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特開2022-186710アニオン変性セルロースナノファイバー水分散液、並びにアニオン変性セルロースナノファイバーを含有する食品、化粧品、及びゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186710
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】アニオン変性セルロースナノファイバー水分散液、並びにアニオン変性セルロースナノファイバーを含有する食品、化粧品、及びゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08B 15/04 20060101AFI20221208BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20221208BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221208BHJP
   C08B 11/12 20060101ALI20221208BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20221208BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20221208BHJP
   A23G 1/32 20060101ALI20221208BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20221208BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20221208BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C08B15/04
A61K8/73
A61Q19/00
C08B11/12
A23L5/00 N
A23L29/262
A23G1/32
A23G3/34 104
C08L1/00
C08L21/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154301
(22)【出願日】2022-09-28
(62)【分割の表示】P 2018533490の分割
【原出願日】2017-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2016155387
(32)【優先日】2016-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016159517
(32)【優先日】2016-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016190681
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 文子
(72)【発明者】
【氏名】山邊 かおり
(72)【発明者】
【氏名】中谷 丈史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸治
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩司
(57)【要約】
【課題】 目視では判断できないCNF分散液中のCNF同士の凝集物を定量的に評価する方法で評価したCNF分散指数が所定値以下のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液を提供する。
【解決手段】 アニオン変性セルロースナノファイバー水分散液であって、CNF分散指数が8000以下であり、前記CNF分散指数は、(1)1.0質量%のCNF水分散液を準備する工程と、(2)CNF水分散液に色材を添加し、ボルテックスミキサーで撹拌する工程と、(3)色材を含有するCNF分散液の膜厚が0.15mmになるように二枚のガラス板に挟む工程と、(4)二枚のガラス板に挟んだ色材を含有するCNF水分散液の膜を顕微鏡で観察する工程と、(5)観察された凝集物をその大きさ(長径)により分類する工程と、(6)分類した凝集物の個数からCNF分散指数を算出し、CNF水分散液の分散性を評価する工程を含むCNF分散液の評価方法により得られる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン変性セルロースナノファイバー水分散液であって、
CNF分散指数が8000以下であり、
前記CNF分散指数は、
(1)1.0質量%のセルロースナノファイバー水分散液を準備する工程と、
(2)前記工程(1)で準備したセルロースナノファイバー水分散液1gに、平均粒子径が0.03μm以上1μm以下の有色顔料を5~20質量%含有する色材を添加し、ボルテックスミキサーにて1分間撹拌する工程と、
(3)前記工程(2)で得られた色材を含有するセルロースナノファイバー水分散液の膜厚が0.15mmになるように二枚のガラス板に挟む工程と、
(4)前記工程(3)で得られた二枚のガラス板に挟んだ色材を含有するセルロースナノファイバー水分散液の膜を顕微鏡(倍率:100倍)で観察する工程と、
(5)前記工程(4)において、3mm×2.3mmの範囲に存在する凝集物の長径を測定し、観察された凝集物を、150μm以上の長径を有する特大と、100μm以上150μm未満の長径を有する大と、50μm以上100μm未満の長径を有する中と、20μm以上50μm未満の長径を有する小とに分類する工程と、
(6)前記工程(5)で分類した凝集物の個数を数え、式1:
CNF分散指数=(特大の個数×512+大の個数×64+中の個数×8+小の個数×1)÷2
によりCNF分散指数を算出し、セルロースナノファイバー水分散液の分散性を評価する工程を含むことを特徴とするセルロースナノファイバー分散液の評価方法により得られる、
アニオン変性セルロースナノファイバー水分散液。
【請求項2】
請求項1に記載のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液または当該水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する、食品。
【請求項3】
請求項1に記載のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液または当該水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する、団子。
【請求項4】
請求項1に記載のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液または当該水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する、含水チョコレート。
【請求項5】
請求項1に記載のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液または当該水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する、化粧品。
【請求項6】
請求項1に記載のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液または当該水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する、ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン変性セルロースナノファイバー水分散液等に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースナノファイバー(CNF)は、水系分散性に優れる約4~数百nm程度の繊維径を有する微細繊維であり、樹脂補強材料、食品、化粧品、医療品または塗料等の粘度の保持、食品原料生地の強化、水分の保持、食品安定性向上、低カロリー添加物または乳化安定化助剤としての利用が期待されている(特許文献1など)。CNFを添加剤として使用する場合、通常、CNFは水に分散している状態(湿潤状態)で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-1728号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各種用途に展開が期待されているCNFであるが、CNF分散液においてCNF同士が会合した凝集物があると、様々な問題を生ずる可能性がある。このため、CNF分散液中の凝集物の有無を事前に確認するとともに、必要に応じてCNF分散液中の凝集物を除去あるいは解繊することが必要となる。しかしながら、CNFは非常に細い繊維であり、その分散液の透明性が非常に高いため、CNF同士の凝集物が存在していても、目視では確認できないことが問題となっていた。
【0005】
かかる事情を鑑み、本発明は、目視では判断できないCNF分散液中のCNF同士の凝集物を定量的に評価する方法で評価したCNF分散指数が所定値以下のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液、並びに、このアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液またはこの水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する食品、化粧品及びゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の<1>~<6>を提供する。
<1> アニオン変性セルロースナノファイバー水分散液であって、CNF分散指数が8000以下であり、前記CNF分散指数は、(1)1.0質量%のセルロースナノファイバー水分散液を準備する工程と、(2)前記工程(1)で準備したセルロースナノファイバー水分散液1gに、平均粒子径が0.03μm以上1μm以下の有色顔料を5~20質量%含有する色材を添加し、ボルテックスミキサーの回転数の目盛りを最大に設定して1分間撹拌する工程と、(3)前記工程(2)で得られた色材を含有するセルロースナノファイバー水分散液の膜厚が0.15mmになるように二枚のガラス板に挟む工程と、(4)前記工程(3)で得られた二枚のガラス板に挟んだ色材を含有するセルロースナノファイバー水分散液の膜を顕微鏡(倍率:100倍)で観察する工程と、(5)前記工程(4)において、3mm×2.3mmの範囲に存在する凝集物の長径を測定し、観察された凝集物を、150μm以上の長径を有する特大と、100μm以上150μm未満の長径を有する大と、50μm以上100μm未満の長径を有する中と、20μm以上50μm未満の長径を有する小とに分類する工程と、(6)前記工程(5)で分類した凝集物の個数を数え、式1:
