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  • 特開-制御装置、方法、およびプログラム 図1
  • 特開-制御装置、方法、およびプログラム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186829
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】制御装置、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
B60W30/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167146
(22)【出願日】2022-10-18
(62)【分割の表示】P 2018161522の分割
【原出願日】2018-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】能村 真
(57)【要約】
【課題】低コストでドライバビリティを向上できる制駆動力制御装置等を提供する。
【解決手段】車両に搭載された御装置であって、運転支援システムから複数の第1の要求を受け付ける受付部と、複数の第1の要求を調停する調停部と、調停部による調停結果に基づいて第2の要求を算出する算出部と、第2の要求を、パワートレインアクチュエータを含むアクチュエータシステムの少なくとも1つに分配する分配部と、を備え、第1の要求には、パワートレインアクチュエータの制御内容が含まれず、第2の要求には、パワートレインアクチュエータの制御内容が含まれ、算出部は、さらにパワートレインアクチュエータの動作状態に基づいて第2の要求を算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された御装置であって、
運転支援システムから、複数の第1の要求を受け付ける受付部と、
前記複数の第1の要求を調停する調停部と、
前記調停部による調停結果に基づいて、第2の要求を算出する算出部と、
前記第2の要求を、パワートレインアクチュエータを含むアクチュエータシステムの少なくとも1つに分配する分配部と、を備え、
前記第1の要求には、前記パワートレインアクチュエータの制御内容が含まれず、前記第2の要求には、前記パワートレインアクチュエータの制御内容が含まれ、
前記算出部は、さらに前記パワートレインアクチュエータの動作状態に基づいて、前記第2の要求を算出する、制御装置。
【請求項2】
前記算出部は、さらに前記パワートレインアクチュエータの動作履歴に基づいて、前記第2の要求を算出する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
車両に搭載されたマネージャであって、
複数のADASアプリケーションから複数の第1の要求を受け付ける受付部と、
前記複数の第1の要求を調停する調停部と、
前記調停部による調停結果に基づいて、第2の要求を算出する算出部と、
前記第2の要求を、パワートレインアクチュエータを含むアクチュエータシステムの少なくとも1つに分配する分配部と、を備え、
前記第1の要求には、前記パワートレインアクチュエータの制御内容が含まれず、前記第2の要求には、前記パワートレインアクチュエータの制御内容が含まれ、
前記算出部は、さらに前記パワートレインアクチュエータの動作状態に基づいて前記第2の要求を算出する、マネージャ。
【請求項4】
車両に搭載された制御装置が実行する方法であって、
運転支援システムから複数の第1の要求を受け付けるステップと、
前記複数の第1の要求を調停するステップと、
調停結果に基づいて第2の要求を算出するステップと、
前記第2の要求を、パワートレインアクチュエータを含むアクチュエータシステムの少なくとも1つに分配するステップと、を含み、
前記第1の要求には、前記パワートレインアクチュエータの制御内容が含まれず、前記第2の要求には、前記パワートレインアクチュエータの制御内容が含まれ、
前記算出するステップは、さらに前記パワートレインアクチュエータの動作状態に基づいて前記第2の要求を算出する、方法。
【請求項5】
車両に搭載された制御装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、
運転支援システムから複数の第1の要求を受け付けるステップと、
前記複数の第1の要求を調停するステップと、
調停結果に基づいて第2の要求を算出するステップと、
前記第2の要求を、パワートレインアクチュエータを含むアクチュエータシステムの少なくとも1つに分配するステップと、を含み、
前記第1の要求には、前記パワートレインアクチュエータの制御内容が含まれず、前記第2の要求には、前記パワートレインアクチュエータの制御内容が含まれ、
