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特開2022-186914撮像装置およびカメラシステム、ならびに、撮像装置の駆動方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186914
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】撮像装置およびカメラシステム、ならびに、撮像装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/369 20110101AFI20221208BHJP
   H04N 5/355 20110101ALI20221208BHJP
【FI】
H04N5/369
H04N5/355
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171151
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2019047334の分割
【原出願日】2019-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2018064057
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(72)【発明者】
【氏名】村上 雅史
(72)【発明者】
【氏名】西村 佳壽子
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 恭典
(57)【要約】
【課題】積層型の構成において、ダイナミックレンジをより拡大する。
【解決手段】本開示の撮像装置は、第1電極、第2電極および光電変換層を含む光電変換部と、第1電極と第2電極との間にバイアス電圧を供給する電圧供給回路と、ゲートが第2電極に電気的に接続され、第2電極の電位に応じた信号を出力するトランジスタと、トランジスタからの前記信号のレベルを検出する検出回路とを備え、電圧供給回路は、検出回路によって検出されたレベルが第1閾値よりも大きい場合にバイアス電圧を大きくする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、第2電極、および、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する光電変換層を含む光電変換部と、
前記第1電極と前記第2電極との間にバイアス電圧を供給する電圧供給回路と、
ゲートが前記第2電極に電気的に接続され、前記第2電極の電位に応じた信号を出力するトランジスタと、
前記トランジスタからの前記信号のレベルを検出する検出回路と
を備え、
前記電圧供給回路は、前記検出回路によって検出された前記レベルが第1閾値よりも大きい場合に前記バイアス電圧を大きくする、
撮像装置。
【請求項2】
前記電圧供給回路は、前記検出回路によって検出された前記レベルが前記第1閾値以下の第2閾値よりも小さい場合に前記バイアス電圧を小さくする、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
第1電極、第2電極、および、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する光電変換層を含む光電変換部と、
前記第1電極と前記第2電極との間にバイアス電圧を供給する電圧供給回路と、
ゲートが前記第2電極に電気的に接続され、前記第2電極の電位に応じた信号を出力するトランジスタと、
前記トランジスタからの前記信号のレベルを検出する検出回路と
を備え、
前記電圧供給回路は、前記検出回路によって検出された前記レベルが第1閾値よりも小さい場合に前記バイアス電圧を小さくする、
撮像装置。
【請求項4】
第1電極、第2電極、および、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する光電変換層を含む光電変換部と、
前記第1電極と前記第2電極との間にバイアス電圧を供給する電圧供給回路と、
ゲートが前記第2電極に電気的に接続され、前記第2電極の電位に応じた信号を出力するトランジスタと
を有する画素を含む撮像装置と、
被写体からの光量を検出する光量検出装置と
を備え、
前記電圧供給回路は、前記光量検出装置によって検出された前記光量が第1の光量よりも大きい場合に前記バイアス電圧を大きくする、
カメラシステム。
【請求項5】
前記電圧供給回路は、前記光量検出装置によって検出された前記光量が前記第1の光量以下の第2の光量よりも小さい場合に前記バイアス電圧を小さくする、
請求項4に記載のカメラシステム。
【請求項6】
第1電極、第2電極、および、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する光電変換層を含む光電変換部と、
前記第1電極と前記第2電極との間にバイアス電圧を供給する電圧供給回路と、
ゲートが前記第2電極に電気的に接続され、前記第2電極の電位に応じた信号を出力するトランジスタと
を有する画素を含む撮像装置と、
被写体からの光量を検出する光量検出装置と
を備え、
前記電圧供給回路は、前記光量検出装置によって検出された前記光量が第1の光量よりも小さい場合に前記バイアス電圧を小さくする、
カメラシステム。
【請求項7】
第1電極、第2電極、および、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する光電変換層を含む光電変換部を有する撮像装置の駆動方法であって、
被写体からの光量が第1の光量よりも大きい場合に前記第1電極と前記第2電極との間のバイアス電圧を大きくする、
撮像装置の駆動方法。
【請求項8】
前記光量が前記第1の光量以下の第2の光量よりも小さい場合に前記第1電極と前記第2電極との間のバイアス電圧を小さくする、
請求項7に記載の撮像装置の駆動方法。
【請求項9】
第1電極、第2電極、および、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する光電変換層を含む光電変換部を有する撮像装置の駆動方法であって、
被写体からの光量が第1の光量よりも小さい場合に前記第1電極と前記第2電極との間のバイアス電圧を小さくする、
撮像装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置およびカメラシステムに関する。本開示は、撮像装置の駆動方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置の分野において、フォトダイオードに代えて、読出し回路が形成された半導体基板の上方に光電変換層を配置した構成が知られている。このような構成は、積層型とも呼ばれる。例えば、下記の特許文献1は、読出し回路が形成された基板の上方に、画素電極および透明な対向電極に挟まれた有機光電変換層を有する撮像素子を開示している。動作時、対向電極には、所定の電圧が印加される。
【0003】
下記の特許文献2は、光電変換層としての量子ドット層を有する撮像システムを開示している。また、特許文献2は、量子ドット層を挟む透明電極と画素電極との間に印加する電位差の変更によって量子ドット層のゲインを調節することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-228648号公報
【特許文献2】米国特許第9054246号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
撮像装置の分野においては、ダイナミックレンジ拡大の要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の限定的ではないある例示的な実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
【0007】
第1電極、第2電極、および、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する光電変換層を含む光電変換部と、前記第1電極および前記第2電極の一方に電圧を供給する電圧供給回路と、前記第2電極に電気的に接続され、前記第2電極の電位に応じた信号を出力する出力回路と、前記出力回路からの前記信号のレベルを検出する検出回路とを備え、前記光電変換部は、前記第1電極と前記第2電極との間に印加されるバイアス電圧が第1電圧範囲にあるときの、前記バイアス電圧に対する前記光電変換部の光電変換効率の変化率が、前記バイアス電圧が前記第1電圧範囲よりも高い第2電圧範囲にあるときの、前記バイアス電圧に対する前記光電変換部の光電変換効率の変化率よりも大きい光電変換特性を有し、前記電圧供給回路は、前記検出回路によって検出された前記レベルが第1の閾値よりも低い場合に、前記第1電極と前記第2電極との間の電位差が第1の電位差となるように前記第1電極および前記第2電極の前記一方に電圧を供給し、前記検出回路によって検出された前記レベルが前記第1の閾値以上の第2の閾値以上である場合に、前記第1電極と前記第2電極との間の電位差が前記第1の電位差よりも大きい第2の電位差となるように前記第1電極および前記第2電極の前記一方に電圧を供給する、撮像装置。
【0008】
包括的または具体的な態様は、素子、デバイス、システム、集積回路、方法またはコンピュータプログラムで実現されてもよい。また、包括的または具体的な態様は、素子、デバイス、装置、システム、集積回路、方法およびコンピュータプログラムの任意の組み合わせによって実現されてもよい。
【0009】
開示された実施形態の追加的な効果および利点は、明細書および図面から明らかになる。効果および/または利点は、明細書および図面に開示の様々な実施形態または特徴によって個々に提供され、これらの1つ以上を得るために全てを必要とはしない。
【発明の効果】
【0010】
本開示のある実施形態によれば、ダイナミックレンジをより拡大し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第1の実施形態による撮像装置の例示的な構成を概略的に示す図である。
図2図1に示す撮像装置100Aの例示的な回路構成を示す図である。
図3A】画素Pxの例示的なデバイス構造を模式的に示す断面図である。
図3B】電子を信号電荷として利用する場合の画素Pxの動作を説明するための模式的な断面図である。
図4】光電変換層13の光電変換特性の典型例を示す図である。
図5】第1電圧範囲および第2電圧範囲の具体的な範囲を決定する方法の一例を説明するための図である。
図6】第1電圧範囲および第2電圧範囲の具体的な範囲を決定する方法の他の一例を説明するための図である。
図7】第1電圧範囲および第2電圧範囲の具体的な範囲を決定する方法のさらに他の一例を説明するための図である。
図8】撮像装置100Aの第1の例示的な動作を示す概略的なフローチャートである。
図9】対向電極11に第1電圧V1として6Vの電圧が印加されているときの画素Pxの動作を説明するための模式的な断面図である。
図10】対向電極11に第1電圧V1として6Vの電圧が印加されているときの画素Pxの動作を説明するための模式的な断面図であり、不純物領域111に正孔が蓄積された状態を模式的に示す。
図11】電圧供給回路150から電圧線152に第2電圧V2を印加することにより、電位差ΔVを拡大させた状態を模式的に示す図である。
図12】対向電極11に第1電圧V1が印加されているとき、および、対向電極11に第2電圧V2が印加されているときの、光電変換部10に入射する光量の変化に対する、出力回路20からの信号のレベルの変化の典型例を模式的に示す図である。
図13図4に示す光電変換特性の典型例を再度示す図である。
図14】互いに隣接する2つの画素電極12の間に第3電極15を配置した構成を示す模式的な断面図である。
図15】対向電極11側から見たときの、画素電極12と第3電極15との配置関係の一例を示す模式的な平面図である。
図16】第3電極15に所定の電圧を印加することによる、実効的な光電変換効率低下の機構を説明するための模式的な断面図である。
図17】信号電荷の蓄積に伴うノードFDの電位の変化と、電源電圧との間の関係を説明するための模式的な図である。
図18】信号電荷の蓄積に伴うノードFDの電位の変化と、電源電圧との間の関係を説明するための模式的な図である。
図19】画素Pxに含まれる出力回路の変形例を示す図である。
図20図19に示す出力回路20Aの動作を説明するためのポテンシャル図である。
図21】画素Pxに含まれる出力回路の第2の変形例を示す図である。
図22】画素Pxに含まれる出力回路の第3の変形例を示す図である。
図23】画素Pxに含まれる出力回路の第4の変形例を示す図である。
図24図23に示す減衰器225の具体例を示す図である。
図25】第1の実施形態の変形例による撮像装置の例示的な回路構成を示す図である。
図26】第1の実施形態の他の変形例による撮像装置の例示的な回路構成を示す図である。
図27】本開示の第2の実施形態によるカメラシステムの例示的な構成を概略的に示す図である。
図28】本開示の第2の実施形態によるカメラシステムの他の例示的な構成を概略的に示す図である。
図29】本開示の第2の実施形態によるカメラシステムのさらに他の例示的な構成を概略的に示す図である。
図30】光量検出装置の変形例を示す図である。
図31】本開示の第2の実施形態によるカメラシステムのさらに他の例示的な構成を概略的に示す図である。
図32】第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えのタイミングと、電圧の切り替えに伴う、検出回路130Aによって取得される信号のレベルの変化との間の関係を説明するための図である。
図33】第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えのタイミングの他の例を示す図である。
図34】第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えのタイミングのさらに他の例を示す図である。
図35】電位差ΔVの制御によるグローバルシャッタを適用したときの、第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えのタイミングと、電圧の切り替えに伴う、検出回路130Aによって取得される信号のレベルの変化との間の関係を説明するための図である。
図36】第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えのタイミングと、撮像装置100Aからの出力との間の関係の一例を説明するための図である。
図37】信号の読み出しのための行走査の期間の途中に第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えを実行した場合におけるマスク処理の適用例を示す図である。
図38】本開示の実施形態による撮像装置およびカメラシステムに適用可能な、自動露光設定における処理シーケンスの一例を説明するための図である。
図39】撮像領域Rmに含まれる一部または全部の画素Pxの光電変換部10を含む領域を露光量の検出領域Rdとして利用する例を説明するための模式的な平面図である。
図40】電圧供給回路から出力される電圧を検出された露光量に応じて変更させる処理の一例を示す図である。
図41】電圧供給回路から出力される電圧を検出された露光量に応じて変更させる処理の他の一例を示す図である。
図42】電圧供給回路から出力される電圧を検出された露光量に応じて変更させる処理のさらに他の一例を示す図である。
図43】露光量の増加に対する、検出回路130Aの出力の変化の例を模式的に示す図である。
図44】リニアリティ補償処理の概要を模式的に示すブロック図である。
図45】補正テーブルの一例を示す図である。
図46】撮像装置ごと、または、カメラシステムごとのリニアリティのずれの相違を説明するための図である。
図47】撮像装置ごと、または、カメラシステムごとの相違をキャンセルするリニアリティ補償処理の概要を模式的に示すブロック図である。
図48】サンプル1の撮像装置のメモリ162に格納される補正テーブルの一例を示す図である。
図49】サンプル2の撮像装置のメモリ162に格納される補正テーブルの一例を示す図である。
図50】メモリ162に格納される補正テーブルの他の一例を示す図である。
図51図50の補正テーブルに記述された出力値のプロットを示す図である。
図52】補間処理を含むリニアリティ補償処理の概要を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の一態様の概要は以下のとおりである。
【0013】
[項目1]
第1電極、第2電極、および、第1電極と第2電極との間に位置する光電変換層を含む光電変換部と、
第1電極および第2電極の一方に電圧を供給する電圧供給回路と、
第2電極に電気的に接続され、第2電極の電位に応じた信号を出力する出力回路と、
出力回路からの信号のレベルを検出する検出回路と
を備え、
光電変換部は、第1電極と第2電極との間に印加されるバイアス電圧が第1電圧範囲にあるときの、バイアス電圧に対する光電変換部の光電変換効率の変化率が、バイアス電圧が第1電圧範囲よりも高い第2電圧範囲にあるときの、バイアス電圧に対する光電変換部の光電変換効率の変化率よりも大きい光電変換特性を有し、
電圧供給回路は、
検出回路によって検出されたレベルが第1の閾値よりも低い場合に、第1電極と第2電極との間の電位差が第1の電位差となるように第1電極および第2電極の一方に電圧を供給し、
検出回路によって検出されたレベルが第1の閾値以上の第2の閾値以上である場合に、第1電極と第2電極との間の電位差が第1の電位差よりも大きい第2の電位差となるように第1電極および第2電極の一方に電圧を供給する、撮像装置。
【0014】
[項目2]
電圧供給回路は、
検出回路によって検出されたレベルが第1の閾値よりも低い場合に、第1電極および第2電極の一方に第1電圧を印加し、
検出回路によって検出されたレベルが第2の閾値以上である場合に、第1電極および第2電極の一方に第1電圧よりも高い第2電圧を印加する、項目1に記載の撮像装置。
【0015】
[項目3]
出力回路は、
第2電極に電気的に接続されたゲートを有し、ドレインおよびソースの一方に第3電圧を受ける第1トランジスタと、
第2電極に電気的に接続されたゲートを有し、ドレインおよびソースの一方に第3電圧よりも高い第4電圧を受ける第2トランジスタと
を含む、項目2に記載の撮像装置。
【0016】
[項目4]
出力回路は、
容量素子と、
第2電極と容量素子との間に接続されたスイッチング素子と
を含み、
検出回路によって検出されたレベルが第2の閾値以上である場合、スイッチング素子は、光電変換部における光電変換によって変化した第2電極の電位に応じた信号の読み出し
時にオンとされる、項目2に記載の撮像装置。
【0017】
[項目5]
出力回路は、第2電極に一方の電極が接続された容量素子を含み、
