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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186830
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
F02D29/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167441
(22)【出願日】2022-10-19
(62)【分割の表示】P 2019121588の分割
【原出願日】2019-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青井 航一
(57)【要約】
【課題】作業走行モードに切り替えられたときにエンジンの回転数が急上昇することが抑制されて操縦者が違和感なく使用することができる作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両は、エンジンと、エンジンの回転数を低速回転数から高速回転数までの範囲内で固定するよう操作するスロットル操作手段の選択した回転数を検出するスロットルセンサと、エンジンの回転数を任意に変更するよう操作するアクセル操作手段の操作量を検出するアクセルセンサと、路上走行モードと作業走行モードを切り替えるモード切替え手段の切り替えを検出するモード切替えセンサと、エンジンの動作等を制御する制御手段を備え、その制御手段が、モード切替えセンサが路上走行モードへの切り替えを検出したときスロットルセンサが前記所定の低速回転数に選択されていることを検出したとき、エンジンの回転数を前記アクセルセンサの検出値に応じて制御する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転動力を発生するエンジン(5)と、
前記エンジン(5)の回転数を所定の低速回転数から高速回転数までの範囲内で固定するよう操作するスロットル操作手段(15)と、
前記エンジン(5)の回転数を任意に変更するよう操作するアクセル操作手段(16)と、
路上走行モードと作業走行モードを切り替えるモード切替え手段(20)と、
前記スロットル操作手段(15)の選択された回転数を検出するスロットルセンサ(72)と、
前記アクセル操作手段(16)の操作量を検出するアクセルセンサ(73)と、
前記モード切替え手段(20)の切り替えを検出するモード切替えセンサ(74)と、
少なくとも前記エンジン(5)の動作を制御する制御手段(70)と、
を備え、
前記制御手段(70)は、
前記モード切替えセンサ(74)が路上走行モードへの切り替えを検出した場合、前記スロットルセンサ(72)が前記所定の低速回転数に選択されていることを検出したとき、前記エンジン(5)の回転数を前記アクセルセンサ(73)の検出値に応じて制御することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記制御手段(70)は、前記モード切替えセンサ(74)が路上走行モードへの切り替えを検出した場合、前記スロットルセンサ(72)が前記所定の低速回転数に選択されていることを検出しないとき、前記エンジン(5)の回転数を前記所定の低速回転数にするよう制御することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタ等の作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ等の作業車両におけるエンジンの回転を調節する技術としては、下記の特許文献1に記載された作業車両が知られている。
【0003】
特許文献1には、エンジンからの回転駆動力が変速装置を介して出力される走行変速系を備え、その変速装置における副変速を行う副変速レバーが高速側に切り替えられた状態で路上走行する作業車両において、その副変速レバーの高速側への操作に連動して高速側にセットされているスロットルレバーを低速側に切り替えるとともに、副変速レバーの高速への切替え状態ではスロットルレバーの高速側への操作を規制する連動手段を備えるエンジン回転調整装置を採用した作業車両が記載されている。
【0004】
また特許文献1には、副変速レバーが高速側に切り替えられた場合はスロットルレバーが連動手段によって低速側に切り替えられるとともに高速側への操作が規制された状態になるので、その状態で路上走行するときは、エンジンの回転調節をスロットルレバーとは別系統であるフットペダルのみで行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08-216718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された作業車両は、副変速レバーとスロットルレバーが連動手段で連結されているため、副変速レバーを高速側に切り替えた場合には、常にスロットルレバーが低速側に切り替えられて高速側への操作が規制されることになってしまい、エンジンの回転数をスロットルレバーの操作により調節することが不可能であった。