CNF分散指数=(特大の個数×512+大の個数×64+中の個数×8+小の個数×1)÷2
によりCNF分散指数を算出し、セルロースナノファイバー水分散液の分散性を評価する工程を含むことを特徴とするセルロースナノファイバー分散液の評価方法により得られる、アニオン変性セルロースナノファイバー水分散液。
<2> <1>に記載のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液または当該水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する、食品。
<3> <1>に記載のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液または当該水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する、団子。
<4> <1>に記載のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液または当該水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する、含水チョコレート。
<5> <1>に記載のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液または当該水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する、化粧品。
<6> <1>に記載のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液または当該水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する、ゴム組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、目視では判断できないCNF分散液中のCNF同士の凝集物を定量的に評価する方法で評価したCNF分散指数が所定値以下のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液、並びに、このアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液またはこの水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する食品、化粧品及びゴム組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1におけるCNF分散液の光学顕微鏡による観察結果を示す。
図2】実施例2におけるCNF分散液の光学顕微鏡による観察結果を示す。
図3】実施例3におけるCNF分散液の光学顕微鏡による観察結果を示す。
図4】実施例4におけるCNF分散液の光学顕微鏡による観察結果を示す。
図5】実施例5におけるCNF分散液の光学顕微鏡による観察結果を示す。
図6】参考例1におけるCNF分散液の光学顕微鏡による観察結果を示す。
図7】参考例2におけるCNF分散液の光学顕微鏡による観察結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のアニオン変性セルロースナノファイバー(CNF)水分散液のCNF分散指数の評価方法は、(1)1.0質量%のセルロースナノファイバー水分散液を準備する工程と、(2)前記工程(1)で準備したセルロースナノファイバー水分散液1gに、平均粒子径が0.03μm以上1μm以下の有色顔料を5~20質量%含有する色材を添加し、ボルテックスミキサーの回転数の目盛りを最大に設定して1分間撹拌する工程と、(3)前記工程(2)で得られた色材を含有するセルロースナノファイバー水分散液の膜厚が0.15mmになるように二枚のガラス板に挟む工程と、(4)前記工程(3)で得られた二枚のガラス板に挟んだ色材を含有するセルロースナノファイバー水分散液の膜を顕微鏡(倍率:100倍)で観察する工程と、(5)前記工程(4)において、3mm×2.3mmの範囲に存在する凝集物の長径を測定し、観察された凝集物を分類する工程と、(6)前記工程(5)で分類した凝集物の個数に基づいて、セルロースナノファイバー水分散液の分散性を評価する工程、を備えるセルロースナノファイバー分散液の評価方法であり、目視あるいは光学測定器などでは差が見られない透明性の高いセルロースナノファイバー分散液の分散性の差を定量的に評価することが可能である。
【0010】
本発明において、セルロースナノファイバー(CNF)同士の凝集物とは、後述の解繊処理時に発生する解繊が不十分な未解繊繊維物、分散液中で生じるCNFネットワーク構造体、あるいはCNFの濃縮または乾燥時に生じる凝集体などを意味する。
【0011】
本発明において「A~B」はその端値すなわちAおよびBを含む。また「AまたはB」は、A、Bのいずれか一方、あるいは双方を含む。
【0012】
(セルロースナノファイバー)
セルロースナノファイバー(CNF)は、繊維径が4~500nm程度、アスペクト比が100以上の微細繊維であり、カチオン化またはアニオン化等の化学処理したセルロースを解繊することによって得ることができる。アニオン化処理としては、カルボキシル化(酸化)、カルボキシメチル化、エステル化、機能性官能基導入等が挙げられる。
【0013】
(セルロース原料)
化学変性セルロースを製造するためのセルロース原料としては、例えば、植物性材料(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ)、動物性材料(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))産生物等を起源とするものが挙げられる。パルプとしては、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等が挙げられる。これらのすべてが使用できるが、植物または微生物由来のセルロース繊維が好ましく、植物由来のセルロース繊維がより好ましい。
【0014】
(カルボキシメチル化)
本発明において、化学変性セルロースとしてカルボキシメチル化したセルロースを用いる場合、カルボキシメチル化したセルロースは、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシメチル化することにより得てもよいし、市販品を用いてもよい。いずれの場合も、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度は0.01~0.50であることが好ましい。そのようなカルボキシメチル化したセルロースを製造する方法の一例として次のような方法を挙げることができる。セルロースを発底原料にし、溶媒として3~20質量倍の水または低級アルコールを使用する。具体的には水、メタノール、エタノール、N-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N-ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等を単独、あるいは2種以上を併用して使用できる。水と低級アルコールの混合溶媒を用いる場合、低級アルコールの混合割合は60~95質量%である。マーセル化剤としては、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5~20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。発底原料と溶媒、マーセル化剤を混合し、反応温度0~70℃、好ましくは10~60℃で、反応時間を15分~8時間、好ましくは30分~7時間としてマーセル化処理を行う。その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05~10.0倍モル添加し、反応温度30~90℃、好ましくは40~80℃で、反応時間を30分~10時間、好ましくは1時間~4時間としてエーテル化反応を行う。
【0015】
(カルボキシル化)
本発明において、化学変性セルロースとしてカルボキシル化(酸化)したセルロースを用いる場合、カルボキシル化セルロース(「酸化セルロース」ともいう)は、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシル化(酸化)することにより得ることができる。限定されないが、カルボキシル基の量は、アニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して、0.6~2.0mmol/gであることが好ましく、1.0mmol/g~2.0mmol/gであることがさらに好ましい。
【0016】
カルボキシル化(酸化)方法の一例として、セルロース原料を、N-オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物、およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物との存在下で、酸化剤を用いて水中で酸化する方法を挙げることができる。この酸化反応により、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、表面にアルデヒド基と、カルボキシル基(-COOH)またはカルボキシレート基(-COO-)とを有するセルロース繊維を得ることができる。反応時のセルロースの濃度は特に限定されないが、5質量%以下が好ましい。
【0017】
N-オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。N-オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であればいずれの化合物も使用できる。その例としては、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル(TEMPO)およびその誘導体(例えば4-ヒドロキシTEMPO)が挙げられる。
【0018】
N-オキシル化合物の使用量は、原料となるセルロースを酸化できる触媒量であればよく、特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.01~10mmolが好ましく、0.01~1mmolがより好ましく、0.05~0.5mmolがさらに好ましい。反応系に対しては0.1~4mmol/L程度が好ましい。
【0019】
臭化物とは臭素を含む化合物であり、その例には、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、その例には、ヨウ化アルカリ金属が含まれる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物およびヨウ化物の合計量は、例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.1~100mmolが好ましく、0.1~10mmolがより好ましく、0.5~5mmolがさらに好ましい。