前記算出するステップは、さらに前記パワートレインアクチュエータの動作状態に基づいて前記第2の要求を算出する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載され、パワートレインおよびブレーキを制御する制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、各種の運転支援システムが提案されている。例えば、引用文献1は、前方車両との距離等に基づいて車間距離を維持しやすい制駆動力の制御を行うことで、運転者に好適な運転感覚を提供することを開示している。
【0003】
運転支援機能が高度化し、車両が複数のアプリケーション実行部を備え、各アプリケーション実行部がそれぞれ自動運転や自動駐車等の処理を行うアプリケーションを実行するようになっている。各アプリケーション実行部は、それぞれが担当する運転支援機能を実現するため、車両が備えるパワートレインが出力すべき制駆動力(制動力および駆動力)やブレーキが出力すべき制動力を算出する。また、各アプリケーション実行部は、パワートレインに対して、変速機のギア比の変更や、L/U(ロックアップクラッチ)を作動させるか否か、エンジンのF/C(フューエルカット)をするか否か、等の制御内容もそれぞれアプリケーションが有する制御仕様に基づいて決定する。
【0004】
パワートレインを駆動するパワートレイン駆動部は、各アプリケーション実行部が算出した制駆動力や決定したギア比、L/U、F/C等の制御内容に基づいて、変速機やエンジンの制御を行う。また、パワートレイン駆動部は、ユーザーがアクセルペダル操作を行うと、操作量に応じて、パワートレイン駆動部自体が有する制御仕様に基づいて、制駆動力やギア比、L/U、F/C等の制御内容を決定しパワートレインの制御を行う。また、ブレーキを駆動するブレーキ駆動部は、各アプリケーション実行部が算出した制動力に基づいてブレーキの制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-308099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ギア比、L/U、F/C等の制御は、車両の挙動に対して非線形的な影響を与えるため、ユーザーが感じる運転のしやすさ、あるいは、乗り心地といったドライバビリティに対しても影響が大きい。そのためギア比、L/U、F/C等の制御仕様の改良は、ドライバビリティ向上に重要である。
【0007】
しかし、ギア比、L/U、F/C等の制御仕様は、各アプリケーションおよびパワートレイン駆動部がそれぞれ有しているので、それぞれに向けて個別に開発、実装する必要があり開発が重複し、費用、時間等のコストが大きかった。また、それぞれの制御仕様が異なると車両の挙動の統一感が得られずユーザーに違和感を与え、ドライバビリティを損なうおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、低コストでドライバビリティを向上できる制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一局面は、車両に搭載された御装置であって、運転支援システムから複数の第1の要求を受け付ける受付部と、複数の第1の要求を調停する調停部と、調停部による調停結果に基づいて第2の要求を算出する算出部と、第2の要求を、パワートレインアクチュエータを含むアクチュエータシステムの少なくとも1つに分配する分配部と、を備え、第1の要求には、パワートレインアクチュエータの制御内容が含まれず、第2の要求には、パワートレインアクチュエータの制御内容が含まれ、算出部は、さらにパワートレインアクチュエータの動作状態に基づいて第2の要求を算出する、制御装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低コストでドライバビリティを向上できる制御装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る制駆動力制御システムの機能ブロック図
図2】本発明の一実施形態に係る制駆動力制御システムの処理を示すシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
本発明の一実施形態に係る制駆動力制御装置は、制駆動力の発生要求を受け付け、これに基づいて、ギア比、L/U、F/C等の制御を一括的に行う。これにより、同一制御仕様による統一感のあるドライバビリティが得られる、また、制駆動力の発生要求元である運転支援機能側でのギア比、L/U、F/C等の制御が不要となり、開発コストを低減できる。
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
