(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186895
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】凹凸構造体、光学部材及び電子機器
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20221208BHJP
G02B 1/118 20150101ALI20221208BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B1/118
G02B3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170677
(22)【出願日】2022-10-25
(62)【分割の表示】P 2017249061の分割
【原出願日】2017-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 正尚
(72)【発明者】
【氏名】田澤 洋志
(72)【発明者】
【氏名】林部 和弥
(57)【要約】
【課題】より複雑な凹凸構造を備える凹凸構造体、光学部材、及び電子機器を提供する。
【解決手段】基材の表面に設けられた複数の凹部又は凸部から構成される集合構造を複数備え、前記基材の表面にて前記凹部又は凸部が占める領域の平均幅は、可視光帯域に属する波長以下である、凹凸構造体。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に設けられた複数の凸部から構成される集合構造を複数備え、
前記基材の表面にて前記凸部が占める領域の平均幅は、可視光帯域に属する波長以下であり、
前記集合構造内において、前記凸部の高さが前記集合構造の中央に向かうほど段階的に増加するように前記凸部が設けられており、前記集合構造は、全体として凸レンズ様の構造体として形成されており、
前記個々の集合構造が、それぞれ1つのマイクロレンズとして機能し、かつ、前記集合構造それぞれを構成する前記複数の凸部が、反射防止機能を有するモスアイ構造として機能し、かつ、前記複数の集合構造からなる凹凸構造体の全体が、前記モスアイ構造による反射防止機能を兼ね備えたマイクロレンズアレイとして機能するよう構成された、凹凸構造体。
【請求項2】
前記複数の集合構造は、前記基材の表面上に相互に離隔して配列されており、
相互に隣接する前記複数の集合構造の間は、平坦面である、請求項1に記載の凹凸構造体。
【請求項3】
前記基材の表面にて前記凸部が占める領域の平均幅をaとし、前記凸部の前記基材の表面と対向する天頂面の平均幅をbとし、前記凸部の前記基材の表面に対して垂直方向の長さをhとする場合、
前記基材の表面から前記垂直方向にh/2離れた位置における前記凸部の断面の平均幅は、(a+b)/2以上である、請求項1又は2に記載の凹凸構造体。
【請求項4】
前記集合構造内で隣接する前記凸部の重心間の平均距離は、該凸部が前記基材の表面にて占める領域の平均幅をそれぞれx1及びx2とする場合に、0.65(x1/2+x2/2)以上2.0(x1/2+x2/2)以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の凹凸構造体。
【請求項5】
前記集合構造全体の平均幅は、0.2μm以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の凹凸構造体。
【請求項6】
前記基材の表面にて前記凸部が占める領域の形状は、略円形状である、請求項1~5のいずれか一項に記載の凹凸構造体。
【請求項7】
前記集合構造内において、前記凸部の高さの各々は、中心値が異なる少なくとも2以上のグループのいずれかに属する、請求項1~6のいずれか一項に記載の凹凸構造体。
【請求項8】
前記集合構造内において、前記凸部が前記基材の表面にて占める領域の平均幅の各々は、中心値が異なる少なくとも2以上のグループのいずれかに属する、請求項1~7のいずれか一項に記載の凹凸構造体。
【請求項9】
前記凸部の高さは、前記集合構造内で段階的に変化する、請求項1~8のいずれか一項に記載の凹凸構造体。
【請求項10】
前記凸部が前記基材の表面にて占める領域の平均幅は、前記集合構造内で段階的に変化する、請求項1~7のいずれか一項に記載の凹凸構造体。
【請求項11】
前記凸部が前記基材の表面にて占める領域の平均幅は、前記集合構造内で不規則に変化する、請求項1~8のいずれか一項に記載の凹凸構造体。
【請求項12】
前記集合構造の各々は、規則的に配列される、請求項1~11のいずれか一項に記載の凹凸構造体。
【請求項13】
前記集合構造の各々は、不規則的に配列される、請求項1~11のいずれか一項に記載の凹凸構造体。
【請求項14】