検出回路によって検出されたレベルが第2の閾値以上である場合、容量素子の他方の電極の電位は、光電変換部における光電変換によって変化した第2電極の電位に応じた信号の読み出し時に一時的に低下させられる、項目2に記載の撮像装置。
【0018】
[項目6]
出力回路は、
第2電極に電気的に接続されたゲートを有する第1トランジスタと、
第2電極と第1トランジスタのゲートとの間に接続された減衰器と
を含み、
検出回路によって検出されたレベルが第2の閾値以上である場合、減衰器は、第1検出トランジスタのゲートに印加される電圧を減衰させる、項目2に記載の撮像装置。
【0019】
[項目7]
第1電極および第2電極の一方に第1電圧が印加されている状態および第1電極および第2電極の一方に第2電圧が印加されている状態の両方において、第1電極の電位は、第2電極の電位よりも高い、項目2から6のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0020】
[項目8]
バイアス電圧に対する光電変換部の光電変換効率のグラフにおいて、光電変換効率が0から立ち上がる点における第1接線と、バイアス電圧が動作時の最大値である点における第2接線との交点に対応するバイアス電圧の値をVtとしたとき、第1電圧範囲は、Vt未満の電圧範囲である、項目2から7のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0021】
[項目9]
バイアス電圧に対する光電変換部の光電変換効率のグラフにおいて、光電変換効率の値が0.06となる点における第1接線と、バイアス電圧が動作時の最大値である点における第2接線との交点に対応するバイアス電圧の値をVtとしたとき、第1電圧範囲は、Vt未満の電圧範囲である、項目2から7のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0022】
[項目10]
第2電圧範囲は、バイアス電圧の1Vの変化に対する光電変換効率の変化が10%未満の電圧範囲である、項目2から7のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0023】
[項目11]
第2電圧範囲は、光電変換効率が0.7以上の電圧範囲である、項目2から7のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0024】
[項目12]
第1電圧が供給されているときの光電変換部の光電変換効率である第1効率は、第2電圧が供給されているときの光電変換部の光電変換効率である第2効率よりも低い、項目8から11のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0025】
[項目13]
第1電圧および第2電圧は、第2電圧範囲内の電圧である、項目12に記載の撮像装置。
【0026】
[項目14]
第1効率に対する第2効率の比は、1より大きく1.25以下である、項目13に記載の撮像装置。
【0027】
[項目15]
第1電極、第2電極、および、第1電極と第2電極との間に位置する光電変換層を含む光電変換部と、
第1電極および第2電極の一方に電圧を供給する電圧供給回路と、
第2電極に電気的に接続され、第2電極の電位に応じた信号を出力する出力回路と
を有する撮像装置と、
光電変換部に入射する光量を検出する光量検出装置と
を備え、
光電変換部は、第1電極と第2電極との間に印加されるバイアス電圧が第1電圧範囲にあるときの、バイアス電圧に対する光電変換部の光電変換効率の変化率が、バイアス電圧が第1電圧範囲よりも高い第2電圧範囲にあるときの、バイアス電圧に対する光電変換部の光電変換効率の変化率よりも大きい光電変換特性を有し、
電圧供給回路は、
光量検出装置によって検出された光量が第1の光量よりも小さい場合に、第1電極と第2電極との間の電位差が第1の電位差となるように第1電極および第2電極の一方に電圧を供給し、
光量検出装置によって検出された光量が第1の光量以上の第2の光量以上である場合に、第1電極と第2電極との間の電位差が第1の電位差よりも大きい第2の電位差となるように第1電極および第2電極の一方に電圧を供給する、カメラシステム。
【0028】
[項目16]
第1電極、第2電極、および、第1電極と第2電極との間に位置する光電変換層を含む光電変換部を有する撮像装置の駆動方法であって、
光電変換部に入射した光量が第1の光量よりも小さい場合に、第1電極と第2電極との間の電位差が第1の電位差となるように第1電極および第2電極の一方に電圧を印加し、光電変換部に入射した光量が第1の光量以上の第2の光量以上である場合に、第1電極と第2電極との間の電位差が第1の電位差よりも大きい第2の電位差となるように第1電極および第2電極の一方に電圧を印加する、撮像装置の駆動方法。
【0029】
[項目17]
第1電極、第2電極、および、第1電極と第2電極との間に位置する光電変換層を含む光電変換部と、
第1電極および第2電極の一方に電気的に接続された電圧供給回路と、
第2電極に電気的に接続され、第2電極の電位に応じた信号を出力する出力回路と、
出力回路からの信号のレベルを検出する検出回路と
を備え、
第1電極と第2電極との間に印加されるバイアス電圧が第1電圧範囲にあるときの、バイアス電圧に対する光電変換部の光電変換効率の変化率は、バイアス電圧が第1電圧範囲よりも高い第2電圧範囲にあるときよりも大きく、
電圧供給回路は、検出回路によって検出されたレベルが所定の閾値よりも低い場合に、第1電極と第2電極との間の電位差が第1の電位差となるように第1電極および第2電極の一方に電圧を印加し、検出回路によって検出されたレベルが閾値以上である場合に、第1電極と第2電極との間の電位差が第1の電位差よりも大きい第2の電位差となるように第1電極および第2電極の一方に電圧を印加する、撮像装置。
【0030】
項目17の構成によれば、照度の高い状況においては、第1電極と第2電極との間に印
加されるバイアス電圧が拡大されるので、バイアス電圧に対する光電変換効率の変化率が相対的に小さい電圧領域で光電変換部を駆動させることができる。その結果、より広い範囲でリニアリティを確保することが可能になり、電気的な制御によってダイナミックレンジを拡大することができる。また、照度の低い状況においては、第1電極と第2電極との間に印加されるバイアス電圧を相対的に小さくできるので、電力消費抑制の効果が期待できる。
【0031】
[項目18]
電圧供給回路は、検出回路によって検出されたレベルが閾値よりも低い場合に、第1電極および第2電極の一方に第1電圧を印加し、検出回路によって検出されたレベルが閾値以上である場合に、第1電極および第2電極の一方に第1電圧よりも高い第2電圧を印加する、項目17に記載の撮像装置。
【0032】
項目18の構成によれば、照度の高い状況において、互いに異なる電圧のうち、相対的に高い第2電圧が電圧供給回路から光電変換部に選択的に印加される。そのため、消費電力を低減することが可能になる。
【0033】
[項目19]
出力回路は、
第2電極に電気的に接続されたゲートを有し、ドレインおよびソースの一方に第3電圧を受ける第1信号検出トランジスタと、
第2電極に電気的に接続されたゲートを有し、ドレインおよびソースの一方に第3電圧よりも高い第4電圧を受ける第2信号検出トランジスタと
を含む、項目18に記載の撮像装置。
【0034】
項目19の構成によれば、信号の読み出し時にリセットトランジスタを介して第2電極に容量素子が接続されるので、例えばソースフォロワへの入力のレベルを電源電圧未満のレベルに一時的に低下させることができる。そのため、例えば第2電極の電位が電源電圧を上回るような場合であっても、電源電圧に昇圧を施すことなくソースフォロワによる信号の読み出しが可能になる。
【0035】
[項目20]
出力回路は、
容量素子と、
第2電極と容量素子との間に接続されたスイッチング素子と
を含み、
検出回路によって検出されたレベルが閾値以上である場合、スイッチング素子は、光電変換部における光電変換によって変化した第2電極の電位に応じた信号の読み出し時にオンとされる、項目18に記載の撮像装置。
【0036】
項目20の構成によれば、第2電極の電位に応じて、ソースフォロワ電源の大きさが互いに異なる2つのソースフォロワのいずれを介して信号の読み出しを行うかを切り替えることができる。そのため、例えば第2電極の電位が電源電圧を上回るような場合でも信号の読み出しが可能になる。
【0037】
[項目21]
出力回路は、第2電極に一方の電極が接続された容量素子を含み、
検出回路によって検出されたレベルが閾値以上である場合、容量素子の他方の電極の電位は、光電変換部における光電変換によって変化した第2電極の電位に応じた信号の読み出し時に一時的に低下させられる、項目18に記載の撮像装置。
【0038】
項目21の構成によれば、第2電極の電位が電源電圧を上回るような場合であっても、信号の読み出し時に選択的に第2電極の電位を低下させることができる。そのため、例えば第2電極の電位が電源電圧を上回るような場合であっても、電源電圧に昇圧を施すことなくソースフォロワによる信号の読み出しが可能になる。
【0039】
[項目22]
出力回路は、
第2電極に電気的に接続されたゲートを有する第1信号検出トランジスタと、
第2電極と第1信号検出トランジスタのゲートとの間に接続された減衰器と
を含み、
検出回路によって検出されたレベルが閾値以上である場合、減衰器は、第1信号検出トランジスタのゲートに印加される電圧を所定の割合で減衰させる、項目18に記載の撮像装置。
【0040】
項目22の構成によれば、第2電極の電位が電源電圧を上回るような場合であっても、例えばソースフォロワへの入力のレベルを所定の割合で減衰させることができる。そのため、例えば第2電極の電位が電源電圧を上回るような場合であっても、電源電圧に昇圧を施すことなくソースフォロワによる信号の読み出しが可能になる。
【0041】
[項目23]
第1電極および第2電極の一方に第1電圧が印加されている状態および第1電極および第2電極の一方に第2電圧が印加されている状態の両方において、第1電極の電位は、第2電極の電位よりも高い、項目18から22のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0042】
項目23の構成によれば、光電変換によって生じる電荷のうち正の電荷を第2電極によって収集でき、正孔を信号電荷として電荷蓄積領域に蓄積することができる。また、信号電荷の蓄積の継続によって電荷蓄積領域の電位が徐々に上昇するので、光電変換層にかかる実効的なバイアス電圧を第2電圧の値よりも小さくし得る。
【0043】
[項目24]
バイアス電圧に対する光電変換部の光電変換効率のグラフにおいて、光電変換効率が0から立ち上がる点における第1接線と、バイアス電圧が動作時の最大値である点における第2接線との交点に対応するバイアス電圧の値をVtとしたとき、第1電圧範囲は、Vt未満の電圧範囲である、項目18から23のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0044】
[項目25]
バイアス電圧に対する光電変換部の光電変換効率のグラフにおいて、光電変換効率の値が0.06となる点における第1接線と、バイアス電圧が動作時の最大値である点における第2接線との交点に対応するバイアス電圧の値をVtとしたとき、第1電圧範囲は、Vt未満の電圧範囲である、項目18から23のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0045】
[項目26]
第2電圧範囲は、バイアス電圧の1Vの変化に対する光電変換効率の変化が10%未満の電圧範囲である、項目18から23のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0046】
[項目27]
第2電圧範囲は、光電変換効率が0.7以上の電圧範囲である、項目18から23のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0047】
項目27の構成によれば、第1電極と第2電極との間に印加されるバイアス電圧の大きさと、ISOの数値との間の対応を付けやすい。
【0048】
[項目28]
第1電圧が供給されているときの光電変換部の光電変換効率である第1効率は、第2電圧が供給されているときの光電変換部の光電変換効率である第2効率よりも低い、項目24から27のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0049】
[項目29]
第1電圧および第2電圧は、第2電圧範囲内の電圧である、項目28に記載の撮像装置。
【0050】
項目29の構成によれば、高耐圧の素子が要求されないので信頼性を確保しやすいという利点が得られ、第1電圧の供給時には省電力および高速な駆動を期待できる。
【0051】
[項目30]
第1効率に対する第2効率の比は、1以上1.25以下である、項目29に記載の撮像装置。
【0052】
[項目31]
第2電極に電気的に接続された電荷蓄積部であって、第2電極によって収集された電荷を一時的に蓄積する電荷蓄積部をさらに備え、
電荷蓄積部の電位は、電荷蓄積部への電荷の蓄積に伴って高くなる、項目17から30のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0053】
項目31の構成によれば、高耐圧の素子および素子分離領域が要求されないので、信頼性を確保しやすい。
【0054】
[項目32]
それぞれが光電変換部および出力回路を有する複数の画素を含み、
複数の画素は、第1画素および第1画素に隣接して配置された第2画素を含み、
第1画素の第2電極と第2画素の第2電極との間に位置し、かつ、第1画素の第2電極および第2画素の第2電極から電気的に絶縁された第3電極をさらに備える、項目17から31のいずれか一項に記載の撮像装置。
【0055】
項目32の構成によれば、第3電極の電位の調整により、2つの画素の境界付近で生じた電荷を第3電極によって優先的に収集することが可能である。その結果、実効的な光電変換効率を低下させ、照度の高い方向に関するダイナミックレンジをさらに拡大させることが可能になる。
【0056】
[項目33]
第1電極、第2電極、および、第1電極と第2電極との間に位置する光電変換層を含む光電変換部を有する撮像装置と、
第1電極および第2電極の一方に電気的に接続された電圧供給回路と
を備え、
撮像装置は、
第2電極に電気的に接続され、第2電極の電位に応じた信号を出力する出力回路と、
出力回路からの信号のレベルを検出する検出回路と
をさらに有し、
第1電極と第2電極との間に印加されるバイアス電圧が第1電圧範囲にあるときの、バ
イアス電圧に対する光電変換部の光電変換効率の変化率は、バイアス電圧が第1電圧範囲よりも高い第2電圧範囲にあるときよりも大きく、
電圧供給回路は、検出回路によって検出されたレベルが所定の閾値よりも低い場合に、第1電極と第2電極との間の電位差が第1の電位差となるように第1電極および第2電極の一方に電圧を印加し、検出回路によって検出されたレベルが閾値以上である場合に、第1電極と第2電極との間の電位差が第1の電位差よりも大きい第2の電位差となるように第1電極および第2電極の一方に電圧を印加する、カメラシステム。
【0057】
項目33の構成によれば、項目17と同様の効果が得られる。
【0058】
[項目34]
電圧供給回路は、検出回路によって検出されたレベルが閾値よりも低い場合に、第1電極および第2電極の一方に第1電圧を印加し、検出回路によって検出されたレベルが閾値以上である場合に、第1電極および第2電極の一方に第1電圧よりも高い第2電圧を印加する、項目33に記載のカメラシステム。
【0059】
項目34の構成によれば、項目18と同様の効果が得られる。
【0060】
[項目35]
出力回路は、
容量素子と、
第2電極と容量素子との間に接続されたスイッチング素子と
を含み、
検出回路によって検出されたレベルが閾値以上である場合、スイッチング素子は、光電変換部における光電変換によって変化した第2電極の電位に応じた信号の読み出し時にオンとされる、項目34に記載のカメラシステム。
【0061】
項目35の構成によれば、項目20と同様の効果が得られる。
【0062】
[項目36]
出力回路は、第2電極に一方の電極が接続された容量素子を含み、
検出回路によって検出されたレベルが閾値以上である場合、容量素子の他方の電極の電位は、光電変換部における光電変換によって変化した第2電極の電位に応じた信号の読み出し時に一時的に低下させられる、項目34に記載のカメラシステム。
【0063】
項目36の構成によれば、項目21と同様の効果が得られる。
【0064】
[項目37]
出力回路は、
第2電極に電気的に接続されたゲートを有する第1信号検出トランジスタと、
第2電極と第1信号検出トランジスタのゲートとの間に接続された減衰器と
を含み、
検出回路によって検出されたレベルが閾値以上である場合、減衰器は、第1信号検出トランジスタのゲートに印加される電圧を所定の割合で減衰させる、項目34に記載のカメラシステム。
【0065】
項目37の構成によれば、項目22と同様の効果が得られる。
【0066】
[項目38]
第1電極、第2電極、および、第1電極と第2電極との間に位置する光電変換層を含む
光電変換部を有する撮像装置と、
光電変換部に入射する光量を検出する光量検出装置と
を備え、
撮像装置は、
第2電極に電気的に接続され、第2電極の電位に応じた信号を出力する出力回路と、
第1電極および第2電極の一方に電気的に接続された電圧供給回路と
をさらに有し、
第1電極と第2電極との間に印加されるバイアス電圧が第1電圧範囲にあるときの、バイアス電圧に対する光電変換部の光電変換効率の変化率は、バイアス電圧が第1電圧範囲よりも高い第2電圧範囲にあるときよりも大きく、
電圧供給回路は、光量検出装置によって検出された光量が所定の光量よりも小さい場合に、第1電極と第2電極との間の電位差が第1の電位差となるように第1電極および第2電極の一方に電圧を印加し、光量検出装置によって検出された光量が所定の光量以上である場合に、第1電極と第2電極との間の電位差が第1の電位差よりも大きい第2の電位差となるように第1電極および第2電極の一方に電圧を印加する、カメラシステム。
【0067】
項目38の構成によれば、項目17と同様の効果が得られる。
【0068】
[項目39]
第1電極、第2電極、および、第1電極と第2電極との間に位置する光電変換層を含む光電変換部を有する撮像装置と、
第1電極および第2電極の一方に電気的に接続された電圧供給回路と、
光電変換部に入射する光量を検出する光量検出装置と
を備え、
第1電極と第2電極との間に印加されるバイアス電圧が第1電圧範囲にあるときの、バイアス電圧に対する光電変換部の光電変換効率の変化率は、バイアス電圧が第1電圧範囲よりも高い第2電圧範囲にあるときよりも大きく、
撮像装置は、第2電極に電気的に接続され、第2電極の電位に応じた信号を出力する出力回路をさらに有し、
