(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186942
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】放射性薬剤投与装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20221208BHJP
A61M 36/06 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A61M5/168 516
A61M5/168 500
A61M36/06
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171720
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2018116194の分割
【原出願日】2018-06-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 広明
(57)【要約】
【課題】配管部品の交換後の不備を適切に検出する。
【解決手段】放射性薬剤投与装置1は、放射性薬剤または放射性薬剤を輸送するための輸送液を吸入及び排出可能なシリンジと、シリンジに対して放射性薬剤又は輸送液を供給する吸入ラインと、放射性薬剤の投与先に接続可能な投与部に対してシリンジを接続するラインと、吸入ライン上およびライン上に設けられた複数の逆止弁と、を含む配管部品91と、配管部品91のライン上で、ラインの開閉動作を行うバルブとしてのピンチバルブ33,35と、ライン内の圧力を検出する圧力検出部としての操作部51,52と、バルブの開閉、シリンジの吸引および吐出を制御する制御部41と、を有する。制御部41は、バルブを閉じた状態でシリンジの吐出を行った際のライン内の気体の圧力を圧力検出部で検出し、検出結果が所定の範囲内であるか否かを判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性薬剤または前記放射性薬剤を輸送するための輸送液を吸入及び排出可能なシリンジと、前記シリンジに対して前記放射性薬剤又は前記輸送液を供給する吸入ラインと、前記放射性薬剤の投与先に接続可能な投与部に対して前記シリンジを接続するラインと、前記吸入ライン上および前記ライン上に設けられた複数の逆止弁と、を含む配管部品と、
前記配管部品の前記ライン上で、前記ラインの開閉動作を行うバルブと、
前記ライン内の圧力を検出する圧力検出部と、
前記バルブの開閉、前記シリンジの吸引および吐出を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記バルブを閉じた状態で前記シリンジの吐出を行った際の前記ライン内の気体の圧力を前記圧力検出部で検出し、検出結果が所定の範囲内であるか否かを判定する、放射性薬剤投与装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出結果が所定の範囲内ではない場合に、前記配管部品を使用した前記放射性薬剤の投与動作を禁止する、請求項1に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検出結果が所定の範囲内ではない場合に、前記配管部品の交換を検知し、且つ、交換後の前記配管部品を用いて、前記バルブを閉じた状態で前記シリンジの吐出を行った際の前記ライン内の気体の圧力を前記圧力検出部で検出し、検出結果が所定の範囲内となった場合に、前記配管部品を使用した前記放射性薬剤の投与動作の禁止を解除する、請求項1または2に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記バルブを閉じた状態で前記シリンジの吐出を行う前に、前記バルブを開けた状態で前記シリンジの吸引および吐出を所定回数実施する、請求項1~3のいずれか一項に記載の放射性薬剤投与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性薬剤投与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この分野の技術として下記特許文献1に記載の放射性薬剤投与装置が知られている。この装置では、輸送液を搬送するための輸送ラインが、輸送液シリンジと翼付針とを接続している。