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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186968
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】電磁波送信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
H04B1/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172100
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2021515921の分割
【原出願日】2020-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2019080688
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀樹
(57)【要約】
【課題】本発明の電磁波送信装置は、送信速度を高速化することができる。
本発明の電磁波送信装置は、電圧-電流特性が極大値及び極大値よりも高電圧側に位置する極小値を有し、かつ、変調信号を示す電磁波を送信する送信部と、取得したデジタル信号を、極大値の電圧以上で極小値の電圧以下の第1電圧領域の2水準以上の第1電圧値、並びに、極大値の電圧未満の第2電圧領域の第2電圧値及び極小値の電圧より高電圧側の第3電圧領域の第3電圧値を用いて、前記変調信号に変調する変調部とを備え、第1電圧領域の任意の電圧値から第2電圧値を経由して第1電圧値のいずれか1つの電圧値に遷移する第1信号と、前記任意の電圧値から第3電圧値を経由して前記いずれか1つの電圧値に遷移する第2信号とは、同じ信号であり、前記変調部は、第1信号及び第2信号のうち総遷移電位差の小さい方を選択する。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧-電流特性が極大値及び前記極大値よりも高電圧側に位置する極小値を有し、かつ、変調信号を示す電磁波を送信する送信部と、
デジタル信号を取得する取得部と、
前記デジタル信号を、前記極大値の電圧以上で前記極小値の電圧以下の電圧領域とされる第1電圧領域の2水準以上の第1電圧値、並びに、前記極大値の電圧未満の電圧領域とされる第2電圧領域の第2電圧値及び前記極小値の電圧より高電圧側の電圧領域とされる第3電圧領域の第3電圧値を用いて、前記変調信号に変調する変調部と、
を備え、
前記第1電圧領域の2水準以上の第1電圧値のうち任意の電圧値から前記第2電圧値を経由して前記第1電圧値の2水準以上の電圧値のうちいずれか1つの電圧値に遷移する第1信号と、前記任意の電圧値から前記第3電圧値を経由して前記いずれか1つの電圧値に遷移する第2信号とは、同じ信号であり、
前記変調部は、前記第1信号の総遷移電位差と前記第2信号の総遷移電位差とが異なる場合、前記第1信号及び前記第2信号のうち前記変調信号の総遷移電位差の小さい方を選択する、
電磁波送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁波送信用の発振素子に用いた通信用の変調方式として、振幅偏移変調方式(Amplitude-Shift keying変調方式、以下、ASK変調方式という。)が知られている。また、通信用の変調方式としてオンオフ変調方式(Оn Оff keying変調方式、以下、OOK変調方式)も、ASK変調方式に含まれる1つの方式として知られている。
【0003】
ここで、特許文献1には、共鳴トンネルダイオード(Resonant Tunneling Diode、以下、RTDという。)を電磁波送信用の発振素子として用いたASK変調方式に関する技術が開示されている。具体的には、当該技術は、RTDの発振領域のデータ(例えばOnに相当する信号)と、非発振領域のデータ(例えばOffに相当する信号)とを切り替えることにより2値を表す技術、すなわち、振幅の違いでOn及びOffを表す技術とされている。
また、特許文献2には、RTD等の連続発振のテラヘルツ波を用いたASK変調方式に関する技術が開示されている。具体的には、当該技術は、強度が可変な可変光を信号光として変調素子に重畳的に入射させ、信号強度に応じてテラヘルツ波の振幅を変調する技術とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-191520号公報
【特許文献2】特開2010-41204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されている技術は、振幅の違いにより2値を表す技術であることから、送信速度(又は通信速度)の高速化に限界がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、送信速度を高速化することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
