(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186929
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ダサチニブ無水物含有製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20221208BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221208BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221208BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221208BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20221208BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221208BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221208BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K9/20
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/22
A61K47/38
A61P35/02
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171405
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2017224570の分割
【原出願日】2017-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】及川 倫徳
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】菊岡 広晃
(57)【要約】
【課題】保存時の光安定性が改善されたダサチニブ無水物含有製剤を提供する。
【解決手段】本発明に一実施形態によると、ダサチニブ無水物と、酸化チタンまたは着色剤または酸化防止剤と、を含有する。また、前記酸化チタンは、前記ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0より多く2以下であり、または、前記着色剤は前記ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0より多く1以下であり、または、前記酸化防止剤は前記ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0より多く0.5以下であってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダサチニブ無水物と、酸化チタンまたは着色剤または酸化防止剤と、を含有する素錠を含むことを特徴とする、ダサチニブ無水物含有製剤。
【請求項2】
前記酸化チタンは、前記ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0より多く2以下であり、または、
前記着色剤は前記ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0より多く1以下であり、または、
前記酸化防止剤は前記ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0より多く0.5以下であることを特徴とする、請求項1に記載のダサチニブ無水物含有製剤。
【請求項3】
前記着色剤は、黄色三二酸化鉄または三二酸化鉄であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のダサチニブ無水物含有製剤。
【請求項4】
前記酸化防止剤は、ベンゼン環を有する酸化防止剤であることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のダサチニブ無水物含有製剤。
【請求項5】
前記ベンゼン環を有する酸化防止剤は、トコフェロールまたはジブチルヒドロキシトルエンであることを特徴とする、請求項4に記載のダサチニブ無水物含有製剤。
【請求項6】
ダサチニブ無水物を含有する素錠の外側に、ヒプロメロースと、ヒドロキシプロピルセルロースと、酸化チタンまたは着色剤とを含有するフィルムコーティング部を有することを特徴とする、ダサチニブ無水物含有製剤。
【請求項7】
前記酸化チタンは、前記ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0より多く2以下であり、または、
前記着色剤は前記ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0より多く1以下であることを特徴とする、請求項6に記載のダサチニブ無水物含有製剤。
【請求項8】
前記着色剤は、黄色三二酸化鉄または三二酸化鉄であることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載のダサチニブ無水物含有製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダサチニブ無水物含有製剤に関する。特に、保存時の光安定性が改善されたダサチニブ無水物含有製剤に関する。本明細書において、「ダサチニブ無水物含有製剤」は、ダサチニブ無水物含有医薬組成物及びダサチニブ無水物含有錠剤を含む。
【背景技術】
【0002】
ダサチニブは、特定の蛋白チロシンキナーゼのキナーゼドメインにあるATP結合部位においてATPと競合し、BCR-ABLのみならずSRCファミリーキナーゼ(SRC、LCK、YES、FYN)、c-KIT、EPH(エフリン)A2受容体及びPDGF(血小板由来増殖因子)β受容体を阻害することにより、慢性骨髄性白血病、再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に効能又は効果があることが、特許文献1及び非特許文献1に記載されている。
