投影装置の投影を停止することを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項6】
前記センサは、車内の照度を測定する照度センサであり、
前記制御部は、前記照度センサが測定した照度に基づいて、前記投影装置が投影する映像を補正することを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項7】
前記車両は、前記照度センサが測定した照度に基づいて前記車内の照度を調整する照度調整機構を備え、
前記制御部は、調整後の前記照度センサが測定した照度に基づいて、前記投影装置が投影する映像を補正することを特徴とする請求項6に記載の表示システム。
【請求項8】
前記車両は自動走行可能な自動運転車両であり、手動運転モードと自動運転モードとを切り替えるモード切替部を備え、
前記制御部は、前記モード切替部により前記車両が前記自動運転モードに切り替わった場合に前記投影装置の操作可能とし、前記車両が前記手動運転モードに切り替わった場合に前記投影装置の操作を不可とするか又は前記投影装置の投影を停止することを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項9】
前記乗員が着座するシートの状態を変更するシート状態変更機構を備え、
前記制御部は、前記シート状態変更機構により前記シートのシートバックが所定の角度より後傾された場合に、前記投影装置の使用を促すことを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項10】
請求項1に記載の表示システムを備えることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示システム及び車両に係り、特に、車内においてシートの状態と連動した投影装置を備える表示システム及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内において映像を表示するために車両内に設けた投影装置(プロジェクタ)によって、車両の内壁に映像を投影する技術が知られている。特許文献1には、車両に搭載され、車室内壁(リアガラス)に映像を投影する投影装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/55852号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の投影装置は、車両内の他のシステム(例えば、ドアの開閉システム)とは連携していないため、映像の投影中に車両内のシステムを使用する(例えば、外出するためにドアを開ける)ことになった場合、投影装置を手動で止める必要があり、乗員にとって十分に使い勝手の良いものではなかった。
そのため、例えば車両内の他のシステムと連携し、使い勝手の良い表示システムが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、乗員にとって使い勝手の良い表示システム及び車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、本発明に係る表示システム及び該表示システムを備える車両によれば、車両の車内に設けられ、前記車内に映像を投影可能な投影装置と、前記車両に設けられ、前記車両又は前記車両の乗員の状態を検知するセンサと、該センサから信号を受信し、前記投影装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記センサからの信号に基づいて前記投影装置の投影状態を変更することにより解決される。
【0007】
本発明の表示システムでは、車両に設けられるセンサからの信号に基づいて、投影装置の投影状態を変更することができ、乗員にとって使い勝手の良い表示システムを提供することができる。
【0008】
上記の構成において、前記センサは、前記車両のドアの開閉状態を検知するドアセンサであり、前記制御部は、前記ドアセンサが前記ドアの開放を検知した場合に前記投影装置の投影を停止してもよい。
ドアセンサが車両のドアの開放を検知した場合に、投影装置の投影が自動的に停止されるため、乗員が投影装置を操作する手間が省け、投影装置の使い勝手が向上する。
【0009】
また、上記の構成において、前記センサは、前記車両の窓又はルーフウィンドウの開閉状態を検知するウィンドウセンサであり、前記制御部は、前記ウィンドウセンサが、前記窓又は前記ルーフウィンドウの開放を検知した場合に前記投影装置の投影を停止してもよい。
ウィンドウセンサが窓又はルーフウィンドウの開放を検知した場合に、投影装置の投影が自動的に停止されるため、乗員が投影装置を操作する手間が省け、投影装置の使い勝手が向上する。
【0010】
また、上記の構成において、前記センサは、前記センサは、前記乗員の携帯電話の着信を検知する着信センサであり、前記制御部は、前記着信センサが前記携帯電話の着信を検知した場合に前記投影装置の投影を停止してもよい。
着信センサが携帯電話の着信を検知した場合に、投影装置の投影が自動的に停止されるため、乗員が投影装置を操作する手間が省け、投影装置の使い勝手が向上する。
【0011】
また、上記の構成において、前記センサは、前記乗員の着座状態を検知する着座センサであり、前記制御部は、前記着座センサが前記乗員の退座を検知した場合に、前記投影装置の投影を停止してもよい。
着座センサが乗員の退座を検知した場合に、投影装置の投影が自動的に停止されるため、乗員が投影装置を操作する手間が省け、投影装置の使い勝手が向上する。
【0012】
また、上記の構成において、前記センサは、車内の照度を測定する照度センサであり、前記制御部は、前記照度センサが測定した照度に基づいて、前記投影装置が投影する映像を補正してもよい。
車内の照度を測定し、照度に基づいて映像を自動で補正することにより、乗員が投影装置を操作する手間が省け、投影装置の使い勝手が向上する。
【0013】
また、上記の構成において、前記車両は、前記照度センサが測定した照度に基づいて前記車内の照度を調整する照度調整機構を備え、前記制御部は、調整後の前記照度センサが測定した照度に基づいて、前記投影装置が投影する映像を補正してもよい。
照度調整機構により車内の照度が調整されることで、投影映像に適した明るさに調整することができ、投影装置の使い勝手が向上する。
【0014】
また、上記の構成において、前記車両は自動走行可能な自動運転車両であり、手動運転モードと自動運転モードとを切り替えるモード切替部を備え、前記制御部は、前記モード切替部により前記車両が前記自動運転モードに切り替わった場合に前記投影装置の操作可能とし、前記車両が前記手動運転モードに切り替わった場合に前記投影装置の操作を不可とするか又は前記投影装置の投影を停止してもよい。
手動運転モードと自動運転モードとの切り替えにより、投影装置の操作の可否を切り替えることができ、乗員が投影装置を操作する手間が省け、投影装置の使い勝手が向上する。
【0015】
また、上記の構成において、前記乗員が着座するシートの状態を変更するシート状態変更機構を備え、前記制御部は、前記シート状態変更機構により前記シートのシートバックが所定の角度より後傾された場合に、前記投影装置の使用を促してもよい。
シート状態変更機構によりシートバックが後傾された場合に、投影装置の使用が促されることで、乗員が投影装置を操作する手間が省け、投影装置の使い勝手が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表示システム及び該表示システムを備えた車両によれば、車両に設けられるセンサからの信号に基づいて、投影装置の投影状態を変更することができ、乗員にとって使い勝手の良い表示システムを提供することができる。
また、本発明においてセンサがドアセンサであるとき、ドアセンサが車両のドアの開放を検知した場合に、投影装置の投影が自動的に停止されるため、乗員が投影装置を操作する手間が省け、投影装置の使い勝手が向上する。
また、センサがウィンドウセンサであるとき、ウィンドウセンサが窓又はルーフウィンドウの開放を検知した場合に、投影装置の投影が自動的に停止されるため、乗員が投影装置を操作する手間が省け、投影装置の使い勝手が向上する。
また、本発明においてセンサが乗員の携帯電話の着信を検知する着信センサであるとき、着信センサが携帯電話の着信を検知した場合に、投影装置の投影が自動的に停止されるため、乗員が投影装置を操作する手間が省け、投影装置の使い勝手が向上する。
また、本発明においてセンサが着座センサであるとき、着座センサが乗員の退座を検知した場合に、投影装置の投影が自動的に停止されるため、乗員が投影装置を操作する手間が省け、投影装置の使い勝手が向上する。
また、本発明においてセンサが照度センサであるとき、車内の照度を測定し、照度に基づいて映像を自動で補正することにより、乗員が投影装置を操作する手間が省け、投影装置の使い勝手が向上する。
また、車内の照度を調整する照度調整機構により、車内の照度が調整されることで、投影映像に適した明るさに調整することができ、投影装置の使い勝手が向上する。
また、本発明において車両が自動走行可能な自動運転車両であるとき、手動運転モードと自動運転モードとの切り替えにより、投影装置の操作の可否を切り替えることができ、乗員が投影装置を操作する手間が省け、投影装置の使い勝手が向上する。
