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特開2022-186970発光素子、発光装置、電子機器、及び照明装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186970
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】発光素子、発光装置、電子機器、及び照明装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
H05B33/14 B
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172105
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2021189266の分割
【原出願日】2015-07-17
(31)【優先権主張番号】P 2014151493
(32)【優先日】2014-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
(72)【発明者】
【氏名】濱田 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 辰義
(72)【発明者】
【氏名】北野 靖
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏記
(72)【発明者】
【氏名】吉住 英子
(57)【要約】
【課題】信頼性を向上させた発光素子を提供する。また、電流効率(あるいは量子効率)
の高い発光素子を提供する。さらに本発明の一態様である発光素子への適用が好ましい新
規のジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体を提供する。
【解決手段】陽極と、陰極と、の間にEL層を有し、EL層は、発光層を有し、発光層は
、電子輸送性および正孔輸送性を有する第1の有機化合物と、正孔輸送性を有する第2の
有機化合物と、発光物質と、を含み、第1の有機化合物と第2の有機化合物は、励起錯体
を形成する組み合わせであり、第1の有機化合物のHOMO準位は、第2の有機化合物の
HOMO準位よりも低く、第1の有機化合物のHOMO準位と、第2の有機化合物のHO
MO準位との差が、0.4eV以下であることを特徴とする発光素子である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、燐光性化合物と、を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物の混合膜の発光スペクトルは、前記第1の有機化合物の膜の蛍光スペクトル及び前記第2の有機化合物の膜の蛍光スペクトルより長波長側に位置し、
前記第1の有機化合物は、6員環で構成される含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環は、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、テトラジンのいずれかであり、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位よりも低く、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と、前記第2の有機化合物のHOMO準位との差が、0.4eV以下である、発光素子。
【請求項2】
陽極と陰極との間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、燐光性化合物と、を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物は、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の有機化合物は、6員環で構成される含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環は、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、テトラジンのいずれかであり、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位よりも低く、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と、前記第2の有機化合物のHOMO準位との差が、0.4eV以下である、発光素子。
【請求項3】
陽極と陰極との間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、イリジウムを含む化合物と、を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物の混合膜の発光スペクトルは、前記第1の有機化合物の膜の蛍光スペクトル及び前記第2の有機化合物の膜の蛍光スペクトルより長波長側に位置し、
前記第1の有機化合物は、6員環で構成される含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環は、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、テトラジンのいずれかであり、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位よりも低く、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と、前記第2の有機化合物のHOMO準位との差が、0.4eV以下である、発光素子。
【請求項4】
陽極と陰極との間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、イリジウムを含む化合物と、を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物は、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の有機化合物は、6員環で構成される含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環は、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、テトラジンのいずれかであり、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位よりも低く、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と、前記第2の有機化合物のHOMO準位との差が、0.4eV以下である、発光素子。
【請求項5】
陽極と陰極との間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、燐光性化合物と、を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物の混合膜の発光スペクトルは、前記第1の有機化合物の膜の蛍光スペクトル及び前記第2の有機化合物の膜の蛍光スペクトルより長波長側に位置し、
前記第1の有機化合物は、6員環で構成される含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環は、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、テトラジンのいずれかであり、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位よりも低く、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と、前記第2の有機化合物のHOMO準位との差が、0.3eV以下である、発光素子。
【請求項6】
陽極と陰極との間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、燐光性化合物と、を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物は、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の有機化合物は、6員環で構成される含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環は、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、テトラジンのいずれかであり、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位よりも低く、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と、前記第2の有機化合物のHOMO準位との差が、0.3eV以下である、発光素子。
【請求項7】
陽極と陰極との間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、イリジウムを含む化合物と、を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物の混合膜の発光スペクトルは、前記第1の有機化合物の膜の蛍光スペクトル及び前記第2の有機化合物の膜の蛍光スペクトルより長波長側に位置し、
前記第1の有機化合物は、6員環で構成される含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環は、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、テトラジンのいずれかであり、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位よりも低く、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と、前記第2の有機化合物のHOMO準位との差が、0.3eV以下である、発光素子。
【請求項8】