電圧-電流特性が極大値及び前記極大値よりも高電圧側に位置する極小値を有し、かつ、変調信号を示す電磁波を送信する送信部と、
デジタル信号を取得する取得部と、
前記デジタル信号を、前記極大値の電圧以上で前記極小値の電圧以下の電圧領域とされる第1電圧領域の2水準以上の第1電圧値、並びに、前記極大値の電圧未満の電圧領域とされる第2電圧領域の第2電圧値及び前記極小値の電圧より高電圧側の電圧領域とされる第3電圧領域の第3電圧値を用いて、前記変調信号に変調する変調部と、
を備え、
前記第1電圧領域の2水準以上の第1電圧値のうち任意の電圧値から前記第2電圧値を経由して前記第1電圧値の2水準以上の電圧値のうちいずれか1つの電圧値に遷移する第1信号と、前記任意の電圧値から前記第3電圧値を経由して前記いずれか1つの電圧値に遷移する第2信号とは、同じ信号であり、
前記変調部は、前記第1信号の総遷移電位差と前記第2信号の総遷移電位差とが異なる場合、前記第1信号及び前記第2信号のうち前記変調信号の総遷移電位差の小さい方を選択する、
電磁波送信装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の電磁波通信システムの概略図である。
図2A】本実施形態の電磁波送信装置の概略図である。
図2B】本実施形態の電磁波送信装置が備える同期信号レベル変換部を詳細に示す構成図である。
図3】本実施形態の電磁波送信装置が備える電磁波を発振する素子の電圧-電流特性及び5水準の電圧値を示すグラフである。
図4】本実施形態の電磁波送信装置が送信する変調信号の第1例(変調信号Vsync1、Vsync2、Vsync3)である。
図5】本実施形態の電磁波送信装置が送信する変調信号の第2例(変調信号Vsync4、Vsync5)である。
図6A】本実施形態の電磁波送信装置が送信する変調信号の第3例(変調信号Vsync6)である。
図6B】比較形態の電磁波送信装置が送信する変調信号の第1比較例(変調信号Vsync7)である。
図7A】本実施形態の電磁波送信装置が送信する変調信号の第4例(変調信号Vsync8)である。
図7B】比較形態の電磁波送信装置が送信する変調信号の第2比較例(変調信号Vsync9)である。
図8A】本実施形態の電磁波送信装置が送信する変調信号の第5例(変調信号Vsync10)である。
図8B】比較形態の電磁波送信装置が送信する変調信号の第3比較例(変調信号Vsync11)である。
図9A】本実施形態の電磁波送信装置が備える電磁波を発振する素子の電圧-電流特性を示すグラフと、電圧-出力レベル特性を示すグラフとの関係の第1例を示す図である。
図9B】本実施形態の電磁波送信装置が備える電磁波を発振する素子の電圧-電流特性を示すグラフと、電圧-出力レベル特性を示すグラフとの関係の第2例を示す図である。
図9C】本実施形態の電磁波送信装置が備える電磁波を発振する素子の電圧-電流特性を示すグラフと、電圧-出力レベル特性を示すグラフとの関係の第3例を示す図である。
図9D】本実施形態の電磁波送信装置が備える電磁波を発振する素子の電圧-電流特性を示すグラフと、電圧-出力レベル特性を示すグラフとの関係の第4例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
以下、本実施形態(本発明の一例)について説明する。まず、本実施形態の電磁波通信システム10(図1参照)の機能及び構成について図面を参照しながら説明する。次いで、本実施形態の電磁波通信システム10の動作について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態の効果については、動作についての説明の中で説明する。また、本明細書において参照するすべての図面では同様の機能を有する構成要素に同様の符号を付し、明細書では適宜説明を省略する。
【0010】
<構成>
図1は、本実施形態の電磁波通信システム10の概略図である。電磁波通信システム10は、電磁波送信装置20と、電磁波受信装置30とを備えている。電磁波通信システム10は、電磁波送信装置20により送信される電磁波Wを、電磁波受信装置30により受信する機能を有する。
【0011】
本実施形態の電磁波Wは、後述する変調信号を示す電磁波とされている。また、本実施形態の電磁波Wは、一例として、テラヘルツ波とされている。ここで、テラヘルツ波とは、ミリ波よりも短波長で赤外線よりも長波長の電磁波と言われている。テラヘルツ波は、光波及び電波の両方の性質を兼ね備えていた電磁波であり、例えば、布、紙、木、プラスチック、陶磁器等を透過し(又は透過し易く)、金属、水等は透過しない(又は透過し難い)という性質を有する。一般的に、テラヘルツ波の周波数は1THz前後(波長は300μm前後に相当)とも言われているが、その範囲について明確な定義はない。そこで、本明細書では、テラヘルツ波の波長の範囲を70GHz以上10THz以下の範囲と定義する。
【0012】
〔電磁波送信装置〕
図2Aは、本実施形態の電磁波送信装置20の概略図である。電磁波送信装置20は、多値変調された変調信号を示す電磁波Wを送信する機能を有する。電磁波送信装置20は、一例として、取得部22と、変換部24(変調部の一例)と、切り替え部26Aと、選択器26Bと、送信部28と、多値レベル設定部29Aと、同期レベル設定部29Bとを備えている。