この輸送ラインに対して、放射性薬剤を供給するための薬剤ラインが合流している。所望の放射能量の放射性薬剤が、薬剤シリンジから薬剤ラインを通じて輸送ラインに送り込まれた後、輸送液と一緒に輸送液シリンジで押し出されることにより、輸送ライン及び翼付針を通じて患者に放射性薬剤が投与される。上記の輸送ライン等はピンチバルブ等を用いて接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の放射性薬剤投与装置では、液体が流れるラインおよびシリンジ等の送液に関与する部品(配管部品)がディスポーザブル(使い捨て)の消耗品であり、頻繁に交換される。ここで、配管部品の一部が適切に動作しないような事象、すなわち、配管部品の不備が発生すると、装置を使用する作業者が影響を受ける場合がある。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、配管部品の不備を適切に検出することが可能な放射性薬剤投与装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る放射性薬剤投与装置は、放射性薬剤または前記放射性薬剤を輸送するための輸送液を吸入及び排出可能なシリンジと、前記シリンジに対して前記放射性薬剤又は前記輸送液を供給する吸入ラインと、前記放射性薬剤の投与先に接続可能な投与部に対して前記シリンジを接続するラインと、前記吸入ライン上および前記ライン上に設けられた複数の逆止弁と、を含む配管部品と、前記配管部品の前記ライン上で、前記ラインの開閉動作を行うバルブと、前記ライン内の圧力を検出する圧力検出部と、前記バルブの開閉、前記シリンジの吸引および吐出を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記バルブを閉じた状態で前記シリンジの吐出を行った際の前記ライン内の気体の圧力を前記圧力検出部で検出し、検出結果が所定の範囲内であるか否かを判定する。
【0007】
上記の放射性薬剤投与装置によれば、制御部において、配管部品のライン上のバルブを閉じた状態でシリンジの吐出を行った際のライン内の気体の圧力を圧力検出部で検出し、検出結果が所定の範囲内であるか否かを判定することで、配管部品の動作確認、特に、ライン上および吸入ライン上に設けられた逆止弁の動作確認を行うことができる。したがって、配管部品を交換した後に、配管部品の不備を適切に検出することが可能となる。
【0008】
ここで、前記制御部は、前記検出結果が所定の範囲内ではない場合に、前記配管部品を使用した前記放射性薬剤の投与動作を禁止する態様とすることができる。
【0009】
このように、検出結果が所定の範囲内ではない場合に、配管部品を使用した前記放射性薬剤の投与動作を禁止することで、不備があると判定された配管部品を使用して放射性薬剤の投与動作が行われることを防ぐことができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記検出結果が所定の範囲内ではない場合に、前記配管部品の交換を検知し、且つ、交換後の前記配管部品を用いて、前記バルブを閉じた状態で前記シリンジの吐出を行った際の前記ライン内の気体の圧力を前記圧力検出部で検出し、検出結果が所定の範囲内となった場合に、前記配管部品を使用した前記放射性薬剤の投与動作の禁止を解除する態様とすることができる。
【0011】
このように、検出結果が所定の範囲内ではない場合に、配管部品の交換を検知し、且つ、交換後の配管部品を用いて、バルブを閉じた状態でシリンジの吐出を行った際のライン内の気体の圧力の検出結果が所定の範囲内となった場合に、配管部品を使用した放射性薬剤の投与動作の禁止を解除することで、不備があると判定された配管部品が新たな配管部品に交換され、且つ交換後の配管部品に不備がないことを確認した後に、放射性薬剤の投与動作を再開することができるため、不備があると判定された配管部品を使用して放射性薬剤の投与動作が行われることをより確実に防ぐことができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記バルブを閉じた状態で前記シリンジの吐出を行う前に、前記バルブを開けた状態で前記シリンジの吸引および吐出を所定回数実施する態様とすることができる。
【0013】