陽極と陰極との間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、イリジウムを含む化合物と、を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物は、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の有機化合物は、6員環で構成される含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環は、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、テトラジンのいずれかであり、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位よりも低く、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と、前記第2の有機化合物のHOMO準位との差が、0.3eV以下である、発光素子。
【請求項9】
陽極と陰極との間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、燐光性化合物と、を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物の混合膜の発光スペクトルは、前記第1の有機化合物の膜の蛍光スペクトル及び前記第2の有機化合物の膜の蛍光スペクトルより長波長側に位置し、
前記第1の有機化合物は、6員環で構成される含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位よりも低く、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と、前記第2の有機化合物のHOMO準位との差が、0.4eV以下であり、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環に、ベンゼン環が縮合している、発光素子。
【請求項10】
陽極と陰極との間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、燐光性化合物と、を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物は、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の有機化合物は、6員環で構成される含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位よりも低く、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と、前記第2の有機化合物のHOMO準位との差が、0.4eV以下であり、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環に、ベンゼン環が縮合している、発光素子。
【請求項11】
陽極と陰極との間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、イリジウムを含む化合物と、を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物の混合膜の発光スペクトルは、前記第1の有機化合物の膜の蛍光スペクトル及び前記第2の有機化合物の膜の蛍光スペクトルより長波長側に位置し、
前記第1の有機化合物は、6員環で構成される含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位よりも低く、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と、前記第2の有機化合物のHOMO準位との差が、0.4eV以下であり、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環に、ベンゼン環が縮合している、発光素子。
【請求項12】
陽極と陰極との間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、イリジウムを含む化合物と、を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物は、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の有機化合物は、6員環で構成される含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位よりも低く、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と、前記第2の有機化合物のHOMO準位との差が、0.4eV以下であり、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環に、ベンゼン環が縮合している、発光素子。
【請求項13】
陽極と陰極との間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、燐光性化合物と、を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物の混合膜の発光スペクトルは、前記第1の有機化合物の膜の蛍光スペクトル及び前記第2の有機化合物の膜の蛍光スペクトルより長波長側に位置し、
前記第1の有機化合物は、6員環で構成される含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位よりも低く、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と、前記第2の有機化合物のHOMO準位との差が、0.3eV以下であり、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環に、ベンゼン環が縮合している、発光素子。
【請求項14】
陽極と陰極との間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、燐光性化合物と、を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物は、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の有機化合物は、6員環で構成される含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位よりも低く、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と、前記第2の有機化合物のHOMO準位との差が、0.3eV以下であり、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環に、ベンゼン環が縮合している、発光素子。
【請求項15】
陽極と陰極との間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、イリジウムを含む化合物と、を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物の混合膜の発光スペクトルは、前記第1の有機化合物の膜の蛍光スペクトル及び前記第2の有機化合物の膜の蛍光スペクトルより長波長側に位置し、
前記第1の有機化合物は、6員環で構成される含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位よりも低く、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と、前記第2の有機化合物のHOMO準位との差が、0.3eV以下であり、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環に、ベンゼン環が縮合している、発光素子。
【請求項16】
陽極と陰極との間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、イリジウムを含む化合物と、を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物は、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の有機化合物は、6員環で構成される含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位よりも低く、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と、前記第2の有機化合物のHOMO準位との差が、0.3eV以下であり、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環に、ベンゼン環が縮合している、発光素子。
【請求項17】
請求項9乃至請求項16のいずれか一において、
前記6員環で構成される含窒素複素芳香環は、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、テトラジンのいずれかである、発光素子。
【請求項18】
請求項9乃至請求項16のいずれか一において、
前記ベンゼン環が縮合している6員環で構成される含窒素複素芳香環は、キノリン、イソキノリン、ジベンゾ[f,h]キノリン、ナフチリジン、ジベンゾ[f,h]キノキサリン、ジベンゾ[f,h]キナゾリンのいずれかである、発光素子。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のいずれか一項に記載の発光素子を有する、発光装置。
【請求項20】
請求項1乃至請求項18のいずれか一項に記載の発光素子、または、請求項11に記載の発光装置と、
接続端子、または、操作キーと、を有する電子機器。
【請求項21】
請求項19に記載の発光装置と、筐体と、を有する照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシン
、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。特に
、本発明の一態様は、発光素子、発光装置、電子機器、および照明装置、それらの駆動方
法、または、それらの製造方法に関する。さらに、発光素子、発光装置、電子機器、およ
び照明装置に用いることができる有機化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型軽量、高速応答性、直流低電圧駆動などの特徴を有する有機化合物を発光体として用
いた発光素子は、次世代のフラットパネルディスプレイへの応用が期待されている。特に
、発光素子をマトリクス状に配置した表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、視野
角が広く視認性が優れる点に優位性があると考えられている。
【0003】
発光素子の発光機構は、一対の電極間に発光体を含むEL層を挟んで電圧を印加すること