【0003】
非特許文献1には、ダサチニブ水和物の各種条件下における安定性に関して、光安定性ガイドラインで示された曝光量に相当する(総照度として120万lx・hr及び総近紫外放射エネルギーとして200W・hr/m2)光を暴露した苛酷試験の結果として、い
ずれの条件でも変化を認めなかったと記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ダサチニブ水和物に替えて、ダサチニブ無水物結晶とダサチニブ無水物結晶を含む製剤について記載されている。しかし、特許文献2においては、ダサチニブ無水物に対する光安定性についての検討はなされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008-540440号公報
【特許文献2】特許第6081763号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】スプリセル錠 医薬品インタビューフォーム(2016年8月作成(改訂第11版))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らが検討した結果、ダサチニブ含有製剤が光に対して不安定であり、特にダサチニブ無水物を原薬として含有する製剤が光に対して不安定であることが明らかとなった。
【0008】
本発明は、保存時の光安定性が改善されたダサチニブ無水物含有製剤を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によると、ダサチニブ無水物と、酸化チタンまたは着色剤または酸化防止剤と、を含有することを特徴とする、ダサチニブ無水物含有製剤が提供される。
【0010】
ダサチニブ無水物を1とした重量比において、酸化チタンを0より多く2以下の配合割合で含有し、または、着色剤を0より多く1以下の配合割合で含有し、または、酸化防止剤を0より多く0.5以下の配合割合で含有してもよい。
【0011】
着色剤は、黄色三二酸化鉄または三二酸化鉄であってもよい。
【0012】
酸化防止剤は、ベンゼン環を有する酸化防止剤でもよい。
【0013】
ベンゼン環を有する酸化防止剤が、トコフェロールまたはジブチルヒドロキシトルエンであってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態によると、ダサチニブ無水物を含有する素錠の外側に、酸化チタンまたは着色剤を含有するフィルムコーティング部を有することを特徴とする、ダサチニブ無水物含有製剤が提供される。
【0015】
ダサチニブ無水物を1とした重量比において、酸化チタンを0より多く0.2以下の配合割合で含有し、または、着色剤を0より多く0.08以下の配合割合で含有してもよい。
【0016】
着色剤は、黄色三二酸化鉄または三二酸化鉄でもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、保存時の光安定性が改善されたダサチニブ無水物含有製剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例に係るダサチニブ無水物含有錠剤の製剤物性等を示す図である。
【
図2】本発明の実施例に係るダサチニブ無水物含有医薬組成物の製剤物性等を示す図である。
【
図3】本発明の実施例に係るダサチニブ無水物含有錠剤の製剤物性等を示す図である。
【
図4】本発明の実施例に係るダサチニブ無水物含有医薬組成物の製剤物性等を示す図である。
【
図5】本発明の実施例に係るダサチニブ無水物含有医薬組成物の製剤物性等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るダサチニブ無水物含有製剤について説明する。但し、本発明のダサチニブ無水物含有製剤は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0020】
従来、ダサチニブ無水物含有製剤が光に対して不安定であり、光に起因する変色及び類縁物質の発生については知られていなかった。本発明者らは、ダサチニブ無水物含有製剤が光に対して不安定であることを初めて見出した。
【0021】
本発明者らは、後述する実施例においても示すように、ダサチニブ無水物含有製剤の光安定性を改善すべく種々の添加剤について検討を行ったところ、酸化チタンまたは着色剤または酸化防止剤を添加することにより、ダサチニブ無水物含有製剤の光安定性を向上させ、光に起因する変色及び類縁物質の発生を抑制することが可能であることを新たに見出した。
【0022】
本発明に係るダサチニブ無水物含有製剤は、ダサチニブ無水物と酸化チタンとを含有す
る。本実施形態において、ダサチニブ無水物含有製剤は、所定量のダサチニブ無水物を含み、錠剤の形態において、ダサチニブ無水物の含有量は、例えば、20mgまたは50mg/錠である。
【0023】
一実施形態において、ダサチニブ無水物含有製剤に添加する酸化チタンは、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0より多く2以下であり、0.0075以上0.2以下の配合割合の範囲であることが好ましい。
【0024】
また、本発明に係るダサチニブ無水物含有製剤は、ダサチニブ無水物と着色剤とを含有する。着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、食用黄色5号、食用黄色5号アルミニウムレーキ、リボフラビン等が挙げられるが、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄を好適に用いることができる。これらの着色剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
