(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186917
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
E01C 23/01 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
E01C23/01
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171229
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2018057368の分割
【原出願日】2018-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】野原 友幸
(72)【発明者】
【氏名】曽我 祐介
(72)【発明者】
【氏名】河内 洋人
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 隆真
(57)【要約】
【課題】走行路のうち車両が静止していた領域について、状態を評価できるようにする。
【解決手段】車両80に搭載された通信装置40は、第1音声データ生成装置30が生成した音声データを、位置特定情報及び車両80が静止していたか否かを特定するための情報に紐づけて解析装置10に送信する。解析装置10は、車両80が静止しているときに生成された音声データを解析する。解析対象となる音声データには、車両80のエンジン音が路面で反射した音が含まれている。このため、この音声データを解析することにより、その静止地点における走行路の状態を判断できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
路面に対向する位置に配置された音声データ生成装置と、
前記音声データ生成装置のうち前記エンジン側の面に配置された防音部材又は吸音部材と、
前記音声データ生成装置が生成した音声データを解析装置に出力する出力部と、
を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析装置、車両、解析方法、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
走行路が劣化すると車両の移動に影響がでる。このため、劣化した走行路は補修される必要がある。そこで、走行路の劣化状況を測定するための技術の開発が行われている。例えば特許文献1に記載の技術は、車両の高さ方向の加速度を取得し、この加速度のピーク情報を用いて走行路の路面状態を評価するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法において、走行路の状態を評価するためには、車両が走行路を走行する必要があるため、走行路のうち移動体が静止していた領域については状態を評価できない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題としては、走行路のうち車両が静止していた領域について、状態を評価できるようにすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示には、道路を走行している車両が静止したときの、当該車両のエンジン音を含む音声データと、当該音声データが生成されたときの前記車両の位置を特定するための位置特定情報とを取得する取得部と、
前記音声データを解析することにより、前記位置特定情報によって特定される位置における前記道路の路面の状態を示す状態データを生成する処理部と、
を備える解析装置が含まれる。
【0007】
本開示に係る発明は、エンジンと、
路面に対向する位置に配置された音声データ生成装置と、
前記音声データ生成装置のうち前記エンジン側の面に配置された防音部材又は吸音部材と、
前記音声データ生成装置が生成した音声データを解析装置に出力する出力部と、
を備える車両である。
【0008】
本開示には、コンピュータが、
道路を走行している車両が静止したときの、当該車両のエンジン音を含む音声データと、当該音声データが生成されたときの前記車両の位置を特定するための位置特定情報とを取得し、
前記音声データを解析することにより、前記位置特定情報によって特定される位置における前記道路の路面の状態を示す状態データを生成する、解析方法が含まれる。
【0009】
本開示には、コンピュータに実行可能なプログラムであって、前記コンピュータに、
道路を走行している車両が静止したときの、当該車両のエンジン音を含む音声データと、当該音声データが生成されたときの前記車両の位置を特定するための位置特定情報とを取得する処理と、
前記音声データを解析することにより、前記位置特定情報によって特定される位置における前記道路の路面の状態を示す状態データを生成する処理と、
を実行させるプログラムが含まれる。
【0010】
本開示には、上述のプログラムを記憶した記憶媒体が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る解析装置の使用環境を説明するための図である。
【
図3】解析装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】車両における第1音声データ生成装置の配置の一例を説明するための図である。
【
図5】第2の実施形態に係る車両の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る解析装置10の使用環境を説明するための図である。解析装置10は、音声データを解析することにより、走行路の状態を判断する装置である。解析装置10の解析結果は、記憶部20に記憶される。