また、シート状態変更機構によりシートバックが後傾された場合に、投影装置の使用が促されることで、乗員が投影装置を操作する手間が省け、投影装置の使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る表示システムを模式的に示す側面図である。
図2】本実施形態に係る表示システムを模式的に示す上面図である。
図3】ECU及びECUの制御対象を示す図である。
図4】ドアセンサによるプロジェクタの制御内容を示すフロー図である。
図5】照度センサによるプロジェクタの制御内容を示すフロー図である。
図6】運転モードを切り替えた場合のプロジェクタの制御内容を示すフロー図である。
図7】シート状態に基づいたプロジェクタの制御内容を示すフロー図である。
図8】タンデムアレンジの車両用シートに映像を投影する表示システムを模式的に示す側面図である。
図9】テールゲートに映像を投影する表示システムを模式的に示す側面図である。
図10】左右の車両用シートにスクリーンを橋渡すように配置して映像を投影する表示システムを模式的に示す平面図である。
図11】左右の車両用シートの間にスクリーンを配置して映像を投影する表示システムを模式的に示す平面図である。
図12】プロジェクタの取付・収納位置の他の例を模式的に示す側面図である。
図13】ECU及びプロジェクタの取付・収納位置の他の例を模式的に示す上面図である。
図14】操作用のレバーが取り付けられた車両用シートを示す斜視図である。
図15】左右方向に回動可能なアームレストを模式的に示す上面図である。
図16】ドアに設けられた収納部を示す図である。
図17】空気吹出口及び水分吹出口が設けられた車両用シートを示す斜視図である。
図18】VRゴーグルが着脱自在に取り付けられたヘッドレストを示す斜視図である。
図19】ドアと車両用シートとの間に乗員を支持する支持部材が設けられた車両の内部を示す図である。
図20】旋回可能なヘッドレストを有する車両用シートの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る車両用の表示システム及びその表示システムを有する車両について、図1図13を参照しながら説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0019】
本実施形態は、車両の車内に設けられ、車内に映像を投影可能な投影装置と、車両に設けられ、車両又は車両の乗員の状態を検知するセンサと、センサから信号を受信し、投影装置を制御する制御部と、を備え、制御部は、センサからの信号に基づいて投影装置の投影状態を変更することを特徴とする表示システム及びその表示システムを備える車両の発明に関する。
【0020】
車両の一例として、四輪の電気自動車(EV車)である車両Vを挙げ、その構成例について説明する。車両Vは四輪の電気自動車だけでなく、エンジン車、走行用にモータとエンジンの双方を備えるハイブリット車、電源としてバッテリと燃料電池を搭載する車等であってもよい。
以下の説明中、「前後方向」とは、図1に示すように、車両V及び車両用シートSの乗員H(以下、着座者と呼ぶ場合がある)から見たときの前後方向を意味し、車両Vの走行方向と一致する方向である。「シート幅方向」又は「車幅方向」とは、図2に示すように車両V及び車両用シートSの横幅方向であり、車両用シートSの乗員Hから見たときの左右方向と一致する。また、「上下方向」とは、車両Vの上下方向であり、車両Vが水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。また、単に「外側」という場合は、車両Vの中心から外側に向かう方向において外側に近い方を指し、「内側」という場合は車両Vの外側から中心に向かう方向において中心に近い方を意味する。
なお、以下に説明する車両Vに設けられた車両用シートSの各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートSが着座状態にあるケースを想定して説明することとする。
【0021】
図1から図3を参照しながら、車両V及び表示システム1の構成について説明する。
<車両V>
図1に示すように、車両Vは、車室2を画定する車両用ドアD、ルーフ3及びフロアFを備え、フロアFには、フロントシートS1、リアシートS2が載置されている。フロントシートS1及びリアシートS2は共に乗員Hが着座可能な車両用シートSである。以下では、車両の後ろ側に配置されたリアシートS2を中心に説明するが、前側に配置されたフロントシートS1も同様の構成であることから、区別する必要がない場合は、単に車両用シートSと称して説明する場合がある。
【0022】
車両用ドアDには、開閉可能なウィンドウWが設けられている。また、ウィンドウWの車内側に外光を遮断するサンシェード60が設けられている。サンシェード60を上げ下げすることにより、車室2内の明るさ(照度)を調整することできる。すなわちサンシェード60は、車室2内の照度を調節する照度調節機構として機能する。ウィンドウWは手動又は自動で開閉することが可能である。サンシェード60が自動で開閉可能である場合、サンシェード60は、後述する車内のECU40により制御される。
【0023】
また、ルーフ3には、開閉可能なルーフウィンドウW2が設けられており、開放することで外光を車室2内に取り込むことができる。ルーフウィンドウW2には、ルーフ用サンシェード61が設けられている。ルーフ用サンシェード61も、ウィンドウWのサンシェード60と同様に照度調節機構であり、ルーフ用サンシェード61でルーフウィンドウW2を覆うことより外光を遮断し、車室2内の照度を調節することができる。ルーフ用サンシェード61も手動又は自動で開閉することが可能である。ルーフ用サンシェード61が自動で開閉可能である場合、ルーフ用サンシェード61は後述する車内のECU40により制御される。
【0024】
また、車両Vは、自動走行可能な自動運転車両であり、手動で運転可能な手動運転モードと、自動走行する自動運転モードとを切り替えるモード切替部62を備えている。モード切替部62による運転モードの切り替えは、例えば乗員Hが、モード切替用のボタンを押下することにより実行される。運転モードが切り替えられた場合、後述するECU40にその信号が送信される。
【0025】
<表示システム1>
表示システム1は、図1及び図2に示すように、投影装置であるプロジェクタ30と、車両V又は乗員Hの状態を検知するセンサ50と、制御部であるECU40(Electronic Control Unit)と、から構成される。
ECU40は、プロジェクタ30及びセンサ50と有線又は無線で接続されており、信号を送受信する。また、ECU40はプロジェクタ30を制御することでき、例えば、プロジェクタ30に映像を投影させたり、投影を停止させたりすることが可能である。また、プロジェクタ30が投影する映像の明るさや色味を補正することができる。
【0026】
<プロジェクタ30>
プロジェクタ30は、映像31を車内の壁面、例えば、フロントシートS1のシートバック10の背面を投影面として映像31を投影する装置である。
プロジェクタ30は車両用シートSの側方に設けられたセンターコンソール5に取り付けられている。プロジェクタ30は、単体でもレンズの向きを変更することにより映像を投影する位置や角度等を変更が可能である。また、プロジェクタ30の本体がプロジェクタ可動機構32に取り付けられており、プロジェクタ可動機構32により車両Vに対するプロジェクタ30の本体の垂直方向の角度及び水平方向の角度を変更することができる。
プロジェクタ30は、ECU40により制御されるが、操作用にプロジェクタ操作スイッチ34も設けられれており、乗員Hはプロジェクタ操作スイッチ34を用いて直接プロジェクタ30を操作することができる。
【0027】
また、スピーカ8がヘッドレスト13の側部に設けられている。スピーカ8により、プロジェクタ30が投影する映像に合わせて音楽を流すことができる。スピーカ8もECU40と接続されており、音楽の他、警告音や音声によるメッセージを発することも可能である。なお、スピーカ8の位置はヘッドレスト13に限らず、車両用ドアDの内壁面や、ルーフ3に設けられてもよい。
【0028】
<センサ50>
車両Vには、車両V又は乗員Hの状態を検知するセンサ50として、ドアセンサ51、ウィンドウセンサ52、着信センサ53、着座センサ54、及び、照度センサ55を備える。また、車両Vには、図1に示すように車内カメラ6及び車内モニタ7が設けられてもよい。車内カメラ6及び車内モニタ7も、車両V又は乗員Hの状態を検知するセンサ50として機能する場合がある。
【0029】
ドアセンサ51は、車両用ドアDの付近に設けられ、車両用ドアDの開閉状態を検知するセンサである。ウィンドウセンサ52は、ウィンドウW及びルーフウィンドウW2に設けられ、ウィンドウW又はルーフウィンドウW2の開閉状態を検知するセンサである。ドアセンサ51及びウィンドウセンサ52は、車両用ドアD、ウィンドウW又はルーフウィンドウW2が開放されたときに、開放されたことを示す信号をECU40に送信する。
また、ウィンドウセンサ52は、サンシェード60及びルーフ用サンシェード61とも接続されており、サンシェード60及びルーフ用サンシェード61の開閉状態をECU40に送信する。