により、陰極から注入された電子および陽極から注入された正孔がEL層の発光中心で再
結合して分子励起子を形成し、その分子励起子が基底状態に緩和する際にエネルギーを放
出して発光するといわれている。励起状態には一重項励起と三重項励起が知られ、発光は
どちらの励起状態を経ても可能であると考えられている。
【0004】
この様な発光素子に関しては、その素子特性を向上させる為に、素子構造の改良や材料開
発等が盛んに行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-182699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発光素子の開発において、素子の信頼性を高めることは、商品化に向けて重要視される項
目の一つである。なお、素子の信頼性を高めるためには、発光素子のEL層におけるキャ
リアバランスの制御や、キャリアの再結合確率の向上を可能とする素子構成が必要となる
。そこで、EL層を所望の素子構成とすることにより、発光層でのキャリア移動を良好に
し、信頼性の高い発光素子を提供することを目的とする。また、高い電流効率(あるいは
量子効率)を得ることも、駆動に必要な電流量を下げ、信頼性を高める観点で重要である
【0007】
そこで、本発明の一態様では、信頼性を向上させた発光素子を提供する。また、電流効率
(あるいは量子効率)の高い発光素子を提供する。さらに本発明の一態様である発光素子
への適用が好ましい新規の有機化合物を提供する。また、本発明の別の一態様では、上記
の有機化合物をEL材料として用いた、発光効率および信頼性の高い発光素子、発光装置
、電子機器、または照明装置を提供する。または、本発明の別の一態様では、新規な材料
を提供する。または、本発明の別の一態様では、新規な発光素子、発光装置を提供する。
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題
は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図
面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、陽極と、陰極と、の間にEL層を有し、EL層は、発光層を有し、発
光層は、電子輸送性および正孔輸送性を有する第1の有機化合物と、正孔輸送性を有する
第2の有機化合物と、発光物質と、を含み、第1の有機化合物と第2の有機化合物は、励
起錯体を形成する組み合わせであり、第1の有機化合物のHOMO準位は、第2の有機化
合物のHOMO準位よりも低く、第1の有機化合物のHOMO準位と、第2の有機化合物
のHOMO準位との差が、0.4eV以下であることを特徴とする発光素子である。
【0009】
また、本発明の別の一態様は、陽極と、陰極と、の間にEL層を有し、EL層は、発光層
を有し、発光層は、電子輸送性および正孔輸送性を有する第1の有機化合物と、正孔輸送
性を有する第2の有機化合物と、発光物質と、を有し、第1の有機化合物と第2の有機化
合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、第1の有機化合物は6員環の含窒素複
素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含まず、第2の
有機化合物はトリアリールアミン骨格を含むことを特徴とする発光素子である。
【0010】
また、本発明の別の一態様は、陽極と、陰極と、の間にEL層を有し、EL層は、発光層
を有し、発光層は、電子輸送性および正孔輸送性を有する第1の有機化合物と、正孔輸送
性を有する第2の有機化合物と、発光物質と、を有し、第1の有機化合物と第2の有機化
合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、第1の有機化合物は6員環で構成され
る含窒素複素芳香環およびビカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含
まず、第2の有機化合物はトリアリールアミン骨格を含むことを特徴とする発光素子であ
る。
【0011】
また、上記構成において、ビカルバゾール骨格は、3,3’-ビカルバゾール骨格、また
は2,3’-ビカルバゾール骨格であることを特徴とする。
【0012】
また、上記各構成において、発光物質は、燐光性化合物であることを特徴とする。
【0013】
また、上記各構成において、EL層は正孔輸送層を含み、正孔輸送層と発光層とは互いに
接し、正孔輸送層は、正孔輸送性を有する第3の有機化合物を有し、第3の有機化合物の
HOMO準位は、第2の有機化合物のHOMO準位よりも低いことを特徴とする発光素子
である。
【0014】
また、上記各構成において、第1の有機化合物は、下記一般式(G0)で示されることを
特徴とする発光素子である。
【0015】
【化1】
【0016】
但し、式中、Aは、ジベンゾ[f,h]キノキサリニル基を表し、R~R15は、それ
ぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置
換の炭素数5~7のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~13のアリール
基、のいずれかを表し、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリーレン基、
または単結合を表す。なお、Arのアリーレン基として、アントラセニレン基は含まない
ことが好ましい。
【0017】
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G0)で表される有機化合物である。
【0018】
【化2】
【0019】
但し、式中、Aは、ジベンゾ[f,h]キノキサリニル基を表し、R~R15は、それ
ぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置
換の炭素数5~7のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~13のアリール
基、のいずれかを表し、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリーレン基、
または単結合を表す。なお、Arのアリーレン基として、アントラセニレン基は含まない
ことが好ましい。
【0020】
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G1)で表される有機化合物である。
【0021】
【化3】
【0022】
但し、式中、R~R24は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~
6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~7のシクロアルキル基、置換もしくは
無置換の炭素数6~13のアリール基、のいずれかを表し、Arは、置換もしくは無置換
の炭素数6~25のアリーレン基、または単結合を表す。なお、Arのアリーレン基とし
て、アントラセニレン基は含まないことが好ましい。
【0023】
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G2)で表される有機化合物である。
【0024】
【化4】
【0025】
但し、式中、R~R24は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~
6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~7のシクロアルキル基、置換もしくは
無置換の炭素数6~13のアリール基、のいずれかを表し、Arは、置換もしくは無置換
の炭素数6~25のアリーレン基、または単結合を表す。なお、Arのアリーレン基とし
て、アントラセニレン基は含まないことが好ましい。
【0026】
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G3)で表される有機化合物である。
【0027】
【化5】
【0028】
但し、式中、R~R24は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~
6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~7のシクロアルキル基、置換もしくは
無置換の炭素数6~13のアリール基、のいずれかを表し、Arは、置換もしくは無置換
の炭素数6~25のアリーレン基、または単結合を表す。なお、Arのアリーレン基とし
て、アントラセニレン基は含まないことが好ましい。
【0029】
なお、上述した一般式(G0)、一般式(G2)および一般式(G3)における炭素数1
~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基
、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソ
ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。また、炭素数5~7のシクロアルキル基とし
ては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられ
る。炭素数6~13のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基
、ビフェニル基、インデニル基、ナフチル基、フルオレニル基などが挙げられる。また、
Arにおける炭素数6~25のアリーレン基としては、1,2-または1,3-または1
,4-フェニレン基、2,6-または3,5-または2,4-トルイレン基、4,6-ジ
メチルベンゼン-1,3-ジイル基、2,4,6-トリメチルベンゼン-1,3-ジイル
基、2,3,5,6-テトラメチルベンゼン-1,4-ジイル基、3,3’-または3,
4’-または4,4’-ビフェニレン基、1,1’:3’,1’’-テルベンゼン-3,
3’’-ジイル基、1,1’:4’,1’’-テルベンゼン-3,3’’-ジイル基、1
,1’:4’,1’’-テルベンゼン-4,4’’-ジイル基、1,1’:3’,1’’
:3’’,1’’’-クアテルベンゼン-3,3’’’-ジイル基、1,1’:3’,1
’’:4’’,1’’’-クアテルベンゼン-3,4’’’-ジイル基、1,1’:4’
,1’’:4’’,1’’’-クアテルベンゼン-4,4’’’-ジイル基、1,4-ま
たは1,5-または2,6-または2,7-ナフチレン基、2,7-フルオレニレン基、
