(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186711
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】手術用カニューレ並びに手術用カニューレを識別する関連のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 90/98 20160101AFI20221208BHJP
【FI】
A61B90/98
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022154314
(22)【出願日】2022-09-28
(62)【分割の表示】P 2020020467の分割
【原出願日】2015-03-17
(31)【優先権主張番号】61/954,318
(32)【優先日】2014-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ガーバス,ブランドン アール
(72)【発明者】
【氏名】トムソン,アレン
(72)【発明者】
【氏名】クロム,ジャスティン
(57)【要約】
【課題】手術システムのカニューレを識別するシステムを提供する。
【解決手段】手術システムのカニューレ500は、手術システムへのカニューレの取り付け位置で手術システムによって感知されるべき位置に位置付けられた磁石を含み得る。磁石の存在、及び、磁石の極性のうちの少なくとも一方は、カニューレに関する識別情報をもたらすために、カニューレの取り付け位置で感知される。典型的な実施例は、遠隔操作手術システムの患者側カートを更に含む。患者側カートは、基部と、主柱と、主柱に接続されたアーム520とを含む。アームは、カニューレを受けるマウント522と、取り付けられたカニューレに関する識別情報を受けるためにカニューレにおける識別装置の磁石を感知するリーダとを含んでいてもよい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術システムのカニューレを識別するシステムであって:
マニピュレータアームであって、前記マニピュレータアームに取り付けられる手術器具の動きを操作するように構成され、カニューレ取り付け構造を有する、マニピュレータアームと;
カニューレであって:
前記カニューレの近位端にある開口と、
前記開口から遠位に延びるチューブ部と、
前記カニューレを前記マニピュレータアームに取り外し可能に取り付けるために側方に外向きに突出し、前記マニピュレータアームの前記カニューレ取り付け構造と係合可能である突出部を有する取り付け部であって、前記取り付け部の中心長手軸は、前記チューブ部の中心長手軸から離間されている、取り付け部と、
前記取り付け部にある識別装置であって、配列の複数の位置に対する1つ又は複数の磁石の配置を有する、識別装置と;
を有し、
前記開口及び前記チューブ部は、前記取り付け構造との前記取り付け部の係合位置において、前記カニューレを通る挿入のために医療器具を取り外し可能に受け入れるように構成され、
前記カニューレに関する識別情報が、前記配列の前記複数の位置に対する前記1つ又は複数の磁石の前記配置に対応し、前記配置は、前記複数の位置のそれぞれに対して、磁石がないか、磁石の存在及び磁場極性の組み合わせを含む、
カニューレと;を有する、
システム。
【請求項2】
前記配列は平面配列であり;
前記複数の位置のそれぞれは、前記1つ又は複数の磁石のうちの少なくとも1つの磁石の磁場の向きが前記平面配列の面に対して垂直であるように、前記少なくとも1つの磁石を受けるように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記配列は平面配列であり;
前記複数の位置のそれぞれは、前記1つ又は複数の磁石のうちの少なくとも1つの磁石の磁場の向きが前記平面配列の面に対して平行であるように、前記少なくとも1つの磁石を受けるように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記磁石の存在及び磁場極性の組み合わせを含む前記識別情報は、前記磁場極性の方向と所定の基準方向との間の角度に関する情報をさらに含む、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記マニピュレータアームにあるリーダをさらに有し、
前記リーダは、前記カニューレの前記取り付け部が前記マニピュレータアームと係合されている状態で前記識別装置に対して磁気感知近さにある、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記リーダは、磁場センサ及び磁場極性センサを有する、
請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記磁場極性センサは、第1の単極性磁場極性センサ及び第2の単極性磁場極性センサを含み、
前記第1の単極性磁場極性センサは、N極性磁場を感知するように構成され、
前記第2の単極性磁場極性センサは、S極性磁場を感知するように構成される、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記磁場極性センサは、N極性磁場及びS極性磁場の両方を感知するように構成されるデュアル出力磁場極性センサを含む、
請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記カニューレに関する前記識別情報を記憶された情報と比較するように構成されるコントローラをさらに有する、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記カニューレに関する前記識別情報が前記記憶された情報と合致しない状態についてユーザに通知するためのフィードバックを提供するように構成される、
請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記カニューレに関する前記識別情報が前記記憶された情報と合致しない状態で前記マニピュレータアーム及び前記手術器具の使用を妨げるように構成される、
請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記カニューレ取り付け構造は、凹部を有し、前記カニューレ取り付け構造との前記取り付け部の係合状態において、前記取り付け部の前記突出部は前記凹部内に受け入れられる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記取り付け部の前記突出部は、略長方形断面を有する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記識別装置は、前記取り付け部の軸方向を向く面に位置する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記リーダは、前記カニューレが前記マニピュレータアームに取り付けられている状態で、前記カニューレを通した医療器具の取り外し可能な挿入を可能にするように前記カニューレの前記開口がアクセス可能であるように、位置する、
請求項5に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、参照によりその全部が本書で援用される2014年3月17日に出願された米国仮出願第61/954318号の利益を主張する。
【0002】
本開示の態様は、手術用カニューレ、並びに、手術用カニューレを識別する関連のシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
手動で操作される(例えば、腹腔鏡、腹腔鏡(thorascopic)の)手術器具ばかりでなく遠隔操作の手術器具をも含み得る、遠隔で制御される手術器具は、しばしば、低侵襲医療処置で用いられる。外科的処置の際に、カニューレを通って延びる手術器具は、患者の体内に挿入され、且つ、手術部位での処置を行うために遠隔で操縦される。例えば、遠隔操作手術システムにおいて、カニューレ及び手術器具は、患者側カートのマニピュレータアームに搭載され、外科医コンソールでの遠隔操作を介して遠隔で操縦され得る。カニューレは、種々のタイプの外科的処置に有用な様々な構成を有していてもよい。これらの種々のカニューレの構成は外科的処置に関して有用で且つ効果的であったが、それでもなお、カニューレを自動的に識別するための改良を含め、カニューレとそれらを用いる手術システムとにおける更なる改良が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国仮出願第61/954318号
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0325033号
【特許文献3】米国特許出願公開第2013/0325031号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の典型的な実施例は、上述の課題の1つ又は複数を解決し、且つ/或いは、上述の望ましい特徴の1つ又は複数を実証し得る。他の特徴及び/又は利点は、以下の説明から明らかとなり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
少なくとも1つの典型的な実施例に従って、手術システムのカニューレは、手術システムに対するカニューレの搭載位置において、手術システムによって感知されるべき位置に位置付けられた磁石を含む。磁石の存在、及び、磁石の極性の少なくとも1つは、カニューレに関する識別情報を提供するために、カニューレの搭載位置において感知される。
