(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186758
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】サーマルプリンタの印字方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/32 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
B41J2/32 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162876
(22)【出願日】2022-10-11
(62)【分割の表示】P 2018077856の分割
【原出願日】2018-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150348
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】柴尾 賢一
(57)【要約】
【課題】サーマルヘッドユニットの発熱部の断線を抑制することにより、発熱部の寿命を延ばすことが可能なサーマルプリンタの印字方法を供給する。
【解決手段】ライン状に配置された複数の発熱部20を有するサーマルヘッドユニット7と、サーマルヘッドユニット7の発熱部20に当接するように対向して配置されるプラテンローラ8とを備えたサーマルプリンタ1を用いて、サーマルヘッドユニット7とプラテンローラ8との間に記録媒体3を挟持して、発熱部20の配列方向と直交する方向に搬送しながら所望の印字情報を発熱部20を介して記録媒体3に印字するサーマルプリンタ1の印字方法であって、記録媒体3の搬送方向に延びる辺33および辺34が発熱部20の配列方向に対して非直交である記録媒体3を用いて印字を行う印字工程を備え、印字工程の印字開始において、辺33および辺34は発熱部20の配列方向に対して常に非直交である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン状に配置された複数の発熱部を有するサーマルヘッドユニットと、前記サーマルヘッドユニットの前記発熱部に当接するように対向して配置されるプラテンローラとを備えたサーマルプリンタを用いて、前記サーマルヘッドユニットと前記プラテンローラとの間に記録媒体を挟持して、前記発熱部の配列方向と直交する方向に搬送しながら所望の印字情報を前記発熱部を介して前記記録媒体に印字するサーマルプリンタの印字方法であって、
前記記録媒体の搬送方向に延びる辺が前記発熱部の配列方向に対して非直交である前記記録媒体を用いて印字を行う印字工程を備え、
前記印字工程の印字開始において、前記記録媒体の搬送方向に延びる辺は前記発熱部の配列方向に対して常に非直交である、サーマルプリンタの印字方法。
【請求項2】
前記印字工程は、前記記録媒体の搬送方向に延びる辺が前記発熱部の配列方向に対して直交していると肉眼により認識され得る前記記録媒体を用いて印字を行う工程を含む、請求項1に記載の印字方法。
【請求項3】
前記印字工程は、前記記録媒体と前記発熱部との当接開始から終了までの間において、前記記録媒体の搬送方向に延びる辺について、前記記録媒体の搬送方向に平行な中心線に対して最も遠い部分を第1部分とし、前記記録媒体の中心線に対して最も近い部分を第2部分とした場合に、前記記録媒体の第1部分と第2部分との前記発熱部の配列方向の間隔が、隣り合う前記発熱部同士の間隔以上である前記記録媒体を用いて印字を行う工程を含む、請求項1または2に記載のサーマルプリンタの印字方法。
【請求項4】
前記印字工程は、前記記録媒体の第1部分と第2部分とを結ぶ線と、前記発熱部の配列方向とのなす角度が90°±10°の範囲内でかつ90°を除いた前記記録媒体を用いて印字を行う工程を含む、請求項3に記載のサーマルプリンタの印字方法。
【請求項5】
前記印字工程は、前記記録媒体の第1部分と第2部分との前記発熱部の配列方向の間隔が、0mmよりも大きく3mmよりも小さい範囲内である前記記録媒体を用いて印字を行う工程を含む、請求項3または4に記載のサーマルプリンタの印字方法。
【請求項6】
前記印字工程は、前記記録媒体の搬送方向に延びる対向する2辺の間隔が搬送方向に対して徐々に大きくなるか、または、徐々に小さくなる前記記録媒体を用いて印字を行う工程を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のサーマルプリンタの印字方法。
【請求項7】
前記印字工程は、前記記録媒体の搬送方向に延びる対向する2辺の間隔が搬送方向に対して略等しく、かつ、前記記録媒体の搬送方向に延びる辺が前記サーマルヘッドユニットの発熱部の配列方向に対して非直交である前記記録媒体を用いて印字を行う工程を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のサーマルプリンタの印字方法。
【請求項8】
前記印字工程は、前記記録媒体の搬送方向に延びる辺が円弧状、波状、または、ジグザグ状である前記記録媒体を用いて印字を行う工程を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のサーマルプリンタの印字方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタの印字方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーマルプリンタは、記録媒体の搬送時に、サーマルヘッドユニットを構成する複数の発熱部と記録媒体との間の摩擦により発熱部が断線することがあった。具体的には、発熱部と記録媒体との間の摩擦が酷くなると、発熱部の表面の保護層が磨耗して保護層が無くなり、その後電極部が剥き出しになり、最終的には断線するというものである。
【0003】
