(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186915
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/27 20060101AFI20221208BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20221208BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20221208BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20221208BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20221208BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20221208BHJP
A61K 8/895 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A61K8/27
A61Q17/04
A61K8/06
A61K8/29
A61K8/81
A61K8/73
A61K8/895
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171161
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2018049011の分割
【原出願日】2018-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】田家 みなみ
(72)【発明者】
【氏名】力丸 あゆみ
(57)【要約】
【課題】有機紫外線吸収剤を含まない日焼け止め化粧料であって、疎水化処理金属酸化物の粉末を含有し、高い紫外線防御能を有し、使用後に洗浄するに際して、高い洗浄性と洗浄後の肌の保湿性を有する油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】有機紫外線吸収剤を含まない日焼け止め化粧料であって、以下の(A)~(C)を含有する油中水型乳化日焼け止め化粧料。
(A)疎水化処理微粒子酸化亜鉛および疎水化処理微粒子酸化チタン
(B)水溶性高分子化合物
(C)体積平均粒子径が1μm以上の球状粉体
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機紫外線吸収剤を含まない日焼け止め化粧料であって、以下の(A)~(C)を含有する油中水型乳化日焼け止め化粧料。
(A)疎水化処理微粒子酸化亜鉛及び疎水化処理微粒子酸化チタン
(B)水溶性高分子化合物
(C)体積平均粒子径が1μm以上の球状粉体
【請求項2】
(B)が、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、キサンタンガム、カンテン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、シロキクラゲ多糖体、ヒアルロン酸ナトリウムから選択される1以上の物質である請求項1に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項3】
(C)が(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、シリカ、ポリメタクリル酸メチルから選択される1以上の物質で形成された球状粉体である請求項1又は2に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項4】
(C)の球状粉体の体積平均粒子径が2~30μmである請求項1又は2に記載の日焼け止め化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め化粧料は、高いSPF(Sun Protection Factor)効果を得るため、金属酸化物の微粉末を配合する。この金属酸化物が、強い紫外線遮蔽効果を有することは公知である。近年金属酸化物からなる紫外線散乱剤や紫外線吸収剤を日焼け止め化粧料に大量に配合する傾向がある。また紫外線吸収のために有機紫外線吸収剤が配合される。この有機紫外線吸収剤としては、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸オクチル、サリチル酸トリエタノールアミン等のサリチル酸系;パラアミノ安息香酸、エチルジヒドロキシプロピルパラアミノ安息香酸、グリセリルパラアミノ安息香酸、オクチルジメチルパラアミノ安息香酸、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2-エチルへキシル等のPABA系;4-(2-β-グルコピラノシロキシ)プロポキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-硫酸、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2、2