(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186672
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】分光計フィルタ、その製造方法及びスペクトル再構成方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/28 20060101AFI20221208BHJP
G01J 3/26 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G02B5/28
G01J3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090880
(22)【出願日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】10202105952R
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(71)【出願人】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】常 宇▲フア▼
(72)【発明者】
【氏名】董 博▲維▼
(72)【発明者】
【氏名】李 正国
【テーマコード(参考)】
2G020
2H148
【Fターム(参考)】
2G020AA03
2G020BA12
2G020CA02
2G020CC23
2G020CC56
2G020CD13
2G020CD26
2G020CD36
2H148AA07
2H148AA12
2H148GA03
2H148GA09
2H148GA12
2H148GA17
2H148GA60
2H148GA61
(57)【要約】 (修正有)
【課題】分光計フィルタにおいて、デバイスの複雑性、占有空間を増加させることを解決する。
【解決手段】基板と、基板の一側に位置する底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板と、底部シリコンフォトニクス結晶板と頂部シリコンフォトニクス結晶板との間に位置するスペーサとを備え、基板の底部シリコンフォトニクス結晶板に近い一側、スペーサの頂部シリコンフォトニクス結晶板に近い一側にパターンが形成され、スペーサ、底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板がキャビティを形成する。
【効果】フィルタの光学性能パラメータを調整することができ、スペクトル再構成を行う場合、大量の画素によりスペクトルデータを提供する必要がなく、調圧するだけで大量のスペクトル情報を取得することができる。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一側に位置する底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板と、
底部シリコンフォトニクス結晶板と頂部シリコンフォトニクス結晶板との間に位置するスペーサと、
を備え、
ここで、前記基板の底部シリコンフォトニクス結晶板に近い一側、及びスペーサの前記頂部シリコンフォトニクス結晶板に近い一側はパターンを形成し、前記スペーサ、前記底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板はキャビティを形成することを特徴とする分光計フィルタ。
【請求項2】
前記底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板に複数の周期的孔がエッチングされることを特徴とする請求項1に記載の分光計フィルタ。
【請求項3】
前記基板と前記スペーサに電極が設置されることを特徴とする請求項1に記載の分光計フィルタ。
【請求項4】
前記スペーサと前記底部シリコンフォトニクス結晶板との間に設置される電気分離層を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の分光計フィルタ。
【請求項5】
前記基板を形成する材料がフッ化カルシウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の分光計フィルタ。
【請求項6】
基板及びスペーサを形成すること、
底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板をパターン化すること、
それぞれ前記底部シリコンフォトニクス結晶板と前記頂部シリコンフォトニクス結晶板のパターンを転写印刷スタンプに転写すること、
前記転写印刷スタンプ上のパターンをそれぞれ前記スペーサと前記基板に転写すること、及び
前記底部シリコンフォトニクス結晶板、前記スペーサ及び前記頂部シリコンフォトニクス結晶板を前記基板に組み立てること、
を含むことを特徴とする分光計フィルタの製造方法。
【請求項7】
前記基板及び前記スペーサに導電媒体を堆積して電極を形成することを更に含むことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記の底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板をパターン化することは、
シリコンウェハにパターン化処理を行ってマスクを形成すること、
フォトレジストを前記底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板に塗布すること、
マスクをそれぞれ前記底部シリコンフォトニクス結晶板と頂部シリコンフォトニクス結晶板の上に配置し、かつ設定時間を露光すること、及び
前記底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板を硬化させ、パターン化された底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板を得ること、
を含むことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記シリコンウェハにパターン化処理を行ってマスクを形成することは、
