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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186941
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20221208BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171676
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2018085415の分割
【原出願日】2018-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】數田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一
(72)【発明者】
【氏名】吉野 真
(72)【発明者】
【氏名】飛田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】志賀 悠人
(72)【発明者】
【氏名】濱地 紀彰
(57)【要約】
【課題】素体からの端子電極の剥離を抑制しつつ、特性の低下を抑制できる積層コイル部品を提供する。
【解決手段】積層コイル部品1では、第1面2dと、第1面2dに直交する方向に延在する第2面2a,2bと、を有する素体2と、素体2内に配置されているコイル7と、第2面2a,2bに沿うように第1面2dに直交する方向に延在する第1電極部分4a,5aを有する端子電極4,5と、を備え、端子電極4,5の第1電極部分4a,5aの少なくとも一部は、素体2内に配置されており、素体2内に位置する第1電極部分4a,5aにおいて第1面2dに対して第1面2dに直交する方向で最も離れた位置から、第2面2a,2bに向けて第1面2dと平行な方向に延びる仮想線L1,L3と、第1面2dとの間に素体2が存在している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面と、当該実装面に直交する第1方向に延在する端面と、を有する素体と、
前記素体内に配置されているコイルと、
前記実装面に沿うように前記端面に直交する第2方向に延在している第2電極部分を有する端子電極と、を備え、
前記端子電極の前記第2電極部分の少なくとも一部は、前記素体内に配置されており、
前記第2電極部分は、前記第2方向において突出している第2突起部を有し、
前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向から見て、前記素体内に位置する前記第2電極部分において、前記第2突起部の前記第2方向における端部から前記実装面に向けて前記端面と平行な方向に延びる仮想線と、前記端面との間に前記素体が存在している、積層コイル部品。
【請求項2】
前記端子電極は、前記端面に沿うように前記実装面に直交する前記第1方向に延在している第1電極部分を有し、前記第3方向から見てL字状を呈している、請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項3】
前記端子電極の前記第1電極部分の少なくとも一部は、前記素体内に配置されており、
前記第1電極部分は、前記第1方向において突出している第1突起部を有している、請求項2に記載の積層コイル部品。
【請求項4】
前記第3方向から見て、前記素体内に位置する前記第1電極部分において、前記第1突起部の前記第1方向における端部から前記端面に向けて前記実装面と平行な方向に延びる仮想線と、前記実装面との間に前記素体が存在している、請求項3に記載の積層コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層コイル部品として、例えば、特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の積層コイル部品は、第1の方向に延在する第1の辺及び第2の方向に延在する第2の辺を有する絶縁体層と、第1の辺と第2の辺とが交差する第1の点に設けられている外部導体層と、を備えている。特許文献1に記載の積層コイル部品では、外部導体層において、第1の点から第1の方向の一方側に最も離れている部分における第1の点から第2の方向の一方側に最も離れた位置を第2の点と定義し、外部導体層において、第1の点から第2の方向の一方側に最も離れている部分における該第1の点から第1の方向の一方側に最も離れた位置を第3の点と定義し、外部導体層は、第2の点と第3の点とを結ぶ第3の辺、第2の点から第1の方向の他方側に向かって伸びる第4の辺、及び、第3の点から第2の方向の他方側に向かって伸びる第5の辺を有する領域内に位置する固定部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-157770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の積層コイル部品では、端子電極が素体から脱落(剥離)することを抑制することを目的として、固定部を設けている。