【0007】
少なくとも1つの典型的な実施例に従って、遠隔操作手術システムの患者側カートは、基部、主柱、及び、主柱に接続されたアームを含む。アームは、カニューレを受けるマウント(取り付け部)と、搭載されたカニューレに関する識別情報を受けるためにカニューレにおける識別装置の磁石を感知するリーダ(読み取り機)とを含み得る。
【0008】
追加的な目的、特徴、及び/又は利点は、以下の説明で部分的に明記され、且つ、一部はその説明から明らかとなり、或いは、本開示及び/又は請求項の実施により理解され得る。これらの目的及び利点の少なくともいくつかは、添付の請求項で特に指摘された要素及び組み合わせによって実現され且つ取得され得る。
【0009】
以上の一般的な説明と以下の詳細な説明の双方は、単に典型的且つ説明的なものであり、請求項を限定するものではなく、むしろ請求項は、均等物を含め、その範囲の全体に権利が与えられるべきであることが理解されるべきである。
【0010】
本開示は、以下の詳細な説明のみから、或いは、添付図面と共に以下の詳細な説明から理解され得る。図面は、本開示の更なる理解をもたらすために含まれており、且つ、この明細書の一部に組み込まれてこの明細書の一部を構成する。図面は、本教示の1又は複数の典型的な実施例を示し、明細書と共に、特定の原理及び動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】典型的な実施例に従った患者側カートの斜視図である。
【
図2】典型的な実施例に従ったカニューレの側面図である。
【
図3】典型的な実施例に従った、湾曲チューブを有するカニューレの側面図である。
【
図4】典型的な実施例に従った、カニューレと、カニューレが接続されるアームの斜視図である。
【
図5】典型的な実施例に従った、識別装置を含むカニューレの底面斜視図である。
【
図6】典型的な実施例に従った、患者側カートのマニピュレータアームに接続されるカニューレ取り付け部の部分垂直断面図である。
【
図7】別の典型的な実施例に従った、識別装置を備えたカニューレの底面斜視図である。
【
図8】典型的な実施例に従った、識別装置の上面概略図である。
【
図9】典型的な実施例に従った、識別装置と共に使用されるリーダの上面概略図である。
【
図10】典型的な実施例に従った、4つのセンサを含むセンサグループの上面概略図である。
【
図11】典型的な実施例に従った、ホール効果装置に関する電圧と磁束の概略グラフである。
【
図12】典型的な実施例に従った、3つのセンサを含むセンサグループの上面概略図である。
【
図13】典型的な実施例に従った、2つのセンサを含むセンサグループの上面概略図である。
【
図14】典型的な実施例に従った、1つのセンサを含むセンサグループの上面概略図である。
【
図15】典型的な実施例に従った、方向付けられた磁石を含む識別装置の斜視図である。
【
図16】典型的な実施例に従った、複数の磁石位置の配列を含むカニューレの底面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この明細書と典型的な実施例を示す添付図面は限定的なものとして解釈されてはならない。均等物を含むこの明細書及び請求項の範囲から逸脱することなく、種々の機械的、合成的、構造的、電気的、及び動作的な変更が行われてもよい。いくつかの例では、よく知られた構造及び技術は、開示内容を曖昧にしないよう、詳細には図示されておらず或いは説明されていない。2以上の図面における同様の番号は、同一の或いは同様の要素を表す。更に、一実施例を参照して詳細に説明された要素及びそれらに関連する特徴は、現実的であればいつでも、それらが具体的には図示されておらず或いは説明されていない他の実施例に含まれていてもよい。例えば、ある要素が一実施例を参照して詳細に説明されており且つ第2の実施例を参照しては説明されていない場合、それでもなお、その要素は、その第2の実施例に含まれるものとして主張され得る。
【0013】
この明細書及び添付の請求項のため、別段の指示がない限り、明細書及び請求項で用いられる数量、割合、又は比率を表す全ての数字、及び他の数値は、それらが用語“約”によってまだ修飾されていない場合には、全ての例において用語“約”によって修飾されているものと理解されるべきである。したがって、反対の意味が示されていない限り、以下の明細書及び添付の請求項で説明される数値パラメータは、得ようとしている望ましい特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、請求項の範囲に対する均等論の適用を制限するための試みではなく、数値パラメータのそれぞれは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して且つ通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0014】
この明細書及び添付の請求項で用いられているように、単数形の冠詞、及び、何れの単語の単数としての何れの使用も、明示的に且つ明白に単一の指示対象に限定されていない限り、複数の指示対象を含む点に留意すべきである。本書で用いられているように、用語“含む”及びその文法上の変種は、非限定的であることが意図されており、リストにおける項目の列挙は、代用され得る或いは列挙された項目に追加され得る他の同様の項目を除外するものではない。
【0015】
更に、この明細書における専門用語は開示内容又は請求項を限定することを目的としていない。例えば、“真下の”、“下の”、“より下の”、“上の”、“より上の”、“近位の”、“遠位の”等のような空間的に相対的な語は、図面の幾何学的配置で示されるように、1つの要素又は特徴の別の要素又は特徴との関係を説明するために用いられてもよい。これらの空間的に相対的な語は、図面で示された位置(すなわち場所)及び向き(すなわち回転配置)に加え、使用中又は動作中の装置の別の位置及び向きを包含することを目的としている。例えば、別の要素又は特徴の“下に”或いは“真下に”あると説明されていた要素は、図面における装置がひっくり返された場合には、その別の要素又は特徴の“上に”或いは“真上に”あることとなるであろう。このように、典型的な用語“下に”は、“上に”及び“下に”の双方の位置及び向きを包含し得る。装置は、別の方法で方向付けられてもよく(90度又は他の方向に回転させられてもよく)、本書で用いられる空間的に相対的な記述は状況に応じて適切に解釈されてもよい。手術器具の相対的な近位方向及び遠位方向は図面においてラベル付けされている。
【0016】
カニューレが自動的に検出(例えば、カニューレの存在の判定)され且つ識別(例えばカニューレのタイプの判定)されるカニューレ識別システム及び方法を提供することが望ましい。例えば、外科的処置の際の使用のために手術システムの構成要素にカニューレが取り付けられる場合のようにカニューレが手術システムで使用される場合、手術システムは、そのカニューレに関する識別情報を自動的に検出するセンサを含み得る。カニューレは、識別情報がそのカニューレの種々の態様に関する情報を含むように、識別情報に関する種々の数の一意的な組み合わせが提供され得るようにする装置を含み得る。その装置は、読み取り機械によって自動的に検出される形式で身元証明物(identification)を含み得る。
【0017】
本開示の種々の典型的な実施例は、手術システムのカニューレを識別するのに有用な識別装置、システム、及び方法を検討する。カニューレは、近位端を形成するボウル部、遠位端を形成するチューブ、及び、カニューレを患者側カートに接続するために患者側カートのアームに接続されるように構成された取り付け部を含み得る。カニューレは、例えば読み取り機械によって自動的に取得される形式でカニューレに関する識別情報を含む識別装置を含み得る。1つの実施例によると、識別装置は、取り付け部に位置付けられている。識別装置は、磁石における所定のパラメータを用いて識別情報を表す磁石を含み得る。その磁石は、サマリウムコバルト磁石、又は、当業者によく知られた他の永久磁石材料であってもよい。識別装置は、複数の磁石位置と、それらの磁石位置の少なくとも1つに位置付けられる磁石とを含み得る。識別情報は、それらの磁石位置における磁石の存否、及び、その磁石の磁場の極性によって表され得る。識別情報は、チューブの長さ、チューブの径、カニューレの材料、チューブが真っ直ぐか或いは湾曲部分を含むか、及び/又は、エンドエフェクタを備えた手術器具のためにカニューレが構成されているか或いは撮像器具のために構成されているか、を含み得る。
【0018】
また、本開示の種々の典型的な実施例は、カニューレの識別装置からの識別情報を取得するためのリーダを含む手術システムの患者側カートを検討する。そのカートは、基部、主柱、及び、カニューレが接続され得るアームを含む。例えば、リーダは、例えばホール効果装置のような、磁石を検出するように構成された少なくとも1つのセンサを含む。
【0019】
リーダは、少なくとも1つのセンサグループを含み得る。各センサグループは、複数のセンサを含む。1つの実施例では、各センサグループは、識別装置の対応する磁石位置における磁石の極性を検出するための全極性の極性センサを含む。別の実施例では、センサグループのそれぞれは、識別装置の対応する磁石位置における磁石の存在を検出するための存在センサ、及び、その磁石の選択的に予め決定された磁極を検出するための極性センサを含む。センサグループはそれぞれ、複数の存在センサと2つの極性センサを含んでいてもよい。極性センサの1つはN極性磁場を検出し、極性センサの1つはS極性磁場を検出する。存在センサは全極性センサであってもよく、極性センサは単極性センサであってもよい。別の例では、センサは、識別装置の磁石の磁場の角度配置を検出するように構成された磁場方向センサを含む。
