(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186723
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】車両用防音カバー
(51)【国際特許分類】
B60R 13/08 20060101AFI20221208BHJP
F02B 77/13 20060101ALI20221208BHJP
C08J 9/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B60R13/08
F02B77/13 A
F02B77/13 U
C08J9/00 CES
C08J9/00 CFF
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155518
(22)【出願日】2022-09-28
(62)【分割の表示】P 2018216807の分割
【原出願日】2018-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】丹下 勝博
(57)【要約】
【課題】リサイクル性に優れた車両用防音カバーおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】積層面14に突出部18を形成したカバー本体12を、当該積層面14とは反対の面を型開き状態とした成形型の型面に向けた姿勢で設置し、突出部18の突出端に設けた加工部22を型面の孔部に挿入した型閉め状態で発泡原料を発泡硬化させることで、加工部22が表面側に突出する状態で発泡体24をカバー本体12の積層面14に形成する。そして、発泡体24の表面側に突出する加工部22を熱カシメ加工して形成した抜け止め部20とカバー本体12の積層面14とで発泡体24を挟む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂材からなるカバー本体に発泡体が積層されている車両用防音カバーであって、
前記発泡体の表面側に設けられた凹状部と、
前記カバー本体において前記発泡体を積層する積層面側に、前記発泡体の凹状部に対応した位置に設けられた突出部と、
前記突出部の突出端側に設けられて前記凹状部の内側に位置し、当該凹状部の底部に係合して前記カバー本体の積層面との間に発泡体を挟む抜け止め部とを備え、
前記抜け止め部は、前記凹状部の外側に突出しないよう形成されると共に、前記カバー本体に対して当該抜け止め部および前記突出部が樹脂一体成形されている
ことを特徴とする車両用防音カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動源の音が車室側に伝わるのを防止可能な車両用防音カバーおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は、動力源であるエンジンやモーター等の駆動のように車両自体で発生した音や、走行時のロードノイズ等の車外で発生した音が車室内に侵入することにより、乗員に不快感を与えて快適性を損なう要因となる。このため、エンジンルーム等の車両の各所に騒音を遮蔽する防音対策が行われている。例えばエンジンルームの防音対策として、合成樹脂材や鋼板等で形成したカバー本体のエンジン側表面にウレタン発泡体等の発泡体を取り付けた防音カバーをエンジンの上部や下部、或いはエンジンの車室側などの周囲に配置して、エンジンからの音が車室内に侵入するのを防止している(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような防音カバーは、車両に対する組み付け作業を容易になし得るためにカバー本体と発泡体が安定して一体化していることが求められる。このため、前記特許文献1のように、カバー本体と発泡体とをリベット等の固定部材により固定したり、カバー本体と発泡体とを接着剤等により接着して接合することが行われる。またその他に、カバー本体を配置した成形型内で発泡原料を発泡させて発泡体を一体発泡する方法が知られており、このような一体発泡成形によればカバー本体と発泡体とを固定部材や接着等により接合する必要がなく、作業工数を簡略化できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カバー本体と発泡体とをリベット等の固定部材により固定する場合は、多数の固定部材で固定する必要があり、部品点数や作業工数の増加により製造コストが嵩むばかりでなく、リサイクル性が低下する難点がある。また、カバー本体や発泡体に接着剤等を塗布(前処理)して接着する場合や、カバー本体と発泡体とを一体発泡成形する場合は、カバー本体と発泡体とを強固に接合できる一方でその分離が容易ではなく、リサイクルが困難になる問題がある。また、ポリプロピレン等のような非極性樹脂をカバー本体とする場合には、カバー本体にプライマー塗布や火炎処理等の前処理が必要となる難点も指摘される。
【0006】