【0013】
(取得部)
本実施形態の取得部22は、一例として音、映像等のデジタル信号を取得する機能を有する。また、取得部22は、取得したデジタル信号を、変換部24に出力する機能を有する。
【0014】
(変換部)
本実施形態の変換部24は、一例として、多値レベル変換部24Aと、同期信号レベル変換部24Bとを有する。
多値レベル変換部24Aは、取得部22からのデジタル信号(通信用データ)を入力とし、多値レベル設定に従い、多値レベルに変換して出力する機能を有する。ここで、多値レベル設定とは、後述する第1電圧領域RA内の2水準以上の電圧レベル(第1電圧値V、V、V)、並びに、後述する第2電圧領域RBの電圧レベル(第2電圧値V)及び後述する第3電圧領域の電圧値レベル(第3電圧値V)の電圧レベルの設定を意味する(図3参照)。
同期信号レベル変換部24Bは、同期レベル設定に従い、所定の同期信号レベルを出力する機能を有する。ここで、同期レベル設定とは、第1電圧領域RA内の2水準以上の電圧レベル、並びに、第2電圧領域RBの電圧レベル及び第3電圧領域の電圧値レベルの電圧レベルの設定を意味する(図3参照)。
また、図2Bは、本実施形態の多値レベル変換部24Aを詳細に示す構成図である。多値レベル変換部24Aは、多値化部24B1と、多値化拡張部24B2と、電圧変換部24B3とを有する。多値化部24B1、多値化拡張部24B2及び電圧変換部24B3の詳細については、後述する。
そして、図2Bは、本実施形態の同期信号レベル変換部24Bも同一の構成となる。
【0015】
(切り替え部及び選択部)
切り替え部26Aは、選択器26Bによって選択されて送信部28に出力されるデータの切り替えタイミングを生成して、選択器26Bに入力する機能を有する。ここで、当該データとは、多値レベル変換部24Aが出力するデータ(以下、多値データという。)及び同期信号レベル変換部24Bが出力するデータ(以下、同期信号データという。)である。
選択器26Bは、切り替え部26Aが生成したデータの切り替えタイミングに従い、同期信号データと多値データとを異なるタイミングで送信部28に出力する機能を有する。
【0016】
(送信部)
送信部28は、選択器26Bにより選択されて入力されるデータを電磁波W(本実施形態の場合は一例としてテラヘルツ波)として発振する機能を有する。そのため、送信部28は、テラヘルツ波を発振する素子を有する。本実施形態のテラヘルツ波を発振する素子は、一例としてRTDとされている。なお、テラヘルツ波を発振する素子であれば、当該素子はRTDでなくてもよい。
【0017】
ここで、RTDの電圧-電流特性について図3のグラフを参照しながら説明する。ここで、「電圧-電流特性」とは、電圧と電流との関係を示す2次元のグラフにおける電圧に対する電流の特性を意味する。
図3は、本実施形態のRTDの電圧-電流特性及び第1電圧領域RA内の3水準の第1電圧値V、V、V並びに第2電圧領域RBの第2電圧値V及び第3電圧領域RCの第3電圧値Vを示すグラフである。
RTDは、電圧-電流特性において、極大値及び前記極大値よりも高電圧側に位置する極小値を有する。ここで、当該極大値における電圧値を電圧値VOLとし、当該極小値における電圧値を電圧値VOHと定義する。そして、電圧値VOLから電圧値VOHに亘る電流のスペクトルは、微分負性抵抗特性を示す微分負性抵抗領域とされている。本明細書では、当該微分負性抵抗領域を第1電圧領域RAと定義する。すなわち、RTDは、その動作領域の電圧-電流特性に、微分負性抵抗特性を示す微分負性抵抗領域(第1電圧領域RA)を有する。また、本明細書では、電圧-電流特性のグラフにおける第1電圧領域RAの両側の電圧領域のうち電圧値VOLよりも低電圧側の領域を第2電圧領域RB、電圧値VOHよりも高電圧側の領域を第3電圧領域RCと定義する。そして、RTDは、第1電圧領域RA内の第1電圧値V、V、V並びに第2電圧領域RBの第2電圧値V及び第3電圧領域の第3電圧値Vの少なくとも一方の電圧値が印加されている場合に、電磁波Wを発振する素子として機能するようになっている。
【0018】
そして、送信部28は、同期信号レベル変換部24Bからの同期信号データが入力されると、第1電圧領域RA内の3水準の第1電圧値V、V、V並びに第2電圧領域RBの第2電圧値V及び第3電圧領域の第3電圧値Vの少なくとも一方の電圧値に対応したパターンを有する同期信号を送信するようになっている。ここで、本実施形態の同期信号は、電磁波受信装置30に、送信信号の検出タイミングを知らせる信号であり、また、変調信号に使用される一部又はすべての電圧レベルを認識させる役割を有する。次いで、送信部28は、多値レベル変換部24Aからの多値データが入力されると、第1電圧領域RA内の3水準の第1電圧値V、V、V並びに第2電圧領域RBの第2電圧値V及び第3電圧領域の第3電圧値Vの少なくとも一方の電圧値に対応したパターンを有するデジタル信号を送信するようになっている。ここで、本実施形態では第1電圧領域RA内の第1電圧値V、V、Vを一例として3水準の電圧値としているが、第1電圧領域RA内の第1電圧値は2水準以上であればよい。