【0007】
このため、この作業車両では、圃場、牧場等の作業場において例えばトレーラーを牽引して荷物の運搬移動をする場合、副変速レバーを高速側に切り替えたときには、スロットルレバーを操作して高速で走行したいときがあっても、それができず不便を強いられることになる。
【0008】
ちなみに近年、本出願人にあっては、路上を走行する路上走行モードと圃場等で作業しながら走行する作業走行モードとして、その路上走行や作業走行にそれぞれ適した制御機能や動作が有効になるよう予め選定された構成からなるモードを用意し、その路上走行モードと作業走行モードをモード切替えスイッチで簡単に切り替えて対応することができる作業車両の開発を続けている。その構成の一例としては、作業走行モードが選択されたときには、副変速レバーの選択内容に関係なくスロットルレバーによる制御操作を可能とする一方で、路上走行モードが選択されたときには、スロットルレバーによる制御操作を禁止するという設定である。
【0009】
このようなモード切り替えが可能な作業車両であれば、作業走行モードを選択したときにスロットルレバーによる制御操作ができるので、作業場においてスロットルレバーを操作して低速以外の高速等の選択内容にしたうえで走行することも可能になる。
【0010】
しかし、この作業車両にあっても、路上走行モードから作業走行モードへ切り替えられたとき、スロットルレバーの選択内容(例えば高速側を選択している場合)によってはエンジンの回転数が急上昇することがあり、これにより作業車両の操縦者が違和感を覚えることがある。また、操縦者が路上走行モードに切り替えられているにもかかわらずそのことに気付かずにスロットルレバーを操作したときには、その操作に対してエンジンの回転数が何も変化せず反応しないことになり、この場合も操縦者が違和感を覚えることになる。
【0011】
そこで、この発明の課題は、特に作業走行モードに切り替えられたときに、エンジンの回転数が急上昇することが抑制されて操縦者が違和感なく使用することができる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の上記課題は、以下の手段により解決される。
【0013】
請求項1に記載の発明は、
回転動力を発生するエンジン(5)と、前記エンジン(5)の回転数を所定の低速回転数から高速回転数までの範囲内で固定するよう操作するスロットル操作手段(15)と、前記エンジン(5)の回転数を任意に変更するよう操作するアクセル操作手段(16)と、路上走行モードと作業走行モードを切り替えるモード切替え手段(20)と、前記スロットル操作手段(15)の選択された回転数を検出するスロットルセンサ(72)と、前記アクセル操作手段(16)の操作量を検出するアクセルセンサ(73)と、前記モード切替え手段(20)の切り替えを検出するモード切替えセンサ(74)と、少なくとも前記エンジン(5)の動作を制御する制御手段(70)と、を備え、
前記制御手段(70)は、前記モード切替えセンサ(74)が路上走行モードへの切り替えを検出した場合、前記スロットルセンサ(72)が前記所定の低速回転数に選択されていることを検出したとき、前記エンジン(5)の回転数を前記アクセルセンサ(73)の検出値に応じて制御することを特徴とする作業車両である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両において、前記制御手段(70)は、前記モード切替えセンサ(74)が路上走行モードへの切り替えを検出した場合、前記スロットルセンサ(72)が前記所定の低速回転数に選択されていることを検出しないとき、前記エンジン(5)の回転数を前記所定の低速回転数にするよう制御することを特徴とする作業車両である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、特に作業走行モードに切り替えられたときに、エンジンの回転数が不意に急上昇することが抑制されて、操縦者が違和感なく使用することができる。
【0016】
この発明では、モード切替え手段が路上走行に切り替えられているときにスロットル操作手段が低速回転数を選択していることが前提条件として求められるので、その路上走行から作業走行に切り替えられた場合でも、エンジンの回転数が不意に急上昇することが抑制される。また、モード切替え手段が路上走行モードに切り替えられた場合には、スロットル操作手段が低速回転数の側に操作されていることが求められたうえで、アクセル操作手段を操作してエンジンの回転数を制御することが可能になるので、アクセル操作手段を高速の側に操作していない限りは、エンジンの回転数が不意に急上昇することが抑制される。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、路上走行に切り替えられたときに、スロットル操作手段が低速回転数を選択するように操作されていないと、エンジンの回転数が低速回転数になるよう制御されるので、エンジンの回転数が不意に急上昇することがなく違和感を覚えることもない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の実施形態に係るトラクタを示す左側面図である。