電圧供給回路は、光量検出装置によって検出された光量が所定の光量よりも小さい場合に、第1電極と第2電極との間の電位差が第1の電位差となるように第1電極および第2電極の一方に電圧を印加し、光量検出装置によって検出された光量が所定の光量以上である場合に、第1電極と第2電極との間の電位差が第1の電位差よりも大きい第2の電位差となるように第1電極および第2電極の一方に電圧を印加する、カメラシステム。
【0069】
項目39の構成によれば、項目17と同様の効果が得られる。
【0070】
[項目40]
光量検出装置は、出力回路からの信号のレベルを検出する光量検出回路を含む、項目38または39に記載のカメラシステム。
【0071】
項目40の構成によれば、画素から出力される信号のレベルの検出を通して、光電変換部に入射する光量に関する情報を得ることができる。
【0072】
[項目41]
電圧供給回路は、光量検出装置によって検出された光量が所定の光量よりも小さい場合に、第1電極および第2電極の一方に第1電圧を印加し、光量検出装置によって検出された光量が所定の光量以上である場合に第1電極および第2電極の一方に第1電圧よりも高い第2電圧を印加する、項目38から40のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【0073】
項目41の構成によれば、項目18と同様の効果が得られる。
【0074】
[項目42]
出力回路は、
第2電極に電気的に接続されたゲートを有し、ドレインおよびソースの一方に第3電圧を受ける第1信号検出トランジスタと、
第2電極に電気的に接続されたゲートを有し、ドレインおよびソースの一方に第3電圧よりも高い第4電圧を受ける第2信号検出トランジスタと
を含む、項目34または41に記載のカメラシステム。
【0075】
項目42の構成によれば、項目19と同様の効果が得られる。
【0076】
[項目43]
出力回路は、
容量素子と、
第2電極と容量素子との間に接続されたスイッチング素子と
を含み、
光量検出装置によって検出された光量が所定の光量以上である場合、スイッチング素子は、光電変換部における光電変換によって変化した第2電極の電位に応じた信号の読み出し時にオンとされる、項目41に記載のカメラシステム。
【0077】
項目43の構成によれば、項目20と同様の効果が得られる。
【0078】
[項目44]
出力回路は、第2電極に一方の電極が接続された容量素子を含み、
光量検出装置によって検出された光量が所定の光量以上である場合、容量素子の他方の電極の電位は、光電変換部における光電変換によって変化した第2電極の電位に応じた信号の読み出し時に一時的に低下させられる、項目41に記載のカメラシステム。
【0079】
項目44の構成によれば、項目21と同様の効果が得られる。
【0080】
[項目45]
出力回路は、
第2電極に電気的に接続されたゲートを有する第1信号検出トランジスタと、
第2電極と第1信号検出トランジスタのゲートとの間に接続された減衰器と
を含み、
光量検出装置によって検出された光量が所定の光量以上である場合、減衰器は、第1信号検出トランジスタのゲートに印加される電圧を所定の割合で減衰させる、項目41に記載のカメラシステム。
【0081】
項目45の構成によれば、項目22と同様の効果が得られる。
【0082】
[項目46]
第1電極および第2電極の一方に第1電圧が印加されている状態および第1電極および第2電極の一方に第2電圧が印加されている状態の両方において、第1電極の電位は、第2電極の電位よりも高い、項目34、35、36、37、41、42、43、44または45に記載のカメラシステム。
【0083】
項目46の構成によれば、項目23と同様の効果が得られる。
【0084】
[項目47]
バイアス電圧に対する光電変換部の光電変換効率のグラフにおいて、光電変換効率が0から立ち上がる点における第1接線と、バイアス電圧が動作時の最大値である点における第2接線との交点に対応するバイアス電圧の値をVtとしたとき、第1電圧範囲は、Vt未満の電圧範囲である、項目34、35、36、37、41、42、43、44、45または46に記載のカメラシステム。
【0085】
[項目48]
バイアス電圧に対する光電変換部の光電変換効率のグラフにおいて、光電変換効率の値が0.06となる点における第1接線と、バイアス電圧が動作時の最大値である点における第2接線との交点に対応するバイアス電圧の値をVtとしたとき、第1電圧範囲は、Vt未満の電圧範囲である、項目34、35、36、37、41、42、43、44、45または46に記載のカメラシステム。
【0086】
[項目49]
第2電圧範囲は、バイアス電圧の1Vの変化に対する光電変換効率の変化が10%未満の電圧範囲である、項目34、35、36、37、41、42、43、44、45または46に記載のカメラシステム。
【0087】
[項目50]
第2電圧範囲は、光電変換効率が0.7以上の電圧範囲である、項目34、35、36、37、41、42、43、44、45または46に記載のカメラシステム。
【0088】
項目50の構成によれば、項目27と同様の効果が得られる。
【0089】
[項目51]
第1電圧が供給されているときの光電変換部の光電変換効率である第1効率は、第2電圧が供給されているときの光電変換部の光電変換効率である第2効率よりも低い、項目47から50のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【0090】
[項目52]
第1電圧および第2電圧は、第2電圧範囲内の電圧である、項目51に記載のカメラシステム。
【0091】
項目52の構成によれば、項目29と同様の効果が得られる。
【0092】
[項目53]
第1効率に対する第2効率の比は、1以上1.25以下である、項目52に記載のカメラシステム。
【0093】
[項目54]
第2電極に電気的に接続された電荷蓄積部であって、第2電極によって収集された電荷を一時的に蓄積する電荷蓄積部をさらに備え、
電荷蓄積部の電位は、電荷蓄積部への電荷の蓄積に伴って高くなる、項目33から53のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【0094】
項目54の構成によれば、項目31と同様の効果が得られる。
【0095】
[項目55]
撮像装置は、それぞれが光電変換部および出力回路を有する複数の画素を含み、
複数の画素は、第1画素および第1画素に隣接して配置された第2画素を含み、
撮像装置は、第1画素の第2電極と第2画素の第2電極との間に位置し、かつ、第1画素の第2電極および第2画素の第2電極から電気的に絶縁された第3電極をさらに備える、項目33から54のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【0096】
項目55の構成によれば、項目32と同様の効果が得られる。
【0097】
[項目56]
第1電極、第2電極、および、第1電極と第2電極との間に位置する光電変換層を含む光電変換部を有する撮像装置の駆動方法であって、
光電変換部に入射した光量が所定の光量よりも小さい場合に、第1電極と第2電極との間の電位差が第1の電位差となるように第1電極および第2電極の一方に電圧を印加し、光電変換部に入射した光量が所定の光量以上である場合に、第1電極と第2電極との間の電位差が第1の電位差よりも大きい第2の電位差となるように第1電極および第2電極の一方に電圧を印加する、撮像装置の駆動方法。
【0098】
項目56の構成によれば、電気的な制御によって、照度の高い方向に関するダイナミックレンジを拡大し得る。
【0099】
[項目57]
光電変換部に入射した光量が所定の光量よりも小さい場合に、第1電極および第2電極の一方に第1電圧を印加し、光電変換部に入射した光量が所定の光量以上である場合に、第1電極および第2電極の一方に第1電圧よりも高い第2電圧を印加する、項目56に記載の撮像装置の駆動方法。
【0100】
項目57の構成によれば、項目18と同様の効果が得られる。
【0101】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも包括的または具体的な例を示す。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。本明細書において説明される種々の態様は、矛盾が生じない限り互いに組み合わせることが可能である。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略することがある。
【0102】
(第1の実施形態)
図1は、本開示の第1の実施形態による撮像装置の構成を概略的に示す。図1に示す撮像装置100Aは、それぞれが、半導体基板110に支持された光電変換部をその一部に含む複数の画素Pxを有する。図1には表れていないが、半導体基板110は、各画素Pxに対応して形成された複数の出力回路を有する。
【0103】
複数の画素Pxは、半導体基板110に例えば二次元に配列されることにより、撮像領域を形成する。画素Pxの数および配置は、図1に示す例に限定されず、任意である。例えば、複数の画素Pxを一次元に配列することにより、撮像装置100Aをラインセンサとして用い得る。
【0104】
図面を参照して後に詳しく説明するように、各画素Pxの光電変換部は、画素電極と、透光性の対向電極と、これらの電極の間に挟まれた光電変換層とを有する。典型的には、
各画素Pxに対応して複数の画素電極が撮像領域に配置されることに対して、対向電極は、複数の画素Pxの間で連続した単一の電極層の形で設けられる。つまり、典型的には、対向電極の電位は、複数の画素Pxの間で共通である。光電変換層についても同様に、連続した単一の光電変換構造が複数の画素Pxの間で共有され得る。換言すれば、各画素Pxの光電変換部は、複数の画素Pxの間で連続した単一の透光性電極の一部および連続した単一の光電変換構造の一部を含む。
【0105】
図1に例示する構成において、撮像装置100Aは、行信号線Rを介して各画素Pxに接続された行走査回路120と、出力信号線Sを介して各画素Pxに接続された検出回路130Aとを含む。ここで、図1中の参照符号に付された下付きのmおよびnは、独立して、1以上の整数を表す。行信号線Rは、複数の画素Pxの行ごとに設けられ、同一行に属する1以上の画素Pxに電気的に接続されている。図1では、簡単のために、行走査回路120に接続される信号線として行信号線Rを代表的に示しているが、複数の画素Pxの行ごとに2本以上の信号線が設けられることもあり得る。出力信号線Sは、複数の画素Pxの列ごとに設けられ、同一列に属する1以上の画素Pxの出力回路に電気的に接続される。図示するように、出力信号線Sの各々は、検出回路130Aに接続されている。
【0106】
検出回路130Aは、典型的には、相関二重サンプリングに代表される雑音抑圧信号処理、アナログ-デジタル変換などを行うための回路をその一部に含む。被写体の像を表現する画素信号は、検出回路130Aの出力として撮像装置100Aの外部に読み出される。
【0107】
ここでは、検出回路130Aは、出力信号線Sを介して画素Pxから読み出された出力信号のレベルを検出する機能も有する。この例では、検出回路130Aに、参照線132が接続されている。参照線132には、動作時に所定の電圧Vrefが印加される。検出回路130Aは、例えば、各列の画素Pxからの出力信号のレベル、すなわち、各出力信号線Sの電圧レベルと、参照線132の電圧レベルとの比較結果を出力する1以上の比較器134を有し得る。電圧レベルの比較は、アナログ電圧の比較の形で実行されてもよいし、デジタル値の比較の形で実行されてもよい。
【0108】
図1に例示する構成において、撮像装置100Aは、さらに、電圧供給回路150と、制御回路160とをさらに有する。電圧供給回路150は、例えば上述の対向電極に接続された電圧線152との接続を有することにより、各画素Pxと電気的に接続されている。電圧供給回路150は、電圧線152を介して、撮像装置100Aの動作時に所定の電圧を各画素Pxの光電変換部に供給する。
【0109】
電圧供給回路150は、少なくとも、2以上の異なる電圧を切り替えて電圧線152に印加可能に構成される。電圧供給回路150から出力される電圧の変更は、段階的であってもよいし、連続的であってもよい。電圧供給回路150は、特定の電源回路に限定されず、バッテリーなどの電源から供給された電圧を所定の電圧に変換する回路であってもよいし、所定の電圧を生成する回路であってもよい。電圧供給回路150は、上述の行走査回路120の一部であってもよい。
【0110】
制御回路160は、撮像装置100Aの、例えば外部から与えられる指令データ、クロックなどを受け取って撮像装置100A全体を制御する。制御回路160は、例えば1以上のプロセッサを含むマイクロコントローラによって実現され得る。制御回路160は、1以上のメモリを含み得る。図1に例示する構成において、制御回路160は、メモリ162をその一部に含む。メモリ162は、撮像装置100Aとは別個のチップまたはパッケージの形で設けられてもよい。
【0111】
この例では、制御回路160に、画像処理回路164が電気的に接続されている。画像処理回路164は、例えばDSP(Digital Signal Processor)、ISP(Image Signal
Processor)、FPGA(field-programmable gate array)などによって実現され得る
。画像処理回路164は、制御回路160の一部であってもよい。
【0112】
典型的には、制御回路160は、タイミングジェネレータを有し、行走査回路120、検出回路130A、電圧供給回路150などに駆動信号を供給する。図1中、制御回路160に向かって延びる矢印および制御回路160から延びる矢印は、それぞれ、制御回路160への入力信号および制御回路160からの出力信号を模式的に表現している。また、この例では、制御回路160は、各列の画素Pxからの出力信号のレベルと、参照線132の電圧レベルとの比較結果を検出回路130Aから受け取り、電圧レベルの比較結果に応じた駆動信号を電圧供給回路150に供給するように構成されている。
【0113】
電圧供給回路150は、制御回路160からの駆動信号に基づき、例えば検出回路130Aによって検出された出力信号のレベルが参照線132の電圧レベルよりも低い場合には、光電変換部の対向電極と画素電極との間に印加される電位差が第1の電圧差となるような電圧を電圧線152に印加する。検出回路130Aによって検出された出力信号のレベルが参照線132の電圧レベル以上である場合には、対向電極と画素電極との間に印加される電位差が第1の電圧差よりも大きい第2の電位差となるような電圧を電圧線152に印加する。電圧供給回路150は、例えば、検出回路130Aによって検出された出力信号のレベルが参照線132の電圧レベルよりも低い場合に、電圧線152に第1電圧V1を印加し、検出回路130Aによって検出された出力信号のレベルが参照線132の電圧レベル以上である場合に、第1電圧V1よりも高い第2電圧V2を印加する。典型的には、光電変換部に対する照度が比較的に高い場合に、検出回路130Aからの出力信号のレベルが参照線132の電圧レベル以上となる。つまり、本実施形態では、光電変換部に対する照度に応じて、光電変換部の、例えば対向電極に印加する電圧を変化させることにより、光電変換部の対向電極と画素電極との間に印加される電位差を制御している。
【0114】
検出回路130Aによって検出された出力信号のレベルが参照線132の電圧レベルよりも低い場合に、例えば、第1電圧V1を電圧線152に印加し、光電変換部に対する照度が比較的に高い場合に、相対的に高い第2電圧V2を電圧線152に印加する。このような形態によると、光電変換部に印加する電圧を必要に応じて上昇させるので、標準の撮影モードにおける電力消費を抑えることができる。
【0115】
後に詳しく説明するように、画素Pxの光電変換部は、対向電極と画素電極との間のバイアス電圧が増大するに従って光電変換効率が増大するような光電変換特性を有し得る。また、光電変換部は、典型的には、画素電極と対向電極との間に印加されるバイアス電圧が第1電圧範囲よりも高い第2電圧範囲にあるとき、バイアス電圧が第1電圧範囲にあるときと比較して、光電変換効率の変化率が小さくなるような光電変換特性を有する。出力信号のレベルが所定のレベル以上である場合に対向電極と画素電極との間のバイアス電圧を増大させる制御により、照度の高い状況において、画素電極と対向電極との間の電位差の変化に対して光電変換効率が直線状の変化を示すような電圧領域において光電変化部を駆動させることができる。これにより、リニアリティを担保しながら、より広い電圧領域を使用することが可能になる。さらに、標準の撮影モードにおいては相対的に小さいバイアス電圧を用いることにより、電力消費を抑えることができる。すなわち、電気的な制御によるダイナミックレンジの拡大と、電力消費抑制の効果が得られる。このように、本開示の実施形態によれば、照度に応じて、電気的な制御により感度が調整されるので、撮影時の環境に応じた感度のもとでの撮影を可能としながら、電力消費抑制の効果が得られる。
【0116】
上述の制御回路160の機能は、汎用の処理回路とソフトウェアとの組み合わせによって実現されてもよいし、このような処理に特化したハードウェアによって実現されてもよい。なお、図1に示す例では、行走査回路120、検出回路130A、電圧供給回路150および制御回路160は、複数の画素Pxが配置された半導体基板110に一体的に形成されている。例えば、制御回路160は、半導体基板110に形成された集積回路であり得る。各画素Pxの出力回路が形成される半導体基板110にこれらの回路を配置することにより、各画素Pxの出力回路の形成のプロセスと同様のプロセスを適用して、各画素Pxの出力回路とともにこれらの回路を半導体基板110に一体的に形成することが可能になる。ただし、これらの回路の全部が、各画素Pxの出力回路とともに半導体基板110に一体的に形成されることは、必須ではない。これらの回路の一部または全部が、各画素Pxの出力回路が形成された半導体基板110とは異なる基板上に配置されることもあり得る。その場合、撮像装置100Aは、複数の画素Pxが形成された半導体基板110、行走査回路120、検出回路130A、電圧供給回路150および制御回路160が一体とされたパッケージの形で提供され得る。
【0117】
上述の例では、制御回路160は、各画素Pxからの出力信号のレベルを検出回路130Aによって検出し、参照線132の電圧レベルを基準とした比較により、光電変換部に入射する光量が所定の光量以上であるかを判定している。換言すれば、制御回路160は、参照線132の電圧レベルを閾値として利用した判定を実行する。しかしながら、光電変換部に入射する光量が所定の光量以上であるかの判定の方法は、この例に限定されない。
【0118】
例えば、検出回路130Aは、アナログ-デジタル変換回路を含み、検出された出力信号線Sの電圧の大きさを表現するデジタル値のデータを制御回路160または画像処理回路164に出力するように構成されてもよい。この場合、光電変換部に入射する光量が所定の光量以上であるかを判定するための閾値は、例えばメモリ162に予め格納され得る。制御回路160は、例えば、検出回路130Aから受け取ったデジタル値が、メモリ162に保持されている閾値よりも低い場合には、光電変換部に入射する光量が所定の光量よりも低いと判定する。さらに制御回路160は、対向電極と画素電極との間の電位差が相対的に小さい第1の電圧差となるような電圧が電圧線152に印加されるような制御を実行する。例えば、制御回路160は、相対的に低い第1電圧V1が電圧線152に印加されるように電圧供給回路150を駆動させる。