【0019】
以上のとおりであるから、本実施形態における多値レベル設定及び同期レベル設定は、第1電圧領域RA内の3水準の第1電圧値V、V、V並びに第2電圧領域RBの第2電圧値V及び第3電圧領域の第3電圧値Vの少なくとも一方の電圧値に設定されている。また、本実施形態の電磁波送信装置20は、多値データ及び同期信号データを多値変調し、多値変調したデータを電磁波Wに乗せて電磁波受信装置30に送信するようになっている。
【0020】
〔電磁波受信装置〕
電磁波受信装置30は、電磁波送信装置20が送信した電磁波Wを受信し、受信した電磁波Wをデジタル信号に復調するようになっている。例えば、デジタル信号が音をデジタル化した信号であれば、電磁波受信装置30は電磁波受信装置30により受信された電磁波Wのうちの同期信号データに基づき検出タイミングを生成し、音のデジタル信号を復調するようになっている。
【0021】
以上が、本実施形態の構成についての説明である。
【0022】
<動作>
次に、本実施形態の電磁波通信システム10の動作について図面を参照しながら説明する。以下、まず、全体の流れについて説明し、次いで多値変調の具体例を挙げて説明する。なお、電磁波通信システム10により一例として音に関する信号を通信する場合とする。また、前述のとおり、以下の説明とともに本実施形態の効果についても説明する。
【0023】
〔全体の流れ〕
本実施形態の動作の全体の流れについて図1並びに図2A及び図2Bを参照しながら説明する。
まず、取得部22は、外部装置(図示省略)から音に関するデジタル信号を取得し、取得したデジタル信号を変換部24(多値レベル変換部24A)に出力する。
【0024】
次いで、多値レベル変換部24Aは、取得部22からのデジタル信号(通信用データ)を入力とし、多値レベル設定部29Aによる多値レベル設定に従い、多値レベルに変換して出力する。
ここで、図2Bに示されるように、多値レベル変換部24Aは、多値化部24B1と、多値化拡張部24B2と、電圧変換部24B3とを有するが、これらの動作の流れは以下のとおりである。
多値化部24B1は、デジタル信号(通信用データ)が入力されると、当該データを多値化してn値(n≧3、本実施形態の場合は一例としてn=4)を多値化拡張部24B2に出力する。
次いで、多値化拡張部24B2は、(例えば、多値(n+1)レベル設定値を用いてn値をn+1値に変換する。そして、多値化拡張部24B2は、非発振時の電圧出力を第2電圧領域RBの電圧レベル(第2電圧値V)及び第3電圧領域の電圧値レベル(第3電圧値V)のいずれか一方にすることを決定する。この場合、多値化拡張部24B2は、第2電圧領域RBの電圧レベル(第2電圧値V)を経由した場合の後述する総遷移電位差、及び、第3電圧領域の電圧値レベル(第3電圧値V)を経由した場合の総遷移電位差のうち小さい方を選択する。
次いで、電圧変換部24B3は、n+1値(一例として5値)を多値レベル設定値に従いn+1レベル(5レベル)の電圧に変換して選択器26Bに出力する。
また、同期信号レベル変換部24Bは、同期レベル設定部29Bによる同期レベル設定に従い、所定の同期信号レベルを出力する。
ここで、同期信号レベル変換部24Bは、図2Bに示される構成であり、多値レベル変換部24Aの動作と同一である。
【0025】
次いで、切り替え部26Aは、選択器26Bによって選択されて送信部28に出力される多値データと同期信号データとの切り替えタイミングを生成して、選択器26Bに入力する。その結果、選択器26Bは、切り替え部26Aが生成した切り替えタイミングに従い、同期信号データと多値データとを異なるタイミングで送信部28に出力する。
【0026】
次いで、送信部28は、選択器26Bにより選択されて入力されるデータ(電圧変換部24B3が送信したn+1レベル(一例として5値)のデータ)を電磁波Wに乗せて送信する。すなわち、送信部28は、当該データについての変調信号を示す電磁波Wを送信する。
【0027】
次いで、電磁波受信装置30は、送信部28(電磁波送信装置20)が送信した電磁波Wを受信し、受信した電磁波Wのうちの同期信号データに基づき検出タイミングを生成し、多値データをデジタル信号に復調する。その結果、電磁波受信装置30により受信された電磁波Wは音のデジタル信号に復調される。
【0028】
以上が、本実施形態の動作の全体の流れについての説明である。
【0029】
〔多値変調の具体例〕
次に、多値変調における変調信号の具体例について下記の例を参照しながら説明する。
【0030】
(第1例及び第2例)
まず、図3図4及び図5を参照しながら第1例及び第2例について説明する。
図4及び図5は、それぞれ、本実施形態の電磁波送信装置20が送信する変調信号の一例であり、図4は第1例、図5は第2例である。ここで、図4及び図5における、Vは電圧値、tは時間を示す。電圧値Vの軸における、V、V、V、V、Vは、それぞれ第2電圧領域RBの第2電圧値、第1電圧領域RA内の3水準の第1電圧値、第3電圧領域RCの第3電圧値を示す。これらの変調信号のパターンは、多値データ及び同期信号データを含む。