9,9-ジメチル-2,7-フルオレニレン基、9,9-ジフェニル-2,7-フルオレ
ニレン基、9,9-ジメチル-1,4-フルオレニレン基、スピロ-9,9’-ビフルオ
レン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロ-2,7-フェナントレニレン基、2,7
-フェナントレニレン基、3,6-フェナントレニレン基、9,10-フェナントレニレ
ン基、2,7-トリフェニレニレン基、3,6-トリフェニレニレン基、2,8-ベンゾ
[a]フェナントレニレン基、2,9-ベンゾ[a]フェナントレニレン基、5,8-ベ
ンゾ[c]フェナントレニレン基などが挙げられる。
【0030】
また、上述した炭素数1~6のアルキル基、炭素数5~7のシクロアルキル基、炭素数6
~13のアリール基、炭素数6~25のアリーレン基は置換基を有していても良く、該置
換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチ
ル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル
基などの炭素数1~6のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプ
チル基などの炭素数5~7のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビ
フェニル基、インデニル基、ナフチル基、フルオレニル基、9,9’-ジメチルフルオレ
ニル基などの環を形成する炭素数が6~13のアリール基が好ましい。
【0031】
また、本発明の別の一態様は、上記一般式(G0)~(G3)のいずれかの有機化合物を
用いた発光素子である。
【0032】
また、本発明の別の一態様は、上記各構成に示す発光素子と、筐体とを有する発光装置で
ある。
【0033】
なお、本発明の一態様は、発光素子を有する発光装置だけでなく、該発光素子や該発光装
置を適用した電子機器(具体的には、該発光素子や該発光装置と、接続端子、または操作
キーとを有する電子機器)および照明装置(具体的には、該発光素子や該発光装置と、筐
体とを有する照明装置)も範疇に含めるものである。従って、本明細書中における発光装
置とは、画像表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコ
ネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしく
はTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、
TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chi
p On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て
発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0034】
本発明の一態様により、新規なジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体を提供することが
できる。また、本発明の一態様により、上記ジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体をE
L材料として用いた、発光効率および信頼性の高い発光素子、発光装置、電子機器、また
は照明装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、新規な材料を提供す
ることができる。または、本発明の別の一態様では、新規な発光素子、発光装置を提供す
ることができる。なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。
なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、こ
れら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであ
り、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能であ
る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】発光素子の発光層について説明する図。
図2】発光素子の発光層について説明する図。
図3】発光素子の構造について説明する図。
図4】発光素子の構造について説明する図。
図5】発光装置について説明する図。
図6】発光装置について説明する図。
図7】電子機器について説明する図。
図8】電子機器について説明する図。
図9】照明器具について説明する図。
図10】構造式(100)に示すジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体のH-NMRチャート。
図11】構造式(100)に示すジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
図12】構造式(100)に示すジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
図13】構造式(101)に示すジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体のH-NMRチャート。
図14】構造式(101)に示すジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
図15】構造式(101)に示すジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
図16】構造式(102)に示すジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体のH-NMRチャート。
図17】構造式(102)に示すジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
図18】構造式(102)に示すジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
図19】構造式(103)に示すジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体のH-NMRチャート。
図20】構造式(103)に示すジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
図21】構造式(103)に示すジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
図22】発光素子1、発光素子2、および比較発光素子3の構造を説明する図。
図23】発光素子1、発光素子2、および比較発光素子3の電流密度-輝度特性を示す図。
図24】発光素子1、発光素子2、および比較発光素子3の電圧-輝度特性を示す図。
図25】発光素子1、発光素子2、および比較発光素子3の輝度-電流効率特性を示す図。
図26】発光素子1、発光素子2、および比較発光素子3の電圧-電流特性を示す図。
図27】発光素子1、発光素子2、および比較発光素子3の発光スペクトルを示す図。
図28】発光素子1、発光素子2、および比較発光素子3の信頼性を示す図。
図29】発光素子4の電流密度-輝度特性を示す図。
図30】発光素子4の電圧-輝度特性を示す図。
図31】発光素子4の輝度-電流効率特性を示す図。
図32】発光素子4の電圧-電流特性を示す図。
図33】発光素子4の発光スペクトルを示す図。
図34】発光素子4の信頼性を示す図。
図35】構造式(122)に示すジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体のH-NMRチャート。
図36】発光素子5、比較発光素子6および比較発光素子7の電流密度-輝度特性を示す図。
図37】発光素子5、比較発光素子6および比較発光素子7の電圧-輝度特性を示す図。
図38】発光素子5、比較発光素子6および比較発光素子7の輝度-電流効率特性を示す図。
図39】発光素子5、比較発光素子6および比較発光素子7の電圧-電流特性を示す図。
図40】発光素子5、比較発光素子6および比較発光素子7の発光スペクトルを示す図。
図41】発光素子5、比較発光素子6および比較発光素子7の信頼性を示す図。
図42】発光素子8の電流密度-輝度特性を示す図。
図43】発光素子8の電圧-輝度特性を示す図。
図44】発光素子8の輝度-電流効率特性を示す図。
図45】発光素子8の電圧-電流特性を示す図。
図46】発光素子8の発光スペクトルを示す図。
図47】発光素子1Aの保存試験における電圧-電流特性を示す図。
図48】発光素子1Aの保存試験における輝度-外部量子効率特性を示す図。
図49】発光素子2Aの保存試験における電圧-電流特性を示す図。
図50】発光素子2Aの保存試験における輝度-外部量子効率特性を示す図。
図51】比較発光素子3Aの保存試験における電圧-電流特性を示す図。
図52】比較発光素子3Aの保存試験における輝度-外部量子効率特性を示す図。
図53】発光素子4Aの保存試験における電圧-電流特性を示す図。
図54】発光素子4Aの保存試験における輝度-外部量子効率特性を示す図。
図55】発光素子8Aの保存試験における電圧-電流特性を示す図。
図56】発光素子8Aの保存試験における輝度-外部量子効率特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の
説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を
様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容
に限定して解釈されるものではない。
【0037】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応
じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜
」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用
語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0038】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光素子について説明する。
【0039】
本実施の形態に示す発光素子は、一対の電極(第1の電極(陽極)と第2の電極(陰極)