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-N-オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル(別名;パラメトキシケイ皮酸オクチル)、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、2,5-ジイソプロピルケイ皮酸メチル、2,4,6-トリス[4-(2-エチルへキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、トリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、p-メトキシハイドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩等のケイ皮酸系;2-フェニル-ベンズイミダゾール-5-硫酸、4-イソプロピルジベンゾイルメタン、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン等のベンゾイルメタン系;2-シアノ-3,3-ジフェニルプロパン-2-エン酸2-エチルヘキシルエステル(別名;オクトクリレン)、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルへキシル、1-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-1,3-ペンタンジオン、シノキサート、メチル-O-アミノベンゾエート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、3-(4-メチルベンジリデン)カンフル、オクチルトリアゾン、4-(3,4-ジメトキシフェニルメチレン)-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、これらの高分子誘導体、及びシラン誘導体等が挙げられる。しかしこれらの有機紫外線吸収剤が原因となる皮膚障害が発生したという多くの報告があるため、近年皮膚に与える影響を考慮して有機紫外線吸収剤を配合しない油中水型乳化日焼け止め化粧料が増加している。
有機紫外線吸収剤を配合せずに、金属酸化物(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム)のみを紫外線遮蔽剤として配合することで高い紫外線防御能を有する日焼け止め化粧料を得ようとすると必然的に、金属酸化物の配合量がさらに増加する。また、1種類の金属酸化物のみで高い紫外線防御能を得るにはさらに大量に配合することが必要になるので、酸化チタンと酸化亜鉛などの2種類以上を併用して、効率的に紫外線防御能を得ることが多い。
しかし、微粒子金属酸化物を大量に配合した場合、その配合量が増加すればする程、塗布後の白浮きと呼ばれる欠点が出現する。
【0003】
また金属酸化物を油中水型乳化日焼け止め化粧料に配合する場合には、油相での分散性を上げるため疎水化処理した疎水化処理微粒子金属酸化物が配合されることが多い。その場合、塗布後洗浄しようとすると撥水性の高さから皮膚上に微粒子金属酸化物が残存し、洗浄除去しにくいという欠点が出現する。
【0004】
このような欠点に対して、特許文献1には、有機紫外線吸収剤を含まない油中水型乳化日焼け止め化粧料として、(a)疎水化処理酸化亜鉛及び疎水化処理酸化チタン:10~30質量%、(b)親油性非イオン界面活性剤:0.5~5質量%、(c)N-ラウロイルL-グルタミンジ(フィトステリル、2-オクチルドデシル)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、マカデミアナッツ脂肪酸コレステリルからなる群から選択される1種又は2種以上の油分:1~5質量%、(d)揮発性シリコーン油及び/又は炭化水素油:10~40質量%、(e)水:5~30質量%を含有する、油中水型乳化化粧料が開示されている。
【0005】
特許文献2には、有機紫外線吸収剤を含まない水中油型乳化日焼け止め化粧料として、(A)オクチルトリエトキシシラン及び/又はジメチルポリシロキサンで疎水化処理した酸化亜鉛及び/又は疎水化処理した酸化チタン、(B)液状高級脂肪酸、(C)カルボキシル基を構造中に有するシリコーン又は糖エステル、(D)非イオン性界面活性剤、(E)カルボキシメチルセルロースナトリウム、(F)水を配合する化粧料が開示されている。これらの化粧料はいずれも好ましい紫外線遮蔽効果と、水中油型という乳化タイプの特性により洗浄除去しやすい特徴を有している。
しかし疎水化処理酸化亜鉛や酸化チタンを配合すると、皮膚に対して乾燥感を与えてしまうことがあるという欠点も指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-43875号公報
【特許文献2】特開2013-091625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、有機紫外線吸収剤を含まない油中水型乳化日焼け止め化粧料において、疎水化処理金属酸化物の粉末を配合した場合のその撥水性に因る洗浄除去の困難性を改善し、さらに乾燥感を感じやすい金属酸化物を配合するにも関わらず皮膚に対する保湿性を付与するという異なる効果を有する好ましい処方を見いだし本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は、有機紫外線吸収剤を含まない日焼け止め化粧料であって、疎水化