なお、図4のVsync1、Vsync2及びVsync3並びに図5のVsync4及びVsync5は、変調信号のうち同期信号データに相当する部分を示す。また、図5の全体のパターンは、同期信号データに相当する部分とそれ以外の部分(変調データに相当する部分)とを含む変調信号を示す。すなわち、本実施形態では、送信部28は変調信号のうちの少なくとも一部として同期信号を送信する。
【0031】
本実施形態の変換部24が生成する信号は、図4及び図5に示されるように、第1電圧領域RA内の第1電圧値V、V、Vのうちの2水準以上の電圧値並びに第2電圧領域RBの第2電圧値V及び第3電圧領域の第3電圧値Vの少なくとも一方の電圧値を用いた変調信号とされている。すなわち、本実施形態の変換部24が生成する信号は、3水準以上の電圧値を用いて多値変調された変調信号とされる。具体的には、当該変調信号は、例えば、mビット(m≧1、本実施形態の場合は一例としてm=2)のデータをn値(n≧3、本実施形態の場合は一例としてn=4)の電圧レベルに変換して多値変調された信号とされる。そのため、本実施形態の場合、前述の特許文献1及び2に開示されている技術(以下、比較技術という。)に比べて、同じ時間で送信できるデータの量が多い。
したがって、本実施形態の電磁波送信装置20は、比較技術に比べて、送信速度を高速化することができる。これに伴い、本実施形態の電磁波通信システム10は、比較技術に比べて、通信速度を高速化することができる。
【0032】
第2電圧領域RB及び第3電圧領域RCは、通常、非発振領域とすることが通常とされている。「非発振領域」とは、RTDの電圧-電流特性において電磁波Wを発振するための電圧領域以外の領域を意味する。
しかしながら、図4に示されるように、本実施形態では、同期信号Vsync1、Vsync2、Vsync3に第2電圧領域RB及び第3電圧領域RC(図3参照)の少なくとも一方の電圧値を含む設定としている。そして、通常、非発振領域とされる第2電圧領域RB及び第3電圧領域RCの電圧値(第2電圧値V及び第3電圧値V)を含んだ電圧遷移は、例えば、通常の発振領域(第1電圧領域RAに相当)内のみの電圧値で電圧遷移する形態に比べて、S/N比を大きくすることができる。
したがって、本実施形態の電磁波送信装置20は、電磁波受信装置30に誤検出され難い信号を送信することができる。これに伴い、本実施形態の電磁波通信システム10は、同期信号の認識性の点で通信の安定性が高い。また、前述のとおり、本実施形態の電磁波送信装置20は比較技術に比べて送信速度を高速化することができることから、本実施形態の電磁波送信装置20は、比較技術に比べて、送信速度を高速化したうえで、電磁波受信装置30に誤検出され難い信号を送信することができる。
【0033】
また、図4(第1例)における、同期信号Vsync1は、電圧値が最小電圧値(第2電圧値V)及び最大電圧値(第1電圧値V)の一方から他方に亘って遷移する特定のパターン(V、V、V、Vの記載順で電圧値が遷移するパターン又はこの逆の記載順で電圧値が遷移するパターン)に設定されている。すなわち、本実施形態の同期信号Vsync1は、第1電圧領域RA内の電圧設定レベルのうちの最大電圧値(第1電圧値V)及び最小電圧値(第2電圧値V)を含むパターンとされる。そのため、本実施形態の電磁波受信装置30には、受信する変調信号の最大電圧値及び最小電圧値が認識される。なお、デジタル信号は、電圧値V、V、V、Vを用いて多値変調される。
図4(第1例)における、同期信号Vsync3は、電圧値が最小電圧値(第1電圧値V)及び最大電圧値(第3電圧値V)の一方から他方に亘って遷移する特定のパターン(V、V、V、Vの記載順で電圧値が遷移するパターン又はこの逆の記載順で電圧値が遷移するパターン)に設定されている。同期信号Vsync2は、電圧値が最小電圧値(第1電圧値V)及び最大電圧値(第2電圧値V)の一方から他方に亘って遷移する特定のパターン(V、Vの記載順で電圧値が遷移するパターン又はこの逆の記載順で電圧値が遷移するパターン)に設定されている。なお、デジタル信号は、電圧値V、V、V、V用いて多値変調される。
したがって、本実施形態の電磁波送信装置20は、電磁波受信装置30に認識され易い同期信号を送信することができる。これに伴い、本実施形態の電磁波通信システム10は、同期信号の認識性の点で通信の安定性が高い。
【0034】
また、図5(第2例)における同期信号Vsync4、Vsync5は、通常の非発振領域とされる第2電圧領域RB及び第3電圧領域RC(図3参照)のいずれの電圧値(第2電圧値V及び第3電圧値V)を含み、デジタル信号が取り得る多値レベルとしてすべてのレベルとなる4レベルを用いるように設定されている。そのため、本実施形態では、このような同期信号とすることで、同期信号のレベル電圧を教師データとして電磁波送信装置20に送信することが可能となる。また、電磁波受信装置30においては同期信号から各レベル電圧を抽出し、受信信号の多値データのレベルを設定することが可能となる。
したがって、本実施形態の電磁波送信装置20は、電磁波受信装置30に、変調信号のレベル電圧を認識させることができる。
