(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186734
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】複合材料および複合製品
(51)【国際特許分類】
B27N 3/02 20060101AFI20221208BHJP
E04F 13/10 20060101ALI20221208BHJP
E04F 15/04 20060101ALI20221208BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20221208BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20221208BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20221208BHJP
C08L 51/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B27N3/02 D
E04F13/10
E04F15/04 C
C08J5/00 CEP
C08J5/00 CET
C08L25/04
C08L1/00
C08L51/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022157235
(22)【出願日】2022-09-30
(62)【分割の表示】P 2019537082の分割
【原出願日】2018-02-01
(31)【優先権主張番号】62/454,110
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(71)【出願人】
【識別番号】514260549
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ メイン システム ボード オブ トラスティズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メイエス、ダンカン
(72)【発明者】
【氏名】ピンネーネン、ヤンネ
(72)【発明者】
【氏名】ウエスト、クリストファー エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー、ダグラス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ユースー
(57)【要約】
【課題】改良された強度および剛性特性ならびに低いクリープなどの改良された諸特性を有するセルロース繊維を含む複合材料を提供する。
【解決手段】本発明は、セルロース材料、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)およびスチレン無水マレイン酸(SMA)を含む複合材料に関する。このセルロース材料は、複合材料に組み込まれる前に熱的に変性(改質)することができる。本発明はまた、本発明による複合材料を含む複合製品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも20重量%のセルロース材料、少なくとも1重量%および20重量%未満のスチレン無水マレイン酸、ならびに5~50重量%の耐衝撃性ポリスチレンを含む複合材料。
【請求項2】
前記セルロース材料が熱変性セルロース材料である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記セルロース材料が、大気圧下で160~250℃、好ましくは200~230℃の温度で、または高められた圧力下で120℃を超える温度で熱処理することにより熱変性されている、請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記複合材料が、2~15重量%のスチレン無水マレイン酸を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記複合材料が、5~10重量%のスチレン無水マレイン酸を含む、請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
25~75重量%のセルロース材料を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項7】
40~65重量%のセルロース材料を含む、請求項6に記載の複合材料。
【請求項8】
45~65重量%のセルロース材料を含む、請求項7に記載の複合材料。
【請求項9】
50~60重量%のセルロース材料を含む、請求項8に記載の複合材料。
【請求項10】
35~50重量%の耐衝撃性ポリスチレンを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項11】
前記セルロース材料が1mm未満の粒子サイズを有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項12】