このような発熱部の断線により、断線した発熱部の部分だけ印字がされなくなり、印字かすれが発生する。特に、サーマルヘッドユニットの発熱部のうち、バーコードを印字する印字領域に対応する部分の発熱部のいずれか1つでも断線すると、印字されたバーコードをスキャナで読み取れない場合がある。
【0004】
このため、1つの発熱部ごとにチェック信号(電圧)を印加して、電流が流れた場合には発熱部が断線していないと判定し、電流が流れない場合には発熱部が断線していると判断するようなヘッドチェックを行う技術が特許文献1に記載されている。また、特許文献1には、発熱部の断線についてヘッドチェックを複数回実行することにより、サーマルヘッドユニットの発熱部の断線を判断できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されたサーマルプリンタのヘッドチェック方法により、サーマルヘッドユニットの発熱部が断線しているか否かを判断することは可能である。しかしながら、発熱部の断線を抑制することが困難であるため、サーマルヘッドユニットの発熱部の寿命を延ばすことが困難であるという問題点がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消すべくなされたものであって、サーマルヘッドユニットの発熱部の断線を抑制することにより、発熱部の寿命を延ばすことが可能なサーマルプリンタの印字方法を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、次のように構成されている。
【0009】
(1)本発明のサーマルプリンタの印字方法は、ライン状に配置された複数の発熱部を有するサーマルヘッドユニットと、前記サーマルヘッドユニットの前記発熱部に当接するように対向して配置されるプラテンローラとを備えたサーマルプリンタを用いて、前記サーマルヘッドユニットと前記プラテンローラとの間に記録媒体を挟持して、前記発熱部の配列方向と直交する方向に搬送しながら所望の印字情報を前記発熱部を介して前記記録媒体に印字するサーマルプリンタの印字方法であって、前記記録媒体の搬送方向に延びる辺が前記発熱部の配列方向に対して非直交である前記記録媒体を用いて印字を行う印字工程を備え、前記印字工程の印字開始において、前記記録媒体の搬送方向に延びる辺は前記発熱部の配列方向に対して常に非直交である。
【0010】
上記構成によると、前記記録媒体の搬送方向に延びる辺が前記サーマルヘッドユニットの発熱部の配列方向に対して非直交である前記記録媒体を用いて印字を行うことによって、記録媒体の搬送方向に延びる辺と発熱部との擦れ(磨耗)が1つの発熱部に集中せずに複数の発熱部に分散される。そのため、1つの発熱部の保護層が集中的に磨耗することを抑制できる。これにより、発熱部の断線を抑制することができるため、発熱部の寿命を延ばすことができる。
【0011】
(2)本発明のサーマルプリンタの印字方法では、前記印字工程は、前記記録媒体の搬送方向に延びる辺が前記発熱部の配列方向に対して直交していると肉眼により認識され得る前記記録媒体を用いて印字を行う工程を含む。これにより、記録媒体の形状について使用者に対して違和感を与えることなく印字を行うことができ、ひいては発熱部の断線を抑制することができる。
【0012】
(3)本発明のサーマルプリンタの印字方法では、前記印字工程は、前記記録媒体と前記発熱部との当接開始から終了までの間において、前記記録媒体の搬送方向に延びる辺について、前記記録媒体の搬送方向に平行な中心線に対して最も遠い部分を第1部分とし、前記記録媒体の中心線に対して最も近い部分を第2部分とした場合に、前記記録媒体の第1部分と第2部分との前記発熱部の配列方向の間隔が、隣り合う前記発熱部同士の間隔以上である前記記録媒体を用いて印字を行う工程を含む。これにより、記録媒体への印字の開始から終了までの間に、記録媒体の搬送方向に延びる辺と発熱部との擦れる部分を、記録媒体の第1部分と第2部分との発熱部の配列方向の間隔分、分散させることができるため、1つの発熱部が集中して磨耗することを抑制でき、ひいては発熱部が断線することを抑制できる。
【0013】
(4)本発明のサーマルプリンタの印字方法では、前記印字工程は、前記記録媒体の第1部分と第2部分とを結ぶ線と、前記発熱部の配列方向とのなす角度が90°±10°の範囲内でかつ90°を除いた前記記録媒体を用いて印字を行う工程を含む。これにより、記録媒体の搬送方向に延びる辺(両側端)と発熱部の配列方向とが傾斜しているため、記録媒体の両側端と発熱部との擦れる部分を分散させることができる。このため、1つの発熱部が集中して磨耗することを抑制でき、ひいては発熱部が断線することを抑制できる。
【0014】
(5)本発明のサーマルプリンタの印字方法では、前記印字工程は、前記記録媒体の第1部分と第2部分との前記発熱部の配列方向の間隔が、0mmよりも大きく3mmよりも小さい範囲内である前記記録媒体を用いて印字を行う工程を含む。これにより、記録媒体の第1部分と第2部分との発熱部の配列方向の間隔が0mmよりも大きく3mmよりも小さい範囲内で、記録媒体の搬送方向に延びる辺と発熱部との擦れる部分を分散させることができるため、1つの発熱部が集中して磨耗することを抑制でき、ひいては発熱部が断線することを抑制できる。
【0015】
(6)本発明のサーマルプリンタの印字方法では、前記印字工程は、前記記録媒体の搬送方向に延びる対向する2辺の間隔が搬送方向に対して徐々に大きくなるか、または、徐々に小さくなる前記記録媒体を用いて印字を行う工程を含む。すなわち、記録媒体が台形状または逆台形状を有するため、印字を行う際に記録媒体の搬送方向に延びる対向する2辺の各々が、1つの発熱部と集中的に擦れることがない。したがって、効果的に発熱部の断線を抑制できる。
【0016】