前記集合構造内において、前記凸部の各々は、最密充填配置にて設けられる、請求項1~13のいずれか一項に記載の凹凸構造体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の凹凸構造体を用いた、又は前記凹凸構造体を転写した転写物を用いた、光学部材。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載の凹凸構造体を用いた、又は前記凹凸構造体を転写した転写物を用いた、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸構造体、光学部材及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、入射光の波長以下の平均周期を有する凹凸構造体を用いた光学部材が広く開発されている。このような凹凸構造体は、入射光の波長よりも大きな平均周期を有する凹凸構造体とは原理的に異なる特性を示すため、より高い特性を備える光学部材を実現できる可能性があると期待されている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、このような凹凸構造体として、入射光の波長以下の平均周期を有する柱状構造が形成された回折光学素子が開示されている。また、下記の特許文献1には、該回折光学素子を、レーザ干渉露光法を用いて空間選択的に露光を行うことで形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献1に開示された光学回折素子は、凹凸構造がレーザ干渉露光法によって形成されるため、レーザ光の干渉パターンに対応する凹凸構造以外の任意の凹凸構造を形成することができなかった。特に、上記の特許文献1に開示された光学回折素子は、複数の凹部又は凸部から構成される凹凸集合体をさらに複数配列させたような複雑な凹凸構造を取り得なかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、より複雑な凹凸構造を備える凹凸構造体、該凹凸構造体が設けられた光学部材、及び該凹凸構造体が設けられた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、基材の表面に設けられた複数の凹部又は凸部から構成される集合構造を複数備え、前記基材の表面にて前記凹部又は凸部が占める領域の平均幅は、可視光帯域に属する波長以下である、凹凸構造体が提供される。
【0008】
前記基材の表面にて前記凹部又は凸部が占める領域の平均幅をaとし、前記凹部又は凸部の前記基材の表面と対向する底面又は天頂面の平均幅をbとし、前記凹部又は凸部の前記基材の表面に対して垂直方向の長さをhとする場合、前記基材の表面から前記垂直方向にh/2離れた位置における前記凹部又は凸部の断面の平均幅は、(a+b)/2以上であってもよい。
【0009】
前記集合構造内で隣接する前記凹部又は凸部の重心間の平均距離は、該凹部又は凸部が前記基材の表面にて占める領域の平均幅をそれぞれx1及びx2とする場合に、0.65(x1/2+x2/2)以上2.0(x1/2+x2/2)以下であってもよい。
【0010】
前記集合構造全体の平均幅は、0.2μm以上であってもよい。
【0011】
前記基材の表面にて前記凹部又は凸部が占める領域の形状は、略円形状であってもよい。
【0012】
前記集合構造内において、前記凹部又は凸部の前記基材の表面に対して垂直方向の長さの各々は、中心値が異なる少なくとも2以上のグループのいずれかに属してもよい。
【0013】
前記集合構造内において、前記凹部又は凸部が前記基材の表面にて占める領域の平均幅の各々は、中心値が異なる少なくとも2以上のグループのいずれかに属してもよい。
【0014】
前記凹部又は凸部の前記基材の表面に対して垂直方向の長さは、前記集合構造内で段階的に変化してもよい。
【0015】
前記凹部又は凸部が前記基材の表面にて占める領域の平均幅は、前記集合構造内で段階的に変化してもよい。
【0016】
前記凹部又は凸部の前記基材の表面に対して垂直方向の長さは、前記集合構造内で不規則に変化してもよい。
【0017】
前記凹部又は凸部が前記基材の表面にて占める領域の平均幅は、前記集合構造内で不規則に変化してもよい。
【0018】
前記集合構造の各々は、規則的に配列されてもよい。
【0019】
前記集合構造の各々は、不規則的に配列されてもよい。
【0020】
前記集合構造内において、前記凹部又は凸部の各々は、最密充填配置にて設けられてもよい。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記の凹凸構造体を用いた、又は前記凹凸構造体を転写した転写物を用いた、光学部材が提供される。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記の凹凸構造体を用いた、又は前記凹凸構造体を転写した転写物を用いた、電子機器が提供される。
【0023】
上記構成によれば、凹凸部の配置及び垂直長さを高い精度及び高い再現性で制御することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、より複雑な凹凸構造を備える凹凸構造体、該凹凸構造体が設けられた光学部材、及び該凹凸構造体が設けられた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】凹凸構造体が形成される基材を厚み方向に切断した断面図を示す。
【
図1B】凹凸構造体が形成される基材の一主面を垂直な方向から平面視した平面図を示す。
【