処理金属酸化物の粉末を含有し、高い紫外線防御能と肌の保湿性を有し、使用後に洗浄する際、高い洗浄性を有する油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)有機紫外線吸収剤を含まない日焼け止め化粧料であって、以下の(A)~(C)を含有する油中水型乳化日焼け止め化粧料。
(A)疎水化処理微粒子酸化亜鉛及び疎水化処理微粒子酸化チタン
(B)水溶性高分子化合物
(C)体積平均粒子径が1μm以上の球状粉体
(2)(B)が、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、キサンタンガム、カンテン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、シロキクラゲ多糖体、ヒアルロン酸ナトリウムから選択される1以上の物質である(1)に記載の日焼け止め化粧料。
(3)(C)が(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、シ
リカ、ポリメタクリル酸メチルから選択される1以上の物質で形成された球状粉体である
(1)又は(2)に記載の日焼け止め化粧料。
(4)(C)の球状粉体の体積平均粒子径が2~30μmである(1)~(3)のいずれかに記載の日焼け止め化粧料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の日焼け止め化粧料は、高い紫外線防御能と保湿性を有し、洗浄時には高い洗浄性を有している。さらに、本発明の日焼け止め化粧料は、有機紫外線吸収剤を含まないため、このような化学物質が原因で発症する皮膚アレルギーやアトピー性皮膚炎を起こしやすい者であっても、安全に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、有機紫外線吸収剤を含まない日焼け止め化粧料であって、(A)疎水化処理微粒子酸化亜鉛及び疎水化処理微粒子酸化チタン、(B)水溶性高分子化合物、(C)体積平均粒子径が1μm以上の球状粉体を含有する油中水型乳化日焼け止め化粧料に係る発明である。
本発明の構成成分(配合成分)について説明する。
(A)成分:疎水化処理微粒子酸化チタン及び疎水化処理微粒子酸化亜鉛
疎水化処理金属酸化物は、亜鉛、チタン、アルミ、鉄、セリウムなどの金属原子の酸化物の粉体にシリコーンオイル、脂肪酸、アルキルシランなどにより表面処理を行い、水への溶出を低減したものがあるが、本発明においては、疎水化処理微粒子酸化チタン及び疎水化処理微粒子酸化亜鉛を用いる。
疎水化処理された当該粉末は、油中水型乳化日焼け止め化粧料の油中に分散して存在することになる。疎水化処理剤の種類としては制限されないが、例えば、脂肪酸、高級脂肪酸、高級アルコール、炭化水素、トリグリセライド、エステル、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、フッ素化合物、アシルアミノ酸などが挙げられる。
本発明に使用する微粒子酸化亜鉛の疎水化処理剤は、アルキルトリエトキシシラン、アルキルトリメトキシシラン、パーフルオロアルキルリン酸、(アクリル酸アルキル/ジメチルシリコーン)コポリマー、パルミチン酸デキストリン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、メチコン、ジメチコン、高分子シリコーン、アクリロイルジメチルタウレートナトリウム/メタクリルアミドラウリル酸コポリマー、ハイドロゲンジメチコン、アシルグルタミン酸などが挙げられる。
また、微粒子酸化チタンの場合には、アルキルトリエトキシシラン、アルキルトリメトキシシラン、パーフルオロアルキルリン酸、(アクリル酸アルキル/ジメチルシリコーン)コポリマー、パルミチン酸デキストリン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、メチコン、ジメチコン、高分子シリコーン、アクリロイルジメチルタウレートナトリウム/メタクリルアミドラウリル酸コポリマー、ハイドロゲンジメチコン、アシルグルタミン酸などが挙げられる。
疎水化処理の方法は特に限定されず常法に従って表面処理される。例えば、オクチルトリエトキシシラン又はジメチルポリシロキサン、ハイドロゲンジメチコン中で酸化亜鉛を、一定時間、混合撹拌し、これをろ過することによって、疎水化処理した酸化亜鉛を製造することができる。疎水化処理した酸化チタンも同様の方法により製造することができる。
【0011】
疎水化処理酸化亜鉛及び疎水化処理酸化チタンの配合量は、両者の合計で、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、5~45質量%であり、好ましくは、10~35質量%、特に好ましくは、20~26質量%である。なお配合量は、目標とするSPF値によって適宜増減することができる。