前記シリコンウェハに所定の周期及び幅の矩形アレイをパターン化して形成すること、及び
前記シリコンウェハをエッチングし、前記マスクを形成すること、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の分光計フィルタの駆動方法であって、前記分光計フィルタに電極が設置され、前記駆動方法は、摩擦ナノ発電機により生成された設定電圧を前記電極に印加し、静電効果により前記分光計フィルタのフィルタ波長を調整することを含むことを特徴とする分光計フィルタの駆動方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の分光計フィルタに異なる電圧を印加し、かつ被測定サンプルのスペクトル情報を収集すること、及び
前記スペクトル情報に基づいて標準的な透過スペクトルを再構成すること、
を特徴とするスペクトル再構成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はスペクトル分析の技術分野に関し、具体的には分光計フィルタ、その製造方法及びスペクトル再構成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中赤外範囲の小型化分光計は環境監視、バイオセンシング及び自由空間通信などの分野に用いることができ、従来の技術における小型化分光計は主に波長再構成方法に基づく計算分光計であり、それは超コンパクトな敷地面積を有し、しかしながら、従来の技術は複数の画素アレイを必要とするため、デバイスの複雑性及び占用空間を不可避的に増加させ、多くの不足が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願は分光計フィルタ、その製造方法及びスペクトル再構成方法を提供し、従来の技術が複数の画素アレイを必要とするため、デバイスの複雑性及び占有空間を不可避的に増加させるという問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願の第一態様の実施例は分光計フィルタを提供し、
基板と、前記基板の一側に位置する底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板と、及び、底部シリコンフォトニクス結晶板と頂部シリコンフォトニクス結晶板との間に位置するスペーサと、を備え、ここで、前記基板の底部シリコンフォトニクス結晶板に近い一側、及びスペーサの前記頂部シリコンフォトニクス結晶板に近い一側はパターンを形成し、前記スペーサ、前記底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板はキャビティを形成する。
【0005】
好ましい実施例において、前記底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板に複数の周期的孔がエッチングされる。
【0006】
好ましい実施例において、前記基板及び前記スペーサに電極が設置される。
【0007】
好ましい実施例において、さらに前記スペーサと前記底部シリコンフォトニクス結晶板との間に設置される電気分離層を含む。
【0008】
本願の第二態様の実施例は分光計フィルタの製造方法を提供し、基板及びスペーサを形成すること、
底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板をパターン化すること、それぞれ前記底部シリコンフォトニクス結晶板と前記頂部シリコンフォトニクス結晶板のパターンを転写印刷スタンプに転写すること、前記転写印刷スタンプ上のパターンをそれぞれ前記スペーサと前記基板に転写すること、及び、前記底部シリコンフォトニクス結晶板、前記スペーサ及び前記頂部シリコンフォトニクス結晶板を前記基板に組み立てること、を含む。
【0009】
好ましい実施例において、さらに前記基板及び前記スペーサに導電媒体を堆積して電極を形成することを含む。
【0010】
好ましい実施例において、前記底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板をパターン化することは、シリコンウェハにパターン化処理を行ってマスクを形成すること、フォトレジストを前記底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板に塗布すること、マスクをそれぞれ前記底部シリコンフォトニクス結晶板と頂部シリコンフォトニクス結晶板の上に配置し、かつ設定時間を露光すること、及び前記底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板を硬化させ、パターン化された底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板を得ることを含む。
【0011】
好ましい実施例において、前記シリコンウェハにパターン化処理を行ってマスクを形成することは、前記シリコンウェハに所定の周期及び幅の矩形アレイをパターン化して形成すること、及び、前記シリコンウェハをエッチングし、前記マスクを形成することを含む。
【0012】
本願の第三態様の実施例はスペクトル再構成方法を提供し、上記に示されたフィルタに異なる電圧を印加し、かつ被測定サンプルのスペクトル情報を収集すること、及び、前記スペクトル情報に基づいて標準的な透過スペクトルを再構成することを含む。
【発明の効果】
【0013】
上記技術的解決手段から分かるように、本願が提供する分光計フィルタ、その製造方法及びスペクトル再構成方法は、転写印刷を分光フィルタに組み合わせることにより、パターン化された頂部フォトニクス結晶板及び底部フォトニクス結晶板をスペーサ及び基板に配置し、転写印刷によりパターン化されたシリコン膜をフォトニクス結晶板からスペーサ及び基板に転写し、それによりマイクロ加工方法による薄膜堆積の繰り返しによる応力問題を回避し、同時に転写印刷により得られたフィルタは駆動電圧値を変更することによりスペクトルのキャビティ長変位を調整制御することができ、それによりフィルタの光学性能パラメータを調整制御することができ、スペクトル再構成を行う場合、大量の画素によりスペクトルデータを提供する必要がなく、圧力調整だけで大量のスペクトル情報を取得することができる。