図2A】凹凸部の一例である凸部の具体的な構成を示す断面図である。
【
図2B】凹凸部の他の例である凹部の具体的な構成を示す断面図である。
【
図3】凹凸部の各々の配置間隔を説明する平面図である。
【
図4】凹凸部の大きさが同じ場合、又は凹凸部の大きさが異なる場合における凹凸部の配置の一例を示す模式図である。
【
図5】凹凸構造体の一例を模式的に示す断面図及び平面図である。
【
図6】凹凸構造体の他の例を模式的に示す断面図及び平面図である。
【
図7】凹凸構造体の他の例を模式的に示す断面図及び平面図である。
【
図8】凹凸構造体の他の例を模式的に示す断面図及び平面図である。
【
図9】凹凸構造体の他の例を模式的に示す断面図及び平面図である。
【
図10A】実施例1~9に係る凹凸構造体における集合構造の模式的な斜視図である。
【
図10B】実施例1~9に係る凹凸構造体の模式的な平面図である。
【
図11A】比較例1に係る凹凸構造体における集合構造の模式的な斜視図である。
【
図11B】比較例1に係る凹凸構造体の模式的な平面図である。
【
図12A】実施例1における凸部の模式的な断面形状を示す説明図である。
【
図12B】実施例2における凸部の模式的な断面形状を示す説明図である。
【
図12C】実施例3における凸部の模式的な断面形状を示す説明図である。
【
図12D】実施例4における凸部の模式的な断面形状を示す説明図である。
【
図12E】実施例5における凸部の模式的な断面形状を示す説明図である。
【
図12F】実施例8における凸部の模式的な断面形状を示す説明図である。
【
図12G】実施例9における凸部の模式的な断面形状を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0027】
<1.凹凸構造体の構成>
まず、
図1A及び
図1Bを参照して、本発明の一実施形態に係る凹凸構造体の構成について説明する。
図1Aは、本実施形態に係る凹凸構造体の縦構造の一例を示す断面図であり、
図1Bは、本実施形態に係る凹凸構造体の平面構造の一例を示す平面図である。なお、
図1Aは、凹凸構造体が形成される基材を厚み方向に切断した断面図を示し、
図1Bは、凹凸構造体が形成される基材の一主面を垂直な方向から平面視した平面図を示す。
【0028】
図1A及び
図1Bに示すように、凹凸構造体20は、シート状の基材10の一主面に、凹凸部200を複数集合させた集合構造210が複数配列されることで構成される。
【0029】
凹凸構造体20は、例えば、光学部材として用いられる。凹凸構造体20は、例えば、導光板、光拡散板、マイクロレンズアレイ、フレネルレンズアレイ、回折格子、又は反射防止フィルムなどの光学部材として用いられてもよい。また、凹凸構造体20を光学部材として用いる場合、凹凸構造体20は、例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、テレビジョン装置、ウェアラブルデバイス、スマートフォン又はタブレット端末などの電子機器に用いられてもよい。
【0030】
基材10は、例えば、透明性を有する材料で構成される。基材10は、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタアクリレート、トリアセチルセルロース(TriAcetyleCellulose:TAC)、環状オレフィンポリマー(Cyclic Olefin Polymer:COP)若しくは環状オレフィンコポリマー(Cyclic Olefin Copolymer:COC)などの有機樹脂、又は石英ガラス、ソーダライムガラス若しくは鉛ガラスなどの透明なガラス材料にて構成されてもよい。なお、「透明」とは、可視光帯域(おおよそ360nm~830nm)に属する波長を有する光の透過率が高い(例えば、光の透過率が70%以上である)ことを表す。
【0031】
凹凸部200は、基材10の厚み方向に落ち窪んだ凹構造、又は基材10の厚み方向に突出した凸構造である。なお、
図2B以外では、凹凸部200として凸構造のみを図示するが、凹凸部200は凹構造であってもよいことは言うまでもない。このような凹凸構造体20の凹凸形状が反転した構造体は、例えば、凹凸構造体20を原盤(又はレプリカ原盤)とするインプリント技術を用いて、有機樹脂等に凹凸形状を転写することで容易に形成することができる。
【0032】
凹凸部200の基材10の表面に対して垂直方向の長さ(すなわち、凹部の深さ又は凸部の高さ。以下では垂直長さとも称する)は、中心値が異なる少なくとも2以上のグループのいずれかに属するように設けられる。例えば、
図1Aに示すように、凹凸部200は、垂直長さが最も長い第1の凸部222と、垂直長さが最も短い第3の凸部226と、垂直長さが第1の凸部222及び第3の凸部226の中間である第2の凸部224と、を含んでもよい。第1の凸部222、第2の凸部224、及び第3の凸部226は、垂直長さが形成ばらつき以上の差を有するように設けられ、集合構造210は、異なる垂直長さにて設けられた複数種の凹凸部200を含むように設けられる。すなわち、凹凸部200の各々は、ランダムな垂直長さに形成されるのではなく、所望の垂直長さとなるように制御されて形成され得る。なお、凹凸部200は、4種以上の垂直長さにて設けられてもよいことは言うまでもない。