上記のように、バルブを閉じた状態でシリンジの吐出を行う前に、バルブを開けた状態でシリンジの吸引および吐出を所定回数実施することで、シリンジの吸引および吐出によるライン内の気体の移動を利用して配管部品の慣らし動作を行うことができる。そのため、配管部品の各部の製造誤差等に由来する動作不良を解消することができ、配管部品の不備が不用に検出されることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、配管部品の交換後の不備を適切に検出することが可能な放射性薬剤投与装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】放射性薬剤投与装置の主要部を模式的に示す図である。
【
図3】制御部の制御によって行われる慣らし動作の手順を説明するフロー図である。
【
図4】配管部品の動作確認の手順を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、放射性薬剤投与装置1の主要部を模式的に示す図である。また、
図2は、放射性薬剤投与装置1の全体図である。
【0018】
図1に示される放射性薬剤投与装置1(以下、単に「装置1」という)は、PET(ポジトロン断層撮影法)検査を受ける被験者(投与先)に対して放射性薬剤Rを投与する装置である。
【0019】
装置1は、放射性薬剤Rを収容する薬剤バイアル3と、薬剤バイアル3から放射性薬剤Rを吸入すると共に吸入した放射性薬剤Rを排出する薬剤シリンジ5と、を備えている。また、装置1は、生理食塩水(輸送液)Qを収容する生食パック7と、生食パック7から生理食塩水Qを吸入すると共に吸入した生理食塩水Qを排出する生食シリンジ9(輸送液シリンジ)と、を備えている。
【0020】
装置1は、生食パック7と生食シリンジ9とを接続する生食吸入ライン13と、生食シリンジ9と翼付針11(投与部)とを接続する輸送ライン15を備えている。生食吸入ライン13と輸送ライン15とは、生食シリンジ9の出入口近傍で一部重複してもよい。生食吸入ライン13には、生食パック7に刺入される採取針13aが含まれる。また、装置1は、薬剤バイアル3と薬剤シリンジ5とを接続する薬剤吸入ライン17と、薬剤シリンジ5と輸送ライン15とを接続する薬剤ライン19を備えている。薬剤ライン19は、生食シリンジ9と翼付針11との間の合流部21において輸送ライン15に合流している。薬剤吸入ライン17と薬剤ライン19とは、薬剤シリンジ5の出入口近傍で一部重複してもよい。薬剤吸入ライン17には、薬剤バイアル3に刺入される採取針17aが含まれる。
【0021】
また、装置1は、合流部21と翼付針11との間の分岐部23において輸送ライン15から分岐した廃液ライン27を備えている。廃液ライン27の終端は廃液ボトル10に接続されている。また、廃液ライン27の途中には廃液バッファ28も設けられている。以下、輸送ライン15のうち、生食シリンジ9から合流部21までの部分を輸送ライン上流部15a、合流部21から分岐部23までの部分を輸送ライン中流部15b、分岐部23から翼付針11までの部分を輸送ライン下流部15cと呼ぶ。
【0022】
装置1は、複数(5つ)の逆止弁V11,V13,V15,V17,V19を備えている。逆止弁V11,V13は生食吸入ライン13上に設けられている。逆止弁V11は、輸送ライン上流部15a上に設けられ、輸送ライン上流部15aにおける生理食塩水Qの流動を、生食シリンジ9から翼付針11に向かう方向の一方向に制限し、逆流を禁止する。逆止弁V13は、生食吸入ライン13における生理食塩水Qの流動を、生食パック7から生食シリンジ9に向かう方向の一方向に制限し、逆流を禁止する。逆止弁V15は輸送ライン上流部15a上に設けられている。逆止弁V15は、輸送ライン上流部15aにおける生理食塩水Qの流動を、生食シリンジ9から翼付針11に向かう方向の一方向に制限し、逆流を禁止する。逆止弁V17は薬剤吸入ライン17上に設けられている。逆止弁V11,V15は、どちらも、輸送ライン上流部15a上に設けられ、輸送ライン上流部15aにおける生理食塩水Qの流動の逆流を禁止している。
【0023】
逆止弁V17は、薬剤吸入ライン17における放射性薬剤Rの流動を、薬剤バイアル3から薬剤シリンジ5に向かう方向の一方向に制限し、逆流を禁止する。逆止弁V19は合流部21に設けられている。逆止弁V19は、薬剤ライン19から輸送ライン15への放射性薬剤Rの流動を許容し、輸送ライン15から薬剤ライン19への生理食塩水Qの逆流を禁止する。
