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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186816
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】組電池用断熱シート及び組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20221208BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20221208BHJP
   F16L 59/04 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/651
F16L59/04
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165694
(22)【出願日】2022-10-14
(62)【分割の表示】P 2022025114の分割
【原出願日】2019-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 寿
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直己
(57)【要約】
【課題】電池の通常使用時における温度から500℃以上の高温までの広い温度領域において、優れた断熱性を得ることができ、好ましくは、断熱シートに対する圧縮応力が増加した場合であっても、優れた断熱性を維持することができる組電池用断熱シート、及び組電池用断熱シートを電池セル間に介在させた組電池を提供する。
【解決手段】本発明の断熱シート10は、複数の電池セルを直列又は並列に接続した組電池における、前記電池セル間に介在される組電池用断熱シートであって、シリカナノ粒子で構成される第1粒子21と、金属酸化物からなる第2粒子22と、を含み、前記第1粒子の含有量は、前記第1粒子と第2粒子との合計質量に対して、60質量%以上95質量%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを直列又は並列に接続した組電池における、前記電池セル間に介在される組電池用断熱シートであって、
シリカナノ粒子で構成される第1粒子と、金属酸化物からなる第2粒子と、を含み、
前記第1粒子の含有量は、前記第1粒子と第2粒子との合計質量に対して、60質量%以上95質量%以下である、組電池用断熱シート。
【請求項2】
前記第1粒子は、平均粒子径が1nm以上100nm以下である、請求項1に記載の組電池用断熱シート。
【請求項3】
前記第2粒子は、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、およびアルミナから選択された少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の組電池用断熱シート。
【請求項4】
前記第2粒子はチタニアである、請求項1~3のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【請求項5】
前記第2粒子は、平均粒子径が0.1μm以上50μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【請求項6】
繊維、バインダおよび耐熱樹脂から選択された少なくとも1種からなる結合材を含み、
前記結合材の含有量は組電池用断熱シート全質量に対して10質量%以上60質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【請求項7】
組電池用断熱シート全質量に対し、60質量%以下の無機バルーンを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【請求項8】
前記無機バルーンは、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、バーライトバルーン、およびガラスバルーンから選択された少なくとも1種である、請求項7に記載の組電池用断熱シート。
【請求項9】
前記無機バルーンは、平均粒子径が1μm以上100μm以下である、請求項7または8に記載の組電池用断熱シート。
【請求項10】
複数の電池セルが、請求項1~9のいずれか1項に記載の組電池用断熱シートを介して配置され、該複数の電池セルが直列または並列に接続された組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池の電池セル間に介在させる組電池用断熱シート、及び組電池用断熱シートを電池セル間に介在させた組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発熱体から他の物体への熱伝達を抑制するために、発熱体に近接させ、又は少なくとも一部を発熱体に接触させて用いる断熱シートが用いられている。
【0003】
また、近年では、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車等の開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車等には、駆動用電動モータの電源となるための、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。