【0014】
本願の実施例又は従来の技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下に実施例又は従来の技術の説明に必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に記載の図面は本願のいくつかの実施例であり、当業者にとって、創造的労働をしない前提で、さらにこれらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1a】本願の実施例におけるチューナブルファブリーペローフィルタの概略図である。
【
図1c】本願のスペクトル情報再構成原理の概略図である。
【
図2】本願の実施例におけるチューナブルFPFの製造プロセスの概略図である。
【
図3】(a)~(c)は頂部PCSをシリコンガスケットに転移する過程におけるOM画像であり、(d)及び(e)は底部PCSをCaF2基板に転移する過程におけるOM画像であり、(g)及び(h)はガスケット付きの頂部PCSを基板に転移する過程におけるOM画像である。
【
図4】(a)は<100>シリコンウェハ上の300ナノメートルのSiO2の構造概略図であり、(b)は300ナノメートルのSiO2をエッチングするプロセス過程概略図であり、(c)はKOH溶液にシリコンをウェットエッチングする概略図であり、(d)はSU8露光の概略図であり、(e)はPDMS基材及び薬剤を金型に注ぎ入れて硬化する概略図であり、(f)はPDMSスタンプの走査型電子顕微鏡画像である。
【
図5】(a)は<100>シリコンウェハに300ナノメートルのSiO2を配置する構造概略図であり、(b)はKOH溶液にSiO2をウェットエッチングする概略図であり、(d)はSU8露光の概略図であり、(e)はPDMS基材及び薬剤を金型に注ぎ入れて硬化させる概略図である。
【
図6a】空気に懸濁するPCSの模擬透過スペクトルグラフでる。
【
図6b】CaF2に懸濁するPCSの模擬透過スペクトルグラフである。
【
図6c】PCSのCaF2での類似透過スペクトル及び電界分布図を示す図である。
【
図6d】PCSのCaF2での類似透過スペクトル及び電界分布図を示す図である。
【
図6e】3.4μmのキャビティ長を有する模擬ファブリーペローフィルタスペクトログラムである。
【
図6f】
図6eの一次FP共振の陰影波長での電界分布図である。
【
図7a】0~70Vの駆動電圧で測定されたファブリーペローフィルタの透過スペクトルグラフである。
【
図7c】異なる駆動電圧でのファブリーペローフィルタのピーク波長及びフィッティング変位の概略図である。
【
図7d】二酸化炭素(CO2)及びアセトン(C3H6O)を分析物として0及び68 Vで測定したファブリーペローフィルタ透過スペクトルの概略図である。
【
図8】本願の実施例におけるテスト設置の概略図である。
【
図9a】4~5μmで測定されたフィルタ行列である。
【
図9c】CO2を分析物とするファブリーペローフィルタの測定チューナブルスペクトルの概略図である。
【
図9d】CO2吸収の測定(黒線)基準スペクトルと再構成スペクトル(橙色点)との間の比較概略図である。
【
図10a】2.5%~0%の異なるランダムノイズレベルで再構成されたCO2透過スペクトルの概略図である。
【
図10b】25個の同調状態で測定されたノイズの概略図である。
【
図10c】ガウス傾斜角が、測定ノイズがない理想的な状況で10及び25個の入力状態で再構成された概略図である。
【
図10d】階段関数が、測定ノイズがない理想的な状況で10及び25個の入力状態で再構成された概略図である。
【
図11】本願の実施例におけるティホノフ(Tikhonov)正則化方法の論理フロー概略図である。
【
図12】本願の実施例において、PCSのパラメータを変化させて2から20μmまでのファブリーペローフィルタチューニングスペクトルをシミュレーションした概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願が解決しようとする技術的課題、技術的解決手段及び有益な効果をより明確にするために、以下に図面及び実施例を参照しながら、本願をさらに詳細に説明する。理解されるように、ここで説明された具体的な実施例は本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものではない。
【0017】
また、用語「第一」、「第二」は単に目的を説明するために用いられ、相対的な重要性を指示するか又は暗示するか又は指示された技術的特徴の数量を暗黙的に示すと理解されるべきではない。これにより、「第一」、「第二」が限定された特徴は一つ又は複数の該特徴を明示的又は暗黙的に含むことができる。本願の説明において、別途明確で具体的な限定がない限り、「複数」の意味は二つ以上である。なお、本願に開示された分光計フィルタ、その製造方法及びスペクトル再構成方法は表示の技術分野に用いられてもよく、表示の技術分野以外の任意の分野に用いられてもよく、本願に開示された分光計フィルタ、その製造方法及びスペクトル再構成方法の応用分野は限定されない。
【0018】
現在の例示的な技術における中赤外範囲の小型化分光計は、バルクマイクロ加工又は表面マイクロ加工により製造することができる。前者はウェハ結合によりエアキャビティを生成し、複雑なウェハエッチングを必要とする。後者は犠牲層の堆積及び放出によりエアキャビティを生成し、その低コストのためより人気があり、しかしながら、化学気相堆積における累積応力のため、犠牲層の厚さが3μm程度に制限され、これはウェハの湾曲さらに割れを引き起こす可能性があり、また、波長再構成方法に基づく計算分光計に対して、それは超コンパクトな敷地面積を有するが、現在複数の画素アレイでスペクトル情報を収集する必要があり、これはデバイスの複雑性を増加させることを避けられず、同時に過剰な空間を占用し、小型化発展に不利である。