)間に発光層を含むEL層が挟まれており、EL層は、発光層の他に、正孔(または、ホ
ール)注入層、正孔(または、ホール)輸送層、電子輸送層、電子注入層などを含んで形
成される。
【0040】
そして、発光素子に対して電圧を印加すると、第1の電極側から注入された正孔と第2の
電極側から注入された電子とが、発光層において再結合し、それにより生じたエネルギー
に起因して、発光層に含まれる発光物質が発光する。
【0041】
この時の発光層100には、図1に示すように電子輸送性および正孔輸送性を有する第1
の有機化合物(h)101と、正孔輸送性を有する第2の有機化合物(a)102と、発
光物質(図示せず)とが含まれている。なお、第1の有機化合物(h)101と、第2の
有機化合物(a)102とは、励起錯体(exciplex:エキサイプレックスとも言
う)を形成する組み合わせである。すなわち、少なくとも、第1の有機化合物(h)10
1の最低空分子軌道(LUMO:Lowest Unoccupied Molecul
ar Orbital)準位は第2の有機化合物(a)102のLUMO準位よりも低く
、また、第1の有機化合物(h)101の最高被占有軌道(HOMO:Highest
Occupied Molecular Orbital)準位は第2の有機化合物(a
)102のHOMO準位よりも低い。従って、生じた励起錯体の励起エネルギーは、図に
示すように、第1の有機化合物(h)101のLUMO準位(LUMO(h))と、第2
の有機化合物(a)102のHOMO準位(HOMO(a))とのエネルギー差(すなわ
ち図中のΔE)の影響を受ける。
【0042】
このような発光層100では、励起錯体の発光スペクトルと発光物質(ゲスト材料)の吸
収スペクトルとの重なりを利用したエネルギー移動を行うことができるため、エネルギー
移動効率が高く、外部量子効率の高い発光素子を実現することができる。また、励起錯体
を電気励起するためには、ΔEに相当する電気エネルギー(すなわち電圧)が必要とな
るが、このΔEは、第1の有機化合物(h)101を電気励起するのに必要なエネルギ
ーΔEや、第2の有機化合物(a)102を電気励起するのに必要なエネルギーΔE
よりも小さい。すなわち、このような発光層100においては、発光素子の駆動電圧(発
光開始電圧)を低減することができる。
【0043】
この場合、第1の有機化合物(h)101や第2の有機化合物(a)102を用いずに、
ΔEに相当するHOMO-LUMOギャップを有する1種類の有機化合物を発光層10
0に用いることでも、発光層100と同様の低い駆動電圧(発光開始電圧)を得ることが
できる。しかし、1種類の有機化合物では、一重項励起エネルギーに比べて三重項励起エ
ネルギーが大きく低下してしまうため、三重項励起エネルギーを発光物質(ゲスト材料)
にエネルギー移動させ、さらにこれを発光に寄与させることが難しい。一方、励起錯体は
一重項励起エネルギーと三重項励起エネルギーがほぼ同じ位置にあるという特徴を有する
ため、一重項励起エネルギーと三重項励起エネルギーの双方を発光物質にエネルギー移動
させることができる。その結果、上記の低電圧化の効果に加え、高効率化の効果を得るこ
ともできる。ここでいう高効率化のメカニズムの詳細は、以下に述べる通りである。
【0044】
発光物質が燐光性化合物の場合、励起錯体の一重項励起エネルギーおよび三重項励起エネ
ルギーは、共に該燐光性化合物の三重項励起状態にエネルギー移動し、該三重項励起状態
からの発光(すなわち燐光発光)に変換されるため、高効率の観点で最も好ましい。
【0045】
また、発光物質が熱活性化遅延蛍光性化合物の場合、励起錯体の一重項励起エネルギーは
発光物質の一重項励起状態にエネルギー移動し、該一重項励起状態からの発光(すなわち
蛍光発光)に変換することができる。また、励起錯体の三重項励起エネルギーは発光物質
の三重項励起状態にエネルギー移動するが、該三重項励起状態は熱活性化により、一部ま
たは全てが発光物質の一重項励起状態に逆項間交差し、最終的に蛍光発光に変換されるた
め、高効率が得られる。
【0046】
また、発光物質が蛍光性化合物の場合、励起錯体の一重項励起エネルギーは発光物質の一
重項励起状態にエネルギー移動し、該一重項励起状態からの発光(すなわち蛍光発光)に
変換することができる。一方、励起錯体の三重項励起エネルギーは、発光物質の三重項励
起状態にエネルギー移動し、熱失活してしまうため、一見高効率は得られないように思え
る。しかしながら、エネルギードナーである励起錯体は一重項励起エネルギーと三重項励
起エネルギーの差が小さいため、励起錯体自体、熱活性化遅延蛍光を示す性質を有する。
換言すれば、励起錯体の三重項励起状態は、一部または全てが一重項励起状態に逆項間交
差し、一重項励起子の割合が通常に比べて増加する。エネルギードナーである励起錯体の
一重項励起子の割合が増加し、その一重項励起エネルギーが発光物質の一重項励起状態に
エネルギー移動するのであるから、蛍光性化合物を発光物質として用いた場合でも、やは
り発光効率は高くなる。このような現象も本発明の特徴の一つである。
【0047】
このように、励起錯体を発光層におけるエネルギードナーとした発光素子は、燐光性化合
物、熱活性化遅延蛍光性化合物、蛍光性化合物、いずれの化合物を発光物質として用いた
場合でも有用であるが、発光領域の制御という観点において問題が生じうる。
【0048】
先にも述べたように、少なくとも、第1の有機化合物(h)101のLUMO準位(LU
MO(h))は第2の有機化合物(a)102のLUMO準位(LUMO(a))よりも
エネルギー準位が低く、また、第1の有機化合物(h)101のHOMO準位(HOMO
(h))は第2の有機化合物(a)102のHOMO準位(HOMO(a))よりもエネ
ルギー準位が低いことが、第1の有機化合物(h)101と第2の有機化合物(a)10
2が励起錯体を形成するための条件である。特に、従来、励起錯体を発光層100におけ
るエネルギードナーとした発光素子においては、第1の有機化合物(h)101のHOM
O準位(HOMO(h))と第2の有機化合物(a)102のHOMO準位(HOMO(
a))とのエネルギー差ΔEHOMOを非常に大きくすることにより、励起錯体の形成を
実現していた。例えば、第1の有機化合物(h)101として、2-[3’-(ジベンゾ
チオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称
:2mDBTBPDBq-II)を、第2の有機化合物(a)102として、N-(1,
1’-ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-
カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBB
iF)を用いた場合、第1の有機化合物(h)101のHOMO準位(HOMO(h))
は-6.22eVであるのに対し、第2の有機化合物(a)102のHOMO準位(HO
MO(a))は-5.36eVであるため、ΔEHOMOは0.86eVもある。
【0049】
このように、第1の有機化合物(h)101のHOMO準位(HOMO(h))と第2の
有機化合物(a)102のHOMO準位(HOMO(a))の差(ΔEHOMO)が大き
い場合、第2の有機化合物(a)102の発光層100中の含有量によってキャリアバラ
ンスが大きく変化しやすい。すなわち、第2の有機化合物(a)102が少なすぎると電
子過多、すなわち発光領域が陽極側に偏ってしまうが、最適量から少し多くなってしまう
だけで、今度は正孔過多、すなわち正孔が陰極側へ抜けてしまう。このようなマージンの
少ないデバイスの場合、たとえ第1の有機化合物(h)101と第2の有機化合物(a)
102の混合比を絶妙に最適化したとしても、長期駆動により少しキャリアバランスが崩
れると、その影響を受けて再結合効率が低下し、輝度劣化してしまう。また、ΔEHOM
が大きいと、正孔が第2の有機化合物(a)102に蓄積されるため、発光層100内
の再結合領域の幅自体も狭くなる。それとは逆に、発光層100内の再結合領域は広い方
が、発光層100全域を利用できるため、より信頼性は高くなると言える。
【0050】
また、発光素子は、電子注入電極(陰極)の劣化等に伴い、電子注入性が低下するため、
長期駆動により再結合領域が陰極側にずれてくることが多い。この時、正孔を再結合領域
まで輸送する平均距離は長くなってくるため、発光層100が正孔輸送性に乏しいと、発
光素子の抵抗が高くなる。換言すれば、定電流駆動した際には、駆動電圧が経時的に大き
く上昇してしまう。第1の有機化合物(h)のHOMO準位(HOMO(h))と第2の
有機化合物(a)のHOMO準位(HOMO(a))の差(ΔEHOMO)が大きい場合
は、発光層100内で正孔が進みにくいため、この問題が顕著に出やすいという問題もあ
る。
【0051】
上記のような励起錯体を発光層100におけるエネルギードナーとした発光素子における
問題点を解決するのが、本発明の発光素子の一態様である。すなわち、陽極と、陰極と、
の間にEL層を有し、EL層は、発光層100を有し、発光層100は、電子輸送性およ
び正孔輸送性を有する第1の有機化合物(h)101と、正孔輸送性を有する第2の有機
化合物(a)102と、発光物質と、を含み、第1の有機化合物(h)101と第2の有
機化合物(a)102は、励起錯体を形成する組み合わせであり、第1の有機化合物(h
)のHOMO準位(HOMO(h))は、第2の有機化合物(a)のHOMO準位(HO
MO(a))よりも低く、第1の有機化合物(h)のHOMO準位(HOMO(h))と
、第2の有機化合物(a)のHOMO準位(HOMO(a))との差が、0.4eV以下
であることを特徴とする発光素子である。
【0052】
このような構成とすることで、正孔の一部は第2の有機化合物(a)102だけでなく、
第1の有機化合物(h)101にも注入される。その結果、第2の有機化合物(a)10
2に正孔が蓄積しにくくなるため、キャリアバランスを保ちやすく、かつ発光層100内
での再結合領域の広い発光素子を得ることができる。また、長期駆動(定電流駆動)にお
ける電圧上昇を抑制することができる。この場合、一部では第1の有機化合物(h)10
1で再結合が生じ、第1の有機化合物の励起状態が形成されることにもなるが、これは速
やかに励起錯体に変換されるため、上述した励起錯体を用いることによる高効率の効果も
享受することができる。また、正孔は主として第2の有機化合物(a)102に注入され
るため、駆動電圧(発光開始電圧)を下げる効果も維持される。
【0053】
このように、ΔEHOMOを0.4eV以下(かつ0eVより大)としつつも、第1の有
機化合物(h)101と第2の有機化合物(a)102とで励起錯体を形成することで、