一実施形態において、ダサチニブ無水物含有製剤に添加する着色剤は、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0より多く1以下であり、0.0005以上0.08以下の配合割合の範囲であることが好ましい。
【0026】
さらに、本発明に係るダサチニブ無水物含有製剤は、ダサチニブ無水物と酸化防止剤とを含有する。本発明に用いられる酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、ノルジヒドログアヤレチック酸、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ロンガリット等が挙げられるが、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸を好適に用いることができ、特に、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエンを更に好適に用いることができる。
【0027】
一実施形態において、ダサチニブ無水物含有製剤に添加する酸化防止剤は、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0より多く0.5以下であり、0.0001以上0.02以下の配合割合の範囲であることが好ましい。
【0028】
一実施形態において、ダサチニブ無水物含有製剤は、粉末の医薬組成物であってもよく、錠剤でもよい。また、ダサチニブ無水物含有錠剤は、素錠でもよいし、フィルムコーティングを施しフィルムコーティング錠としてもよい。
【0029】
ダサチニブ無水物含有錠剤が素錠の場合、酸化チタンまたは着色剤またはベンゼン環を有する酸化防止剤は、ダサチニブ無水物と同一の素錠部に含有される。また、ダサチニブ無水物含有錠剤の素錠に公知のフィルムコーティング部をさらに有してもよい。
【0030】
ダサチニブ無水物含有錠剤がフィルムコーティング錠の場合において、酸化チタンまたは着色剤は、それらの一部または全てをフィルムコーティング部に含有されることが出来る。この場合、素錠部には酸化チタン、着色剤、酸化防止剤を単独でまたは二種以上を含んでいてもよい。
【0031】
本実施形態のダサチニブ無水物含有製剤は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、乳化剤、安定剤、矯味矯臭剤、可塑剤、滑沢剤等の添加剤をさらに添加することができる。
【0032】
賦形剤は、例えば、糖誘導体、澱粉誘導体、セルロース誘導体、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、ケイ酸塩誘導体、燐酸塩、炭酸塩及び硫酸塩等から選択することができる。糖誘導体としては、例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール、エリスリトール
、トレハロース、マルトース、キシリトール及びソルビトール等を例示することができる。また、澱粉誘導体としては、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α-澱粉、デキストリン等を例示することができる。セルロース誘導体としては、結晶セルロース等を例示することができる。また、ケイ酸塩誘導体としては、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を例示することができる。燐酸塩としては、燐酸水素カルシウム等を例示することができる。炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム等を例示することができる。硫酸塩としては、硫酸カルシウム等を例示することができる。これらの賦形剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
崩壊剤は、例えば、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、架橋化ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、各種デンプン類等から選択することができる。これらの崩壊剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
結合剤は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、マクロゴール及び上記に賦形剤として示した化合物等から選択することができる。これらの結合剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0035】
乳化剤は、例えば、コロイド性粘土、金属水酸化物、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤等から選択することができる。コロイド性粘土としては、ベントナイト、ビーガム等を例示することができる。金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等を例示することができる。陰イオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、等を例示することができる。陽イオン界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム等を例示することができる。また、非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を例示することができる。これらの乳化剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0036】
安定剤は、例えば、パラヒドロキシ安息香酸エステル類、アルコール類、フェノール類、チメロサール、デヒドロ酢酸及びソルビン酸等から選択することができる。パラヒドロキシ安息香酸エステル類としては、メチルパラベン、プロピルパラベン等を例示することができる。アルコール類としては、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等を例示することができる。これらの安定剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0037】