【0035】
また、本実施形態の場合、第1電圧領域RA内の第1電圧値V、V、Vのうちの2水準以上の電圧値並びに第2電圧領域RBの第2電圧値V及び第3電圧領域の第3電圧値Vの両方の電圧値を用いて変調信号を生成することが可能である。しかしながら、本実施形態では、例えば、第2電圧領域RBの第2電圧値V1及び第3電圧領域の第3電圧値Vのうちいずれの電圧値を用いて変調信号を生成するかは、以下のようにする。
ここで、第1電圧値V、V、Vのいずれか1つの電圧値から第2電圧値Vに遷移する信号(第1信号の一例)と、当該第1信号の場合と同じ第1電圧値V、V、Vのいずれか1つの電圧値から第3電圧値Vに遷移する信号(第2信号の一例)とは、同じ信号である。
そして、本実施形態の多値レベル変換部24A(変換部24)は、第1電圧値V、V、Vのいずれか1つの電圧値から第2電圧値V及び第3電圧値Vのいずれか一方に信号を遷移させる場合、総遷移電位差が小さくなる方に信号を遷移させる。ここで、「総遷移電位差」とは、ある変調信号における遷移前(開始時)の電位から遷移後(終了時)の電位に亘って変動した電位差の総和をいう。具体的には、ある変調信号の遷移前の電圧値がVで、その後、電圧値Vを経由して遷移後の電圧値がVである場合の総遷移電位差は、VとVとの電位差と、VとVとの電位差との和となる。以上より、例えば、第1電圧値V、V、Vのいずれか1つの電圧値が第1電圧値Vで、かつ、電圧値Vと第2電圧値Vとの電位差ΔV12が電圧値Vと第3電圧値Vとの電位差ΔV25よりも小さい場合、多値レベル変換部24Aは総遷移電位差が小さくなる方とされる第2電圧値Vに信号を遷移させる。また、例えば、第1電圧値V、V、Vのいずれか1つの電圧値が第1電圧値Vで、かつ、電圧値Vと第2電圧値Vとの電位差ΔV24が電圧値Vと第3電圧値Vとの電位差ΔV45よりも大きい場合、多値レベル変換部24Aは総遷移電位差が小さくなる方とされる第3電圧値Vに信号を遷移させる。
したがって、本実施形態は、第1電圧領域RAの電圧値並びに第2電圧領域RB及び第3電圧領域の両方の電圧値を用いて変調信号を生成する場合に上記のようにして総遷移電位差を小さくすることにより、送信速度(通信速度)をより高速化することができる。
【0036】
以上が、第1例及び第2例についての説明である。
なお、上記の点、すなわち、第2電圧領域RBの第2電圧値V及び第3電圧領域の第3電圧値Vのうちいずれの電圧値を用いて変調信号を生成するかについての具体例については、後述する第3例以降の例を用いて説明する。
【0037】
(第3例)
次に、図6A及び図6Bを参照しながら第3例について説明する。ここで、図6Aは、本実施形態の電磁波送信装置20が送信する変調信号の他の一例(第3例)である。これに対して、図6Bは、比較形態の電磁波送信装置が送信する変調信号の一例(第比較1例)である。
ここで、図6A及び図6Bに示されるように、第1電圧領域RA内の3水準の第1電圧値V、V、V並びに第2電圧領域RBの第2電圧値V及び第3電圧領域の第3電圧値Vにおいて、VとVとの電位差をΔ12、VとVとの電位差をΔ23、VとVとの電位差をΔ34、VとVとの電位差をΔ45とする。そして、具体的に、電位差Δ12、電位差Δ23、電位差Δ34、電位差Δ45は、それぞれ、15mV、10mV、20mV、25mVに設定されている。すなわち、本実施形態では、第1電圧値の2水準以上の各電圧値V、V、V、第2電圧値V及び第3電圧値Vは、それぞれ小さい値から順に並んだ場合に、各隣同士の電圧値の電位差(電位差Δ12、電位差Δ23、電位差Δ34、電位差Δ45)がそれぞれ異なる電位差となっている。また、第1電圧値の2水準以上の電圧値V、V、Vのそれぞれと第2電圧値Vとの各電位差Δ12、Δ13、Δ14は、それぞれ、第1電圧値の2水準以上の電圧値V、V、Vのそれぞれと第3電圧値Vとの各電位差Δ25、Δ35、Δ45と、異なる電位差となっている。
【0038】
図6Aの変調信号Vsync6(第1信号の一例)及び図6Bの変調信号Vsync7(第2信号の一例)は、いずれも遷移前の電圧値が電圧値Vであり、遷移後の電圧値も電圧値Vである。これらの変調信号Vsync6、Vsync7の異なる点は、図6Aの変調信号Vsync6は第2電圧領域RBの第2電圧値Vを経由しかつ総遷移電位差が50mVであるのに対し、図6Bの変調信号Vsync7は第3電圧領域の第3電圧値Vを経由しかつ総遷移電位差が90mVである点である。ただし、図6Aの変調信号Vsync6図6Bの変調信号Vsync7とは、同じ信号(同じ技術的意味を有する信号という意味)である。
【0039】
そして、本実施形態では、図6Aの変調信号Vsync6図6Bの変調信号Vsync7とが同じ信号であるにも関わらず、総遷移電位差が小さい方である図6Aの変調信号Vsync6を選択する。
以上より、本実施形態は、第1電圧領域RAの電圧値並びに第2電圧領域RB及び第3電圧領域の両方の電圧値を用いて変調信号を生成する場合に、比較形態の第1比較例(図6B参照)ではなく第3例(図6A参照)を選択することで、送信速度(通信速度)をより高速化することができる。
【0040】
以上が、第3例についての説明である。