【0030】
着信センサ53は、乗員Hの携帯電話又はスマートフォン(以下、携帯端末等)と無線接続し、携帯端末等に着信があった場合に着信信号をECU40に送信する。着信センサ53と携帯端末等とは、WiFi網、Bluetooth(登録商標)等を利用して通信するが、着信センサ53の代わりにECU40が携帯端末等と直接接続して、携帯端末等から着信信号を受信してもよい。
【0031】
着座センサ54は、車両用シートSのシートクッション11に設けられ、乗員Hが車両用シートSに着座しているか否かを検知する。着座センサ54は、乗員Hが車両用シートSに着座したときにかかる圧力を検知し、所定以上の圧力がかかった場合に着座していることを示す信号をECU40に送信する。
【0032】
照度センサ55は、車室2の照度を測定するセンサであり、例えばセンターコンソール5上に配置される(図2参照)。照度は常に測定されており測定結果はECU40に送信される。ECU40は、照度に基づいて車両Vがトンネル等の暗い場所を走行しているか、日影が全くない明るい場所を走行しているかを判定することが可能である。
【0033】
車内カメラ6はルーフ3に設けられており、車両用シートSに着座する乗員Hを撮影し、乗員Hの映像をECU40に送信する。ECU40は、車内カメラ6から受信した映像を基に車両用シートSに乗員が着座しているか否かを判定してもよい。
【0034】
車内モニタ7は、図1に示すように、フロントシートS1のヘッドレストの背面に設けられている。車内モニタ7は、映像情報を表示する装置であり操作ボタン又は画面のタッチ入力により乗員Hにより操作可能に構成されている。車内カメラ6及び車内モニタ7は、車両又は乗員の状態を検知するセンサ50に含まれるものとする。
【0035】
<車両用シートS>
車両用シートSは、シートバック10、シートクッション11、オットマン12、ヘッドレスト13、シート支持部19を備える。また、シートバック10を傾けるリクライニング機構15、シートクッション11を傾けるチルト機構16を備える。また、シート支持部19は、車両用シートSを前後方向又は左右方向に移動させるシートスライド機構20、車両用シートSを上下方向の軸を中心に回転させるシート回転機構24と、を備える。
【0036】
シートバック10は、乗員Hの背を後方から支持し、不図示のフレームにクッション材を支持させて当該クッション材を表皮で覆うことで構成される。
また、シートバック10は、後述のリクライニング機構15により、シートクッション11に対して後傾するように移動(厳密には回動)することが可能である。
車両用シートSは、リクライニング機構15等を用いることで、シートバック10が起立した起立姿勢(図1参照)から、シートバック10が後傾した倒れ姿勢の少なくとも二つの状態に変形可能である。なお、車両用シートSが起立姿勢にある状態では、乗員Hは車両用シートSに対して通常の立位姿勢(例えば運転姿勢)をとる。一方で、車両用シートSが倒れ姿勢にある状態では、乗員Hは車両用シートSに対して中立姿勢をとる。
【0037】
シートクッション11は、乗員Hの臀部を下方から支持し、不図示のフレームにクッション材を載せて当該クッション材を表皮で覆うことで構成されている。シートクッション11の後端部は、シート幅方向に沿って延びた軸を介して、シートバック10の下端部と連結している。また、本実施形態に係るシートクッション11は、後述のチルト機構16により、その前端部が上下方向に昇降するように回動することが可能である。
【0038】
オットマン12は、乗員Hの下腿部を下方から支持し、不図示のフレームボードにクッション材を載せて当該クッション材を表皮で覆うことで構成されている。オットマン12は、シート幅方向に沿って延出した回動軸を介して、シートクッション11の前端部に支持されている。すなわち、オットマン12は、上記の回動軸周りに回動可能である。
【0039】
ヘッドレストは、着座した乗員Hの頭部を後方から支持し、不図示のフレームにクッション材を支持させて当該クッション材を表皮で覆うことで構成される。また、ヘッドレスト13は、ヘッドレスト移動機構(不図示)により、シートバック10に対して上下に移動することが可能となっている。つまり、本実施形態では、ヘッドレスト移動機構によるヘッドレスト13の移動に応じて、乗員Hの頭部を支持する位置を変更することが可能である。また、ヘッドレスト13の側部には、スピーカ8が設けられており、乗員Hに向けて音楽及び音声等を発することができる。
【0040】
リクライニング機構15は、シートバック10が車両に対して倒れている角度(後傾角度α)が変わるようにシートバック10を移動(回動)させる機構であり、例えば、モータ(不図示)の駆動によって実現される。リクライニング機構15が動作することでシートバック10とシートクッション11を連結する軸部材を中心として、シートバック10が回動する。リクライニング機構15に設けられたモータにはホールICが設けられ、モータが一回転するたびにパルスが出力される。パルスはECU40により受信され、ECU40は受信したパルスによりシートバック10の後傾角度αを計測することが可能である。
【0041】
チルト機構16は、シートクッション11の前端部が昇降するようにシートクッション11を移動(回動)させる機構であり、例えば、ジャッキ型の電動リフト機構によって構成されている。チルト機構16が動作することでシートクッション11の前端が、シートクッション11の後端に対して回動する。チルト機構16を駆動するモータにはホールICが設けられ、モータが1回転するたびにパルスが出力される。出力されたパルスはECU40により受信され、シートクッション11が車体フロアFに対して傾斜する角度を計測することが可能である。
【0042】
シート支持部19は、車両用シートSを下方から支持する装置であり、シートクッション11の下部に取り付けられる。具体的には、シート支持部19は、車両用シートSとシートスライド機構20及びシート回転機構24を連結するフレーム部材を、カバー部材で覆って構成される。
なお、シート支持部19の内部には、車両用シートSの各機構、プロジェクタ30、車内カメラ6、センサ50、サンシェード60等を制御する制御部としてのECU40が収容される。もちろん、ECU40は、シート支持部19に限られず、シートバック10、シートクッション11等の内部に収容されてもよいし、車両用シートSに対して外付けされてもよい。
【0043】
シートスライド機構20は、車体フロアFに対して車両用シートSを前後方向及び左右方向にスライドさせるための機構である。シートスライド機構20は、アッパーレール21、ロアレール22、及びアッパーレール21をロアレール22に対しスライドさせるためのスライド用モータを備える。スライド用モータについてもホールICが取り付けられていて、モータが1回転するたびにパルスが出力される。
【0044】
アッパーレール21は、シート支持部19を介して車両用シートSに固定され、ロアレール22は、車体フロアFに固定される。ここで、上記のスライド用モータを動作させて、アッパーレール21をロアレール22に対して前後又は左右にスライドさせることで、車両用シートSすなわちシートバック10、シートクッション11、ヘッドレスト13及びオットマン12を一体として車体フロアFに対して前後又は左右に移動させることができる。
【0045】
シート回転機構24は、車体フロアFに対して車両用シートSを上下方向の軸を中心に回転させるための機構である。シート回転機構24はシート回転用モータを備える。シート回転用モータについてもホールICが取り付けられていて、モータが1回転するたびにパルスが出力される。パルスはECU40により受信され、それにより車両用シートSの車の移動方向に対する回転角度を計測することができる。
【0046】
また、車両用シートSは、操作スイッチ25を備える。操作スイッチ25は、車両用シートSのシートクッション11の側部に設けられ、車両用シートSの姿勢変形を指示するための操作部である。例えば、操作スイッチ25は、車両用シートSを起立姿勢から倒れ姿勢に変形させるための第1スイッチ、車両用シートSを倒れ姿勢から起立姿勢に変形させるための第2スイッチを含むこととしてよい。
【0047】
<ECU40>
ECU40は、図3に示すように、車内に設けられた複数のセンサ50と接続されており、センサ50のそれぞれから信号や測定結果等を受信する。
ECU40は、車内に設けられた装置、例えば、車内カメラ6、車内モニタ7、スピーカ8、サンシェード60、ルーフ用サンシェード61、モード切替部62と接続されており、各装置の動作を制御することが可能である。
【0048】
また、ECU40は、図3に示すように、上述したリクライニング機構15、チルト機構16、シートスライド機構20、シート回転機構24、プロジェクタ30を制御する制御部であり、有線又は無線により各機構と接続されている。また、ECU40は、リクライニング機構15、チルト機構16、シートスライド機構20、シート回転機構24に設けられたモータからパルスを受信して、回転角度や移動量等を算定することが可能である。
【0049】
そして、図3に示すように、ECU40は、プロセッサ41、メモリ42、入出力インタフェース43を備える。