矯味矯臭剤は、例えば、甘味料、酸味料及び香料等から選択することができる。甘味料としては、サッカリンナトリウム、スクラロース、タウマチン、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、白糖、アスパルテーム等を例示することができる。酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等を例示することができる。また、香料としては、メントール、レモンエキス、オレンジエキス等を例示することができる。これらの矯味矯臭剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
可塑剤は、例えば、クエン酸トリエチル、グリセリン脂肪酸エステル、トリアセチン、プロピレングリコール、マクロゴール、モノステアリン酸グリセリン等を例示することができる。これらの可塑剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
滑沢剤は、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等)、タルク、コロイドシリカ、ワックス類(ビーズワックス、
ゲイ蝋等)、硼酸、アジピン酸、硫酸塩(硫酸ナトリウム等)、グリコール、フマル酸、フマル酸ステアリルナトリウム、安息香酸ナトリウム、D,L-ロイシン、ラウリル硫酸塩(ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等)、ケイ酸類(無水ケイ酸、ケイ酸水和物等)及び上記に賦形剤として示した化合物等から選択することができる。これらの滑沢剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0040】
本発明に係るダサチニブ無水物含有製剤は、以上のように、酸化チタンまたは着色剤または酸化防止剤等を添加することにより、保存時の光安定性を改善することができる。また、本発明に係るダサチニブ無水物含有製剤は、酸化チタンまたは着色剤等をフィルムコーティング部に含有するフィルムコーティング錠とすることにより、素錠に含まれるダサチニブ無水物の保存時での光安定性を改善することができる。
【0041】
(製造方法)
本発明に係るダサチニブ無水物含有製剤は、薬学分野において公知の製造方法に従って製造することができる。例えば、ダサチニブ無水物及び必要に応じて、上記各種添加剤等を含む混合物に、溶液をスプレーしつつ流動層造粒又は転動流動層造粒する。流動層造粒装置としては、「MP-01」(パウレック社製)、「FLO-5」(フロイント社製)等の市販機を用いることができる。また、「MP-01」(パウレック社製)は、転動流動層造粒装置として用いることもできる。別途、高速攪拌練合機を使用して造粒を行うこともでき、「FS-GS-5J」(深江工業社製)等を用いることもできる。湿式造粒工程で得られた造粒物は乾燥し整粒した後、崩壊剤、滑沢剤及び必要に応じて、上記各種添加剤等を添加して混合する。混合した組成物を打錠して、一実施形態に係るダサチニブ無水物含有製剤を得ることができる。また、得られた素錠にフィルムコーティングを行い、一実施形態に係るダサチニブ無水物含有錠剤を得ることができる。フィルムコーティング装置としては、「HC-LABO」(フロイント社製)等の市販機を用いることができる。なお、一実施形態において、湿式造粒工程後の造粒物に、上記の添加剤の何れかを混合し成形するようにしてもよい。
【0042】
(色調変化)
分光色差計(日本電色工業製、機種:SE-6000)を用いて、製造直後の製剤の色調を基準に、10000Lux./hrの光を5日間照射した製剤の色調変化量ΔE値を測定し、5錠の測定値の平均値を算出した。
【0043】
(総類縁物質)
本明細書において、安定性の評価として、液体クロマトグラフィーを用いてダサチニブ無水物の純度を評価した。ダサチニブ無水物由来の類縁物質のピーク面積からダサチニブ無水物のピーク面積に対する比率を算出し、総類縁物質(%)とした。
【実施例0044】
上述した本発明に係るダサチニブ無水物含有製剤の具体的な実施例及び試験結果を示して、より詳細に説明する。
【0045】
(実施例1)
処方比率として、ダサチニブ無水物20.0mg、乳糖水和物(Pharmatose200M、DMV)27.0mg、結晶セルロース(UF-711、旭化成ケミカルズ)15.0mg、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol、FMC)1.6mg、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達)2.4mgとなるよう高速撹拌練合機(FS-GS-5J、深江工業)に入れ混合後、固液比が35%となるように精製水を投入し練合した。練合品を篩8号で篩過した後、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック)に入れ乾燥した。乾燥品を整粒機(P-04-S、ダルトン)に入れ整粒
した。整粒品に、処方比率として結晶セルロース(PH-102、旭化成ケミカルズ)12.0mg、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol、FMC)1.6mg、ステアリン酸マグネシウム(太平化学)0.4mgを混合し、打錠用混合品とした。打錠機(VELA5、菊水製作所)を用い、重量80mgとなるよう打錠用混合品を打錠し素錠を得た。また、ヒプロメロースが8.5%となる量の精製水に、ヒプロメロース(TC-5M、信越化学)2.6mg、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、日本曹達)0.3mg、酸化チタン(NA-61、東邦チタニウム)0.3mgの処方比率となるよう溶解・分散し、フィルムコーティング用組成物を得た。コーティング機(HC-LABO20、フロイント産業)を用いて、所定の重量になるよう素錠にフィルムコーティング用組成物をコーティングし、光沢化剤としてカルナウバロウ(ポリシングワックス105、日本ワックス)を微量添加し、実施例1のダサチニブ無水物含有錠剤83.2mgを得た。