(7)本発明のサーマルプリンタの印字方法では、前記印字工程は、前記記録媒体の搬送方向に延びる対向する2辺の間隔が搬送方向に対して略等しく、かつ、前記記録媒体の搬送方向に延びる辺が前記サーマルヘッドユニットの発熱部の配列方向に対して非直交である前記記録媒体を用いて印字を行う工程を含む。すなわち、記録媒体が平行四辺形状を有するため、印字を行う際に記録媒体の搬送方向に延びる対向する2辺の各々が、1つの発熱部と集中的に擦れることがない。したがって、効果的に発熱部の断線を抑制できる。
【0017】
(8)本発明のサーマルプリンタの印字方法では、前記印字工程は、前記記録媒体の搬送方向に延びる辺が円弧状、波状、または、ジグザグ状である前記記録媒体を用いて印字を行う工程を含む。これにより、記録媒体の搬送方向に延びる2辺(両側端)の各々が円弧状、波状、または、ジグザグ状を有するため、印字を行う際に記録媒体の両側端の各々が、1つの発熱部と集中的に擦れることがない。したがって、効果的に発熱部の断線を抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のサーマルヘッドプリンタの印字方法は、サーマルヘッドユニットの発熱部の断線を抑制することにより、発熱部の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係るサーマルプリンタの全体構成を示す概略説明図であり、(b)は、サーマルプリンタにより印字される複数の記録媒体(ラベル)を平面的に見た図である。
【
図2】サーマルヘッドユニットの構成例を示す概略説明図であり、(a)は平面図であり、(b)は
図2(a)の110-110線に沿った断面図である。
【
図3】台形状の記録媒体を使用した場合の印字方法を説明するための図であり、(a)は印字の開始時点を示し、(b)は印字の中間時点を示し、(c)は印字の終了時点を示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態による逆台形状の記録媒体を使用した場合の印字方法を説明するための図であり、(a)は印字の開始時点を示し、(b)は印字の中間時点を示し、(c)は印字の終了時点を示す図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態による平行四辺形状の記録媒体を使用した場合の印字方法を説明するための図であり、(a)は印字の開始時点を示し、(b)は印字の中間時点を示し、(c)は印字の終了時点を示す図である。
【
図6】本実施形態の第1の変形例による凸形状の記録媒体を使用した場合の印字方法を説明するための図である。
【
図7】本実施形態の第2の変形例による記録媒体の両側端が円弧状である場合の印字方法を説明するための図である。
【
図8】本実施形態の第3の変形例による記録媒体の両側端が波状である場合の印字方法を説明するための図である。
【
図9】本実施形態の第4の変形例による記録媒体の両側端がジグザグ状である場合の印字方法を説明するための図である。
【
図10】本実施形態の第5の変形例による複数の矩形状の記録媒体が発熱部の配列方向に対して傾斜している場合の印字方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用したサーマルプリンタの印字方法の実施の形態を、
図1~
図5を参照し、詳細に説明する。
【0021】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタの構成例およびサーマルプリンタにより印字される複数の記録媒体を示す概略説明図である。また、
図2はその平面図および断面図である。なお、これらの図は模式図であって、必ずしも大きさ等を正確な比率で記したものではない。たとえば、
図3~5における記録媒体の縦の長さおよび横の長さの比は現実のラベルにおける比率に対応している訳ではない。
【0022】
図1(a)に示すように、サーマルプリンタ1は、主として、記録媒体3を装着する媒体装着部としての供給軸2と、位置検出手段としての反射センサ4と、印字手段としての印字部5と、制御手段としての制御部6と、を備えている。
【0023】
記録媒体3は、表面(印字部5と接触する側の面)に感熱発色層を備え、裏面(印字部5と接触しない側の面)に粘着剤層を備えたラベルである。
図1(b)に示すように、複数の記録媒体3(ラベル)は、台紙(剥離紙)30に仮着された「ラベル連続体」として採用が可能である。また、台紙30の裏面には、記録媒体3の位置決めなどに使用するための識別マーク(図示せず)が等間隔に予め印刷されている。
【0024】
反射センサ4は、所定の光を記録媒体3に向けて出射する発光部4aと、記録媒体3により反射された光を受光する受光部4bとにより構成されている。発光部4aおよび受光部4bは、記録媒体3の裏面の識別マークを検出するよう、供給軸2と印字部5との間に配置されている。
【0025】
印字部5は、サーマルヘッドユニット7およびプラテンローラ8を備えている。プラテンローラ8は、ステッピングモータ9との間にベルト10を介して接続されている。
【0026】
制御部6は、各部と接続されており、各部の動作が制御できるようになっている。供給軸2に装着した記録媒体3は、印字部5側へ引き出され、反射センサ4を経てサーマルヘッドユニット7およびプラテンローラ8の間に挟持され、発行口11に引き出される。そして、サーマルヘッドユニット7により押圧されてステッピングモータ9が回転すると、ベルト10を介してステッピングモータ9の回転がプラテンローラ8に伝わり、挟持された記録媒体3は、発行口11側へ搬送されつつサーマルヘッドユニット7により所望の印字情報(印画情報)が印字されるようになっている。
【0027】
サーマルヘッドユニット7は、
図2(a)および(b)に示すように、主に、基板21と、基板21上に設けられてライン状に配列された複数の発熱部20と、発熱部20の配列方向に沿って基板21上に並べて配置された複数の駆動IC(図示せず)とを備えている。発熱部20は記録媒体3の幅方向(紙面左右方向)に複数配列されており、所定の発熱部20に電圧が印加されると電流が供給され、その発熱部20を介して記録媒体3に黒のドットが印字されるようになっている。