【0004】
この電池セルには、鉛蓄電池やニッケル水素電池等に比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられている。そして、高容量かつ高出力が可能な電池において、電池の内部短絡や過充電等が原因で、ある電池セルが急激に昇温し、その後も発熱を継続するような熱暴走を起こした場合、熱暴走を起こした電池セルからの熱が、隣接する他の電池セルに伝播することで、他の電池セルの熱暴走を引き起こすおそれがある。
【0005】
上記のような組電池の分野においても、熱暴走を起こした電池セルから隣接する電池セルへの熱の伝播を抑制し、熱暴走の連鎖を防ぐために、電池セル間に介在させる種々の断熱シートが提案されている。例えば、特許文献1では、隣り合う2つの蓄電素子の間に2枚の板材が対向して配置され、これらの板材の間に形成される空間が低熱伝導層として機能する蓄電装置が開示されている。なお、上記蓄電装置は、板材として例えば、マイカ片を集結し結合したダンマ材等が用いられている。
【0006】
ところで、組電池では、個々の電池セルが充放電を繰り返すことにより熱膨張を引き起こしており、隣接する電池セル間には押圧力が繰り返し作用している。特許文献1に記載された熱伝達抑制シートは、低熱伝導層が空気層であるため、このような繰り返し作用する押圧力に対抗する機械的強度が十分とは言えない。
【0007】
また、熱暴走を起こした電池セルは大きく熱膨張するため、その際は、隣接する電池セルへの押圧力も過大となり、特許文献1に記載された蓄電装置では、熱暴走が起きた際の大きな押圧力によりダンマ材等からなる板材が破損することも懸念される。
【0008】
そこで、特許文献2には、隣り合う電池セル間に装着される断熱材として、繊維シートとナノサイズの多孔質構造を有するシリカエアロゲルとの複合層を有する断熱材が提案されている。上記断熱材を用いた電池ユニットは、電池セルの膨張、収縮が繰り返され、断熱材に対して圧縮応力が加わった場合でも、繊維シートが応力を吸収できる。その結果、シリカエアロゲルの破壊を抑制することができ、シリカエアロゲルが有する断熱特性の低下を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015-211013号公報
【特許文献2】特開2018-204708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献2に記載された断熱材を使用した場合であっても、高温度領域における断熱性は十分に得られていないという問題点がある。電池セルが高温に達した場合に、断熱材が十分に機能していないと、複数のセルが熱膨張して、同じ電池ケース内に配置された断熱材はより一層圧縮され、断熱材の密度が大きく上昇することがある。その結果、断熱材の熱伝導率はさらに上昇し、所望の断熱性を維持することができなくなる。さらにまた、断熱材による断熱効果が低下すると、電池が異常発熱を引き起こした場合に、電池の類焼や爆発等の不具合を抑制することができなくなるおそれがある。したがって、特に、500℃以上の高温領域であっても、優れた断熱性を有する組電池用断熱シートの開発が要求されている。
【0011】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、電池の通常使用時における温度から500℃以上の高温までの広い温度領域において、優れた断熱性を得ることができ、好ましくは、組電池用断熱シートに対する圧縮応力が増加した場合であっても、優れた断熱性を維持することができる組電池用断熱シート、及び組電池用断熱シートを電池セル間に介在させた組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、本発明に係る下記(1)の組電池用断熱シートにより達成される。
(1) 複数の電池セルを直列又は並列に接続した組電池における、前記電池セル間に介在される組電池用断熱シートであって、
シリカナノ粒子で構成される第1粒子と、金属酸化物からなる第2粒子と、を含み、
前記第1粒子の含有量は、前記第1粒子と第2粒子との合計質量に対して、60質量%以上95質量%以下である、組電池用断熱シート。
【0013】
また、本発明の組電池用断熱シートは、下記(2)~(9)であることが好ましい。
(2) 前記第1粒子は、平均粒子径が1nm以上100nm以下である、(1)に記載の組電池用断熱シート。
(3) 前記第2粒子は、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、およびアルミナから選択された少なくとも1種である、(1)又は(2)に記載の組電池用断熱シート。
(4) 前記第2粒子はチタニアである、(1)~(3)のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
(5) 前記第2粒子は、平均粒子径が0.1μm以上50μm以下である、(1)~(4)のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
(6)繊維、バインダおよび耐熱樹脂から選択される少なくとも1種からなる結合材を含み、