【0119】
(画素Pxの例示的な構成)
図2は、撮像装置100Aの例示的な回路構成を示す。図2では、図1に示す撮像領域に含まれる複数の画素Pxから4つを取り出して模式的に示している。
【0120】
画素Pxの各々は、光電変換部10と、光電変換部10に電気的に接続された出力回路20とを含む。図2に例示する構成において、出力回路20は、信号検出トランジスタ22と、アドレストランジスタ24と、リセットトランジスタ26とを含む。信号検出トランジスタ22、アドレストランジスタ24およびリセットトランジスタ26は、典型的には、半導体基板110に形成された電界効果トランジスタであり、以下では、特に断りがない限り、トランジスタとしてNチャンネルMOSを用いた例を説明する。
【0121】
図2に模式的に示すように、光電変換部10は、第1電極としての対向電極11、第2電極としての画素電極12、および、対向電極11と画素電極12とに挟まれた光電変換層13とを含む。対向電極11は、透光性を有する。なお、本明細書における「透光性」の用語は、光電変換層13が吸収可能な波長の光の少なくとも一部を透過することを意味し、可視光の波長範囲全体にわたって光を透過することは必須ではない。
【0122】
図示するように、各画素Pxの対向電極11は、電圧線152との間に電気的な接続を有する。したがって、電圧供給回路150は、電圧線152を介して複数の画素Pxの対向電極11に一括して例えば第1電圧V1または第2電圧V2を選択的に印加可能である。図2では、複数の画素Pxの対向電極11ごとに電圧線152が接続されているように図示されている。しかしながら、典型的には、各画素Pxの対向電極11は、複数の画素Pxの間で連続した単一の透光性の電極であり、電圧線152が複数本に分岐した配線である必要はない。
【0123】
他方、画素電極12は、画素Pxごとに電気的に分離して設けられる。図示するように、各画素Pxの画素電極12は、対応する出力回路20の信号検出トランジスタ22のゲートに接続される。信号検出トランジスタ22のソースは、アドレストランジスタ24を介して、対応する出力信号線Sに接続される。信号検出トランジスタ22のドレインは、電源線32に接続される。電源線32は、動作時に3.3V程度の電源電圧VDDが印加されることによりソースフォロワ電源として機能する。
【0124】
アドレストランジスタ24のゲートには、行信号線Rが接続される。行走査回路120は、行信号線Rに印加する電圧レベルの制御により、アドレストランジスタ24のオンおよびオフを切り替えて、選択した行に属する画素Pxから出力信号線Sに信号を読み出すことができる。
【0125】
この例では、出力回路20は、リセットトランジスタ26を含んでいる。リセットトランジスタ26のドレインおよびソースの一方は、ノードFDに接続される。ノードFDは、光電変換部10を信号検出トランジスタ22のゲートに電気的に接続する。リセットトランジスタ26のドレインおよびソースの他方は、リセット電圧線36に接続される。リセット電圧線36には、撮像装置100Aの動作時に所定のリセット電圧VRSTが印加される。典型的には、図示するように、リセット信号線46は、同一行に属する複数の画素Pxのリセットトランジスタ26のゲートに共通して接続される。
【0126】
この例では、リセット信号線46は、行走査回路120との接続を有する。行走査回路120は、リセット信号線46に印加する電圧レベルの制御により、複数の画素Pxの行単位でリセットトランジスタ26をオンする。これにより、リセットトランジスタ26がオンとされた画素PxのノードFDの電位は、VRSTにリセットされ得る。電圧供給回路150から各画素Pxの対向電極11に印加される電圧をV1またはV2とすれば、リセットの直後における画素電極12と対向電極11との間に印加されるバイアス電圧は、(V1-VRST)または(V2-VRST)である。後述するように、本開示の実施形態では、(V1-VRST)>0および(V2-VRST)>0となるようにこれらの電圧の具体的な値が選ばれ得る。
【0127】
図3Aは、画素Pxの例示的なデバイス構造を示す。半導体基板110は、不純物領域111~115と、素子分離領域116とを有する。素子分離領域116は、画素Pxごとに設けられた出力回路20を、画素Px間で電気的に分離する。以下では、半導体基板110としてP型シリコン基板を例示する。不純物領域111~115は、典型的には、N型の拡散領域である。半導体基板110は、表面に半導体層が設けられた絶縁基板などであってもよい。
【0128】
信号検出トランジスタ22は、不純物領域111~115のうち、不純物領域113および114と、半導体基板110上のゲート絶縁層22gと、ゲート絶縁層22g上のゲート電極22eとを含む。不純物領域113は、信号検出トランジスタ22のドレイン領域として機能する。不純物領域114は、信号検出トランジスタ22のソース領域として
機能する。図示する構成において、アドレストランジスタ24は、不純物領域114を信号検出トランジスタ22と共有する。アドレストランジスタ24は、半導体基板110上のゲート絶縁層24gと、ゲート絶縁層24g上のゲート電極24eと、不純物領域115とを含む。不純物領域115は、アドレストランジスタ24のソース領域として機能する。
【0129】
リセットトランジスタ26は、不純物領域111および112と、半導体基板110上のゲート絶縁層26gと、ゲート絶縁層26g上のゲート電極26eとを含む。図3Aでは図示が省略されているが、不純物領域112には、例えば上述のリセット電圧線36が接続される。なお、信号検出トランジスタ22のドレイン領域としての不純物領域113には、上述の電源線32が接続される。アドレストランジスタ24のソース領域としての不純物領域115には、上述の出力信号線Sが接続される。図3Aに模式的に示すように、素子分離領域116は、リセットトランジスタ26と信号検出トランジスタ22との間にも設けられる。
【0130】
層間絶縁層50は、半導体基板110に形成された信号検出トランジスタ22、アドレストランジスタ24およびリセットトランジスタ26を覆う。各画素Pxの光電変換部10は、層間絶縁層50によって支持される。層間絶縁層50は、各々が例えば二酸化シリコンから形成された複数の絶縁層を含む。
【0131】
光電変換部10の対向電極11は、被写体からの光が入射する側に位置し、典型的には、ITOなどの透明な導電性材料から形成される。上述したように、対向電極11は、典型的には、複数の画素Pxに跨って連続した単一の電極層の形で設けられる。対向電極11の、光電変換層13とは反対側の主面上には、カラーフィルタなどの光学フィルタ14、マイクロレンズ16などが配置され得る。
【0132】
対向電極11と画素電極12との間に位置する光電変換層13は、有機材料またはアモルファスシリコンなどの無機材料から形成され、対向電極11を介した光の入射を受けて励起子を発生させる。光電変換層13は、有機材料から構成される層と無機材料から構成される層とを含んでいてもよい。対向電極11と同様に、光電変換層13は、典型的には、複数の画素Pxに跨って連続した単一の光電変換構造の形で設けられる。
【0133】
画素電極12は、光電変換層13よりも半導体基板110の近くに位置し、隣接する他の画素Pxの画素電極12から空間的に分離されることにより、これらから電気的に分離されている。画素電極12は、アルミニウム、銅などの金属、金属窒化物、または、不純物がドープされることにより導電性が付与されたポリシリコンなどから形成され得る。
【0134】
各画素Pxは、導電構造52を層間絶縁層50の内部に有する。導電構造52は、信号検出トランジスタ22などを含む出力回路20に、画素電極12を電気的に接続する。導電構造52は、銅などの金属から形成されたビア、ポリシリコンから形成されたプラグなどを含み、図3Aに模式的に示すように、画素電極12と、半導体基板110に形成された不純物領域111とを互いに電気的に接続する。この導電構造52は、信号検出トランジスタ22のゲート電極22eにも接続されている。すなわち、出力回路20は、信号検出トランジスタ22を含むソースフォロワにより、画素電極12の電位に応じた信号を対応する出力信号線Sに出力する。
【0135】
動作時、電圧線152を介して電圧供給回路150から対向電極11に所定の電圧が印加されることにより、図3Aに模式的に示すように、対向電極11と画素電極12との間には、電位差ΔVが印加される。ここでは、電圧供給回路150は、画素電極12を基準として、画素電極12の電位よりも対向電極11の電位の方が高くなるような電圧を対向
電極11に印加する。画素電極12の電位よりも対向電極11の電位を高くすることにより、光の入射によって光電変換層13中に生成される正および負の電荷のうち、正の極性を有する電荷、例えば、正孔を信号電荷として画素電極12によって収集することができる。以下では、特に断りの無い限り、信号電荷として正孔を利用する例を説明する。なお、図3Aに示す例では、光電変換層13と画素電極12との間に電子ブロッキング層13eが配置されており、光電変換層13から画素電極12への電子の注入の抑制が図られている。電子ブロッキング層13eが光電変換の機能を有していてもかまわない。
【0136】
本開示の典型的な実施形態では、電圧供給回路150から電圧線152に第1電圧V1が印加されている状態および電圧供給回路150から電圧線152に第2電圧V2が印加されている状態のいずれにおいても、対向電極11の電位が画素電極12の電位よりも高くなるような第1電圧V1および第2電圧V2が用いられる。なお、画素電極12の電位は、リセットトランジスタ26を介して供給される上述のリセット電圧VRSTによって決まる。したがって、本開示の典型的な実施形態では、(V1-VRST)>0および(V2-VRST)>0である。リセット電圧VRSTとしては、例えば0Vまたは0V付近の正電圧が用いられる。
【0137】
不純物領域111は、層間絶縁層50中の導電構造52に接続される。不純物領域111によって半導体基板110中に形成されるPN接合は、画素電極12によって収集された正電荷、例えば、正孔を一時的に蓄積する電荷蓄積容量として機能する。本開示の典型的な実施形態においては、信号電荷として正孔が用いられるので、不純物領域111への信号電荷の蓄積に伴って、電荷蓄積部としての不純物領域111の電位は、上昇する。
【0138】
画素電極12よりも対向電極11の電位が低くなるような電圧を対向電極11に印加することにより、例えば電子を信号電荷として利用することももちろん可能である。図3Bは、電子を信号電荷として利用する場合の画素Pxの動作を説明するための模式的な断面図である。画素電極12によって負の電荷を収集する場合には、例えば、対向電極11の電位よりも画素電極12の電位の方が高くなるような電圧を対向電極11に印加すればよい。図3Bに例示する構成では、光電変換層13と画素電極12との間に正孔ブロッキング層13hが配置されることにより、光電変換層13から画素電極12への正孔の注入の抑制が図られている。
【0139】
この場合も、制御回路160は、例えば検出回路130Aによって検出された出力信号のレベルが参照線132の電圧レベル未満である場合に、対向電極11と画素電極12との間に印加される電位差が第1の電圧差となるように、電圧供給回路150から所定の電圧を出力させる。また、検出回路130Aによって検出された出力信号のレベルが参照線132の電圧レベル以上である場合に、対向電極11と画素電極12との間に印加される電位差が第1の電圧差よりも大きい第2の電位差となるような電圧を電圧供給回路150から出力させる。なお、信号電荷として電子を蓄積する構成では、不純物領域111への信号電荷の蓄積に伴って、電荷蓄積部としての不純物領域111の電位は、低下することになる。
【0140】
(光電変換層の例示的な光電変換特性)
ここで、光電変換層13の光電変換特性と、電圧供給回路150が電圧線152に供給する電圧との間の関係を説明する。以下では、特に断りの無い限り、信号電荷として正孔を利用する例を説明する。
【0141】
図4は、光電変換層13の光電変換特性の典型例を示す。図4中、横軸は、対向電極11と画素電極12との間に印加される電位差ΔVを表し、縦軸は、光電変換層13の光電変換効率ηを表す。ここで、光電変換効率ηは、1つの画素Pxについて、光電変換部1
0に入射された光子数に対する、画素電極12によって収集された電荷数の単位秒あたりの比を意味する。なお、電荷数は、電気素量を単位として測った数である。
【0142】
図4に例示するように、本開示の実施形態において、光電変換層13における光電変換効率ηは、おおむね、対向電極11と画素電極12との間に印加される電位差ΔVの増加に対して上に凸の曲線状に増加するような変化を示す。図4に示すような光電変換特性を有する光電変換層は、有機光電変換膜の形成に一般な適用される有機光電変換材料およびその組み合わせを用いることにより、実現可能である。
【0143】
図4に示す例において、光電変換効率ηは、電位差ΔVが0~3V程度の比較的低い電圧領域において電位差ΔVの変化に対して比較的急峻な増大を示し、電位差ΔVがおよそ3V以上の比較的高い電圧領域において電位差ΔVの変化に対して比較的緩やかな増大を示している。本明細書において、対向電極11と画素電極12との間に印加される電位差ΔVの変化に対して光電変換効率ηが比較的急峻な増大を示す電圧範囲を第1電圧範囲と呼び、電位差ΔVの変化に対して光電変換効率ηが比較的緩やかな増大を示す電圧範囲を第2電圧範囲と呼ぶ。
【0144】
図4に示すように、第2電圧範囲における、光電変換部10への入射光量の変化に対する信号のレベルの変化は、第1電圧範囲と比較して相対的に小さく、図4に示す例では、光電変換部10は、第2電圧範囲において比較的にフラットな光電変換特性を示しているといえる。第2電圧範囲は、例えば、光電変換部10への入射光量の変化に対する信号のレベルの変化が25%以内の電圧領域であり得る。「入射光量の変化に対する信号のレベルの変化が25%以内」とは、ISOに換算すると、隣接する2つのレベルの差の(1/3)に相当する変化である。
【0145】
第1電圧範囲は、対向電極11と画素電極12との間に印加される電位差ΔV、換言すれば、バイアス電圧に対する光電変換部10の光電変換効率の変化率が、バイアス電圧が第2電圧範囲にあるときよりも大きな値を示す電圧範囲として定義することができる。第1電圧範囲および第2電圧範囲の具体的な範囲は、撮像装置100Aの用途、光電変換層13の材料などによって異なり得るが、例えば以下のように定義可能である。対向電極11と画素電極12との間のバイアス電圧に対する光電変換部10の光電変換効率ηのグラフにおいて、図4中に破線で示すように、光電変換効率ηが0から立ち上がる点における接線T1を引く。また、バイアス電圧のうち動作時の最大値に相当する点における接線T2を引く。これらの接線T1および接線T2の交点におけるバイアス電圧の値をVtとし、Vt未満の電圧範囲を第1電圧範囲とする。
【0146】
図4に示す例では、光電変換効率ηが0から立ち上がる電位差ΔVの値は、0Vであり、動作時におけるバイアス電圧の最大値は、ΔV=12Vである。これらの点における接線の交点のX座標は、およそ3Vであり、したがって、図4に示すように、おおよそ0V以上3V未満の電圧領域を第1電圧範囲とし、おおよそ3V以上12V以下の電圧領域を第2電圧範囲とすることができる。
【0147】
ただし、図5に例示するように、電位差ΔVの比較的小さい領域において、光電変換効率ηが0から緩やかに立ち上がるような特性曲線が得られた場合、光電変換効率ηが0から立ち上がる点における接線T1と、バイアス電圧のうち動作時の最大値に相当する点における接線T2とが交わらないこともあり得る。このような場合には、光電変換効率ηのグラフにおいて、図5中に破線で示すように、光電変換効率ηの値が0.06となる点Rにおける接線T3を引き、この接線T3と接線T2との交点を求める。そして、接線T3および接線T2の交点におけるバイアス電圧の値をVtとし、Vt未満の電圧範囲を第1電圧範囲としてもよい。
【0148】
なお、上述の光電変換効率ηの値0.06は、バイアス電圧のうち動作時の最大値に相当する点における光電変換効率ηを1としたときの規格化された値である。デジタルカメラの分野では、シャッタスピードを落としての撮影などにおいて、デジタルカメラにNDフィルタが組み合わされることがある。光電変換効率ηの値0.06によって実現される感度は、ND16のフィルタを適用した場合におおよそ相当する。したがって、電位差ΔVに対する光電変換効率ηのグラフにおいてY座標が0.06である点Rにおける接線を用いてVtを求めることにより、例えばND2~ND16の範囲に相当する感度を電気的な制御によって実現し得る。
【0149】
あるいは、バイアス電圧の1Vの変化に対する、光電変換効率ηの変化が10%未満であるような電圧範囲が第2電圧範囲であるとしてもよい。この場合、第2電圧範囲は、図6に示すように、グラフ上に第1の点P(a,b)および第2の点Q(a+1,c)をとったとき、光電変換効率ηの増分である(c-b)が(c-b)<0.1*bの関係を満たすような電圧範囲であるとして定められる。ここで、上述の関係式中の「*」は、乗算を表す。
【0150】
そのほか、以下のように第1電圧範囲または第2電圧範囲を定めることもできる。例えば、対向電極11と画素電極12との間のバイアス電圧に対する光電変換部10の光電変換効率ηのグラフにおいて、図7に示すように、光電変換効率ηが0.7以上となるような領域を第2電圧範囲としてもよい。なお、光電変換効率ηが0.7以上となるような領域が第2電圧範囲であると定義すると、ISOの数値との対応を付けやすいという利点がある。第1電圧範囲および第2電圧範囲の具体的な範囲は、撮像装置100Aの用途などに応じて適宜設定されればよい。
【0151】
上述の第1電圧V1および第2電圧V2として、光電変換部10に第1電圧V1が供給されているときの光電変換効率ηが、光電変換部10に第2電圧V2が供給されているときよりも低くなるような電圧を用いることができる。上述したように、光電変換層13における光電変換効率ηは、典型的には、対向電極11と画素電極12との間に印加される電位差ΔVの増加に対しておおむね単調に増加する。本開示の典型的な実施形態では、第1電圧V1および第2電圧V2として、第2電圧範囲にある電圧を用いる。以下、第1電圧V1および第2電圧V2として、第2電圧範囲にある電圧を用いたときの撮像装置100Aの動作例を説明する。
【0152】
(撮像装置100Aの動作例)
ここでは、光電変換層13における光電変換効率ηが、対向電極11と画素電極12との間に印加される電位差ΔVの増加に対して、図4に示すような変化を示すとし、上述の接線T1および接線T2の交点におけるバイアス電圧の値Vtが3Vであるとする。このとき、例えば、3V未満の電圧領域を第1電圧範囲とし、3V以上12V以下の電圧領域を第2電圧範囲と定めると、例えば、6Vの電圧を第1電圧V1に用い、12Vの電圧を第2電圧V2に用い得る。