しかしながら、従来の積層コイル部品では、固定部とコイルとが近接して設けられている。そのため、従来の積層コイル部品では、固定部とコイルとの間に浮遊容量(寄生容量)が発生し得る。これにより、積層コイル部品の特性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の一側面は、素体からの端子電極の剥離を抑制しつつ、特性の低下を抑制できる積層コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るコイル部品は、実装面と、当該実装面に直交する第1方向に延在する端面と、を有する素体と、素体内に配置されているコイルと、実装面に沿うように端面に直交する第2方向に延在している第2電極部分を有する端子電極と、を備え、端子電極の第2電極部分の少なくとも一部は、素体内に配置されており、第2電極部分は、第2方向において突出している第2突起部を有し、第1方向と第2方向とに直交する第3方向から見て、素体内に位置する第2電極部分において、第2突起部の第2方向における端部から実装面に向けて端面と平行な方向に延びる仮想線と、端面との間に素体が存在している。
【0007】
一実施形態においては、端子電極は、端面に沿うように実装面に直交する第1方向に延在している第1電極部分を有し、第3方向から見てL字状を呈していてもよい。
【0008】
一実施形態においては、端子電極の第1電極部分の少なくとも一部は、素体内に配置されており、第1電極部分は、第1方向において突出している第1突起部を有していてもよい。
【0009】
一実施形態においては、第3方向から見て、素体内に位置する第1電極部分において、第1突起部の第1方向における端部から端面に向けて実装面と平行な方向に延びる仮想線と、実装面との間に素体が存在していてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面によれば、素体からの端子電極の剥離を抑制しつつ、特性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
図2図2は、積層コイル部品の素体の分解斜視図である。
図3図3は、積層コイル部品の断面構成を示す図である。
図4図4は、他の実施形態に係る積層コイル部品の素体の分解斜視図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、他の実施形態に係る積層コイル部品の断面構成を示す図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、他の実施形態に係る積層コイル部品の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1に示されるように、積層コイル部品1は、素体2と、素体2の両端部にそれぞれ配置された第1端子電極4及び第2端子電極5と、を備えている。
【0014】
素体2は、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。素体2は、その外表面として、互いに対向している一対の端面(第1面、第2面)2a,2bと、互いに対向している一対の主面(第1面、第2面)2c,2dと、互いに対向している一対の側面2e,2fと、を有している。一対の主面2c,2dが対向している対向方向(端面2a,2bに平行な方向)が第1方向D1である。一対の端面2a,2bが対向している対向方向(主面2c,2dに平行な方向)が第2方向D2である。一対の側面2e,2fが対向している対向方向が第3方向D3である。本実施形態では、第1方向D1は、素体2の高さ方向である。第2方向D2は、素体2の長手方向であり、第1方向D1と直交している。第3方向D3は、素体2の幅方向であり、第1方向D1と第2方向D2とに直交している。
【0015】
一対の端面2a,2bは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第1方向D1に延びている。一対の端面2a,2bは、第3方向D3(一対の主面2c,2dの短辺方向)にも延びている。一対の側面2e,2fは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第1方向D1に延びている。一対の側面2e,2fは、第2方向D2(一対の端面2a,2bの長辺方向)にも延びている。本実施形態では、主面2dは、積層コイル部品1を他の電子機器(例えば、回路基板、又は、電子部品など)に実装する際、他の電子機器と対向する実装面として規定される。
【0016】
図2に示されるように、素体2は、一対の側面2e,2fが対向している方向に複数の誘電体層(絶縁体層)6が積層されて構成されている。素体2では、複数の誘電体層6の積層方向(以下、単に「積層方向」と称する。)が第3方向D3と一致する。各誘電体層6は、例えば誘電体材料(BaTiO系、Ba(Ti,Zr)O系、又は(Ba,Ca)TiO系などの誘電体セラミック)を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の素体2では、各誘電体層6は、各誘電体層6の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0017】