プロセッサ41は、メモリ42に記憶されるプログラムやデータ、入出力インタフェース43を介して接続される各デバイスから受信した信号に基づいて各種の演算処理を実行すると共に、表示システム1の各部を制御する中央処理装置である。メモリ42は、例えば半導体メモリであり、各種のプログラムやデータを記憶するほか、プロセッサ41のワークメモリとしても機能する。入出力インタフェース43は、リクライニング機構15、チルト機構16、シートスライド機構20、シート回転機構24、プロジェクタ30、操作スイッチ25、センサ50及び車内の装置(車内カメラ6、車内モニタ7等)と接続して通信する。
【0050】
<プロジェクタ30の制御処理>
次に図4図7に示すフロー図を用いて、車両Vに設けられたセンサ50又は装置と連携したプロジェクタ30の制御処理について説明する。
【0051】
<装置と連携した投影停止処理>
図4は、車両用ドアDと連携したプロジェクタ30の制御処理を示すフロー図である。この制御処理のスタート時点においては、プロジェクタ30が映像を車内の投影面に投影しているものとする。
【0052】
ECU40は、ドアセンサ51から車両用ドアDの開閉状態を示す信号を受信する(ステップS101:信号受信処理)。次に、ECU40は、受信した信号に基づき車両用ドアDが開放状態であるか判定する(ステップS102:状態判定処理)。車両用ドアDが開放状態ではないと判定した場合(ステップS102でNo)、ECU40はプロジェクタ30に映像の投影を継続する(ステップS103:投影継続処理)。車両用ドアDが開放状態であると判定した場合(ステップS102でYes)、ECU40はプロジェクタ30の投影を停止する(ステップS104:投影停止処理)。
【0053】
このように、車両用ドアDが開放状態であると判定された場合、プロジェクタ30による投影が自動的に停止される。すなわち、乗員Hが車両を乗降する際にドアが開いたとき、自動的に映像が停止することから、乗員Hがプロジェクタ30を停止させる手間が省かれ、プロジェクタ30の使い勝手を向上させることができる。
【0054】
なお、図4のフロー図では、ドアセンサ51を用いた車両用ドアDの制御内容について説明したが、ウィンドウセンサ52を用いた場合も同様である。ウィンドウセンサ52が、ウィンドウW又はルーフウィンドウW2の開放を検知し、ECU40が受信した信号に基づき、ウィンドウW又はルーフウィンドウW2が開放されたと判定した場合も、ECU40は、プロジェクタ30の投影を停止する。
乗員HがウィンドウWを開放した場合に自動的に映像が停止されるため、乗員Hがプロジェクタ30を停止させる手間が省かれ、プロジェクタ30の使い勝手を向上させることができる。
【0055】
また、車内モニタ7が乗員Hにより使用が開始された場合に、プロジェクタ30による投影を自動的に停止してもよい。すなわち、ECU40が車内モニタ7から操作を受け付ける信号を受信し、ECU40が車内モニタ7の使用が開始されたと判定した場合に、プロジェクタ30の投影を停止する。乗員Hが、車内モニタ7を使用するとき、自動的に映像が停止することから、乗員がプロジェクタ30を停止する手間が省かれ、プロジェクタ30の使い勝手を向上させることができる。
【0056】
また、乗員Hが所有する携帯端末等に電話がかかってきた場合に、プロジェクタ30による映像を自動的に停止してもよい。すなわち、ECU40が着信センサ53から信号を受信し、ECU40が携帯端末等に着信があったと判定した場合に、プロジェクタ30の投影を停止する。乗員Hの携帯電話又はスマートフォン等に着信があった場合に自動的に映像が停止することから、乗員がプロジェクタ30を停止する手間が省かれ、プロジェクタ30の使い勝手を向上させることができる。
【0057】
乗員Hが車両用シートSに座っていないとき、例えば着座した乗員Hが車両用シートSから立ち上がった場合に、プロジェクタ30による映像を自動的に停止してもよい。すなわち、ECU40が、着座センサ54から信号を受信し、ECU40が車両用シートSに人が座っていないと判定した場合に、プロジェクタ30による映像の投影を停止する。
なお、乗員Hが車両用シートSに座っているか否かの判定については、着座センサ54からの信号を用いる代わりに、車内カメラ6から受信した映像を基に判定してもよい。
乗員Hが車両用シートSに座っていない場合に自動的に映像が停止されるため、乗員Hがプロジェクタ30を停止する手間が省かれ、プロジェクタ30の使い勝手を向上させることができる。
【0058】
<照度に基づく映像補正処理>
図5を用いて、照度センサ55と連携した、プロジェクタ30の制御処理(映像補正処理)について説明する。図5は、照度に基づく映像補正処理を示すフロー図である。この映像補正処理のスタート時点においては、プロジェクタ30は映像を車内のスクリーンに投影しているものとする。また、照度センサ55は、車内及び外部の明るさ(照度)を常に測定しており、ECU40に測定結果を送信しているものとする。
【0059】
ECU40は、照度センサ55から照度の測定結果(照度情報)を受信する(ステップS201:照度受信処理)。次に、ECU40は、前回受信した照度情報から大きな変化があった否かを判定する(ステップS202:照度変化測定処理)。照度の変化がない、又は変化が所定値より小さいと判定した場合(ステップS202:No)、ECU40は、映像を補正することなくプロジェクタ30による投影を継続する(ステップS203)。
【0060】
車内の照度に大きい変化があった場合(ステップS202:Yes)、ECU40は、車内の照度を調整する(ステップS204:照度調整処理)。
車内の照度の調整には、照度調整機構であるサンシェード60又はルーフ用サンシェード61を用いて調整する。例えばトンネル等に入り車内が暗くなったとき、サンシェード60を下げて外光を取り入れる。また、例えばトンネルから抜け車内が明るくなったとき、サンシェード60を上げて外光を遮断する。ルーフ用サンシェード61を操作して、外光を取り入れたり遮断したりすることにより車内の照度を調整してもよい。
【0061】
車内の照度を調整した後、ECU40は、調整後の車内の照度に合わせて、映像の明るさや色味を、車内の照度に変化が発生する前の映像から変化がないように適切に補正する(ステップS205:映像補正処理)。
車内の照度に合わせて、プロジェクタ30の映像が補正されるため、乗員Hはプロジェクタ30を操作して映像を調整する手間が省かれるため、プロジェクタ30の使い勝手を向上させることができる。
【0062】
なお、車両Vに、ECU40が制御可能なサンシェード60等が搭載されていない場合は、ステップS204の照度調整処理は省略されてもよい。この場合、照度に変化があったとき、車室2内の照度に合わせて、ECU40は、映像の明るさや色味が変化しないよう、プロジェクタ30を制御して映像を補正する。
【0063】
また、投影時は、照度調整機構を用いて窓等を充分に遮光すると共に、車室内照明の数を制限し、室内の明るさ(照度)を制限してもよい。
また、太陽光の方向を避けた位置に投影面を設定し、映像を見やすくする。例えば太陽光の方向と直交する位置に投影面を設定することで、プロジェクタ30による映像を見やすくする。複数のプロジェクタ30が設けられている場合は、太陽光の方向に応じて、使使用するプロジェクタ30を選定してもよい。
【0064】
<モード切替における制御処理>
図6は、モード切替部62と連携したプロジェクタ30の制御処理を示すフロー図である。この制御処理のスタート時点においては、車両Vは、自動運転モードで運転中であり、プロジェクタ30により映像を投影していることとする。乗員Hは、自動運転中の車両Vを手動運転モードに切り替える場合、モード切替ボタンを押してモード切替部62に手動運転モードに切り替えることを指示する。
【0065】
ECU40は、モード切替部62から運転モードを示す運転モード情報を受信する(ステップS301:信号受信処理)。次に、ECU40は受信した情報に基づき、運転モードを判定する(ステップS302:運転モード判定処理)。
【0066】
運転モードが自動運転モードである場合、(ステップS302:No)、プロジェクタ30の操作を可能とするか、又は、プロジェクタ30の映像投影を開始する(ステップS303:投影開始処理)。運転モードが手動運転モードである場合(ステップS302:Yes)、ECU40は、プロジェクタ30の操作を不可に設定するか、プロジェクタ30による映像を停止する(ステップS304:投影停止処理)。
手動運転モードに切り替えるとき、映像を投影している場合は、乗員Hに対して「映像を停止します」というアナウンスを通知してもよい(ステップS305:アナウンス通知処理)。
モード切替時に上記処理が行われることで、乗員Hはプロジェクタ30の設定を変更したり操作したりする手間が省かれるため、プロジェクタ30の使い勝手を向上させることができる。
【0067】
<シート状態変更時の制御処理>
図7は、車両用シートSのシート状態変更機構14と連携したプロジェクタ30のシート形状変更時の制御処理を示すフロー図である。
乗員Hは、起立姿勢にある車両用シートに着座した状態で、操作スイッチ25を押下し、シート状態変更機構14のリクライニング機構15を稼働させることで、シートバック10の後傾角度αが所定の角度以上となるまでリクライニングさせる。
【0068】