【0153】
第1電圧範囲および第2電圧範囲についてこのような定義を採用した場合、対向電極11への第1電圧V1の印加時における光電変換効率ηの値に対する、対向電極11への第2電圧V2の印加時における光電変換効率ηの比は、典型的には、1よりも大きく1.25以下である。この例では、対向電極11への第1電圧V1の印加時における光電変換効率ηは、およそ0.87であり、第2電圧V2の印加時における光電変換効率ηの値は、およそ1.0であるので、これらのηの値についての比の値は、およそ1.15である。なお、第1電圧V1に対する第2電圧V2の比の値(V2/V1)である2は、ηに関する上述の比の値1.15よりも大きい。
【0154】
図8は、撮像装置100Aの第1の例示的な動作を示す概略的なフローチャートである。図8に示す例においては、まず、光電変換部10に入射した光量が所定の光量以上であるか否かの判定を実行する(ステップS1)。例えば、出力回路20から出力信号線Sに出力された信号のレベルを検出回路130Aによって検出する。検出されたレベルが、閾値としての参照線132の電圧レベル以上である場合に、光電変換部10に入射した光量が所定の光量以上であると判定することができる。出力回路20からの信号のレベルの検出は、例えば、ユーザがレリーズボタンを半押ししたときに、一部の画素Pxのアドレストランジスタ24をオンとして、照度に応じた電圧を出力回路20から出力させることによって実行されてもよい。あるいは、これから画像を取得しようとするフレームの例えば1つ前のフレームにおいて検出回路130Aによって検出された信号のレベルを利用してもよい。
【0155】
もちろん、光電変換部10に入射した光量が所定の光量以上であるか否かの判定の方法は、特定の方法に限定されず、種々の方法を採用し得る。例えば、検出回路130Aによって検出された信号のレベルをアナログ-デジタル変換回路によってデジタル値に変換し、予めメモリ162に格納しておいた閾値との比較により、光電変換部10に入射した光量が所定の光量以上であるか否かを判定してもよい。光電変換部10に入射した光量が所定の光量以上であるか否かの判定は、例えば制御回路160、あるいは、画像処理回路164によって実行され得る。制御回路160は、半導体基板110に形成されたロジック回路を含んでいてもよい。光電変換部10に入射した光量が所定の光量以上であるか否かの判定は、撮像装置100A外に配置された例えばISPによって実行されてもよい。
【0156】
光電変換部10に入射した光量が所定の光量未満であると判定された場合、対向電極11と画素電極12との間の電位差が第1の電位差となるように光電変換部10に電圧が印加される(ステップS2)。制御回路160は、電圧供給回路150に駆動信号を供給し、例えば、電圧供給回路150から電圧線152に第1電圧V1を印加させる。すなわち、ここでは、照度の低い状況において、画素電極12と対向電極11との間のバイアス電圧を相対的に小さくする。
【0157】
標準の設定において、電圧供給回路150から光電変換部10に供給する電圧として相対的に低い第1電圧V1を用いるような動作を適用することにより、電力消費抑制の効果が期待できる。第2電圧範囲にある第1電圧V1が電圧供給回路150から供給されている状態を標準モードと呼んでもよい。また、相対的に低い第1電圧V1を標準設定において用いることは、標準設定において第2電圧V2を用いる場合と比較して、省電力であるだけでなく、動作の高速化にも有利である。
【0158】
例えば特許第6202512号公報は、光電変換層を挟む対向電極と画素電極との間に印加する電位差を0Vに近づけることにより、画素の感度を実質的に0として、グローバルシャッタを実現する技術を開示している。このような技術を適用する場合、露光時に対向電極に印加する電圧と、画素の感度を0として電子的にシャッタを閉じた状態とする時に対向電極に印加する電圧との差が大きいと、電圧の切り替えに要する時間が長くなる。これに対し、露光時とシャッタ時との間で対向電極に印加する電圧の差が小さいと、電圧の切り替えに要する時間が短縮され、より高速にシャッタ動作を実行することが可能になる。また、露光の終了、すなわち、対向電極に印加する電圧をほぼ0Vに低下させてから信号の読み出しまでに要する期間を短縮できるので、相対的に低い第1電圧V1を標準設定において用いる駆動は、電気的なグローバルシャッタの適用に特に有利である。参考のために、特許第6202512号公報の開示内容の全てを本明細書に援用する。
【0159】
図9および図10は、対向電極11に第1電圧V1として6Vの電圧が印加されている
ときの画素Pxの動作を説明するための模式的な断面図である。動作時、対向電極11と画素電極12との間には、電位差ΔVが印加される。リセット電圧VRSTは、例えば0V付近の電圧であり、したがって、電圧供給回路150が第1電圧V1を供給している状態において、光電変換層13は、図9に模式的に示すように、およそ6Vの電位差が印加された状態にある。
【0160】
光電変換層13に光が入射して光電変換層13の内部に電荷が生成されると、これらの電荷は、対向電極11と画素電極12との間の電場に従って移動する。図9に模式的に示すように、正の電荷は、導電構造52を介して、電荷蓄積部としての不純物領域111に蓄積され、負の電荷は、対向電極11を介して光電変換層13から電圧線152に排出される。
【0161】
ここで、図10に矢印hνで模式的に示すように、電圧供給回路150から第1電圧V1が供給されている状態において比較的に高い照度のもとで信号電荷の蓄積が継続したとする。不純物領域111への信号電荷の蓄積が継続すると、ここでは信号電荷として正の電荷を用いているので、不純物領域111の電位は、徐々に上昇する。そのため、光電変換層13にかかる実効的なバイアス電圧は、第1電圧V1の実際の値よりも小さく、例えば5V程度になり得る。すなわち、高耐圧の素子および素子分離領域が要求されず、信頼性を向上させ得る。なお、画素電極12の電位が対向電極11の電位を上回ると画素電極12による正の電荷の収集が起こらなくなるので、基本的に不純物領域111の電位が第1電圧V1の値を上回ることはない。
【0162】
再び図8を参照する。ステップS1において、光電変換部10に入射した光量が所定の光量以上であると判定された場合、対向電極11と画素電極12との間の電位差が第1の電位差よりも大きい第2の電位差となるように光電変換部10に電圧が印加される(ステップS3)。制御回路160は、電圧供給回路150に駆動信号を供給し、例えば、第1電圧V1よりも高い第2電圧V2を電圧供給回路150から電圧線152に印加させる。
【0163】
対向電極11と画素電極12との間の電位差ΔVが拡大すると、光電変換層13の内部の電場が増大し、図11に模式的に示すように、画素電極12によってより多くの正の電荷が収集されるようになる。ここでは、第2電圧V2として12Vの電圧が用いられている。図4を参照すればわかるように、対向電極11に第2電圧V2が印加された状態における光電変換効率は、対向電極11に第1電圧V1が印加された状態と比較して高い。すなわち、対向電極11に第2電圧V2が印加されているときの画素Pxの感度は、対向電極11に第1電圧V1が印加された状態と比較して高い状態にある。
【0164】
不純物領域111への信号電荷の蓄積の継続に伴って不純物領域111の電位が徐々に上昇する点は、対向電極11に第1電圧V1を印加した場合と同様である。したがって、光電変換層13にかかる実効的なバイアス電圧は、第2電圧V2の実際の値よりも小さく、図11に示すように、例えば11V程度になり得る。
【0165】
図12は、対向電極11に第1電圧V1が印加されているとき、および、対向電極11に第2電圧V2が印加されているときの、光電変換部10に入射する光量の変化に対する、出力回路20からの信号のレベルの変化の典型例を模式的に示す。図12中のグラフG1は、対向電極11に第1電圧V1として6Vの電圧が印加されているときの出力信号のレベルの変化を示しており、グラフG2は、対向電極11に第2電圧V2として12Vの電圧が印加されているときの出力信号のレベルの変化を示す。
【0166】
図12の例において、第1電圧V1として6Vの電圧が対向電極11に印加されている状態、および、第2電圧V2として12Vの相対的に高い電圧が対向電極11に印加され
ている状態のいずれにおいても、出力回路20からの信号のレベルは、光電変換部10に入射する光量の変化に対して直線状の変化を示している。すなわち、電圧供給回路150から第1電圧V1および第2電圧V2のいずれを供給した場合であっても、照度の変化に対する信号出力のリニアリティを確保し得ることがわかる。
【0167】
ただし、図12に示す例において、対向電極11に第1電圧V1が印加されている場合、照度の変化に対する信号出力が直線状の変化を示す範囲は、対向電極11に第2電圧V2が印加されている場合と比較して狭い。これは、照度の変化に対する信号出力の変化率が、対向電極11に第1電圧V1が印加されているときに、より大きな値をとり得るからである。
【0168】
図13は、光電変換層13の光電変換特性の典型例を示す。図13中のグラフは、図4に示すグラフと同じである。図13に示す例では、電位差ΔVが小さくなるほど、グラフの傾きが大きくなっている。光電変換部10がこのような光電変換特性を示す場合、例えば電位差ΔVが6Vである点を起点として、信号電荷の蓄積に伴って不純物領域111の電位が上昇すると、電位差ΔVが、グラフがより大きな傾きを示す第1電圧範囲に近づく。その結果、照度の変化に対する信号出力の変化のグラフが直線から外れることがある。すなわち、相対的に低い第1電圧V1が対向電極11に印加されている状態において照度がある範囲を超えると、リニアリティが崩れ得る。
【0169】
これに対し、相対的に高い第2電圧V2が対向電極11に印加されている状態では、図13に示すように、電位差ΔVの変化に対する光電変換効率ηの変化率は、相対的に小さく、したがって、電位差ΔVに関してより大きな変化を許容することが可能になる。例えば、同じ大きさのηの変化Δηを与える電位差ΔVの範囲を3倍程度に拡大し得る。すなわち、相対的に高い第2電圧V2を対向電極11に印加した状態では、図12に示すように、出力信号のレベルが直線的に変化するような光量の範囲が、対向電極11に第1電圧V1を印加しているときと比較して3倍程度に拡大され得る。このことを言い換えると、対向電極11に第2電圧V2を印加した状態は、対向電極11に第1電圧V1を印加しているときと比較して光量にして3倍程度の範囲を許容することが可能になり、より広いダイナミックレンジが求められる明るいシーンの撮影に有利である。
【0170】
このように、照度が比較的低い環境においては第2電圧範囲にある第1電圧V1を光電変換部10に供給し、照度が比較的高い環境においてはより高い第2電圧V2を光電変換部10に供給するように制御する。このような制御によれば、照度に変化に応じてダイナミックレンジを動的に変化させることができる。例えば、標準設定では、光電変換部10に供給する電圧として第2電圧範囲にある第1電圧V1を用い、照度が比較的高い環境においては、光電変換部10に供給する電圧として相対的に高い第2電圧V2を用いることができる。このような制御によれば、照度が比較的高い環境において、バイアス電圧に対する光電変換効率ηの変化率が相対的に小さい電圧領域で光電変換部10を駆動させることができ、より広い範囲でリニアリティを確保することが可能になる。すなわち、電気的な制御によってダイナミックレンジを自動的に拡大させることが可能になる。また、電圧供給回路150から光電変換部10に供給する電圧として相対的に低い第1電圧V1を用いるような動作を標準の設定として採用することにより、低消費電力の利点が得られる。
【0171】
図14に例示するように、互いに隣接する2つの画素電極12の間に第3電極15を配置してもよい。以下に説明するように、第3電極15の電位を制御することにより、照度の高い方向に関するダイナミックレンジをさらに拡大させることが可能である。
【0172】
図14では、複数の画素Pxの例えば行または列に沿って互いに隣接する2つの画素Px1およびPx2が示されている。また図14では、第3電極15が、画素Px1の画素
電極12と画素Px2の画素電極12との間であって、かつこれらの画素電極12と同層に配置されている。第3電極15は、画素Px1の画素電極12および画素Px2の画素電極12から空間的に分離されることにより、これらの画素電極12から電気的に分離されている。第3電極15は、不図示の電源に接続されることによって撮像装置100Aの動作時に所定の電圧を印加可能に構成される。
【0173】
図15は、対向電極11側から見たときの、画素電極12と第3電極15との配置関係の一例を示す。この例では、画素Px1および画素Pxのそれぞれに、画素電極12を取り囲む矩形状の第3電極15が設けられている。なお、第3電極15を画素Pxごとに分離して配置することは必須ではない。例えば複数の画素Pxの行ごとに、複数の画素Pxに跨る単一の第3電極15が設けられることもあり得る。また、複数の画素Pxにわたってグリッド状の第3電極15が配置されることもあり得る。
【0174】
対向電極11よりも低い電位が与えられたとき、画素電極12は、図15に網掛けで模式的に示すように、光電変換層13のうちおおよそ画素電極12の直上に位置する領域R1にある正の電荷を収集する。同様に、第3電極15は、対向電極11よりも低い電位が与えられることにより、光電変換層13のうちおおよそ第3電極15の直上に位置する領域R2にある正の電荷を収集することができる。
【0175】
したがって、照度が高いときに、第3電極15に例えばリセット電圧VRST以下の電圧を印加して光電変換層13のうち対向電極11と第3電極15との間に位置する部分に上述のΔV以上の電位差を印加することにより、図16に模式的に示すように、画素Pxの境界付近で生じた電荷を第3電極15によって優先的に収集することが可能になる。その結果、画素電極12に到達する電荷数が減少することととなり、実効的な光電変換効率を低下させることができる。すなわち、照度の高い方向に関するダイナミックレンジをさらに拡大させることが可能である。また、各画素Px上にカラーフィルタを配置した構成においては、混色抑制の効果も得られる。第3電極15に印加される電圧は、電圧供給回路150から供給されてもよい。
【0176】
既に説明したように、信号電荷として正孔を利用する構成においては、露光に伴い、電荷蓄積部としての不純物領域111に蓄積される正孔が増加するので、不純物領域111の電位は次第に上昇する。露光に伴って不純物領域111の電位が次第に上昇するので、第2電圧V2の印加時においても、光電変換層13にかかる実効的なバイアス電圧は、第2電圧V2の値よりも小さくなる。光電変換部10に第1電圧V1が印加される低照度のときと同様に、この場合も、不純物領域111の電位は、基本的に第2電圧V2を上回ることはない。すなわち、対向電極11と画素電極12との間の電位差ΔVを比較的大きな値としながらも、不純物領域111に印加される電場の増大を抑えることができる。したがって、不純物領域111とその外側の領域との間に形成されるPN接合、信号検出トランジスタ22のゲート絶縁層22gなどに極端に高い耐圧が要求されず、信頼性を確保しやすい。
【0177】
(出力回路の例)
図17および図18は、信号電荷の蓄積に伴うノードFDの電位の変化と、電源電圧との間の関係を模式的に示す。図17は、リセット時における、リセットトランジスタ26のドレイン側およびソース側のノードの電位を模式的に示す。図17に示すように、光電変換部10のリセット時、リセットトランジスタ26がオンとされることにより、リセットトランジスタ26のドレインおよびソースの一方の側であるノードFDの電位は、他方の側であるリセット電圧線36の電位VRSTに一致する。
【0178】
図18は、リセットトランジスタ26のオフ後、信号電荷が蓄積された状態におけるノ
ードFDの電位を模式的に示す。図18に示すように、信号電荷の蓄積後のノードFDの電位は、VRSTから、蓄積された信号電荷Cgの量に応じた電圧VSIG分上昇する。ここで、照度が比較的高い環境において、特に、第2電圧範囲にある比較的高い第2電圧V2を光電変換部10に供給している場合、信号電荷Cgとしての正孔の蓄積に伴って、ノードFDの電位が電源電圧VDDを上回ることが起こり得る。
【0179】
図19は、画素Pxに含まれる出力回路の変形例を示す。簡単のために、ここでは、複数の画素Pxのうち第i行第j列に位置する画素を取り出して示している。
【0180】
図19に例示する構成において、画素Pxは、光電変換部10に接続された出力回路20Aを有する。出力回路20Aは、信号検出トランジスタ22、アドレストランジスタ24およびリセットトランジスタ26に加えて、リセットトランジスタ26のドレインおよびソースのうち光電変換部10の画素電極12に接続されていない側に一方の電極が接続された第1容量素子241をさらに有する。
【0181】
図示するように、第1容量素子241の電極のうち、リセットトランジスタ26に接続されていない側の電極には、蓄積制御線251が接続されている。蓄積制御線251は、不図示の電圧供給回路などに接続されることにより、動作時、第1容量素子241に所定の電圧を印加する。なお、この例では、出力回路20Aは、リセットトランジスタ26に並列に接続された第2容量素子242をも含む。第1容量素子241は、典型的には、第2容量素子242よりも大きな容量値を有する。
【0182】
上述したように、高照度の環境では、信号電荷Cgの蓄積に伴い、ノードFDの電位が電源電圧VDDを上回ることが起こり得る。ノードFDの電位が電源電圧VDDを上回ると、ソースフォロワによる信号の読み出しを実行できない。しかしながら、図19に例示する出力回路20Aによれば、対向電極11に対して例えば第2電圧範囲にある比較的高い第2電圧V2が印加されているモードにおいて露光後の信号読み出し時にリセットトランジスタ26をオンとすることができる。露光後の信号読み出し時にリセットトランジスタ26をオンとすることにより、第1容量素子241がリセットトランジスタ26を介してノードFDに接続される。第1容量素子241がリセットトランジスタ26を介してノードFDに接続されることにより、図20に模式的に示すように、ノードFDの電位をVDD未満のレベルに低下させることができる。したがって、電源電圧VDDに昇圧を施すことなく、光電変換によって生成された電荷の蓄積によって変化した画素電極12の電位に応じた信号を読み出すことが可能になる。ここで、図19図20中、リセットトランジスタ26のドレインおよびソースのうち光電変換部10に接続されていない側のノードをノードRDと呼んでいる。
【0183】