第1端子電極4は、素体2の端面2a側に配置されており、第2端子電極5は、素体2の端面2b側に配置されている。すなわち、第1端子電極4及び第2端子電極5は、一対の端面2a,2bの対向方向に互いに離間して位置している。第1端子電極4及び第2端子電極5は、導電性材料(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。第1端子電極4及び第2端子電極5は、導電性金属粉末(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。第1端子電極4及び第2端子電極5には、電気めっきが施されることにより、その表面にはめっき層が形成されている。電気めっきには、たとえばNi、Snなどが用いられる。
【0018】
第1端子電極4は、素体2に埋設されている。第1端子電極4は、端面2a及び主面2dに跨がって配置されている。本実施形態では、第1端子電極4の表面は、端面2a及び主面2dのそれぞれと面一である。
【0019】
第1端子電極4は、第3方向D3から見て、L字状を呈している。第1端子電極4は、第1電極部分4aと、第2電極部分4bと、を有している。第1電極部分4aと第2電極部分4bとは、素体2の稜線部において接続されており、互いに電気的に接続されている。第1電極部分4aは、第1方向D1に沿って延在している。第1電極部分4aは、第3方向D3から見て、長方形状を呈している。第2電極部分4bは、第2方向D2に沿って延在している。第2電極部分4bは、第3方向D3から見て、長方形状を呈している。第1電極部分4a及び第2電極部分4bは、第3方向D3に沿って延在している。
【0020】
第1電極部分4aには、第1突起部4cが設けられている。第1突起部4cは、第1電極部分4aの主面2c側の端部から主面2cに向かって突出している。第1突起部4cは、第1電極部分4aの端部において、端面2b側の位置に設けられている。第2電極部分4bには、第2突起部4dが設けられている。第2突起部4dは、第2電極部分4bの端面2b側の端部から端面2bに向かって突出している。第2突起部4dは、第2電極部分4bの端部において、主面2c側の位置に設けられている。第1突起部4c及び第2突起部4dのそれぞれは、先端が湾曲した形状を呈している。
【0021】
図2に示されるように、第1端子電極4は、複数の電極層10~15が積層されて構成されている。電極層10~15のそれぞれは、誘電体層6の凹部に設けられている。電極層10~15は、誘電体層6に凹部を形成し、凹部に導電性ペーストが充填されて焼成されることで形成されている。電極層10~15のそれぞれは、誘電体層6上に配置されている。なお、図2に示す誘電体層6は、電極層10~15が配置されている誘電体層と、電極層10~15の形状に対応するパターンが設けられた誘電体層(パターンシート)とが重ねられて構成されている。
【0022】
電極層10は、第3方向D3から見て、L字状を呈している。電極層10は、第1部分10aと、第2部分10bと、を有している。第1部分10aは、第1方向D1に沿って延在している。第2部分10bは、第2方向D2に沿って延在している。第1部分10aには、主面2c側の端部から主面2cに向かって突出する突起部10cが設けられている。第2部分10bには、端面2b側の端部から端面2bに向かって突出する突起部10dが設けられている。
【0023】
電極層11~15は、電極層10と同様の構成を有している。電極層11は、第1部分11aと、第2部分11bと、を有している。第1部分11aには、突起部11cが設けられている。第2部分11bには、突起部11dが設けられている。電極層12は、第1部分12aと、第2部分12bと、を有している。第1部分12aには、突起部12cが設けられている。第2部分12bには、突起部12dが設けられている。電極層13は、第1部分13aと、第2部分13bと、を有している。第1部分13aには、突起部13cが設けられている。第2部分13bには、突起部13dが設けられている。
【0024】
電極層14は、第1部分14aと、第2部分14bと、を有している。第1部分14aには、突起部14cが設けられている。第2部分14bには、突起部14dが設けられている。電極層15は、第1部分15aと、第2部分15bと、を有している。第1部分15aには、突起部15cが設けられている。第2部分15bには、突起部15dが設けられている。
【0025】
第1端子電極4の第1電極部分4aは、電極層10~15の第1部分10a~15aが積層されることにより構成されている。第1端子電極4の第2電極部分4bは、電極層10~15の第2部分10b~15bが積層されることにより構成されている。第1端子電極4の第1突起部4cは、電極層10~15の突起部10c~15cが積層されることにより構成されている。第1端子電極4の第2突起部4dは、電極層10~15の突起部10d~15dが積層されることにより構成されている。
【0026】
図3に示されるように、第2端子電極5は、素体2に埋設されている。第2端子電極5は、端面2b及び主面2dに跨がって配置されている。本実施形態では、第2端子電極5の表面は、端面2b及び主面2dのそれぞれと面一である。