【0028】
図2(b)に示すように、基板21は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。基板21の上面には、蓄熱層22が形成されている。蓄熱層22は、下地部22aと隆起部22bとを有している。下地部22aは、基板21の上面全体に形成されている。隆起部22bは複数の発熱部20の配列方向に沿って帯状に延びているとともに、その断面が略半楕円形状をなしており、印画する記録媒体3を後述する保護層26に良好に押し当てるように機能する。
【0029】
蓄熱層22は、たとえば、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部20で発生する熱の一部を一時的に蓄積することで、発熱部20の温度を上昇させるのに要する時間を短くし、サーマルヘッドユニット7の熱応答特性を高めるように機能する。蓄熱層22は、たとえば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板21の上面に塗布し、焼成することで形成される。
【0030】
蓄熱層22の上面には、電気抵抗層23が設けられ、この電気抵抗層23の更に上面には、共通電極24および個別電極25がそれぞれ電気抵抗層23に接するように積層されている。電気抵抗層23は、平面視において、これらの共通電極24および個別電極25と接する領域と、共通電極24と個別電極25との間から露出した領域(以下、露出領域という)とを有している。電気抵抗層23の露出領域と、共通電極24および個別電極25の上面には、これらを被覆する保護層26が積層されている。
【0031】
電気抵抗層23の露出領域は、蓄熱層22の隆起部22b上に列状(ライン状)に配置されて発熱部20を構成している。複数の発熱部20は、説明の便宜上、
図2においては簡略化して記載しているが、たとえば、100dpi~2400dpi(dots per inch)の密度で配置されている。
【0032】
電気抵抗層23は、たとえば、タンタル窒化物系(TaN系)、チタン珪素酸化物系(TiSiO系)、または、ニオブ珪素酸化物系(NbSiO系)等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、後述する共通電極24と個別電極25との間に電圧が印加され、発熱部20に電流が供給されたときに、ジュール発熱によって発熱部20が発熱する。
【0033】
上述の共通電極24および個別電極25は、導電性を有する材料で形成されており、たとえば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。共通電極24は、複数の発熱部20とFPC(フレキシブル基板)とを接続している。複数の個別電極25は、各発熱部20と駆動IC(図示せず)とを接続している。
【0034】
保護層26は、発熱部20、共通電極24および個別電極25の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、または、印画する記録媒体3との接触による摩耗から保護するためのものである。
【0035】
一般的には、記録媒体3の搬送時に、サーマルヘッドユニット7の複数の発熱部20と記録媒体3との間の摩擦により発熱部20が断線することが知られている。具体的には、発熱部20と記録媒体3との間の摩擦が酷くなると、発熱部20の表面の保護層26が磨耗して共通電極24および個別電極25が露出され、最終的には断線するというものである。
【0036】
特に、サーマルヘッドユニット7の複数の発熱部20のうち、記録媒体3の搬送方向に延びる辺(両側端33および34)と当接する位置では、それ以外の位置に比して磨耗が酷くなる傾向にある。具体的には、記録媒体3の両側端33および34と、発熱部20(保護層26)との当接位置(接触位置)が1箇所(1つの発熱部20)に集中すると、その当接位置の磨耗が他の部分よりも酷くなり、磨耗が進むと発熱部20および発熱部20の近傍(周辺)の保護層26が無くなり、保護層26の下部の共通電極24または個別電極25が剥き出しになり、断線してしまう。そのため、本実施形態では、記録媒体3の両側端と発熱部20との当接位置が1つの発熱部20に集中しないように(当接位置が分散されるように)、記録媒体3の両側端の形状に工夫を持たせて、発熱部20の磨耗および断線の抑制を図っている。
【0037】
次に、
図3(a)~(c)を用いて、発熱部20の断線抑制効果について説明する。なお、
図3(a)~(c)では、説明の便宜上、サーマルヘッドユニット7の発熱部20を矩形状で示している。
【0038】
図3に示すように、記録媒体3は、辺31、辺32、辺33、および、辺34を有しており、平面視において台形状を有している。なお、
図3(a)~(c)では、説明の便宜上、記録媒体3を平面視において台形状に図示しているが、実際には、サーマルプリンタ1の使用者の通常の視覚(肉眼)では、台形状とは認識できず、矩形状であると認識されるような形状である。
【0039】
対向する2つの辺31および辺32は、それぞれ、記録媒体3の搬送方向に対して直交しているとともに、サーマルヘッドユニット7の発熱部20の配列方向に対して平行である。対向する2つの辺33および辺34は、それぞれ、記録媒体3の搬送方向に沿って延びているとともに、サーマルヘッドユニット7の発熱部20の配列方向に対して非直交である。また、記録媒体3の2つの辺33と辺34との間隔は、搬送方向に向かって徐々に大きくなっている。
【0040】