疎水化処理酸化亜鉛及び疎水化処理酸化チタンの粒子径は、微粒子化されているものが
好ましく、1次粒子の平均粒子径が0.001~0.3μmであるものが特に好ましい。
【0012】
疎水化処理された金属酸化物粉末は、本発明の化粧料を調製する目的で、化粧料に配合されるシリコーンなどの油剤と予め混合して用いると化粧料として調製する際の分散を容易に行うことができる。このような油剤に分散させた化粧料調製用の混合物を用いることが、本発明の実施に当たっては好ましい。
市販の疎水化処理微粒子酸化亜鉛を含む原料としては、ハイドロゲンジメチコン疎水化処理微粒子酸化亜鉛をトコフェロール、シクロペンタシロキサン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンに分散させた「LZ-021」(テイカ株式会社)を例示できる。
市販の疎水化処理微粒子酸化チタンを含む原料としては、ハイドロゲンジメチコン、ジメチコン、水酸化Al、含水シリカで疎水化処理した微粒子酸化チタンを、シクロペンタシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸に分散させた「FLT-01」(テイカ株式会社)、あるいはハイドロゲンジメチコン、水酸化Al、シリカで疎水化処理した酸化チタンをシクロペンタシロキサン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンに分散させた「コスメサーブWP-40TSF」(大日本化成株式会社)を例示できる。これらの原料はいずれも油性原料として本発明の日焼け止め化粧料の調製に当たって使用可能である。
【0013】
(B)成分:水溶性高分子化合物
本発明に用いる水溶性高分子物質としては、糖類やアミノ酸、アクリル酸等が重合したもの、またはその誘導体等の有機物系高分子物質や、コロイド性含水ケイ酸アルミニウムなど無機物系高分子物質をいう。これらの物質は、いずれも水に水和し粘性を示すものであれば本発明に使用可能である。このような物質として、本発明に使用する代表的な物質としては、1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。様々な剤形への応用のしやすさから、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリルアミド、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、ポリアクリレート-13、シロキクラゲ多糖体及びヒアルロン酸又はそのアルカリ金属塩から選択される1種又は2種以上を使用する。(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、キサンタンガム、カンテン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウム、シロキクラゲ多糖体から選択される1種又は2種以上が好ましく、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、キサンタンガム、カンテン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、シロキクラゲ多糖体から選択される1種又は2種以上が特に好ましい。
水溶性高分子化合物を本発明の化粧料に配合する場合は、合計で、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、0.01~2質量%であり、好ましくは、0.02~1質量%、特に好ましくは、0.05~0.2質量%である。
【0014】
(C)成分:球状粉体
本発明に配合する球状粉体とは粉体を構成する粒子が球状を呈するものをいう。
球状とは、真球、略球状、回転楕円体を含み、表面に凹凸があっても、粒子の全体形状が球状と判断できるものであれば、本発明でいう「球状」に該当する。また本発明の球状粒子とは、真球に限定するものではなく、球状粉体を構成する粒子の短径/長径の比、すなわち楕円率が、1.5以下のものが好ましく、1.2以下のものがより好ましく、1.1以下のものがさらに好ましい。
球状粉体を構成する粒子材質としては、シリカ、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム等の無機粉体、結晶セルロース、ナイロンパウダー、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(メチルエステル、エチルエステル)等の有機粉体、シロキサン結合が三次元的に伸びた網状構造をなし、ケイ素原子1個にメチル基が結合した無機と有機との中間的構造を有するポリメチルシルセスキオキサン粉末等が挙げられる。
本発明にあっては、球状粉体の粒子を構成する成分は、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、シリカ、ポリメタクリル酸メチルが好ましく、特に好ましくは(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマーである。また球状粉体を構成する粒子の体積平均粒子径は、1μm以上の必要がある。好ましくは2~30μmである。