【0033】
ここで、凹凸部200の基材10の表面にて占める領域の大きさは、凹凸部200の垂直長さが長くなるほど、より大きくなるように設けられ得る。例えば、第1の凸部222は、基材10の表面にて占める領域の大きさが最も大きくなるように形成され、第3の凸部226は基材10の表面にて占める領域の大きさが最も小さくなるように形成され、第2の凸部224は基材10の表面にて占める領域の大きさが第1の凸部222及び第3の凸部226の中間の大きさとなるように形成されてもよい。すなわち、凹凸部200は、垂直長さが大きくなるほど、基材10の表面にて占める領域が大きくなるように設けられてもよい。したがって、凹凸部200の基材10の表面にて占める領域の大きさも、中心値が異なる少なくとも2以上のグループのいずれかに属するように設けられることになる。
【0034】
なお、異なる垂直長さにて形成された複数種の凹凸部200(
図1Aでは、第1の凸部222、第2の凸部224、及び第3の凸部226)の各々は、1つの集合構造210内に少なくとも1種以上設けられていればよい。例えば、1つの集合構造210は、第1の凸部222、第2の凸部224、及び第3の凸部226の各々をすべて含むように構成されてもよい。または、1つの集合構造210は、第1の凸部222、第2の凸部224、及び第3の凸部226のいずれかにて構成されてもよい。集合構造210内にて、第1の凸部222、第2の凸部224、及び第3の凸部226の各々が設けられる数及び配置は、集合構造210又は凹凸構造体20が実現する機能に基づいて、適宜制御することが可能である。
【0035】
例えば、集合構造210は、集合構造210内で凹凸部200の垂直長さが段階的に変化するように構成されてもよい。すなわち、集合構造210は、所定の方向に沿って凹凸部200の垂直長さが徐々に変化するように設けられてもよい。具体的には、凹凸部200の垂直長さは、集合構造210全体で所定の方向に沿って弧を描くように、又は直線となるように変化してもよい。同様に、集合構造210は、凹凸部200の基材10の表面にて占める領域の大きさ又は平均幅も段階的に変化するように構成されてもよい。
【0036】
または、例えば、集合構造210は、凹凸部200の垂直長さが不規則に変化するように構成されてもよい。すなわち、集合構造210は、凹凸部200の垂直長さがランダムに変化するように設けられてもよい。具体的には、凹凸部200の垂直長さは、集合構造210全体で規則性が見られないように変化してもよい。同様に、集合構造210は、凹凸部200の基材10の表面にて占める領域の大きさ又は平均幅もランダムに変化するように構成されてもよい。
【0037】
集合構造210は、複数の凹凸部200が集合することで構成される。例えば、
図1Bに示すように、集合構造210は、基材10の表面における平面形状が略円形状である複数の凹凸部200が最密充填配置されることで構成されてもよい。このような場合、集合構造210の全体の平均幅は、例えば、少なくとも0.2μm以上に形成され、好ましくは可視光帯域に属する波長よりも大きく形成され得る。集合構造210の各々は、凹凸部200の各々の間隔よりも広い間隔で互いに離隔されてもよく、例えば、可視光帯域に属する波長よりも大きい間隔で互いに離隔されてもよい。
【0038】
基材10の表面にて凹凸部200が占める領域の平面形状は、上述したように、略円形状であってもよいが、例えば、楕円形状、又は多角形形状などであってもよい。また、集合構造210内における凹凸部200の配置は、上述したように最密充填配置であってもよいが、四方格子状配置、六方格子状配置、又は千鳥格子状配置などであってもよい。基材10の表面における凹凸部200の平面形状、及び凹凸部200の集合構造210内における配置は、集合構造210又は凹凸構造体20が実現する機能に基づいて、適宜制御することが可能である。
【0039】
凹凸部200の各々は、基材10の表面における領域の平均幅が可視光帯域に属する波長以下となるように設けられてもよい。また、集合構造210内での凹凸部200の各々の間隔は、同様に、可視光帯域に属する波長以下となるように設けられてもよい。具体的には、凹凸部200の領域の平均幅及び間隔は、100nm以上350nm以下であってもよい。凹凸部200の領域の平均幅及び間隔が上記の範囲である場合、集合構造210及び凹凸構造体20は、可視光帯域に属する入射光の反射を抑制する、いわゆるモスアイ構造として機能することができる。
【0040】
集合構造210の各々は、規則的に配列されてもよい。例えば、
図1Bに示すように、集合構造210の各々は、凹凸部200の構成及び配置が同一の集合構造210が所定の間隔を置いて規則的に配列されてもよい。または、集合構造210の各々は、不規則的に配列されてもよい。例えば、集合構造210の各々は、互いにランダムな大きさの間隔を置いて不規則的に配列されてもよい。集合構造210の各々の配列は、凹凸構造体20が実現する機能に基づいて、適宜制御することが可能である。
【0041】
<2.凹部又は凸部の構成>
続いて、
図2A~
図4を参照して、集合構造210内における凹凸部200の構成について、より具体的に説明する。
【0042】