【0027】
第2端子電極5は、第3方向D3から見て、L字状を呈している。第2端子電極5は、第1電極部分5aと、第2電極部分5bと、を有している。第1電極部分5aと第2電極部分5bとは、素体2の稜線部において接続されており、互いに電気的に接続されている。第1電極部分5aは、第1方向D1に沿って延在している。第1電極部分5aは、第3方向D3から見て、長方形状を呈している。第2電極部分5bは、第2方向D2に沿って延在している。第2電極部分5bは、第3方向D3から見て、長方形状を呈している。第1電極部分5a及び第2電極部分5bは、第3方向D3に沿って延在している。
【0028】
第1電極部分5aには、第1突起部5cが設けられている。第1突起部5cは、第1電極部分5aの主面2c側の端部から主面2cに向かって突出している。第1突起部5cは、第1電極部分5aの端部において、端面2a側の位置に設けられている。第2電極部分5bには、第2突起部5dが設けられている。第2突起部5dは、第2電極部分5bの端面2a側の端部から端面2aに向かって突出している。第2突起部5dは、第2電極部分5bの端部において、主面2c側の位置に設けられている。第1突起部5c及び第2突起部5dのそれぞれは、先端が湾曲した形状を呈している。
【0029】
図2に示されるように、第2端子電極5は、複数の電極層16~21が積層されて構成されている。電極層16~21のそれぞれは、誘電体層6の凹部に設けられている。電極層16~21は、誘電体層6に凹部を形成し、凹部に導電性ペーストが充填されて焼成されることで形成されている。電極層16~21は、電極層10~15と同様の方法により形成される。電極層16~21のそれぞれは、誘電体層6上に配置されている。なお、図2に示す誘電体層6は、電極層16~21が配置されている誘電体層と、電極層16~21の形状に対応するパターンが設けられた誘電体層(パターンシート)とが重ねられて構成されている。
【0030】
電極層16は、第3方向D3から見て、L字状を呈している。電極層16は、第1部分16aと、第2部分16bと、を有している。第1部分16aは、第1方向D1に沿って延在している。第2部分16bは、第2方向D2に沿って延在している。第1部分16aには、主面2c側の端部から主面2cに向かって突出する突起部16cが設けられている。第2部分16bには、端面2a側の端部から端面2aに向かって突出する突起部16dが設けられている。
【0031】
電極層17~21は、電極層16と同様の構成を有している。電極層17は、第1部分17aと、第2部分17bと、を有している。第1部分17aには、突起部17cが設けられている。第2部分17bには、突起部17dが設けられている。電極層18は、第1部分18aと、第2部分18bと、を有している。第1部分18aには、突起部18cが設けられている。第2部分18bには、突起部18dが設けられている。電極層19は、第1部分19aと、第2部分19bと、を有している。第1部分19aには、突起部19cが設けられている。第2部分19bには、突起部19dが設けられている。
【0032】
電極層20は、第1部分20aと、第2部分20bと、を有している。第1部分20aには、突起部20cが設けられている。第2部分20bには、突起部20dが設けられている。電極層21は、第1部分21aと、第2部分21bと、を有している。第1部分21aには、突起部21cが設けられている。第2部分21bには、突起部21dが設けられている。
【0033】
第2端子電極5の第1電極部分5aは、電極層16~21の第1部分16a~21aが積層されることにより構成されている。第2端子電極5の第2電極部分5bは、電極層16~21の第2部分16b~21bが積層されることにより構成されている。第2端子電極5の第1突起部5cは、電極層16~21の突起部16c~21cが積層されることにより構成されている。第2端子電極5の第2突起部5dは、電極層16~21の突起部16d~21dが積層されることにより構成されている。
【0034】
積層コイル部品1は、図2に示されるように、素体2内にコイル7が配置されている。コイル7のコイル軸は、第3方向D3に沿って延在している。図2に示されるように、コイル7は、第1導体22と、第2導体23と、第3導体24と、第4導体25と、第5導体26と、第6導体27と、が電気的に接続されて構成されている。各導体22~27は、第3方向D3において、所定の厚みを有している。各導体22~27は、導電性材料(例えば、Ag又はPdなど)からなる。各導体22~27は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。本実施形態では、各導体22~27(コイル7)は、第1端子電極4及び第2端子電極5と同じ導電性材料で形成されている。各導体22~27と電極層10~15及び電極層16~21とは、同時焼成により形成される。各導体22~26のそれぞれは、誘電体層6上に配置されている。なお、図2に示す誘電体層6は、各導体22~27が配置されている誘電体層と、各導体22~27の形状に対応するパターンが設けられた誘電体層(パターンシート)とが重ねられて構成されている。