上記「非直交」とは、記録媒体3の辺33(辺34)と、発熱部20の配列方向との傾斜角度が90°ではないことを意味する。また、記録媒体3の辺33(辺34)と発熱部20の配列方向との傾斜角度は90°±10°である。具体的には、記録媒体3の辺33(辺34)が発熱部20の配列方向に対して直交していると肉眼により認識され得るという観点から、上記傾斜角度は、好ましくは80°以上100°以下であり、一層好ましくは85°以上95°以下であり、より一層好ましくは88°以上92°以下であり、最も好ましくは、89°以上91°以下である。このように、記録媒体3の辺33(辺34)と、発熱部20の配列方向との傾斜角度を上記の角度範囲で設定することによって、使用者の通常の視覚(肉眼)においては、矩形状であると認識することができる。
【0041】
記録媒体3の搬送方向の辺33および辺34について、記録媒体3の搬送方向に平行な中心線Cに対して最も遠い部分を第1部分3Aとし、記録媒体3の搬送方向に平行な中心線Cに対して最も近い部分を第2部分3Bとした場合に、記録媒体3の第1部分3Aと第2部分3Bとの発熱部20の配列方向の間隔L1は、隣り合う発熱部20Aと発熱部20Bとの間隔L0と略等しくなっている。なお、記録媒体3の辺33(辺34)は、第1部分3Aと第2部分3Bとを結ぶ線(辺)である。
【0042】
次に、印字を行う際(印字工程)における、記録媒体3と発熱部20との当接位置の関係について説明する。
【0043】
印字開始時点においては、
図3(a)に示すように、記録媒体3の第1部分3Aは、それぞれ、複数の発熱部20のうち発熱部20Aと当接する。その後、印字中間時点においては、
図3(b)に示すように、記録媒体3の第1部分3Aと第2部分3Bとの中間部分は、それぞれ、複数の発熱部20のうち発熱部20Aと発熱部20Bとの境界に当接する。最後に、印字終了時点においては、
図3(c)に示すように、記録媒体3の第2部分3Bは、それぞれ、複数の発熱部20のうち発熱部20Bと当接する。
【0044】
このように、印字開始時点から印字終了時点までの期間において、記録媒体3の両側端(辺33および辺34)と発熱部20との当接位置が、発熱部20Aと発熱部20Bとの間隔L0分移動することとなる。なお、発熱部20Aと発熱部20Bとの間隔L0の具体的な大きさは、プリンタの解像度によって異なるが、たとえば、100dpiの場合は約0.254mmであり、2400dpiの場合は約0.01mmである。上述のような間隔であれば、使用者の通常の視覚(肉眼)では、台形状とは認識できず、矩形状であると認識することができる。
【0045】
上記説明した第1の実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0046】
(1)第1の実施形態のサーマルプリンタ1の印字方法では、記録媒体3の辺33および辺34が発熱部20の配列方向に対して非直交である記録媒体3を用いて印字を行うことによって、記録媒体3の搬送方向に延びる辺33および辺34と発熱部20との擦れ(磨耗)が、1つの発熱部20に集中せずに発熱部20Aおよび発熱部20Bに分散される。そのため、1つの発熱部20の保護層26が集中的に磨耗することを抑制できる。これにより、発熱部20の断線を抑制することができるため、発熱部20の寿命を延ばすことができる。
【0047】
(2)第1の実施形態のサーマルプリンタ1の印字方法では、記録媒体3の搬送方向に延びる辺33および辺34が発熱部20の配列方向に対して直交していると肉眼により認識され得る記録媒体3を用いて印字を行うことによって、記録媒体3の形状について使用者に対して違和感を与えることなく印字を行うことができ、ひいては発熱部20の断線を抑制することができる。
【0048】
(3)第1の実施形態のサーマルプリンタ1の印字方法では、記録媒体3の中心線Cに対して最も遠い部分を第1部分3Aとし、記録媒体3の中心線Cに対して最も近い部分を第2部分3Bとした場合に、記録媒体3の第1部分3Aと第2部分3Bとの発熱部20の配列方向の間隔L1が、隣り合う発熱部20Aと発熱部20Bとの間隔L0と略等しい記録媒体3を用いて印字を行うことによって、記録媒体3への印字の開始から終了までの間に、記録媒体3の搬送方向に延びる辺33および辺34と発熱部20との擦れる部分を、記録媒体3の第1部分3Aと第2部分3Bとの発熱部20の配列方向の間隔L1分、分散させることができるため、1つの発熱部20が集中して磨耗することを抑制でき、ひいては発熱部20が断線することを抑制できる。
【0049】
(4)第1の実施形態のサーマルプリンタ1の印字方法では、記録媒体3の第1部分3Aと第2部分3Bとを結ぶ線(辺33および辺34)と、発熱部20の配列方向とのなす角度が90°±10°の範囲内でかつ90°を除いた記録媒体3を用いて印字を行うことによって、記録媒体3の辺33および辺34(両側端)と発熱部20の配列方向とが傾斜しているため、記録媒体3の辺33および辺34(両側端)と発熱部20との擦れる部分を分散させることができる。このため、1つの発熱部20が集中して磨耗することを抑制でき、ひいては発熱部20が断線することを抑制できる。
【0050】
(5)第1の実施形態のサーマルプリンタ1の印字方法では、記録媒体3の第1部分3Aと第2部分3Bとの間隔L1が、0mmよりも大きく3mmよりも小さい範囲内である記録媒体3を用いて印字を行うことによって、記録媒体3の第1部分3Aと第2部分3Bとの間隔L1が0mmよりも大きく3mmよりも小さい範囲内で、記録媒体3の辺33および辺34と発熱部20との擦れる部分を分散させることができるため、1つの発熱部20が集中して磨耗することを抑制でき、ひいては発熱部20が断線することを抑制できる。なお、記録媒体3の辺33(辺34)が発熱部20の配列方向に対して直交していると肉眼により認識され得るという観点から、記録媒体3の第1部分3Aと第2部分3Bとの間隔L1は、好ましくは0mmよりも大きく3mmよりも小さい範囲であり、一層好ましくは0mmよりも大きく2mmよりも小さい範囲であり、より一層好ましくは0mmよりも大きく1mmよりも小さい範囲である。
【0051】