まず、
図2A及び
図2Bを参照して、凹凸部200の具体的な構成について説明する。
図2Aは、凹凸部200の一例である凸部2001の具体的な構成を示す断面図であり、
図2Bは、凹凸部200の他の例である凹部2002の具体的な構成を示す断面図である。なお、
図2A及び
図2Bでは、凸部2001及び凹部2002は、基材10の面内方向に等方的な立体形状をしているものとする。
【0043】
図2Aに示すように、凸部2001は、長球の回転楕円体を極付近及び赤道付近で回転軸と垂直な面で切断した立体形状にて設けられてもよい。換言すると、凸部2001は、砲弾型の立体形状で設けられてもよい。
【0044】
図2Aにおいて、凸部2001の基材10の表面における幅をaとし、及び凸部2001の天頂部の平坦面の幅をbとし、基材10の表面から凸部2001の天頂部の平坦面までの距離(すなわち、凸部2001の高さ)をhとする。このとき、基材10の表面からh/2の高さの凸部2001の幅wは、(a+b)/2以上となることが好ましい。また、基材10の表面からh/2の高さの凸部2001の幅wは、(a+b)/2の1.2倍以上となることがより好ましい。
【0045】
凸部2001の形状が上述した条件を満たす場合、凸部2001は、基材10の表面から天頂部へ向かう輪郭が外側に膨らんだ立体形状で設けられることになる。このような形状の凸部2001によれば、集合構造210及び凹凸構造体20の反射防止特性をより向上させることができる。なお、wの上限は特に限定しないが、凸部2001の形状を考慮すると、wの上限は例えばaである。ただし、凹凸構造体20の反射防止特性を考慮すると、wは、例えば、(a+b)/2の1.41倍以下であることが好ましい。しかしながら、wの上限は、凹凸構造体20の用途によって、適宜選択することが可能である。
【0046】
一方、
図2Bに示すように、凹部2002は、
図2Aで示した凸部2001を基材10の表面を対称面として上下反転させた形状にて設けられてもよい。例えば、凹部2002は、底面が平坦なお椀型の窪み形状にて設けられてもよい。
【0047】
図2Bにおいて、凹部2002の基材10の表面における幅をaとし、及び凹部2002の底部の平坦面の幅をbとし、基材10の表面から凹部2002の底部の平坦面までの距離(すなわち、凹部2002の深さ)をhとする。このとき、基材10の表面からh/2の深さの凹部2002の幅wは、凸部2001の場合と同様に、(a+b)/2以上となることが好ましい。また、基材10の表面からh/2の深さの凹部2002の幅wは、凸部2001の場合と同様に、(a+b)/2の1.2倍以上となることがより好ましい。
【0048】
凹部2002の形状が上述した条件を満たす場合、凹部2002は、基材10の表面から底部へ向かう輪郭が外側に膨らんだ立体形状で設けられることになる。このような形状の凹部2002を備える集合構造210及び凹凸構造体20は、凹凸形状を反転させた転写物の反射防止特性をより向上させることができる。なお、wの上限は特に限定しないが、凹部2002の形状を考慮すると、wの上限は例えばaである。ただし、凹凸構造体20の反射防止特性を考慮すると、wは、例えば、(a+b)/2の1.41倍以下であることが好ましい。しかしながら、wの上限は、凹凸構造体20の用途によって、適宜選択することが可能である。
【0049】
次に、
図3及び
図4を参照して、集合構造210内における凹凸部200の配置の具体的な構成について説明する。
図3は、凹凸部200の各々の配置間隔を説明する平面図である。
図4は、凹凸部200の大きさが同じ場合、又は凹凸部200の大きさが異なる場合における凹凸部200の配置の一例を示す模式図である。
【0050】
図3を参照して、隣接する凹凸部200の配置間隔について説明する。
図3に示すように、1つの凹凸部200-1の基材10の表面における幅をx
1、凹凸部200-1に隣接する凹凸部200-2の基材10の表面における幅をx
2とする。このとき、凹凸部200-1の重心と、凹凸部200-2の重心との平均距離iは、0.65(x
1/2+x
2/2)以上2.0(x
1/2+x
2/2)以下となることが好ましい。また、凹凸部200-1の重心と、凹凸部200-2の重心との平均距離iは、0.8(x
1/2+x
2/2)以上1.2(x
1/2+x
2/2)以下となることがより好ましい。
【0051】
隣接する凹凸部200の重心間の平均距離iが上述した条件を満たす場合、隣接する凹凸部200は、互いに適切な重なり又は間隔を置いて設けられることになるため、集合構造210及び凹凸構造体20の反射防止特性をより向上させることができる。例えば、重心間の平均距離iが0.65(x1/2+x2/2)未満である場合、隣接する凹凸部200は、互いの重なりが大きくなりすぎることで凹凸部200の実質的な垂直長さが減少し、集合構造210及び凹凸構造体20の反射防止特性が低下するため好ましくない。また、重心間の平均距離iが2.0(x1/2+x2/2)超である場合、隣接する凹凸部200は、互いの間隔が大きくなりすぎることで凹凸部200の間の平坦面が増加し、集合構造210及び凹凸構造体20の反射防止特性が低下するため好ましくない。
【0052】