【0024】
このように、逆止弁V11,V13,V15,V17,V19は、シリンジ(薬剤シリンジ5または生食シリンジ9)と投与部(翼付針11)とを接続するライン(輸送ライン15または薬剤ライン19)上、もしくは、シリンジに対して薬剤または輸送液を供給する吸入ライン(生食吸入ライン13または薬剤吸入ライン17)上に設けられている。逆止弁V11,V13,V15,V17,V19の構造としては、例えば、ダックビルバルブ構造が採用されてもよい。
【0025】
薬剤シリンジ5の周囲には、当該薬剤シリンジ5に吸入された放射性薬剤Rの放射能量を測定する測定ユニット31が設けられている。また、輸送ライン下流部15c上には開閉可能なピンチバルブ33が設けられており、廃液ライン27上には開閉可能なピンチバルブ35が設けられている。また、輸送ライン下流部15c上には放射性薬剤Rの通過を検出する通過センサ37が設けられている。輸送ライン下流部15c上において、翼付針11の直ぐ上流の位置には、フィルタ39が設けられている。
【0026】
また、装置1は、放射性薬剤Rからの放射線を遮蔽すべく、薬剤バイアル3を収納する遮蔽室43と、薬剤シリンジ5を収納する遮蔽室45と、廃液ボトル10を収納する遮蔽室47とを備えている。
【0027】
また、装置1は、薬剤シリンジ5及び生食シリンジ9のピストンを駆動し、薬剤シリンジ5及び生食シリンジ9による液体の吸入及び排出を制御する制御部41を備えている。薬剤シリンジ5には、吸引/吐出動作を行うために、シリンジに挿入されるシリンジロッド50の押し込み/引き出しを行う操作部51が設けられている。この操作部51はシリンジ側からの圧力を検出する圧力センサを有する。すなわち、操作部51は、ライン内の圧力を検出する圧力センサ(圧力検出部)としても機能する。薬剤シリンジ5と同様に、生食シリンジ9には、シリンジの吸引/吐出動作を行うために、シリンジに挿入されるシリンジロッド90のシリンジの押し込み/引き出しを行う操作部52が設けられている。この操作部52もライン内の圧力を検出する圧力センサ(圧力検出部)としての機能を有する。制御部41は、操作部51,52に設けられた圧力センサの計測値を利用して、上述のライン内の動作を確認する機能を有する。この点は後述する。制御部41は、更に、ピンチバルブ33,35の開閉動作を制御する。
【0028】
なお、各ライン(生食吸入ライン13,輸送ライン15、薬剤吸入ライン17、薬剤ライン19等)は、例えば、滅菌されたエクステンションチューブ等の管体によって形成されている。また、上記各ラインの接続部や分岐部には、例えば、T字管等の官材が適宜挿入されている。
【0029】
続いて、装置1による放射性薬剤の投与に係る動作について説明する。装置1は、制御部41による制御下で薬剤シリンジ5、生食シリンジ9、ピンチバルブ33,35等が駆動されることにより、以下のように動作する。輸送ライン15に生理食塩水Qが充填された状態を初期状態とする。この初期状態から、翼付針11が被験者に刺入される。その後、薬剤シリンジ5のピストンが引下げられると、薬剤バイアル3の放射性薬剤Rが、薬剤吸入ライン17を通じて薬剤シリンジ5に吸入される。
【0030】
その後、ピンチバルブ33が閉じピンチバルブ35が開いた状態で、薬剤シリンジ5のピストンが押上げられる。これにより、薬剤ライン19及び逆止弁V19を通じて、薬剤シリンジ5から輸送ライン15に対して放射性薬剤Rが押込まれる。このとき、輸送ライン15の余剰の生理食塩水Qは、廃液ライン27を通じて廃液ボトル10に排出される。この動作により、輸送ライン15上にあった生理食塩水Qの一部が、放射性薬剤Rに置換される。なお、置換された放射性薬剤Rは、例えば、輸送ライン中流部15b内に収容される。放射性薬剤Rの放射能量が測定ユニット31により測定されるので、当該放射能量に応じて被験者に投与すべき放射性薬剤Rの量が算出され、この投与すべき量の放射性薬剤Rが輸送ライン15に押込まれる。
【0031】
その後、生食シリンジ9のピストンが引下げられると、生食パック7の生理食塩水Qが、生食吸入ライン13を通じて生食シリンジ9に吸入される。その後、ピンチバルブ33が開きピンチバルブ35が閉じた状態で、生食シリンジ9のピストンが押上げられる。これにより、輸送ライン15内にあった放射性薬剤Rは、生食シリンジ9からの圧力により、翼付針11を通じて生理食塩水Qと一緒に被験者の体内に投与される。