ECU40は、リクライニング機構15よりシートバック10の後傾角度αの情報を受信する(ステップS401:信号受信ステップ)。具体的には、リクライニング機構15のモータからパルスを受信して回転数を計測することでECU40がシートバック10の後傾角度αを求める。
【0069】
次に、ECU40は、車両用シートSがリラックスモードであるか否かを判定する(ステップS402:モード判定処理)。
リラックスモードは、シートバック10が後方に大きく倒れている状態である。ECU40は、リラックスモードとなるシートバック10の後傾角度αを所定角度βとして記憶している。ECU40は、乗員Hが、操作スイッチ25を用いてシートバック10を後傾させ、後傾角度αが所定角度β以下となったときに、車両用シートSのシート状態がリラックスモードであると判定する。
【0070】
車両用シートSの状態がリラックスモードではない場合(ステップS402:No)、ステップS401に戻り、シートバック10の後傾角度αを取得する。
車両用シートSの状態がリラックスモードである場合(ステップS402:Yes)、ECU40は、乗員Hに対して、プロジェクタ30の使用を促す(ステップS403:プロジェクタ使用提案処理)。使用を促すとき、例えば、ECU40が「映像を開始しますか」というアナウンスを、スピーカ8を用いて乗員Hに対して音声で通知してよい。また、アナウンスは、車内モニタ7にアナウンスを文字で表示することにより通知されてもよい。
【0071】
ECU40は、乗員Hがプロジェクタ30の使用を希望しているか否かを判定する(ステップS404:プロジェクタ使用確認処理)。
このとき、乗員Hは音声により希望をECU40に対して伝えてもよく、ECU40は音声認識により入力されたメッセージに基づいて、使用を希望しているか否かを判定する。乗員Hは、車内モニタ7のタッチ入力や操作スイッチ25を用いて使用希望を伝えてもよい。
乗員Hがプロジェクタ30の使用を希望していると判定した場合(ステップS404:Yes)、ECU40は、プロジェクタ30の使用を開始し、シアターモードとして映像をスクリーンに投影する(ステップS405:映像開始ステップ)。
乗員Hがプロジェクタ30の使用を希望していない場合(ステップS404:No)は、何もせず処理を終了する。
【0072】
車両用シートSの状態をリラックスモードにすることで、映像の投影が自動的に開始されるために、プロジェクタ30を操作する手間が省かれ、プロジェクタ30の使い勝手が向上する。
なお、図7に示す制御処理は、リクライニング機構15により車両用シートSの状態を変更した場合について説明したが、リクライニング機構15に限らず、他のシート状態変更機構14、すなわちチルト機構16やシートスライド機構20、シート回転機構24に車両用シートSの状態を変更した場合にも適用してよい。例えば、シート回転機構24により車両用シートSを後方に向くように回転させた場合にリラックスモードに変更されたと判定して、乗員Hに対してプロジェクタ30の使用を促してもよい。
【0073】
また、シート状態変更部により変更されたシートの状態に応じて、プロジェクタ30が表示する投影面を自動的に最適化するよう構成されてもよい。
例えば、車両用シートSの角度、すなわちシートバック10の後傾角度α、シートクッション11の傾斜角度、車両用シートの回転量等に応じて、投影面の位置や投影面の角度を変更してよい。
【0074】
また、車両用シートSの位置に応じて投影面の位置や大きさ、を制御してもよい。すなわち、乗員HがフロントシートS1に着座している場合はフロントウインドウを投影面とし、リアシートS2に着座している場合は、フロントシートS1の背面を投影面をとする。
また、車両用シートSの位置に応じて発生する音声を制御してもよい。例えば運転席では、映像も音声も聞きこないよう制限する。助手席では、音声のみを制限し映像だけを表示する。後部座席では映像と音声の両方を流すなどの制御を行う。
【0075】
また、車両用シートSを、シート回転機構24により、所定値以上(例えば、90度から180度以上)回転させた場合、作動するプロジェクタ30を変更してもよい。
例えば、助手席を180度回転させた場合、車両Vの前方に向けていたプロジェクタ30を停止し、車両Vの後方に向けて投影するプロジェクタ30が投影を開始するように切り替える。このとき、投影するプロジェクタ30を切り替える場合は、映像が中断しないよう所定のラップ時間を設定するとよい。
【0076】
<プロジェクタ30の操作>
表示システム1では、車両用シートSに設けられた操作スイッチ25によりプロジェクタ30を操作することが可能であるが、プロジェクタ30の操作手段はこれに限定されない。
プロジェクタ30は、乗員Hの携帯端末等を用いて操作可能であってよい。携帯端末等とプロジェクタ30とを有線又は無線により接続することにより、乗員Hは手元の携帯端末を用いてプロジェクタ30を操作することができる。
また、車内カメラ6により乗員Hの動きを検知することで、乗員のジェスチャーによりプロジェクタ30を操作してもよい。具体的には、ECU40が、車内カメラ6により撮影した映像を基に乗員Hの動きを解析して、所定の動作と一致するか否かを判定し、一致した場合に対応した操作をプロジェクタ30に対して実行する。
【0077】
<ルーフ3への映像投影>
図1に示す表示システム1において、プロジェクタ30は、前席であるフロントシートS1のシートバック10の背面を投影面として映像を投影していたが、映像の投影面はこれに限定されず、別の壁面に投影してもよい。
【0078】
例えば、図8に示すプロジェクタ30のように、ルーフウィンドウW2に設けられるルーフ用サンシェード61に投影されてもよい。このときルーフ用サンシェード61は、乗員Hにとって映像が見やすいよう、投影時に傾斜するよう構成されてもよい。
また、ルーフ用サンシェード61の代わりに、ルーフ3に設けられたロールスクリーンに投影されてもよい。ロールスクリーンに映像を投影して視聴する場合、車両用シートSはフラットな状態となっているのがよい。
【0079】
車両用シートSがフラットな状態である場合、乗員Hは、頭を車両前側に向けて寝た状態でルーフの映像を視聴するが、このとき、乗員Hの頭部の向きを車内カメラ6で検知し、乗員Hの頭部の向きに合わせて、投影画像の位置や向きを自動で変更してもよい。
【0080】
<タンデムシートへの映像投影>
図8にプロジェクタ30の投影先の別例を示す。図8に示す車両VのフロントシートS1Aはタンデムアレンジ可能なシートである。すなわち、フロントシートS1Aは、シートバック10をシート前方に折り畳み、シート自体を前側に跳ね上がる状態とすることが可能である。
そして、プロジェクタ30の映像を、タンデムアレンジされたフロントシートS1Aのシートクッション11の裏面に投影することができる。図1に示す映像投影先と比較して、プロジェクタ30からスクリーンまでの距離を確保することができるため、より大きな映像を表示することができる。
【0081】
<テールゲート65への映像投影>
図9にプロジェクタ30の投影先の更なる別例を示す。図9に示すプロジェクタ30Aは、ヘッドレスト13に設けれている。プロジェクタ30Cの投影方向を後ろに向けることで、車両Vのテールゲート65に向けて映像を投影することができる。図9に示すリアシートS2は前方を向いているが、シート回転機構24を用いて車両Vの後側を向くようにリアシートS2を回転させてもよい。このとき、リアシートS2の向きに合わせて、プロジェクタ30の投影方向の向きが自動で変更されてもよい。また、ヘッドレスト13を上下に移動可能とすることで、プロジェクタ30Cの高さを調整してもよい。また、プロジェクタ30をヘッドレスト13内に収納してもよい。
【0082】
テールゲート65上部又は側部にスクリーン66としてロールスクリーンが設けられ、引き延ばされたロールスクリーンに、プロジェクタ30Aの映像を投影してもよい。
また、テールゲートの窓に対し、内から外方に向けて映像を投影することにより、後続車に対して情報を通知することも可能である。
後続車に対して通知する情報として、例えば「子供が乗っています」、「体調急変」等がある。また、後続者ドライバーの嗜好を反映した広告を表示してもよい。通信等でネットワークに接続されている場合、ネットワークを通じた個別広告を表示してもよい。
【0083】
<スクリーンの配置>
車内に設けられるスクリーン66は、通電することにより不透明となるガラス製の電子シェードであってもよい。投影時にのみ不透明とすることができるため映像を投影しない場合は視界を遮ることがない。
また、図10に示すように、スクリーン66Aを左右に配置されたフロントシートS1の間に橋渡すように配置してもよい。プロジェクタ30Bの映像をより大きい面積で投影することができる。
また、図11に示すように、スクリーン66Bを、左座席と右座席との間において、前後に配置されたフロントシートS1とリアシートS2とを橋渡すように配置してもよい。この場合、左右の車両側面(ドアを含む)のそれぞれにプロジェクタ30C,30Dを設置し、スクリーン66Bの表面及び裏面のそれぞれに映像を投影する。プロジェクタ30C及びプロジェクタ30Dが投影する映像は同じ映像でも、別々の映像であってもよい。
【0084】
<乗員Hとの連携>
車両用シートSでは、シートバック10及びシートクッション11に搭載された生体センサにより、乗員Hの状態(覚醒度や体調等)を測定し、測定した状態に応じてプロジェクタ30を制御してもよい。