なお、凹凸部200の基材10の表面における平面形状が円又は楕円である場合、上記のx1及びx2は、凹凸部200の平面形状の円又は楕円の直径又は長径であり得る。また、このような場合、凹凸部200の重心は、凹凸部200の平面形状の円又は楕円の中心であり得る。一方、凹凸部200の基材10の表面における平面形状が多角形である場合、上記のx1及びx2は、凹凸部200の平面形状の多角形の外接円の直径であってもよい。また、このような場合、凹凸部200の重心は、凹凸部200の平面形状の外接円の中心であってもよい。
【0053】
図4を参照して、複数の凹凸部200の各々の間隔について説明する。
図4に示すように、例えば、凹凸部200の基材10の表面に占める領域の大きさが略一定である場合(凹凸部200Aの場合)、凹凸部200Aは、最密充填配置となるように、凹凸部200の基材10の表面に占める領域の大きさと同じ間隔を置いて設けられてもよい。
【0054】
例えば、凹凸部200の基材10の表面に占める領域の大きさが変動する場合(凹凸部200Bの場合)、凹凸部200Bは、一定の間隔を置いて設けられてもよい。このような場合、凹凸部200Bは、最密充填配置にはならないものの、凹凸部200Bの形成が容易になる。
【0055】
例えば、凹凸部200の基材10の表面に占める領域の大きさが変動する場合(凹凸部200Cの場合)、凹凸部200Cは、凹凸部200の各々の基材10の表面に占める領域の大きさに応じて制御された間隔を置いて設けられてもよい。このような場合、凹凸部200Cは、凹凸部200の基材10の表面に占める領域の大きさが変動する場合でも、最密充填配置を実現することができる。本実施形態によれば、凹凸部200の各々の配置及び基材10の表面における大きさを高い精度で制御することができる。したがって、凹凸部200の基材10の表面に占める領域の大きさが変動する場合(凹凸部200Cの場合)でも、凹凸部200を最密充填配置にて形成することが可能である。
【0056】
以上に説明したように、凹凸構造体20の凹凸部200は、複数種の異なる垂直長さにて形成される。すなわち、凹凸部200の垂直長さは、中心値が異なる複数のグループのいずれかに属するように設けられる。したがって、凹凸構造体20では、凹凸部200の各々の垂直長さは、凹凸部200ごとに所定の垂直長さになるように高い精度で制御されることになる。また、凹凸構造体20は、複数の凹凸部200から構成される集合構造210が互いに離隔されるように設けられる。このため、凹凸部200の形成位置は、集合構造210内と、集合構造210間とで異なる間隔で設けられるように高い精度で制御されることになる。したがって、本実施形態に係る凹凸構造体20は、より複雑な凹凸形状を備えることができる。
【0057】
<3.凹凸構造体の具体例>
次に、
図5~
図9を参照して、本実施形態に係る凹凸構造体20の具体例について説明する。
図5~
図9は、本実施形態に係る凹凸構造体20の一例を模式的に示す断面図及び平面図である。なお、
図5~
図9の平面図では、ドットハッチングが濃い円ほど、より高さが高い凸部に対応することを表す。
【0058】
(第1の具体例)
図5に示すように、凹凸構造体21は、凸部201を四方格子状に配列した集合構造211が所定の間隔を置いて設けられた構造であってもよい。凹凸構造体21では、集合構造211内の凸部201の高さが第1の方向に段階的に増加又は減少するように設けられ、第1の方向と直交する第2の方向では、凸部201の高さが略同一の高さとなるように設けられる。したがって、
図5に示す凹凸構造体21では、集合構造211は、第1の方向において全体として三角波様(のこぎり歯様)の形状を示す構造として形成され得る。このような凹凸構造体21は、例えば、モスアイ構造による反射防止能を備えた回折素子として用いることが可能である。
【0059】
(第2の具体例)
図6に示すように、凹凸構造体22は、凸部202を四方格子状に配列した集合構造212が所定の間隔を置いて設けられた構造であってもよい。凹凸構造体22では、集合構造212内の凸部202の高さが集合構造212の中央に向かうほど段階的に増加するように設けられる。したがって、
図6に示す凹凸構造体22では、集合構造212は、全体として凸レンズ様の形状を示す構造として形成され得る。このような凹凸構造体22は、例えば、モスアイ構造による反射防止能を備えたマイクロレンズアレイとして用いることが可能である。
【0060】
(第3の具体例)
図7に示すように、凹凸構造体23は、凸部203を四方格子状に配列した集合構造213が所定の間隔を置いて設けられた構造であってもよい。凹凸構造体23では、集合構造213内の凸部203の高さが集合構造213の中央に向かうほど段階的に増加するように設けられ、かつ凸部203の高さが所定の範囲に収まるように同心円状に高さが減少する形状にて設けられる。したがって、
図7に示す凹凸構造体23では、集合構造213は、全体としてフレネルレンズ様の形状を示す構造として形成され得る。このような凹凸構造体23は、例えば、モスアイ構造による反射防止能を備えたフレネルレンズアレイとして用いることが可能である。
【0061】
(第4の具体例)