【0020】
本書で説明される典型的な実施例におけるリーダは、例えば患者側カートのマニピュレータアームのような手術システムの一部として説明され得るが、本書で説明される典型的な実施例におけるリーダは、手動装置として使用されてもよい。例えば、リーダは、手術システムを用いることなく種々のカニューレを迅速に識別するためにユーザによって使用されるハンドヘルドの装置である。例えば、ユーザは、タイプに応じてカニューレを分類するため等、外科的処置の前に或いは後にカニューレを識別することを望むかもしれない。
【0021】
ここで
図1を参照すると、遠隔操作手術システムの患者側カート100の典型的な実施例が示されている。遠隔操作手術システムは、例えば参照によりその全部が援用される、2013年12月5日に公開された“Multi-Port Surgical Robotic System Architecture”というタイトルの米国特許出願公開第2013/0325033号、及び、2013年12月5日に公開された“Redundant Axis and Degree of Freedom for Hardware-Constrained Remote Center Robotic Manipulator”というタイトルの米国特許出願公開第2013/0325031号に記載されているような補助的な制御/視覚カート(図示せず。)ばかりでなく、患者側カート100の器具を制御するためのユーザからの入力を受ける外科医コンソール(図示せず。)を更に含んでいてもよい。本開示の原理が利用され得る遠隔操作手術システムの非限定的な典型的な実施例は、カリフォルニア州サニーベールのIntuitive Surgical社から入手できるda Vinci(登録商標) Si(モデル番号IS3000) da Vinci(登録商標) Si Surgical System、Single Site da Vinci (登録商標) Surgical System、又は、da Vinci(登録商標) Xi Surgical Systemを含む。
【0022】
患者側カート100は、ベース102、主柱(main column)104、及び、主柱104に接続されたメインブーム106を含む。また、患者側カート100は、メインブーム106にそれぞれ接続される複数のアーム110、111、112、113を含む。アーム110、111、112、113はそれぞれ、アーム110に取り付けられるものとして図示されている器具130が搭載され得る器具搭載部120を含む。アーム110、111、112、113の一部は、外科医コンソールのところにいるユーザによってもたらされる命令に従って外科的処置の際に操縦され得る。典型的な実施例では、外科医コンソールから発せられた1若しくは複数の信号又は1若しくは複数の入力は、制御/視覚カートに伝えられる。制御/視覚カートは、その1若しくは複数の入力を解釈し、且つ、器具130(
図1ではそのような器具が1つだけ搭載されている。)、及び/又は、患者側カート100で器具130が結合されるところであるアーム110の一部の操縦をもたらすために患者側カート100に伝えられる1若しくは複数の命令又は1若しくは複数の出力を生成する。
【0023】
器具搭載部120は、作動インタフェースアセンブリ122及びアクセサリマウント124を含む。典型的な実施例に従って、器具130のシャフト132は、アクセサリマウント124を通って(外科的処置の際に手術部位まで)延び、また、器具の力伝達機構134は、作動インタフェースアセンブリ122と接続する。アクセサリマウント124は、カニューレ(
図1では図示せず。)を保持するように構成される。外科的処置の際に、器具130のシャフト132はそのカニューレを通って手術部位まで延び得る。作動インタフェースアセンブリ122は、当業者がよく知っているように、外科医コンソールでの入力命令に応答するように且つ器具130を作動させるために力伝達機構134に力を伝えるように制御される種々の駆動機構及び他の機構を含む。
【0024】
図1の典型的な実施例は見易さのためにアーム110のみに取り付けられた器具130を示すが、器具は、アーム110、111、112、113の何れに取り付けられてもよく、それぞれに取り付けられていてもよい。器具130は、エンドエフェクタを備えた手術器具であってもよく、或いは、遠隔の手術部位の情報(例えば画像(visualization)、電気生理学的活性、圧力、流量、及び/又は他の検知データ)を提供するために外科的処置の際に利用される内視鏡的な撮像器具若しくは他の感知器具であってもよい。
図1の典型例では、エンドエフェクタを備えた手術器具又は撮像器具は、アーム110、111、112、113の何れに取り付けられていてもよく、何れと共に使用されてもよい。しかしながら、本書で説明される実施例は、
図1の典型的な実施例に限定されるものではなく、他の様々な遠隔操作手術システムの構成が、本書で説明される典型的な実施例と共に利用されてもよい。
【0025】
カニューレは、様々なタイプの外科的処置に有用な様々な異なる構成を有していてもよい。例えば、カニューレは、数あるパラメータの中でも特に、それらが用いられるのがどのタイプの器具であるかに応じて変化する長さ、径、材料、曲率、及び構成を有していてもよい。結果として、特に、変化し得るカニューレの様々なパラメータの実現可能な組み合わせを検討する場合に、多くの異なるカニューレ構成が可能となる。この検討を考慮すると、様々なカニューレのタイプを自動的に識別できるシステムを提供することが望ましいであろう。例えば、カニューレが患者側カートのアームに取り付けられる場合等に、様々なカニューレのタイプを自動的に識別できる遠隔操作手術システムを提供することが望ましいであろう。さらに、カニューレの識別装置が丈夫で且つ洗浄処置を含む反復使用に耐えることができるものであれば望ましいであろう。
【0026】
図2を見ると、カニューレ300の典型的な実施例の側面図が示されている。カニューレ300は、取り付け部310、カニューレ300の近位端304を形成するボウル部302、及び、ボウル部302からカニューレ300の遠位端308まで延びるチューブ306を含んでいてもよい。本開示は、端部(例えば遠位端308)にあるより小さな開口に通じる一端(例えば近位端304)に広い開口を持つ漏斗形状を有するボウル部を検討する。ボウル部はチューブ部に接続されている。近位方向及び遠位方向は、
図2の向きに関してラベル付けされている。
図2の典型的な実施例で示されるように、チューブ306は長さLを有していてもよく、遠位端308は径Dを有していてもよい。それらのそれぞれは、当業者がよく知っているように、カニューレ300の所望の用途に応じて変化し得る。さらに、
図2の典型的な実施例で示されるように、チューブ306は真っ直ぐであるが、本書で説明される典型的なカニューレの実施例は、真っ直ぐなチューブに限定されない。例えば、
図3の典型的な実施例で示されるように、カニューレ400は、取り付け部410、ボウル部402、及び、湾曲チューブ404(例えば、その長さの全部又は一部に沿って湾曲した長手軸を有するチューブ)を含む。
【0027】
カニューレ300は、患者の体にある開口部を通じて手術部位に挿入され得る。例えば、カニューレの遠位端308は、例えば切開部、自然開口部、又はポート等の開口部を通じて手術部位に挿入され得る。
図1の典型的な実施例における器具130のような手術器具は、カニューレ300を通じて手術部位に挿入され得る。例えば、器具は、カニューレの近位端304に挿入され、カニューレ300のボウル部302、チューブ306、及び遠位端308を通って延び、手術部位に至ってもよい。
【0028】
典型的な実施例によると、カニューレ300は、
図1の典型的な実施例における患者側カート100のアーム110、111、112、又は113のアクセサリマウント124のような、患者側カートのアームにカニューレを接続するためのアクセサリマウントに取り付けられ得る。例えば、カニューレ300は、カニューレ300をアームのアクセサリマウントに接続するための取り付け部310を含む。典型的な実施例によると、取り付け部310は、例えば、アームのアクセサリマウントに挿入され且つそれによって保持されるように構成された突起である。
図2の典型的な実施例で示されるように、取り付け部310は、カニューレ300のボウル部302の一部であり、或いはそうでなければ、ボウル部302に接合されている。
【0029】
図4を見ると、カニューレ500の典型的な実施例、及び、患者側カートのアーム520の一部が非接続状態で示されている。アーム520は、例えば、
図1の典型的な実施例における患者側カート100のアーム110、111、112、113のうちの1つである。カニューレ500は、本書の種々の典型的な実施例にしたがって構成されてもよく、また、例えば、取り付け部510、近位端504を形成するボウル部502、及び、ボウル部502から遠位端508に延びるチューブ部506を含んでいてもよい。カニューレ500は、例えば、
図1の典型的な実施例におけるアクセサリマウント124のような、アーム520のアクセサリマウント522に取り付け部510を挿入することによってアーム520に接続されてもよい。
【0030】
典型的な実施例によると、アーム520のアクセサリマウント522は、無菌アダプタ530を含む。無菌アダプタ530は、カニューレ500のアーム520への取り付けのためにカニューレ500の取り付け部510が挿入され得る凹部532を含んでいてもよい。無菌アダプタ530は、無菌領域と非無菌領域との間の境界をもたらし得る。例えば、無菌アダプタ530は、カニューレ500とアーム520との間に位置付けられ、それ故に、外科的処置の際に少なくともその一部が無菌エリアに位置付けられるカニューレ500と、外科的処置の際に非無菌エリアに存在し得るアーム520との間の障壁(barrier)を維持する。典型的な実施例によると、(