(6)第1の実施形態のサーマルプリンタ1の印字方法では、記録媒体3の搬送方向に延びる対向する2つの辺33と辺34との間隔が搬送方向に対して徐々に大きくなる台形状の記録媒体3を用いて印字を行うことにより、印字を行う際に記録媒体3の搬送方向に延びる対向する辺33および辺34の各々が、1つの発熱部20と集中的に擦れることがない。したがって、効果的に発熱部20の断線を抑制できる。また、使用者の通常の視覚においては記録媒体3は矩形状であると認識されるため、記録媒体3の形状について使用者に対して違和感を与えることなく印字を行うことができる。
【0052】
(7)第1の実施形態のラベル、シールおよびタグは、発熱部20の断線を抑制することによって発熱部20の寿命を延ばすことが可能な印字方法により製造されるため、従来の印字方法を用いる場合と比べて、より多くの数のラベル、シールおよびタグを製造することができる。
【0053】
[第2の実施形態]
図4を用いて、本発明の第2の実施形態に係るサーマルプリンタの印字方法について説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態の記録媒体の形状のみが異なる構成であるため、共通部分には同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ詳説する。
【0054】
図4に示すように、第2の実施形態による記録媒体(ラベル)103は、辺131、辺132、辺133、および、辺134を有しており、平面視において逆台形状を有している。なお、
図4(a)~(c)では、説明の便宜上、記録媒体103を平面視において逆台形状を図示しているが、実際にはサーマルプリンタ1の使用者の通常の視覚(肉眼)では、台形状とは認識できず、矩形状であると認識されるような形状である。
【0055】
対向する2つの辺131および辺132は、それぞれ、記録媒体103の搬送方向に対して直交しているとともに、サーマルヘッドユニット7の発熱部20の配列方向に対して平行である。対向する2つの辺133および辺134は、それぞれ、記録媒体103の搬送方向に延びているとともに、サーマルヘッドユニット7の発熱部20の配列方向に対して非直交である。記録媒体103の2つの辺133と辺134との間隔は、搬送方向に対して徐々に狭くなっている。
【0056】
記録媒体103の搬送方向の辺133および辺134について、記録媒体103の搬送方向に平行な中心線Cに対して最も遠い部分を第1部分103Aとし、記録媒体103の搬送方向に平行な中心線Cに対して最も近い部分を第2部分103Bとした場合に、記録媒体103の第1部分103Aと第2部分103Bとの発熱部20の配列方向の間隔L2は、隣り合う発熱部20Aと発熱部20Bとの間隔L0と略等しくなっている。また、記録媒体103の辺133(辺134)は、第1部分103Aと第2部分103Bとを結ぶ線(辺)である。
【0057】
次に、印字を行う際(印字工程)における、記録媒体103と発熱部20との当接位置の関係について説明する。
【0058】
印字開始時点においては、
図4(a)に示すように、記録媒体103の第2部分103Bは、それぞれ、複数の発熱部20のうち発熱部20Bと当接する。その後、印字中間時点においては、
図4(b)に示すように、記録媒体103の第2部分103Bと第1部分103Aとの中間部分は、それぞれ、複数の発熱部20のうち発熱部20Aと発熱部20Bとの境界に当接する。最後に、印字終了時点においては、
図4(c)に示すように、記録媒体103の第1部分103Aは、それぞれ、複数の発熱部20のうち発熱部20Aと当接する。
【0059】
このように、印字開始時点から印字終了時点までの期間において、記録媒体103の両側端(辺133および辺134)と発熱部20との当接位置が、発熱部20Aと発熱部20Bとの間隔L0分移動することとなる。
【0060】
上記説明した第2の実施形態によれば、第1の実施形態において記載した(1)~(5)および(7)の効果に加えて、第1の実施形態において記載した(6)に換えて以下の(8)の効果を得ることができる。
【0061】
(8)第2の実施形態のサーマルプリンタ1の印字方法では、記録媒体103の搬送方向に延びる対向する2つの辺133と辺134との間隔が搬送方向に対して徐々に小さくなる逆台形状の記録媒体103を用いて印字を行うことにより、印字を行う際に記録媒体103の搬送方向に延びる対向する辺133および辺134の各々が、1つの発熱部20と集中的に擦れることがない。したがって、効果的に発熱部20の断線を抑制できる。
【0062】
[第3の実施形態]
図5を用いて、本発明の第3の実施形態に係るサーマルプリンタの印字方法について説明する。なお、第3の実施形態は、第1および第2の実施形態の記録媒体の形状のみが異なる構成であるため、共通部分には同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ詳説する。
【0063】
図5に示すように、第3の実施形態による記録媒体(ラベル)203は、辺231、辺232、辺233、および、辺234を有しており、平面視において平行四辺形状を有している。なお、
図5(a)~(c)では、説明の便宜上、記録媒体203を平面視において平行四辺形状を図示しているが、実際にはサーマルプリンタ1の使用者の通常の視覚(肉眼)では、平行四辺形状とは判別できず、矩形状であると認識されるような形状である。
【0064】
記録媒体203の対向する2つの辺231および辺232は、それぞれ、記録媒体203の搬送方向に対して直交しているとともに、サーマルヘッドユニット7の発熱部20の配列方向に対して平行である。また、記録媒体203の辺231と辺232とは平行であり、2辺の間隔は記録媒体3の幅方向に対して略等しい。
【0065】
記録媒体203の対向する2つの辺233および辺234は、それぞれ、記録媒体203の搬送方向に延びているとともに、サーマルヘッドユニット7の発熱部20の配列方向に対して非直交である。また、記録媒体203の辺233と辺234とは平行であり、2辺の間隔は搬送方向に対して略等しい。