【0014】
解析対象となる音声データは、車両80に搭載された第1音声データ生成装置30によって生成されている。車両80は、自動車や自動2輪であり、通信装置40を有している。第1音声データ生成装置30は、車両80のエンジン音が走行路の路面で反射した音(以下、エンジン反射音と記載)を取得可能な位置に配置されている。第1音声データ生成装置30が生成した音声データは、その音声データが生成された位置を特定する情報(以下、位置特定情報と記載)に紐づけて、通信装置40を介して解析装置10に送信される。
【0015】
この際、通信装置40は、音声データを、さらに、その音声データが生成されたときに車両80が静止していたか否かを特定するための情報に紐づけて、解析装置10に送信する。この情報は、車両80が静止していたか否かを直接示す情報であってもよいし、上記した位置特定情報であってもよい。後者の場合、位置特定情報が示す位置に変化がない場合、車両80は静止していると判断できる。
【0016】
ここで車両80が静止しているとは、車両80のエンジンは動いているが車両80は移動していない状態を指す。また、位置特定情報は、例えば車両80に搭載されたGPS情報受信装置及びGPS情報解析装置によって生成されるが、他の方法を用いて生成されてもよい。位置特定情報は、走行路の延在方向の位置のみではなく、走行路や車線の幅方向の位置も示していてもよい。
【0017】
そして解析装置10は、車両80が静止していたときに生成された音声データを処理対象にする。具体的には、この音声データには、上記したエンジン反射音が含まれている。このエンジン反射音には、走行路の状態、例えば路面の状態が反映されている。従って、解析装置10は、エンジン反射音を解析することにより、走行路のうち車両80が静止していた位置の状態を示すデータ(以下、状態データと記載)を生成することができる。
【0018】
解析装置10は、通信装置40から受信した音声データを位置特定情報に紐づけて記憶部20に記憶させる。ここで、音声データ及び位置特定情報は、それらが生成された時刻を示す時刻情報を用いて互いに紐づけられていてもよい。
【0019】
なお、通信装置40は、車両80が静止しているときに生成された音声データのみを、位置特定情報に紐づけて解析装置10に送信してもよい。この場合、解析装置10は、通信装置40から受信した音声データをすべて処理する。
【0020】
図2は、解析装置10の機能構成の一例を示す図である。解析装置10は、取得部110及び処理部120を有している。
【0021】
取得部110は、記憶部20から上記した音声データ及び位置特定情報を取得する。処理部120は、音声データを解析することにより、その音声データが生成された位置における走行路の状態を判断する。例えば処理部120は、走行路の状態別に、音声データを解析するときに用いる基準データ、例えば特徴量を予め記憶しておく。そして処理部120は、処理対象となる音声データと、予め記憶されている基準データとを比較し、最も一致度が高い基準データに基づいてその走行路の状態を判断する。例えば処理部120は、最も一致度が高い基準データに対応する状態を、その走行路の状態であると判断する。そして処理部120は、判断結果を、位置特定情報に紐づけて記憶部20に記憶させる。なお、判断結果に紐づけられる位置特定情報は、走行路の延在方向の位置のみではなく、走行路や車線の幅方向の位置も示していてもよい。
【0022】
処理部120が予め記憶している基準データは、車両80の車種別に定められているのが好ましい。この場合、通信装置40は、音声データとともに、通信装置40が搭載されている車両80の車種を特定するための情報を解析装置10に送信する。この車種を特定する情報は、車種を直接示す情報であってもよいし、車両80の自動車登録番号であってもよい。そして処理部120は、送信されてきた情報を用いて、解析に用いる基準データを読み出す。
【0023】
さらに、処理部120が予め記憶している基準データは、エンジンの回転数別に定められているのが好ましい。この場合、解析装置10は、音声データとともに、エンジンの回転数を示す回転数データを解析装置10に送信する。そして処理部120は、送信されてきた回転数データに対応する基準データを読み出す。なお、処理部120が予め記憶している基準データは、車種別且エンジンの回転数別に定められていてもよい。
【0024】
図3は、解析装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。解析装置10の主な構成は、集積回路を用いて実現される。この集積回路は、バス402、プロセッサ404、メモリ406、ストレージデバイス408、入出力インタフェース410、及びネットワークインタフェース412を有する。バス402は、プロセッサ404、メモリ406、ストレージデバイス408、入出力インタフェース410、及びネットワークインタフェース412が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ404などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ404は、マイクロプロセッサなどを用いて実現される演算処理装置である。メモリ406は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現されるメモリである。ストレージデバイス408は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどを用いて実現されるストレージデバイスである。
【0025】