図2】トラクタの駆動伝達系や制御系の構成を示す平面模式図である。
図3】操縦席の前方側の構成を示す概略斜視図である。
図4】(A)は図3の前方側の一部を示す右側概略斜視図、(B)は(A)の前方側の一部における一部を示す概略拡大図である。
図5】(A)は操縦席の後方側の構成を示す概略斜視図、(B)は(A)の後方側の一部における一部を拡大して示す概略斜視図である。
図6】トラクタの制御系の構成を示す機能ブロック図である。
図7】第1の実施形態における走行モードに関する制御処理の一部を示すフローチャート図である。
図8】第1の実施形態における走行モードに関する制御処理の他の一部を示すフローチャート図である。
図9】第2の実施形態における走行モードに関する制御処理の一部を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
図1には、この発明の第1の実施形態に係る作業車両の一例であるトラクタ1が示されている。図2には、図1のトラクタ1の一部(駆動伝達系や制御系の構成)が示されている。
【0021】
以下の説明では、前後とはトラクタ1の前進する方向と後進する方向とする。また同様に、左右(L,R)とはトラクタ1の前進する方向で見たときの左側および右側とし、上下とはトラクタ1の上側および下側とする。
【0022】
トラクタ1は、図1図2に示されるように、車体2の前部および後部に左右一対の前輪3(3L,3R)および後輪4(4L,4R)が設けられている。またトラクタ1は、車体2の前部に内に搭載されたエンジン5で発生させる回転動力が、車体2の中間部に配置された主変速部6Aと副変速部6Bからなる変速機構部6(図2参照)において適宜減速された後に後輪4等に伝えられる。
【0023】
これにより、トラクタ1は、所要の速度で前進および後進することが可能な車両として構成されている。エンジン5については、その前部および上部を含む一部が、開閉するボンネット7で覆われている。
【0024】
このトラクタ1においては、図2に示されるように、変速機構部6において減速された後の回転動力を前輪3に伝達することを接続又は切断するための前輪駆動クラッチ65が設けられている。
【0025】
この前輪駆動クラッチ65を接続する状態(入り状態)にしたときは、その回転動力が差動装置の前輪デフ装置31から左右の前輪軸部32L,32Rを通して前輪3に伝わるとともに後輪デフ装置41から左右の後輪軸部42L,42Rを通して後輪4に伝わって、四輪が駆動される。また、前輪駆動クラッチ65を切断する状態(切り状態)にしたときは、回転動力が後輪4のみに伝わって二輪が駆動される。
【0026】
これにより、トラクタ1は、前輪駆動クラッチ65を切り替えることにより、二輪駆動(2WD)と四輪駆動(4WD)のいずれかの形態で走行することが可能になっている。
【0027】
また、トラクタ1は、図1等に示されるように、車体2の後部に、ロータリ耕うん機等の作業機90を連結させて昇降動させる連結昇降装置8や、作業機90で利用される回転動力を出力するPTO軸9が設けられている。
【0028】
連結昇降装置8は、リンク機構、ロッド、油圧シリンダ等を組み合わせて構成されている。PTO軸9は、エンジン5で発生する回転動力の一部が分配されてPTOクラッチ95およびPTO変速部96(図2参照)を介して伝達されることにより所定の速度および方向に回転するようになっている。図1では、作業機90としてロータリ耕うん機を例示している。このロータリ耕うん機によれば、図1に示されるように圃場に下降させられた状態において、PTO軸9から伝達される回転動力で耕うん爪91を回転させることにより圃場の地面(土壌)を耕すことができる。
【0029】
さらに、トラクタ1では、図1から図3等に示されるように、車体2の中間部から後部にかけて、トラクタ1の操縦者が座って運転等の操作を行う操縦席10が設けられている。操縦席10は、例えば、操縦者が座るシート部10aと操縦者の足を置く床面部10bとで構成されている。
【0030】
操縦席10の前方には、図1図3等に示されるように、床面部10bの左右中央部から立ち上がるハンドルポスト11が設けられている。ハンドルポスト11の上部には、ステアリングホイール(ハンドル)12やメータパネル13が設けられている。
【0031】
ステアリングホイール12は、前輪3の操舵装置33を作動させて走行するときの向きを調節するよう操作される。メータパネル13は、トラクタ1における走行速度、設定や状態の状況、警告内容等の情報を表示する表示手段等で構成されている。
【0032】
また、ハンドルポスト11の上部でステアリングホイール12の下方側の周辺部分には、図3等に示されるように、前後進切替えレバー14、スロットルレバー15等が設けられている。
【0033】
前後進切替えレバー14は、前進走行と後進走行との切り替えを行うように操作される。スロットルレバー15は、エンジン5の回転数を所定の範囲内で選択して固定するよう操作するスロットル操作手段の一例である。スロットルレバー15は、例えば、所定の低速回転数と所定の高速回転数の2種類の回転数を選択できるようになっている。このときの所定の低速回転数は、アイドリング状態のときの回転数に設定される。