【0032】
図1に示されるように、上述のような装置1の組立ての際には、筐体2内に、薬剤バイアル3と、生食パック7と、廃液ボトル10とが設置されると共に、配管部品91が組み付けられる。そして、配管部品91が備える配管によって、薬剤バイアル3、生食パック7、及び廃液ボトル10等が適宜接続されて、前述のように被験者に放射性薬剤Rを投与するための回路が形成される。
【0033】
配管部品91には、次に列挙する構成要素が含まれる。
薬剤吸入ライン17のうち採取針17aを除く部分
薬剤ライン19
生食吸入ライン13
輸送ライン上流部15a
輸送ライン中流部15b
輸送ライン下流部15cのうち分岐部23とフィルタ39とを接続する部分
廃液ライン27のうち分岐部23と廃液バッファ28とを接続する部分
薬剤シリンジ5
生食シリンジ9
逆止弁V11、V13、V15、V17、V19
【0034】
配管部品91は、上述の各構成要素を形成するためのエクステンションチューブやシリンジ等が事前に一体的に接続されることで構成されている。そして、配管部品91は、消耗品として適宜交換される。
【0035】
図2では、装置1から配管部品91を取り外した状態を示している。筐体2側には、遮蔽室43,45,47(図示せず)が設けられる。また、制御部41に対して接続される操作部51,52、制御部41による制御内容および放射性薬剤の製造条件等を表示するモニタ71等が設けられる。また、装置1の筐体2は、移動手段としてのタイヤ72が設けられて、移動可能であってもよい。
【0036】
ここで、本実施形態に係る装置1では、配管部品91を装置1に対して組み付けた際に、放射性薬剤の投与に係る動作を行う前に、制御部41により配管部品91の動作確認を行うことを特徴とする。この制御部41による動作確認について、以下、説明する。
【0037】
配管部品91は、上述したように、主に液体が流れるラインと、ライン内の液体を制御するためのシリンジとが含まれる。したがって、ライン上に設けられる逆止弁等も配管部品91に含まれる。これらの部品から構成される配管部品91は、配管部品91の製造業者において、出荷前の検査が行われる。しかしながら、配管部品91の出荷時には、配管部品91の動作が正常であっても時間経過に伴いその特性が変化してしまい、配管部品91を装置1に組み付けた際に適切に動作しないことが考えられる。また、配管部品91を装置1に組み付けて放射性薬剤を流し始めた後に、例えば、逆止弁が適切に動作しない、などの配管部品91の不備が見つかった場合、配管部品91の交換が必要となる。配管部品91に放射性薬剤を流し始めた後の配管部品91の交換作業を行うことで、作業者が被曝する可能性も考えられる。このように、配管部品91の使用開始後に不良が確認されると、交換作業等を含めて作業者への負担が増大する可能性がある。
【0038】
また、配管部品91のライン同士の接続部分および逆止弁等は、製造誤差等によって弁の開閉が適切に行われない場合がある。製造誤差に由来した動作不良は、慣らし動作を事前に行うことで改善されることが多いため、配管部品91に対して放射性薬剤を流す前に慣らし動作を行うことが好ましい。
【0039】
そこで、装置1では、配管部品91を取り付けた後に、制御部41による制御により、ライン内の逆止弁等の各部品が所望の動作をするように慣らし動作を行った後に、配管部品91の各部(逆止弁等)の機能を確認する。機能確認時は、制御部41では、放射性薬剤等を流す前に配管部品91内にライン内に気体を流し、装置1の操作部51,52の圧力検出部としての機能等を利用して、内圧を適切に制御できるかを評価する。なお、本実施形態ではライン内に流す気体が空気である場合について説明するが、気体の種類は限定されない。
【0040】
図3は、配管部品91を取り付けた後に制御部41の制御によって行われる慣らし動作の手順を説明するフロー図である。
図3に示すように、制御部41は、まずバルブを開状態とする(S01)。開状態とするバルブは、配管部品91に取り付けられるピンチバルブ33,35である。次に、制御部41は、薬剤シリンジ5および生食シリンジ9の吸引/吐出動作(ストローク動作)を行う(S02)。制御部41による薬剤シリンジ5および生食シリンジ9の吸引/吐出動作は、制御部41により操作部51,52を操作し、シリンジロッド50,90の押し込み/引き出しを実施することで行われる。制御部41は、薬剤シリンジ5および生食シリンジ9の吸引/吐出動作を繰り返す。