前記セルロース材料が粉末の形態である、請求項1~11のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の複合材料を含む、複合製品。
【請求項14】
前記複合製品が、クラッディング、デッキ、窓およびドアの外形、街灯柱、桟橋、建具または家具に用いられる、請求項13に記載の複合製品。
【請求項15】
複合製品の製造方法であって、
a)セルロース材料、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)およびスチレン無水マレイン酸(SMA)を準備するステップ、
b)前記のセルロース材料、HIPSおよびSMAを押出機に供給するステップ、ならびに、
c)この複合製品を押し出すステップ
を含む、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース材料、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)およびスチレン無水マレイン酸(SMA)を含む複合材料に関する。このセルロース材料は、複合材料に組み込まれる前に熱的に変性(改質)されていてよい。本発明はまた、本発明による複合材料を含む複合製品に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的に、フェンス、デッキ、ドア、窓、クラッディング(被覆材)、およびサイディング(羽目板)は、無垢材から作られた部品で構成されている。これらの製品は、しばしば、金属製またはセメント製のもの、たとえば金属製のフェンスやセメントブロックの壁やデッキよりも美的に魅力的であると考えられている。しかし、しばらくすると、無垢の木材製品は、天候への暴露や生物学的侵入から自然に分解し始めることがある。この劣化は、広く入手可能な耐候性コーティング、塗料、ワニス、仕上げ剤などで木材を処理することによって緩和可能であることが知られている。しかしながら残念なことに、処理された木材製品は、部分的または完全な交換を必要とする短期間のうちに劣化することが多い。フェンス、デッキ、窓、ドアに適した多くの無垢材のメンテナンスはコストがかかる。さらに、木材の自然な変化のために、個々の部品を交換すると、製品の外観が不整合で、不均一になることがある。
【0003】
半構造的な屋外用途、たとえば、デッキ、公園の通路、子供の遊び場、座席、ベンチなどの用途での木材の代替品として、多くの製品、技術、アイデアが、押出または成形された熱可塑性樹脂の製造に使用されている。最も広く使用されている熱可塑性樹脂は、ポリエチレンであり、典型的にはHDPE、LDPEおよびLLDPEの牛乳ボトル、フィルムなどからのリサイクル製品である。広く使用されているその他の熱可塑性樹脂の例には、ポリスチレン、耐衝撃性が改質されたポリスチレン、PVCおよびポリプロピレンが含まれる。多くの系はまた、炭酸カルシウムのような無機充填剤、およびタルクまたはセルロース系充填剤、典型的には木材または他の天然繊維を使用し、これらを熱可塑性樹脂中に配合して特性を高め、そしてこの配合物が代替される材木(wooden lumber)の外観に近づくようにする。これらの系は、特に長期間の耐久性とメンテナンスの削減という利点を持つデッキにおいて、急速に市場から受け入れられている。屋外用途のために木材を処理する目的で使用される化学物質および防腐剤に関する最近の健康上の懸念に因り、また、耐久性のある広葉樹材(硬材)の不足の観点から、それらはさらなる利点を有する。
【0004】
セルロース/ポリマー複合材料などの多くの複合材料が、全天然木材、パーティクルボード、ウエハボード、および他の同様の材料の代替品として使用されている。例えば、米国特許第3,908,902号;米国特許第4,091,153号;米国特許第4,686,251号;米国特許第4,708,623号;米国特許第5,002,713号;米国特許第5,087,400号;米国特許第5,151,238号;米国特許第5,417,904号;米国特許第5,948,524号;米国特許第6,280,667号;米国特許第6,827,995号、および米国特許第6,936,200号は、プラスチック/セルロース系木材代替品の製造方法に関する。
【0005】
スチレン-無水マレイン酸と木材ベースの充填剤との固体複合材料は、以下の文献に開示されている:米国特許第3,765,934号;米国特許第3,894,975号、および米国特許第3,958,069号;カナダ公開特許出願CA2,626,992A1、ならびに、“Properties of Styrene-Maleic Anhydride Copolymers Containing Wood-Based Fillers”(「木材系充填剤を含有するスチレン-無水マレイン酸コポリマーの性質」)、Simonsenら、Forest Products Journal、Vol.48、No.1、pp.89-92、1998年1月。
【0006】