【0034】
さらに、ハンドルポスト11の上部には、図4に示されるように、トラクタ1の路上走行モードと作業走行モードを切り替えるモード切替え手段の一例としてのモード切替えスイッチ20が設けられている。
【0035】
第1の実施形態におけるモード切替えスイッチ20は、図4(B)に拡大して示されるように、ダイヤル式のものであり、路上走行モードとしての「走行」と、作業走行モードとしての「耕うん」とに切り替えることができるように構成されている。
【0036】
路上走行モードとしての「走行」は、道路走行、圃場の出入り、傾斜地等の場所を走行する際に適した機能や動作が予め選定されており、例えば4WD,2WDの駆動切り替え機能や水平切替え等が実行されるよう設定されている。作業走行モードとしての「耕うん」は、圃場等の作業場において行われる作業に適した機能や動作が予め選定されている。その機能や動作としては、例えば、4WDに固定されること、後進に切り替えたときやステアリングホイール12を切ったときに作業機90を自動で上昇させること、旋回時に内側の後輪4に自動的にブレーキをかけること等の機能や動作であり、これらが実行されるよう設定されている。
【0037】
また、このモード切替えスイッチ20には、カスタマイズ設定モードとしての「こだわり」も用意されている。このカスタマイズ設定モードとしての「こだわり」は、主に作業時の機能について操縦者が任意に選択変更することが可能なモードであり、主に作業走行モードとしての「耕うん」における機能や動作の採用の有無を選択することができる。
【0038】
操縦席10の床面部10bでハンドルポスト11の下部の周辺部分には、図3等に示されるように、アクセルペダル16、左右のブレーキペダル17L,17R、クラッチペダル18、PTO変速レバー19等が設けられている。
【0039】
アクセルペダル16は、エンジン5の回転数を任意に変更するよう操作するアクセル操作手段の一例であり、ペダル式になっている。左右のブレーキペダル17L,17Rは、左右の後輪4L,4Rにおける図示しないブレーキ装置を作動させるときに踏み込んで操作される。クラッチペダル18は、エンジン5と主変速部6Aの間に配置されてエンジン5の回転動力の伝達を接続又は切断するとともに回転動力を前進および後進用に切り替えて伝達させる前後進クラッチ55を作動させるときに踏み込んで操作される。PTO変速レバー19は、PTO軸9の回転の速度や方向の切り替えが行われるPTO変速部96を作動させるときに操作される。
【0040】
操縦席10のシート部10aの左脇には、左側操作部が設けられている。この左側操作部には、図5(A)に示されるように副変速部6Bの切り替えを行う副変速レバー21が設けられている。
【0041】
副変速レバー21は、例えば、副変速ギヤ機構におけるギヤの組み合わせとして低速段、中速段および高速段の3種類の副変速段を選択して切り替えることができるよう構成されている。
【0042】
操縦席10のシート部10aの右脇には、右側操作部が設けられている。この右側操作部には、図5に示されるように主変速部6Aの切り替えを行う主変速レバー22や、PTOクラッチ95における回転動力の伝達を接続又は切断する状態(入り状態又は切り状態)を切り替えるPTO入切スイッチ23等が設けられている。
【0043】
主変速レバー22は、例えば、主変速ギヤ機構におけるギヤの組み合わせとして1段(低速側)から15段(高速側)までの複数の主変速段のいずれかに自由に切り替えることができるよう構成されている。
【0044】
そして、このトラクタ1は、図2図6に示されるように、エンジン5の動作やトラクタ1の走行動作等の各種の動作について制御するための制御手段70を備えている。
【0045】
制御手段70は、例えばマイクロコンピュータ等で構成されるものであり、メモリ部70mに格納されている制御用のプログラムやデータに基づいて必要な制御を行うようになっている。
【0046】
この制御手段70には、エンジン5の動作を制御する際に参考にする指示情報や制御情報を得るためにエンジン回転センサ71、スロットルセンサ72、アクセルセンサ73等が接続されており、その各センサ71,72,73等で検出される検出値(検出結果の情報)が入力される。
【0047】
エンジン回転センサ71は、エンジン5の回転数(例えばクランクの回転数)を検出する手段である。スロットルセンサ72は、スロットルレバー15の選択したときの回転数の移動位置を検出する手段である。アクセルセンサ73は、アクセルペダル16の操作量(ペダルの踏み込み量)を検出する手段である。
【0048】
また、制御手段70は、エンジン5の回転数を実際に調節するときの制御対象になる回転数調節装置51と接続されており、その回転数調節装置51にエンジン5の回転数を制御するための制御信号を送信するようになっている。
【0049】