図8に示すように、凹凸構造体24は、凸部204を四方格子状に配列した集合構造214が所定の間隔を置いて設けられた構造であってもよい。凹凸構造体24では、集合構造214内の凸部204の高さが不規則に(ランダムに)なるように設けられる。ただし、凸部204の高さは、中心値が異なる複数のグループのいずれかに属するように設けられるため、より厳密には、異なる高さを有する凸部204の配置が集合構造214内で不規則に(ランダムに)なるように設けられる。したがって、
図8に示す凹凸構造体24では、集合構造214は、全体として凸部204の高さが不規則なモスアイ構造として形成され得る。このような凹凸構造体24は、例えば、干渉光及び回折光が少ない反射防止フィルム又は光拡散板として用いることが可能である。
【0062】
(第5の具体例)
図9に示すように、凹凸構造体25は、凸部205を不規則的な(ランダムな)配置にて配列した集合構造215が所定の間隔を置いて設けられた構造であってもよい。凹凸構造体25では、
図8に示した凹凸構造体24と同様に、異なる高さを有する凸部205の配置が集合構造215内で不規則に(ランダムに)なるように設けられる。したがって、
図9に示す凹凸構造体25では、集合構造215は、全体として凸部205の高さ及び配置が不規則なモスアイ構造として形成され得る。凹凸構造体25は、例えば、干渉光及び回折光がより少ない反射防止フィルム又は光拡散板として用いることが可能である。なお、
図8に示す凹凸構造体25は、
図8に示す凹凸構造体24よりも規則性が低いため、意図しない回折光又は干渉光の発生をより抑制することができる。
【0063】
<4.凹凸構造体の製造方法>
続いて、本実施形態に係る凹凸構造体20の製造方法について簡単に説明する。
【0064】
本実施形態に係る凹凸構造体20は、レーザ光による熱リソグラフィを用いて、基材10の外周面に凹凸構造に対応するレジストパターンを形成した後、該レジストパターンをマスクとして基材10をエッチングすることで製造することができる。
【0065】
または、本実施形態に係る凹凸構造体20は、電子線描画装置などを用いた電子線リソグラフィ、フォトリソグラフィを用いたマルチパターニング、又はダイヤモンドバイトを用いた超微細切削加工などの公知の微細加工技術を用いて製造されてもよい。
【0066】
さらには、本実施形態に係る凹凸構造体20は、上述した製造方法にて形成された凹凸構造体20を原盤として用いたインプリント技術によって製造されてもよい。具体的には、凹凸構造体20(すなわち、原盤)をシート状の樹脂等に押圧し、表面の凹凸形状を転写することで原盤と凹凸形状が反転した転写物を製造してもよい。
【実施例0067】
以下では、実施例及び比較例を参照しながら、本実施形態に係る凹凸構造体について、さらに具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本実施形態に係る凹凸構造体及びその製造方法の実施可能性及び効果を示すための一条件例であり、本実施形態に係る凹凸構造体及びその製造方法が以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
(実施例1~9)
以下の工程により、実施例1~9に係る凹凸構造体に対応する原盤を作製し、インプリント技術を用いて、作製した原盤の転写物(実施例1~9に係る凹凸構造体)を作製した。
【0069】
具体的には、まず、円筒形状の石英ガラスにて構成された基材(軸方向長さ100mm、外周面の肉厚4.5mm)の外周面に、スパッタ法でタングステン酸化物を55nmにて成膜し、レジスト層を形成した。次に、露光装置を用いて、波長405nmの半導体レーザ光源からのレーザ光によって熱リソグラフィを行い、実施例1~9の各々に対応する潜像をレジスト層に形成した。
【0070】
続いて、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)2.38質量%水溶液(東京応化工業社製)を用いて、露光後の基材を27℃、900秒で現像処理することにより、潜像部分のレジスト層を溶解し、実施例1~9の各々に対応する凹凸構造をレジスト層に形成した。次に、現像後のレジスト層をマスクにして、CHF3ガス(30sccm)を用いて、ガス圧0.5Pa、投入電力150Wにて反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)を行い、基材を30分間エッチングした。その後、残存したレジスト層を除去した。
【0071】
以上の工程により、外周面に凹凸構造が形成された原盤を作製し、作製した原盤を用いて転写物を作製した。具体的には、転写装置を用いて、原盤の外周面に形成された凹凸構造を紫外線硬化樹脂に転写することで、実施例1~9に係る転写物を作製した。なお、転写物のシート状基材には、ポリエチレンテレフタレート(PolyEthylene Terephthalate:PET)フィルムを用い、紫外線硬化樹脂は、メタルハライドランプにより、1000mJ/cm2の紫外線を1分間照射することで硬化させた。
【0072】
(比較例1)
マスクを用いた露光によるフォトリソグラフィを用いて比較例1に対応する潜像をレジスト層に形成した以外は、実施例1~9と同様の方法にて転写物(比較例1に係る凹凸構造体)を作製した。
【0073】