図4ではその一部が破線を用いて概略的に示されている)手術用ドレープ534は、カニューレ500の少なくとも一部が位置付けられる無菌サイド536と、アーム520が位置付けられる非無菌サイド538との間の障壁を形成するために、無菌アダプタ530に接続される。
【0031】
上述のように、カニューレの構成における種々のパラメータは変更可能であり、カニューレのパラメータの種々の実現可能な組み合わせが許容され得る。それ故に、カニューレが手術システムに接続される場合等に、カニューレが自動的に手術システムによって識別され得るようにカニューレが識別装置を含むことが望ましいこととなり得る。識別装置は、カニューレの構成に関する情報を含み、機械リーダが自動的にその情報を取得できるようにする。例えば、識別情報は、カニューレの長さ、径、材料に関する情報、カニューレのチューブが真っ直ぐか湾曲しているか、カニューレがエンドエフェクタを備えた手術器具のためのものであるか或いは撮像器具のためのものであるか、及び/又は、他のパラメータを含んでいてもよい。
図5を見ると、
図4の典型的な実施例におけるカニューレ500の斜視図が示されている。典型的な実施例によると、カニューレ500は、カニューレ500の取り付け部510に識別装置を含む。例えば、識別装置は、取り付け部510の遠位部512に位置付けられている。しかし、本開示に従った典型的な実施例は、遠位部512に位置付けられた識別装置に限定されない。
【0032】
典型的な実施例によると、カニューレの識別装置は、手術システムのリーダと情報をやり取りする。例えば、カニューレの取り付け部が手術システムのアームに取り付けられると、アームに位置付けられているリーダは、取り付け部にある識別装置と情報をやり取りし、且つ、識別装置からカニューレに関する識別情報を自動的に取得する。それ故に、
図4の典型的な実施例において、カニューレ500の取り付け部510が手術用アダプタ530等を介してアーム520に取り付けられると、アームに位置付けられているリーダは、取り付け部510に位置付けられている識別装置からカニューレ500に関する識別情報を取得し得る。
【0033】
図6は、患者側カートのアーム620に取り付けられた取り付け部610の部分断面図を示す。取り付け部610及びアーム620は、カニューレ500の取り付け部510とアーム520のように、
図4の典型的な実施例に従って配置され得る。それ故に、
図6の典型的な実施例では簡単にするために無菌アダプタが図示されていないが、
図4の典型的な実施例における無菌アダプタ530とドレープ534に関して説明されたように、無菌アダプタは、以下で説明される識別装置とリーダの動作原理を変えることなく、取り付け部610とアーム620との間に位置付けられ得る。
【0034】
図6で示されるように、取り付け部610は、カニューレに関する識別情報を提供するための識別装置614を含み得る。アーム620は、識別装置614から識別情報を受けるためのリーダ622を含み得る。典型的な実施例によると、リーダ622は、識別装置614から識別情報を受けるためのセンサ624を含む。リーダ622は、例えば識別装置614に関する単一センサ624のような単一のセンサを含み得るが、本書に記載される典型的な実施例は、1つのリーダに関する単一のセンサに限定されない。むしろ、典型的な実施例によると、リーダ622は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、或いはそれ以上のセンサ624を含む。例えば、リーダ622は、以下で説明されるように、アレイ配置の複数のセンサを含む。リーダ622は、カニューレから取得される識別情報を含む信号を伝えるためといった、リーダ622から手術システムに1又は複数の信号を伝えるための1又は複数の伝送線626を更に含み得る。
【0035】
典型的な実施例に従った識別装置は、機械によって自動的に読み取られる形式等、様々な方法で識別情報を提供し得る。典型的な実施例によると、識別装置は、リーダによって感知される磁石を含む。リーダによって感知される磁極は、識別情報としての役割を果たす。例えば、磁石は、その磁石の所定の磁極がリーダと向かい合うように、カニューレ内に位置付けられ得る。典型的な実施例によると、所望の極性(N極又はS極)を有する磁石の端部は、リーダの方を向くようにカニューレに位置付けられ得る。
図7の典型的な実施例で示されるように、カニューレ700は、識別装置714としての磁石714を含む。
図7では、磁石714は、取り付け部710が患者側カートのアームに接続されるときに、
図6の典型的な実施例におけるリーダ622のようなリーダと磁石714の所定の極が向かい合うように、取り付け部710の表面716から突出している。
図7の典型的な実施例では表面716から突出している単一の磁石714が示されているが、識別装置は、表面716から突出する複数の磁石714を含み得る。例えば、
図16の典型的な実施例で示されるように、カニューレ1600は、1又は複数の磁石のための複数の磁石位置1614を含む配列1612を有する取り付け部1610を含み得る。表面716から突出するように識別装置714を位置付けることは、例えば17-4タイプのステンレス鋼のような磁性金属でカニューレ700が作られている場合等で、識別装置714とカニューレ700との間の干渉を低減させ得る。典型的な実施例によると、識別装置714は、識別装置714のほぼ半分がカニューレ700内に埋め込まれ且つ識別装置714のほぼ半分が表面716から突出するように位置付けられる。しかしながら、識別装置の磁石の他の位置付けも本開示の範囲内にあるものとして検討される。
【0036】
図7の典型的な実施例では、識別装置714は露出している。しかしながら、本書で記載される典型的な実施例は、露出した識別装置に限定されるものではなく、その代わりに、露出していない識別装置を含み得る。例えば、
図6の典型的な実施例で示されているように、識別装置614は、カバー部612等によって覆われている。識別装置614が磁石の場合、カバー部612は金属で作られてもよい。典型的な実施例によると、カバー部612は、例えばオーステナイト系ステンレス鋼のような非磁性材料で作られている。カバー部612は、例えば溶接、ろう付け、はんだ付け、接着剤、又は、当業者によく知られた他の接合方法で、取り付け部610に接合されていてもよい。典型的な実施例によると、カバー部612は、カバー部612が取り付け部610に(例えば液密シールで)密封されるように、取り付け部610に接合される。
【0037】
識別装置で用いられる磁石のタイプは、種々のパラメータに従って選択され得る。典型的な実施例によると、磁石の配列を含むカニューレと、各磁石を検出するように構成されたリーダを含むリーダにおいて、磁石は、その磁石を検出する目的で構成され且つ位置付けられている特定のリーダによって検出されるのに十分な強さの磁場ではあるが、別の磁石を検出する目的で構成され且つ位置付けられている別のリーダによって検出されるほどには強くはない磁場を有するように選択され得る。それ故に、本書に記載される種々の典型的な実施例における磁石は、例えば、約17ガウスから約19ガウスの磁界強度を有し得る。典型的な実施例によると、磁石は、繰り返される殺菌プロセスを含めた、カニューレでの反復使用に耐えるように選択され得る。殺菌プロセスは、磁石のキュリー温度さえも超え得る高温に磁石がさらされ得るオートクレーブを含み得る。この検討に鑑み、磁石は、サマリウムコバルト合金、ネオジム合金、又は、当業者がよく知っている他の永久磁石材料でできた永久磁石であってもよい。永久磁石の例は、ニュージャージー州プリンストンのMcMaster-Carrによって販売されている1-5系のサマリウムコバルト磁石(samarium-cobalt grade 1-5 magnet)である。
【0038】
上述のように、磁石は、その磁石を持っているカニューレに関する識別情報を提供するための識別装置として使用され得る。特定のカニューレのタイプ(例えば、カニューレの長さ、径、材料、カニューレが真っ直ぐか湾曲しているか、カニューレがエンドエフェクタを有する手術器具のためのものか或いは撮像器具のためのものか、及び、他のパラメータ)を一意的(uniquely)に識別するために使用される識別情報に含まれ得る種々のパラメータに対応する変数の所望の数の組み合わせを提供するため、本書に記載される典型的な実施例の識別装置では、複数の磁石が使用され得る。例えば、識別装置は、リーダによって検出される磁石の配列を含み得る。それ故に、識別装置として使用される磁石の磁極性が、識別情報の特徴を表すために選択的に予め決定され得るばかりでなく、その配列内における特定の磁石の位置もまた選択的に予め決定され得る。その配列内における磁石の位置もまた情報の特徴を表すようにするためである。磁石の配列が提示された場合、リーダは、その配列の特定の場所内に磁石が存在するか否かばかりでなく、その磁石の極性が何であるかを決定するように構成され得る。それ故に、磁石の配列における特定の位置での磁石の存否とその磁石の極性とは、リーダによって検出される形式で識別情報を表す異なるパラメータと相互関係を有し得る。このように、1又は複数の磁石における予め決定されたパラメータは、カニューレに関する識別情報を表し得る。例えば、その配列内での存在、位置、及び極性の多くの組み合わせは、様々なタイプのカニューレに関する一意的な識別情報の複数のセットを提供するために、実現され得る。