【0020】
酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などを使用できる。中でも、安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。酸化剤の使用量は、例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.5~500mmolが好ましく、0.5~50mmolがより好ましく、1~25mmolがさらに好ましく、3~10mmolが最も好ましい。N-オキシル化合物に対しては、当該N-オキシル化合物1molに対して1~40molが好ましい。
【0021】
セルロースの酸化工程は、比較的温和な条件であっても反応を効率よく進行させられる。よって、反応温度は4~40℃が好ましく、また15~30℃程度の室温であってもよい。反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHの低下が認められる。酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを8~12、好ましくは10~11程度に維持することが好ましい。反応媒体は、取扱性の容易さや、副反応が生じにくいこと等から、水が好ましい。
【0022】
酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常は0.5~6時間、例えば、0.5~4時間程度である。
【0023】
また、酸化反応は、2段階に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一または異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化させることができる。
【0024】
カルボキシル化(酸化)方法の別の例として、オゾンを含む気体とセルロース原料とを接触させることにより酸化する方法を挙げることができる。この酸化反応により、グルコピラノース環の少なくとも2位および6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。オゾンを含む気体中のオゾン濃度は、50~250g/m3であることが好ましく、50~220g/m3であることがより好ましい。セルロース原料に対するオゾン添加量は、セルロース原料の固形分を100質量部とした際に、0.1~30質量部であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましい。オゾン処理温度は、0~50℃であることが好ましく、20~50℃であることがより好ましい。オゾン処理時間は、特に限定されないが、1~360分程度であり、30~360分程度が好ましい。オゾン処理の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度に酸化および分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となる。オゾン処理を施した後に、酸化剤を用いて、追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物や、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸などが挙げられる。例えば、これらの酸化剤を水またはアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を作成し、溶液中にセルロース原料を浸漬させることにより追酸化処理を行うことができる。
【0025】
酸化セルロースのカルボキシル基の量は、上記した酸化剤の添加量、反応時間等の反応条件をコントロールすることで調整できる。
(カチオン化)
本発明において、化学変性セルロースとして、カルボキシル化(酸化)したセルロースを用いる場合、上記のセルロース原料にグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3-クロロ-2ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハイドライトまたはそのハロヒドリン型などのカチオン化剤と触媒である水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を、水または炭素数1~4のアルコールの存在下で反応させることによって、カチオン変性されたセルロースを得ることができる。この方法において、得られるカチオン変性されたセルロースのグルコース単位当たりのカチオン置換度は、反応させるカチオン化剤の添加量、混合溶媒の場合は水と前記アルコールとの組成比率をコントロールすることによって、調整することができる。
【0026】
カチオン変性されたセルロースのグルコース単位当たりのカチオン置換度は0.02~0.50であることが好ましい。セルロースにカチオン置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このため、カチオン置換基を導入したセルロースは容易にナノ解繊することができる。グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.02より小さいと、十分にナノ解繊することができない。一方、グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.50より大きいと、膨潤あるいは溶解するため、ナノファイバーとして得られなくなる場合がある。解繊を効率よく行なうために、上記で得た酸化されたセルロース系原料は洗浄されることが好ましい。
【0027】
(エステル化)
セルロースとしてエステル化したセルロースを用いることもできる。エステル化としてはセルロース系原料にリン酸系化合物Aの粉末や水溶液を混合する方法、セルロース系原料のスラリーにリン酸系化合物Aの水溶液を添加する方法等が挙げられる。リン酸系化合物Aとしてはリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸あるいはこれらのエステルが挙げられる。これらは塩の形態であってもよい。上記の中でも、低コストであり、扱いやすく、またパルプ繊維のセルロースにリン酸基を導入して、解繊効率の向上が図れるなどの理由からリン酸基を有する化合物が好ましい。リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム等が挙げられる。これらは1種、あるいは2種以上を併用できる。これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、下記解繊工程で解繊しやすく、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましい。また、反応を均一に進行できかつリン酸基導入の効率が高くなることから前記リン酸系化合物Aは水溶液として用いることが望ましい。リン酸系化合物Aの水溶液のpHは、リン酸基導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましいが、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3~7が好ましい。
【0028】
リン酸エステル化セルロースの製造方法の例として、以下の方法を挙げることができる。固形分濃度0.1~10重量%のセルロース系原料の懸濁液に、リン酸系化合物Aを撹拌しながら添加してセルロースにリン酸基を導入する。セルロース系原料を100重量部とした際に、リン酸系化合物Aの添加量はリン元素量として、0.2~500重量部であることが好ましく、1~400重量部であることがより好ましい。リン酸系化合物Aの割合が前記下限値以上であれば、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。しかし、前記上限値を超えると収率向上の効果は頭打ちとなるので、コスト面から好ましくない。
【0029】
リン酸系化合物Aの他に化合物Bの粉末や水溶液を混合してもよい。化合物Bは特に限定されないが、塩基性を示す窒素含有化合物が好ましい。ここでの「塩基性」は、フェノールフタレイン指示薬の存在下で水溶液が桃~赤色を呈すること、または水溶液のpHが7より大きいことと定義される。本発明で用いる塩基性を示す窒素含有化合物は、本発明の効果を奏する限り限定されないが、アミノ基を有する化合物が好ましい。当該化合物としては、尿素、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。なかでも低コストであり取扱性に優れる尿素が好ましい。化合物Bの添加量はセルロース原料の固形分100重量部に対して、2~1000重量部が好ましく、100~700重量部がより好ましい。反応温度は0~95℃が好ましく、30~90℃がより好ましい。反応時間は特に限定されないが、1~600分程度であり、30~480分がより好ましい。エステル化反応の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度にエステル化されて溶解しやすくなることを防ぐことができ、リン酸エステル化セルロースの収率が良好となる。得られたリン酸エステル化セルロース懸濁液を脱水した後、セルロースの加水分解を抑える観点から、100~170℃で加熱処理することが好ましい。さらに、加熱処理の際に水が含まれている間は130℃以下、好ましくは110℃以下で加熱し、水を除いた後、100~170℃で加熱処理することが好ましい。
【0030】
リン酸エステル化されたセルロースのグルコース単位当たりのリン酸基置換度は0.001~0.40であることが好ましい。セルロースにリン酸基置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このため、リン酸基を導入したセルロースは容易にナノ解繊することができる。グルコース単位当たりのリン酸基置換度が0.001より小さいと、十分にナノ解繊することができない。一方、グルコース単位当たりのリン酸基置換度が0.40より大きいと、膨潤あるいは溶解するため、ナノファイバーとして得られなくなる場合がある。解繊を効率よく行なうために、上記で得たリン酸エステル化されたセルロース系原料は煮沸した後、冷水で洗浄することで洗浄されることが好ましい。
【0031】
(色材)
本発明において使用される色材は、平均粒子径は0.03以上1μm以下の有機顔料と溶媒を含み、有機顔料の含有量は5~20質量%である。有機顔料の平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置(例として、Malvern社製マスターサイザー3000やゼータサイザーナノZS)によって測定された値である。なお、顔料が球形でない場合は最長径の平均値を平均粒子径とする。また、色材の色は特に限定されるものではなく、白、黒、青、赤、黄、緑など上げることができる。