【0041】
(第4例)
次に、図7A及び図7Bを参照しながら第4例について説明する。ここで、図7Aは、本実施形態の電磁波送信装置20が送信する変調信号の他の一例(第4例)である。これに対して、図7Bは、比較形態の電磁波送信装置が送信する変調信号の一例(第2比較例)である。
ここで、図7A及び図7Bに示されるように、電位差Δ12、電位差Δ23、電位差Δ34、電位差Δ45は、それぞれ、15mV、10mV、20mV、5mVとなっている。すなわち、本実施形態では、第1電圧値の2水準以上の各電圧値V、V、V、第2電圧値V及び第3電圧値Vは、それぞれ小さい値から順に並んだ場合に、各隣同士の電圧値の電位差(電位差Δ12、電位差Δ23、電位差Δ34、電位差Δ45)がそれぞれ異なる電位差となっている。
図7Aの変調信号Vsync8(第1信号の一例)及び図7Bの変調信号Vsync9(第2信号の一例)は、いずれも遷移前の電圧値が電圧値Vであり、遷移後の電圧値も電圧値Vである。これらの変調信号Vsync8、Vsync9の異なる点は、図7Aの変調信号Vsync8は第2電圧領域RBの第2電圧値Vを経由するのに対し、図7Bの変調信号Vsync9は第3電圧領域の第3電圧値Vを経由する点である。いずれの変調信号Vsync8、Vsync9も、総遷移電位差は50mVである。
【0042】
そして、本実施形態では、図7Aの変調信号Vsync8図7Bの変調信号Vsync9とが同じ信号であるにも関わらず、第2電圧値V及び第3電圧値Vのうち電圧値が小さい方である図7Aの変調信号Vsync8を選択する。
以上より、本実施形態では、第2電圧値V及び第3電圧値Vのうち電圧値が大きい方である図7Bの変調信号Vsync9を選択する場合に比べて、RTDの発熱を抑制することができる。
【0043】
以上が、第4例についての説明である。
【0044】
(第5例)
次に、図8A及び図8Bを参照しながら第5例について説明する。ここで、図8Aは、本実施形態の電磁波送信装置20が送信する変調信号の他の一例(第5例)である。これに対して、図8Bは、比較形態の電磁波送信装置が送信する変調信号の一例(第3比較例)である。
ここで、図8A及び図8Bに示されるように、第1電圧値の2水準以上の電圧値V、V、Vのそれぞれと第2電圧値Vとの各電位差Δ12、Δ13、Δ14は、それぞれ、第1電圧値の2水準以上の電圧値V、V、Vのそれぞれと第3電圧値Vとの各電位差Δ25、Δ35、Δ45と、異なる電位差となっている。
【0045】
図8Aの変調信号Vsync10(第1信号の一例)及び図8Bの変調信号Vsync11(第2信号の一例)は、いずれも遷移前の電圧値が電圧値Vであり、遷移後の電圧値も電圧値Vである。これらの変調信号Vsync10、Vsync11の異なる点は、図8Aの変調信号Vsync10は第2電圧領域RBの第2電圧値Vを経由しかつ総遷移電位差が60mVであるのに対し、図8Bの変調信号Vsync11は第3電圧領域の第3電圧値Vを経由しかつ総遷移電位差が70mVである点である。ただし、図8Aの変調信号Vsync10図8Bの変調信号Vsync11とは、同じ信号である。
【0046】
そして、本実施形態では、図8Aの変調信号Vsync10図8Bの変調信号Vsync11とが同じ信号であるにも関わらず、総遷移電位差が小さい方である図8Aの変調信号Vsync10を選択する。
以上より、本実施形態は、第1電圧領域RAの電圧値並びに第2電圧領域RB及び第3電圧領域の両方の電圧値を用いて変調信号を生成する場合に、比較形態の第3比較例(図8B参照)ではなく第5例(図8A参照)を選択することで、送信速度(通信速度)をより高速化することができる。また、本実施形態は、比較形態の第3比較例(図8B参照)を選択する場合に比べて、RTDの発熱を抑制することができる。
【0047】
以上が、第5例についての説明である。
【0048】
〔電圧と出力キャリアレベルとの関係についての補足〕
次に、本実施形態における、RTDの電圧-電流特性の各電圧値と、電圧-出力キャリアレベルとの関係について図9A図9Bを参照しながら補足する。
【0049】
(第1例)
図9Aは、本実施形態における、RTDの電圧-電流特性を示すグラフと、電圧(バイアス電圧)-出力レベル特性を示すグラフとの関係の第1例を示す図である。
RTDの電圧-電流特性を示すグラフは、前述の図3の説明のとおりである。
これに対して、電圧-出力レベル特性を示すグラフは、図9Aに示されるように、電圧に対して出力レベルが比例の関係ではなく、電圧値が大きくなるにつれて最小値から最大値に増加して再度最小値となる曲線となっている。
ここで、変換部24は、曲線で示される電圧-出力レベル特性に従い、第1電圧領域RAの2水準以上の第1電圧値(この場合は3電圧値)並びに第2電圧値及び第3電圧値が定められた出力キャリアレベルの関係となるように、それぞれに対応する出力キャリアレベルO、O、O、Oに変換するようになっている。そして、本実施形態の第1例の場合、定められた出力キャリアレベルの関係とは、それぞれに対応する出力キャリアレベルO、O、O、Oが出力レベルにおいて等間隔に並ぶ関係(OとOとの差ΔO12、OとOとの差ΔO23及びOとOとの差ΔO34がそれぞれ等しい関係)に設定されている関係である(そのため、第1電圧領域RAの2水準以上の第1電圧値は等間隔に並んでいない)。