【0039】
典型的な実施例によると、所与の磁石位置での磁石の存否、及び、所与の磁石位置での磁石の極性は、カニューレの一意的な識別情報(カニューレの材料、カニューレの長さ等)のために使用され得る。磁石の存否と磁石の極性とは識別情報のパラメータに関する異なる値を表す。別の典型的な実施例によると、識別装置における種々の磁石位置での磁石の存否及び磁石の極性に関する種々の値は、特定のカニューレに対応する別々のカニューレのための種々の一意的な識別子を提供するために変更され得る。例えば、カニューレ識別情報の特定のパラメータを特定の磁石位置に割り当てる(例えば、カニューレが金属製かプラスチック製かを示すために特定の位置での存否を変える)代わりに、識別装置における種々の磁石位置での磁石の存否及び極性に関する種々の値は、特定のタイプのカニューレに対応する一意的な通し番号に似た一意的な識別子を提供するために変更され得る。例えば、種々の磁石位置における磁石の存否及び(存在するときの)極性の第1の一意的な組み合わせは第1カニューレタイプに対応し、種々の磁石位置における磁石の存否及び(存在するときの)極性の第2の一意的な組み合わせは第2カニューレタイプに対応する等である。
【0040】
本書で説明される典型的な実施例における識別装置で使用される磁石の配列は、様々な数の磁石を有し得る。
図8を見ると、例えば
図6及び
図7の典型的な実施例における識別装置614、714のような識別装置に関する4つの磁石位置810-813の配列800の典型的な実施例が示されている。配列800は4つの磁石位置810-813を含むものとして表されているが、配列800は、例えば、2つ、3つ、5つ、6つ、7つ、8つ、或いはそれ以上の磁石位置のように、別の数の磁石位置を含んでいてもよい。磁石位置810-813は、配列800において磁石が位置付けられ得る位置を表す。
図8の典型的な実施例では、配列800は、磁石位置810-813のそれぞれに位置付けられた合計4つの磁石820-823を含む。配列800は、カニューレの取り付け部等、カニューレに位置付けられる。
図6に関して説明されたように、識別情報を伝えるために磁石820-823がリーダによって検出されるようにするためである。
【0041】
典型的な実施例によると、磁石位置810-813のそれぞれは、識別情報の一部をもたらす特定のパラメータを意味する。さらに、特定の磁石位置での磁石の存否は、カニューレに関する識別情報をもたらす特定のパラメータを意味し得る。
図8の典型的な実施例における配列800では合計4つの磁石820-823が示され、磁石位置810-813のそれぞれに磁石820-823があるが、本書で説明される典型的な実施例はこの実施例に限定されない。例えば、識別情報のパラメータを示すべく特定の磁石位置での磁石の存否を用いるために、n個の磁石位置を含む配列に種々の数の磁石が位置付けられてもよい。例えば、合計でn個、n-1個、n-2個、n-3個、n-4個、n-5個等の磁石が使用されてもよい。典型的な実施例によると、磁石位置の配列は、少なくとも1つの磁石を含む。
【0042】
また、(磁石が存在する場合の)各磁石位置における磁石の極性は、識別情報のパラメータを示すために予め決定されていてもよい。例えば、磁石位置810-813のそれぞれに位置付けられた磁石820-823はそれぞれ、リーダによって検出されるN極又はS極の極性を有するように予め決定されている。典型的な実施例によると、特定の磁石位置に関してN極又はS極の存在をリーダが検出すると、リーダはその特定の磁石位置での磁石の存在も検出する。
【0043】
配列における特定の磁石位置での磁石の存否及び磁石の極性を変えることによって、カニューレの総合的な識別情報をもたらすために、選択パラメータの多数の組み合わせが創出され得る。1つの磁石位置は、例えば、リーダを含む手術システムが、正しい数の磁石が検出されたか否かを判定できるように、磁石の配列にいくつの磁石が存在するのかを示すために用いられてもよい。別の例によると、磁石の存否及び極性の種々の組み合わせは、様々なカニューレタイプに関する通し番号に似た一意的な識別子を提供するために使用される。例えば、
図8の典型的な実施例の配置では、4つの磁石位置810-813と3つの磁石状態(例えば、N極を持つ磁石が存在する状態、S極を持つ磁石が存在する状態、又は、磁石が存在しない状態)を考慮すると、81個の実現可能な一意的な組み合わせが存在する。この実現可能な一意的な組み合わせの数は、所望の設計に従って変更され得る。例えば、カニューレの存在を判定するために少なくとも1つの磁石が検出され得るように1つの磁石を常に存在させることが望ましいかもしれないが、これは、実現可能な組み合わせの数を1個だけ低減させる。ゼロ個の磁石が存在する組み合わせが排除されるためである。
【0044】
単なる非限定的な例として、以下は、一意的なカニューレタイプを識別するために、どのように
図8の磁石が通し番号に似ているものとして使用され得るのかの実現性の説明を提供する。典型的な実施例では、磁石821が磁石位置811のところに存在し且つS極性磁場を有し、且つ、磁石位置810、812、813の何れにも磁石が位置付けられていない場合、その配列は、標準的な使い捨てカニューレに対応するように割り当てられる。使い捨てのカニューレは、例えば、プラスチック、又は、当業者によく知られた他の使い捨てカニューレ用材料で作られ得る。例えば、1つの典型的な実施例では、
図5のカニューレ500のボウル部502、チューブ部506、及び取り付け部510のそれぞれは、プラスチック材料で作られている。典型的な実施例によると、プラスチックで作られたカニューレは、位置811における単一の磁石(例えばS極性磁場を有する磁石)のような、プラスチックカニューレとしてカニューレを識別するための単一の磁石を含み得る。磁石は、例えば、カニューレのプラスチック材料で磁石をオーバーモールドすること、熱かしめ(heat staking)、接着剤、磁石の上にカバーを取り付けること、又は、当業者がよく知っている他の搭載方法によって、プラスチックカニューレに取り付けられ得る。
【0045】
別の例では、磁石820が磁石位置810のところに存在し且つS極性磁場を有し、磁石821が磁石位置811のところに存在し且つS極性磁場を有し、磁石822が磁石位置812のところに存在し且つS極性磁場を有し、且つ、磁石位置813のところに磁石が存在しない場合、その配列は、標準的な非使い捨てカニューレに対応するように割り当てられ得る。別の例では、磁石820が磁石位置810のところに存在し且つS極性磁場を有し、磁石821が磁石位置811のところに存在し且つN極性磁場を有し、磁石822が磁石位置812のところに存在し且つS極性磁場を有し、且つ、磁石位置813のところに磁石が存在しない場合、その配列は、長いチューブを有する非使い捨てカニューレに対応するように割り当てられる。別の例では、磁石820が磁石位置810のところに存在し且つS極性磁場を有し、磁石位置811のところに磁石が存在せず、磁石822が磁石位置812のところに存在し且つS極性磁場を有し、且つ、磁石823が磁石位置813のところに存在し且つS極性磁場を有する場合、その配列は、標準的な非使い捨てカニューレに対応するように割り当てられる。
【0046】
前述の例及び追加的な例が以下の表1に提供され、磁石位置は、
図8の典型的な実施例における磁石位置810-813に対応する。表1は、各磁石位置における磁石の存否及び極性を検出するためのセンサを含むリーダの典型的な実施例からのセンサ信号の例を含む。それ故に、表1の“N”はN極を有する磁石の存在を示し、また、表1の“S”はS極を有する磁石の存在を示す。“--”は磁石が存在しないことを示す。
【0047】
【表1】
配列における磁石の構成は、干渉を極小化し或いは取り除くように選択され得る。典型的な実施例によると、
図8の紙面は、
図6及び
図7の典型的な実施例における表面616、716を表し、磁石820-823の端部は、
図8の紙面を出て、例えば
図8のZ軸に沿って延びるように構成されている。カニューレの表面から磁石820-823の端部を延ばすことは、例えばカニューレの材料によって引き起こされる干渉といった、磁石820-823の磁場への干渉を低減させ得る。磁石820-823間の干渉を極小化し或いは排除するため、例えばカニューレの製造の際に、X軸及びY軸のそれぞれに沿った距離814及び距離816が規制されてもよい。例えば、磁石位置810のところに磁石が位置付けられていないが磁石821及び磁石822がそれぞれ磁石位置811及び磁石位置812のところに位置付けられている典型的な実施例では、磁石位置811のところにある磁石821は、磁石位置810からX軸に沿って距離814だけ間隔が空けられ、且つ、磁石位置812のところにある磁石822は、磁石位置810からY軸に沿って距離816だけ間隔が空けられ得る。磁石821及び磁石822の磁場による位置810での磁石の偽陽性検出を最小限に抑えるためである。典型的な実施例によると、距離814及び距離816は、例えば、磁石位置のそれぞれの中心間の距離である。典型的な実施例によると、距離814は、例えば、約0.310インチから約0.330インチの範囲であり、距離816は、例えば、約0.370インチから約0.390インチの範囲である。
【0048】
図9を見ると、リーダ900の典型的な実施例が概略的に示されている。リーダ900は、手術システムに関する
図6の典型的な実施例のリーダ622のように、識別装置から識別情報を取得するために、本書に記載される典型的な実施例で使用され得る。リーダ900は、識別情報を得るために識別装置の構成要素を検出できるように構成され得る。例えば、