すなわち本発明は、リサイクル性に優れた車両用防音カバーおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、第1の形態は、
カバー本体を設置した成形型内で発泡原料を発泡させることにより当該カバー本体に発泡体が積層するよう設けられた車両用防音カバーの製造方法であって、
前記発泡体を積層する積層面に突出部が突出するよう形成した熱可塑性合成樹脂材からなるカバー本体を、当該積層面とは反対の面を型開き状態とした成形型の型面に向けた姿勢で設置し、
前記突出部の突出端に設けた加工部を前記カバー本体の積層面に対向する型面に設けた孔部に挿入した型閉め状態で発泡原料を発泡硬化させることで、前記加工部が表面側から突出する状態で発泡体を前記カバー本体の積層面に形成し、
前記発泡体の表面側に突出する前記加工部を熱カシメ加工することにより抜け止め部を形成して、当該抜け止め部と前記カバー本体の積層面とで発泡体を挟むようにしたことを要旨とする。
このように、発泡成形した発泡体の表面側に突出する突出部を熱カシメ加工して抜け止め部を形成し、抜け止め部とカバー本体の積層面とで発泡体を挟むことで、前処理を行うことなくカバー本体に発泡体を保持することができる。またカバー本体と発泡体とが接着されていないから、発泡体をカバー本体から容易に剥がすことができ、優れたリサイクル性を実現できる。
【0008】
第2の形態は、
前記孔部を突出端面に有する凸状部を、前記カバー本体の積層面に対向する型面に設け、当該凸状部の孔部に加工部を挿入した状態で発泡原料を発泡硬化させることで、前記凸状部に対応して形成される前記発泡体の凹状部の内側に前記加工部が突出するよう形成し、
前記凹状部の内側に突出する前記加工部を熱カシメ加工することにより、当該凹状部の外側に前記抜け止め部が突出しないよう形成することを要旨とする。
このように、抜け止め部を凹状部の外側に突出しないようにすることで、車両用防音カバーの発泡体を音源の外表面に密着させることができると共に、音源の外表面形状に対して優れた追従性を実現できる。このため、例えば音源としてエンジンの外表面に車両用防音カバーを密着させることで、エンジン停止後のエンジンの温度低下を抑制することができ、暖機時間を短縮化して燃費向上に寄与し得る利点がある。
【0009】
第3の形態は、
前記カバー本体の積層面に対向する型面および前記凸状部の表面に塗料を塗布した後に発泡原料を発泡硬化させることで、前記発泡体の前記凹状部を画成する壁面を含む表面に塗膜層を形成したことを要旨とする。
このように、発泡体の表面に塗膜層を形成することで、音源の外表面に付着したオイルが発泡体の内部に浸透し難くすることができ、防音性の低下を防止できる。
【0010】
第4の形態は、
前記カバー本体の積層面から突出する係合部をキャビティ内に位置させた状態で発泡原料を発泡硬化させて、当該積層面に形成した発泡体の内部で当該係合部が係合するようにしたことを要旨とする。
このように、熱カシメ加工する前の状態でカバー本体の係合部が発泡体の内部で係合することにより、発泡体をカバー本体に仮止めすることができ、熱カシメ加工を効率良く行うことができる。
【0011】
第5の形態は、
合成樹脂材からなるカバー本体に発泡体が積層されている車両用防音カバーであって、
前記発泡体の表面側に設けられた凹状部と、
前記カバー本体において前記発泡体を積層する積層面側に、前記発泡体の凹状部に対応した位置に設けられた突出部と、
前記突出部の突出端側に設けられて前記凹状部の内側に位置し、当該凹状部の底部に係合して前記カバー本体の積層面との間に発泡体を挟む抜け止め部とを備え、
前記抜け止め部は、前記凹状部の外側に突出しないよう形成されると共に、前記カバー本体に対して当該抜け止め部および前記突出部が樹脂一体成形されていることを要旨とする。
このように、発泡体に形成した凹状部の底部に、カバー本体に対して樹脂一体成形された抜け止め部が係合することで、前処理を行うことなくカバー本体に発泡体を保持することができると共に、発泡体をカバー本体から容易に剥がすことができ、優れたリサイクル性を実現できる。また、抜け止め部を凹状部の外側に突出しないようにすることで、車両用防音カバーの発泡体を音源の外表面に密着させることができると共に、音源の外表面形状に対して優れた追従性を実現できる。すなわち、例えば音源としてエンジンの外表面に車両用防音カバーを密着させることで、エンジン停止後のエンジンの温度低下を抑制することができ、暖機時間を短縮化して燃費向上に寄与し得る利点がある。
【0012】
第6の形態は、
前記発泡体の前記凹状部を画成する壁面を含む表面に塗膜層が形成されていることを要旨とする。
このように、発泡体の表面に塗膜層を形成することで、音源の外表面に付着したオイルが発泡体の内部に浸透し難くすることができ、防音性の低下を防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るによれば、リサイクル性に優れた車両用防音カバーを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る車両用防音カバーを取り付けた車両の概略図である。