<構成>
図1に、本実施形態に係る制駆動力制御システム1の機能ブロック図を示す。制駆動力制御システム1は、運転支援のための処理を行うアプリケーション実行部11、12、13とアクセル開度センサ14と、ブレーキペダルセンサ15と、制駆動力制御装置100とパワートレイン20とブレーキ31とを含む。
【0015】
アプリケーション実行部11、12、13は、図示しないカメラ等から取得する情報を利用して、それぞれ異なる機能を実行し、例えば自動運転、自動駐車、衝突回避等の処理を行うそれぞれのアプリケーションを実行する。また、アクセル開度センサ14は、ユーザーの操作による、アクセルペダルの操作量を検出する。ブレーキペダルセンサ15は、ユーザーの操作による、ブレーキペダルの操作量を検出する。制駆動力制御装置100は、制駆動力決定部101、パワートレイン駆動部102、ブレーキ駆動部103を含む。パワートレイン20は、エンジン21および変速機22を含む。
【0016】
<処理>
図2に、制駆動力制御システム1の処理を示すシーケンス図を示す。図2を参照して制駆動力制御システム1の処理を説明する。本処理は、例えば車両の走行中繰り返し実行される。
【0017】
(ステップS101)
アプリケーション実行部11、12、13は、それぞれのアプリケーションを実行し、各運転支援機能の実現に必要な制駆動力を表す情報を生成して出力する。ここで制駆動力とは、車両を減速させる制動力と加速させる駆動力とを意味する。アプリケーション実行部11、12、13は、ギア比、L/U(ロックアップクラッチ)、エンジンのF/C(フューエルカット)に関する制御内容の決定は行わない。そのため、アプリケーション実行部11、12、13が出力する制駆動力を表す情報には、これらの制御項目についての制御内容は含まれない。なお、アプリケーション実行部の数や運転支援の内容は限定されない。また、アクセル開度センサ14はユーザーのアクセルペダル操作に応じて、アクセル開度を出力する。ブレーキペダルセンサ15はユーザーのブレーキペダル操作に応じて、ペダル操作量を出力する。
【0018】
(ステップS102)
制駆動力決定部101は、アプリケーション実行部11、12、13、アクセル開度センサ14、ブレーキペダルセンサ15からの情報を受け付け、受け付けた情報に基づいて、発生させる制駆動力を決定する。パワートレイン20に発生させる制駆動力やブレーキ30に発生させる制動力を決定する。制駆動力決定部101は、駆動力を発生させると決定した場合は、決定した駆動力を発生させる要求を生成してパワートレイン駆動部102に通知する。また、制駆動力決定部101は、制動力を発生させると決定した場合は、決定した制動力をパワートレイン20に発生させる制動力およびブレーキ30に発生させる制動力に分配し、それぞれに発生させる要求を生成してパワートレイン駆動部102およびブレーキ駆動部103に通知する。アプリケーション実行部11、12、13が同時に動作していたり、ユーザーがアクセルペダル操作をしたりすることによって、アプリケーション実行部11、12、13、アクセル開度センサ14、ブレーキペダルセンサ15のうち2つ以上から同時に情報を受け付けた場合は、予め定めた優先度や車両が備える他の機器から受け取る車両の状態や車両の周囲の状態に基づいて、いずれか1つを選択して、要求する制駆動力を決定することができる。また、優先度は、アプリケーション実行部11、12、13が各時点における自装置の処理の緊急性等に応じて指定したものを受け付けてもよい。なお、アプリケーション実行部11、12、13と制駆動力決定部101との間に、例えばアプリケーション実行部11、12、13からの出力を調停して1つの出力を選択し、制駆動力決定部101に通知する管理部を設けてもよい。
【0019】
(ステップS103)
パワートレイン駆動部102は、制駆動力決定部101が生成した要求を受け付け、これに基づいて、パワートレイン20に発生させる制駆動力、変速機のギア比、L/U(ロックアップクラッチ)、エンジンのF/C(フューエルカット)の制御内容を、自身に実装されている制御仕様に従って決定する。パワートレイン駆動部102は、制駆動力決定部101が決定した制駆動力のみでなく、パワートレイン20の動作状態、動作履歴等に基づいて制御内容を決定してもよいし、車両が備える他の機器から受け取る車両や車両の周囲の状態に基づいて制御内容を決定してもよい。
【0020】
(ステップS104)
パワートレイン20は、パワートレイン駆動部102が決定した制御内容に従って動作し、変速機22のギア比、L/U、エンジン21のF/Cの制御および制駆動力の発生を行う。ステップS101で制駆動力決定部101が決定した制駆動動力が、駆動力である場合、本シーケンスが終了し、ステップS101から処理が繰り返される。ステップS101で制駆動力決定部が決定した制駆動動力が、制動力である場合、次のステップS105に進む。