球状粉体の配合量は、0.01~15質量%、好ましくは0.1~10質量%、特に好ましくは0.5~7質量%である。
【0015】
(D)その他配合成分
本発明の日焼け止め化粧料には、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、その他の成分を配合することができる。このような成分としては、水、高級アルコール類、脂肪酸類、エステル類、ステロール類、ステロール脂肪酸エステル類、炭化水素類、油脂類、シリコーンオイル、保湿剤、界面活性剤、水溶性高分子、植物エキス、ビタミン類、酸化防止剤、防菌防腐剤、消炎剤、昆虫忌避剤、生理活性成分、塩類、キレート剤、中和剤、pH調整剤、香料等を配合することが可能である。
【0016】
本発明の日焼け止め化粧料の製造は、油相成分及び水相成分をそれぞれ混合溶解させた後、ホモミキサーなどの撹拌混合装置を用いて、撹拌しながら乳化混合することで容易に調整することができる。
【実施例0017】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1~16>
下記表1に実施例1~16の配合組成を示した。なお、(A)成分は、化粧品用として販売されている疎水化処理微粒子金属酸化物分散物を用いたため、表中の表示は疎水化処理金属酸化物と分散溶媒に分けて表示した。なお、日焼け止め化粧料のSPFは、50以上になるように配合成分を調整している。表中に記載の(C)成分の粒子径は体積平均粒子径である。
【0018】
<評価試験方法>
得られた日焼け止め化粧料の洗浄性評価
上腕内側部の皮膚上に日焼け止め化粧料を0.03g滴下し、3cm×3cmに塗り広げ、ボディシャンプーを泡立てた上で手の平で数回擦り、15℃~25℃の水で洗浄する。その後、軽く水気を拭き取り10分間乾燥させる。乾燥後、目視にて素肌との白さの違い、さらに指で触って感じるきしみ感から塗膜状態を確認し、白く残っている部分が少ない、またはきしみ感が少ないほど洗浄性が高いと評価した。
○:洗浄性が高い。
△:洗浄前後で塗膜状態に変化があるものの、洗浄性がやや低い。
×:洗浄前後で塗膜状態の変化が少なく、洗浄性が低い。
【0019】
保湿性の評価
・官能評価
上腕内側部の皮膚上に日焼け止め化粧料を0.03g滴下し、3cm×3cmに塗り広げ、15分後に塗布している部位を指で触って、粉っぽさの無さやしっとり感から得られる保湿性を官能評価した。
○:粉っぽさを感じず、しっとり感が得られ保湿性が高い。
△:粉っぽさが若干感じられるが、しっとり感があり保湿性がある。
×:粉っぽさが感じられ、しっとり感も感じにくいので、保湿性が低い。
洗浄性評価及び保湿性評価の結果は、表1の最下段に示した。
【0020】
【0021】
実施例1~16の全ての組成で、洗浄性及び保湿性が好ましいとの評価結果を得た。
【0022】
<比較例1~6>
下記表2に比較例1~6の配合組成を示した。なお、比較例1~3は(B)成分の水溶性高分子化合物を配合しない組成、比較例4は(C)成分の球状粉体を配合しない組成、比較例5は(B)(C)成分を配合しない組成、比較例6は平均粒子径が0.5μmの球状粉体を配合した組成である。(A)成分は、化粧品用として販売されている疎水化処理微粒子金属酸化物分散物を用いたため、表中の表示は疎水化処理金属酸化物と分散溶媒に分けて表示した。なお、日焼け止め化粧料のSPFは、実施例と同様に50以上になるように配合成分を調整している。
【0023】
<評価試験方法>
実施例と同様に洗浄性と保湿性を評価した。
評価結果は表2の最下段に示した。
【0024】
【0025】
表2に示すように比較例1~6は、いずれも洗浄性に劣っていた。
また比較例6の試験結果から(C)成分は、粒子径が0.5μmを超える必要があることが判明した。
【0026】
<皮膚角層の水分量による評価>
本発明の化粧料と比較例の化粧料の皮膚角層水分量に及ぼす効果を評価した。
実施例及び比較例の代表的な化粧料として、実施例11及び比較例3の組成を任意に選択し、次の測定方法で評価した。
得られた日焼け止め化粧料を肌に塗布することによる角層の水分量の変化を測定して評価した。まず、上腕内側部を洗浄した後10分間馴化し、皮表角層水分量測定装置(株式会社ヤヨイ製、装置名:SKICON-200EX)で水分量を測定した。試料を測定箇所に0.03g滴下し、3cm×3cmに塗り広げ、15分後に試料塗布部の水分量を測定した。試料を塗布していない角層の水分量と、試料塗布部の角層の水分量を比較し、試料塗布部の角層水分量が70μS以上増加している場合に保湿性が高い「〇」と評価した。水分量の増加が70μS未満の場合は保湿性が低い「×」と評価した。
評価結果を下記の表3に示した。
【0027】
【0028】
本発明の構成を持つ実施例11の化粧料は、官能評価に一致した高い角層水分量の増加をもたらした。すなわち、皮膚角層に対する高い水分量増加効果を示すことから、本発明の化粧料の保湿効果は、角層の水分量増加という具体的な作用効果によるものであると考えられた。
一方比較例3の化粧料は、B成分を配合しない組成である。このため、官能評価と同様に皮膚角層の水分量は殆ど増加しないことがわかった。