【0046】
(実施例2)
実施例1においては、フィルムコーティング部に、重量比でダサチニブ無水物1に対して、0.015の配合割合の酸化チタンを混合したが、実施例2においては、フィルムコーティング部に、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.03の配合割合の酸化チタンを混合したこと以外は、実施例1と同様にダサチニブ無水物含有錠剤83.2mgを得た。
【0047】
(実施例3)
実施例1においては、フィルムコーティング部に、重量比でダサチニブ無水物1に対して、0.015の配合割合の酸化チタンを混合したが、実施例3においては、フィルムコーティング部に、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.045の配合割合の酸化チタンを混合したこと以外は、実施例1と同様にダサチニブ無水物含有錠剤83.2mgを得た。
【0048】
(実施例4)
実施例1においては、フィルムコーティング部の合計が3.2mgになるようにコーティングしたが、実施例4においては、フィルムコーティング部の合計が1.6mgになるようにコーティングした。また、実施例1においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.015の配合割合の酸化チタンを混合したが、実施例4においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.0075の配合割合の酸化チタンを混合したこと以外は、実施例1と同様にダサチニブ無水物含有錠剤81.6mgを得た。
【0049】
(実施例5)
実施例4においては、フィルムコーティング部に、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.0075の配合割合の酸化チタンを混合したが、実施例5においては、フィルムコーティング部に、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.015の配合割合の酸化チタンを混合したこと以外は、実施例4と同様にダサチニブ無水物含有錠剤81.6mgを得た。
【0050】
(実施例6)
実施例4においては、フィルムコーティング部に、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.0075の配合割合の酸化チタンを混合したが、実施例6においては、フィルムコーティング部に、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.0225の配合割合の酸化チタンを混合したこと以外は、実施例4と同様にダサチニブ無水物含有錠剤81.6mgを得た。
【0051】
(実施例7)
実施例1においては、フィルムコーティング部の合計が3.2mgになるようにフィルムコーティングしたが、実施例7においては、フィルムコーティング部の合計が2.4mgになるようにフィルムコーティングした。また、実施例1においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.015の配合割合の酸化チタンを混合したが、実施例7においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.01125の配合割合の酸化チタンを混合したこと以外は、実施例1と同様にダサチニブ無水物含有錠剤82.4mgを得た。
【0052】
(実施例8)
実施例7においては、フィルムコーティング部に、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.01125の配合割合の酸化チタンを混合したが、実施例8においては、フィルムコーティング部に、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.0225の配合割合の酸化チタンを混合したこと以外は、実施例7と同様にダサチニブ無水物含有錠剤82.4mgを得た。
【0053】
(実施例9)
実施例7においては、フィルムコーティング部に、でダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.01125の配合割合の酸化チタンを混合したが、実施例9においては、フィルムコーティング部に、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.03375の配合割合の酸化チタンを混合したこと以外は、実施例7と同様にダサチニブ無水物含有錠剤82.4mgを得た。
【0054】
(実施例10)
処方比率として、ダサチニブ無水物20.0mg、乳糖水和物(Pharmatose200M、DMV)27.0mg、結晶セルロース(UF-711、旭化成ケミカルズ)15.0mg、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol、FMC)1.6mg、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達)2.4mgとなるよう高速撹拌練合機(FS-25、深江工業)に入れ混合後、固液比が35%となるように精製水を投入し練合した。練合品を篩8号で篩過した後、流動層造粒乾燥機(FLO-5、フロイント産業)に入れ乾燥した。乾燥品を整粒機(P-04-S、ダルトン)に入れ整粒した。整粒品に、処方比率として結晶セルロース(PH-102、旭化成ケミカルズ)12.0mg、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol、FMC)1.6mg、ステアリン酸マグネシウム(太平化学)0.4mgを混合した。さらに、この混合品に酸化チタン(NA-61、東邦チタニウム)を0.4mgの処方比率にて添加し、実施例10のダサチニブ無水物含有医薬組成物80.4mgを得た。