例えば、乗員Hの覚醒度が所定値以下(例えば眠気を感じている場合)、プロジェクタ30の作動を制限する。例えば、音量を下げたり映像の投影を停止したりする。
また、乗員が休憩中(休暇モードを選択)は、投影を中断するか、又は、目の疲れをとることができる映像に変更する。
また、車体の振動又は重力加速度が所定値より大きい場合は投影を制限又は禁止してもよい。
【0085】
<プロジェクタ30の配置及び収納>
図1に示す車両Vでは、プロジェクタ30をセンターコンソール5に配置していたが、プロジェクタ30の位置はこれに限定されず、図12に示すプロジェクタ30Eのように、ルーフ3に設けてもよい。この場合、プロジェクタ30Eを前後に移動できるとよい。例えば、ルーフ3にレールを設けてプロジェクタ30Eを前後にスライドさせる。
車両用シートSの前後移動と併せて、プロジェクタ30を前後に連動するように構成してもよい。また、車両用シートSが移動した後、所定時間経過した後にプロジェクタ30を移動するようにしてもよい。
【0086】
また、プロジェクタ30からはフロントシートS1のシートバック10の裏面が投影面である場合、シートバックの後傾角度αを変更(例えば、前方に倒す)ことで映像の視認性を向上させてもよい。
また、図12に示すプロジェクタ30Fのように、フロアFに配置されてもよい。
また、ルーフ3に取り付けられたプロジェクタ30は、ルーフ3内に収納されるとよい。また、フロアFに取り付けられたプロジェクタ30は、フロアF内に収納されるとよい。
【0087】
センターコンソール5に配置されるプロジェクタ30は、図13の点線で示すようにセンターコンソール5内に収納されるとよい。このとき、シート内に設けられるECU40に近い側に収納されるのがよい。
【0088】
<充電状態に基づく制御>
車両Vが電気自動(EV車)である場合、車両Vの充電状態が所定値以下のとき、プロジェクタ30の作動を制限するのがよい。例えば、車両Vの充電状態が所定値以下の場合、作動時間を短時間にする、又は、作動を禁止する。
車両の充電状態(バッテリ状態)が第1の所定値以下(例えば、残充電量が20%以下)である場合、プロジェクタ30の作動可能時間を所定時間内(例えば10分以内)に設定する。
また、充電状態が、第1の所定値よりも更に小さい第2の所定値以下(例えば、残充電量が10%以下)である場合、プロジェクタの作動を制限、例えば、全て禁止、又は、警報以外禁止とする。
【0089】
<その他の制御>
運転状態や乗車人数に基づいて、複数のプロジェクタの作動状態を制御してもよい。
また、車両Vの異常を検出した場合、プロジェクタ30の作動を制限又は禁止するのがよい。例えば、バッテリの異常、車両用シートSの異常、プロジェクタの異常、投影面の異常を検出したとき、プロジェクタ及び投影面の作動を制限又は禁止する。
また、生体センサ等により乗員の異常が検出された場合も、プロジェクタ30及び投影面の作動を制限又は禁止するのがよい。
【0090】
上記実施形態では、具体例として車両Vに用いられる表示システム1について説明したが、特に限定されることなく、本願の表示システムは電車、バス等に設けることが可能であり、また、飛行機、船等にも利用することもできる。
【0091】
<<第二実施形態>>
以下、本発明の第二実施形態に係る乗物用シート及び内装部材の構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態及び実施例は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0092】
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両に搭載される車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートに限定されるものではなく、例えば、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートにも適用され得る。
【0093】
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向(換言すると、シート本体の幅方向)であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
【0094】
また、シート幅方向の「車外側」、「窓側」とは、車体の外側により近い方(分かり易くは、最寄りのドア・窓に近い側)を意味し、「車内側」、「室内側」とは、車体の内側により近い方(分かり易くは、最寄りのドアから離れている側)を意味している。
なお、以下に説明する車両用シート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートが着座状態にあるケースを想定して説明することとする。
【0095】
<第一実施例>
図14は、第二実施形態の第一実施例に係る車両用シートS100を示す斜視図である。車両用シートS100は、車室の底部を画定する車体フロアの上に配置され、車両の乗員が着座するシートである。車両用シートS100は、車両の前席に相当するフロントシートとして利用されるが、これに限定されるものではなく、後部座席のシートとしても利用可能である。
【0096】
車両用シートS100は、図14に示すように、シートバック101、シートクッション102及びヘッドレスト103を備える。シートバック101は、乗員である着座者の背部を支える背もたれ部分である。シートクッション102は、着座者の臀部を支える着座部分である。ヘッドレスト103は、乗員の頭部を支える部分である。
【0097】
更に、シートバック101の両側部にはアームレスト104が設けられている。アームレスト104は、着座者の腕を支える部分であり、シートバック101の両側部から前方に向けて延びている。また、アームレスト104は、シート幅方向(左右方向)を軸線として回動可能にシートバック101に取り付けれており、必要に応じて上下方向に回動させて収納することができる。なお、後述するがアームレスト104とシートバック101は図示しないヒンジにより連結されており、上下方向を軸線として回動させることもできる(図15参照)。そのため、アームレスト104の先端をシート内側に引き込むよう移動させることも可能である。
【0098】
また、シートバック101をシートクッション102に対して角度調整可能に支持するリクライニング機構107を備えている。リクライニング機構107により、シートバック101は、シートクッション102に対して前後方向に傾倒するよう回動可能に取り付けられている。
【0099】
シートバック101の内部には、シートバック101の骨格をなすシートバックフレームが設けられている(不図示)。また、シートクッション102の内部にも、シートクッション102の骨格をなすシートクッションフレームが設けられている(不図示)。シートクッションフレーム及びシートバックフレームの周囲には、パッド及びクッショントリムカバー(クッションカバー)が設けられている。パッドは、例えばウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材であり、クッショントリムカバーは、例えばクロス、合成皮革又は本革等の表皮材からなる。
【0100】
<操作レバー>
車両用シートS100は、アームレスト104の先端部分に操作レバー110を備えている。操作レバー110は、車両を操作するECUと接続されており、着座者は操作レバー110を用いることで、車体の操舵、アクセル操作及びブレーキ操作を行うことができる。
【0101】
操作レバー110は、前後及び左右に倒すことができる。例えば、乗員が操作レバー110を前方に倒すことで車体を前方に移動させる、すなわち車両が前方に走行するよう構成されている。このとき、操作レバー110の傾倒角度により速度を変更することができ、例えば、操作レバー110を前方に大きく倒すことで前進速度を上げ、より速く走行することができる。一方、操作レバー110を後方に倒すことで、車両を後方に向けて進ませることができる。操作レバー110を後方に大きく倒すことで後進速度を上げることができる。
また、乗員が操作レバー110を左右に倒すことで、車両の進行方向を左右に曲げることができる。また、他の操作方法でも車両を操作することが可能である。
【0102】
車両にステアリング(不図示)が設けられている場合、操作レバー110を用いて操作するのか、ステアリングを用いるのか、いずれかが優先されるように構成されているのがよい。設定により優先する操作方法が決定されているだけでもよいが、いずれか一方を収納することで操作可能な方法を明示するようにしてもよい。
【0103】
例えば、操作レバー110を使用する際、ステアリングをインストルメントパネルに収納して、操作レバー110のみで車体の操作が可能であるようにする。ステアリングを収納することで、ステアリングと操作レバー110とを同時に使用できないことが明確になり、操作レバー110を使用しているときに、ステアリングによる誤操作を抑制することができる。
【0104】
ステアリングを使用する通常時の場合、操作レバー110はアームレスト104に形成されたレバー収納部111に収納されているのがよい。操作レバー110は、乗員は車両用シートの状態に応じて、操作レバー110をアームレスト104のレバー収納部111から起立させ、操作可能にする。