前記結合材の含有量は組電池用断熱シート全質量に対して10質量%以上60質量%以下である、(1)~(5)のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
(7) 組電池用断熱シート全質量に対し、60質量%以下の無機バルーンを含む、(1)~(6)のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
(8) 前記無機バルーンは、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、バーライトバルーン、およびガラスバルーンから選択された少なくとも1種である、(7)に記載の組電池用断熱シート。
(9) 前記無機バルーンは、平均粒子径が1μm以上100μm以下である、(7)または(8)に記載の組電池用断熱シート。
【0014】
上記の目的は、本発明に係る下記(10)の組電池により達成される。
(10) 複数の電池セルが、(1)~(9)のいずれか1項に記載の組電池用断熱シートを介して配置され、該複数の電池セルが直列または並列に接続された組電池。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電池の通常使用時における温度から500℃以上の高温までの広い温度領域において、優れた断熱性を得ることができ、好ましくは、組電池用断熱シートに対する圧縮応力が増加した場合であっても、優れた断熱性を維持することができる組電池用断熱シート、及び組電池用断熱シートを電池セル間に介在させた組電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る組電池用断熱シートの構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明に係る組電池の実施形態を模式的に示す断面図である。
図3図3は、縦軸を熱伝導率とし、横軸を温度とした場合の、組電池用断熱シート中の第1粒子と第2粒子の質量比による熱伝導率の変化を示すグラフである。
図4図4は、縦軸を熱伝導率とし、横軸を温度とした場合の、組電池用断熱シートの密度による熱伝導率の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願発明者らは、電池の通常使用時における温度から500℃以上の高温までの広い温度領域において、優れた断熱性を得ることができる組電池用断熱シート(以後「断熱シート」とも記載する)を提供するため、鋭意検討を行った。その結果、断熱シート中に、シリカナノ粒子で構成される第1粒子と金属酸化物からなる第2粒子とを含み、上記第1粒子と第2粒子との質量比を適切に調整することにより、高温度領域においても優れた断熱性を得ることができることを見出した。
【0018】
断熱シート中に第1粒子として含まれるシリカナノ粒子は低密度であるため伝導伝熱を抑制し、さらに空隙が細かく分散しているため対流伝熱を抑制する優れた断熱性を有している。このため、通常の常温域の電池使用時において、隣接するシリカナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる。しかしながら第1粒子は、低密度で粒子径が小さいため光の遮蔽効果が小さく、輻射伝熱を抑制する効果は小さい。このためさらに、屈折率が高く光を乱反射させる効果の強い金属酸化物を第2粒子として含有することにより特に異常発熱などの高温領域において輻射伝熱を抑制することができる。したがって、シリカナノ粒子および金属酸化物が適切な比率で断熱シート中に含まれることにより、電池の通常使用時における温度から500℃以上の高温までの広い温度領域において、優れた断熱性を得ることができる。
【0019】
また、本願発明者らは、断熱シートに平均粒子径の小さなシリカナノ粒子を使用すると、この電池の膨れなどによって断熱シートが圧縮され、断熱シートの密度が上がった場合であっても、断熱シートの伝導伝熱の上昇を抑制することができることを見出した。
これは、シリカナノ粒子は、絶縁体であるので静電気による反発力で粒子間に細かな空隙ができやすく、かさ密度が低くクッション性があるように粒子が充填されるからであると考えられる。すなわち、断熱シートに、平均粒子径が1nm以上100nm以下であるシリカナノ粒子が含まれていると、圧縮応力が印加されても、シリカナノ粒子間に残った空隙と、多くの粒子間の接点が伝導伝熱を抑制し、断熱シートの断熱性を維持することができる。
【0020】
さらに、本願発明者らは、断熱シートに含まれる粒子間の空隙部の大きさが、断熱シートの断熱性に影響を及ぼすことを見出した。すなわち、粒子間に形成される空隙部が、例えば数100nm以上であると、空隙部で対流が作用しやすく、断熱シートの断熱性が低下するおそれがある。
しかし、第1粒子として、粒子径の小さなシリカナノ粒子を用いた断熱シートは、粒子間の空隙部が、例えば数10nmと小さくなり、空隙部の空気の移動は起こりにくく、対流伝熱の発生を抑制することができ、断熱性をより一層高めることができると考えられる。
なお、シリカナノ粒子は、細かな空隙を多く形成すること、粒子間の接点の数を増やすことが重要であり一次粒子でも、凝集した二次粒子で含有していてもよい。
【0021】