【0055】
(実施例11)
実施例10においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合の酸化チタンを混合したが、実施例11においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.04の配合割合の酸化チタンを混合したこと以外は、実施例10と同様にダサチニブ無水物含有医薬組成物80.8mgを得た。
【0056】
(実施例12)
実施例10においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合の酸化チタンを混合したが、実施例12においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.12の配合割合の酸化チタンを混合したこと以外は、実施例10と同様にダサチニブ無水物含有医薬組成物82.4mgを得た。
【0057】
(実施例13)
実施例10においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合の
酸化チタンを混合したが、実施例13においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.20の配合割合の酸化チタンを混合したこと以外は、実施例10と同様にダサチニブ無水物含有医薬組成物84.0mgを得た。
【0058】
(実施例14)
実施例1においては、素錠部にダサチニブ無水物を20mg混合したが、実施例14においても同様に、素錠部にダサチニブ無水物を20mgになるように混合した。また、実施例1においては、フィルムコーティング部に、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.015の配合割合の酸化チタンを混合したが、実施例14においては、フィルムコーティング部に、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.0005の配合割合の三二酸化鉄を混合したこと以外は、実施例1と同様に、実施例14のダサチニブ無水物含有錠剤83.21mgを得た。
【0059】
(実施例15)
実施例14においては、フィルムコーティング部に、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.0005の配合割合の三二酸化鉄を混合したが、実施例15においては、フィルムコーティング部に、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.005の配合割合の三二酸化鉄を混合したこと以外は、実施例14と同様にダサチニブ無水物含有錠剤83.3mgを得た。
【0060】
(実施例16)
実施例10においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合の酸化チタンを混合したが、実施例16においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合の黄色三二酸化鉄を混合したこと以外は、実施例10と同様にダサチニブ無水物含有医薬組成物80.4mgを得た。
【0061】
(実施例17)
実施例16においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合の黄色三二酸化鉄を混合したが、実施例17においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.04の配合割合の黄色三二酸化鉄を混合したこと以外は、実施例16と同様にダサチニブ無水物含有医薬組成物80.8mgを得た。
【0062】
(実施例18)
実施例16においては、ダサチニブ無水物1に対して、0.02の配合割合の黄色三二酸化鉄を混合したが、実施例18においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.08の配合割合の黄色三二酸化鉄を混合したこと以外は、実施例16と同様にダサチニブ無水物含有医薬組成物81.6mgを得た。
【0063】
(実施例19)
実施例16においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合の黄色三二酸化鉄を混合したが、実施例19においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合の三二酸化鉄を混合したこと以外は、実施例16と同様にダサチニブ無水物含有医薬組成物80.4mgを得た。
【0064】
(実施例20)
実施例19においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合の三二酸化鉄を混合したが、実施例20においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.04の配合割合の三二酸化鉄を混合したこと以外は、実施例19と同様にダサチニブ無水物含有医薬組成物80.8mgを得た。
【0065】
(実施例21)
実施例19においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合の三二酸化鉄を混合したが、実施例21においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.08の配合割合の三二酸化鉄を混合したこと以外は、実施例19と同様にダサチニブ無水物含有医薬組成物81.6mgを得た。
【0066】
(実施例22)
実施例10においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合の酸化チタンを混合したが、実施例22においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合のL-アスコルビン酸を混合したこと以外は、実施例10と同様にダサチニブ無水物含有医薬組成物80.4mgを得た。