天然木材と比較して、セルロース/ポリマー複合材料は、優れた磨耗および引裂に対する耐性を与える。特に、セルロース/ポリマー複合材料は、向上した耐湿性を有する。実際、水分の保持が、天然木の反り、割れおよび変色の主な原因であることはよく知られている。さらに、セルロース/ポリマー複合材料は天然木の外観を有し、それらは天然木と同じ方法で製材し、研磨し、成形し、回転させ、固定しそして仕上げることができる。特に、フロアーリングやデッキのような通常の磨耗が発生する用途では、セルロース/ポリマー複合材料はまた、無垢材よりも良好な表面摩耗耐性を示す。その結果、セルロース/ポリマー複合材料は、内装用および外装用の装飾用住宅モールディング、額縁、家具、ポーチデッキ、デッキレール、窓用モールディング、窓用部品、ドア用部品、屋根構造、建築物サイディングおよびクラッディング、ならびに他の適切な屋内および屋外のコンポーネントなどの用途に一般に使用されている。さらに、セルロース/ポリマー複合材料は、非常に耐久性が高くて乏しい広葉樹材(硬材)、たとえば熱帯広葉樹材に取って代わることができる。
【0007】
当業者は、合成木材組成物中の過剰な水分含有量が低品質の最終製品をもたらし得ることを認識している。特に、合成木材組成物中の過剰な水分含有量は、膨潤、ひび割れ、および崩れた外観の影響を受けやすい最終成分をもたらす可能性がある。したがって、セルロース材料を合成木材組成物に導入する前に、セルロース材料を所定のレベルまで乾燥させる必要があるかもしれない。セルロース材料が乾燥された後でも、それは環境から水分を再吸収する自然な傾向を有する。結果として、合成木材組成物に添加される前にセルロース材料が追加の水分を再吸収するのを防ぐために、乾燥セルロース材料を水分制御環境に貯蔵することも必要であり得る。これらの考察に鑑みれば、異なる場所間で輸送する間に十分に乾燥したセルロース材料を維持することは困難でありそして費用がかかる可能性がある。
【0008】
プラスチック製のフェンス部品は、伝統的な天然の木製フェンスの代替品または補助品として開発された。例えば、米国特許第5,100,109号は、間隔をあけて配置されたフェンスポストに広げて固定することができる可撓性でプラスチック製のロール可能なフェンスボードを提供することによって、フェンスを構築する方法を記載している。この可撓性のフェンスボードは、標準的な木板を模倣した高さおよび幅の寸法を有し、350フィート以上の長さを有して形成される。この特許によれば、フェンスボードは、可撓性である熱可塑性材料の連続押出プロセスで形成される。
【0009】
米国特許第5,404,685号明細書は、発泡ポリスチレンプラスチック部品、より具体的にはプラスチックカラムおよびパネルから部分的に形成された壁またはフェンスを記載している。この特許によるフェンスの構築は複数の工程を必要とする。例えば、壁またはフェンスの安定性は、ポリスチレンプラスチックカラムが地面に固定された後に、そのカラムの中空にコンクリートのような補強充填材料を注ぐことによって達成される。フェンスの硬化した外面は、フェンスが構築された後で、フェンスまたは壁に、化粧しっくい(stucco)または特別な外部塗装などの外部仕上げ剤を適用することによって得られる。
【0010】
しかしながら、上記の合成木材製品または木材複合製品は、それらの機械的特性、特に強度および剛性を、それらが取って代わる木材と比較するときに不利であることが通常である。さらに、上記の木材/セルロース複合材料は、連続的な荷重および/または高い周囲温度にさらされるとクリープ(creep)の影響を受けやすい。さらに、これらの材料は熱に長期間さらされると反りがちである。これらの構造上の制限のために、上記の合成木材製品の使用は、より少ない構造上の用途に限定されることが多い。たとえば、これらは、デッキではデッキボードに使用されるが、通常は構造全体の荷重を支える垂直支柱や梁には使用できない。しかしながら、典型的に高い熱膨張係数を有する熱可塑性ポリマー製の製品と比較して、木材/セルロース複合材料は、一般に改善された熱安定性を有する。純粋な熱可塑性ポリマーは高レベルの熱膨張を示す。このポリマーにリグノセルロース繊維を導入することによって、熱膨張係数が低下する。
【0011】
米国特許第8,221,663号は、1.3g/cm3以下の密度を有する発泡物品を製造する方法を記載している。
【0012】
ポリマー-木材組成物を調製する方法に関する1つの問題は、熱可塑性樹脂の溶接性などの所望の特性を有する物品が達成され得るような条件であることを確実にすることである。いくつかの実施形態において、細部ならびに特定のプロファイル(外形)および形状を有する対称的な物品を得ることができることが重要である。さらなる問題は、十分に高い割合のセルロース繊維を使用することができ、それでも所望の特性を有する物品が得られることを確実にすることに関する。
【0013】
したがって、当技術分野において、上記の問題を克服する複合材料および複合製品、ならびにそのような複合材料および複合製品を製造する方法を提供することが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、改良された強度および剛性特性ならびに低いクリープなどの改良された諸特性を有するセルロース繊維を含む複合材料を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、そのような複合材料を含む複合製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの目的および他の利点は本発明によって達成される。