例えば、車両用シートS100が、スライド可能な範囲で最も後方の位置に移動し、着座者の手がステアリングに届かなくなった場合に、操作レバー110による操作に切り替える。このとき、操作レバー110が自動で起立して操作可能状態としてよい。また、着座者が手動で、操作レバー110を起立させ、それにより操作レバー110による操作が可能となってもよい。
【0105】
ステアリングによる操作から、操作レバー110による操作への切り替えは、車両用シートS100を回転させ、着座者が後方に向くようになったときに行ってもよい。車両用シートS100が回転することで、ステアリングに着座者の手が届かなくなる。その代わりとして操作レバー110を用いた操作が可能になる。
【0106】
また、車両用シートS100のシートバック101がシートの後方に大きく倒されているときに、操作レバー110による操作に切り替えてもよい。シートバック101が傾倒することにより、着座者はステアリングにまで手が届かなくなるため、操作レバー100による操作に切り替わり車両を操作できると便利である。
【0107】
また、緊急事態が発生して車両が止まったときに、操作レバー110により操作が可能になってもよい。特にアクシデントによりステアリングが操作不能になった状況において、操作レバー110による操作に切り替えができると、車両の移動ができる場合がある。
【0108】
また、車両に搭載されたセンサにより危険が感知され、緊急的な手動操作が必要となった場合に、操作レバー110による操作が可能となってもよい。例えば、レーダー等により人が車両の前に飛び出してきたことを検知したときに、操作レバー110で操作することで回避することができる。
【0109】
また、自動運転中の予備ハンドルとして操作レバー110が出てきてもよい。自動運転モードとなったときにだけ、操作レバー110を操作可能にすることで、例えば乗員は簡便に自動運転中の車両に、運転方向等を指示することができる。
【0110】
操作レバー110は、アームレスト104から取り外し可能に設けられてもよい。取り外された操作レバー110は、他の座席や、内装部品(例えば、ドア又はインストルメントパネル)等に取り付けてもよい。また、その状態で車体を操作可能にしてもよい。操作レバー110を着脱自在とすることで、適切な状況で車体を操作することができる。
【0111】
操作レバー110は、左右両方のアームレスト104に設けられてもよく、また、片方のアームレスト104にのみ設けられてもよい。
【0112】
操作レバー110を、ステアリングのない自動車に適用することも可能である。この場合、手動運転するとき、操作レバー110は常にアームレスト104から起立して出ている状態となる。そして、車両が自動運転モードとなった場合に、操作レバー110がアームレスト104に収納されるようにしてもよい。
また、車両が手動運転モードである場合は、操作レバー110をアームレスト104に収納することが不可となるように制御をしてもよい。また、手動運転モードである場合、アームレスト104を上下方向に回動させて収納することが不可となるように制御をしてもよい。また、操作レバー110の取り外しが不可となる制御をしてもよい。手動運転モード時において、このような制御をすることで、誤動作により車体が操作できなくなることを抑制する。
【0113】
また、アームレスト104を回動させて収納するのと同時に、操作レバー110がアームレスト104のレバー収納部111に内に収納されるとよい。操作レバー110が収納されることで、後席に着座する乗員の迷惑にならないようにする。
【0114】
また、アームレスト104は、前後方向に伸縮可能に構成されてもよい。自動運転モードの場合、アームレスト104は通常の長さであるが、手動運転モードの場合に、アームレスト104が前方に伸びるようにしてもよい。
操作レバー110は、図14に示すようにアームレスト104の先端に設けられていることから、操作レバー110をより前の方に位置させること操作しやすくなる。
【0115】
また、アームレスト104は、図15に示すように、上下方向を軸線として回動可能にもうけられてもよい。アームレスト104が左右方向(シート幅方向)に移動可能にすることで、乗員が操作しやすい、すなわち乗員の好みの位置に操作レバー110を配置することができる。
【0116】
また、車両用シートS100が回転して後ろ向きとなっている場合、操作レバー110のレバー操作を逆転させてもよい。例えば、操作レバー110を前方に倒した場合、車両を後方に向けて移動させる。レバー操作を逆転させることで、乗員は直感的に車両を操作することができる。
【0117】
また、車両の異常を検知した場合、又は、タイヤがスリップした場合に、操作レバー110による車体操作が不可となるように制御してよい。この場合、ステアリングによる操作のみ可能とする。
【0118】
また、急激な入力荷重が操作レバー110にかかった場合に、操作レバー110によるレバー操作を中止してもよい。例えば、車内のカメラで操作レバー110を監視し、操作レバー110にかかる荷重が、運転に関する操作によるものなのか誤動作によるものなのかを判定して、レバー操作を制御する。例えば、単に腕が操作レバー110に当たった場合は操作しないなど、着座者の意図しない入力なのか否かを判定して誤操作を抑制する。
【0119】
また、着座センサと連動することで、着座者が子供であるのか大人であるのかを識別し、着座者が子供である場合は、操作レバー110が作動しないように制御してもよい。
【0120】
<第二実施例>
次に、第二実施形態の第二実施例について図16を用いて説明する。図16は、第二実施例に係る車両用ドアD200を室内側から見た図で、車両用ドアD200に設けられた収納部210を示す。
【0121】
自動運転可能な車両では、車両用シートを回転させて後方を向かせる場合がある。そのため、図14に示すようにいずれの方向に向いても、着座者の腕を支持するために、アームレストを車両用シートの側部に設ける場合がある。この場合、アームレストは車両用ドアに設けられないため、従来、アームレストが設けられていた部分の有効活用が望まれていた。
【0122】
第二実施例である車両用ドアD200には、アームレストが設けられておらず、代わりに蓋部211を有する収納部210が設けられている。収納部210は、車両用ドアD200の室内側側部に凹部として設けられ、乗員の鞄又はスマートフォン等が収納可能になっている。
【0123】
収納部210には、収納部210の開口を塞ぐ蓋部211が設けられている。蓋部211は、図16の両矢印C方向にスライドして収納部210の開口部を塞ぐことができる。蓋部211の可動機構として、スライド構造の他、蛇腹式の伸縮構造、ロールスクリーン式の伸縮構造、折り畳み式の伸縮構造が可能である。蓋部211は、これらの構造に限定されることなく他の可動機構により開閉されてもよい。
また、蓋部211をモータ駆動でスライド可能にすることで、乗員のタッチ操作により自動で開閉可能な構造としてもよい。
【0124】
また、蓋部211の外側表面(室内側の表面)には、手動で開閉するための手掛り部216が設けられている。また、蓋部211の外側表面には、ディスプレイ212が設けられてもよい。例えば、ディスプレイ212に収納部210内に荷物が収納されているか否かを表示する。
【0125】
収納部210は、車両用ドアD200に対して着脱自在に取り付けられてもよい。収納部210を取り外すことにより、例えば収納部210を丸洗いすることができる。
【0126】
また、収納部210の内部に赤外線センサ214を設け、赤外線センサ214により収納部210内における物品の有無を検知して、物品の有無を乗員に対して通知してもよい。通知には、光、音、音声、振動等が用いられる。通知のために蓋部211に設けられたディスプレイ212が用いられてもよい。また、乗員が保有するスマートフォン等の通信装置に対して、物品の有無を通知してもよい。通知可能にすることで、荷物の置き忘れを抑制することができる。物品の有無を検知するために、赤外線センサ214の代わりに圧力センサが設けられてもよい。
【0127】
また、車両用ドアD100には、蓋部211の開閉状態を検知するセンサが設けられてもよい。蓋部211の開閉状態をセンサにより検知し、蓋部211が開いている状態においては、車両用ドアD200が開かないよう制御する。車両用ドアD200がスライド式の場合、車両用ドアD200がスライド移動しないよう制御する。この制御により、車両用ドアD200がスライドした場合に蓋部211と車両とが干渉することを抑制する。なお、車両用ドアD200は手動でも電動であってもよい。
【0128】
収納部210の内部は仕切り板215が設けられている。仕切り板215は、側突対策として側突用プロテクターを兼ねており、収納部210内の荷物を保護することができる。
【0129】
<第三実施例>
次に、第二実施形態の第三実施例である車両用ドアD300について、図17及び図18を用いて説明する。近年では、移動中、音楽や映像を楽しまれるようになり、車内空間におけるエンターテイメント性の向上が更に求められるようになってきた。
【0130】
第三実施例の車両用ドアD300には、図17に示すように、空気吹出口310及び水分吹出口311が設けられている。