このように、比較的大きな容量値を有する容量素子をスイッチング素子としてのリセットトランジスタ26を介してノードFDに接続しておき、例えば対向電極11と画素電極12との間の電位差を拡大させたモードにおいて、蓄積された信号電荷に応じた信号の読み出し時にリセットトランジスタ26をオンとする制御を適用してもよい。このような制御によれば、蓄積された信号電荷に応じた信号の読み出し時に選択的にノードFDの電位を一時的に低下させることができ、より高い電源電圧を用いることなく高照度の環境においても信号の読み出しを実行し得る。なお、リセットトランジスタ26をオンすることによるノードFDの電位の一時的な低下は、対向電極11と画素電極12との間の電位差を拡大させたモードにおいて信号の読み出し時に常に実行されてもよいし、ノードFDの電位が電源電圧VDDを上回った場合に選択的に実行されてもよい。あるいは、まずリセットトランジスタ26がオフの状態で信号を読み出し、次にリセットトランジスタ26をオンとして信号を読み出すような制御も適用し得る。この場合、2回の信号読み出しに対応して2つのデータが得られるので、画像の構築に一方のデータを選択的に用いてもよく、
2つのデータを合成して用いてもよい。
【0184】
なお、図19に示す例では、複数の画素Pxの列ごとに反転増幅器224が配置されている。反転増幅器224の反転入力端子は、出力信号線Sに接続され、非反転入力端子には、動作時、所定の参照電圧Vrefが印加される。図示するように、ここでは、反転増幅器224の出力端子にリセット電圧線36が接続されている。
【0185】
また、出力回路20Aは、リセットトランジスタ26とリセット電圧線36との間に接続された帯域制御トランジスタ28をさらに含んでいる。帯域制御トランジスタ28のゲートには、帯域制御信号線48が接続される。帯域制御信号線48は、例えば行走査回路120に接続されることにより、その電位が制御される。
【0186】
このような回路構成によれば、リセットトランジスタ26をゲイン切替え用のトランジスタとして機能させるだけでなく、リセット信号線46および帯域制御信号線48の電位の制御によって、信号検出トランジスタ22の出力信号の一部または全部を電気的に帰還させるフィードバックループを形成することが可能である。フィードバックループの形成により、リセットトランジスタ26および帯域制御トランジスタ28のオフに伴って発生するkTCノイズの影響を低減することが可能である。帰還を利用したこのようなノイズキャンセルの詳細は、特開2017-046333号公報に説明されている。参考のために、特開2017-046333号公報の開示内容の全てを本明細書に援用する。
【0187】
図21は、画素Pxに含まれる出力回路の第2の変形例を示す。図19を参照して説明した構成と比較して、図21に示す出力回路20Bは、信号検出トランジスタ22aおよびアドレストランジスタ24aの組をさらに含む。図示するように、信号検出トランジスタ22aおよびアドレストランジスタ24aの組は、信号検出トランジスタ22およびアドレストランジスタ24の組に並列に接続されている。すなわち、信号検出トランジスタ22aのゲートは、ノードFDに接続され、アドレストランジスタ24aのソースは、出力信号線Sに接続されている。
【0188】
信号検出トランジスタ22のゲートおよび信号検出トランジスタ22aのゲートは、いずれもノードFDに接続されている。これに対し、信号検出トランジスタ22のドレインおよび信号検出トランジスタ22aのドレインは、例えばそれぞれが別個の電圧線に接続されることにより、撮像装置100Aの動作時に互いに異なる電圧を印加可能とされている。この例では、撮像装置100Aの動作時、信号検出トランジスタ22のドレインには、第3電圧としてのVDDが印加され、信号検出トランジスタ22aのドレインには、VDDよりも高い第4電圧VDD2が印加される。
【0189】
図示する例において、アドレストランジスタ24aのゲートには、行信号線Raが接続されている。行信号線Raは、例えば行信号線Rと同様に行走査回路120に接続され、したがって、行走査回路120は、行信号線Raの電位の制御によりアドレストランジスタ24aのオンおよびオフを切り替え、ノードFDに蓄積された電荷量に対応する電位を信号検出トランジスタ22aおよびアドレストランジスタ24aを介して出力信号線Sに読み出すことができる。
【0190】
図21に例示する出力回路20Bによれば、より高い第4電圧VDD2の印加される信号検出トランジスタ22aをソースフォロワとして利用することが可能である。例えば、制御回路160は、ノードFDの電位が電源電圧VDDを上回るような場合、信号の読み出し時に、アドレストランジスタ24をオフとし、アドレストランジスタ24aをオンとするように行走査回路120を駆動させることができる。
【0191】
このように、ノードFDの電位に応じて、ソースフォロワ電源の大きさが互いに異なる2つのソースフォロワのいずれを介して信号の読み出しを行うかを切り替えてもよい。このような回路構成によっても、ノードFDの電位が電源電圧VDDを上回る場合でも信号の読み出しが可能になる。なお、ドレインに印加する電圧を互いに異ならせることに代えて、信号検出トランジスタ22および信号検出トランジスタ22aとして、閾値電圧が互いに異なるトランジスタを用いてもよい。この場合、ドレインに印加する電圧を共通としながら、複数のソースフォロワを設けた場合と同様の上述の効果が得られる。また、複数のソースフォロワを設けることに代えて、信号検出トランジスタ22のドレインに印加する電圧をノードFDの電位に応じて第3電圧と第4電圧との間で切り替えるようにしてもよい。
【0192】
図22は、画素Pxに含まれる出力回路の第3の変形例を示す。図22に示す出力回路20Cは、一方の電極がノードFDに接続された第3容量素子243を有する。第3容量素子243の他方の電極には、例えば不図示の電圧供給回路が接続され、ノードFDに蓄積された電荷量に応じた信号の読み出し時、第3容量素子243の他方の電極に例えばパルス電圧Cpが印加される。
【0193】
パルス電圧Cpの印加により、第3容量素子243を介したカップリングによってノードFDの電位を一時的に低下させることができる。そのため、ノードFDに蓄積された電荷量を保持したまま、信号の読み出し時に選択的にノードFDの電位を低下させてノードFDの電位をVDD未満のレベルとすることができる。つまり、ノードFDの電位が電源電圧を上回るような場合であっても、電源電圧に昇圧を施すことなく信号検出トランジスタ22を介した信号の読み出しが可能になる。
【0194】
図23は、画素Pxに含まれる出力回路の第4の変形例を示す。図23に示す出力回路20Dは、光電変換部10と信号検出トランジスタ22のゲートとの間に接続された減衰器225を有する。
【0195】
図24は、図23に示す減衰器225の具体例を示す。図24に例示する構成において、減衰器225は、容量素子228と、容量素子228に並列に接続されたスイッチング素子としてのゲイン制御トランジスタ226とを有する。
【0196】
動作時、ゲイン制御トランジスタ226のゲートには、例えば行走査回路120からゲイン制御信号Gcが印加される。例えば、制御回路160は、ノードFDの電位が電源電圧VDDを上回るような場合、信号の読み出し時に、ゲイン制御トランジスタ226をオフとするように行走査回路120を駆動させることができる。ゲイン制御トランジスタ226がオフとされることにより、ノードFDに容量素子228が接続され、ノードFD全体の容量値を増大させることができる。すなわち、減衰器225は、信号検出トランジスタ22のゲートに印加される電圧を所定の割合で減衰させることができ、したがって、電源電圧に昇圧を施すことなく信号検出トランジスタ22を介した信号の読み出しが可能である。本明細書において、「減衰器」の用語は、スイッチング素子および平滑化のための容量素子の組み合わせによって実現される回路要素に限定されず、レベルシフタ、ゲインアンプなどをも広く含むように解釈される。
【0197】
(第1電圧範囲の電圧の利用)
上述の図12には、グラフG1およびG2とあわせて、対向電極11に2Vの電圧が印加されているときの、光量の変化に対する出力信号のレベルの変化を示すグラフG0も破線で示されている。図12から、第1電圧範囲から選ばれた電圧を対向電極11に印加しているとき、光量が比較的少ない領域では、光量の変化に対して信号のレベルは直線状の変化を示し、リニアリティを確保できることがわかる。光量がさらに増大すると、光量の
増大に対する信号のレベルの増大の程度が鈍り、光量の変化に対する信号のレベルの変化を示すグラフは、曲線状の変化を示すようになる。このことは、第1電圧範囲から選ばれた電圧を対向電極11に印加している状態においては、光量の増大に応じて信号のレベルが自動的に低下することを意味する。換言すれば、照度の高い方向に関するダイナミックレンジが拡大される。このことを利用して、以下に説明するように、光量の増大に応じて信号のレベルが直線状に変化する場合と比較して、照度の高い方向に関するダイナミックレンジを拡大することも可能である。
【0198】
グラフG0を参照すると、より照度の高い領域では、光量の変化に対する信号のレベルの変化を示すグラフの、直線からのはずれが拡大する。これは、電位差ΔVが小さいほど、光電変換によって生成される電荷対の減少、再結合による電荷対の消滅の増大などの影響が現れやすくなるためである。
【0199】
しかしながら、図12に示すような特性曲線を予め得ておくことにより、検出回路130Aによって検出される信号のレベルに適当な補正を施すことが可能になる。例えば、光量に応じた補正係数を例えばテーブルの形で予めメモリ162に格納しておき、補正係数を乗じた形で各画素Pxの画素値を決定してもよい。このような補正により、リニアリティを補償して、照度の高い方向に関するダイナミックレンジをさらに拡大することが可能になる。例えば、光量の増大に応じて信号のレベルが直線状に変化する場合と比較して、照度の高い方向に関するダイナミックレンジを3倍程度に拡大し得る。例えば、照度が比較的高い環境においては第1電圧範囲にある第1電圧V1を光電変換部10に供給し、照度が比較的低い環境においては第2電圧範囲にある第2電圧V2を光電変換部10に供給するような制御を実行してもよい。
【0200】
検出された信号のレベルに対する補正は、画像処理回路164によって実行され得る。画像処理回路164の機能は、上述の制御回路160と同様に、汎用の処理回路とソフトウェアとの組み合わせ、および、画像処理に特化したハードウェアのいずれによって実現されてもよい。検出された信号のレベルに対する補正が制御回路160によって実行されてもよい。
【0201】
照度が比較的高い環境においては第1電圧範囲にある第1電圧V1を光電変換部10に供給し、照度が比較的低い環境においては第2電圧範囲にある第2電圧V2を光電変換部10に供給するような制御によれば、照度に変化に応じて感度を動的に変化させることができる。例えば、標準設定では、光電変換部10に供給する電圧として第2電圧範囲にある第2電圧V2を用い、照度が比較的高い環境においては、光電変換部10に供給する電圧として第1電圧範囲にある第1電圧V1を用いることにより、感度を自動的に低下させることが可能になる。さらに、照度が比較的高く、第1電圧範囲にある第1電圧V1が光電変換部10に供給されている状態において、照度がさらに増大すると、不純物領域111への正孔の蓄積に伴い、電位差ΔVが縮小する。その結果、光電変換効率ηが、より低下する方向に変化するので、照度の高い方向に関するダイナミックレンジをより拡大し得る。
【0202】
このように、第1電圧V1として、第1電圧範囲にある電圧を用いることにより、電気的な制御によっていわばNDフィルタ機能を実現することが可能になる。したがって、従来、複数のNDフィルタから適切な1つを選択して使用することが必要であった撮影シーンにおいても予め複数のNDフィルタを用意しておく必要が無くなり、撮影機材の簡易化の効果が得られる。例えば、従来のシリコンイメージセンサでは不可能であった感度の連続的な変更、すなわち、無段階制御も可能となり、シーンに応じた撮影の自由度を広げることができる。
【0203】
(変形例)
図25は、第1の実施形態の変形例による撮像装置の例示的な回路構成を示す。図1を参照して説明した撮像装置100Aの構成と比較して、図25に示す撮像装置100Bは、検出回路130Aに代えて検出回路130Bを有する。検出回路130Bは、比較器134を有しない。
【0204】
検出回路130Bは、例えば、アナログ-デジタル変換回路を含み、検出された出力信号線Sの電圧の大きさを表現するデジタル値のデータを制御回路160に出力する。制御回路160は、検出回路130Bからの入力に基づき、各画素Pxの出力回路20から出力された信号のレベルが所定のレベル以上であるか否かの判定を実行する。判定の基準となる閾値は、例えばメモリ162に予め格納され得る。制御回路160は、例えば、検出回路130Bから受け取ったデジタル値が、メモリ162に保持されている閾値よりも低い場合には、光電変換部10に入射する光量が所定の光量よりも小さいと判定し、相対的に低い第1電圧V1が電圧線152に印加されるように電圧供給回路150を駆動させる。このような構成によれば、検出回路内に比較器134を配置した場合と比較して、半導体基板110において検出回路130Bの占める面積を縮小することが可能である。なお、光電変換部10に入射する光量が所定の光量以上であるか否かの判定は、画像処理回路164によって実行されてもよい。
【0205】
上述の各例では、光電変換部10の対向電極11に印加する電圧を、照度に応じて第1電圧V1と第2電圧V2との間で切り替えている。しかしながら、印加電圧の切り替えの対象は、対向電極11に限定されず、以下に説明するように、画素電極12に対して印加する電圧を2つの電圧の間で切り替えてもよい。
【0206】
図26は、第1の実施形態の他の変形例による撮像装置の例示的な回路構成を示す。図26に示す撮像装置100Cの回路構成と、図2を参照して説明した撮像装置100Aの回路構成との間の主な相違点は、撮像装置100Cでは、第1電圧V1および第2電圧V2を供給する電圧供給回路150がリセット電圧線36に接続されている点である。すなわち、この例では、リセット電圧VRSTとして少なくとも2つの互いに異なる電圧がリセット電圧線36に選択的に供給される。なお、図26に例示する構成において、電圧線152には、第2の電圧供給回路154が接続されている。第2の電圧供給回路154は、基本的に、露光時、一定の電圧を電圧線152に供給する。なお、電圧供給回路154は、電圧供給回路150とは独立した別個の部品であってもよいし、電圧供給回路150および154のそれぞれが、単一の電圧供給回路の一部であってもよい。
【0207】
図26において不図示の制御回路160は、例えば、画像を取得しようとするフレームの開始前に、検出回路130Aによって検出された出力信号のレベルに基づき、光電変換部10に対する照度が所定の照度以上であるか否かの判定を実行する。光電変換部10に対する照度が例えば所定の照度未満である場合、制御回路160は、例えば、第1電圧V1および第2電圧V2のうち相対的に高い第2電圧V2をリセット電圧VRSTとしてリセット電圧線36に印加されるように電圧供給回路150を駆動する。各画素Pxは、第2電圧V2に基づき、光電変換部10のリセット、換言すれば、画素電極12および電荷蓄積部としての不純物領域111の電位のリセットを実行する。
【0208】
ここでは、電圧供給回路150は、第2電圧V2として例えば6Vの電圧をリセット電圧線36に供給する。したがって、リセットの実行後の各画素Pxの画素電極12の電位は、6Vである。このとき、電圧供給回路154は、電圧線152を介して各画素Pxの対向電極11に例えば12Vの電圧を印加する。すなわち、このときの対向電極11と画素電極12との間の電位差ΔVは、6Vである。
【0209】
他方、光電変換部10に対する照度が所定の照度以上である場合、つまり、高照度の環境では、電圧供給回路150から、相対的に低い第1電圧V1がリセット電圧線36に供給される。例えば、第1電圧V1として例えば1Vの電圧を用いた場合、リセット電圧線36に第2電圧V2が印加されていた状態と比較して、対向電極11と画素電極12との間の電位差ΔVが11Vに拡大する。すなわち、より高い感度のもとでの撮影が可能になる。この例では、第1電圧V1として第1電圧範囲の電圧を用い、第2電圧V2として第2電圧範囲の電圧を用いている。第1電圧V1および第2電圧V2の両方に第2電圧範囲の電圧を用いてもよい。ただし、第1電圧V1および第2電圧V2として第2電圧範囲の電圧を用いることは、必須ではない。
【0210】
なお、ここでは、光電変換部10に対する照度が所定の照度未満である場合に第2電圧V2がリセット電圧線36に印加され、照度が所定の照度以上である場合に相対的に低い第1電圧V1がリセット電圧線36に印加される例を説明したが、照度に対する印加電圧の関係は、この例に限定されない。光電変換部10に対する照度が所定の照度未満である場合に第1電圧V1がリセット電圧線36に印加され、照度が所定の照度以上である場合に相対的に高い第2電圧V2がリセット電圧線36に印加されるように電圧供給回路150を駆動してもよい。このとき、第1電圧V1よりも低い電圧が対向電極11に供給されてもよい。
【0211】
(第2の実施形態)
図27は、本開示の第2の実施形態によるカメラシステムの例示的な構成を概略的に示す。図27に示すカメラシステム200Dは、概略的には、撮像装置100Dと、電圧供給回路150Dとを含む。
【0212】
図1に示す撮像装置100Aと比較して、図27に示す撮像装置100Dは、各々が光電変換部10および出力回路20を有する複数の画素Pxと、各画素Pxの出力回路20に電気的に接続された検出回路130Aとを含む点で共通する。図27に例示する構成において、出力回路20および検出回路130Aは、ともに半導体基板110に形成されている。光電変換部10、出力回路20および検出回路130Aは、これらが一体とされたパッケージの形で提供され得る。
【0213】
図27に例示する構成において、電圧供給回路150Dは、例えば光電変換部10、出力回路20および検出回路130Aを含むパッケージとは別個の要素として、例えばチップまたはパッケージの形でカメラシステム200D内に配置される。例えば、電圧供給回路150Dは、画素Pxが配置される半導体基板110とは異なる基板上に形成され得る。ただし、電圧供給回路150Dが各画素Pxの対向電極11および画素電極12の一方に電気的に接続されている点は、第1の実施形態と同様である。
【0214】
カメラシステム200Dにおける動作は、第1の実施形態と同様であり得る。例えば、検出回路130Aは、各画素Pxの出力回路20から出力される信号のレベルを検出する。電圧供給回路150Dは、制御回路160からの駆動信号に基づき、検出回路130Aによって検出された出力信号のレベルが所定の電圧レベルよりも低い場合には、電圧線152に第1電圧V1を印加する。検出回路130Aによって検出された出力信号のレベルが所定の電圧レベル以上である場合には、電圧線152に、第1電圧V1よりも高い第2電圧V2を印加する。
【0215】