【0067】
(実施例23)
実施例22においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合のL-アスコルビン酸を混合したが、実施例23においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合の亜硫酸水素ナトリウムを混合したこと以外は、実施例22と同様にダサチニブ無水物含有医薬組成物80.4mgを得た。
【0068】
(実施例24)
実施例22においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合のL-アスコルビン酸を混合したが、実施例24においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合の没食子酸プロピルを混合したこと以外は、実施例22と同様にダサチニブ無水物含有医薬組成物80.4mgを得た。
【0069】
(実施例25)
実施例22においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合のL-アスコルビン酸を混合したが、実施例25においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合のジブチルヒドロキシトルエンを混合したこと以外は、実施例22と同様にダサチニブ無水物含有医薬組成物80.4mgを得た。
【0070】
(実施例26)
実施例22においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合のL-アスコルビン酸を混合したが、実施例26においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合のトコフェロールを混合したこと以外は、実施例22と同様にダサチニブ無水物含有医薬組成物80.4mgを得た。
【0071】
(比較例1)
比較例1は、ダサチニブ無水物原薬である。
【0072】
(比較例2)
実施例1においては、素錠部にフィルムコーティングを施したが、比較例2においては、フィルムコーティングを施さず素錠部のみであること以外は、実施例1と同様にダサチニブ無水物含有錠剤80.0mgを得た。
【0073】
(比較例3)
実施例1においては、フィルムコーティング部に、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合の酸化チタンを混合したが、比較例3においては、フィルムコーティング部に、酸化チタンを混合しなかったこと以外は、実施例1と同様にダサチニブ無水物含有錠剤83.2mgを得た。
【0074】
(比較例4)
実施例10においては、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合の酸化チタンを混合したが、比較例4においては、酸化チタンを混合しなかったこと以外は、実施例10と同様にダサチニブ無水物含有医薬組成物80.0mgを得た。
【0075】
図1は、本発明の実施例に係るダサチニブ無水物含有錠剤の製剤物性等を示す図である。フィルムコーティング部を有するダサチニブ無水物含有錠剤において、フィルムコーティング部の配合量およびフィルムコーティング部における酸化チタンの配合割合をそれぞれ変化させ、10000Lux./hrの光を5日間照射した製剤の色調変化(ΔE)および総類縁物質(%)をそれぞれ測定した。
【0076】
(色調変化)
色調変化については、分光色差計(日本電色工業製、機種:SE-6000)を用いて、製造直後の製剤の色調を基準に、色調変化量ΔE値を測定し、5錠の測定値の平均値を算出した。
【0077】
(総類縁物質)
また、総類縁物質については、以下に示す液体クロマトグラフィーを用いてダサチニブ無水物の純度を評価した。ダサチニブ無水物由来の類縁物質のピーク面積からダサチニブ無水物のピーク面積に対する比率を算出し、総類縁物質(%)とした。具体的には、カラムはオクタデシルシリル化シリカゲル(粒度5μm、カラム内径4.6mm、カラム長さ250mm、ジーエルサイエンス)、移動相Aは0.01Mのリン酸二水素カリウム水溶液、移動相Bはアセトニトリル、検出器は紫外吸光光度計(測定波長:230nm)をそれぞれ用いた。カラムの温度は40℃付近の一定温度とし、流量は0.5mL/min、注入量は10μLとした。移動相の送液は移動相AとBとの混合比(A/B)を、サンプル注入後0~15分はA/Bを90/10~60/40の濃度勾配とし、15~35分は60/40~40/60の濃度勾配とし、35~40分は40/60~20/80の濃度勾配とし、40~45分は20/80とし、45~48分は20/80~90/10の濃度勾配とし、48~50分は90/10とした。
【0078】
ダサチニブ無水物原薬である比較例1のΔE値は18.56、総類縁物質(%)は0.51であった。また、フィルムコーティング部を有しないダサチニブ無水物錠剤である比較例2のΔE値は20.38、総類縁物質(%)は0.4であった。これらの結果から、ダサチニブ無水物原薬およびフィルムコーティング部を有しないダサチニブ無水物錠剤は、着色・類縁物質を増加させることがわかった。
【0079】
フィルムコーティング部を有する比較例3と比較して、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.015の配合割合で酸化チタンが混合されたフィルムコーティング部を有する実施例1は、ΔE値および総類縁物質(%)が小さく、色調変化および類縁物質の生成が改善された。実施例1と比較して、酸化チタンの配合割合が増加した実施例2および3は、ΔE値および総類縁物質(%)が更に小さくなることから、フィルムコーティング部における酸化チタンの配合割合が増加するにつれて、色調変化および類縁物質の生成がより改善された。
【0080】