【0032】
(有色顔料)
本発明において、有色顔料とは白、黒、青、赤、黄、緑などの色を有する顔料であり、その形状も板状、球状、鱗片状など特に限定されない。有色顔料としては無機顔料、有機顔料が挙げられる。無機顔料としては、カーボンブラック、鉄黒、複合金属酸化物ブラック、クロム酸亜鉛、クロム酸鉛、鉛丹、リン酸亜鉛、リン酸バナジウム、リン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、トリポリリン酸アルミニウム、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマス、ハイドロタルサイト、亜鉛末、雲母状酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、ケイソウ土、カオリン、タルク、クレー、マイカ、バリタ、有機ベントナイト、ホワイトカーボン、酸化チタン、亜鉛華、酸化アンチモン、リトポン、鉛白、ペリレンブラック、モリブデン赤、カドミウムレッド、ベンガラ、硫化セリウム、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、ビスマスイエロー、シェナ、アンバー、緑土、マルスバイオレット、群青、紺青、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、硫化亜鉛、三酸化アンチモン、カルシウム複合物、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、オーカ、アルミニウム粉、銅粉、真鍮粉、ステンレス粉、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、亜鉛酸化銅、銀粒子、アナターゼ型酸化チタン、酸化鉄系焼成顔料、導電性金属粉、電磁波吸収フェライトなどが例示できる。有機顔料としては、キナクリドンレッド、ポリアゾイエロー、アンスラキノンレッド、アンスラキノンイエロー、ポリアゾレッド、アゾレーキイエロー、ベリレン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、イソインドリノンイエロー、ウォッチングレッド、パーマネントレッド、パラレッド、トルイジンマルーン、ベンジジンイエロー、ファーストスカイブルー、ブリリアントカーミン6B等が例示できる。これらの顔料は単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0033】
(顔料分散液)
本発明の色材に使用される溶媒は水系溶媒であることが好ましい。水系溶媒としては水、メタノール、エタノール、N-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N-ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール、線状もしくは分岐ペンタンジオール、脂肪族ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコールなど)、ポリオール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなど)、200~2000g/モルのモル質量を有するポリグリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、チオジグリコール、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0034】
また、色材中の有機顔料の分散性を安定させるため、分散剤を添加することが可能である。分散剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、金属石鹸、グリセリンエステル、ハイドロタルサイト、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、にかわ、ゼラチンなどの単独、又は2種類以上の混合物が挙げられる。
【0035】
色材有色顔料分散液中の有色顔料の含有量は、限定されないが、5~20質量%である。有色顔料の含有量が少ないと光学顕微鏡の観察写真が淡くなり、一方、有色顔料の含有量が多いと有色顔料の凝集物が発生する可能性がある。
【0036】
本発明において、光学顕微鏡での観察の際に明暗がはっきりしており光を透過しにくい(光を吸収しやすい)有色顔料が好ましく、黒色顔料がより好ましい。また、観察中に二次凝集あるいはCNFとの相互作用で凝集が生じないものが好ましい。例えば、有色顔料分散液として、墨汁、墨滴、インクジェットプリンター用の顔料インクなどを使用できる。墨は、水系樹脂で表面が被覆された表面処理カーボンブラックであり、バインダー樹脂と混合された際に優れた分散性を有し二次凝集し難いため、比較的低濃度のCNF分散液であっても十分に高い黒色度を発揮することができる。墨汁や墨滴は、表面処理カーボンブラックを含む水系分散液であり、例えば、石油系や石炭系の油を高温ガス中で不完全燃焼させるファーネス法等で製造された不定形のファーネスブラックの表面を水系樹脂で被覆し、必要に応じてグリコール系の凍結防止剤および防腐剤を添加し、混合、スラリー化することにより製造される。本発明においては、市販品(例えば、株式会社呉竹製「墨滴」等)を用いることができる。表面処理カーボンブラックもしくはその水系分散液は、既知の方法(例えば、特開平7-188597号公報や特開平6-234946号公報)に基づき調製することもできる。墨汁、墨滴、インクジェットプリンター用の顔料インクは単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(光学顕微鏡による観察)
本発明において、濃度は1.0質量%の分散液1gに、上記の色材を適量(2滴程度)添加した色材を含有したセルロースナノファイバー分散液を、分散液の膜厚が0.15mmになるように二枚のガラス板(例:スライドガラスとカバーガラスの組み合わせ)に挟み、光学顕微鏡(マイクロスコープを含む)を用いて観察する。光学顕微鏡は特に限定されず、一般的な光学顕微鏡(マイクロスコープを含む)を使用できる。色材を含有したセルロースナノファイバー分散液を光学顕微鏡で観察する際の倍率は、100倍で行う。
【0038】
本発明においては、CNF分散指数を用いて分散性を定量的に評価する。CNF分散指数とは、繊維の分散性の指標であるNEP指数(例えば特開平08-134329に開示されている)をCNF用に修正した指標である。具体的にCNF分散指数は以下のようにして求められる。
【0039】
上記観察において、3mm×2.3mmの範囲に存在する凝集物の長径を測定し、観察された凝集物を、特大:150μm以上、大:100μm以上150μm未満、中:50μm以上100μm未満、小:20μm以上50μm未満に分類し、分類した凝集物の個数を数え、下式によりCNF分散指数を算出する。
【0040】
CNF分散指数=(特大の個数×512+大の個数×64+中の個数×8+小の個数×1)÷2
【0041】
本発明の評価方法は、セルロースナノファイバーの分散液に、下記に例示するような水溶性高分子等の他の成分が含まれていても適用することができる。水溶性高分子としては、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース)、キサンタンガム、キシログルカン、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、プルラン、澱粉、かたくり粉、クズ粉、陽性澱粉、燐酸化澱粉、コーンスターチ、アラビアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ゲランガム、ポリデキストロース、ペクチン、キチン、水溶性キチン、キトサン、カゼイン、アルブミン、大豆蛋白溶解物、ペプトン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、ポリリンゴ酸、ポリグリセリン、ラテックス、ロジン系サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、植物ガム、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー、ポリアクリル酸塩、でんぷんポリアクリル酸共重合体、タマリンドガム、ジェランガム、ペクチン、グァーガム及びコロイダルシリカ並びにそれら1つ以上の混合物を例示することができる。
なお、セルロースナノファイバーと水溶性高分子等の他の成分を含む分散液を評価する場合、CNF固形分が1質量%となるようにして測定する。
【0042】
本発明によって分散媒への分散性が良好であると評価されたCNF再分散液は、食品、化成品等の用途において、溶解性が良いだけでなく、未分散物が少ない事によって、滑らかな触感、食品等に添加した場合は口当たりが改善される。よって、当該CNFを化粧品等液状製品に用いた場合は透明性、光透過度、粘度再現性などが改善され、また、光学フィルム等化成品に用いた場合は透明性、光透過度などが改善される。
【0043】
本発明における食品は、CNF分散液あるいは当該分散液由来のCNFを含む。このような食品としては、焼菓子(ビスケット、クラッカー等)、米菓(煎餅、あられ、おかき等)、菓子パン(ラスク等)、油菓子(かりん糖等)、チョコレート、洋菓子、キャンデー・キャラメル、干菓子、打菓子、豆菓子、ようかん等の菓子類、ならびにまんじゅう、団子、シリアル、スナック類、パン、麺等の麺皮類が挙げられる。本発明における食品は、ビスケット、クッキー、クラッカー、ウエハース、スナック、シリアル、パン等、せんべい、おかき、あられ等の米菓子等の小麦、トウモロコシ、ライ麦、オーツ麦、米等の穀物粉を主原料とする食品、団子を製造するに際し、CNFを添加し、必要に応じて糖質、油脂、卵、乳製品、膨張剤、食塩、乳化剤、香料等の副原料を添加して生地を調製し、その後混練、焼成の工程または、混練、発酵、焼成の工程を経て得られるものが好ましい。また、焼成の中には油を用いて揚げることも含まれる。
【0044】
以下に、団子及び含水チョコレートの例を示す。
<団子>
本発明における団子とは、米原料、葛粉、馬鈴薯澱粉、わらび粉、片栗粉、タピオカ澱粉、小麦粉、小麦澱粉、れんこん澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ、きび粉、及び加工澱粉(澱粉に酵素的、物理的及び/又は化学的な加工を施したもの)から選ばれる1種又は2種以上の原料を水等とともに公知の方法で成型した食品を指す。