【0041】
制御部41では、薬剤シリンジ5および生食シリンジ9の吸引/吐出動作(ストローク動作)の回数が所定の閾値以上となった場合(S03-YES)には、動作を終了する。すなわち、薬剤シリンジ5および生食シリンジ9の吸引/吐出動作(ストローク動作)の回数が所定の閾値となるまで(S03-NO)は、ストローク動作を繰り返す。
【0042】
以上の手順により、薬剤シリンジ5および生食シリンジ9の吸引/吐出動作(ストローク動作)が所定回数以上繰り返すことになる。したがって、シリンジの吸引/吐出動作によるライン内の空気の移動に伴って各逆止弁のそれぞれについても、空気の流れに対して所定の制限(一方向のみへの移動および逆方向への移動の規制)が行われる。
【0043】
なお、薬剤シリンジ5および生食シリンジ9の吸引/吐出動作は同時に行う必要はなく、個別に行ってもよい。慣らし動作は、薬剤シリンジ5および生食シリンジ9のそれぞれについて独自に実施することができる。ただし、逆止弁を通過する空気の量(または逆止弁により規制される空気の量)を大きくするためには、薬剤シリンジ5および生食シリンジ9での吸引/吐出動作は同時に行うことが好ましい。
【0044】
次に、
図4を参照しながら、慣らし動作を行った後の配管部品91の動作を確認する手順について説明する。
【0045】
まず、制御部41により、配管部品91に取り付けられるピンチバルブ33,35を閉じた状態で、薬剤シリンジ5および生食シリンジ9の吸引動作を行う(S11)。制御部41により操作部51,52を操作することで、薬剤シリンジ5および生食シリンジ9内に空気が滞留した状態が形成される。この状態は、動作確認を行う際の初期状態とされる。
【0046】
次に、制御部41により、配管部品91に取り付けられるピンチバルブ33,35を閉じる(S12)。ピンチバルブ33,35を閉じることで、配管部品91内の空気は外部への移動が規制された状態となる。この状態で、制御部41は、操作部51,52のそれぞれがシリンジから受ける力を確認することで、動作確認を開始する前のライン内の空気の圧力を確認する(S13)。ライン内の空気の圧力が大きい(大気圧よりも高い)場合には、操作部51,52は、ライン内の空気がシリンジロッド50,90を押す力を受ける。操作部51,52ではこの力の大きさを計測することで、ライン内の空気の圧力を確認する。
【0047】
次に、制御部41は、操作部51,52を操作することで、薬剤シリンジ5および生食シリンジ9の吐出動作を行う(S14)。吐出動作を行うことで、薬剤シリンジ5および生食シリンジ9に貯留されていた空気がライン内に導入される。そのため、ライン内の圧力は高くなると考えられる。その状態で、制御部41は、操作部51,52のそれぞれがシリンジロッド50,90から受ける力を確認することで、ライン内の空気の圧力を確認する(S15)。そして、検出された圧力が所定の範囲内であるかを評価する。具体的には、検出された圧力が予め定められた閾値より大きいか否かを評価する。このとき、ピンチバルブ33,35は閉じているため、ラインに設けられた逆止弁が適切に動作している場合には、ライン内の空気の圧力は高められているはずである。一方、逆止弁の動作が適切ではない場合には、ライン内の空気の一部が逆止弁から外部へ排出されて、ライン内の空気の圧力が高くならないと考えられる。閾値は、逆止弁が適切に動作していることを想定して設定される。したがって、操作部51,52のそれぞれで検出された圧力が所定の閾値よりも大きい場合(S15-YES)には、制御部41において、逆止弁が適切に動作していることが確認できたと判断し、制御部41の制御によりピンチバルブ33,35を開放して、ライン内の空気の圧力を下げ(S16)、その後、ピンチバルブ33,35を閉じる(S17)。このように、逆止弁の動作が適切であることが確認できた上で一連の動作を終了した場合には、引き続き、放射性薬剤の投与に係る手順に進んでもよい。
【0048】