【0019】
図1aは本願の実施例における分光計フィルタを示し、
図1aに示すように、基板1と、前記基板の一側に位置する底部シリコンフォトニクス結晶板2及び頂部シリコンフォトニクス結晶板4と、底部シリコンフォトニクス結晶板と頂部シリコンフォトニクス結晶板との間に位置するスペーサ3と、を備え、ここで前記基板1の底部シリコンフォトニクス結晶板2に近い一側、及びスペーサ3の前記頂部シリコンフォトニクス結晶板4に近い一側にパターンが形成され、前記スペーサ、前記底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板がキャビティを形成する。
【0020】
本願の提供する分光計フィルタは、転写印刷を分光フィルタに組み合わせることにより、パターン化された頂部フォトニクス結晶板及び底部フォトニクス結晶板をスペーサ及び基板に配置し、転写印刷によりパターン化されたシリコン膜をフォトニクス結晶板からスペーサ及び基板に転写し、それによりマイクロ加工方法による薄膜堆積の繰り返しによる応力問題を回避し、同時に転写印刷により得られたフィルタは駆動電圧値を変更することによりスペクトルのキャビティ長変位を調整制御することができ、それによりフィルタの光学性能パラメータを調整制御することができ、スペクトル再構成を行う時、大量の画素によりスペクトルデータを提供する必要がなく、圧力調整だけで大量のスペクトル情報を取得することができる。
【0021】
理解できるように、本願の分光計フィルタはチューニング機能を有するため、それはチューナブルファブリーペローフィルタ(Fabry Perot filter、FPF)と呼ばれる。
【0022】
本願の実施例において、フォトニクス結晶板(Photonic crystal slab、PCS)を形成する材料はシリコンであり、半導体シリコンは電気駆動で遷移し、それにより頂部フォトニクス結晶板上のパターン化シリコン膜をスペーサに転移させ、底部フォトニクス結晶板上のパターン化シリコン膜を基板に転移させる。
【0023】
理解されるように、本願におけるスペーサは一般的にシリコンスペーサであり、例えばシリコン材料で形成されたガスケットである。転写印刷方法は応力制限を回避することができ、反射器をガスケットに転写することにより共振キャビティを生成し、ガスケットはSOIウェハからのデバイス層である。このガスケットの厚さは、犠牲層による厚さよりも十分に大きくなる可能性がある。
【0024】
具体的には、転写印刷のチューナブルファブリーペロー干渉フィルタの原理図は
図1に示すように、本願のフィルタは頂部PCS、シリコンガスケット及び底部PCSで構成され、これらの三つの部品はシリコン技術(Silicon On Insulator、SOI)ウェハに単独で製造され、次に赤外線透明基板(例えばフッ化カルシウム、CaF
2)に組み立てられる。
【0025】
好ましい実施例において、本願の基板はフッ化カルシウム(CaF2)を採用し、当然のことながら本願の他の実施例も他の選択可能な赤外線透明基板を採用することができ、本願はこれに限定されない。該好ましい実施例において、フッ化カルシウムで形成された基板は8μmの波長に達する赤外線透明窓及び1.4の屈折率(refractive index、RI)を有する。
【0026】
好ましい実施例において、分散式ブラッグ反射器(distributed Bragg reflectors、DBR)と犠牲層の薄膜堆積過程における応力問題を回避するために、本実施例のフィルタは頂部と底部のSi膜をそれぞれ別のより厚いSiガスケットとCaF2基板に転移して二つのPCS反射器の間のエアキャビティを実現する上に、さらに頂部と底部のSi膜に周期的孔をエッチングし、入射光は周期的孔による位相整合条件によりPCSに結合される。
【0027】
また、好ましい実施例において、本願の頂部PCS又は底部PCSは厚さが500nmの単層Si層であり、厚さが500nmの単層Si層は複数の交互の四分の一波長厚層を含むDBRと異なり、PCSの反射率は、異なるRIを有する材料境界に発生するフレネル反射ではなく、誘導共振により実現され、したがって共振キャビティのキャビティ長を調整することによりスペクトル情報を調整することができる。
【0028】
FPFを静電駆動するために、
図1cに示すように、本願の好ましい実施例において、前記基板1及び前記スペーサ3に電極が設置される。具体的には、上記Siガスケット及びCaF
2基板を例として、金(Au)をSiガスケット及びCaF
2基板に堆積して頂部及び底部電極とすることができ、頂部電極はさらにAuと頂部Siとの間の結合界面として用いられる。
【0029】
さらに好ましくは、本願はさらに前記スペーサと前記底部シリコンフォトニクス結晶板との間に設けられる電気分離層を備える。
【0030】
より具体的には、電気分離層は隙間であってもよく、具体的にはシリコンガスケットに一つの隙間をエッチングすることにより、上層と底層を電気的に分離することができる。頂部電極と底部電極との間に電圧を印加する時、静電気力を生成してPCS頂部Si膜をプルダウンさせ、かつこのような力は周囲に配列されたV字形ビームの復元力によりバランスし、それにより最終的な変位を決定し、減少したエアキャビティの長さはFPFの共振ピークにブルーシフトを発生させ、かつスペクトル再構成のための一組の基板を作成し、
図1bはFPFを転写する擬似カラー走査電子顕微鏡(SEM)画像であり、イラストは二層フォトニクス結晶の拡大を示し、中間に一つのエアキャビティがある。
【0031】
上記実施例から分かるように、本願は転写印刷を分光フィルタに組み合わせることにより、パターン化された頂部フォトニクス結晶板及び底部フォトニクス結晶板をスペーサ及び基板に配置し、転写印刷によりパターン化されたシリコン膜をフォトニクス結晶板からスペーサ及び基板に転写し、それによりマイクロ加工方法による薄膜堆積の繰り返しによる応力問題を回避し、同時に転写印刷により得られたフィルタは駆動電圧値を変更することによりスペクトルのキャビティ長変位を調整制御することができ、それによりフィルタの光学性能パラメータを調整制御することができ、スペクトル再構成を行う場合、大量の画素によりスペクトルデータを提供する必要がなく、圧力調整だけで大量のスペクトル情報を取得することができる。