米原料としては、もち米、もち米を原料とする粉末(白玉粉等)、うるち米、うるち米を原料とする粉末(上新粉等)、ならびに、うるち米及びもち米を原料とする粉末(団子粉)等が挙げられる。これらの米原料は、1種のみ使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明における団子の形状は特に制限されるものはなく、きびだんご、ぎゅうひ、串団子、桜餅、大福餅、草餅、ちまき、うぐいすもち、かしわもち、生八つ橋、ねりきりなど公知の製品に用いることができる。
【0045】
本発明は、団子にセルロースナノファイバーを含有させることで、団子中の澱粉の老化が抑制され、さらに優れた食感を発現する。団子中のセルロースナノファイバーの添加量は、団子の全絶乾質量(セルロースナノファイバーを含む)に対し、セルロースナノファイバーの絶乾質量が、0.05質量%以上1.0質量%以下、好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上1.0質量%以下である。セルロースナノファイバーの添加量を0.05質量%以上とすることで澱粉の老化抑制、優れた食感が発現する。一方、添加量を1.0質量%以下とすることでネバさ上昇による悪影響を抑制することができる。
【0046】
<含水チョコレート類>
本発明におけるチョコレート類とは、油脂成分がココアバターのみからなる、いわゆる法規上に規定されたチョコレートのみを指すのではなく、通常、ココアバターの代わりに使用されるココアバター代用油としてのハードバターを使用した各種のチョコレート類をも含むものである。したがって、スィートチョコレートあるいはミルクチョコレート等、従来公知の市販されているチョコレート類自体は勿論のこと、カカオマス、ココアパウダー、ココアバターあるいはハードバター等の一種または二種以上を使用して常法通りロール掛け、コンチング処理して得たチョコレート生地を使用することができる。また、本発明においてはココアまたはカカオマスを使用せずココアバターあるいはハードバターと砂糖、全脂粉乳または脱脂粉乳等の固形分を使用することによって得られるホワイトチョコレート類を使用することもでき、さらにコーヒーやフルーツ等の風味材と併用して様々な風味、色調を呈したカラーチョコレート類を使用することもできる。
【0047】
また、親水性成分としては水、液糖、天然の生クリーム類あるいは牛乳等の他に従来種々開発されてきた動植物性油脂等を使用したクリーム類、濃縮乳あるいは各種フルーツ類、果汁、天然蜂蜜、洋酒類等が例示でき、これらの一種または二種以上を使用することができる。
【0048】
本発明において、含水チョコレートに対するセルロースナノファイバーの添加量は、含水チョコレート中におけるセルロースナノファイバーの絶乾質量が、含水チョコレートの全絶乾質量(セルロースナノファイバーを含む)に対し、好ましくは0.08質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上である。
【0049】
含有量を0.08質量%以上とすることにより、常温でもべたつきがなく保型性に優れ、ネバさがなく滑らかで口どけ等の食感が非常に良好な、ガナッシュ様のボディー感を呈する。また、セルロースナノファイバーの絶乾質量が、含水チョコレートの全絶乾質量に対し、1.0質量%以下とすることで、ネバさ上昇の影響を抑制することができる。
【0050】
CNFを含有した含水チョコレートは、パンや菓子に利用することができる。本発明において、パン、菓子類とは小麦粉(デンプン、グルテン含む)などの穀粉類、イースト、食塩及び水を主原料とし、糖類、乳製品、卵製品、食用油脂類などの副原料を添加し、混捏した生地を発酵、成形し、焼成、蒸し、フライ等の加熱により製造されるものを指し、プルマンなどの食パン類、テーブルロール、バゲット、バタールなどのフランスパン類、スイートロール、テーブルロールなどのロールパン類、クロワッサン、デニッシュペストリー、イーストドーナツ等の菓子パン類や、ケーキ、クッキー、ラスク、スコーン、クラッカー、ショートブレッドなどの焼菓子、さらにカスタードクリーム、フラワーペースト等を含むものや、スポンジケーキ、バターケーキなどのケーキ類やドーナツやビスケットが挙げられる。
【0051】
食品に添加されるCNFのCNF分散指数は、8000以下が好ましく、より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下、さらに好ましくは500以下、更に好ましくは100以下である。
【0052】
本発明において、食品、化粧品、ゴム組成物などに添加するセルロースナノファイバーの態様は特に限定されるものではなく、セルロースナノファイバーの分散液あるいはセルロースナノファイバーの乾燥固形物、あるいはその中間的な状態である湿潤固形物であってもよい。なお、本発明において、セルロースナノファイバーの乾燥固形物とは、セルロースナノファイバーを含む分散液を水分量12%以下に脱水・乾燥したものを意味する。セルロースナノファイバーの乾燥固形物としては、セルロースナノファイバーの分散液を乾燥させたもの、あるいはセルロースナノファイバーと水溶性高分子との混合液を乾燥させたものを例示することができる。
【0053】
本発明における化粧品は、CNF分散液あるいは当該分散液由来のCNFを含む。このような化粧品としては、クリーム、乳液、化粧水、美容液等の基礎化粧品、石鹸、洗顔料、シャンプー、リンス等の清浄用化粧品、ヘアトニック、整髪料等の頭髪用化粧品、ファンデーション、アイライナー、マスカラ、口紅等のメイクアップ化粧品、歯磨き等の口腔化粧品、浴用化粧品等が挙げられる。
【0054】
化粧品に添加されるCNFのCNF分散指数は、8000以下が好ましく、より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下、さらに好ましくは500以下、更に好ましくは100以下である。
【0055】
本発明におけるゴム組成物は、CNF分散液あるいは当該分散液由来のCNFを含む。当該ゴム成分は通常、有機高分子を主成分とする、弾性限界が高く弾性率の低い成分である。ゴム成分は、天然ゴムおよび合成ゴムに大別されるが、本発明においてはいずれを用いてもよく、両者を組合せてもよい。天然ゴムとしては、化学修飾を施さない、狭義の天然ゴムでもよく、また塩素化天然ゴム、クロロスルホン化天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、水素化天然ゴム、脱タンパク天然ゴムのように、天然ゴムを化学修飾したものが挙げられる。合成ゴムとしては例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム等のジエン系ゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM、EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)が挙げられる。
【0056】
ゴム組成物に添加されるCNFのCNF分散指数は、8000以下が好ましく、より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下、さらに好ましくは500以下、更に好ましくは100以下である。
【実施例0057】
次に、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は、本発明の好適な例を具体的に説明したものであり、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0058】
(カルボキシル基量の測定方法)
カルボキシル化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mLを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定した。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出した。
【0059】
カルボキシル基量〔mmol/gカルボキシル化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/カルボキシル化セルロース質量〔g〕
【0060】
(カルボキシメチル基量の測定方法)
1)カルボキシメチル化セルロース繊維(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。2)硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(CM化セルロース)を水素型CM化セルロースにする。3)水素型CM化セルロース(絶乾)を1.5~2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。4)80%メタノール15mLで水素型CM化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定する。6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F’-(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型CM化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:水素型CM化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのH2SO4のファクター
F:0.1NのNaOHのファクター
【0061】
(平均繊維径、アスペクト比の測定方法)
CNFの平均繊維径および平均繊維長は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、ランダムに選んだ200本の繊維について解析した。アスペクト比は下記の式により算出した。
【0062】
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
【0063】
最初に、CNFの製法や色材の種類を変更してCNF分散指数を求めたので、以下に示す。
<CNF分散液1の製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)39mgと臭化ナトリウム514mgを溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を5.7mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗して酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。パルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.67mmol/gであった。
【0064】