【0066】
記録媒体203の搬送方向の辺233および辺234について、記録媒体203の搬送方向に平行な中心線Cに対して最も遠い部分を第1部分203Aとし、記録媒体203の搬送方向に平行な中心線Cに対して最も近い部分を第2部分203Bとした場合に、記録媒体203の第1部分203Aと第2部分203Bとの発熱部20の配列方向の間隔L3は、隣り合う発熱部20Aと発熱部20Bとの間隔L0と略等しくなっている。また、記録媒体203の辺233(辺234)は、第1部分203Aと第2部分203Bとを結ぶ線(辺)である。
【0067】
次に、印字を行う際(印字工程)における、記録媒体203と発熱部20との当接位置の関係について説明する。
【0068】
図5の中心線Cに対して右側では、
図5(a)に示すように、印字開始時点においては、記録媒体203の第2部分203Bは、複数の発熱部20のうち発熱部20Bと当接する。その後、印字中間時点においては、
図5(b)に示すように、記録媒体203の第2部分203Bと第1部分203Aとの中間部分は、複数の発熱部20のうち発熱部20Bと発熱部20Aとの境界に当接する。最後に、印字終了時点においては、
図5(c)に示すように、記録媒体203の第1部分203Aは、複数の発熱部20のうち発熱部20Aと当接する。なお、
図5の中心線Cに対して左側では、印字開始時点において記録媒体203の第1部分203Aが発熱部20の発熱部20Aに当接し、印字終了時点において記録媒体203の第2部分203Bが発熱部20の発熱部20Bに当接する。
【0069】
このように、印字開始時点から印字終了時点までの期間において、記録媒体203の両側端(辺233および辺234)と発熱部20との当接位置が、発熱部20Aと発熱部20Bとの間隔L0分移動することとなる。
【0070】
上記説明した第3の実施形態によれば、第1の実施形態において記載した(1)~(5)および(7)の効果に加えて、第1の実施形態において記載した(6)に換えて以下の(9)の効果を得ることができる。
【0071】
(9)第3の実施形態のサーマルプリンタ1の印字方法では、記録媒体203の搬送方向に延びる対向する辺231および辺232の間隔が搬送方向に対して略等しく、かつ、記録媒体203の搬送方向に延びる辺231および辺232がサーマルヘッドユニット7の発熱部20の配列方向に対して非直交である記録媒体203を用いて印字を行うことによって、記録媒体203が平行四辺形状を有するため、印字を行う際に記録媒体203の搬送方向に延びる辺231および辺232の各々が、1つの発熱部20と集中的に擦れることがない。したがって、効果的に発熱部の断線を抑制できる。
【0072】
上記実施形態は、以下のように変更した構成とすることもできる。
【0073】
・上記第1~3の実施形態では、台形状、逆台形状、および、平行四辺形状の記録媒体を用いて印字する方法を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図6に示す第1の変形例のように、台形状の記録媒体を搬送方向に2つ連結させた形状の記録媒体303を用いることも可能である。この場合、記録媒体303の辺331および辺332が記録媒体303の搬送方向に対して直交するとともに発熱部20の配列方向に対して平行であり、かつ、辺333、辺334、辺335および辺336が発熱部20の配列方向に対して非直交となっている。
【0074】
記録媒体303の搬送方向の辺333および334について、中心線Cに対して最も遠い部分を第1部分303Aとし、最も近い部分を第2部分303Bとした場合に、記録媒体303の第1部分303Aと第2部分303Bとの発熱部20の配列方向の間隔L4は、隣り合う発熱部20Aと発熱部20Bとの間隔L0と略等しくなっている。同様に、記録媒体303の搬送方向の辺335および336について、中心線Cに対して最も遠い部分を第1部分303Cとし、最も近い部分を第2部分303Dとした場合に、記録媒体303の第1部分303Cと第2部分303Dとの発熱部20の配列方向の間隔L5は、隣り合う発熱部20Aと発熱部20Bとの間隔L0と略等しくなっている。これにより、印字開始時点から印字終了時点までの期間において、記録媒体303の両側端(辺333、辺334、辺335および辺336)と発熱部20との当接位置(磨耗)が1箇所に集中しなくなるため発熱部20の断線を効果的に抑制できる。
【0075】
・上記第1~第3の実施形態では、台形状、逆台形状、および、平行四辺形状の記録媒体を用いて印字する方法を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図7に示す第2の変形例のように、両側端が円弧状である記録媒体403を用いることも可能である。この場合、記録媒体403の辺431および辺432が発熱部20の配列方向に対して平行であり、かつ、円弧状の辺433および辺434が発熱部20の配列方向に対して非直交となっている。記録媒体403の搬送方向の辺433および434について、中心線Cに対して最も遠い部分を第1部分403Aとし、中心線Cに対して最も近い部分を第2部分403Bとした場合に、記録媒体403の第1部分403Aと第2部分403Bとの発熱部20の配列方向の間隔L6は、隣り合う発熱部20Aと発熱部20Bとの間隔L0と略等しくなっている。これにより、印字開始時点から印字終了時点までの期間において、記録媒体403の両側端(辺433および辺434)と発熱部20との当接位置(磨耗)が1箇所に集中しなくなるため発熱部20の断線を効果的に抑制できる。
【0076】