【0032】
本願の第二態様の実施例は分光計フィルタの製造方法を提供し、以下を含む。
S1:基板及びスペーサを形成する。
例示的には、基板はCaF
2基板であってもよく、スペーサはシリコン単体で形成されたシリコンスペーサであり、ここでは説明を省略する。
S2:底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板をパターン化する。
例示的には、本ステップにおいて、500nm厚さのデバイス層のSOIウェハをパターン化することができ、パターン化は一般的な露光、現像、エッチングなどのプロセスを採用することができ、本願はここで限定しない。
S3:それぞれ前記底部シリコンフォトニクス結晶板と前記頂部シリコンフォトニクス結晶板のパターンを転写印刷スタンプに転写する。
好ましい実施例において、
図2に示すように、本願はマイクロ構造ピラミッド付きのポリジメチルシロキサン(PDMS)転写スタンプを実現することができる。
具体的には、
図2に示すように、基板1、底部シリコンフォトニクス結晶板2、スペーサ3及び頂部シリコンフォトニクス結晶板4に対する具体的な処理プロセスは以下のとおりである。基板1に電極領域11をエッチングし、その後に電極領域内に電極12を堆積し、底部シリコンフォトニクス結晶板2にパターンを形成し、かつスタンプをスペーサに配置し、底部シリコンフォトニクス結晶板2及び頂部シリコンフォトニクス結晶板4をボックスに合わせて組み立て、PDMSスタンプ5を前記底部シリコンフォトニクス結晶板2及び前記頂部シリコンフォトニクス結晶板4のパターンのシリコン膜と完全に接触するように圧入し、それによりピラミッドが「陥没」状を呈し、さらに接触面積及び表面付着力を最大化する。
S4:前記転写印刷スタンプ上のパターンをそれぞれ前記スペーサと前記基板に転写する。
その後にインプリントが迅速に引っ込み、引っ込んだ後にピラミッドの先端のみがシリコン膜と接触し、それによりスタンプとシリコン膜との間の表面付着力が最も小さく、この時にシリコン膜を任意の位置に位置合わせしやすい。
シリコン膜の位置を合わせることにより、シリコン膜を基板とシリコンスペーサに保持し、最後にスタンプを徐々に後退させ、転写印刷を完了する。
S5:前記底部シリコンフォトニクス結晶板、前記スペーサ及び前記頂部シリコンフォトニクス結晶板を前記基板に組み立てる。
転写印刷を完了した後、頂部シリコンフォトニクス結晶板、底部シリコンフォトニクス結晶板及びシリコンスペーサを基板に組み立て、フィルタを形成する。
【0033】
具体的な実施例において、二つのインクフィルムと二つの受容器をそれぞれ製造した後に組み立てる。二種類のインクフィルムは頂部PCS及び底部PCSであり、好ましい実施例において500nmの厚さのデバイス層を有するSOIウェハでパターン化される。次に厚さが2μmの埋め込み酸化物を希釈されたフッ化水素酸(DHF)にウェットエッチングし、その後に臨界点乾燥器で乾燥過程を行って懸濁を行う。懸濁した後、この二種類のインクをその対応する受信機基板に転移し、これらの基板はそれぞれ底部電極付きの懸濁Siガスケット及びCaF2基板であり、Siスペーサ層は5.2μmのデバイス層の高濃度にドープされたSOIウェハでパターンに製造され、その表面はAu堆積により結合界面とする。頂部のPCSを吊り下げられたSiガスケットに転移した後、360℃の炉で半時間アニーリングし、Au粒子をSiに拡散させかつAu-Si合金を形成する。
【0034】
本実施例において、
図3に示すように、頂部PCSとSiガスケットとの間の接着は非常に重要であり、それは膜を固定することができるだけでなく、その接触抵抗を低減することができ、それにより静電駆動を実現する。CaF
2(18.85x10
-6/°C)とSi(2.6x10
-6/°C)の熱膨張係数が不整合であるため、上記アニールはデバイス全体をCaF
2基板に組み立てる前に行われる。このような不整合は、Siガスケットの割れや、頂部Si膜の反りの原因となる。アニーリングした後、頂部PCSと下のSiガスケットは別の中空PDMSスタンプにより一緒に取り戻し、中間に吊り下げられた頂部PCSを損傷することを回避する。それらは最終的に底部PCS及び底部電極によりCaF
2基板に印刷され、転送過程全体を完了する。
【0035】
現在、転写印刷は50倍光学顕微鏡で手動マイクロロケータを使用して完了されるため、アライメント精度はマイクロメータレベルに限定される。二台のPCSが垂直に配置され、互いに遠く離れ、かつそれらは二つの独立した反射器としてのファーフィールド行為のみを表示するため、それはFFFの光学性能に影響を与えない。二台のPCSが近接して配置される場合のみ、Fano共振が発生し、この場合、二つのPCSの孔の間の横方向変位はニアフィールド結合及びFano共振を同調することができる。
【0036】
好ましい実施例において、電動により転写印刷を完了することができ、位置合わせ精度±1.5μmを必要とすればよく、ここでは説明を省略する。
【0037】
また、好ましい実施例において、本願のステップS2は具体的には以下を含む。
S21:シリコンウェハにパターン化処理を行ってマスクを形成する。
S22:フォトレジストを前記底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板に塗布する。
S23:マスクをそれぞれ前記底部シリコンフォトニクス結晶板と頂部シリコンフォトニクス結晶板の上に配置し、かつ設定時間露光する。
S24:前記底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板を硬化させ、パターン化された底部シリコンフォトニクス結晶板及び頂部シリコンフォトニクス結晶板を得る。
【0038】
好ましい実施例において、前記シリコンウェハにパターン化処理を行ってマスクを形成することは、
前記シリコンウェハに所定の周期及び幅の矩形アレイをパターン化して形成すること、及び