【0021】
(ステップS105)
ブレーキ駆動部103は、制駆動力決定部101が生成した要求を受け付け、要求が表わす制動力を、ブレーキ31に発生させるための制御内容を決定する。
【0022】
(ステップS106)
ブレーキ31は、ブレーキ駆動部103が決定した制御内容に従って動作し、制動力の発生を行う。以上で本シーケンスが終了し、ステップS101から処理が繰り返される。
【0023】
以上の例においては、制駆動力決定部101から駆動力が要求されている場合、駆動力をパワートレイン20が発生させる(S104)。また、制駆動力決定部101から制動力が要求されている場合、パワートレイン20およびブレーキ30が連携して制動力を発生させる(S104、S106)。なお、ステップS102において、制駆動力決定部101は、制動力を発生させると決定した場合は、パワートレイン駆動部102およびブレーキ駆動部103から、それぞれパワートレイン20とブレーキ30とが現在の動作状態や動作履歴のもとで、発生可能な制動力の範囲を取得し、取得した範囲内でパワートレイン20に発生させる制動力およびブレーキ30に発生させる制動力を決定してもよい。また、制駆動力決定部101は、例えば、まず、パワートレイン20が可能な範囲で制動力を発生させ、不足分があればさらにブレーキ30が制動力を発生させるよう制御してもよい。
【0024】
また、ステップS103からS106の制御を所定時間以下の短い周期で繰り返し、パワートレイン20が発生させる制動力とブレーキ31が発生させる制動力との割合を、細やかに変動させれば、例えば、パワートレイン20が、変速機のギア比、L/U、エンジンのF/Cを制御した結果、パワートレイン20が発生させる制動力が非線形的に減少した場合に、ブレーキ31が非線形的な変化を相殺するよう制動力を増加させ、車両の挙動への影響を低減してドライバビリティを向上することができる。制駆動力決定部101とパワートレイン駆動部102、ブレーキ駆動部103との間の通信内容および通信タイミングは、好適に制駆動力が実現できれば限定されない。
【0025】
<効果>
本発明によれば、変速機のギア比、L/U、エンジンのF/Cのようなドライバビリティに影響の大きい制御を、制駆動力制御装置が一括して行う。これにより、運転支援のための複数のアプリケーション実行部による制駆動力要求やユーザーのアクセル操作やブレーキ操作による制駆動力要求が発生した場合に、同一の制御仕様によって、ギア比、L/U、F/Cの制御を行うことができる。これにより、ユーザーに違和感を与えない統一感のある制御ができる。また、制御仕様の開発、実装をアプリケーションごとに行う必要がないため開発コストを低減でき、効率的にドライバビリティ向上を図ることができる。また、アプリケーション実行部が制動力を要求した場合、制駆動力制御装置は、パワートレインとブレーキとを連携制御するので、これによっても、例えば制駆動動力をなめらかに発生させ、ドライバビリティを向上することができる。
【0026】
なお、アプリケーション実行部による各種の運転支援機能の実行時におけるドライバビリティには、ユーザーのアクセルペダル操作によるドライバビリティにはない固有の課題がある。この固有の課題に対応するため、制駆動力制御装置は、運転支援機能の実行時におけるギア比、L/U、F/Cの制御仕様を、ユーザーのアクセルペダル操作時における制御仕様と部分的に異ならせてもよい。
【0027】
また、上述の実施形態では、制駆動力制御装置が一括制御する制御項目の例としてギア比、L/U、F/Cを挙げたが、制御項目は、これらの一部でもよく、これら以外の制御項目を含んでもよい。また、上述の制駆動力を表す情報は、加速度等によって表現されてもよい。
【0028】
なお、本発明は、制駆動力制御装置(制御装置)や制駆動力制御システムとして捉えるだけでなく、これらが備えるコンピュータが実行する方法、プログラム、プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体または、制動力制御システムを搭載した車両として捉えることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の制御装置等は、車両等の制駆動力の制御に有用である。
【符号の説明】
【0030】
1 制駆動力制御システム
11、12、13 アプリケーション実行部
14 アクセル開度センサ
15 ブレーキペダルセンサ
20 パワートレイン
21 エンジン
22 変速機
31 ブレーキ
100 制駆動力制御装置(制御装置)
101 制駆動力決定部
102 パワートレイン駆動部
103 ブレーキ駆動部
図1
図2