・上記第1~第3の実施形態では、台形状、逆台形状、および、平行四辺形状の記録媒体を用いて印字する方法を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図8に示す第3の変形例のように、両側端が波状である記録媒体503を用いることも可能である。この場合、記録媒体503の辺531および辺532が発熱部20の配列方向に対して平行であり、かつ、波状の辺533および辺534が発熱部20の配列方向に対して非直交となっている。記録媒体503の搬送方向の辺533および534について、中心線Cに対して最も遠い部分を第1部分503Aとし、中心線Cに対して最も近い部分を第2部分503Bとした場合に、記録媒体503の第1部分503Aと第2部分503Bとの発熱部20の配列方向の間隔L7は、隣り合う発熱部20Aと発熱部20Bとの間隔L0と略等しくなっている。また、第1部分503Aと第2部分503Bとを結ぶ線と、発熱部20の配列方向とは上述した角度範囲で傾斜している。これにより、印字開始時点から印字終了時点までの期間において、記録媒体503の両側端(辺533および辺534)と発熱部20との当接位置(磨耗)が1箇所に集中しなくなるため発熱部20の断線を効果的に抑制できる。
【0077】
・上記第1~第3の実施形態では、台形状、逆台形状、および、平行四辺形状の記録媒体を用いて印字する方法を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図9に示す第4の変形例のように、両側端がギザギザ状である記録媒体603を用いることも可能である。この場合、記録媒体603の辺631および辺632が発熱部20の配列方向に対して平行であり、かつ、ギザギザ状の辺633および辺634が発熱部20の配列方向に対して非直交となっている。記録媒体603の搬送方向の辺633および634について、中心線Cに対して最も遠い部分を第1部分603Aとし、中心線Cに対して最も近い部分を第2部分603Bとした場合に、記録媒体603の第1部分603Aと第2部分603Bとの発熱部20の配列方向の間隔L8は、隣り合う発熱部20Aと発熱部20Bとの間隔L0と略等しくなっている。また、第1部分603Aと第2部分603Bとを結ぶ線と、発熱部20の配列方向とは上述した角度範囲で傾斜している。これにより、印字開始時点から印字終了時点までの期間において、記録媒体603の両側端(辺633および辺634)と発熱部20との当接位置(磨耗)が1箇所に集中しなくなるため発熱部20の断線を効果的に抑制できる。
【0078】
・上記第1~第3の実施形態では、台形状、逆台形状、および、平行四辺形状の記録媒体を用いて印字する方法を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図10に示す第5の変形例のように、複数の矩形状の記録媒体(ラベル)703が発熱部20の配列方向に対して傾斜していてもよい。この場合においても、記録媒体703の辺733および辺734が発熱部20の配列方向に対して傾斜しているため、印字を行う際に、記録媒体703の辺733および辺734と発熱部20との当接位置(磨耗)が1箇所に集中しなくなる。このため、発熱部20の断線を効果的に抑制できる。
【0079】
・本発明では、上記第1~第3の実施形態および変形例で示した形状以外の記録媒体を用いて印字することも可能である。本発明では、サーマルプリンタの使用者が記録媒体を肉眼で視認した際に、矩形状であると認識される程度の形状であればよい。
【0080】
・上記第1~第3の実施形態および変形例では、記録媒体の中心線に対する右側の領域と左側の領域とで、搬送方向に延びる辺の形状が同様の形状である場合について説明したが、本発明はこれに限らず、記録媒体の中心線に対する右側の領域と左側の領域とで搬送方向に延びる辺の形状を異ならせてもよい。
【0081】
・上記第1~第3の実施形態および変形例では、複数の記録媒体(ラベル)が台紙(剥離紙)に仮着された「ラベル連続体」を用いて印字を行う例について説明したが、本発明はこれに限られない。たとえば、記録媒体(ラベル)の裏面に台紙(剥離紙)が設けられておらず、粘着剤が露呈した連続の「台紙なし連続体」を用いて印字を行ってもよいし、感熱発色層を備えた厚紙の毎葉状の「タグ」を用いて印字を行ってもよい。
【0082】
・上記第1~第3の実施形態および変形例では、記録媒体の第1部分と第2部分との発熱部の配列方向に対する間隔を隣り合う発熱部の間隔と略等しくなるように説明したが、本発明はこれに限られない。たとえば、記録媒体の第1部分と第2部分の発熱部の配列方向に対する間隔が、発熱部の2つ分の間隔や3つ分の間隔などのように、隣り合う発熱部の間隔以上であればよく、その間隔は0mmより大きく3mmよりも小さい範囲内が好ましい。これにより、記録媒体への印字の開始から終了までの間に、記録媒体の両側端と発熱部との擦れる部分を、記録媒体の第1部分と第2部分との発熱部の配列方向の間隔(0mmよりも大きく3mmよりも小さい範囲内)で、分散させることができるため、1つの発熱部が集中して磨耗することを抑制でき、ひいては発熱部が断線することを抑制できる。また、上述のような間隔であれば、使用者の通常の視覚(肉眼)では、矩形状であると認識することができる。
【0083】
・上記実施形態および変形例は、いずれも本発明の適応の例示であり、特許請求の範囲に記載の範囲内におけるその他いかなる実施形態も、発明の技術的範囲に含まれることは当然のことである。
【符号の説明】
【0084】
1 …サーマルプリンタ
7 …サーマルヘッドユニット
8 …プラテンローラ
3、103、203、303、403、503、603、703 …記録媒体
3A、103A、203A、303A、303C、403A、503A、603A …第1部分
3B、103B、203B、303B、303D、403B、503B、603B …第2部分
20、20A、20B …発熱部
31、131、231、331、431、531、631 …辺
32、132、232、332、432、532、632 …辺
33、133、233、333、433、533、633、733 …辺
34、134、234、334、434、534、634、734 …辺
335 …辺
336 …辺
C …中心線