フィルムコーティング部を有する比較例3と比較して、ダサチニブ無水物を1とした重量比が0.0075の配合割合で酸化チタンが混合されたフィルムコーティング部を有する実施例4、0.01125の配合割合で酸化チタンが混合されたフィルムコーティング部を有する実施例7においても、実施例1と同様に、ΔE値および総類縁物質(%)が小さくなることから、色調変化および類縁物質の生成が改善された。実施例4~6および実施例7~9においても、実施例1~3と同様に、フィルムコーティング部における酸化チ
タンの配合割合が増加するにつれて、ΔE値および総類縁物質(%)が小さくなることから、色調変化および類縁物質の生成がより改善された。
【0081】
図2は、本発明の実施例に係るダサチニブ無水物含有医薬組成物の製剤物性等を示す図である。
図1のフィルムコーティング部に酸化チタンが混合されたダサチニブ無水物含有錠剤とは異なり、ダサチニブ無水物含有医薬組成物において、酸化チタンの配合割合を変化させて、色調変化(ΔE)および総類縁物質(%)をそれぞれ測定した。
【0082】
比較例4と比較して、ダサチニブ無水物を1とした重量比が、0.02の配合割合で酸化チタンが混合された実施例10は、ΔE値および総類縁物質(%)が小さくなることから、色調変化および類縁物質の生成が改善された。
【0083】
実施例10と比較して、酸化チタンの配合割合が増加した実施例11~13は、ΔE値および総類縁物質(%)が更に小さくなることから、ダサチニブ無水物含有医薬組成物における酸化チタンの配合割合が増加するにつれて、ΔE値および総類縁物質(%)が小さくなることから、色調変化および類縁物質の生成がより改善された。
【0084】
このように、ダサチニブ無水物含有錠剤のフィルムコーティング部またはダサチニブ無水物含有医薬組成物に、酸化チタンを混合することにより、ダサチニブ無水物の色調変化および類縁物質の生成が抑制され、保存時の光安定性を改善することができた。
【0085】
図3は、本発明の実施例に係るダサチニブ無水物含有錠剤の製剤物性等を示す図である。
図1のフィルムコーティング部に酸化チタンが混合されたダサチニブ無水物含有錠剤とは異なり、フィルムコーティング部を有するダサチニブ無水物含有錠剤において、フィルムコーティング部における三二酸化鉄の配合割合を変化させて、色調変化(ΔE)および総類縁物質(%)をそれぞれ測定した。
【0086】
フィルムコーティング部を有する比較例3と比較して、ダサチニブ無水物を1とした重量比が0.0005の配合割合で三二酸化鉄が混合されたフィルムコーティング部を有する実施例14は、ΔE値および総類縁物質(%)が小さくなり、色調変化および類縁物質の生成が改善された。実施例14と比較して、三二酸化鉄の配合割合が増加した実施例15は、ΔE値および総類縁物質(%)が更に小さくなり、フィルムコーティング部における三二酸化鉄の配合割合が増加するにつれて、色調変化および類縁物質の生成がより改善された。
【0087】
図4は、本発明の実施例に係るダサチニブ無水物含有医薬組成物の製剤物性等を示す図である。
図3のフィルムコーティング部に三二酸化鉄が配合されたダサチニブ無水物含有錠剤とは異なり、ダサチニブ無水物含有医薬組成物における黄色三二酸化鉄または三二酸化鉄の配合割合を変化させて、色調変化(ΔE)および総類縁物質(%)をそれぞれ測定した。
【0088】
比較例4と比較して、重量比でダサチニブ無水物1に対して、0.02の配合割合の黄色三二酸化鉄が混合された実施例16は、ΔE値および総類縁物質(%)が小さくなり、色調変化および類縁物質の生成が改善された。
【0089】
実施例16と比較して、黄色三二酸化鉄の配合割合が増加した実施例17および18は、ΔE値および総類縁物質(%)が更に小さくなり、ダサチニブ無水物含有医薬組成物における黄色三二酸化鉄の配合割合が増加するにつれて、色調変化および類縁物質の生成がより改善された。黄色三二酸化鉄を三二酸化鉄に置換した実施例19~21も、実施例16~18と同様に、ダサチニブ無水物含有医薬組成物における三二酸化鉄の配合割合が増
加するにつれて、ΔE値および総類縁物質(%)が小さくなり、色調変化および類縁物質の生成がより改善された。
【0090】
このように、ダサチニブ無水物含有錠剤のフィルムコーティング部またはダサチニブ無水物含有医薬組成物に、黄色三二酸化鉄または三二酸化鉄を混合することにより、ダサチニブ無水物の色調変化および類縁物質の生成が抑制され、保存時の光安定性を改善することができた。
【0091】
図5は、本発明の実施例に係るダサチニブ無水物含有医薬組成物の製剤物性等を示す図である。
図4の黄色三二酸化鉄または三二酸化鉄が混合されたダサチニブ無水物含有医薬組成物とは異なり、酸化防止剤が混合されたダサチニブ無水物含有医薬組成物において、酸化防止剤の種類を変化させて、色調変化(ΔE)および総類縁物質(%)をそれぞれ測定した。
【0092】
酸化防止剤の配合割合は、ダサチニブ無水物を1とした重量比が0.02であった。
【0093】
比較例4と比較して、L-アスコルビン酸を混合した実施例22および亜硫酸水素ナトリウムを混合した実施例23は、いずれも総類縁物質(%)が少なくなることから、類縁物質の生成が改善された。また、没食子酸プロピルを混合した実施例24は、ΔE値も小さくなることから、類縁物質の生成が改善されるのみならず色調変化も改善された。さらに、ジブチルヒドロキシトルエンを混合した実施例25及びトコフェロールを混合した実施例26は、ΔE値が非常に小さくなり、総類縁物質(%)が非常に少なくなることから、色調変化および類縁物質の生成がより改善された。
【0094】
このように、ダサチニブ無水物含有医薬組成物に、酸化防止剤を混合することにより、類縁物質の生成が抑制され、保存時の光安定性を改善することができる。また、ジブチルヒドロキシトルエンまたはトコフェロールを混合することにより、ダサチニブ無水物の色調変化も抑制することができ、保存時の光安定性をさらに改善することができる。
【0095】
以上説明したように、本発明に係るダサチニブ無水物含有製剤は、ダサチニブ無水物と、酸化チタンまたは着色剤または酸化防止剤とを含有することにより、保存時の光安定性を改善することができる。