【0017】
本発明は、少なくとも20重量%のセルロース材料、少なくとも1重量%および20重量%未満のスチレン無水マレイン酸、ならびに5~50重量%の耐衝撃性ポリスチレンを含む複合材料に関する。本発明の一実施形態において、当該複合材料は、炭酸カルシウムや他の無機充填剤のような他の充填剤を含んでよい。
【0018】
当該セルロース材料は、熱的に変性(改質)されたセルロース材料であってよい。この熱変性は、当業界で知られた方法に従って、大気圧下で160~250℃、好ましくは200~230℃の温度で、または高められた圧力下で120℃を超える温度で熱処理することにより実施される。
【0019】
当該複合材料は、少なくとも20重量%のセルロース材料、好ましくは、25~75重量%のセルロース材料、さらにより好ましくは、40~65重量%、45~65重量%、または50~60重量%の間のセルロース材料を含む。
【0020】
一実施形態において、当該複合材料は、少なくとも2重量%および20重量%未満のスチレン無水マレイン酸(SMA)、たとえば、2~15重量%、または2~10重量%、5~10重量%、もしくは2~7重量%スチレン無水マレイン酸(SMA)を含む。
【0021】
当該セルロース材料は、単一形態のセルロース材料、または、たとえば異なる種類の繊維の混合物からなるものであってよい。セルロース材料は、たとえば木材粒子またはパルプの形態で提供することができる。パルプの例には、機械処理パルプ、半機械処理もしくは化学処理パルプ、たとえば、熱機械処理パルプ、化学・熱機械処理パルプ、もしくは化学処理パルプ(クラフトまたはサルファイトプロセスにて製造されたもの)、または溶解パルプが含まれる。木材粒子は、例えば、砕木、木粉またはおがくず(鋸くず)であり得る。本発明による複合材料を調製するために使用する前に、セルロース材料を圧縮してもよい。
【0022】
当該セルロース材料は、1mm未満、好ましくは0.50mm未満、さらにより好ましくは0.25mm未満または0.1mm未満の粒子サイズを有していてよい。複合材料中のセルロース材料のより均一な分散および分布が達成されるので、セルロース材料は小さいサイズを有することが好ましい。セルロース材料がセルロース繊維の形態である場合、この繊維は、1mm未満、好ましくは0.50mm未満、さらにより好ましくは0.25mm未満または0.1mm未満の繊維長を有することが好ましい。
【0023】
当該セルロース材料は、粉末の形態であり得る。従って、セルロース材料は、粉末を製造するために機械的に処理されたセルロース繊維を含み得る。セルロース材料のサイズは、セルロース材料が均一に分布している複合材料を得ることができるために重要である。セルロース材料が粉末の形態である場合、ポリマーとの良好な分散および混合を達成することは容易であることが分かった。
【0024】
耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)は、例えば、ポリブタジエンが重合中に添加されてポリスチレンに化学的に結合し、続いてノルマルポリブタジエンと混合されているグラフトコポリマーであってよい。HIPSは、例えばBextreneの名称で市販されている。
【0025】
SMA(スチレン無水マレイン酸)は、スチレンおよび無水マレイン酸モノマーから構成される合成ポリマーである。
【0026】
本発明はまた、複合製品の製造方法であって、セルロース材料、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)およびスチレン無水マレイン酸(SMA)を準備するステップ、前記のセルロース材料、HIPSおよびSMAを押出機に供給するステップ、ならびに、この複合製品を押し出すステップを含む方法に関する。
【0027】
押出機で使用される温度は、好ましくは180℃を超える。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
本発明は、セルロース材料、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、およびスチレン無水マレイン酸(SMA)を含む複合材料に関する。驚くべきことに、本発明による複合材料は、増強された強度および剛性特性を提供することがわかった。
【0029】
本発明による複合材料の加工能力は、窓およびドアのような用途、ならびに通常の木材-ポリマー複合材料およびプラスチックが適していないより重質なインフラ用途のための高強度複合材料プロファイル(外形)に好適である。
【0030】
観察された強度および安定性の改善は、セルロース材料とマトリックス成分との間のエステル化反応によって高められる。本発明の一実施形態では、複合材料および複合製品の重量密度は、1.0g/cm3より高く、例えば1.3g/cm3より高い。
【0031】
さらに、複合材料中に熱変性されたセルロース材料を使用することによって、特に有利な強度特性を有する複合材料が達成されることが見出された。
【0032】