上記の工程で得られた酸化パルプを水で1.0%(w/v)(=1.0質量%)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150MPa)で5回処理して、アニオン変性セルロースナノファイバー分散液(CNF分散液1)を得た。得られた繊維は、平均繊維径が4nm、アスペクト比が150であった。
【0065】
<CNF分散液2の製造>
超高圧ホモジナイザーの処理回数を1回にした以外はCNF分散液1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液(CNF分散液2)を作成した。なお、得られた繊維は、平均繊維径が20nm、アスペクト比が250であった。
【0066】
<CNF分散液3の製造>
パルプを混ぜることが出来る撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙株式会社製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で111g加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分間撹拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算)添加した。30分間撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシメチル化したパルプを得た。その後、カルボキシメチル化したパルプを水で固形分1%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、150MPaの圧力で5回処理することにより解繊し、カルボキシメチル化セルロース繊維の水分散液(CNF分散液3)を得た。得られた繊維は、平均繊維径が15nm、アスペクト比が150であった。
【0067】
<実施例1>
上記のようにして得られたCNF分散液1(カルボキシル化CNFの1.0質量%水性懸濁液)1gに墨滴(株式会社呉竹製、固形分10%)を2適垂らし、ボルテックスミキサー(IUCHI社製、機器名:AutomaticLab-mixerHM-10H)の回転数の目盛りを最大に設定して1分間撹拌した。次に、墨滴を含有するセルロースナノファイバー分散液の膜厚が0.15mmになるように二枚のガラス板に挟み、光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープKH-8700(株式会社ハイロックス製))を用いて倍率100倍で観察した。結果を図1に示す。観察範囲(2.3×3mm)には凝集物はなく、CNF分散指数は0であった。なお、用いた墨滴の平均粒子径を、ゼータサイザーナノZS(Malvern社製)を用いて3回測定したところ、その平均値は0.22μmであった。
【0068】
<実施例2>
CNF分散液1を105℃の送風乾燥機にて乾燥し、再度水を加えてCNF水分散液(固形分1.0質量%)を調整し、TKホモミキサー(6,000rpm)を用いて60分間撹拌してCNF分散液を得た。CNF分散液1に代えて、このCNF分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして実験を行い、得られた分散液を光学顕微鏡にて観察した。結果を図2に示す。CNF分散指数は1825であった。
【0069】
<実施例3>
CNF分散液1の絶乾固形分100質量部に対してカルボキシメチルセルロース(CMC)の絶乾固形分が40部となるように1質量%のCMC水溶液を添加・混合したCMC含有CNF分散液を105℃の送風乾燥機にて乾燥し、CMCとCNFを含む乾燥固形物を得た。次にこの乾燥固形物にCNFの固形分が1質量%となるように水を加え、TKホモミキサー(6,000rpm)を用いて60分間撹拌してCMC含有CNF分散液を得た。このCMC含有CNF分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして実験を行い、得られた分散液を光学顕微鏡にて観察した。結果を図3に示す。CNF分散指数は24であった。
【0070】
<実施例4>
実施例3で用いた乾燥固形物にCNFの固形分が1質量%となるように水を加え、TKホモミキサー(1,000rpm)を用いて60分間撹拌してCMC含有CNF分散液を得た。CNF分散液1に代えて、このCMC含有CNF分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして実験を行い、得られた分散液を光学顕微鏡にて観察した。結果を図4に示す。CNF分散指数は252であった。
【0071】
<実施例5>
実施例3で用いた乾燥固形物にCNFの固形分が1質量%となるように水を加え、TKホモミキサー(600rpm)を用いて180分間撹拌してCMC含有CNF分散液を得た。CNF分散液1に代えて、このCMC含有CNF分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして実験を行い、得られた分散液を光学顕微鏡にて観察した。結果を図5に示す。CNF分散指数は942であった。
【0072】
<実施例6>
使用する墨滴を、墨滴(株式会社呉竹製)から墨滴(開明株式会社製)に変更した以外は実施例1と同様にして、光学顕微鏡で観察した。その結果、CNF分散液中の凝集物が無いことを確認することができた(CNF分散指数は0)。当該墨滴の平均粒子径をゼータサイザーナノZS(Malvern社製)を用いて3回測定したところ、その平均値は0.09μmであった。
【0073】
<実施例7>
使用する墨滴を、固形墨(株式会社呉竹製)を硯と水を用いて、墨をすって得た墨滴に変更した以外は実施例1と同様にして実験を行い、得られた分散液を光学顕微鏡で観察した。その結果、CNF分散液中の凝集物が無いことを確認することができた(CNF分散指数は0)。当該墨滴の平均粒子径をゼータサイザーナノZS(Malvern社製)を用いて3回測定したところ、その平均値は0.51μmであった。
【0074】
<実施例8>
使用する墨滴を、特開2015-199966の「実施例1」に記載の製造方法に従い製造した「水性顔料インク」に変更した以外は実施例1と同様にして実験を行い、得られた分散液を光学顕微鏡で観察した。その結果、CNF分散液中の凝集物が無いことを確認することができた(CNF分散指数は0)。
【0075】
<実施例9>
CNF分散液1に代えて、上記のようにして得られたCNF分散液2(カルボキシル化CNFの1.0質量%水性懸濁液)を用いた以外は、実施例1と同様に実験を行い、得られた分散液を光学顕微鏡にて観察した。その結果、CNF分散指数は3500であった。
【0076】
<実施例10>
CNF分散液1に代えて、上記のようにして得られたCNF分散液3(カルボキシメチル化CNFの1.0質量%水性懸濁液)を用いた以外は、実施例1と同様に実験を行い、得られた分散液を光学顕微鏡にて観察した。その結果、CNF分散液中の凝集物が無いことを確認することができた(CNF分散指数は0)。
【0077】
<参考例1>
実施例1で用いたCNF分散液1に墨滴を滴下しなかったこと以外は実施例1と同様にして実験を行い、光学顕微鏡で観察した。結果を図6に示す。CNF分散指数は0であった。
【0078】
<参考例2>
実施例2で用いた乾燥・再分散の工程を経て得られたCNF分散液に墨滴を滴下しなかったこと以外は実施例1と同様にして実験を行い、光学顕微鏡で観察した。結果を図7に示す。CNF分散指数は0であった。
【0079】
<結果>
墨滴等の色材を添加したCNF分散液を光学顕微鏡で観察することにより、従来は困難であったCNF分散液中の凝集物の有無を容易に判断でき、かつCNF分散指数を用いることで分散性を定量的に評価できることが明らかとなった。
【0080】
次に、「団子」の実施例を示す。以下の実施例においてCNF分散指数は実施例1と同様に測定した。
<CNF分散液4の製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)780mgと臭化ナトリウム75.5gを溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。
【0081】
上記の工程で得られた酸化パルプを水で1.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、セルロースナノファイバー分散液(CNF分散液4)を得た。得られた繊維は、平均繊維径が3nm、アスペクト比が250であった。また、CNF分散液4のCNF分散指数は0であった。
【0082】
<CNF分散液5の製造>
超高圧ホモジナイザーの処理回数を1回にした以外はCNF分散液4と同様にしてセルロースナノファイバー分散液(CNF分散液5)を作成した。なお、得られた繊維は、平均繊維径が20nm、アスペクト比が250であった。また、CNF分散液5のCNF分散指数は3500であった。
【0083】
<CNF分散液6の製造>
パルプを混ぜることが出来る撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙株式会社製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で111g加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分間撹拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算)添加した。30分間撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシメチル化したパルプを得た。その後、カルボキシメチル化したパルプを水で固形分1%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、150MPaの圧力で5回処理することにより解繊し、カルボキシメチル化セルロース繊維の水分散液(CNF分散液6)を得た。得られた繊維は、平均繊維径が15nm、アスペクト比が150であった。また、CNF分散液6のCNF分散指数は0であった。
【0084】
<実施例11>
CNF分散液4を水で希釈したセルロースナノファイバー分散液(0.2質量%、400g)を90℃まで電子レンジで加熱し、上新粉(日の本キング株式会社製)240g中に添加し、ヘラでよく捏ねた。その後、得られた生地を、クッキングシートを敷いた皿の上に12gになるように生地をちぎって丸め、電子レンジで加熱して、団子の製造を行った。団子中における本発明の添加用セルロースナノファイバーの絶乾質量は、上新粉に対し、0.33質量%であった。得られた団子について、次に示す方法により、澱粉の老化の進行度合い及び歯切れの良さに関する試験を行った。
【0085】
<老化の進行程度>
10人のパネラーに対し、2日間静置した団子を試食させ、製造当日に試食した時と比べた時の硬さの度合いを下記の5点法にて官能評価をさせ、その平均点を評価点数とした。結果を表1に示す。
5点:ほとんど気にならない位の差である。