回転数調節装置51は、エンジン5がガソリンエンジンである場合には、そのエンジン5におけるスロットルの開度をスロットルセンサ72又はアクセルセンサ73の検出値に応じて調節するようスロットルをワイヤーにより動かす装置として構成される。また、回転数調節装置51は、エンジン5がディーゼルエンジンである場合には、そのエンジン5における燃焼噴射のタイミングをスロットルセンサ72又はアクセルセンサ73の検出値に応じて調節するようセンサアームをリンクにより動かす装置として構成される。
【0050】
一方、制御手段70には、トラクタ1の走行動作を制御する際に参考にする制御情報を得るためにモード切替えセンサ74、副変速操作センサ75、主変速操作センサ76、走行速度センサ77等が接続されており、その各センサ74,75,76,77等で検出される検出値が入力される。
【0051】
モード切替えセンサ74は、モード切替えスイッチ20の切り替えたときのモードの選択位置を検出する手段である。副変速操作センサ75は、副変速レバー21の選択したときの副変速段の移動位置を検出する手段である。主変速操作センサ76は、主変速レバー22の選択したときの主変速段の移動位置を検出する手段である。走行速度センサ77は、トラクタ1の走行速度を検出する手段である。
【0052】
また、制御手段70は、トラクタ1の走行条件を実際に変更するときの制御対象になる副変速駆動装置61、主変速駆動装置62等と接続されており、その副変速駆動装置61、主変速駆動装置62等に対して変速段の変更等の動作を制御するための制御信号を送信するようになっている。
【0053】
副変速駆動装置61は、副変速操作センサ75の検出値に応じて副変速部6Bにおける副変速段等の変更を行うためのメカリンクや副変速の操作位置を検出する副変速操作センサ75等で構成された装置である。主変速駆動装置62は、主変速操作センサ76の検出値に応じて主変速部6Aにおける主変速段等の変更を行うためのソレノイド、油圧クラッチ等で構成された装置である。
【0054】
さらに、制御手段70には、トラクタ1のPTO軸9に関する動作を制御するときの動作処理の参考にする制御情報を得るためにPTO入切センサ78、PTO変速センサ79等が接続されており、その各センサ78,79等で検出される検出値が入力される。
【0055】
PTO入切センサ78は、PTO入切スイッチ23における入り状態および切り状態を検出する手段である。PTO変速センサ79は、PTO変速レバー19の選択したときの移動位置を検出する手段である。
【0056】
また、制御手段70は、PTO軸9の動作を実際に変更するときの制御対象になるクラッチ駆動装置85、PTO変速駆動装置86等と接続されており、そのクラッチ駆動装置85、PTO変速駆動装置86等に対してその各動作を制御するための制御信号を送信するようになっている。
【0057】
クラッチ駆動装置85は、PTO入切センサ78の検出値に応じてPTOクラッチ95における接続又は切断の状態の切り替えを行うためのソレノイド、油圧クラッチ等で構成された装置である。PTO変速駆動装置86は、PTO変速センサ79の検出値に応じてPTO変速部96における変速段等の変更を行うためのメカリンクやPTO変速の操作位置を検出するPTO変速センサ79等で構成された装置である。
【0058】
ちなみに、このトラクタ1においては、ハンドルポスト11の上部でステアリングホイール12の下方になる部分にあるエンジン始動停止用のキースイッチ29(図3参照)を操作することによりエンジン5の始動および停止が可能になっている。
【0059】
特にこのトラクタ1では、エンジン5を始動させるためには、スロットルレバー15が所定の低速回転数(アイドリング状態の回転数)を選択した位置にあることが前提条件にされている。このため、トラクタ1においてエンジン5を始動するときにスロットルレバー15が低速回転数を選択する位置にない場合は、エンジン5を始動させることができない。
【0060】
そして、このトラクタ1は、エンジン5を始動して走行等の動作を行うにときには、制御手段70により以下に説明する制御が行われるようになっている。
【0061】
はじめに、このトラクタ1では、路上走行することを選択した場合、制御手段70により次のように制御される。
【0062】
すなわち、制御手段70は、図7に示されるように、モード切替えスイッチ20が操作されることでモード切替えセンサ74から路上走行モードに切り替えられたことを検出した検出値が得られるか否かを判断しており(ステップS10)、その検出値が得られると、路上走行ではエンジン5の回転数をアクセルセンサ73の検出値に応じて制御するよう処理する(S11)。
【0063】
これにより、路上走行する際には、回転数調整装置51がアクセルセンサ73の検出値に応じて調整を行うよう作動することになり、エンジン5の回転数がアクセルペダル16の操作量である踏み込み量に応じて変更される。別の観点からすれば、路上走行する際には、エンジン5の回転数の制御にスロットルセンサ72の検出値が用いられることがなく、スロットルレバー15の操作によってエンジン5の回転数を変更することができない。このため、路上走行モードに切り替えられたときは、スロットルレバー15の選択位置にかかわらず、アクセルペダル16の踏み込む操作のみでエンジン5の回転数を任意に変更することができる。