【
図2】車両用防音カバーを音源側表面側から見た状態で示す概略図である。
【
図3】(a)は、車両用防音カバーを
図2のA-A線位置で破断した概略断面図であり、(b)は、加工部を熱カシメ加工する前の積層部材を
図2のA-A線位置で破断した概略断面図である。
【
図5】(a)は、下型にカバー本体を設置した状態で発泡原料を注入する状態を示す説明図であり、(b)は、カバー本体を設置した下型と上型とを型閉めした状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る車両用防音カバーおよびその製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、本実施例では、自動車等の車両のエンジンルームに音源としてのエンジンブロックの上部を覆うように配設される車両用防音カバーを例示して説明する。
【実施例0016】
図1に示すように、実施例に係る車両用防音カバー10は、音源E(エンジンブロック)の上部を覆うカバー本体12と、カバー本体12の一方の面(以下、積層面14という)に積層した発泡体24とを備えており、当該発泡体24をエンジンに向けた姿勢で車両MTのエンジンルームERに配設される。なお、実施例では、カバー本体12を略矩形の皿状に形成した例を示してあるが、これに限られるものではない。
【0017】
図2、
図3に示すように、前記カバー本体12は、前記発泡体24を積層する積層面14から突出する係合部16および突出部18と、当該突出部18の突出端側に位置する抜け止め部20とが合成樹脂により一体形成されている。なおカバー本体12は、ポリプロピレン樹脂や高密度ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂等のように後述する熱カシメ加工により塑性変形可能な熱可塑性の合成樹脂により形成される。
【0018】
前記係合部16は、前記積層面14に積層した発泡体24の外周縁側に、当該発泡体24に埋没するよう形成されて、発泡体24の内部で係合部16が係合するよう構成されている。すなわち、発泡体24の内部で係合部16が係合することで、カバー本体12から発泡体24が離れるのを規制している。具体的には、実施例の係合部16は、当該係合部16の形成位置において、基端から突出端に向けてカバー本体12の中央側に向くよう積層面14の面法線に対して傾斜した平板状に形成されている。なお、係合部16の形状としては、これに限られるものではなく、基端から突出端の間で屈曲したL字状であったり、円弧状に湾曲した形状等であってもよく、発泡体24の内部で係合してカバー本体12から発泡体24が離れるのを規制可能な形状であればよい。
【0019】
また、係合部16は、前記発泡体24の外周縁に沿う方向に離間して複数設けられており、当該係合部16により発泡体24の外周縁を全体的に保持し得るよう構成されている。本実施例では、略矩形状に形成された発泡体24の各縁に合わせて係合部16を2つずつ設けてある。
【0020】
図2に示すように、前記突出部18は、前記係合部16よりも積層面14の中央側に位置するよう設けられている。また、突出部18は、音源に対向する前記発泡体24の音源側表面(積層面14に対向する面と反対側の面)に形成された凹状部26に対応する位置に設けられており、当該凹状部26の底部に貫通している。そして、この突出部18の凹状部26側の突出端に、当該突出部18の外周縁より外側に延出する抜け止め部20が設けられており、当該抜け止め部20が凹状部26の底部で係合するようになっている。すなわち、発泡体24の凹状部26の内部で抜け止め部20が係合することにより当該抜け止め部20と前記カバー本体12の積層面14との間に発泡体24が挟まれて、カバー本体12から発泡体24が離れるのを規制している。このように、実施例の車両用防音カバー10は、カバー本体12に設けられて発泡体24の内部で係合する係合部16と、発泡体24の凹状部26の底部に係合する抜け止め部20とによりカバー本体12に対して発泡体24を保持している。
【0021】
ここで、実施例の突出部18は、
図4に示すように、複数の突状片18aが交差した断面十字状に形成されている。このように、突出部18を複数の突状片18aから形成することで、積層面14に沿った方向への発泡体24のズレ動きを規制し得るようになっている。また、前記抜け止め部20は、発泡体24の凹状部26の外側に突出しないよう形成されて、当該抜け止め部20に接触することなく発泡体24の音源側表面に音源(エンジンブロック)を接触させ得るようになっている。ここで、抜け止め部20は、発泡体24の凹状部26の開口縁よりも底部側に位置させることが好ましい。このように、発泡体24の凹状部26の開口縁よりも底部側に抜け止め部20が位置することで、音源(エンジンブロック)に対して発泡体24を弾発的に接触させて密着させることができる。
【0022】