本発明はこのような知見に基づくものであるが、以下に本発明の実施形態(本実施形態)に係る組電池用断熱シートおよび組電池について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0022】
<組電池用断熱シートの基本構成>
図1は本発明の実施形態に係る組電池用断熱シートの構成を示す模式図であり、図2図1に示す組電池用断熱シートを用いた組電池の実施形態を模式的に示す断面図である。断熱シート10には、シリカナノ粒子で構成される第1粒子21とチタニア(金属酸化物)からなる第2粒子22とが含まれている。
なお、上記シリカナノ粒子としては、一次粒子の平均粒子径が1nm以上100nm以下である粒子を用いることが望ましい。
【0023】
この組電池用断熱シート10の具体的な使用形態としては、図2に示すように、複数の電池セル20が、組電池用断熱シート10を介して配置され、複数の電池セル20同士が直列または並列に接続された状態(接続された状態は図示を省略)で、電池ケース30に格納されて組電池100が構成される。
なお、電池セル20は、例えば、リチウムイオン二次電池が好適に用いられるが、特にこれに限定されず、その他の二次電池にも適用され得る。
【0024】
以下に示す説明では、断熱シート10の一方の面10a側に発熱した電池セル20が存在している場合を想定している。このように構成された断熱シートにおいて、電池セル20が発熱すると、断熱シート10の一方の面10a側から入射した熱の一部は、矢印15aで示すように、互いに接触した第1粒子21を媒介して、断熱シート10の他方の面10bに向かって伝導(伝導伝熱)される。このとき、第1粒子21として、断熱性を有するシリカナノ粒子を用いているため、熱抵抗が高く断熱シート10の他方の面10bとの間に高い温度差を確保でき、伝熱量が低減される。
【0025】
また、電池セル20が発熱して、輻射により熱の一部が第2粒子22に到達すると、矢印15bに示すように、金属酸化物である第2粒子22により乱反射されるため、第2粒子22の存在により、断熱シート10の他方の面10bに熱が伝播されることを抑制することができる。
【0026】
以上より、ある電池セル20に熱暴走が生じた場合、隣接する他の電池セルへ熱の伝播を効果的に抑制することができるため、他の電池セルの熱暴走が引き起こされるのを抑制することができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、第1粒子21としてシリカナノ粒子を用いており、粒子同士の接点が小さいため、シリカナノ粒子により伝導される熱量は、粒子径が大きい粉砕で得られたシリカ粒子を使用した場合と比較して小さくなる。また、一般的に入手されるシリカナノ粒子は、かさ密度が0.1g/cm程度であるため、例えば、断熱シート10の両側に配置された電池セル20が熱膨張し、断熱シート10に対して大きな圧縮応力が加わった場合であっても、シリカナノ粒子同士の接点の大きさ(面積)や数が著しく大きくなることはなく、断熱性を維持することができる。
【0028】
さらに、本実施形態において、たとえシリカナノ粒子が重なり合って断熱シート10内に存在した場合であっても、粒子間に形成される空隙部は数10nm程度にとどまり、矢印15cで示すような小さな対流が起こるのみで厚み全体に占める対流の範囲はごくわずかである。このため断熱シート10の表裏を貫通する伝熱が発生しにくくなる。したがって、第1粒子21としてシリカナノ粒子を用いると、断熱シート10の断熱性をより一層高めることができる。
【0029】
<組電池用断熱シートの詳細>
次に、組電池用断熱シートを構成する第1粒子および第2粒子について詳細に説明する。
【0030】
(第1粒子の種類)
本発明において、第1粒子としてはシリカナノ粒子を用いる。シリカナノ粒子としては、湿式シリカ、乾式シリカおよびエアロゲル等を使用することができる。
また、本発明においてシリカナノ粒子とは、球形あるいは球形に近い平均粒子径が1μm未満のナノメートルオーダーのシリカの粒子である。
【0031】
(第1粒子の平均粒子径:1nm以上100nm以下)
上述の通り、第1粒子の粒子径は、断熱シートの断熱性に影響を与えることがあるため、第1粒子の平均粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、第1粒子の平均粒子径を1nm以上100nm以下とすると、特に500℃未満の温度領域において、断熱シート内における熱の対流伝熱および伝導伝熱を抑制することができ、断熱性をより一層向上させることができる。
なお、第1粒子の平均粒子径は、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることがさらに好ましい。また、第1粒子の平均粒子径は、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。
【0032】
(第2粒子の種類)
本発明において、第2粒子としては金属酸化物を用いる。金属酸化物としては、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、およびアルミナ等を使用することができる。特に、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であり、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、チタニアを用いることが最も好ましい。