前記シリコンウェハをエッチングし、前記マスクを形成することを含む。
【0039】
例示的には、
図4に示すように、PDMSスタンプは300nmのSiO
2で<100>シリコンウェハに製造され、SiO
2はまず45μm周期及び15μm幅を有する正方形アレイにパターン化される。
【0040】
次に30%のKOHを用いてSiをウェットエッチングして逆ピラミッドを作成し、ここでSiO2層はハードマスクとして用いられる。SU83050は、試料上に回転数1000rpmで約100μmスピンコートして露出させた。金型を空気中に一日放置し、次にPDMSの基板及び薬剤を注入する。
【0041】
好ましい実施例において、混合比率は5:1であり、従来の10:1ではなく、このようにしてより良好な弾性を得ることができる。最後に、PDMSをホットプレート上に65℃で2時間硬化させかつ剥離する。
【0042】
理解できるように、
図5に示すように、中空PDMSスタンプのプロセスフローは類似するが、SU8露光のレイアウトが異なり、該中心はSU8で覆われ、したがって該領域はサンプル、すなわち吊り下げられた頂部PCSに接触しない。
【0043】
以下に本願の上記方法で製造されたフィルタに対してシミュレーション検証を行う。
【0044】
本願のチューナブルファブリーペローフィルタに採用されたPCS反射器及びV型ビームアクチュエータの設計は
図6に示すとおりである。
【0045】
図6aは懸濁PCSの空気中の模擬透過スペクトル(周期a=1.8μm、半径r=0.67μm)であり、懸濁PCSの透過率は3.37μmでゼロに達し、かつ8μmで0.57まで徐々に増加し、このような挙動は誘導共振37、38に起因する。
【0046】
図6bは懸濁PCSセルの断面の共振電界分布であり、
図6a中の青線に示すように、入射光の偏光方向に沿って孔の縁部に二つのホットスポットが現れ、強い共振を示す。
【0047】
低指数基板が存在するため、
図6cにおける底部PCSのCaF
2での透過スペクトルは懸濁PCSに比べてわずかにレッドシフトする。その同一断面での共振電界分布は
図6dに示すように、転写印刷により二つのPCS反射器を垂直に積み重ね、ファブリペロー(FP)キャビティを形成し、その3.4μmキャビティ長でのスペクトルは
図6eに示すように、一次及び二次FP共振が観察される。
【0048】
好ましい実施例において、二次FP共振を検出しにくく、例えば二つの完全に平行なPCS反射器及び平面波を入射光とする場合、このような非理想的な状況は実験において不可避的であるため、高Qを測定しにくい。また、高次FP共振のチューニング範囲も低次モードより小さく、したがって、測定の実現可能性及びより広いチューニング範囲のために、一次FP共振を選択し、その電界分布は
図6fにおいてFP共振の陰影波長でシミュレーションを行う。
【0049】
本願の実施例において、調整可能なFPFにおいて、フィルムの平坦度及び駆動期間FPFの性能を保持することは非常に重要であり、フィルム変形を評価するために、
図6g及び
図6hにおいてFPFの変位をシミュレーションし、初期キャビティの長さを3.4μmに設定する。
【0050】
好ましい実施例において、中間200×200μmの黒色破線内のフォトニクス結晶領域を省略してアナログメモリを節約し、80Vのバイアスで、1.03μmの変位を実現する。
【0051】
図6iは
図6h中の白色破線に沿った変位分布を示し、駆動電圧が10Vから80Vに増加し、80Vの時、フォトニクス結晶領域全体の変位が200nmに変化し、測定孔径が100×100μmに減少すると、20nmに向上させることができる。
【0052】
本実施例において、V型ビームアクチュエータは硬くかつ高い駆動電圧をもたらすが、完全に回復することができ、それに対して、長いビーム及び狭いビーム(例えば屈曲形状)を有するソフトアクチュエータが検索において破損しやすい。
【0053】
本願において、チューナブルファブリーペローフィルタの特徴付けを製造した後、FPFはフーリエ変換赤外(FTIR、Agilent Cary 620)分光計により特徴付けを行い、0-70Vの駆動電圧で測定されたFPFスペクトルは正規化されかつ
図7aに描かれる。
【0054】
本願において変位はキャビティの長さを変更することにより決定され、それによりシミュレーションされた共振ピーク波長が測定結果とマッチングし、具体的に応用する場合、アニール過程において移行過程の不完全及び潜在的な膜変形のため、Siスペーサ層の厚さが約5.2μmであるが、製造されたFPFの初期隙間が3.4μmに決定される。シミュレーションスペクトルに比べて、共振ピークが広くなることを観察することができ、これはFPF膜の傾斜に起因する可能性があり、もう一つの原因はFTIRの入射光が全ての入射角が45度に達する光錐であり、コリメート光束ではないことである。
【0055】
図7bは
図7aで測定されたスペクトルの強度図であり、
図7cはそれらのピーク波長/変位と印加電圧との間の関係をまとめる。70Vの電圧を印加する時、ピーク位置を5.61から4.13μmの波長に調整する。中心に完全にエッチングされたフォトニクス結晶領域が存在するため、最大調整可能な変位が1.1μmで隙間の1/3に近く、該隙間を超えると引き込み効果が発生し、駆動電圧がシミュレーション結果よりわずかに小さい。
【0056】
本願の実施例はアクチュエータ設計及びアニール条件を最適化することにより接触抵抗を低減し、さらにアクチュエータ電圧を低減することができ、同時に、FWHMを1.09から0.41μmに低減する。この傾向は
図6a及び
図6bにおけるCaF
2及び懸濁PCSにおけるPCSの模擬反射率スペクトルとマッチングし、ここで反射率は短い波長で増加する。
【0057】
本願の実施例において、FPFのガス感知を示すために、FPFを一つのガス室に固定し、該ガス室はFTIRの光路上に位置し、FPFスペクトルが0及び68Vで同調する時、1.48μmの共振ピーク変位はそれぞれ4.26及び5.75μmのCO
2及びアセトンの主な分子指紋を被覆し、