【0064】
また、このときの制御手段70による制御は、モード切替えセンサ74から路上走行モードに切り替えられたことの検出値が無くなるまで継続され(S12)、その検出値が無くなった段階で終了する。
【0065】
したがって、このトラクタ1では、路上走行モードが選択されたときに、スロットルレバー15が例えば高速回転数の側に操作されたままであっても、そのスロットルレバー15の選択位置に応じてエンジン5の回転数が制御されることがないので、スロットルレバー15が選択されている位置によってエンジン5の回転数が不意に急上昇することが抑制される。このときのスロットルレバー15が選択されている位置とは、例えば、高速回転数の側の位置である。
【0066】
この結果、トラクタ1の操縦者は、路上走行モードを選択した際にエンジン5の回転数が急上昇するおそれがないので、トラクタ1を違和感なく使用することができる。
【0067】
続いて、このトラクタ1では、路上走行から作業走行することを選択した場合、制御手段70により次のように制御される。
【0068】
すなわち、制御手段70は、図8に示されるように、モード切替えスイッチ20が操作されることでモード切替えセンサ74から作業走行モードに切り替えられたことを検出した検出値が得られるか否かを判断しており(ステップS20)、その検出値が得られると、先ずはエンジン5の回転数を低速回転数になるよう制御する(S21)。
【0069】
これにより、路上走行から作業走行に切り替えられると、回転数調整装置51がアクセルセンサ73の検出値に応じて低速回転数に調整するよう作動する。このため、モード切替えスイッチ20の操作により路上走行モードから作業走行モードを選択するように切り替えたときには、スロットルレバー15が例えば高速回転数の側に操作されたままであっても、そのスロットルレバー15の選択位置にかかわらずエンジン5の回転数が先ずは低速回転数、この例ではアイドリング状態の回転数になるよう強制的に制御される。つまり、このときもエンジン5の回転数がスロットルセンサ72の検出値を用いて制御されることはない。
【0070】
したがって、このトラクタ1では、作業走行モードが選択されたときに、スロットルレバー15が例えば高速回転数の側に操作されたままであっても、そのスロットルレバー15の選択位置に応じてエンジン5の回転数が制御されることがないので、このときもスロットルレバー15が選択されている位置によってエンジン5の回転数が不意に急上昇してしまうことが抑制される。
【0071】
この結果、トラクタ1の操縦者は、作業走行モードを選択した際にもエンジン5の回転数が急上昇するおそれがないので、トラクタ1を違和感なく使用することができる。
【0072】
また、このトラクタ1では、作業走行することが選択されてエンジン5の回転数が低速回転数になるよう制御されると、制御手段70により、スロットルレバー15の選択位置によりスロットルセンサ72から低速回転数を選択していることを検出した検出値が得られるか否かが判断される(S22)。
【0073】
ステップS22においてスロットルセンサ72から低速回転数を選択していることを検出した検出値が得られると、制御手段70は、作業走行においてはエンジン5の回転数をスロットルセンサ72の検出値に応じて制御するよう処理する(S23)。
【0074】
これにより、作業走行する際には、回転数調整装置51がスロットルセンサ72の検出値に応じて調整を行うよう作動することになり、エンジン5の回転数をスロットルレバー15の選択した回転数に固定するよう制御される。このため、作業走行モードに切り替えられたときは、スロットルレバー15を操作してエンジン5の回転数を予め定めた回転数に固定するよう制御することができる。これにより、作業走行するときであっても、スロットルレバー15を高速回転数の側を選択するよう操作すれば高速で走行することが可能になる。
【0075】
また、このときの制御手段70による制御は、図8に示されるように、モード切替えセンサ74から作業走行モードに切り替えられたことの検出値が無くなるまで継続され(S24)、その検出値が無くなった段階で終了する。
【0076】
なお、このときの制御手段70による制御においては、スロットルセンサ72が低速回転数を選択していることが検出されるまでの間は、スロットルセンサ72の検出値が用いられることがなく、スロットルレバー15の操作によってエンジン5の回転数が制御されることがない。これにより、この間は、スロットルレバー15を例えば高速回転数の側を選択するように操作しても、そのスロットルレバー15の操作によりエンジン5の回転数を変更することができない。
【0077】
したがって、このトラクタ1では、路上走行モードが選択されたときと作業走行モードが選択されたときのいずれの場合であっても、上記したようにエンジン5の回転数が不意に急上昇してしまうことが抑制される。
【0078】
この結果、トラクタ1の操縦者は、路上走行モードと作業走行モードのいずれのモードを選択した際にもエンジン5の回転数が急上昇するおそれがないので、トラクタ1を違和感なく使用することができる。
【0079】