【0035】
コイル7の一端部と第1端子電極4とは、接続部27aによって電気的に接続されている。コイル7の他端部と第2端子電極5とは、接続部22aによって電気的に接続されている。接続部22aは、第1導体22と一体に形成されている。接続部27aは、第6導体27と一体に形成されている。
【0036】
図3に示されるように、積層コイル部品1では、第1端子電極4の第1電極部分4aにおいて主面(実装面)2dに対して最も離れた位置である第1突起部4cの端部から、端面2aに向けて第2方向D2に延びる仮想線L1と、主面2dとの間に素体2が存在している。すなわち、積層コイル部品1では、第1突起部4cと端面2aとの間に、素体2が存在している。また、積層コイル部品1では、第1端子電極4の第2電極部分4bにおいて端面2aに対して最も離れた位置である第2突起部4dの端部から、主面2dに向けて第1方向D1に延びる仮想線L2と、端面2aとの間に素体2が存在している。すなわち、積層コイル部品1では、第1突起部5cと端面2bとの間に、素体2が存在している。
【0037】
積層コイル部品1では、第2端子電極5の第1電極部分5aにおいて主面2dに対して最も離れた位置である第1突起部5cの端部から、端面2bに向けて第2方向D2に延びる仮想線L3と、主面2dとの間に素体2が存在している。すなわち、積層コイル部品1では、第2突起部4dと主面2dとの間に、素体2が存在している。また、積層コイル部品1では、第2端子電極5の第2電極部分5bにおいて端面2bに対して最も離れた位置である第2突起部5dの端部から、主面2dに向けて第1方向D1に延びる仮想線L4と、端面2bとの間に素体2が存在している。すなわち、積層コイル部品1では、第2突起部5dと主面2dとの間に、素体2が存在している。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1では、上記仮想線L1,L3と実装面である主面2dとの間に素体2が存在している。これにより、積層コイル部品1では、第1端子電極4及び第2端子電極5に対して、第2方向D2において端面2a,2bの外側に向かう力が作用したとしても、第1電極部分4aの第1突起部4cと端面2aとの間、及び、第1電極部分5aと第1突起部5cとの間に素体2が存在しているため、第1電極部分4a,5aの剥離が素体2によって阻止される。具体的には、第1突起部4c及び第1突起部5cが素体2に引っ掛かる(係止される)ため、第1電極部分4a,5aの剥離が素体2によって阻止される。したがって、積層コイル部品1では、素体2からの第1端子電極4及び第2端子電極5の剥離を抑制できる。
【0039】
積層コイル部品1が回路基板等に実装された場合、熱衝撃により素体2に加わる力は、実装面である主面2dから離れた位置の第1電極部分4a,5aの端部に最も大きく作用する傾向にある。これにより、積層コイル部品1では、第1電極部分4a,5aの素体2からの剥離が生じ易い。そのため、素体2の主面2dが実装面である場合において、仮想線L1,L3と端面2a,2bとの間に素体2が存在している構成は、第1電極部分4a,5aの剥離の抑制に特に有効である。
【0040】
また、積層コイル部品1では、上記構成により、素体2からの第1端子電極4及び第2端子電極5の剥離を抑制できる。そのため、積層コイル部品1では、従来のように固定部を設けなくてもよい。したがって、積層コイル部品1では、コイル7との間に浮遊容量が発生することを抑制できる。そのため、積層コイル部品1では、特性の低下を抑制できる。
【0041】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、第1端子電極4及び第2端子電極5は、第2電極部分4b,5bを有しており、第2電極部分4b,5bは、素体2内に配置されている。積層コイル部品1では、素体2内に位置する第2電極部分4b,5bにおいて端面2a,2bに対して第2方向D2で最も離れた位置から、主面2dに向けて第1方向D1に延びる仮想線L2,L4と、端面2a,2bとの間に素体2が存在していている。この構成でぇあ、仮想線L2,L4と端面2a,2bとの間に素体2が存在している。これにより、積層コイル部品1では、第1端子電極4及び第2端子電極5に対して、第1方向D1において主面2dの外側に向かう力が作用したとしても、第2電極部分4bの第2突起部4dと主面2dとの間、及び、第2電極部分5bの第2突起部5dと主面2dとの間に素体2が存在しているため、第2電極部分4b,5bの剥離が素体2によって阻止される。したがって、積層コイル部品1では、素体2からの第1端子電極4及び第2端子電極5をより一層抑制できる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0043】
上記実施形態では、第1端子電極4の第1電極部分4aに第1突起部4cが設けられおり、第2電極部分4bに第2突起部4dが設けられている形態を一例に説明した。同様に、第2端子電極5の第1電極部分5aに第1突起部5cが設けられおり、第2電極部分5bに第2突起部5dが設けられている形態を一例に説明した。しかし、突起部は、第1電極部分4a,5a及び第2電極部分4b,5bの少なくとも一方に設けられていればよい。素体2の主面2dが実装面である場合には、第1電極部分4a,5aに突起部が設けられていることが好ましい。