入出力インタフェース410は、解析装置10を周辺デバイス、例えば記憶部20と接続するためのインタフェースである。本図において、入出力インタフェース410は取得部110の一例である。
【0026】
ネットワークインタフェース412は、解析装置10を通信網に接続するためのインタフェースである。なお、ネットワークインタフェース412が通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0027】
ストレージデバイス408は、解析装置10の各機能要素を実現するためのプログラムモジュールや音声データの解析時に用いる基準データを記憶している。プロセッサ404は、このプログラムモジュールをメモリ406に読み出して実行することで、解析装置10の各機能を実現する。
【0028】
なお、上記した集積回路のハードウェア構成は本図に示した構成に限定されない。例えば、プログラムモジュールはメモリ406に格納されてもよい。この場合、集積回路は、ストレージデバイス408を備えていなくてもよい。
【0029】
図4は、車両80における第1音声データ生成装置30の配置の一例を説明するための図である。車両80は、上記した第1音声データ生成装置30及び通信装置40の他に、エンジン82及び防音部材又は吸音部材84を有している。第1音声データ生成装置30は車両80の裏面側、すなわち走行路の路面に対向する位置に配置されている。例えば第1音声データ生成装置30は、ボディの裏面側に配置されている。そして車両80の長手方向で見た場合、防音部材又は吸音部材84は、第1音声データ生成装置30のうちエンジン82側に配置されている。例えば防音部材又は吸音部材84は、第1音声データ生成装置30のエンジン82の面に取り付けられていてもよいし、第1音声データ生成装置30から30cm以内の領域に配置されていてもよい。防音部材又は吸音部材84を設けると、エンジン82で発生するエンジン音が直接第1音声データ生成装置30に入ることを抑制できる。
【0030】
また、車両80の長手方向すなわち前後方向において、エンジン82、車両80の中心C、及び第1音声データ生成装置30はこの順に並んでいる。このようにすると、エンジン82で発生するエンジン音が直接第1音声データ生成装置30に入ることを抑制できる。なお、防音部材又は吸音部材84は、中心Cと第1音声データ生成装置30の間に位置している。
【0031】
さらに、エンジン82から第1音声データ生成装置30までの距離は1m以上であるのが好ましい。このようにしても、エンジン82で発生するエンジン音が直接第1音声データ生成装置30に入ることを抑制できる。
【0032】
以上、本実施形態によれば、車両80に搭載された通信装置40は、第1音声データ生成装置30が生成した音声データを、位置特定情報及び車両80が静止していたか否かを特定するための情報に紐づけて解析装置10に送信する。解析装置10は、車両80が静止しているときに生成された音声データを解析する。解析対象となる音声データには、車両80のエンジン音が路面で反射した音が含まれている。このため、この音声データを解析することにより、その静止地点における走行路の状態を判断できる。従って、走行路のうち車両80が静止していた領域について、状態を評価できる。
【0033】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る車両80の構成を示す図であり、第1の実施形態における
図4に対応している。本実施形態に係る車両80は、第2音声データ生成装置32を備えている点を除いて、第1の実施形態に係る車両80と同様の構成である。第2音声データ生成装置32が生成した音声データ(以下、第2の音声データと記載)は、同じタイミングで第1音声データ生成装置30が生成した音声データ(以下、第1の音声データと記載)に紐づけて、解析装置10に送信される。この紐づけは、例えば各音声データの生成タイミングを示す時刻データを介して行われる。この場合、第1の音声データ、及び第2の音声データは、いずれも時刻データに紐づけて解析装置10に送信される。解析装置10は、受信した第2の音声データを第1の音声データに紐づけて記憶部20に記憶させる。
【0034】
解析装置10の取得部110は、記憶部20から第1の音声データとともに第2の音声データを読み出す。そして処理部120は、例えば同じタイミングで生成された第1の音声データと第2の音声データを用いて状態データを生成する。
【0035】
第2音声データ生成装置32は、第1音声データ生成装置30よりもエンジン82に近く、かつ走行路の路面に近い。そして、第2音声データ生成装置32が生成した音声データ(第2の音声データ)に含まれる音のうちエンジン82から直接入った音の割合は、第1音声データ生成装置30が生成した音声データ(第1の音声データ)と比較して低い。そこで処理部120は、第1の音声データと第2の音声データの差分を算出し、この算出結果を解析対象にする。このようにすると、解析対象のデータにおいて、エンジン82から直接入った音の割合が減る、すなわちノイズが減るため、精度よく路面の状態を解析できる。
【0036】
なお、処理部120は、第1の音声データ及び第2の音声データの一方に所定の係数を乗じたデータと他方のデータとの差分を算出し、この算出結果を解析対象にしてもよい。ここで用いられる係数は、例えば解析装置10の車種別に定められており、解析装置10が予め記憶している。
【0037】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0038】
10 解析装置
20 記憶部
30 第1音声データ生成装置
32 第2音声データ生成装置
40 通信装置
80 車両
82 エンジン
84 吸音部材
110 取得部
120 処理部