上述した問題点を解決することができる。第2の有機化合物(a)102のみならず、第
1の有機化合物(h)101にもホールを注入する観点から、ΔEHOMOは0.3eV
以下がより好ましい。
【0054】
また、上記の概念を得るのに好適な化合物は以下の通りである。まず、第1の有機化合物
(h)101は、6員環の含窒素複素芳香環およびカルバゾール骨格を含み、かつトリア
リールアミン骨格を含まないことが好ましい。すなわち、6員環の含窒素複素芳香環によ
り電子輸送性を持たせつつ、カルバゾール骨格を含み、かつトリアリールアミン骨格を含
まないことにより、適度な正孔輸送性も保有させた化合物が好ましい。一方で、第2の有
機化合物(a)102は、正孔輸送性を有する化合物であり、第1の有機化合物(h)1
01よりもHOMO準位を高くするため、トリアリールアミン骨格を含むことが好ましい
【0055】
多くのトリアリールアミン骨格を含む化合物は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測
定によれば、-5.5eV付近、またはそれ以上のHOMO準位を有する。一方、単純な
9-フェニルカルバゾールのHOMO準位は-5.88eVであるため、その差は0.4
eV以上となってしまう場合が多い。そこで、本発明の一態様において、第1の有機化合
物(h)101のカルバゾール骨格としては、ビカルバゾール骨格を含むことが好ましい
。ビカルバゾールは9-フェニルカルバゾールよりもHOMO準位が上昇するためである
。特に、3,3’-ビカルバゾール骨格や2,3’-ビカルバゾール骨格を導入すると、
HOMO準位が-5.6~-5.7eV付近となるため、本発明の一態様における第1の
有機化合物(h)101に好適である。
【0056】
なお、上記6員環の含窒素複素芳香環としては、ピリジンの他、ピラジン、ピリミジン、
ピリダジンのようなジアジンや、トリアジン、テトラジンが挙げられる。これらの6員環
の含窒素複素芳香環は、さらにベンゼン環などが縮合していても良い。例えば、ベンゼン
環が縮合した6員環の含窒素複素芳香環としては、キノリン、イソキノリン、ジベンゾ[
f,h]キノリンが挙げられる。また、キノキサリン、キナゾリン、フタラジンに代表さ
れるナフチリジンや、ジベンゾ[f,h]キノキサリン、ジベンゾ[f,h]キナゾリン
なども有用である。
【0057】
また、本発明の一態様では、上述した通り、第2の有機化合物(a)102のみならず、
第1の有機化合物(h)101にもホールを注入し、輸送させた方が好ましい。したがっ
て、図2に示すように発光層100における第1の有機化合物(h)101および第2の
有機化合物(a)102の双方へのホール注入性を高めるため、発光層100に接する正
孔輸送層104に、正孔輸送性を有する第3の有機化合物(p)105を用い、第3の有
機化合物(p)105のHOMO準位(HOMO(p))が第2の有機化合物(a)10
2のHOMO準位(HOMO(a))よりも低くなるようにすることが好ましい。特に、
第3の有機化合物(p)105のHOMO準位(HOMO(p))が、第2の有機化合物
(a)102のHOMO準位(HOMO(a))と第1の有機化合物(h)101のHO
MO準位(HOMO(h))との間になるように、第3の有機化合物(p)105を選択
することがより好ましい。
【0058】
以下に、上記構成を有する本発明の一態様である発光素子の具体的な一例について図3
用いて説明する。
【0059】
第1の電極(陽極)201および第2の電極(陰極)203には、金属、合金、電気伝導
性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、酸化インジウ
ム-酸化スズ(Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した
酸化インジウム-酸化スズ、酸化インジウム-酸化亜鉛(Indium Zinc Ox
ide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム、金(Au)、白金
(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo
)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)
の他、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシ
ウム(Cs)等のアルカリ金属、およびカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等
のアルカリ土類金属、マグネシウム(Mg)、およびこれらを含む合金(MgAg、Al
Li)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを
含む合金、その他グラフェン等を用いることができる。なお、第1の電極(陽極)201
および第2の電極(陰極)203は、例えばスパッタリング法や蒸着法(真空蒸着法を含
む)等により形成することができる。
【0060】
正孔注入層211は、正孔輸送性の高い正孔輸送層212を介して発光層213に正孔を
注入する層であり、正孔輸送性の高い物質(正孔輸送性化合物ともいう)とアクセプター
性物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含むことで、アク
セプター性物質により正孔輸送性の高い物質から電子が引き抜かれて正孔(ホール)が発
生し、正孔輸送層212を介して発光層213に正孔が注入される。なお、正孔輸送層2
12は、正孔輸送性の高い物質を用いて形成される。
【0061】
正孔注入層211および正孔輸送層212に用いる正孔輸送性の高い物質としては、例え
ば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:
NPBまたはα-NPD)やN,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェ
ニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4
’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,
4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDA
TA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ
]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9
’-ビフルオレン-2-イル)-N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)な
どの芳香族アミン化合物、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フ
ェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[
N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカ
ルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニ
ルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN
1)等が挙げられる。その他、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:C
BP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:T
CPB)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カル
バゾール(略称:CzPA)等のカルバゾール誘導体、等を用いることができる。ここに
述べた物質は、主に1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但
し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0062】
さらに、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4-ビニルトリフェ
ニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニル
アミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](
略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス
(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)などの高分子化合物を用いること
もできる。
【0063】
また、正孔注入層211に用いるアクセプター性物質としては、元素周期表における第4
族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化モリブデン
が特に好ましい。
【0064】
発光層213は、発光物質を含む層である。但し、発光層213を図1に示す構成とする
場合には、後述する電子輸送性および正孔輸送性を有する第1の有機化合物と、上述した
正孔輸送性を有する第2の有機化合物と、発光物質とを含むこととする。また、第1の有
機化合物および第2の有機化合物は、発光層におけるキャリア(電子及びホール)の再結
合の際に励起錯体(エキサイプレックスとも言う)を形成することができる組み合わせと
する。発光層において、励起錯体が形成されることにより、第1の有機化合物の蛍光スペ
クトルおよび第2の有機化合物の蛍光スペクトルは、より長波長側に位置する励起錯体の
発光スペクトルに変換される。そして、励起錯体の発光スペクトルとゲスト材料の吸収ス
ペクトルとの重なりが大きくなるように、第1の有機化合物と第2の有機化合物を選択す
ることで、一重項励起状態からのエネルギー移動を最大限に高めることができる。なお、
三重項励起状態に関しても、ホスト材料ではなく励起錯体からのエネルギー移動が生じる
と考えられる。
【0065】
第1の有機化合物及び第2の有機化合物としては、励起錯体を生じる組み合わせであれば
よいが、電子を受け取りやすい化合物(電子トラップ性化合物)と、ホールを受け取りや
すい化合物(正孔トラップ性化合物)とを組み合わせることが好ましい。第1の有機化合