【0044】
上記実施形態では、第1端子電極4が素体2に埋設されており、第1端子電極4の表面が端面2a及び主面2dのそれぞれと面一である形態を一例に説明した。第2端子電極5も同様に、第2端子電極5が素体2に埋設されており、第2端子電極5の表面が端面2b及び主面2dのそれぞれと面一である形態を一例に説明した。しかし、第1端子電極4及び第2端子電極5の形状はこれに限定されない。例えば、第1端子電極4の第2電極部分4b及び第2端子電極5の第2電極部分5bは、主面2d上に配置されていてもよい。この構成では、少なくとも、第1端子電極4の第1電極部分に第1突起部4cが設けられており、第2端子電極5の第1電極部分5aに第1突起部5cに設けられていてもよい。
【0045】
上記実施形態では、素体2内にコイル7が配置されており、コイル7が各導体22~27で構成されている形態を一例に説明した。しかし、コイルの構成はこれに限定されない。
【0046】
図4に示されるように、例えば、図4に示されるように、素体2A内に配置されているコイル7Aは、第1導体30と、第2導体31と、第3導体32と、第4導体33と、第5導体34と、第6導体35と、第7導体36と、が電気的に接続されて構成されている。なお、図4に示す第1端子電極4は、電極層10~15に加えて、電極層15Aを含んで構成されている。電極層15Aは、第1部分15Aa、第2部分15Ab、第1突起部15Ac及び第2突起部15Adを有している。第2端子電極5は、電極層16~21に加えて、電極層21Aを含んで構成されている。電極層21Aは、第1部分21Aa、第2部分21Ab、第1突起部21Ac及び第2突起部21Adを有している。
【0047】
コイル7Aの一端部と第1端子電極4とは、接続部36aによって電気的に接続されている。コイル7Aの他端部と第2端子電極5とは、接続部30aによって電気的に接続されている。接続部30aは、第1導体30と一体に形成されている。接続部36aは、第7導体36と一体に形成されている。
【0048】
上記実施形態では、仮想線L1,L3と主面2dとの間に素体2を存在させる構成として、第1端子電極4の第1電極部分4aに第1突起部4cが設けられており、第2端子電極5の第1電極部分5aに第1突起部5cが設けられている形態を一例に説明した。また、仮想線L2,L4と端面2a,2bとの間に素体2を存在させる構成として、第1端子電極4の第2電極部分4bに第2突起部4dが設けられており、第2端子電極5の第2電極部分5bに第2突起部5dが設けられている形態を一例に説明した。しかし、仮想線L1,L3と主面2dとの間、及び、仮想線L2,L4と端面2a,2bとの間に素体2を存在させる構成はこれに限定されない。
【0049】
図5(a)に示されるように、第1端子電極4Aの第1電極部分4Aaに設けられる第1突起部4Ac、第2電極部分4Abに設けられる第2突起部4Adは、先端に向かって先細りとなる形状を呈していてもよい。同様に、第2端子電極5Aの第1電極部分5Aaに設けられる第1突起部5Ac、第2電極部分5Abに設けられる第2突起部5Adは、先端に向かって先細りとなる形状を呈していてもよい。
【0050】
図5(b)に示されるように、第1端子電極4Bの第1電極部分4Baに設けられる第1突起部4Bc、第2電極部分4Bbに設けられる第2突起部4Bdは、扇形を呈していてもよい。同様に、第2端子電極5Bの第1電極部分5Baに設けられる第1突起部5Bc、第2電極部分5Bbに設けられる第2突起部5Bdは、扇形を呈していてもよい。
【0051】
図6(a)に示されるように、第1端子電極4Cの第1電極部分4Caに凹部4Ccが設けられており、第2電極部分4Cbに凹部4Cdが設けられていてもよい。同様に、第2端子電極5Cの第1電極部分5Caに凹部5Ccが設けられており、第2電極部分5Cbに凹部5Cdが設けられていてもよい。
【0052】
図6(b)に示されるように、第1端子電極4Dの第1電極部分4Daに設けられる第1突起部4Dcは、主面2c側に向かって延在していてもよい。同様に、第2端子電極5Dの第1電極部分5Daに設けられる第1突起部5Dcは、主面2c側に向かって延在していてもよい。なお、第1端子電極4Dの第2電極部分4Dbに設けられる第2突起部4Dd及び第2端子電極5の第2電極部分5Dbに設けられる第2突起部5Ddが、端面2a,2b側に延在していてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…積層コイル部品、2…素体、2a,2b…端面(第1面、第2面)、2c,2d…主面(第1面、第2面)、2e,2f…側面、4…第1端子電極、4a…第1電極部分、4b…第2電極部分、4c…第1突起部、4d…第2突起部、5…第2端子電極、5a…第1電極部分、5b…第2電極部分、5c…第1突起部、5d…第2突起部、L1~L4…仮想線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6