熱変性セルロース材料とは、セルロース材料が大気圧下で160~250℃の間の高められた温度で、または1バールを超える高められた圧力下で120℃を超える温度で熱処理されていることを意味する。セルロース材料は、あらゆる種類のセルロース系木材の熱処理セルロース繊維であり得る。熱変性セルロース繊維をさらに処理して、前記熱変性セルロース材料を形成することができる(たとえば、機械的処理および/または化学的処理されたもの)。熱処理セルロース繊維の機械的処理は、粉末を形成するために行うことができるが、熱変性セルロース繊維を機械的に処理することによる利点の一つは、それらが独特の形状を有する非常に小さい粒子に容易に細粒化されることである。サイズおよび形状は、強度や吸水率(吸水性)など、さまざまな複合材料の特性に影響を与える重要なパラメータである。通常の乾燥木材に見られるものと比較して非常に細かい粒子サイズおよび樹脂の欠如のために、熱変性セルロース材料をポリマーに添加して複合材料を形成する場合、繊維の束形成のリスクは大幅に減少し、ひいてはより均一な分散および分布につながる。熱処理セルロース繊維の化学処理は、材料の反応性を改善するために行われてもよい。機械的または化学的に処理されたセルロース繊維を熱処理すること、たとえば粉末状に細粒化されたセルロース繊維を熱処理することも可能であるかもしれない。
【0033】
複合材料はまた、複合材料の性能およびプロセスパラメータを向上させる添加剤を含み得る。可能な添加剤は、潤滑剤、カップリング剤、顔料、紫外線安定剤もしくはブロッカー、および/または充填剤であり得る。本発明の一実施形態では、複合材料は難燃剤を含む。
【0034】
本発明はまた、複合製品を製造するために押出機を使用することを含む、複合製品を製造するための方法に関する。任意の種類の押出機を使用することが可能である。
【0035】
本発明による複合材料は、例えば配合押出機を使用してペレットまたは顆粒の形態で製造することができる。そのようなペレットまたは顆粒は、複合材料を含む複合製品を製造するために使用することができる。そのような複合製品は、例えば、押出成形、射出成形、回転成形、3D印刷または型押し(form pressing)によって製造することができる。複合材料はまた、たとえば、成形複合製品がそこから押し出されるプロファイルダイ(profile die)を提供することによって、成形複合製品の形態で製造することもできる。そのようなプロファイルを備えた複合製品群は、種々の形状でそして様々な目的のために製造することができる。
【0036】
製造された複合製品は、クラッディング(被覆材)、デッキ、窓およびドアの外形、街灯柱、桟橋、建具類、家具など、さまざまな製品の製造に使用できる。製造された複合製品は、内装用および外装用の装飾用住宅モールディング、額縁、家具、ポーチデッキ、デッキ用手すり、窓用モールディング、窓用部品、ドア用部品、屋根構造、建築物サイディングおよびクラッディング(被覆材)、ならびに、他の適切な屋内および屋外部品などの用途に使用できる。本発明による複合材料および複合製品はまた、たとえば水中構造物などの海洋環境内においても、また支柱(shoring)においても有用であり得る。さらに、本発明によるセルロース/ポリマー複合材料は、非常に耐久性が高くて乏しい広葉樹材(硬材)、たとえば熱帯広葉樹材に取って代わることができる。
【実施例0037】
略語:
SMA:スチレン無水マレイン酸(Polyscopeから入手されたXiran)
TW:熱変性セルロース材料
HIPS:耐衝撃性ポリスチレン
MOE:弾性率
STD:標準偏差
WPC:木材-ポリマー複合材料
Avg:平均
COV:変動係数
【0038】
例1
この実験では、本発明による複合材料を含む複合製品の機械的特性を調査した。
【0039】
熱変性木材(HTW)繊維を使用した。この繊維は、マツからの削りくずであって、212℃にて3時間加熱することにより熱的に変性し、続いてハンマーミル中で粉砕し、篩を通過させたものである。
【0040】
以下に示す配合物を調製した。
【0041】
【0042】
パイロット押出システムの仕様は以下のとおりであり、下記のプロセスパラメータを押出機を使用した。
【0043】
【0044】
曲げ特性(曲げ強さおよび曲げ弾性率)を、以下の試料について測定した。
【0045】
【0046】
例2
試料の寸法安定性を測定した。
【0047】
試料を最初に室温で状態調節し、次いで合計28日間水中に浸漬した。寸法測定は、吸水率ならびに幅、長さおよび厚みの寸法変化について、24時間、7日、14日、21日および28日に行われた。
【0048】
【0049】
【0050】
熱変性セルロース材料を用いた試料は、通常のマツで作製された試料と比較して、吸水率(重量増加)および寸法変化が少ないことが分かった。
【0051】
SMAの含有量は、試料の吸水率(重量増加)および寸法変化に大きく影響した。
【0052】
例3
熱膨張係数(CTE)は、ASTM規格D696に従って測定され、他の従来のプラスチックおよび複合製品と比較された。このCTEは、長手方向(押出方向)および幅方向(押出に対して横方向)の2方向について測定される。
【0053】
【0054】