図8の典型的な実施例における位置810-813のところに位置付けられた磁石820-823のように、識別情報を有する構成要素の配列を識別装置が含む場合、リーダ900は、それらの構成要素を検出し且つそれらの構成要素から識別情報を取得するように構成される。
【0049】
リーダ900は、識別装置の構成要素を検出するための1又は複数のセンサを含み得る。
図6の典型的な実施例に関して説明されたように、リーダ900は、本書で検討された典型的な実施例で説明された複数のセンサの機能を提供する単一のセンサを含む。別の典型的な実施例では、リーダ900は、本書で検討された典型的な実施例で説明された感知機能を提供する複数のセンサを含む。例えば、リーダ900は複数のセンサを含み、各センサは、識別装置の構成要素のそれぞれを検出するように構成されている。
【0050】
典型的な実施例によると、リーダ900は、
図8の典型的な実施例における識別装置の位置810-813のところに位置付けられた磁石820-823を検出するように構成され、それぞれが磁石820-823を検出するように構成されたセンサグループ910-913を含む。例えば、識別装置800を含むカニューレが手術システムのアームに接続された場合、
図4及び
図6の典型的な実施例に関して説明されたように、センサグループ910-913のそれぞれが磁石820-823を検出し、且つ、位置810-813でのそのような磁石の不在を含め、磁石820-823から識別情報を別々に取得するように、磁石820-823は、リーダ900のセンサグループ910-913の向かい側で、センサグループ910-913と実質的に一致するように位置付けられる。それ故に、リーダ900は、
図8の典型的な実施例における識別装置800の4つの磁石位置810-813に対応する4つのセンサグループ910-913を含み得る。しかしながら、本書で説明される典型的な実施例のリーダは、4つのセンサグループに限定されるものではなく、磁石の数等、識別装置の構成要素の数に従った他の数のセンサグループを含み得る。例えば、リーダは、2つ、3つ、5つ、6つ、7つ、8つ、或いはそれ以上のセンサグループを含む。典型的な実施例によると、
図9の典型的な実施例におけるセンサグループの間のX軸に沿った距離914及びY軸に沿った距離916はそれぞれ、
図8の典型的な実施例における距離814及び距離816に対応する。
【0051】
リーダは、そのリーダの各センサグループで1又は複数のセンサを含んでいてもよい。本書で説明される種々の典型的な実施例におけるセンサグループは単一のセンサを含み得るが(本書で説明される種々のセンサ機能を実現するための単一のセンサを含み得るが)、各センサグループは、その代わりに複数のセンサを含んでいてもよい。
図9の典型的な実施例で示されるように、センサグループ910-913のそれぞれは、4つのセンサ920-923を含み得るが、本書で説明される典型的な実施例は、それぞれが4つのセンサを有するセンサグループを含むリーダに限定されない。その代わり、各センサグループは、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のセンサを含んでいてもよい。
図10を見ると、センサグループ1000の典型的な実施例が概略的に示されている。センサグループ1000は、4つのセンサ1010-1040を含む。センサグループ1000及びセンサ1010-1040は、例えば、
図9の典型的な実施例におけるセンサグループ910-913のそれぞれで使用される。
【0052】
種々のタイプの識別情報が識別装置の構成要素から取得され得るため、センサグループは、異なるタイプの識別情報を取得すべく種々の機能を実行するために複数のセンサを含み得る。例えば、
図8の典型的な実施例では、磁石位置810-813での磁石820-823の存否は、識別情報における1つのパラメータの役割を果たし、且つ、位置810-813のところに存在する磁石820-823の選択的に予め決定される極性は、リーダによって取得される識別情報における別のパラメータの役割を果たし得る。
【0053】
これにしたがって、センサグループの複数のセンサは、磁石位置に磁石が存在するかを検出するように構成され得る。また、センサグループの別の複数のセンサは、存在する磁石の極性を検出するように構成され得る。例えば、
図10の典型的な実施例におけるセンサ1010は、磁石位置に磁石が存在するかを検出するように構成される存在センサである。典型的な実施例によると、センサ1010が誤動作する或いは機能しなくなる場合、磁石の存在を検出するセンサグループ1000の能力のための冗長性をもたらすために、センサ1040もまた、磁石の存在を検出するように構成された存在センサである。典型的な実施例によると、磁石の極性を検出するため、センサ1020は、N極性磁場を検出するように構成され、一方で、センサ1030は、S極性磁場を検出するように構成され得る。或いはその逆であってもよい。センサグループ1000のセンサ1010、1020、1030、1040は特定の機能を有するものとして説明されたが、センサ1010、1020、1030、1040は別の機能を有していてもよい。例えば、センサ1010及びセンサ1040は極性センサであり、センサ1020及びセンサ1030は存在センサである。
【0054】
磁石を検出するためのリーダで使用され得るセンサの1つのタイプは、当業者がよく知っているホール効果装置である。ホール効果装置は、例えば、磁石の存在の検出ばかりでなく磁場の極性をも検出するように構成され得るホール効果センサであってもよい。ホール効果センサは、例えば、磁場の存在によって偏向される半導体(又は導体)を流れる電荷担体(すなわち電子及び正孔)を含んでいてもよい。その偏向は、検出され得る電位差をもたらす。ホール効果センサを用いるものとして種々の典型的な実施例が本書で説明されるが、それらの実施例は、例えば、単に磁石の存在だけを検出するように構成されたリードセンサ(reed sensor)又はホール効果スイッチのような他のホール効果装置及び磁気センサ、及び、当業者がよく知っている他のセンサを用いてもよい。
【0055】
典型的な実施例によると、
図9及び
図10の典型的な実施例におけるセンサ1010、1020、1030、0140及びセンサ920-923のような、リーダで用いられるホール効果装置は、デフォルトの高電圧状態と、磁石がセンサの近くにあるときの低電圧状態とを有し得る。
図11を見ると、ホール効果装置の(1100でラベル付けされた軸によって示される)出力電圧と(1110でラベル付けされた軸によって示される)磁束密度の典型的な実施例が概略的に示されている。
【0056】
図11を参照すると、磁石がホール効果装置の存在下にない場合、磁束密度1110は0であり、ホール効果装置は、1120の初期電圧(すなわち“高”電圧状態)を有する。S極磁極の磁石がホール効果装置に近づけられると、S極磁極に関する最小動作点1130に達するまで磁束密度1110が経路1150に沿って増大するため、出力電圧は高いままである。最小動作点1130に達すると、ホール効果装置は、その状態を電圧1122の状態(すなわち“低”電圧状態)に切り替え得る。
図11では、S極性磁場は右側の磁束に関連付けられ、一方で、N極性磁場は左側の磁束に関連付けられている。磁束は、各極性に関し、磁束0から右及び左に向かって増大する。N極磁極がセンサに近づけられたときにも同様のプロセスが発生し、経路1162に沿うようにセンサが電圧1122に切り替わる点である、N極磁極に関する最小動作点1140と最大動作点1142との間に磁束が達するまで磁束1110が経路1160に沿って増大するため、電圧レベルは高いままである。
図11の典型的な実施例は、経路1152に沿って最小動作点1130のところで電圧1122に切り替わり、且つ、経路1162に沿って最小動作点1140のところで電圧1122に切り替わるホール効果装置を示すが、ホール効果装置は、最小動作点1130、1140と最大動作点1132、1142との間に定められる磁束解放帯(magnetic flux release band)内の任意の磁束の値で電圧1122に切り替わってもよい。
【0057】
例えば磁極をホール効果装置の近くから取り除くこと等によってホール効果装置と磁極との間の距離が増大すると、例えばS極性磁場に関する経路1154に沿って或いはN極性磁場に関する経路1164に沿って磁束0に向かって磁束1110は減少する。例えばS極性磁場に関する最大解放点1136と最小解放点1134と間、或いは、N極性磁場に関する最大解放点1146と最小解放点1144と間のような解放点帯(release point band)内の値まで磁束1110が減少すると、ホール効果装置は、磁場が存在しないことを示す初期電圧1120(“高”電圧状態)に戻る。
図11の典型的な実施例は、最小解放点1134のところで経路1156に沿って電圧1120に切り替わり、且つ、最小解放点1144のところで経路1166に沿って電圧1120に切り替わるホール効果センサを示すが、ホール効果装置は、最小解放点1134、1144と最大解放点1136、1146との間に定められた磁束解放帯内の任意の磁束の値のところで電圧1120に切り替わってもよい。
【0058】
図11の典型的な実施例は、
図10の典型的な実施例におけるセンサ1010及びセンサ1040のような磁石存在センサに適用され、且つ、
図10の典型的な実施例におけるセンサ1020及びセンサ1030のような磁極センサに適用され得る。これらの異なるタイプのセンサは、以下で説明されるように、異なる解放点の値、異なる動作点の値、及び/又は、異なる電圧値を示し得るが、それ以外は、