このように、複数の画素Pxが形成された半導体基板110、行走査回路120、検出回路130A、電圧供給回路150Dおよび制御回路160の全てが、例えばチップまたはパッケージの形で一体とされることは、必須ではない。これらの要素の一部が他のパッケージまたは基板に配置されていてもよく、そのようなカメラシステムの構成によっても
、第1の実施形態による撮像装置と同様の機能を発揮させることができる。
【0216】
図28は、本開示の第2の実施形態によるカメラシステムの他の例示的な構成を概略的に示す。図27に示すカメラシステム200Dと、図28に示すカメラシステム200Eとの間の主な相違点は、カメラシステム200Eが、撮像装置100Dに代えて撮像装置100Eを有する点である。撮像装置100Dと比較して、撮像装置100Eは、検出回路130Aに代えて検出回路130Bを有し、この例では、検出回路130Bの出力が画像処理回路164に入力されている。
【0217】
図28に例示する構成において、画像処理回路164は、検出回路130Bの出力信号を受けて、検出回路130Bからの出力信号に基づき、所定の閾値との比較を実行する。すなわち、画像処理回路164は、検出回路130Bからの入力と、例えばメモリ162に格納された閾値との比較を行うことにより、光電変換部10に入射する光量が所定の光量以上であるか否かの判定を実行する。判定結果を示すデータは、例えば電圧供給回路150Dに渡される。
【0218】
各画素Pxの出力回路20から出力された信号のレベルが所定のレベルよりも低い、換言すれば、光電変換部10に入射する光量が所定の光量よりも小さい、と判定された場合、電圧供給回路150Dは、相対的に低い第1電圧V1を電圧線152に供給する。光電変換部10に入射する光量が所定の光量以上であると判定された場合には、電圧供給回路150Dは、第2電圧V2を電圧線152に供給する。
【0219】
図28に例示するような構成によれば、電圧供給回路150Dおよび画像処理回路164が、撮像装置100Eとは別個の要素、例えば、別チップまたは別パッケージの形でカメラシステム200E内に配置されるので、使用する電圧レベルおよび/または電圧の入力タイミングの設計の自由度が向上し、より柔軟な制御が可能になる。したがって、より高い電圧の使用またはチップサイズの増大を回避し得るという利点が得られる。
【0220】
図29は、本開示の第2の実施形態によるカメラシステムのさらに他の例示的な構成を概略的に示す。図29に示すカメラシステム200Fは、概略的には、撮像装置100Fと、光量検出装置130Fとを含む。
【0221】
撮像装置100Fは、各々が光電変換部10および出力回路20を有する複数の画素Pxと、各画素Pxの光電変換部10に電気的に接続された電圧供給回路150とを含む点で図1に示す撮像装置100Aと共通する。撮像装置100Fは、出力回路20に電気的に接続された検出回路130Bをさらに含む。検出回路130Bは、各画素Pxの出力回路20から出力される信号のレベルを検出する点で上述の検出回路130Aと共通するものの、ここでは、検出回路130Bは、検出された信号のレベルと、所定の閾値との比較を実行する機能を有しておらず、主に、雑音抑圧信号処理、アナログ-デジタル変換などの機能を担う。なお、この例では、電圧供給回路150は、図1に例示する構成と同様に、対向電極11との接続を有する電圧線152に接続され、第1電圧V1および第2電圧V2を選択的に対向電極11に供給可能に構成されている。
【0222】
光量検出装置130Fは、例えば単一のチップまたはパッケージの形で提供される撮像装置100Fとは別個の要素としてカメラシステム200F内に配置される。光量検出装置130Fは、例えばフォトダイオードPDをその一部に含み、複数の画素Pxから形成される撮像領域に入射する光量を検出する。光量検出装置130Fは、例えば、フォトダイオードなどの光電変換要素と、照度センサICとを含む公知の照度センサモジュールであり得る。
【0223】
図29に例示する構成において、制御回路160は、例えば、光量検出装置130Fからの出力に基づき、撮像領域に配置された光電変換部10に入射する光量が所定の光量以上であるか否かを判定する。制御回路160は、さらに、第1の実施形態と同様に、光電変換部10に入射する光量が所定の光量以上であるか否かの判定結果に応じて、電圧供給回路150から電圧線152に第1電圧V1を供給させるか、あるいは、第2電圧V2を供給させるかを決定する。電圧供給回路150は、制御回路160からの駆動信号に基づき、例えば、光電変換部10に入射する光量が所定の光量よりも小さい場合には、電圧線152に第1電圧V1を印加する。光電変換部10に入射する光量が所定の光量以上である場合には、電圧線152に、第1電圧V1よりも高い第2電圧V2を印加する。
【0224】
図30は、光量検出装置の変形例を示す。図29を参照して説明した例と比較して、図30に示すカメラシステム200Gは、フォトダイオードPDに代えて光量検出回路138を含む光量検出装置130Gを有する。
【0225】
図30に例示する構成において、光量検出回路138は、参照線132の電圧レベルに対する、出力信号線Sの電圧レベルの比較結果を出力する比較器134を含む。すなわち、この例では、光量検出回路138は、出力回路20からの出力信号のレベルを検出し、参照線132の電圧レベルとの比較を行う。比較結果は、制御回路160に返され、制御回路160は、光量検出回路138による検出結果に基づき、光電変換部10に入射する光量が所定の光量以上であるか否かを判定する。
【0226】
このように、照度センサモジュールなどによる光量の直接的な測定に代えて、画素Pxから出力される信号のレベルの検出を通して、光電変換部10に入射する光量に関する情報を得てもよい。例えば、撮像領域に配置された複数の画素Pxの一部または全部を照度センサとして機能させてもよい。光量検出装置130Gによる、画素Pxからの出力信号の取得は、有線の方式でなされてもよいし、無線の方式でなされてもよい。
【0227】
図31は、本開示の第2の実施形態によるカメラシステムのさらに他の例示的な構成を概略的に示す。図31に示すカメラシステム200Hは、概略的には、各々が光電変換部10および出力回路20を有する複数の画素Pxを含む撮像装置100Hと、電圧供給回路150Dと、光量検出装置130Fとを含む。
【0228】
この例では、電圧供給回路150Dおよび光量検出装置130Fが、撮像装置100Hとは別個の要素として撮像装置100Hの外側に設けられている。制御回路160は、図29を参照して説明した例と同様に、光量検出装置130Fによって検出された光量に基づき、光電変換部10に入射する光量が所定の光量以上であるか否かを判定する。制御回路160は、判定結果に応じて、第1電圧V1および第2電圧V2のいずれかを電圧供給回路150Dから電圧線152に印加させる。
【0229】
光量検出装置130Fに代えて、図30に示す光量検出装置130Gを適用してもよい。すなわち、各画素Pxの出力回路20から出力される信号のレベルを得て、出力回路20からの信号のレベルと、所定の閾値との比較結果に基づき、第1電圧V1および第2電圧V2のいずれが電圧供給回路150Dから出力されるかを決定してもよい。
【0230】
(電圧切り替えのタイミングと後段における処理)
次に、電圧線152に印加する電圧の切り替えのタイミングに応じた補正処理を説明する。以下に説明するように、検出回路130A、130Bによって検出される信号レベルに対して、電圧線152に印加する電圧の切り替えのタイミングに応じた補正を適用してもよい。以下では、上述の撮像装置100Aを例にとって補正処理の具体例を説明するが、撮像装置100B、100C、カメラシステム200D~200Hに対しても同様の補
正処理を適用可能であることは言うまでもない。
【0231】
図32は、第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えのタイミングと、電圧の切り替えに伴う、検出回路130Aによって取得される信号のレベルの変化との間の関係を説明するための図である。図32中、最上段のタイミングチャートは、垂直同期信号VDのパルスの立ち上がりを示し、その下のタイミングチャートは、水平同期信号HDのパルスの立ち上がりを示す。さらにその1つ下のタイミングチャートは、電圧線152から対向電極11に印加される電圧VITOの変化を示している。
【0232】
図32中、2段目に示すタイミングチャートにおいて、あるパルスの立ち上がりから次のパルスの立ち上がりまでの期間が、1つの水平走査期間である1Hに対応する。この1H期間に、複数の画素Pxのうち、ある1つの行に属する画素Pxからの信号の読み出しが実行される。図32では、水平方向に延びる矩形により、複数の画素Pxの各行における動作を模式的に表現している。図32中、白色の矩形は、信号電荷の蓄積の期間、すなわち、露光期間を表している。網掛けの矩形は、検出回路130Aによる、出力信号線Sの電圧レベルの読み出しの期間を表している。簡単のため、ここでは、複数の画素Pxの行数が5行であるとし、第0行から第4行までの動作を模式的に図示している。図32中、R0からR4が、第0行から第5行にそれぞれ対応する。
【0233】
図32中、最下段の両矢印は、フレーム期間を模式的に示している。各フレームの開始のタイミングは、垂直同期信号VDのパルスの立ち上がりのタイミングである。図32に示す例において、電圧供給回路150は、j番目のフレーム期間の途中の時刻tcで、対向電極11に対して供給する電圧を第2電圧V2から相対的に低い第1電圧V1に切り替えている。より詳細には、j番目のフレーム期間のうち、各行の露光期間において、電圧線152に印加する電圧を第1電圧V1に切り替えている。
【0234】
図32中、ハッチングの付された矩形は、j番目のフレーム期間に含まれる露光期間のうち、対向電極11に第1電圧V1が印加されている期間を模式的に示している。図32からわかるように、ローリングシャッタの適用時、各行の露光期間中に第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えを実行すると、対向電極11に第1電圧V1が印加された状態で信号電荷の蓄積が実行される期間と、対向電極11に第2電圧V2が印加された状態で信号電荷の蓄積が実行される期間とが1フレーム期間内に混在し得ることになる。さらに、対向電極11に第1電圧V1が印加された状態で信号電荷の蓄積が実行される期間の長さと、対向電極11に第2電圧V2が印加された状態で信号電荷の蓄積が実行される期間の長さとの比は、複数の画素Pxの行ごとに異なり得る。
【0235】
そのため、図32に示すような動作のもとでは、電圧の切り替えが実行されるフレーム期間以外のフレーム期間には電圧の切り替えの影響が生じないという利点が得られる。しかしその反面、電圧の切り替えが実行されるフレーム期間に取得された画素信号に基づく画像に垂直シェーディングが生じ得る。すなわち、行ごとに明度のバラつきが生じ得る。しかしながら、電圧の切り替えに起因するこのような垂直シェーディングは、以下に説明するような処理によって補正可能である。
【0236】
画素Pxから出力される信号のレベルは、おおむね、画素Pxにおける感度と、その画素Pxに対する露光期間の長さとの積に比例する。ここで、本開示の典型的な実施形態における光電変換部10は、図4を参照して説明したように、対向電極11と画素電極12との間の電位差ΔVの変化によって光電変換効率ηが変化するような光電変換特性を有し得る。換言すれば、画素Pxにおける感度は、電圧供給回路150から電圧線152に供給される電圧に応じて変化する。電位差ΔVの変化によって各画素Pxの光電変換効率ηがどのように変化するかに関する情報は、実測などによって予め得ておくことができる。
したがって、まず、対向電極11に第1電圧V1が印加された状態で信号電荷の蓄積が実行される期間の長さT1と、その期間における画素Pxの感度S1との積を算出する。次に、対向電極11に第2電圧V2が印加された状態で信号電荷の蓄積が実行される期間の長さT2と、その期間における画素Pxの感度S2との積を算出する。そして、これらの和である(T1*S1+T2*S2)が各行で均等となるような補正係数を、例えば信号レベルを表現するデジタル値に乗じる。以上により、画像への電圧の切り替えの影響をキャンセルすることが可能である。すなわち、図32中にハッチングの付された矩形で示す期間が長くなるに従って、より大きなゲインをかければよい。
【0237】
このような補正の処理は、例えば、上述の画像処理回路164または制御回路160によって実行され得る。補正係数は、(T1*S1+T2*S2)の大きさに応じて決定され、予めメモリ162などに格納されていてもよい。
【0238】
図33は、第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えのタイミングの他の例を示す。図33中、太い斜線のハッチングが付された矩形は、リセットトランジスタ26をオンとしてノードFDから電荷を排出する、いわゆる電子シャッタのための期間を表現している。図33は、j番目のフレーム期間の信号電荷蓄積の開始前に行単位で電子シャッタを行った場合の例である。この例では、図33中に両矢印exで模式的に示すように、電子シャッタの終了から信号の読み出しの開始までの期間が、j番目のフレーム期間の露光期間に相当する。
【0239】
図33に示すように、電子シャッタの走査期間中に第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えを実行した場合も、対向電極11に第1電圧V1が印加された状態で信号電荷の蓄積が実行される期間の長さT1と、対向電極11に第2電圧V2が印加された状態で信号電荷の蓄積が実行される期間の長さT2との間の比が複数の画素Pxの行の間で異なり得る。
【0240】
しかしながら、このような動作を適用した場合も、電位差ΔVに対する光電変換効率ηの値は、既知であり、かつ、制御回路160は、電子シャッタのタイミング、第2電圧V2から第1電圧V1に切り替えたタイミングおよび信号の読み出しのタイミングに関する情報を得ることができる。したがって、図32を参照して説明した例と同様に、(T1*S1+T2*S2)が各行で均等となるような補正を適用することができ、画像中への垂直シェーディングの発生を回避し得る。
【0241】
図34は、第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えのタイミングのさらに他の例を示す。図34は、図34中に両矢印rdで模式的に示す、j番目のフレーム期間における信号の読み出しのための行走査の期間の途中に第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えを実行する動作例である。
【0242】
図34中、R4におけるハッチングの付された矩形は、j番目のフレーム期間に含まれる露光期間のうち、対向電極11に第1電圧V1が印加されている期間を模式的に示している。また、図34中、R0、R1におけるハッチングの付された矩形は、(j+1)番目のフレーム期間に含まれる露光期間のうち、対向電極11に第2電圧V2が印加されている期間を模式的に示している。図34を参照すればわかるように、あるフレーム期間における信号の読み出し期間に第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えを実行した場合、電圧の切り替えによる感度変調は、次のフレーム期間の信号電荷の蓄積にも影響を与える。この場合も、(T1*S1+T2*S2)が各行で均等となるような補正をj番目のフレーム期間と、(j+1)番目のフレーム期間とに適用することにより、画像中への垂直シェーディングの発生を回避し得る。
【0243】
図35は、電位差ΔVの制御によるグローバルシャッタを適用したときの、第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えのタイミングと、電圧の切り替えに伴う、検出回路130Aによって取得される信号のレベルの変化との間の関係を説明するための図である。図35に示す例では、(j-1)番目のフレーム期間に関する信号の読み出しの終了後から、j番目のフレーム期間に関する信号の読み出しの開始までの期間に、選択的に第2電圧V2が対向電極11に印加されている。また、j番目のフレーム期間に関する信号の読み出しの終了後から、(j+1)番目のフレーム期間に関する信号の読み出しの開始までの期間に、選択的に第1電圧V1が対向電極11に印加されている。さらに、(j+1)番目のフレーム期間に関する信号の読み出しの終了後から、(j+2)番目のフレーム期間に関する信号の読み出しの開始までの期間に、選択的に第1電圧V1が対向電極11に印加されている。その他の期間においては、電位差ΔVが実質的に0Vとなるように、対向電極11の電位が0V近傍の正の電位とされる。
【0244】
図35は、上述の特許第6202512号公報に記載されているような、電気的なグローバルシャッタを適用したときの動作例である。図35中、白色の矩形で表された期間が、信号電荷の実質的な蓄積の期間、すなわち、露光期間に相当する。この例では、(j+1)番目のフレーム期間中に、第2電圧V2から第1電圧V1への切り替えが実行されているといえるが、対向電極11の電位が0V近傍の電位とされている期間には実質的に信号電荷の蓄積が生じないので、対向電極11に印加する電圧の切り替えに起因する垂直シェーディングの発生はない。したがって、上述の補正処理は、不要である。このように、撮像装置の動作モードによっては、補正処理が不要となる。そのため、上述の補正処理があらゆる場合に適用される必要はなく、必要に応じて実行されればよい。第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えに応じた補正処理を実行するか否かを、撮像装置の動作モードまたはユーザの指令などに基づき切り替えられるようにしておいてもよい。
【0245】
また、十分に高いフレームレートのもとで撮影を実行する場合にも、(T1*S1+T2*S2)が各行で均等となるような補正を省略し得る。図36は、第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えのタイミングと、撮像装置100Aからの出力との間の関係の一例を説明するための図である。図36中、電圧VITOの変化を示すチャートの下側に描かれた矩形は、検出回路130Aによって検出された信号レベルに基づく画像データの有効および無効を模式的に示す。
【0246】
図32を参照して説明した例と同様に、図36に示す例では、j番目のフレーム期間の各行の露光期間中に第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えを実行している。そのため、補正処理を行わない場合には、j番目のフレーム期間に取得された画素信号に基づく画像に、電圧の切り替えに起因する垂直シェーディングが生じ得る。
【0247】