以上のとおりであるから、本実施形態の第1例の場合、通常は非発振領域として用いられる第2電圧領域RB及び第3電圧領域RCの少なくとも一方を含んだ変調データを生成するためのデータ遷移時間を短くできる。これに伴い、省電力化することができる。
【0050】
(第2例)
次に、第2例について図9Bを参照しながら、第1例の場合と異なる点について説明する。
第2例の場合、定められた出力キャリアレベルの関係とは、それぞれに対応する出力キャリアレベルO、O、O、Oが出力レベルにおいて、それぞれに対応する出力キャリアレベルO、O、O、Oの最大値Oが、電圧-出力レベル特性の最大値よりも小さい値に設定されている関係である。そのため、第2例は、第1例の場合に比べて、出力キャリアレベルOが正確に出力され易い。これは、RTDの電圧-出力レベル特性の曲線がRTDの電圧印加により発熱した場合に変動するためである。
第2例のその他の効果は、第1例の場合と同様である。
【0051】
(第3例)
次に、第3例について図9Cを参照しながら、第1例の場合と異なる点について説明する。
第3例の場合、定められた出力キャリアレベルの関係とは、それぞれに対応する出力キャリアレベルO、O、O、Oが出力レベルにおいて、それぞれに対応する出力キャリアレベルO、O、O、Oの最小値Oが、電圧-出力レベル特性の最小値よりも大きい値に設定されている関係である。そのため、第3例は、第1例及び第2例の場合に比べて、出力キャリアレベルOが正確に出力され易い。これは、RTDの電圧-出力レベル特性の曲線が最小値に近いほど(0に近いほど)ノイズにより揺らぐためである。
第3例のその他の効果は、第1例の場合と同様である。
【0052】
(第4例)
次に、第4例について図9Dを参照しながら、第1例、第2例及び第3例の場合と異なる点について説明する。
第4例の場合、定められた出力キャリアレベルの関係とは、それぞれに対応する出力キャリアレベルO、O、O、Oの最大値Oが、電圧-出力レベル特性の最大値よりも小さい値に設定され、かつ、最小値Oが、電圧-出力レベル特性の最小値よりも大きい値に設定されている関係である。すなわち、第4例は、第2例及び第3例を組み合せた例である。
以上より、第4例の効果は、第1例、第2例及び第3例の場合と同様である。
【0053】
以上のとおり、本発明について特定の実施形態を一例として説明したが、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲には、例えば、下記のような形態(変形例)も含まれる。
【0054】
例えば、本実施形態では、第1電圧領域RA内に3水準の電圧値を設定電圧レベルとして説明した。しかしながら、第1電圧領域RA内の設定電圧レベルは2水準以上であればよい。
【0055】
また、本実施形態では、同期信号のパターンを図4のVsync1、Vsync2、Vsync3及び図5のVsync4、Vsync5として説明したが、同期信号のパターンはこれらと異なるパターンであってもよい。
なお、本実施形態の説明では、同期信号のパターンを、図4のVsync1、Vsync2、Vsync3及び図5のVsync4、Vsync5を例として説明した。しかしながら、本発明の技術的範囲に属する形態としては、これらの同期信号のパターンのいずれか1つ又はその変形を含む形態であればよい。すなわち、同期信号は、(1)第2電圧領域RBの第2電圧値Vを含み、第3電圧領域RCの第3電圧値Vを含まない信号、(2)第2電圧領域RBの第2電圧値Vを含まず、第3電圧領域RCの第3電圧値Vを含む信号並びに(3)第2電圧領域RBの第2電圧値V及び第3電圧領域RCの第3電圧値Vを含む信号のいずれか1つであればよい。
【0056】
また、本実施形態では、同一構成のため、後段に備えるようにしてもよい同期信号レベル変換部24Bは、多値化拡張部24B2と、電圧変換部24B3とを有するとして説明した(図2B参照)。しかしながら、例えば、同期信号レベル変換部24Bから多値化拡張部24B2及び電圧変換部24B3を抜き出して、多値化拡張部24B2及び電圧変換部24B3を選択器26Bと送信部28との間に備えるようにしてもよい。
【0057】
この出願は、2019年4月22日に出願された日本出願特願2019-080688号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0058】
10 電磁波通信システム
20 電磁波送信装置
22 取得部
24 変換部(変調部の一例)
24A 多値レベル変換部
24B 同期信号レベル変換部
24B1 多値化部
24B2 多値化拡張部
24B3 電圧変換部
26A 切り替え部
26B 選択器
28 送信部
30 電磁波受信装置
RA 第1電圧領域
RB 第2電圧領域
RC 第3電圧領域
第2電圧値
、V、V 第1電圧値
第3電圧値
W 電磁波(テラヘルツ波の一例)
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D