前記発泡体24は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系の熱可塑性樹脂フォームや、ポリウレタンフォームなどを用いることができ、モールド成形によって形成される。なお本実施例の発泡体24はポリウレタンフォームで形成してある。そして、発泡体24の音源側表面および凹状部26の表面には、塗膜が積層した塗膜層28が形成されている。この発泡体24の音源側表面および凹状部26の表面の塗膜層28は、モールド成形による発泡成形時に成形型34の型面34aに塗布された塗料が発泡原料と接触することで形成される。
【0023】
この塗膜層28を形成する塗料は、発泡体24との接着性を良好とし、かつ柔軟性を良好にするため、水系/溶剤系のウレタン系エマルジョン、水系/溶剤系のアクリル系エマルジョン、水系/溶剤系のウレタン系エマルジョンとアクリル系エマルジョンの混合物が好ましく、ポリウレタンフォームとの接着性や柔軟性に加え、伸び性にも優れるウレタン系エマルジョンを含む塗料がより好ましい。塗膜層28が設けられることで、発泡体24のコア部(内部)へのオイル浸透を効果的に防止し得ると共に、遮音性能を高めることができる。また、発泡体24における塗膜層28との境界には、発泡体24がクローズドセル状態となっているスキン層が形成されるとよい。このスキン層は、12μm以上の平均厚みとするのが好ましく、15μm以上とすることがより好ましい。スキン層の平均厚みをこのようにすることで、発泡体24のコア部へのオイル浸透をより効果的に防止し得ると共に、遮音性能をより高めることができる。
【0024】
次に、実施例に係る車両用防音カバー10の製造方法について説明する。実施例の車両用防音カバー10は、カバー本体12を設置した成形型32,34内に発泡原料を注入して発泡させることで製造する。成形型32,34に設置するカバー本体12は、積層面14から係合部16および突出部18が突出すると共に突出部18の突出端側から加工部22が突出するよう設けたものであり、モールド成形等の従来公知の成型方法により作製される。ここで、この加工部22は、発泡原料を発泡硬化した際に、発泡体24の音源側表面側に突出して後述する熱カシメ加工により塑性変形させる部位である。本実施例では、断面十字状に形成した突出部18の中心から円柱状の加工部22を突出するようにしてカバー本体12を作製してある。
【0025】
本実施例の成形型32,34は、
図5に示すように、カバー本体12を設置する下型32と、発泡体24の音源側表面を形成する上型34とから構成されており、型開き状態とした下型32の型面32aに対して前記積層面14と反対の面を向けた姿勢でカバー本体12を設置する。
【0026】
前記上型34には、前記カバー本体12における突出部18に対応する位置に、発泡体24の音源側表面を成形する型面34aから突出する凸状部36が設けられると共に、当該凸状部36の突出端面に、突出部18から突出する加工部22を挿入可能な孔部38が形成されている。そして、この上型34の型面34aおよび凸状部36の表面に離型剤を塗布した後に、当該離型剤に重ねるよう塗料を塗布し、その後所定時間放置して塗料を硬化させることで、上型34の型面34aおよび凸状部36の表面に塗膜部(図示省略)を形成する。この離型剤や塗料の塗布は、スプレー塗布法や刷毛塗り等の従来公知の方法を採用できるが、塗布の均一性や塗布量の調整を行い易いスプレー塗布法が好ましい。
【0027】
また、この離型剤としては、直鎖状炭化水素ワックス(パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等)を含有する離型剤や、分岐鎖状炭化水素ワックス(マイクロクリスタリンワックス、変性ポリエチレンワックス等)を含有する離型剤が好適である。また、塗料としては、水系/溶剤系のウレタン系エマルジョン、水系/溶剤系のアクリル系エマルジョン、水系/溶剤系のウレタン系エマルジョンとアクリル系エマルジョンの混合物などが挙げられる。塗料の塗布量は、1~500g/m2が好ましく、1.5~300g/m2がより好ましく、3~100g/m2が更に好ましい。
【0028】
そして、下型32に設置したカバー本体12の積層面14上に原料供給装置Nから発泡原料を注入し(
図5(a)参照)、その後に下型32に対して塗膜部を形成した上型34を閉じて、上型34の型面34aから突出する凸状部36の突出端面に設けた孔部38にカバー本体12の突出部18の突出端に設けた加工部22を挿入した型閉め状態とする(
図5(b)参照)。このとき、カバー本体12の係合部16は、成形型32,34のキャビティ内に位置している。この状態で成形型32,34のキャビティ内で発泡原料を発泡硬化することで、カバー本体12に発泡体24が積層した積層部品11が形成される(
図3(b)参照)。なお、上型34に注入口を別に設け、成形型32,34を閉じた後に注入口から発泡原料を成形型32,34内に注入するようにすることも可能である。
【0029】