さらに、このトラクタ1における制御手段70は、路上走行の際にスロットルレバー15が意図的に操作された場合、メータパネル13における表示部13a(図6参照)に警告の表示をすることと、メータパネル13に付設する音発生部13b(図6参照)で警告の音を発することの一方又はその双方を行うように構成されている。
【0080】
この場合、警告の表示は、例えば、メータパネル13において表示されるアイコン等の点灯対象を点灯又は点滅させることで行われる。
【0081】
これにより、トラクタ1の操縦者は、路上走行をするときにスロットルレバー15の操作が禁止されていることを知ることができ、無駄な操作を行うことを回避することができる。
【0082】
なお、制御手段70は、路上走行の際にスロットルレバー15が意図的に操作された場合、警告の表示と警告音の発生の少なくとも一方をした後か又はそれらをせずに、エンジン5を停止させる制御を行うように構成してもよい。
【0083】
[第2の実施形態]
図9には、この発明の第2の実施形態に係るトラクタの一部(制御の構成例)が示されている。
【0084】
第2の実施形態に係るトラクタは、路上走行することを選択した場合における制御手段70が以下に説明するように一部異なる制御を行うよう変更された以外は第1の実施形態に係るトラクタ1と同じ構成のものである。
【0085】
すなわち、第2の実施形態に係るトラクタにおける制御手段70(図6参照)は、図9に示されるように、モード切替えスイッチ20が操作されることでモード切替えセンサ74から路上走行モードに切り替えられたことを検出した検出値が得られるか否かを判断する(ステップS30)。
【0086】
また制御手段70は、ステップS30において路上走行モードに切り替えられたことの検出値が得られた場合、スロットルレバー15の選択位置によりスロットルセンサ72から低速回転数を選択していることを検出した検出値が得られるか否かを判断する(S31)。
【0087】
このステップS31において低速回転数が選択されていることの検出値が得られると、制御手段70は、路上走行ではエンジン5の回転数をアクセルセンサ73の検出値に応じて制御するよう処理する(S32)。
【0088】
これにより、路上走行する際には、第1の実施形態に係るトラクタ1が路上走行するときの場合と同様に、回転数調整装置51がアクセルセンサ73の検出値に応じて調整を行うよう作動することになり、エンジン5の回転数がアクセルペダル16の操作量である踏み込み量に応じて変更される。
【0089】
また、路上走行モードに切り替えられたときには、スロットルレバー15が低速回転数の側に操作されていることが前提条件として求められたうえで、アクセルペダル16を操作してエンジン5の回転数を制御することが可能になるので、アクセルペダル16を高速の側に踏み込んで操作していない限りは、エンジン5の回転数が不意に急上昇することが抑制される。
【0090】
しかも、このトラクタでは、路上走行モードに切り替えられたときには、スロットルレバー15が低速回転数を選択することが前提条件として求められることになるので、その後において路上走行から作業走行に切り替えられたときでも、エンジン5の回転数が不意に急上昇することが抑制される。
【0091】
一方、制御手段70は、ステップS31において低速回転数が選択されていることの検出値が得られないときには、図9に示されるように、エンジン5の回転数を低速回転数になるよう制御する(S33)。
【0092】
これにより、路上走行に切り替えられたときであっても、スロットルレバー15が低速回転数を選択するように操作されていない場合であれば、回転数調整装置51が低速回転数に調整するよう作動する。このため、モード切替えスイッチ20の操作により路上走行モードが選択されるように切り替えられたときには、スロットルレバー15の選択位置にかかわらずエンジン5の回転数が一時的に低速回転数、この例ではアイドリング状態の回転数になるよう強制的に制御されるので、このことによってもエンジン5の回転数が不意に急上昇することが抑制される。
【0093】
ちなみに、このトラクタにおいては、路上走行に切り替えられたときにスロットルレバー15が低速回転数を選択する位置に変更されるように操作されない間は、アクセルペダル16を操作してもエンジン5の回転数を制御することができないよう構成されている。
【0094】
以上説明したように、制御手段70による一連の制御は、図9に示されるように、モード切替えセンサ74から路上走行モードに切り替えられたことが検出された検出値が無くなるまで継続され(S34)、その検出値が無くなると終了する。
【0095】
したがって、第2の実施形態に係るトラクタにおいても、路上走行モードが選択されたときには、エンジン5の回転数が低速回転数に制御されることになるので、エンジン5の回転数が不意に急上昇してしまうことが抑制される。
【0096】
この結果、トラクタの操縦者は、路上走行モードを選択したときにエンジン5の回転数が急上昇するおそれがないので、そのトラクタを違和感なく使用することができる。
【0097】
[変形例等の他の実施形態]