【0033】
(第2粒子の平均粒子径:0.1μm以上50μm以下)
第2粒子の粒子径は、輻射熱を反射する効果に影響を与えることがあるため、第2粒子の平均粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、第2粒子の平均粒子径が0.1μm以上であると、加熱に寄与する光の波長よりも十分に大きく、光を効率よく乱反射させ、本発明における第2粒子の存在範囲(質量比)において、500℃以上の高温度領域において断熱シート内における熱の輻射伝熱が抑制され、より一層断熱性を向上させることができる。一方、第2粒子の平均粒子径が50μm以下であると、圧縮されても粒子間の接点や数が増えず、伝導伝熱のパスを形成しにくく、特に伝導伝熱が支配的な通常温度域の断熱性への影響を小さくすることができる。
なお、第2粒子の平均粒子径は、1μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。また、第2粒子の平均粒子径は、30μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
本発明において平均粒子径は、顕微鏡で粒子を観察し、標準スケールと比較し、任意の粒子10個の平均をとることから求めることができる。
【0034】
(第1粒子の含有量:第1粒子と第2粒子の合計質量に対して60質量%以上95質量%以下)
本発明においては、500℃以上の高温度領域においても断熱性を向上させるために、断熱シートが第2粒子を含むものとしているが、第1粒子に対して第2粒子の添加量が少量であっても、熱の輻射伝熱を抑制する効果を得ることができる。また、第1粒子によって、熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制する効果を得るためには、第1粒子の第2粒子に対する添加量を増加させた方が好ましい。
なお、第1粒子はシリカナノ粒子であるのでかさ密度が低く(0.1g/cm程度)、第2粒子は第1粒子より平均粒子径が大きいので空隙が少なく、第2粒子のかさ密度は第1粒子の10倍以上、例えばチタニアを選択した場合40倍程度(4g/cm程度)となる。このため、体積比で表した場合は(質量比で表した場合と比べ)第2粒子の比率はごく少量となるが、第2粒子は輻射伝熱を抑えるため光を遮りさえすればよく、ごく少量でも有効に機能する。このように、第1粒子と第2粒子との質量比は、通常温度から500℃以上の高温度までの領域における断熱性に大きく影響するため、本発明においては、第1粒子と第2粒子との質量比を適切に調整することが必要である。
【0035】
本発明の組電池用断熱シートの第1粒子の含有量が、第1粒子と第2粒子との合計質量に対して、60質量%以上であると、第1粒子が体積の大部分を占有するようになり、断熱シート内における熱の対流伝熱または伝導伝熱を抑制し、圧縮されても断熱性が高くなる。
本発明の組電池用断熱シートの第1粒子の含有量は、第1粒子と第2粒子との合計質量に対して、70質量%以上であることがさらに好ましい。第1粒子の含有量が、第1粒子と第2粒子との合計質量に対して、70質量%以上であると、第1粒子がさらに体積の大部分を占有するようになり、断熱シート内における熱の対流伝熱または伝導伝熱を抑制し、断熱性がさらに高くなる。
【0036】
一方、第1粒子の含有量が、第1粒子と第2粒子との合計質量に対して、95質量%以下であると、第2粒子の含有量は5質量%以上となり、第2粒子による輻射熱の遮蔽効果を発揮できるようになる。このため、500℃以上の高温度領域において、断熱シート内における熱の輻射伝熱を抑制し、断熱性を発揮することができる。
本発明の組電池用断熱シートの第1粒子の含有量は、第1粒子と第2粒子との合計質量に対して、90質量%以下であることがさらに好ましい。第1粒子の含有量が、第1粒子と第2粒子との合計質量に対して、90質量%以下であると、第2粒子の含有量は10質量%以上となり、第2粒子によるによる輻射熱の遮蔽効果をさらに発揮できるようになる。このため、500℃以上の高温度領域において、断熱シート内における熱の輻射伝熱を抑制し、さらに圧縮されても断熱性を発揮することができる。
【0037】
さらに、第2粒子の平均粒子径は、第1粒子の粒子径の100~10000倍であることが好ましい。第1粒子、第2粒子のいずれの粒子も絶縁体であるので個々の粒子間には静電気による反発力が働き、一定の空隙が形成される。粒子径は細かくなればなるほど静電気による反発力の影響で空隙の比率が高くなり、かさ密度が低下する。第2粒子の平均粒子径は、第1粒子の粒子径の100倍以上であると、第1粒子は多くの空隙を含みクッション性、断熱性を確保するとともに、第2粒子は乱反射による光の遮蔽に十分な粒子径を確保し、外部から圧縮されても広い温度域で断熱性を確保できる。
また、第2粒子の平均粒子径は、第1粒子の粒子径の10000倍以下であると、伝導伝熱のパスを形成しにくく、特に伝導伝熱が支配的な通常温度域の断熱性への影響を小さくすることができる。
【0038】
本発明の組電池用断熱シートは、第1粒子の平均粒子径が1nm以上100nm以下であり、かつ、第2粒子の平均粒子径が0.1μm以上50μm以下であることが好ましい。