図11の典型的な実施例に関して説明された一般的な方法で動作する。例えば、ホール効果装置が電圧1122を有する場合、センサが
図10の典型的な実施例におけるセンサ1010及びセンサ1040のうちの1つである場合のように、そのホール効果装置は、磁石が存在することを示している。
図10の典型的な実施例における装置1020及び装置1030のように、ホール効果装置が(ホール効果センサを用いることによって)磁極性を検出するように構成されている場合、電圧1122は、感知されている磁極の極性を示すために使用され得る。
【0059】
典型的な実施例によると、
図10の典型的な実施例におけるセンサ1010及びセンサ1040のように、磁石の存在を検出するために使用されるホール効果装置は、N極磁極又はS極磁極の何れかの存在を検出する全極性センサ(omnipolar sensor)である。それ故に、全極性存在センサは、S極性又はN極性の磁極がセンサに近づいたときに、経路1150又は経路1160を辿り得る。対照的に、典型的な実施例によると、磁極の極性を検出するためのセンサは、磁極性の1タイプのみを検出するように構成される単極性センサであってもよい。
図10の典型的な実施例に関して説明したように、センサ1020は、N極性磁場を検出する(そしてS極性磁場を検出しない)ように構成され、それ故に、N極性磁石がセンサ1020に近づけられた場合に経路1160を辿り、一方、センサ1030は、S極性磁場を検出する(そしてN極性磁場を検出しない)ように構成され、S極性磁石がセンサ1030に近づけられた場合に経路1150を辿り得る。単極性センサは、検出するように設計されていない極性を有する磁場には反応しない。
【0060】
センサの解放点の値は、センサの検出対象の磁石由来ではない磁場の干渉を最小限に抑え或いは防止するために選択され得る。典型的な実施例によると、存在センサは、極性センサに関する最小解放点1134、1144よりも高い値を有する最小解放点1134、1144を有する。このように、極性センサによる磁場の検出は本質的に磁石の存在を示し得るが、存在センサは、その存在センサに最も近い磁石以外のソース、例えば識別装置の配列における他の磁石等からの磁場に対する感度が低い。典型的な実施例によると、極性センサは、存在センサより低い解放点の値を有し得るためであり、リーダから信号を受けるコントローラは、存在センサ(或いは、
図10の典型的な実施例におけるセンサ1010及び1040と同様に、冗長な存在センサが使用される場合の全ての存在センサ)が同じように磁場の検出を示さなければ、極性センサからの検出信号を無視するように構成され得る。それ故に、存在センサは、極性センサによって検出された磁石の存在を確認するために使用され得る。極性センサによる検出は、同じ配列内の少なくとも1つの存在センサが同じように磁石を検出しなければ、無視される。典型的な実施例によると、本書で説明される典型的な実施例における極性センサは、例えば、約7ガウスから約9ガウスの範囲の最小解放点1134、1144に関する値を有する。本書で説明される典型的な実施例における存在センサは、例えば、約11ガウスから約13ガウスの範囲の最小解放点1134、1144に関する値を有する。
【0061】
典型的な実施例によると、本書で説明される典型的な実施例における存在センサ及び極性センサは、例えば、約50ガウスから約60ガウスの範囲の最大動作点1132、1142を有するが、存在センサと極性センサは、動作点1130、1132、1140、1142に関して異なる値を有していてもよい。存在センサの例は、テキサス州プレーノーのDiodes(登録商標)社のモデルAH1892である。単極性センサの例は、日本の京都にあるローム株式会社のモデルBU52002GUL及びBU52003GULである。
【0062】
センサからの検出信号は、
図6の典型的な実施例における伝送線626等を通じてコントローラに伝えられ、手術システムのコントローラのようなコントローラによって解釈され得る。手術システムは、どのような識別情報が得られたのかを決定するため、そして、その識別情報によって表されるのが何れのタイプのカニューレであるのかを識別するために、リーダの種々のセンサからの信号を解釈してもよい。センサからの信号は、センサに関するエラーのために解析されてもよい。
【0063】
典型的な実施例によると、リーダのセンサからの信号は、センサが誤った信号を提供しているのか、或いは、センサが誤動作しているのかを判定するためにも解析される。例えば、リーダは、リーダの存在検出能力における冗長性を提供するために複数の存在センサを含む。そのため、1つの存在センサが故障しても、別の存在センサが識別装置の構成要素を検出する。さらに、N極性磁場又はS極性磁場の何れかを検出するために複数の単極性の極性センサが使用される場合、コントローラは、2つの単極性のセンサの双方が磁場の存在を示すときに、2つの単極性の極性センサのうちの1つが誤動作していると判定してもよい。反対に、リーダにおける1又は複数の存在センサが磁石の存在を示すが、何れの極性センサもその磁石からの磁場の極性を示さない場合、これは、複数の単極性の極性センサのうちの少なくとも1つが誤動作していることを示す。
【0064】
以下の表は、4つのセンサを含むリーダの典型的な実施例からのセンサ信号の例を提供する。4つのセンサのうちの2つのセンサは、
図10の典型的な実施例における装置1010及び1040のような全極性のホール効果存在装置(表2の“P/A”)であり、1つのセンサは、
図10の典型的な実施例における装置1020のような、N極性磁場を検出するための単極性のホール効果極性センサ(表2の“N極センサ”)であり、1つのセンサは、
図10の典型的な実施例における装置1030のような、S極性磁場を検出するための単極性のホール効果センサ(表2の“S極センサ”)である。値“1”は、検出無しを示す初期状態である高状態(例えば、
図11の電圧1120)を示し、値“0”は、検出状態である低状態(例えば、
図11の電圧1122)を示す。“X”は、値“1”又は“0”が存在するが何れの値であっても結果に影響しないことを示す。
【0065】
【表2】
典型的な実施例によると、カニューレの身元(identity)をユーザに表示することによる等、フィードバックがユーザに提供される。典型的な実施例によると、コントローラは、外科的処置に関する特定の身元証明物(identification)を有するカニューレを期待するようにプログラムされている。そして、センサ信号から決定される識別情報が、プログラムされた識別情報と合致しない場合、識別情報が不一致であることをユーザに知らせる視覚的及び/又は聴覚的なフィードバック等のフィードバックがユーザに提供され得る。典型的な実施例によると、手術システムは、決定された識別情報がプログラムされている識別情報と合致しない場合に、患者側カートの使用を禁止する。患者側カートは、患者側カートにおけるアームとそれらアームに接続された器具とを含む。
【0066】
カニューレに関する識別情報の他の用途は、本書で説明される種々の典型的な実施例によってもたらされ、例えば、(例えば、電気外科的器具がカニューレと共に使用される場合等に)カニューレが金属で作られていることの確認、特定の器具と共に使用されるカニューレのタイプにそのカニューレが合致していることの確認、手術システムにカニューレの長さを知らせること(例えば、手術システムにカニューレチューブの長さを知らせること)、カニューレが存在するため安全機能(例えば、患者側カートの安定化機能、及び、患者側カートを動かなくさせる機能)が起動され得ることを手術システムに知らせること、及び、手術システムと共に使用されるカニューレに関連する他の機能を含むがそれらに限定されない。
【0067】
図8-
図10の典型的な実施例は、(
図9のセンサ920-923、及び、
図10のセンサ1010、1020、1030、1040のような)4つのセンサをそれぞれ含むセンサグループを含むリーダに関連して説明されたが、リーダのセンサグループは、他の数のセンサを含んでいてもよい。
図12-
図14を見ると、上述の典型的な実施例におけるリーダと共に使用され得る種々のセンサグループ1200、1300、1400が示されている。
【0068】
図12では、3つのセンサ1210、1220、1230を含むセンサグループ1200の典型的な実施例が示されている。典型的な実施例によると、
図11の典型的な実施例に関連して説明されたように、センサ1210、1220、1230のうちの2つは単極性の極性センサであり、センサ1210、1220、1230のうちの1つは全極性の存在センサである。別の典型的な実施例によると、センサ1210、1220、1230のうちの2つは、存在感知の冗長性をもたらすための全極性の存在センサであり、センサ1210、1220、1230のうちの1つは、N極性磁場及びS極性磁場の双方を検出するデュアル出力の単極性の極性センサである。典型的な実施例によると、そのデュアル出力の単極性の極性センサは、そのデュアル出力のため、N極性磁場及びS極性磁場の双方を検出できるが、デュアル出力の単極性の極性センサに関する最小解放点1134、1144は、単極性の極性センサに関する最小解放点1134、1144よりも低い値を有し、そのデュアル出力の単極性の極性センサを、デュアル出力を有しない単極性の極性センサよりも、浮遊磁場に対して高感度なものとする。デュアル出力の単極性センサの例は、マサチューセッツ州ウースターにあるAllegro(登録商標)Microsystems社のモデルA1171である。
【0069】
図13では、2つのセンサ1310及び1320を含むセンサグループ1300の典型的な実施例が示されている。センサ1310及び1320の一方は、