一方、操作部51,52のそれぞれで検出された圧力が所定の閾値以下である場合(S15-NO)には、逆止弁の動作が適切ではないことが考えられるため、制御部41では、当該配管部品91を使用できないと判断し、NG処理を実行して(S18)処理を終了する。NG処理とは、例えば、当該配管部品91を使用した放射性薬剤の投与に係る動作が実施できないようにする、配管部品91の交換を行った後に、再度慣らし動作および動作確認を行うまでは放射性薬剤の投与に係る動作を制限する等の対応が挙げられる。
【0049】
なお、動作確認における薬剤シリンジ5および生食シリンジ9の吸引/吐出動作は同時に行う必要はなく、個別に行ってもよい。吸引/吐出動作は、薬剤シリンジ5および生食シリンジ9のそれぞれについて独自に実施することができる。薬剤シリンジ5および生食シリンジ9の吸引/吐出動作を個別に行って動作確認を行う場合、ライン内の空気の圧力が十分に上昇しない(S15-NO)場合に、不適切な動作を行う逆止弁を特定できる可能性を高めることができる。ただし、配管部品91は、基本的に一体的に交換されることから、問題がある逆止弁を特定しなくてもよい。このような場合には、動作確認における薬剤シリンジ5および生食シリンジ9の吸引/吐出動作は同時に行うことで、配管部品91全体としての動作確認を速やかに行うことができる。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る放射性薬剤投与装置1によれば、制御部41において、配管部品91のライン上のバルブ(ピンチバルブ33,35)を閉じた状態でシリンジ(薬剤シリンジ5または生食シリンジ9)の吐出を行った際のライン内の気体の圧力を圧力検出部としての操作部51,52で検出し、検出結果が所定の範囲内であるか否かを判定する。このような構成とすることで、放射性薬剤投与装置1では、配管部品91の動作確認、特に、ライン上および吸入ライン上に設けられた逆止弁の動作確認を行うことができる。したがって、配管部品91を交換した後に、配管部品91の不備を適切に検出することが可能となる。
【0051】
また、放射性薬剤投与装置1では、検出結果が所定の範囲内ではない場合に、NG処理の一環として、配管部品91を使用した放射性薬剤の投与動作を禁止することができる。このような構成とした場合、不備があると判定された配管部品91を使用して放射性薬剤の投与動作が行われることを防ぐことができる。
【0052】
さらに、検出結果が所定の範囲内ではない場合に、配管部品91の交換を検知し、且つ、交換後の配管部品91を用いて、バルブを閉じた状態でシリンジの吐出を行った際のライン内の気体の圧力の検出結果が所定の範囲内となった場合に、交換後の配管部品91を使用した放射性薬剤の投与動作の禁止を解除することもできる。このような構成とした場合、不備があると判定された配管部品91が新たな配管部品91に交換され、且つ交換後の配管部品91に不備がないことを確認した後に、放射性薬剤の投与動作を再開することができるため、不備があると判定された配管部品91を使用して放射性薬剤の投与動作が行われることをより確実に防ぐことができる。
【0053】
また、放射性薬剤投与装置1では、バルブを閉じた状態でのシリンジの吐出から始まる動作確認を行う前に、バルブを開けた状態でシリンジの吸引および吐出を所定回数実施することで、シリンジの吸引および吐出によるライン内の気体の移動を利用して配管部品の慣らし動作を行うことができる。そのため、配管部品91の各部の製造誤差等に由来する動作不良を解消することができ、製造誤差等に由来する動作不良が、配管部品91の不備として検出されることを防ぐことができる。
【0054】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、実施例の変形例を構成することも可能である。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0055】
例えば、放射性薬剤投与装置1の配管部品91に設けられる逆止弁の数および配置は適宜変更することができる。また、配管部品91におけるライン、シリンジ、および吸入ラインの構成も適宜変更できる。
【0056】
また、圧力検出部は、シリンジロッド50,90が受ける力を検出する機構には限定されない。配管部品91のライン内に気体が流れ込んだ状態で、内圧を検出可能であれば、その構成は特に限定されない。
【符号の説明】
【0057】