図7dに示すように、この二種類のガスは人体呼気中に監視することができ、医療保健等の応用に用いられる。ガス供給及び電気的接続を備えた試験装置全体は
図8に示すとおりである。
【0058】
分かるように、本願の上記フィルタの製造方法は、転写印刷を分光計フィルタに組み合わせることにより、パターン化された頂部フォトニクス結晶板及び底部フォトニクス結晶板をスペーサ及び基板に配置し、転写印刷によりパターン化されたシリコン膜をフォトニクス結晶板からスペーサ及び基板に転写し、それによりマイクロ加工方法による薄膜堆積の繰り返しによる応力問題を回避し、同時に転写印刷により得られたフィルタは駆動電圧値を変更することによりスペクトルのキャビティ長変位を調整することができ、それによりフィルタの光学性能パラメータを調整することができる。
【0059】
本願の実施例はさらにスペクトル再構成方法を提供し、以下を含む。
S31:上記に示したフィルタに異なる電圧を印加し、かつ測定サンプルのスペクトル情報を収集する。
S32:前記スペクトル情報に基づいて標準的な透過スペクトルを再構成する。
【0060】
好ましい実施例において、CO2は広いMIR範囲内に単一かつ強い吸収ピークを含み、同時に、ガスのRIがほぼ1であるため、それは追加の反射を導入せず、それにより再構成を可能にし、このCO2は理想的な対象分析物であり、本願の再構成されたスペクトル情報はCO2の透過スペクトルである。
【0061】
具体的には、再構成行列を利用することができ、再構成行列における各データは一つのFPFスペクトルの同調状態データであり、例えば5x5の再構成行列に対して、ここで25個のFPFスペクトルの同調状態を含む。
【0062】
FPF共振ピークが特徴CO
2ピークから離れる場合、CO
2吸収による強度変化が小さく、測定された強度ベクトルがノイズにより敏感であるため、本願の実施例は、
図7bにおける完全なチューナブルスペクトルではなく、FPF共振ピークがCO
2ピークに近い部分同調状態を選択する。
【0063】
分かるように、本願のチューナブルファブリーペローフィルタであるため、異なる電圧を印加することにより異なる同調状態に達することができ、それにより一つのフィルタで豊富なスペクトル情報を取得することができ、大量の画素によりスペクトルデータを提供する必要がない。
【0064】
図9(b)はFの相関係数であり、計算式は
【数1】
であり、F
iはFにおけるi列目の係数であり、σ
iはi列目の標準偏差であり、Eは所望である。図において0.5より高い相関係数は高い相関性を示し、カラー図において白色である。0.5より小さい値は低い相関性であり、相関係数の平均値は0.5389である。N
2とCO
2ガスの混合物をガス室に送った後、FPFは
図9aと同じ共振状態に同調され、かつ再びFTIRにより測定され、これらのスペクトルは
図9cに示すとおりである。
【0065】
本願は4~5μmの伝送を強度ベクトルにまとめることにより、波長に敏感でない検出器(例えばサーモパイル又はボロメータ)を使用する統合システムをシミュレーションし、一般化交差検証を有する反復Tikhonov正則化方法を使用して再構成を行う。境界条件を応用して回復されたスペクトルを0と1との間に制限し、これにより、ここで伝送モードでのCO2指紋を再構成することに用いることができる。
【0066】
図9dは測定基準スペクトル付きの回復スペクトルを示し、170nmFWHMの降下は4.26μm箇所のCO
2指紋とマッチングし、スペクトル解像度に制限を与える要因を決定するために、二つの調査を行う。まず、測定ノイズがどのように再構成を歪ませるかを研究し、
図10aにおいて、CO
2スペクトルは
図9aにおけるフィルタ行列を用いて再構成されるが、異なるパーセントのランダムノイズは強度ベクトルに添加され、ノイズレベルが2.5%から0%に低下するにつれて、回復されたスペクトルは測定されたCO
2スペクトルに徐々に収束し、平均二乗誤差(MSE)は0.017から1.1×10
-4に低下する。MSEは再構成忠実度を評価するように
【数2】
に定義され、ここでT
r及びT
refが再構成及び参照スペクトルであり、Nは波長点の数である。
【0067】
図10bは測定強度を理想的な強度と比較することにより、25個の測定同調状態でのノイズレベルを開示し、理想的な強度はフィルタマトリクスと参照CO
2スペクトルの積を加算することである。
【0068】
本願はこの再構成における全体的なノイズレベルをさらに決定するために、再構成されたスペクトルを異なるノイズレベルから回復したスペクトルと比較することにより、平均ノイズを0.4%として抽出する。この0.4%のノイズは主にFTIRの測定ノイズに起因し、もう一つの潜在的な原因は電圧を印加するたびに変位変化が小さく、共振ピーク位置が一致しないことを引き起こすことである。
【0069】
次に、いかなるノイズがない理想的な状況で必要な最小同調状態数を研究し、
図10cにおいて、ノイズがないが異なる数の入力状態を有する状況で30nmのFWHMを有するガウス傾斜角を再構成し、これらの入力状態はシミュレーションスペクトルに由来する。
【0070】
本願において、10及び25個の状態を有する再構成されたMSEは9.8x10
-3及び7x10
-5であり、分かるように、入力状態が10から25まで増加する場合、MSEは二桁向上する。
図10dは階段関数の極端な状況の再構成結果を示し、同様に、25個の状態は解像度で良好な再構成改善を提供することができ、最小状態数もサンプリング理論により予測することができ、したがって、現在の再構成解像度は同調段数に制限されず、測定ノイズに制限される。再構成精度をさらに向上させるために、より高いFPF共振モードを採用することができ、より多くの共振ピークを有する。同時に複数の異なる次数の共振ビームが存在してもチューニング範囲が不変のままでより広いスペクトルをサンプリングすることができ、再構成アルゴリズムも最適化してより良好なノイズマージンを取得することができる。
【0071】
本願において再構成を計算するメカニズムは