第1粒子の平均粒子径が1nm以上100nm以下であると、多くの空隙が形成されクッション性も有しているので、外部から圧縮力が加わっても、通常の温度域を中心に広い温度域にわたって対流伝熱、伝導伝熱を効率よく抑制することができる。
また、第2粒子の平均粒子径が0.1μm以上50μm以下であると、500℃以上の高温度領域で効率よく輻射伝熱を抑制することができる。その結果、電池の通常使用時における温度から500℃以上の高温までの広い温度領域にわたって、外部から圧縮力が加わっても高い断熱性が得られると考えられる。
【0039】
本発明の組電池用断熱シートは、第1粒子の含有量は、第1粒子と第2粒子との合計質量に対して、60質量%以上95質量%以下であり、かつ、第1粒子の平均粒子径が1nm以上100nm以下であり、および、第2粒子の平均粒子径が0.1μm以上50μm以下であることが望ましい。
第1粒子の平均粒子径が1nm以上100nm以下であると、多くの空隙が形成されクッション性も有しているので、外部から圧縮力が加わっても、通常の温度域を中心に広い温度域にわたって対流伝熱、伝導伝熱を効率よく抑制することができる。
第2粒子の平均粒子径が0.1μm以上50μm以下であると、500℃以上の高温度領域で効率よく輻射伝熱を抑制することができる。
第1粒子の含有量が、第1粒子と第2粒子との合計質量に対して、60質量%以上95質量%以下であると、輻射伝熱の抑制に必要な第2の粒子の量と、伝導・対流伝熱の抑制とクッション性に必要な第1の粒子の量を最適化できる。
その結果、電池の通常使用時における温度から500℃以上の高温までの広い温度領域にわたって、外部から圧縮力が加わってもバランスよく高い断熱性が得られると考えられる。
【0040】
なお、組電池用断熱シートは、上記第1粒子および第2粒子の他に、断熱効果をより一層高める成分として無機バルーンを含んでいてもよく、さらに結合材、および着色剤等のように、断熱材に成形するために必要な成分を含んでいてもよい。以下、その他の成分についても詳細に説明する。
【0041】
(無機バルーン:60質量%以下)
本発明に係る組電池用断熱シートは、断熱シート全質量に対し、60質量%以下の無機バルーンを含んでいてもよい。
断熱シートに60質量%以下の範囲で無機バルーンが含まれると、500℃未満の温度領域において、断熱シート内における熱の対流伝熱または伝導伝熱を抑制することができ、断熱シートの断熱性をより一層向上させることができる。
断熱シート全質量に対する無機バルーンの質量は、50質量%以下であることがより好ましい。なお、無機バルーンとしては、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、バーライトバルーン、およびガラスバルーンから選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0042】
(無機バルーンの平均粒子径:1μm以上100μm以下)
本発明に係る組電池用断熱シートが無機バルーンを含む場合、無機バルーンの平均粒子径が適切に調整されていると、電池セルが熱膨張して、断熱シートに対して圧縮応力が加わった場合であっても、密度の変化が断熱性に対して与える影響を低減することができる。
すなわち、無機バルーンの平均粒子径が1μm以上100μm以下であると、断熱シート内における第1粒子及び第2粒子の密度が変化しても、断熱性が低下することをより一層抑制することができる。また、無機バルーンの平均粒子径は、3μm以上70μm以下であることがより好ましい。
【0043】
なお、本発明に係る組電池用断熱シートにおいて、断熱材として機能する第1粒子、第2粒子及び無機バルーンの合計量は、組電池用断熱シート全質量に対し、40質量%以上95質量%以下であることが好ましい。この範囲にすることで、断熱性が得られやすく、また、シートとしての強度を確保し、粒子の飛散を抑制することができる。さらに断熱材として機能する第1粒子、第2粒子及び無機バルーンの合計量は、組電池用断熱シート全質量に対し、50質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
(結合材:10質量%以上60質量%以下)
本発明に係る組電池用断熱シートは、結合材を含まないものであっても、焼結等により形成されることができるが、特に組電池用断熱シートが第1粒子としてシリカナノ粒子を含む場合には、断熱シートとしての形状を保持するために、適切な含有量で結合材を添加することが好ましい。本発明において結合材とは、第1の粒子、第2の粒子を保持するために繋ぎ止めておくものでおくものであればよく、接着を伴うバインダ、粒子を物理的に絡める繊維、粘着力で付着する耐熱樹脂などその形態は問わない。
【0045】
なお、バインダとしては、有機バインダ、無機バインダ等を用いることができる。本発明はこれらの種類について特に制限しないが、有機バインダとしては、高分子凝集材及びアクリルエマルジョン等を使用することができ、無機バインダとしては、例えばシリカゾル、アルミナゾル、硫酸バンド等を使用することができる。これらは、水などの溶媒が除去されると接着剤として機能する。
【0046】
繊維としては、有機繊維、無機繊維などが利用できる。有機繊維としては、特に限定されないが、合成繊維、天然繊維、パルプなどが利用できる。無機繊維としては特に限定されないが、アルミナ繊維、シリカーアルミナ繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、グラスウール、およびロックウール等を使用することが好ましい。