ここで、実施例1~9に係る凹凸構造体に形成された凹凸構造の模式的な形状を
図10A及び
図10Bに示し、比較例1に係る凹凸構造体に形成された凹凸構造の模式的な形状を
図11A及び
図11Bに示す。
図10Aは、実施例1~9に係る凹凸構造体における集合構造の模式的な斜視図であり、
図10Bは、実施例1~9に係る凹凸構造体の模式的な平面図である。
図11Aは、比較例1に係る凹凸構造体における集合構造の模式的な斜視図であり、
図11Bは、比較例1に係る凹凸構造体の模式的な平面図である。
【0074】
図10A及び
図10Bに示すように、実施例1~9に係る凹凸構造体は、複数の凸部を集合した集合構造を複数配列することで設けられる。具体的には、凹凸構造体は、基材の表面から垂直方向に突出する凸部が平面上に最密充填となるように配置された集合構造の各々が互いに離隔して配列することで設けられる。集合構造は、中心に位置する凸部の方が段階的に高くなるように設けられることにより、全体として凸レンズ様の形状となるように設けられる。
【0075】
ここで、実施例1~9に係る凹凸構造体は、以下の表1で示すように、凸部の立体形状、及び隣接する凸部の重心間の平均距離がそれぞれ異なる。ただし、実施例1~9に係る凹凸構造体は、全体として同一の凸レンズ様の形状となるように設けられる。
【0076】
図11A及び
図11Bに示すように、比較例1に係る凹凸構造体は、基材の表面から垂直方向に突出する単一の凸部を複数配列することで設けられる。具体的には、凹凸構造体は、円錐を底面に平行な平面で切断し、小円錐部分を除いた円錐台の形状を互いに離隔して配列することで設けられる。したがって、比較例1に係る凹凸構造体、及び実施例1~9に係る凹凸構造体は、凸レンズ様の構造体が単一の凸部で構成されるか、又は複数の凸部から構成されるかという点で互いに相違する。
【0077】
(評価結果)
上記で作製した実施例1~9及び比較例1に係る凹凸構造体の評価を行った。具体的には、実施例1~9及び比較例1に係る凹凸構造体の微細構造の形状を原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)及び走査型電子顕微鏡(Scanning Electoron Microscope:SEM)にて観察した。
【0078】
また、実施例1~9に係る凹凸構造体では、AFMによって凸部の形状を計測し、凸部の天頂部の平坦面の平均幅b、基材表面における凸部の領域の平均幅a、及び凸部の高さをhとした場合のh/2における凸部の平均幅wを算出した。さらに、実施例1~9に係る凹凸構造体では、SEMによって隣接する凸部の重心間の平均距離を算出した。なお、a、b、w、重心間の平均距離は、1つの集合構造内での凸部の各々の平均値として算出した。
【0079】
さらに、分光光度計(日本分光社製V500)を用いて、実施例1~9及び比較例1に係る凹凸構造体の表面反射スペクトルを測定した。下記の表1では、波長380nm~780nmの間での反射率の最小値を示す。なお、波長380nm~780nmの間での反射率の最小値は、1%以下となることがより好ましい。
【0080】
以下の表1にて、実施例1~9に係る凹凸構造体の凸部の形状及び重心間距離の測定結果、及び実施例1~9及び比較例1に係る凹凸構造体の反射率の測定結果を示す。また、AFMの測定結果から判断した実施例1~5、実施例8~9に係る原盤における凹部(転写物では凸部に対応する)の模式的な断面形状を
図12A~
図12Gに示す。
図12A~
図12Gは、それぞれ、実施例1~5、実施例8~9に係る原盤における凹部(転写物では凸部に対応する)の模式的な断面形状を示す説明図である。なお、
図12A~
図12Gに示す形状は、模式的なものであるため、実際の原盤又は転写物の凹凸構造の形状とは完全には一致しないことがあり得る。
【0081】
【0082】
表1の結果を参照すると、実施例1~9に係る凹凸構造体は、凸レンズ様の構造体が複数の凸部が集合した集合構造として形成されているため、比較例1に係る凹凸構造体と比較して、反射率が低下することがわかる。すなわち、実施例1~9に係る凹凸構造体は、比較例1に係る凹凸構造体に対して、高い反射防止効果を得られることがわかる。
【0083】
また、実施例1、4、5に係る凹凸構造体を比較すると、h/2における凸部の幅wが(a+b)/2よりも小さくなり、凸部が細った形状になるほど反射率が増加し、反射防止効果が低下することがわかる。
【0084】
また、実施例1、6~8に係る凹凸構造体を比較すると、重心間の平均距離が上述した好ましい範囲よりも狭い場合、凸部同士の重なりが増加し、凸部の実質的な高さが減少するため、反射率が増加し、反射防止効果が低下することがわかる。一方、実施例1、9に係る凹凸構造体を比較すると、重心間の平均距離が上述した好ましい範囲よりも広い場合、凸部の間の平坦部が増加するため、反射率が増加し、反射防止効果が低下することがわかる。
【0085】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0086】
例えば、本実施形態に係る凹凸構造体20は、光学部材として用いることも可能であり、本実施形態に係る凹凸構造体20を搭載した電子機器も本発明の範疇に含まれる。