図1cに示すとおりである。まず様々な電圧でのFFFのスペクトルをm×n校正行列Fとして測定し、ここで各行は対応する電圧でのFPFスペクトルである。これらのスペクトルは背景に正規化されることにより、光源のスペクトルと検出器の応答が相殺される。
【0072】
放射線を入射する時にT(λ)未知の情報を含む分子指紋はFPFを照射し、その透過強度は
【数3】
であり、後者は測定における離散フォーマットであり、かつF(λ)iはFPFスペクトルである。電圧を印加してギャップを同調しかつそれによりFFFの共振ピークを変更する場合、各電圧での送信強度は以下の方式で説明することができる。
【数4】
したがって全ての同調電圧での出力強度全体はFT=1に説明する。その中で、Tはn×1個の再構成される入射光スペクトルのカラムベクトルであり、Iはm×1個の異なる電圧で強度を測定するカラムベクトルである。理想的な場合、反復最小二乗法を用いて未知のスペクトルを再構成して
【数5】
最小化することができる。しかしながら、実験において不可避的なノイズは微小な偏差をもたらし、したがって
【数6】
であり、これらの測定誤差は再構成における不安定性をもたらし、したがってより複雑な再構成解決手段を採用することが好ましく、例えば適応ギホノフ正則化及び再帰的最小二乗法である。
【0073】
スペクトル再構成は
図1に示すように、測定データは以下の行列形式で表すことができる。
FT=1
ここでFisa m×n行列は、
【数7】
が測定強度の既知のベクトルであり、Tが再構成される未知のスペクトルのベクトルであり、以下の式で与えられる。
【数8】
目標はベクトルにおける各要素の値を見つけることであり、過定(m>>n)でありかつエラー状態である可能性があるため、ここでTikhonov正則化(グリッド回帰とも呼ばれる)を採用してノイズ成分を選択的に抑制し、該問題は調整係数を有するペナルティ最小二乗問題を解決することと等価である。
【数9】
【数10】
最適に以下のように表すことができる。
【数11】
I
0は単位行列である。
【0074】
調整因子を適応的に選択するために、一般化交差検証(GCV)方法を使用し、Tikhonov正則化において、交差検証からの最適な正則化因子は以下のように表すことができる。
【数12】
【数13】
本応用における物理的状況を考慮すると、ベクトルの各要素は境界条件を印加することにより0と1との間に制限される。GCVは内部反復に用いられ、毎回の外部反復は境界条件に合致する新たな近似解を生成する。
【0075】
さらに、本願において、転写印刷FPFは中赤外範囲での波長スケーラビリティを有する。電磁波スケーラビリティ及び転写印刷方法を利用し、提供されたチューナブルファブリーペローフィルタは2-20μmの中赤外範囲全体をカバーすることができ、PCS反射器の設計(周期、半径、厚さ及び配列方式等の幾何学的パラメータ)を変更することにより、様々なFPFを形成することができ、
図12に示すとおりである。それらの重要な設計パラメータを以下の表1にまとめる。
【0076】
【0077】
理解されるように、現在製造に必要な空気間隔は共振波長にマッチングするために非常に挑戦性を有し、特に動作波長が8μmより大きく移動する場合、4μmを超える間隔は犠牲層の堆積により実現しにくい。本願の提供する転写印刷技術はこの制限を解決することができ、本願のFPFキャビティの間隔はシリコンスペーサにより決定され、シリコンスペーサは選択されたSOIウェハのデバイス層であり、同時に、SOIのデバイス層の達成可能な厚さは制限されない。さらに、FPFの多くは静電駆動であるが、引き込み効果はチューニング範囲を空気間隔の1/3に制限する。
【0078】
また、理解されるように、他のメムス(MEMS)駆動解決手段、例えば圧電アクチュエータ、電磁アクチュエータ等は、調整可能なFPFに採用されてもよく、それによりギャップを調整し、それにより共振ピークを調整する。
【0079】
上記実施例から分かるように、本願の実施例は表面微細加工方法における薄膜堆積の繰り返しによる応力問題を回避するために、DBRの代わりに単層PCSを反射器として採用し、同時に犠牲層を放出せずに転写印刷によりエアキャビティを形成し、70Vを印加することにより、ピーク波長を5.61から4.13μmに調整し、CO2及びアセトンの分子指紋を被覆し、検証によりCO2スペクトルの4から5μmまでのスペクトル再構成を実現することができ、4.26μmで170nmのFWHM低下を回復することを発見する。
【0080】
また、注意すべきことは、単層PCSは典型的なナノフォトニック反射器のみとしてFPFを構成する。他の単層フィルム反射板及び単層ナノフォトニック反射器例えばサブ波長格子(Subwavelength Grating、SWG)や、プラズマ共振器(Plasmonic resonator)はFPFを設計する上層板及び下層板として用いることができ、それによりキャビティ内の赤外光の共振を実現する。
【0081】
さらに、本願はさらにマイクロ計算の中赤外分光計を提供し、それは単一のチューナブルファブリーペローフィルタを含み、それは具体的にVOC検出、微量ガス検出、医学診断、環境監視及び工業プロセス制御等に用いられる。
【0082】
説明すべきものとして、本発明の実施例が提供する表示装置の実施例、テスト方法の実施例及びテスト回路の実施例はいずれも互いに参照することができ、本願の実施例はこれを限定しない。本願の実施例が提供する表示パネルのテスト方法の実施例のステップは状況に応じて対応する増減を行うことができ、任意の本技術分野に精通する当業者は本願に開示された技術的範囲内に、容易に考えられる変化の方法は、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきであるため、説明を省略する。
【0083】
以上の記載は本願の好ましい実施例に過ぎず、本願を限定するものではなく、本願の精神及び原則内で、行われたいかなる修正、同等置換、改善等は、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0084】
1 基板
2 底部シリコンフォトニクス結晶板
3 スペーサ
4 頂部シリコンフォトニクス結晶板
5 PDMSスタンプ
11 電極領域
12 電極