本発明による試料は、市販のWPCと同様の熱膨張係数および約50%のPVCプロファイルを示すことが分かったが、これは大きな利点である。
【0055】
押出(長手方向)方向のCTEは、横方向(幅方向)よりもかなり小さいことが分かった。
【0056】
熱変性セルロース材料を用いた試料は、通常のマツよりも低いCTE値を示すことが分かった。
【0057】
SMAの含有量は、試料のCTEの低下に寄与していることが分かった。
【0058】
例4
本発明に従って複合製品の表面上に塗装することの実現可能性を評価するために、研究を行った。
【0059】
【0060】
塗装/コーティング条件は、以下の通りであった。
・塗料ブランド:NuCoat水性
・塗料製品名:スーパーアンチヒートシグナルブラック&バーレッド(Super anti-heat Signal Black & Bar Red)
・表面処理:スコッチブライト(Scotch Brite)でごしごしと洗い、Zowo-Plast1120で拭取るか、または供給された状態で使用。
・スプレー速度:1.8ノズルサイズでスプレーブース75°
・スプレー圧力:55psi
・室内条件:相対湿度39%で室温
・硬化温度:相対湿度21%で90.5°F
・硬化時間:24時間
【0061】
試験方法:
ASTM D4541 - 携帯型接着試験機を使用するコーティングの引き剥がし強度のための標準試験方法を用いた。この携帯型接着試験機は、DeFelsko製の引き剥がし強度試験機、Model PosiTest AT-Mであった。
【0062】
【0063】
試料表面のトポロジー特性を評価するために、硬質表面に対して処理有りおよび処理無しで引き剥がし試験を実施した。表面処理は、コーティングに先立って洗浄および調製のため、Scotch Brite(登録商標)のスポンジを用いて表面をごしごし洗い、Zowo-Plast1120(水性/生分解性洗浄剤)で拭取ることにより行った。
【0064】
処理済み表面について、以下の結果が得られた。
【表9】
【0065】
全ての試料の引き剥がし応力は非常に高く、これは本発明による複合製品の塗装能力を表わしている。上記のように、SMA含有量および表面処理は結合強度に影響を及ぼす。
【0066】
本発明の上記の詳細な説明に鑑みて、他の修正形態および変形形態が当業者には明らかになるであろう。しかしながら、そのような他の修正および変形が本発明の本質および範囲から逸脱することなく実施され得ることは明らかであるはずである。
少なくとも20重量%のセルロース材料、少なくとも1重量%および20重量%未満のスチレン無水マレイン酸、ならびに5~50重量%の耐衝撃性ポリスチレンを含む複合材料。
本発明の上記の詳細な説明に鑑みて、他の修正形態および変形形態が当業者には明らかになるであろう。しかしながら、そのような他の修正および変形が本発明の本質および範囲から逸脱することなく実施され得ることは明らかであるはずである。
なお、本発明に包含され得る諸態様または諸実施形態は、以下のとおり要約される。
[1].
少なくとも20重量%のセルロース材料、少なくとも1重量%および20重量%未満のスチレン無水マレイン酸、ならびに5~50重量%の耐衝撃性ポリスチレンを含む複合材料。
[2].
前記セルロース材料が熱変性セルロース材料である、上記項目1に記載の複合材料。
[3].
前記セルロース材料が、大気圧下で160~250℃、好ましくは200~230℃の温度で、または高められた圧力下で120℃を超える温度で熱処理することにより熱変性されている、上記項目2に記載の複合材料。
[4].
前記複合材料が、2~15重量%のスチレン無水マレイン酸を含む、上記項目1~3のいずれか1項に記載の複合材料。
[5].
前記複合材料が、5~10重量%のスチレン無水マレイン酸を含む、上記項目4に記載の複合材料。
[6].
25~75重量%のセルロース材料を含む、上記項目1~5のいずれか1項に記載の複合材料。
[7].
40~65重量%のセルロース材料を含む、上記項目6に記載の複合材料。
[8].
45~65重量%のセルロース材料を含む、上記項目7に記載の複合材料。
[9].
50~60重量%のセルロース材料を含む、上記項目8に記載の複合材料。
[10].
35~50重量%の耐衝撃性ポリスチレンを含む、上記項目1~9のいずれか1項に記載の複合材料。
[11].
前記セルロース材料が1mm未満の粒子サイズを有する、上記項目1~10のいずれか1項に記載の複合材料。
[12].
前記セルロース材料が粉末の形態である、上記項目1~11のいずれか1項に記載の複合材料。
[13].
上記項目1~12のいずれか1項に記載の複合材料を含む、複合製品。
[14].
前記複合製品が、クラッディング、デッキ、窓およびドアの外形、街灯柱、桟橋、建具または家具に用いられる、上記項目13に記載の複合製品。
[15].
複合製品の製造方法であって、
a)セルロース材料、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)およびスチレン無水マレイン酸(SMA)を準備するステップ、
b)前記のセルロース材料、HIPSおよびSMAを押出機に供給するステップ、ならびに、
c)この複合製品を押し出すステップ
を含む、上記方法。