3点:若干硬さを感じる。
1点:有意差がある程、硬さを感じる。
【0086】
<食感>
10人のパネラーに製造当日の団子を試食させ、食感(歯切れの良さ)について、下記の5点法にて評価をさせ、その平均点を評価点数とした。結果を表1に示す。
5点:歯切れよくかみ切れる。
3点:若干モチのような食感がある。
1点:噛み切りにくく、モチのような食感が強い。
【0087】
<実施例12>
CNF分散液4をCNF分散液5に変更した以外は実施例11と同様に団子の製造及び評価を行った。
【0088】
<実施例13>
CNF分散液4をCNF分散液6に変更した以外は実施例11と同様に団子の製造及び評価を行った。
【0089】
<比較例1>
実施例11においてセルロースナノファイバー分散液の代わりに水を用いたこと以外は、実施例11と同様に団子の製造及び評価を行った。
【0090】
<比較例2>
実施例11においてセルロースナノファイバー分散液の代わりに、カルボキシメチル化セルロース(商品名:F350HC-4、日本製紙株式会社製)の分散液を用いた以外は、実施例11と同様に団子の製造及び評価を行った。
【0091】
【表1】
【0092】
表1の結果から明らかなように、セルロースナノファイバーを含有している実施例11、実施例12、及び実施例13では、セルロースナノファイバーを含有していない比較例1に対し、老化が進行していなかった。また、セルロースナノファイバーを含有している実施例11、実施例12、及び実施例13では、微結晶セルロースであるカルボキシメチル化セルロースを用いた比較例2に対し、老化が進行せずに、食感(歯切れ)が良好であることがわかる。
【0093】
次に、「含水チョコレート」の実施例を示す。以下の実施例においてCNF分散指数は実施例1と同様に測定した。
<CNF分散液7の製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)780mgと臭化ナトリウム75.5gを溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。
上記の工程で得られた酸化パルプを水で1.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、セルロースナノファイバー分散液(CNF分散液7)を得た。得られた繊維は、平均繊維径が3nm、アスペクト比が250であった。また、CNF分散液7のCNF分散指数は0であった。
【0094】
<CNF分散液8の製造>
パルプを混ぜることが出来る撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙株式会社製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で111g加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分間撹拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算)添加した。30分間撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシメチル化したパルプを得た。その後、カルボキシメチル化したパルプを水で固形分1%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、150MPaの圧力で5回処理することにより解繊し、カルボキシメチル化セルロース繊維の水分散液(CNF分散液8)を得た。得られた繊維は、平均繊維径が15nm、アスペクト比が150であった。また、CNF分散液8のCNF分散指数は0であった。
【0095】
<CNF分散液9の製造>
パルプを撹拌することができるパルパーに、パルプ(NBKP、日本製紙(株)製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で24g加え、パルプ固形濃度が15%になるように水を加えた。その後、30℃で30分間撹拌した後に70℃まで昇温し、カチオン化剤として3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを200g(有効成分換算)添加した。1時間反応した後に、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカチオン置換度0.05のカチオン変性されたセルロースを得た。その後、カチオン変性したパルプを固形濃度1%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、140MPaの圧力で2回処理することにより、セルロースナノファイバー分散液(CNF分散液9)を得た。得られた繊維は、平均繊維径が25nm、アスペクト比が150であった。また、CNF分散液9のCNF分散指数は0であった。
【0096】
<実施例14>
上記で得られたCNF分散液7を105℃の乾燥機にて乾燥し、水分量7%のCNF乾燥固形物を得た。得られたCNF乾燥固形物を乾式ミルにて粉砕して、添加用セルロースナノファイバーとした。
【0097】
生クリーム100g、上記添加用セルロースナノファイバーを混ぜ合わせ、温めながらセルロースナノファイバーの粒状塊がなくなるまで撹拌した。撹拌後、解砕したチョコレート200gを添加し融解させた。この生地を冷蔵保管して固め、含水チョコレートを得た。なお、添加用セルロースナノファイバーの添加量(絶乾質量)は、含水チョコレートの質量に対し0.16質量%であった。得られた含水チョコレートについて、保形性・べたつき、食感に関する試験を行った。
【0098】
<保形性・べたつき>
冷却後の含水チョコレートを手にとり、以下の基準で官能評価した。結果を表2に示す。
A:チョコレートが手にほとんど付着せず、常温でも形を長時間保っている
B:チョコレートが手に少し付着し、数時間経つと常温で形が崩れてくる
C:チョコレートが手に多くつき、すぐに原型が崩れてくる。
【0099】
<食感>
10人のパネラーに試食させ、食感(口どけ感)について、下記の5点法にて評価をさせ、その平均点を評価点数とした。結果を表2に示す。
5点:滑らかで瑞々しい口どけ
3点:ネバさはなく、滑らかな口どけ
1点:ネバさがあり、滑らかさに欠ける
【0100】
<実施例15>
実施例14のCNF分散液7を、CNF分散液8に変更した以外は、実施例14と同様に含水チョコレートの製造および試験を行った。
【0101】
<比較例3>
添加用セルロースナノファイバーを用いなかった以外は、実施例14と同様に含水チョコレートの製造および試験を行った。
【0102】
<比較例4>
添加用セルロースナノファイバーの代わりに、カルボキシメチル化セルロース(商品名:F350HC-4、日本製紙株式会社製)を用いた以外は、実施例14と同様に含水チョコレートの製造および試験を行った。
【0103】
【表2】
【0104】
表2の結果から明らかなように、セルロースナノファイバーを含有している実施例14及び実施例15では、セルロースナノファイバーを含有していない比較例3に対し、保形性が良好であった。また、カルボキシメチル化セルロースを用いた比較例4に対し、保形性および口どけが良好であることがわかる。
【0105】
次に、「化粧品」の実施例を示す。以下の実施例においてCNF分散指数は実施例1と同様に測定した。
<CNF分散液10の製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)780mgと臭化ナトリウム75.5gを溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。
上記の工程で得られた酸化パルプを水で1.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、セルロースナノファイバー分散液(CNF分散液10)を得た。得られた繊維は、平均繊維径が3nm、アスペクト比が250であった。また、CNF分散液10のCNF分散指数は0であった。
【0106】
<CNF分散液11の製造>
パルプを混ぜることが出来る撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙株式会社製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で111g加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分間撹拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算)添加した。30分間撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシメチル化したパルプを得た。その後、カルボキシメチル化したパルプを水で固形分1%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、150MPaの圧力で5回処理することにより解繊し、カルボキシメチル化セルロース繊維の水分散液(CNF分散液11)を得た。得られた繊維は、平均繊維径が15nm、アスペクト比が150であった。また、CNF分散液11のCNF分散指数は0であった。
【0107】
<CNF分散液12の製造>
パルプを撹拌することができるパルパーに、パルプ(NBKP、日本製紙(株)製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で24g加え、パルプ固形濃度が15%になるように水を加えた。その後、30℃で30分間撹拌した後に70℃まで昇温し、カチオン化剤として3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを200g(有効成分換算)添加した。1時間反応した後に、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカチオン置換度0.05のカチオン変性されたセルロースを得た。その後、カチオン変性したパルプを固形濃度1%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、140MPaの圧力で2回処理することにより、セルロースナノファイバー分散液(CNF分散液12)を得た。得られた繊維は、平均繊維径が25nm、アスペクト比が150であった。また、CNF分散液12のCNF分散指数は0であった。
【0108】
<実施例16>
上記で得られたCNF分散液10を105℃の乾燥機にて乾燥し、水分量7%のCNF乾燥固形物を得た。得られたCNF乾燥固形物を乾式ミルにて粉砕して、添加用セルロースナノファイバーとした。
【0109】
市販の化粧水に、上記添加用セルロースナノファイバーを混ぜ合わせ、3000rpmで60分間撹拌し、セルロースナノファイバーを含有した化粧水を製造した。なお、添加用セルロースナノファイバーの添加量(絶乾質量)は、化粧水99.9%に対し0.1質量%であった。得られたセルロースナノファイバー含有化粧水について、べたつき、液ダレに関する試験を行った。