空気吹出口310及び水分吹出口311は、車内に設けられた図示しないポンプと連結している。ポンプは車内のECUにより制御されており、車内で流れる映像又は音楽に合わせて、空気吹出口310及び水分吹出口311から空気や水分を乗員に向けて噴出するように構成されている。
空気吹出口310及び水分吹出口311は、車両用ドアD300のアームレストより上側に設けられているが、下側に設けられてもよい。また、図示しないが、車両用ドアD300の他に、インストルメントパネル、ピラー、ルーフ、フロアに設けられてもよい。
映像又は音楽に合わせて空気や水分を噴出することにより、乗員は、映像や音楽をより楽しむことができ、車内空間におけるエンターテイメント性が向上する。
【0131】
空気吹出口310及び水分吹出口311は、図17に示すように車両用シートS300に設けられてもよい。車両用シートS300は、シートバック301、シートクッション302及びヘッドレスト303を備える。シートバック301は、乗員である着座者の背部を支える背もたれ部分である。シートクッション302は、着座者の臀部を支える着座部分である。ヘッドレスト303は、乗員の頭部を支える部分である。
空気吹出口310及び水分吹出口311は、シートバック301の肩部に設けられているが、これは一例であり、シートクッション302の土手部又はヘッドレスト303に設けられてもよい。
【0132】
空気吹出口310及び水分吹出口311と車両用シートS200の着座センサとを連動させ、乗員の着座が検知された場合に、空気や水分を吹き出すよう制御してもよい。
また、車両用シートS300に、生体センサを設けて乗員の心拍又は脈拍などを測定し、乗員の精神状態に合わせて、空気吹出口310及び水分吹出口311が作動するようにしてもよい。例えば、乗員が感じる恐怖の度合いが最大のときに乗員に向けて風が吹くようにしてもよい。乗員が感じる恐怖の度合いは、例えば生体センサが取得した乗員の心拍数から推定する。
【0133】
また、車両の各ドアに設けられる空気吹出装置及び水分吹出装置を制御することで、車両内の複数の着座者に対して、タイミングを合わせて空気吹出装置や水分吹出装置を作動させてもよい。この場合、単一の車両だけでなく、複数の車両を通信で繋ぎ、各車両の空気吹出装置及び水分吹出装置を制御することで、複数の乗員に同じ体験をすることを可能にしてもよい。
【0134】
映像は車内に設けられたプロジェクタにより車内のスクリーンに表示させてもよい。また、車内の液晶モニタに表示してもよい。また、乗員がVR(Virtual Reality)ゴーグル312を装着して映像を視聴してもよい。
VRゴーグル312は、図18に示すように、ヘッドレスト303に対して着脱自在に取り付けられてよい。ヘッドレスト303にはVRゴーグル312に充電するためのコネクタが設けられており、VRゴーグル312をコネクタに接続することで充電することができる。VRゴーグル312への給電は無線給電を利用してもよい。無線給電を利用する場合、例えばヘッドレスト303に送電器が設けられ、VRゴーグル312に受電器が設けられる。
【0135】
VRゴーグル312は、未使用時の場合、図18に示すように、ヘッドレスト303上部に取り付けることができる。VRゴーグル312は、ヘッドレスト303の上部だけでなく、側部、後部、下部などに取り付けてられるよう構成されてもよい。また、ヘッドレスト303の内部にVRゴーグル312を収納する収納凹部を形成し、未使用時は、収納凹部に収納するようにしてもよい。また、収納凹部の開口部を塞ぐ蓋部を設けてもよい。
【0136】
また、車両用シートS300から、映像等を視聴している人の3Dのホログラム映像を浮き上がらせ、一緒に映像を楽しむ雰囲気を出すようにしてもよい。
また、VR/ARによる映像及びホログラム映像の活用方法として、地図情報及び観光情報を、車内空間上に表示してもよい。このとき、到着地の情報又は映像をリアルタイムに表示してもよい。
【0137】
<第四実施例>
次に、第二実施形態の第四実施例である車両用シートS400について、図19及び図20を用いて説明する。ドライブ中、助手席又は後部座席に着座する乗員は車両用シートに着座した状態で睡眠等をとることがあるが、従来のヘッドレストでは、リラックス状態又は睡眠状態における乗員の頭部を支持することは困難であった。また、近年では自動運転等により運転席等において、リラックス状態又は睡眠状態における乗員の頭部等を支持する機能が求められていた。
【0138】
第四実施例である車両用シートS400では、車両用シートS400の側部から支持部材410が外出し、支持部材410が車体内部に固定されるように構成されている。具体的には、図19に示すように、ネットである支持部材410が、シートバック401の側部と、車両用ドアD400の上方の内壁部とに固定され、架け渡すように取り付けることができる。着座者は、架け渡された支持部材410に寄りかかりることでリラックス状態又は睡眠状態になることができる。
【0139】
支持部材410は、車両用シートS400の内部に収納されてよい。また、車両用シートS400の外面に取り付けられてもよい。また、支持部材410は、車両用シートS400に対して着脱可能に取り付けられてもよい。また、支持部材410が取り付けられる部分は、車両用シートS400の側部だけでなく、車両用シートS400の後部又は上部であってもよい。
【0140】
支持部材410は、図19に示すようなネット状のものに限らず、布状の部材又は袋状の部材であってもよい。
また、支持部材410を固定する固定部411は、車両用ドアD400の上方の内壁部の他、ピラー又はドアのフレームに設けられてもよい。また、固定部411はフック状の係合部材で構成されてもよい。
【0141】
また、着座者の頭部の支持は、図20に示すようにヘッドレスト403が、図の両矢印E、Fのように旋回することで可能にしてもよい。ヘッドレスト403の移動は手動で行われてもよく、また、ヘッドレスト403が自動で移動するように構成されてもよい。
【0142】
また、着座者を支持する部分はヘッドレスト403に限らず、シートバック401又はシートクッション402の土手部が内側に向かって着座者を挟むように移動してもよい。また、土手部が上方にスライド移動しヘッドレスト403の代わりに着座者の頭部を支持してもよい。
【0143】
また、車両用シートS400にセンサを設け、着座者の心拍又は脈拍等の生体情報を取得し、着座者が睡眠状態であると判定した場合に、シートベルトを自動的に締めて着座者を支持するようにしてもよい。睡眠状態の着座者をより強く支持することで、急に荷重がかかった場合の着座者の移動を抑止することができる。
【0144】
また、支持部材410及びヘッドレスト403は、振動機能を備えてもよい。車両が目的地に着ついたときに、支持部材410又はヘッドレスト403が振動して、寄りかかっていた睡眠状態の着座者を起こすことができる。
【符号の説明】
【0145】
<第一実施形態>
V 車両
S 車両用シート
S1 フロントシート
S2 リアシート
D 車両用ドア
W ウィンドウ
W2 ルーフウィンドウ
F 車体フロア
H 乗員
1 表示システム
2 車室
3 ルーフ
5 センターコンソール
6 車内カメラ
7 車内モニタ
8 スピーカ
10 シートバック
11 シートクッション
12 オットマン
13 ヘッドレスト
14 シート状態変更機構
15 リクライニング機構
16 チルト機構
19 シート支持部
20 シートスライド機構
21 アッパーレール
22 ロアレール
24 シート回転機構
25 操作スイッチ
30、30A、30B、30C、30D、30E プロジェクタ(投影装置)
31 映像
32 プロジェクタ可動機構
34 プロジェクタ操作スイッチ
40 ECU
41 プロセッサ(制御部)
42 メモリ(記憶部)
43 入出力インタフェース
50 センサ
51 ドアセンサ
52 ウィンドウセンサ
53 着信センサ
54 着座センサ
55 照度センサ
60 サンシェード(照度調整機構)
61 ルーフ用サンシェード(照度調整機構)
62 モード切替部
65 テールゲート
66、66A、66B スクリーン
α 後傾角度
<第二実施形態>
S100 車両用シート
101 シートバック
102 シートクッション
103 ヘッドレスト
104 アームレスト
107 リクライニング機構
110 操作レバー
111 レバー収納部
D200 車両用ドア
210 収納部
211 蓋部
212 ディスプレイ
214 赤外線センサ
215 仕切り板
216 手掛り部
S300 車両用シート
D300 車両用ドア
301 シートバック
302 シートクッション
303 ヘッドレスト
310 空気吹出口
311 水分吹出口
312 VRゴーグル
S400 車両用シート
D400 車両用ドア
401 シートバック
402 シートクッション
403 ヘッドレスト
410 支持部材
411 固定部
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
図11
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図14
図15
図16
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図18
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図20