【0047】
一方、結合材は第1粒子および第2粒子等と比較して、熱伝導性が高い成分からなるため、断熱シート内に対流伝熱が発生しない程度に形成された空隙部に結合材が存在すると、第1粒子による対流伝熱および伝導伝熱を抑制に影響が出るようになる。したがって、本発明の組電池用断熱シートにおいて、結合材の含有量は、断熱シート全質量に対し、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。本発明の組電池用断熱シートにおいて、結合材の含有量は、断熱シート全質量に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
【0048】
(無機繊維の平均繊維径:0.1μm以上20μm以下)
無機繊維は、線状または針状の繊維であり、断熱シートの電池セルからの圧縮応力に対する機械的強度および保形性の向上に寄与する。
このような効果を得るために、結合材として無機繊維を用いる場合には、その平均繊維径が0.1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。但し、無機繊維が太すぎると、断熱シートへの成形性、加工性が低下するおそれがあるため、20μm以下とすることが好ましく、15μm以下とすることがより好ましい。
【0049】
(無機繊維の平均繊維長:0.1mm以上20mm以下)
結合材として無機繊維を用いると、断熱シートとして成形したときに繊維同士が好適に絡み合い、充分な面圧を得ることができる。
このような効果を得るために、無機繊維を用いる場合には、その平均繊維長が0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。但し、無機繊維の平均繊維長が長すぎると、抄造工程において水に無機繊維を分散したスラリー溶液の調製時に、無機繊維同士の絡み合いが強くなりすぎることがあり、シート状に成形した後に無機繊維が不均一に集積しやすくなることがある。
したがって、無機繊維の平均繊維長は20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。
なお、無機繊維の繊維径および繊維長は、ピンセットを使用して、成形後のシートから無機繊維を破断しないように抜き取り、顕微鏡で観察し標準スケールと比較することにより測定することができる。無機繊維の繊維径および繊維長は、任意の繊維10本の平均値から得られる。
【0050】
(断熱シートの厚さ:0.1mm以上30mm以下)
本発明に係る組電池用断熱シートの厚さは特に限定されないが、0.1mm以上30mm以下の範囲にあることが好ましい。断熱シートの厚さが上記範囲内であると、充分な機械的強度を得ることができるとともに、容易に成形することができる。
【0051】
(組電池用断熱シートの製造方法)
続いて、本発明に係る組電池用断熱シートの製造方法について詳細に説明する。
【0052】
本実施形態に係る断熱シートは、第1粒子と第2粒子とを含む断熱シート用材料を、湿式抄造法、乾式成形法、または湿式成形法により型成形して製造しても、押出成形法により製造してもよい。以下に、断熱シートをそれぞれの成形法により得る場合の製造方法について説明する。
【0053】
[湿式抄造法による断熱シートの製造方法]
湿式抄造法では、まず、第1粒子および第2粒子、ならびに必要に応じて結合材である無機繊維、有機繊維、または有機バインダを水中で混合し、撹拌機で撹拌することにより、混合液を調製する。その後、得られた混合液を、底面に濾過用のメッシュが形成された成形器に流し込み、メッシュを介して混合液を脱水することにより、湿潤シートを作製する。その後、得られた湿潤シートを加熱するとともに加圧することにより、断熱シートを得ることができる。なお、加熱および加圧工程の前に、湿潤シートに熱風を通気させて、シートを乾燥する通気乾燥処理を実施してもよいが、この通気乾燥処理を実施せず、湿潤した状態で加熱および加圧してもよい。
【0054】
[乾式成形法による断熱シートの製造方法]
乾式成形法では、まず、第1粒子および第2粒子、ならびに必要に応じて結合材である無機繊維、有機繊維、または有機バインダを所定の割合でV型混合機などの混合機に投入する。そして、混合機に投入された材料を充分に混合した後、所定の型内に混合物を投入し、プレスすることにより断熱シートを得ることができる。プレス時には、必要に応じて加熱してもよい。
【0055】
上記プレス圧は、0.98~9.80MPaの範囲であることが好ましい。プレス圧が0.98MPa未満であると、得られる断熱シートにおいて、強度を保つことができずに崩れてしまうおそれがある。一方、プレス圧が9.80MPaを超えると、過度の圧縮によって加工性が低下したり、更に、かさ密度が高くなるため固体伝熱が増加し、断熱性が低下するおそれがある。
【0056】
[押出成形法による断熱シートの製造方法]
押出成形法では、まず、第1粒子および第2粒子、ならびに必要に応じて結合材である無機繊維、有機繊維、または有機バインダに水を加え、混練機で混練することにより、ペーストを調製する。その後、得られたペーストを、押出成形機を用いてスリット状のノズルから押出しさらに乾燥させることにより、組電池用断熱シートを得ることができる。有機バインダとしては、メチルセルロース及び水溶性セルロースエーテル等を使用することが好ましいが、押出成形法を用いる場合に一般的に使用される有機バインダであれば、特に限定されずに使用することができる。