【0110】
<液ダレ>
化粧水を肌に吹き付け、以下の基準で目視評価した。結果を表3に示す。
A:化粧水が肌からたれず、肌に止まっている
B:化粧水が肌からしばらくたれないが、数分たつと肌から流れ落ちる
C:化粧水が肌からたれ、すぐに流れ落ちてしまう。
【0111】
<べたつき>
10人のパネラーに対して化粧水を肌に吹き付け、べたつきについて、下記の5点法にて評価をさせ、その平均点を評価点数とした。結果を表3に示す。
5点:肌にべたつかずサラサラしている。
3点:多少肌にべたつくがサラサラしている。
1点:肌にべたつき、不快である。
【0112】
<実施例17>
実施例16のCNF分散液10を、CNF分散液11に変更した以外は、実施例16と同様にセルロースナノファイバーを含有化粧水の製造および試験を行った。
【0113】
<比較例4>
添加用セルロースナノファイバーを用いなかった以外は、実施例16と同様に化粧水の製造および試験を行った。
【0114】
<比較例5>
添加用セルロースナノファイバーの代わりに、カルボキシメチル化セルロース(商品名:F350HC-4、日本製紙株式会社製)を用いた以外は、実施例16と同様に化粧水の製造および試験を行った。
【0115】
【表3】
【0116】
表3の結果から明らかなように、セルロースナノファイバーを含有している実施例16及び実施例17では、セルロースナノファイバーを含有していない比較例4、カルボキシメチル化セルロースを用いた比較例5に対し、液ダレ、べたつきが良好であることがわかる。
【0117】
次に、「ゴム組成物」の実施例を示す。以下の実施例においてCNF分散指数は実施例1と同様に測定した。
<CNF分散液13の製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)780mgと臭化ナトリウム75.5gを溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。
上記の工程で得られた酸化パルプを水で1.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、セルロースナノファイバー分散液(CNF分散液13)を得た。得られた繊維は、平均繊維径が3nm、アスペクト比が250であった。また、CNF分散液13のCNF分散指数は0であった。
【0118】
<CNF分散液14の製造>
パルプを混ぜることが出来る撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙株式会社製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で111g加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分間撹拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算)添加した。30分間撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシメチル化したパルプを得た。その後、カルボキシメチル化したパルプを水で固形分1%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、150MPaの圧力で5回処理することにより解繊し、カルボキシメチル化セルロース繊維の水分散液(CNF分散液14)を得た。得られた繊維は、平均繊維径が15nm、アスペクト比が150であった。また、CNF分散液14のCNF分散指数は0であった。
【0119】
<CNF分散液15の製造>
パルプを撹拌することができるパルパーに、パルプ(NBKP、日本製紙(株)製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で24g加え、パルプ固形濃度が15%になるように水を加えた。その後、30℃で30分間撹拌した後に70℃まで昇温し、カチオン化剤として3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを200g(有効成分換算)添加した。1時間反応した後に、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカチオン置換度0.05のカチオン変性されたセルロースを得た。その後、カチオン変性したパルプを固形濃度1%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、140MPaの圧力で2回処理することにより、セルロースナノファイバー分散液(CNF分散液15)を得た。得られた繊維は、平均繊維径が25nm、アスペクト比が150であった。また、CNF分散液15のCNF分散指数は0であった。
【0120】
<実施例18>
上記で得られたCNF分散液13を添加用セルロースナノファイバーとした。ゴムラテックス(商品名:HAラテックス、レヂテックス社、固形分濃度65質量%)100gの絶乾固形分に対して、添加用セルロースナノファイバーを絶乾相当で5質量%混合し、TKホモミキサー(8000rpm)で60分間撹拌して混合物を得た。この混合物を、70℃の加熱オーブン中で10時間乾燥させることにより、マスターバッチを得た。
【0121】
上記の方法により得たマスターバッチに対し、酸化亜鉛、ステアリン酸をマスターバッチ中のゴム成分に対しそれぞれ6質量%、0.5質量%混合し、オープンロール(関西ロール株式会社製)にて、30℃で10分間混練することによって混練物を得た。この混練物に対し、硫黄および加硫促進剤(BBS、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド)を、混練物中のゴム成分に対しそれぞれ3.5質量%、0.7質量%加え、オープンロール(関西ロール株式会社製)を用い、30℃で10分間混練して、未加硫ゴム組成物のシートを得た。得られた未加硫ゴム組成物のシートを、金型にはさみ、150℃で10分間プレス加硫することにより、厚さ2mmの加硫ゴムシート(加硫ゴム組成物)を得た。得られた加硫ゴムシートを、所定の形状の試験片に裁断し、JIS K6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に従い、引張強度を示すものとして、100%ひずみ時、および300%ひずみ時における応力、破断強度をそれぞれ測定した。各々の数値が大きい程、加硫ゴム組成物が良好に補強されており、機械強度に優れることを示す。
【0122】
本例では、ゴムマトリックス中でのセルロースナノファイバーの分散が良好であり、表4に示すとおり優れた機械的特性が得られた。
【0123】
<実施例19>
実施例18のCNF分散液13を、CNF分散液14に変更した以外は、実施例18と同様に加硫ゴムシートを得た。また、得られた加硫ゴムシートを評価した。
【0124】
<実施例20>
実施例18のCNF分散液13を、CNF分散液15に変更した以外は、実施例18と同様に加硫ゴムシートを得た。また、得られた加硫ゴムシートを評価した。
【0125】
<比較例6>
添加用セルロースナノファイバーを用いなかった以外は、実施例18と同様に加硫ゴムシートを得た。また、得られた加硫ゴムシートを評価した。
【0126】
<比較例7>
添加用セルロースナノファイバーの代わりに、カルボキシメチル化セルロース(商品名:F350HC-4、日本製紙株式会社製)を用いた以外は、実施例18と同様に加硫ゴムシートを得た。また、得られた加硫ゴムシートを評価した。
【0127】
【表4】
【0128】
表4の結果から明らかなように、セルロースナノファイバーを含有している実施例18、実施例19及び実施例20では、セルロースナノファイバーを含有していない比較例6、カルボキシメチル化セルロースを用いた比較例7に対し、ゴム物性が良好であることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン変性セルロースナノファイバー水分散液であって、
CNF分散指数が3500以下であり、
前記CNF分散指数は、
(1)1.0質量%のセルロースナノファイバー水分散液を準備する工程と、
(2)前記工程(1)で準備したセルロースナノファイバー水分散液1gに、平均粒子径が0.03μm以上1μm以下の有色顔料を5~20質量%含有する色材を添加し、ボルテックスミキサーにて1分間撹拌する工程と、
(3)前記工程(2)で得られた色材を含有するセルロースナノファイバー水分散液の膜厚が0.15mmになるように二枚のガラス板に挟む工程と、
(4)前記工程(3)で得られた二枚のガラス板に挟んだ色材を含有するセルロースナノファイバー水分散液の膜を顕微鏡(倍率:100倍)で観察する工程と、
(5)前記工程(4)において、3mm×2.3mmの範囲に存在する凝集物の長径を測定し、観察された凝集物を、150μm以上の長径を有する特大と、100μm以上150μm未満の長径を有する大と、50μm以上100μm未満の長径を有する中と、20μm以上50μm未満の長径を有する小とに分類する工程と、
(6)前記工程(5)で分類した凝集物の個数を数え、式1:
CNF分散指数=(特大の個数×512+大の個数×64+中の個数×8+小の個数×1)÷2
によりCNF分散指数を算出し、セルロースナノファイバー水分散液の分散性を評価する工程を含むことを特徴とするセルロースナノファイバー分散液の評価方法により得られる、
アニオン変性セルロースナノファイバー水分散液。
【請求項2】
請求項1に記載のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液または当該水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する、食品。
【請求項3】
請求項1に記載のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液または当該水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する、団子。
【請求項4】
請求項1に記載のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液または当該水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する、含水チョコレート。
【請求項5】
請求項1に記載のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液または当該水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する、化粧品。
【請求項6】
請求項1に記載のアニオン変性セルロースナノファイバー水分散液または当該水分散液由来のセルロースナノファイバーを含有する、ゴム組成物。