図11の典型的な実施例に関して説明されたように、全極性存在センサであってもよい。また、センサ1310及び1320の他方は、
図12の典型的な実施例に関して説明されたように、N極性磁場及びS極性磁場の双方を検出可能なデュアル出力の単極性の極性センサであってもよい。
図14では、デュアル出力の単極性の極性センサである単一センサ1410を含むセンサグループ1400の典型的な実施例が示されている。単一センサ1410は、存在センサの裏付け証拠無しに、N極性磁場又はS極性磁場の検出を、磁石の存在を示すものとして解釈することによって使用され得る。
【0070】
磁石、及び、磁石を検出するためのセンサの使用に関連して識別装置及びリーダの実施例が説明されたが、他のタイプの識別装置及びセンサが、本書で説明される典型的な実施例で利用されてもよい。典型的な実施例によると、識別装置は、リーダによって検出される識別情報を表す所定の幾何学的配置を有する磁石を含む。
図15を見ると、
図6、
図7の典型的な実施例におけるカニューレの表面616、716であってもよい、表面1520から突出する磁石1510の典型的な実施例が示されている。磁石1510は、磁石1510の磁場が所定の方向に沿って向けられるように選択的に方向付けられた円筒磁石であってもよい。典型的な実施例によると、磁石1510は、磁石の端部1516における磁極の磁場が、所定の基準方向1514に関連して方向付けられた方向1512に沿って向けられるように、方向付けられる。リーダは、方向1512と方向1514との間の角度1518を検出するセンサを含んでいてもよい。その識別角度は、リーダに識別情報を伝える。例えば、センサは、識別装置の磁石の磁場方向を検出する。典型的な実施例によると、そのセンサは、磁場方向に関する角度1518を検出できる。磁場方向センサは、例えば、特定の方向に沿った磁場の強さを検出する1又は複数の線形ホール効果装置を含む磁気回転センサであってもよい。磁場の強さは、その後、磁場方向センサに対する磁極の角度の角度を決定するために解析される。典型的な実施例によると、磁場方向センサは、例えば他の磁石及び/又は他の近くの磁性材料の磁場による、磁場方向における逸脱を補正するために、マッピングされたセンサ角度の値を用いる。
【0071】
本書で説明される典型的な実施例で使用され得る別のタイプの識別装置は、無線識別(RFID)装置である。典型的な実施例によると、RFID装置は、カニューレに位置付けられた装置を含む。その装置は、リーダによって取得される電子的に記憶された識別情報を含む。リーダは、例えば、カニューレにあるその装置を作動させる電磁場を出してもよい。それに応じてその装置は、リーダによって検出される識別情報を出す。
【0072】
カニューレの識別に関して本書の典型的な実施例が説明されたが、それらの典型的な実施例は、カニューレ以外の他の対象物の識別のために用いられる。例えば、本書で説明される典型的な実施例は、例えば対応するシステムに適合され得る装置のような、他の手術装置及び他の非手術装置を識別するために使用される。対応するシステムはその装置を用いる。
【0073】
本書で説明される典型的な実施例におけるリーダは、例えば患者側カートのマニピュレータアームのような手術システムの一部として説明され得るが、本書で説明される典型的な実施例におけるリーダは、手動装置として用いられてもよい。例えば、リーダは、手術システムを用いることなく種々のカニューレを迅速に識別するためにユーザによって使用されるハンドヘルドの装置であってもよい。
【0074】
手術システムに関するカニューレに識別装置を提供することによって、特定のカニューレの種々の一意的な特徴を含め、カニューレが正確に識別される。識別装置は、カニューレの電子部品を使用することなくカニューレを識別する。そのため、識別装置を低複雑度で低コストとすることができる。さらに、識別装置は、耐久性があり、且つ、オートクレーブ法等を用いてカニューレが洗浄される場合であっても、カニューレの存続期間(lifetime)にわたって使用され得る。
【0075】
本書の開示内容を検討することで、更なる改良及び代替実施例が当業者にとって明らかとなるであろう。例えば、そのシステム及び方法は、動作を明確にするために図及び明細書から省略された追加的な構成要素又はステップを含み得る。したがって、この説明は、単なる例示的なものであり、且つ、本教示を実行するための一般的な方法を当業者に教示するためのものであると解釈されるべきである。また、本書で図示され且つ説明された種々の実施例は典型的なものとして採用されるものであると理解されるべきである。本書での説明の利益を得た後で当業者にとって全てが明らかとなるように、要素及び材料、並びに、それらの要素及び材料の構成は、本書で図示され且つ説明されたものの代わりに用いられてもよく、部品及びプロセスは逆転されてもよく、本教示における特定の特徴は独立して利用されてもよい。本開示及び請求項の精神及び範囲から逸脱することなく、本書で説明される要素に変更が行われ得る。
【0076】
本書で説明される特定の例及び実施例は非限定的なものであり、構造、寸法、材料、及び方法に対する改良は本開示の範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解されるべきである。
【0077】
本開示に従った他の実施例は、明細書の検討及び本書で開示された発明の実施から、当業者にとって明らかとなるであろう。明細書及び例が単なる典型例として検討されることが意図されている。請求項は、均等物を含め、その範囲の全体に権利が与えられている。
【0078】
次の付記を記す。
(付記1) 手術システムのカニューレであって、
前記手術システムへの前記カニューレの搭載位置において前記手術システムによって感知されるべき位置に位置付けられる磁石を含み、
前記カニューレの前記搭載位置で、前記磁石の存在、及び、前記磁石の極性の少なくとも一方が感知され、前記存在及び前記極性の少なくとも一方は、前記カニューレに関する識別情報を示す、
カニューレ。
(付記2) 前記カニューレを前記手術システムに搭載するために手術システムの一部に係合可能な取り付け部を更に含み、
前記磁石は、前記取り付け部に位置付けられる、
付記1のカニューレ。
(付記3) 前記取り付け部は、前記手術システムへの前記カニューレの搭載位置で前記手術システムのアームに接続する、
付記2のカニューレ。
(付記4) 前記磁石の前記極性は、前記磁石の所定の磁極である、
付記1のカニューレ。
(付記5) 前記磁石は、サマリウムコバルト磁石である、
付記1のカニューレ。
(付記6) 前記磁石は、前記カニューレの表面に露出する、
付記1のカニューレ。
(付記7) 前記磁石は、前記カニューレの一部によって覆われる、
付記1のカニューレ。
(付記8) 前記磁石は、前記カニューレに対して密封されるカバー部によって覆われる、
付記1のカニューレ。
(付記9) 前記カバー部は、金属で作られている、
付記8のカニューレ。
(付記10) 磁石位置の配列を更に含み、
前記磁石は、前記磁石位置の1つに位置付けられる、
付記1のカニューレ。
(付記11) 前記配列は、4つの磁石位置を含む、
付記10のカニューレ。
(付記12) 前記識別情報は、各磁石位置における磁石の存否、及び、該磁石の所定の磁極を含む、
付記10のカニューレ。
(付記13) 前記カニューレにおける磁石の位置は、前記磁石の磁場が所定方向に沿うように選択される、
付記1のカニューレ。
(付記14) 前記識別情報は、前記カニューレのチューブの長さ、前記チューブの径、前記カニューレの材料、前記チューブが真っ直ぐか或いは湾曲部を含むか、及び、前記カニューレがエンドエフェクタを備えた手術器具用に構成されているか或いは撮像器具用に構成されているか、のうちの少なくとも1つを含む、
付記1のカニューレ。
(付記15) 前記カニューレは、それぞれプラスチック材料で作られている、ボウル部、チューブ、及び、取り付け部を含む、
付記1のカニューレ。
(付記16) 前記磁石は、オーバーモールド、熱かしめ、接着剤接合、又は、前記磁石の上にカバーを取り付けることによって、前記取り付け部のプラスチック材料に取り付けられる、
付記15のカニューレ。
(付記17) 遠隔操作手術システムの患者側カートであって:
基部;
主柱;及び
前記主柱に接続されたアーム;を含み、
前記アームは:
カニューレを受けるように構成されたマウント;及び
取り付けられたカニューレに関する識別情報を受けるために前記カニューレにおける識別装置の磁石を感知するように構成されたリーダ;を含む、
患者側カート。
(付記18) 前記リーダは、ホール効果装置を含む、
付記17の患者側カート。
(付記19) 前記リーダは、複数のセンサグループを含み、
各センサグループは複数のセンサを含み、
各センサグループは、前記識別装置の構成要素からの識別情報を受けるように構成されている、
付記17の患者側カート。
(付記20) 各センサグループは、少なくとも1つの存在センサと少なくとも1つの極性センサを含む、
付記19の患者側カート。
(付記21) 前記存在センサは、全極性センサであり、
各センサグループは:
N極性磁場を感知するように構成された第1の単極性の極性センサ;及び
S極性磁場を感知するように構成された第2の単極性の極性センサ;を含む、
付記20の患者側カート。
(付記22) 各センサグループは、複数の存在センサを含む、
付記20の患者側カート。
(付記23) 前記リーダは、前記識別装置の磁石の磁極を感知するように構成された全極性の極性センサを含む、
付記17の患者側カート。
(付記24) 前記リーダは、前記識別装置の磁石の磁場方向を感知するように構成された磁場方向センサを含む、
付記17の患者側カート。
【外国語明細書】