しかしながら、フレームレートが十分に高い場合には、図36に模式的に示すように、電圧の切り替えに起因する垂直シェーディングの発生する可能性のあるフレーム期間、つまりこの例ではj番目のフレーム期間に取得された画素信号を無効なデータとして破棄したとしても、その影響は小さいといえる。このように、フレームレートが十分に高い場合には、垂直シェーディングの発生する可能性のあるフレーム期間に取得された画素信号を無効なデータとして破棄し、他のフレーム期間に取得された画素信号を有効なデータとして選択的に取得してもよい。本明細書では、垂直シェーディングの発生する可能性のあるフレーム期間に取得された画素信号を無効なデータとして破棄する処理をマスク処理と呼ぶ。このようなマスク処理は、(T1*S1+T2*S2)が各行で均等となるような補正を実行する回路を実装するための領域の確保が難しい場合にも有効である。
【0248】
図37は、信号の読み出しのための行走査の期間の途中に第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えを実行した場合におけるマスク処理の適用例を示す。図34を参照して
説明したように、あるフレーム期間における信号の読み出し期間に第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えを実行した場合、電圧の切り替えによる感度変調は、次のフレーム期間の信号電荷の蓄積にも影響を与える。したがって、j番目の信号の読み出しのための行走査の期間の途中に第1電圧V1と第2電圧V2との間の切り替えを実行した場合には、図37に模式的に示すように、j番目のフレーム期間に取得された画素信号および(j+1)番目のフレーム期間に取得された画素信号を無効なデータとしてマスク処理の対象としてもよい。
【0249】
上述のマスク処理は、必要に応じて実行されればよく、マスク処理を実行するか否かを切り替え可能であると有益である。マスク処理は、例えば制御回路160に配置されたロジック回路、または、画像処理回路164などによって実行され得る。検出回路130A中のアナログ-デジタル変換回路などによってデータの選別が実行されてもよい。
【0250】
(自動露光設定における、検出された露光量の電位差ΔVへの反映)
上述の電圧供給回路150、150D、154が対向電極11または画素電極12に供給可能な電圧が、第1電圧V1および第2電圧V2の二値に制限される必要はない。電圧供給回路150、150D、154は、三値以上の電圧のいずれかを例えば撮影時の環境に応じて選択的に電圧線152に印加可能に構成されていてもよい。例えば、以下に説明するように、電圧供給回路150、150Dまたは154が、露光量、換言すれば、光電変換部10に対する照度に応じて、三値以上の電圧を切り替えて電圧線152に印加するように構成されてもよい。
【0251】
図38は、本開示の実施形態による撮像装置およびカメラシステムに適用可能な、自動露光設定における処理シーケンスの一例を説明するための図である。図38に示すグラフは、フレーム期間ごとの露光量の変化の例を示している。
【0252】
図38の縦軸に示す露光量は、例えば、以下のようにして算出可能である。図39に模式的に示すように、複数の画素Pxの光電変換部10を含む領域を撮像領域Rmとし、撮像領域Rmのうち1以上の画素Pxの光電変換部10を含む任意の領域を検出領域Rdとする。このとき、図38の縦軸に示す露光量は、検出領域Rdに位置する画素Pxの出力回路20からの信号のレベルをフレーム期間ごとに検出することによって算出可能である。例えば、検出領域Rdに位置する画素Pxの出力回路20からの信号のレベルの平均値を露光量に対応させることができる。検出回路130Aまたは130Bによって信号レベルを検出することに代えて、光量検出装置130Fまたは130Gなどによってフレーム期間ごとの露光量を見積もってもよい。
【0253】
図40は、検出された露光量に応じて、電圧供給回路から出力される電圧を変更させる処理の一例を示す。図40は、フレーム期間ごとの露光量の変化のグラフと、電圧線152から対向電極11に印加される電圧VITOの変化を示すグラフとをあわせて1つの図に示している。図40の上段に示すグラフは、図38に示すグラフと同じである。図40に示す例では、あるフレーム期間において所定の閾値Ex1を超える露光量が検出された場合に、電圧供給回路150から出力される電圧を、より高い電圧に切り替えている。
【0254】
図40に示す例において、例えば3番目のフレーム期間に注目すると、取得された露光量がある値Ex1を上回っている。そのため、電圧供給回路150は、電圧線152に供給する電圧を、第1電圧V1より高い第3電圧V3に切り替えている。したがって、次の4番目のフレーム期間では、相対的に高い第3電圧V3が対向電極11に印加された状態で信号電荷の蓄積が実行される。光電変換部10が例えば図4に示すような光電変換特性を有する場合には、光電変換部10に印加される電圧の上昇に伴い、画素Pxの感度が増大する。
【0255】
なお、この例では、4番目のフレーム期間に取得された露光量がまだ閾値Ex1を上回っている。したがって、電圧供給回路150は、電圧線152に供給する電圧をさらに上昇させ、光電変換部10に第4電圧V4を印加する。5番目のフレーム期間に取得された露光量がまだ閾値Ex1を上回る場合には、図40に示すように、電圧供給回路150は、さらに高い第5電圧V5を電圧線152に印加する。この例では6番目のフレーム期間に取得された露光量が閾値Ex1以下であるので、7番目のフレーム期間では、対向電極11に印加される電圧は、第5電圧V5のままである。上述の第2電圧V2は、第1電圧V1よりも高い第3電圧V3~第5電圧V5のいずれかであり得る。
【0256】
このように、1つ前のフレーム期間に取得された露光量の多寡が次のフレーム期間における光電変換効率に反映されるように、電圧供給回路150から出力される電圧を多段階または連続的に切り替えてもよい。さらに、あるフレーム期間において所定の閾値Ex2未満の露光量が検出された場合に、電圧供給回路150から出力される電圧を、より低い電圧に切り替えているような処理を実行してもよい。
【0257】
図41は、電圧供給回路から出力される電圧を検出された露光量に応じて変更させる処理の他の一例を示す。図40と同様に、図41においても、フレーム期間ごとの露光量の変化のグラフと、電圧線152から対向電極11に印加される電圧VITOの変化を示すグラフとがあわせて1つの図に示されている。
【0258】
図41に示す例では、あるフレーム期間において所定の閾値Ex2を下回る露光量が検出された場合に、電圧供給回路150から出力される電圧を、より低い電圧に切り替えている。図41に示す例において、例えば3番目のフレーム期間に取得された露光量は、ある値Ex2未満である。そのため、電圧供給回路150は、電圧線152に供給する電圧を、第5電圧V5から第4電圧V4に低下させている。4番目のフレーム期間に取得された露光量も閾値Ex2を下回っているので、電圧供給回路150は、電圧線152に供給する電圧を、より低い第3電圧V3に変更する。5番目のフレーム期間に取得された露光量も閾値Ex2を下回る場合には、電圧供給回路150は、さらに低い第1電圧V1を電圧線152に印加する。この例では6番目のフレーム期間に取得された露光量が閾値Ex2と閾値Ex1との間にあるので、7番目のフレーム期間では、対向電極11に第1電圧V1が印加される。
【0259】
このように、電圧供給回路150から出力される電圧をより低い電圧に切り替えるための判定基準となる別の閾値Ex2を設けておいてもよい。閾値Ex2は、閾値Ex1以下であってもよい。なお、図38図41に示す例では、直前のフレーム期間に取得された露光量と閾値との比較結果に応じて次のフレーム期間に対向電極11または画素電極12に印加する電圧を決定しているが、2以上の比較結果に基づいて、対向電極11または画素電極12に印加する電圧を決定してもよい。
【0260】
図42は、電圧供給回路から出力される電圧を検出された露光量に応じて変更させる処理のさらに他の一例を示す。図42は、1つ前のフレーム期間に取得された露光量が閾値Ex1を超えることが2回連続した場合に、電圧供給回路150から出力される電圧を、より高い電圧に切り替えている。
【0261】
例えば3番目のフレーム期間に注目すると、取得された露光量が閾値Ex1を上回っている。この時点では、電圧供給回路150から出力される電圧の切り替えを実行しない。この例では、4番目のフレーム期間に取得された露光量は、閾値Ex1を上回っていない。そのため、電圧供給回路150から出力される電圧は、第1電圧V1のままとされる。
【0262】
次に露光量が閾値Ex1を超えるのは、7番目のフレーム期間である。この時点においても、電圧供給回路150から出力される電圧の切り替えを実行しない。この例では、続く8番目~10番目のフレーム期間に取得された露光量は、いずれも閾値Ex1を超えている。したがって、8番目のフレーム期間における露光量の取得後、9番目のフレーム期間における露光量の取得後および10番目のフレーム期間における露光量の取得後に、電圧供給回路150から出力される電圧が順次に上昇される。
【0263】
このように、1つ前のフレーム期間に取得された露光量が閾値を超えるか、または、閾値を下回ることが複数回連続した場合に、電圧供給回路150から出力される電圧を、より高い電圧、または、より低い電圧に切り替えてもよい。このような処理によれば、電力消費を抑えながら、例えば、カメラのストロボを焚いたとき、周期的に明滅を繰り返す光源のもとで撮影を行ったときなどに、信号電荷のオーバーフローを生じさせてしまう可能性を低減し得る。
【0264】
(光電変換部10に印加する電圧に応じたリニアリティの補正)
図43は、露光量の増加に対する検出回路130Aの出力の変化の例を模式的に示す。図43中、実線L1は、第2電圧範囲にある電圧を対向電極11に印加している場合に得られる、一定照度のもとでの露光期間の増大、すなわち、露光量の増加に対する検出回路130Aの出力の例示的な変化を示す。破線L2は、第2電圧範囲内、かつ、より低い電圧を対向電極11に印加している場合に得られる出力の変化を示している。なお、図43中、破線L3は、第1電圧範囲にある電圧を対向電極11に印加している場合に得られる、露光量の増加に対する検出回路130Aの出力の例示的な変化を示す。
【0265】
図12を参照して説明したように、対向電極11と画素電極12との間に印加される電位差ΔVの変化に対する光電変換層13における光電変換効率ηの変化は、直線状にならないことがある。そのため、対向電極11または画素電極12に印加する電圧の大きさによっては、露光期間の増加に対して検出回路130Aの出力が比例的に増加しないことがあり得る。特に、電位差ΔVが小さいと、このような傾向が現れやすい。図43に示す例では、対向電極11または画素電極12に印加する電圧が比較的に大きい場合に対応する、実線L1によって示されるグラフは、直線状である。対向電極11または画素電極12に印加する電圧が相対的に小さい場合に対応する、破線L2、L3によって示されるグラフは、露光量が増加するにつれて直線からの外れが拡大している。
【0266】
そこで、例えば、検出回路130Aからの出力を補正することにより、露光期間の増加に対する検出回路130Aの出力の直線からのずれを補正してもよい。図44は、リニアリティ補償処理の概要を模式的に示す。例えば、電圧供給回路150から出力可能な電圧値ごとに、検出回路130Aからの出力を適当なデジタル値に変換するためのテーブルを用意してもよい。
【0267】
この例では、電圧供給回路150から出力可能な電圧に対応した3つの補正テーブル1~3がメモリ162に保持されている。例えば、制御回路160は、検出回路130Aからの例えばアナログ-デジタル変換後の出力を受け取り、電圧供給回路150から光電変換部10に対して印加されている電圧の具体的な値に応じて補正テーブルを適用する。図44中のセレクタ165は、電圧供給回路150から光電変換部10に供給されている電圧の値に応じて、補正テーブル1~3のいずれを適用するか、あるいは、補正テーブルを適用しないかを選択する回路である。補正後の出力は、画像処理回路164に渡され、例えばガンマ処理などが施される。
【0268】
図45は、補正テーブルの一例を示す。図45に示す補正テーブルでは、検出回路130Aからの出力であるデジタル値ごとの、リニアリティ補償後のデジタル値が記述されて
いる。例えば検出回路130Aからセンサ出力としてNが入力されると、制御回路160は、Xを画像処理回路164に出力する。なお、図43のグラフL1のように、電圧供給回路150から光電変換部10に印加する電圧として、リニアリティの補償が不要な電圧が選択されている場合には、検出回路130Aからセンサ出力は、そのまま画像処理回路164に渡される。
【0269】
このようなリニアリティ補償処理の適用により、図43に示すように、グラフL2で示される特性を、図43中に実線の直線A2で示すように補正し、グラフL3で示される特性を、実線の直線A3で示すように補正し得る。リニアリティ補償処理は、画像処理回路164によって実行されてもよい。ガンマ補正前の出力に対するテーブルを用意することに代えて、直線からのずれを考慮したγの値を用いてガンマ補正を実行してもよい。あるいは、テーブルによるデジタル値の変換に代えて、検出回路130Aからのセンサ出力に適当な係数を乗じることにより、リニアリティを補償してもよい。
【0270】
なお、上述したようなリニアリティのずれは、撮像装置ごと、または、カメラシステムごとに異なり得る。図46は、撮像装置ごと、または、カメラシステムごとのリニアリティのずれの相違を説明するための図である。図46中、破線M1は、ある撮像装置に関する、露光量の増加に対する検出回路130Aの出力の例示的な変化を示し、破線M2は、他のある撮像装置に関する、露光量の増加に対する検出回路130Aの出力の例示的な変化を示す。これらの撮像装置の間で、露光量の増加に対する検出回路130Aの出力が、例えば図46に直線M12で示すように一致していると有益である。
【0271】
図47は、撮像装置ごと、または、カメラシステムごとの相違をキャンセルするリニアリティ補償処理の概要を模式的に示す。例えばサンプル1の撮像装置と、サンプル2の撮像装置とがある場合、テスタなどを用いて、サンプル1、2のそれぞれについて図4に示すような光電変換特性に関するデータを予め取得しておく。さらに、取得したデータに基づいてサンプルごとの補正値を算出し、例えばテーブルの形で補正値をメモリ162に格納する。図47は、例えばサンプル1におけるリニアリティ補償処理の概要を示しており、サンプル1の撮像装置のメモリ162には、電圧供給回路150から出力可能な電圧値ごとに、検出回路130Aからの出力を適当なデジタル値に変換するための補正テーブル11~13が書き込まれる。なお、メモリ162は、典型的には不揮発性メモリである。
【0272】
図48は、サンプル1の撮像装置のメモリ162に格納される補正テーブルの一例を示し、図49は、サンプル2の撮像装置のメモリ162に格納される補正テーブルの一例を示す。このような補正テーブルを適用した場合、例えば検出回路130Aからのセンサ出力Nに対して、サンプル1の撮像装置の制御回路160からはデジタル値Xが出力されることに対し、サンプル2の撮像装置の制御回路160からはデジタル値Yが出力される。このような、撮像装置ごと、または、カメラシステムごとに適応されたリニアリティ補償処理の適用により、図46の例に示すように、撮像装置ごと、または、カメラシステムごとの個体差による光電変換特性の差異の影響をキャンセルし得る。
【0273】
上述したように、光電変換特性に関するデータに基づいて算出される補正値は、電圧供給回路150から出力可能な電圧値ごとに用意され得る。ただし、予め想定されていた露光時間を超えて露光が実行されたり、電圧供給回路150から出力される電圧に、予め想定されていなかった電圧が含まれたりすることもあり得る。
【0274】
図50は、メモリ162に格納される補正テーブルの他の一例を示し、図51は、図50の補正テーブルに記述された出力値のプロットを示す。図51中、白丸は、電圧供給回路150から光電変換部10に電圧Vaが印加されているときに適用される補正値に関するプロットを示し、白い三角は、電圧供給回路150から光電変換部10に電圧Vbが印
加されているときに適用される補正値に関するプロットを示す。また、白い矩形は、電圧供給回路150から光電変換部10に電圧Vcが印加されているときに適用される補正値に関するプロットを示す。
【0275】
例えば図50の補正テーブルにおいてP13の値が予め得られていなかった場合には、例えば補正値P11と補正値P12とから、線形補間によってP13の値を算出し得る。また、例えば、予め想定されていなかった電圧を電圧供給回路150から電圧線152に印加させる場合には、補正テーブルに記述されている離散値から、露光量の増加に対して検出回路130Aの出力の特性を示す直線を算出し得る。図51に例示するように、直線Ptを表すパラメタを算出しておけば、例えば、t2およびt3の間の露光量かつVbおよびVcの間の電圧が光電変換部10に印加されているときの補正値を事後的に算出してリニアリティの補償に適用し得る。
【0276】
図52は、補間処理を含むリニアリティ補償処理の概要を模式的に示す。図52に例示するように、制御回路160は、このような線形補間を実行する補間処理回路166をその一部に含み得る。
【産業上の利用可能性】
【0277】
本開示の実施形態は、光検出装置、イメージセンサなどに適用可能であり、例えば、本開示の撮像装置またはカメラシステムを、デジタル一眼レフカメラ、デジタルミラーレス一眼カメラなどのデジタルスチルカメラまたはデジタルビデオカメラに用い得る。あるいは、例えば放送用途の業務用カメラ、医療用カメラまたは監視用カメラなどを含む種々のカメラシステムまたはセンサシステムに利用可能である。光電変換層の材料を適切に選択することにより、赤外線を利用した画像の取得も可能である。赤外線を利用した撮像を行う撮像装置は、例えば、セキュリティカメラ、車両に搭載されて使用されるカメラなどに用いることができる。車両搭載用カメラは、例えば、車両が安全に走行するための、制御装置に対する入力として利用され得る。あるいは、車両が安全に走行するための、オペレータの支援に利用され得る。
【符号の説明】
【0278】
10 光電変換部
11 対向電極
12 画素電極
13 光電変換層
15 第3電極
20、20A~20D 出力回路
22、22a 信号検出トランジスタ
24、24a アドレストランジスタ
26 リセットトランジスタ
28 帯域制御トランジスタ
32 電源線
36 リセット電圧線
100A~100F、100H 撮像装置
110 半導体基板
111~115 不純物領域
120 行走査回路
130A、130B 検出回路
130F、130G 光量検出装置
132 参照線
134 比較器
138 光量検出回路
150、150D、154 電圧供給回路
152 電圧線
160 制御回路
162 メモリ
164 画像処理回路
166 補間処理回路
200D~200H カメラシステム
241~243 容量素子
225 減衰器
Px、Px1、Px2 画素
出力信号線
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52