発泡原料を発泡硬化した後に、下型32に対して上型34を開いて積層部品11を成形型32,34から取り出す。このとき、カバー本体12の係合部16が発泡体24の内部で係合することで、カバー本体12に対して発泡体24が仮止めされ、積層部品11を容易に取り回すことができる。この積層部品11は、上型34の凸状部36に対応して形成される発泡体24の凹状部26の内側に前記カバー本体12の加工部22が突出した状態となっている。また、発泡原料を発泡硬化する際に予め上型34の型面34aに形成した塗膜部と発泡原料が接触することで、発泡体24の音源側表面および凹状部26の表面に塗膜層28が形成される。
【0030】
次いで、
図3(b)に示すように、発泡体24の凹状部26の内側で突出する加工部22の突出端を熱カシメ機40で加熱しながら積層面14側に加圧して塑性変形させる(熱カシメ加工する)ことで、当該凹状部26の底部に係合する抜け止め部20を形成する。これにより、抜け止め部20とカバー本体12の積層面14とで発泡体24が挟まれた車両用防音カバー10を製造することができる。なお熱カシメ加工は、加圧型をヒータで加熱するタイプや、超音波発振器により加熱するタイプなど従来公知の熱カシメ機40を用いることができる。また、抜け止め部20は、前記凹状部26の外側(発泡体24の音源側表面)に突出しないよう形成することが好ましい。
【0031】
このように、発泡成形した発泡体24の凹状部26内に突出する突出部18を熱カシメ加工して抜け止め部20を形成し、抜け止め部20とカバー本体12の積層面14とで発泡体24を挟むことで、カバー本体12にプライマー塗布や火炎処理等の前処理を行うことなくカバー本体12に発泡体24を保持することができる。また、カバー本体12と発泡体24とをリベット等の固定部材により固定したり、接着剤等により接着して接合する必要がないから作業工数の簡略化や部品点数の削減を図ることができる。
【0032】
またカバー本体12と発泡体24とが接着されていないから、発泡体24をカバー本体12から容易に剥がしてカバー本体12と発泡体24とを分別することができ、優れたリサイクル性を実現できる。また、熱カシメ加工する前は、カバー本体12の係合部16が発泡体24の内部で係合することにより、発泡体24をカバー本体12に仮止めすることができ、熱カシメ加工を効率良く行うことができる。
【0033】
また、抜け止め部20を凹状部26の外側に突出しないよう形成することで、車両用防音カバー10の発泡体24の音源側表面を音源の外表面に密着させることができると共に、音源の外表面形状に対して優れた追従性を実現できる。このため、例えば音源としてエンジンブロックの外表面に車両用防音カバー10を密着させることで、エンジン停止後のエンジンの温度低下を抑制することができ、暖機時間を短縮化して燃費向上に寄与し得る利点がある。
【0034】
更に、発泡体24の凹状部26を画成する壁面を含む表面に塗膜層28を形成することで、音源の外表面に付着したオイル等が発泡体24の内部に浸透し難くすることができ、防音性の低下を防止できる。
【0035】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、例えば以下のように変更することができる。
(1)実施例では、突出部18を断面十字状に形成したが、当該突出部18の形状はこれに限られるものではなく、円柱状や多角柱状等であってもよい。
(2)実施例では、発泡体24に凹状部26を形成して、当該凹状部26内に突出する加工部22を熱カシメ加工するようにしたが、必ずしも凹状部26を設ける必要はなく、発泡体24の凹状部26を形成していない音源側表面から加工部22を突出させるようにして熱カシメ加工するようにしてもよい。すなわち、発泡体24の音源側表面を音源の外表面に密着させない場合や、密着させる必要がない位置に抜け止め部20を形成するような場合には、発泡体24の音源側表面に抜け止め部20が位置するよう形成してもよい。
(3)実施例では、突出部18と加工部22とを異なる形状・大きさで形成したが、これらを同一の形状・大きさで形成することもできる。例えば、突出部18と加工部22とを連続した円柱状等に形成し、突出端を成形型32,34の孔部38に挿入した状態で発泡原料を発泡硬化することで、発泡体24の音源側表面(凹状部26の内側)に突出するように加工部22を形成することができる。
(4)実施例では、突出部18を係合部16よりもカバー本体12の積層面14の中央側に位置するよう設けたが、係合部16よりもカバー本体12の積層面14の外周縁側に突出部18が位置するよう設けてもよい。すなわち、カバー本体12の積層面14に対する係合部16および突出部18の形成位置および形成数は、車両用防音カバー10の大きさや形状等に応じて適宜に決定することができる。
(5)実施例では、カバー本体12の積層面14に係合部16を形成したが、当該係合部16を省略することも可能である。すなわち、発泡成形後の熱カシメ加工前の状態で、突出部18によって発泡体24がカバー本体12に保持されていれば、係合部16はなくてもよい。このように、加工部22を設けた突出部18により発泡体24を仮止めすることで、カバー本体12の構成を簡略化できる利点がある。