【0057】
[組電池]
本発明に係る組電池は、図2に例示したように、複数の電池セルが、上記の組電池用断熱シートを介して配置され、複数の電池セルが直列または並列に接続されたものである。
【実施例0058】
以下に、本実施形態に係る組電池用断熱シートの実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
下記基第1粒子、第2粒子、および結合材を準備し、これらの材料を十分に撹拌混合して、スラリーを調製した。得られたスラリーを用いて、抄造法により断熱シートを形成した。
【0060】
第1粒子にはシリカナノ粒子(平均粒子径5nm)を56質量%、第2粒子にはチタニア(平均粒子径8μm)を24質量%(第1粒子:第2粒子=70質量%:30質量%)結合材としては、ガラス繊維(平均繊維径10μm、平均繊維長5mm)を11質量%、パルプ繊維を8質量%、高分子凝集材を1質量%加え、十分に撹拌混合してスラリーを調製した。上記スラリーを抄造して熱伝達抑制シート(断熱シートNo.1)を得た。
なお、乾燥は110℃で実施し、得られた断熱シートのサイズは、幅が80mm、長さが80mm、厚さが1mmであった。
【0061】
第1粒子と第2粒子との質量比を種々に変化させた断熱シートについて、電池の通常使用時における温度(約30℃)から500℃以上の高温(約850℃)までの温度にわたる複数点において、熱伝導率を測定した。なお、熱伝導率は、JIS法(R2616)に準拠し、非定常熱線法により測定した。
【0062】
各断熱シートにおける第1粒子の含有量(第1粒子および第2粒子の合計量に対する質量%)を下記表1に示し、各温度における断熱シートの熱伝導率を図3に示す。なお、図3中における番号1~6は、表1に示す断熱シートNo.1~6とそれぞれ対応している。また、下記表1および図3において、断熱シートNo.6は第1粒子としてシリカエアロゲルを用いた例であり、上記表1に示す結合材は含有されていない。
【0063】
【表1】
【0064】
組電池用断熱シートNo.1~4は、第2粒子として金属酸化物(チタニア)が含有されており、第1粒子と第2粒子の合計質量に対する第1粒子の含有量が本発明範囲内である。したがって、電池の通常使用時における温度(約30℃)から500℃以上の高温(約850℃)までの温度領域において、優れた断熱性を得ることができた。特に、第2粒子の含有率の増加に伴って、500℃以上の高温度領域における熱伝導率が低下しており、断熱性が向上している。
【0065】
一方、断熱シートNo.5及び6は第2粒子が含まれていないため、500℃以上の高温度領域において、熱伝導率が高いものとなった。なお、断熱シートNo.5と6は共に第2粒子が含まれていないが、断熱シートNo.5に含まれた珪酸マグネシウム繊維の影響により、断熱シートNo.6と比較して、500℃以上の高温度領域における熱伝導率が低下したものと思われる。
【0066】
次に、上記断熱シートNo.1と同様の成分および含有量で、抄造法により種々の密度の断熱シートを形成し、断熱シートの密度による熱伝導率の変化を上記非定常熱線法により測定した。各断熱シートの種類および密度を下記表2に示し、密度が互いに異なる断熱シートの各温度における熱伝導率を図4に示す。図4中における番号11~15は、表2に示す断熱シートNo.11~15とそれぞれ対応している。なお、断熱シートNo.11および12は、第1粒子(シリカナノ粒子)の含有量を第1粒子と第2粒子の合計質量に対して70質量%とした例である。また、断熱シートNo.13および14は、シリカナノ粒子、チタニアの代わりに水酸化アルミニウム粉を使用した例であり、断熱シートNo.15はエアロゲルを使用した例である。
【0067】
【表2】
【0068】
上記表2および図4に示すように、断熱シートNo.11および12は、シリカとチタニアを適切な比率で含有しており、水酸化アルミニウム粉を用いた断熱シートNo.13および14と比較して、いずれの温度領域においても熱伝導率が低いものとなった。また、エアロゲルを用いた断熱シートNo.15と比較して、特に約400℃以上の温度領域において、優れた断熱性を得ることができた。さらに、断熱シートNo.11および12は、第1粒子として粒子径が極めて小さいシリカナノ粒子を使用しているので、断熱シートに対する圧縮応力が増加し、密度が上昇した場合であっても、密度の上昇による影響を受けにくく、いずれも優れた断熱性を得ることができた。
【0069】
一方、断熱シートNo.13および14で表されるように、密度が1.00(g/cm)から1.50(g/cm)に上昇したことにより、すべての温度領域において著しく熱伝導率が上昇した。これらのことから、断熱シートの両側に配置された電池セルが熱膨張して、断熱シートに圧縮応力が加わった場合であっても、第1粒子として、平均粒子径が1nm~100nmであるシリカナノ粒子を用いることにより、優れた断熱性を維持することができることが示された。
【符号の説明】
【0070】
10 断熱シート
10a、10b 面
20 電池セル
21 第1粒子
22 第2粒子
30 電池ケース
100 組電池
図1
図2
図3
図4