1…放射性薬剤投与装置、5…薬剤シリンジ、9…生食シリンジ(輸送液シリンジ)、11…翼付針(投与部)、13…生食吸入ライン、15…輸送ライン、17…薬剤吸入ライン、19…薬剤ライン、91…配管部品、Q…生理食塩水(輸送液)、R…放射性薬剤、V11,V13,V15,V17,V19…逆止弁。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性薬剤を吸入及び排出可能なシリンジと、前記放射性薬剤の投与先に接続可能な投与部に対して前記シリンジを接続するラインと、
前記ライン上で、前記ラインの開閉動作を行うバルブと、
前記ライン内の圧力を検出する圧力検出部と、
前記シリンジと前記ラインと前記バルブとが組み付けられた筐体と、
を有し、
前記圧力検出部は、前記シリンジと前記ラインと前記バルブとによって前記放射性薬剤を投与する回路が形成され、且つ前記バルブを閉じた状態で、前記シリンジの吐出を行った際の前記ライン内の気体の圧力を検出する、放射性薬剤投与装置。
【請求項2】
前記シリンジと前記ラインと前記バルブとは、前記筐体から取り外し可能である、請求項1に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項3】
前記シリンジに対して前記放射性薬剤を供給する吸入ライン又は輸送液を吸入する吸入ラインと、
前記吸入ライン上に設けられ、前記吸入ライン内の流体の逆流を禁止可能な第2バルブとを有し、
前記圧力検出部による圧力の検出は、前記筐体に対して配管部品が組付けられ、且つ、前記シリンジ、前記バルブ、前記吸入ラインおよび前記第2バルブがそれぞれ前記ラインと接続されることで前記放射性薬剤を投与する回路が形成され、前記第2バルブを閉じた状態で行われる、請求項1または2に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項4】
前記ラインと合流して、前記ライン内の前記放射性薬剤を輸送するための輸送ラインと、
前記輸送ライン上に設けられ、前記輸送ライン内の流体の逆流を禁止可能な第3バルブとを有し、
前記圧力検出部による圧力の検出は、前記筐体に対して配管部品が組付けられ、且つ、前記シリンジ、前記バルブ、前記輸送ラインおよび前記第3バルブがそれぞれ前記ラインと接続されることで、前記放射性薬剤を投与する回路が形成され、前記第3バルブを閉じた状態で行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項5】
前記シリンジに対して前記放射性薬剤を供給する吸入ライン又は輸送液を吸入する吸入ラインと、
前記吸入ライン上に設けられ、前記吸入ライン内の流体の逆流を禁止可能な第2バルブと、
前記ラインと合流して、前記ライン内の前記放射性薬剤を輸送するための輸送ラインと、
前記輸送ライン上に設けられ、前記輸送ライン内の流体の逆流を禁止可能な第3バルブと、を有し、
前記シリンジと前記バルブと前記第2バルブと前記第3バルブのうち少なくとも一つを制御し、前記シリンジと前記バルブと前記第2バルブと前記第3バルブと前記ラインと吸入ラインと、輸送ラインのうち少なくとも一つの交換を検知する制御部と、
前記制御部は、前記圧力検出部による検出結果に応じて配管部品を使用した前記放射性薬剤の投与動作を禁止する、請求項1~4の何れか一項に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記圧力検出部による前記検出結果に応じて、前記配管部品の交換を検知し、且つ、交換後の前記配管部品を用いて、前記バルブを閉じた状態で前記シリンジの吐出を行った際の前記ライン内の気体の圧力を前記圧力検出部で検出し、該検出の結果に応じて、前記配管部品を使用した前記放射性薬剤の投与動作の禁止を解除する、請求項5に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記バルブを閉じた状態で前記シリンジの吐出を行う前に、前記バルブを開けた状態で前記シリンジの吸引および吐出を所定回数実施する、請求項5又は6に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項8】
放射性薬剤を吸入及び排出可能なシリンジと、
前記放射性薬剤の投与先に接続可能な投与部に対して前記シリンジを接続するラインと、
前記ライン上で、前記ラインの開閉動作を行うバルブと、を有し、
前記シリンジと前記ラインと前記バルブとによって前記放射性薬剤を投与する回路が一体的に形成されている、放射性薬剤投与装置用配管部品。