第1及び第2の実施形態では、スロットル操作手段として、その一例であるスロットルレバー15に代えて、例えば段階式又は無段階式のダイヤル形態からなるスロットルダイヤルや、押下方式や接触(タッチ)方式のスロットルボタン等に代表される他の形態からなるものを適用してもよい。スロットルダイヤルにした場合は、例えば、そのスロットルダイヤルの回転操作に追従して動くアクチュエータを設けるとともに、スロットルセンサ72をそのアクチュエータの動きを検出するセンサとして構成するようしても構わない。
【0098】
また、第1及び第2の実施形態では、アクセル操作手段として、その一例であるアクセルペダル16に代えて、例えばレバー式のアクセルレバー等に代表される他の形態からなるものを適用してもよい。
【0099】
また、第1及び第2の実施形態においては、スロットル操作手段としてスロットルダイヤルを適用した場合、モード切替えスイッチ20で作業走行モード(耕うん)を選択するように操作したときだけ、そのスロットルダイヤルの回転角度を検出したスロットルセンサ72の検出値(信号)を制御手段70に送信するように構成してもよい。
【0100】
また、このスロットルダイヤルを適用した場合は、モード切替えスイッチ20で路上走行モードを選択するように操作したときに、そのスロットルダイヤルの回転角度を検出したスロットルセンサ72の検出値を制御手段70に送信することを遮断し、制御手段70ではエンジン5の回転数をアクセルセンサ73の検出値のみに応じて制御するよう構成してもよい。
【0101】
また、第1及び第2の実施形態においては、スロットル操作手段としてスロットルダイヤルを適用した場合、モード切替えスイッチ20で作業走行モード(耕うん)を選択するように操作したとき、そのスロットルダイヤルの回転角度を検出したスロットルセンサ72の検出値を制御手段70に送信するとともに、制御手段70ではエンジン5の回転数をスロットルセンサ72の検出値に応じても制御できるように構成してもよい。
【0102】
また、このスロットルダイヤルを適用した場合は、モード切替えスイッチ20で路上走行モードを選択するように操作した際に、副変速操作センサ75の検出値が高速以外の変速段を選択したことを検出したときに限り、そのスロットルダイヤルの回転角度を検出したスロットルセンサ72の検出値を制御手段70に送信するとともに、制御手段70ではエンジン5の回転数をスロットルセンサ72の検出値に応じても制御できるように構成しても構わない。
【0103】
さらに、第1及び第2の実施形態においては、モード切替えスイッチ20で作業走行モード(耕うん)を選択するように操作したとき、スロットルレバー15、スロットルダイヤル等のスロットル操作手段が低速回転数(アイドリング状態にする初期位置)を選択する位置に一度戻されたことをスロットルセンサ72が検知した検出値を取得しない限り、制御手段70においてスロットル操作手段を操作してエンジン5の回転数を増減させる制御を許可しないように構成してもよい。
【0104】
この構成においては、スロットル操作手段として増加(上)ボタン又は減少(下)ボタンを有して構成されるスロットルボタンを適用した場合、例えばそのスロットルボタンにおける増加ボタン又は減少ボタンの一方を長押しするように操作するか又はその増加ボタンおよび減少ボタンの双方を同時に押すように操作することにより、そのスロットルボタンが低速回転数を選択する位置に一度戻されたことになるよう構成することもできる。
【0105】
また、上記2つの構成においては、その低速回転数を選択する位置に一度戻したことを検出した検出値を取得しない限り、制御手段70においてアクセル操作手段を操作してエンジン5の回転数を増減させる制御も許可しないように構成してもよい。
【0106】
また、第1及び第2の実施形態においては、モード切替えスイッチ20で作業走行モード(耕うん)が選択されているときであって、かつ副変速レバー21の操作により副変速操作センサ75が高速の変速段を選択する位置にあると検出した検出値を得ているときには、制御手段70として、例えば次の処理を行う構成を採用してもよい。すなわち、このときの制御手段70は、PTO入切スイッチ23の操作によりPTO入切センサ78が接続の状態(入り状態)を選択した検出値を取得したときでも、PTO入切センサ78の検出値について常に切断の状態(切り状態)を検出した検出値として取り扱うよう処理する構成を採用したものである。
【0107】
この構成を採用した場合には、例えば、路上を高速で走行しながらPTO軸9が回転するという不適切な状態になることを防止できるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0108】
この発明は、トラクタなどの農作業用の車両に限られず、それ以外の各種作業用の車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 トラクタ
5 エンジン
15 スロットルレバー
16 アクセルペダル
20 モード切替えスイッチ
70 制御手段
72 スロットルセンサ
73 アクセルセンサ
74 モード切替えセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9