物は、電子のみならず正孔もトラップ(あるいは輸送)できることが好ましいため、6員
環で構成される含窒素複素芳香環およびビカルバゾール骨格を含み、かつトリアリールア
ミン骨格を含まない化合物が好ましい。例えば、下記一般式(G0)で示される化合物が
好適である。
【0066】
【化6】
【0067】
(式中、Aは、ジベンゾ[f,h]キノキサリニル基を表し、R~R15は、それぞれ
独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換の
炭素数5~7のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~13のアリール基、
のいずれかを表し、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリーレン基、また
は単結合を表す。なお、Arのアリーレン基として、アントラセニレン基は含まないこと
が好ましい。)
【0068】
なお、Arがアントラセニレン基を含むと、化合物の三重項励起エネルギーが大きく(1
.7eV以下にまで)低下し、励起錯体の三重項励起エネルギーがクエンチされてしまう
場合がある。したがって、Arのアリーレン基として、アントラセニレン基は含まないこ
とが好ましい。
【0069】
より具体的には、上述の一般式(G1)~(G3)で表される化合物が好適である。さら
に具体的には、例えば、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イ
ル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略
称:2PCCzPDBq)、2-{3-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3
-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン
(略称2mPCCzPDBq)、2-{4-[2-(N-フェニル-9H-カルバゾール
-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサ
リン(略称:2PCCzPDBq-02)、及び、2-{3-[2-(N-フェニル-9
H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[
f,h]キノキサリン(略称2mPCCzPDBq-02)が挙げられる。
【0070】
また、ホールを受け取りやすい化合物としては、例えば、4-フェニル-4’-(9-フ
ェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)
、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]
-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)、4,4’,4’’-トリス[N
-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’-TNAT
A)、2,7-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-
スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPA2SF)、N,N’-ビス(9-フェニ
ルカルバゾール-3-イル)-N,N’-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(略称
:PCA2B)、N-(9,9-ジメチル-2-N’,N’-ジフェニルアミノ-9H-
フルオレン-7-イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、N,N’,N’’-トリ
フェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)ベンゼン
-1,3,5-トリアミン(略称:PCA3B)、2-[N-(9-フェニルカルバゾー
ル-3-イル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:PCA
SF)、2-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-
9,9’-ビフルオレン(略称:DPASF)、N,N’-ビス[4-(カルバゾール-
9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジメチルフルオレン-2,7-
ジアミン(略称:YGA2F)、4,4’-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フ
ェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルア
ミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N-(9,9-
ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-N-{9,9-ジメチル-2[N’-フェニ
ル-N’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9H-フルオ
レン-7-イル}フェニルアミン(略称:DFLADFL)、3-[N-(9-フェニル
カルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:
PCzPCA1)、3-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ
]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)、3,6-ビス[N-(4-ジ
フェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:
PCzDPA2)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’
-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)
、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ
]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)、3,6-ビス[N-(9-フ
ェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(
略称:PCzPCA2)等のトリアリールアミン骨格を有する化合物が挙げられる。
【0071】
上述した第1の有機化合物及び第2の有機化合物は、これらの具体例に限定されることな
く、励起錯体を形成できる組み合わせであり、励起錯体の発光スペクトルが、発光物質の
吸収スペクトルと重なり、励起錯体の発光スペクトルのピークが、発光物質の吸収スペク
トルのピークよりも長波長であればよい。
【0072】
なお、電子を受け取りやすい化合物とホールを受け取りやすい化合物で第1の有機化合物
と第2の有機化合物を構成する場合、その混合比によってキャリアバランスを制御するこ
とができる。具体的には、第1の有機化合物:第2の有機化合物=1:9~9:1の範囲
が好ましい。
【0073】
発光層213において、発光物質、および発光中心物質として用いることが可能な材料に
は、一重項励起エネルギーを発光に変える発光物質、または三重項励起エネルギーを発光
に変える発光物質等を各々単独または組み合わせて用いることができる。なお、上記発光
物質および発光中心物質としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0074】
一重項励起エネルギーを発光に変える発光物質としては、例えば、蛍光を発する物質(蛍
光性化合物)が挙げられる。
【0075】
蛍光を発する物質としては、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フ
ェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)
、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)
トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4
’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAP
PA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル
]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,1
1-テトラ-tert-ブチルペリレン(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-
アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルア
ミン(略称:PCBAPA)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,
10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-
フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,
10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略
称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル
]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPP
A)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベ
ンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマ
リン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H
-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’
-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾー
ル-3-アミン(略称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アント
リル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPA
PA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]
-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPh
A)、9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-N-[4-(9H-カルバ
ゾール-9-イル)フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YG
ABPhA)、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAP
hA)、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ル
ブレン、5,12-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテ
トラセン(略称:BPT)、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテ
ニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM
1)、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベ
ンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパ
ンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニ
ル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル
-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フ
ルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)、{2-イソプロピル-
6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5
H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}
プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、{2-tert-ブチル-6-[2-(1,
1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij
]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリ
ル(略称:DCJTB)、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル
]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM
)、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3
,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル
]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)など
が挙げられる。
【0076】
三重項励起エネルギーを発光に変える発光物質としては、例えば、燐光を発する物質(燐
光性化合物)や熱活性化遅延蛍光(TADF)を示すTADF材料(熱活性化遅延蛍光性
化合物)が挙げられる。なお、TADF材料における遅延蛍光とは、通常の蛍光と同様の
スペクトルを持ちながら、寿命が著しく長い発光をいう。その寿命は、10-6秒以上、
好ましくは10-3秒以上である。
【0077】
燐光を発する物質としては、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェ
ニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CF
ppy)(pic))、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト
-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)、
トリス(2-フェニルピリジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、
ビス(2-フェニルピリジナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:I
r(ppy)(acac))、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン
)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、ビス(ベンゾ[h
]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)
acac))、ビス(2,4-ジフェニル-1,3-オキサゾラト-N,C2’)イリジ
ウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス{
2-[4’-(パーフルオロフェニル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム
(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p-PF-ph)(acac))、ビ
ス(2-フェニルベンゾチアゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセト
ナート(略称:Ir(bt)(acac))、ビス[2-(2’-ベンゾ[4,5-a
]チエニル)ピリジナト-N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略
称:Ir(btp)(acac))、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’
)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))
、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト
]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、(アセチルアセト
ナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称
:[Ir(mppr-Me)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5-イ
ソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[I
r(mppr-iPr)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5
-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(aca
c))、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジ
ウム(III)(略称:[Ir(tppr)(dpm)])、(アセチルアセトナト)
ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称
:[Ir(tBuppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-
ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)(aca
c)])、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-
ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)、トリス(1,3-ジフェニル-1,3
-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(
DBM)(Phen))、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロ
アセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)
(Phen))などが挙げられる。
【0078】
また、TADF材料としては、例えば、フラーレンやその誘導体、プロフラビン等のアク
リジン誘導体、エオシン等が挙げられる。また、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、
カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラ
ジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンと
しては、例えば、プロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Proto IX)
)、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Meso IX))、ヘマトポルフ
ィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Hemato IX))、コプロポルフィリンテト
ラメチルエステル-フッ化スズ錯体(SnF(Copro III-4Me))、オク
タエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(OEP))、エチオポルフィリン-
フッ化スズ錯体(SnF(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯
体(PtClOEP)等が挙げられる。さらに、2-(ビフェニル-4-イル)-4,
6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3
,5-トリアジン(PIC-TRZ)等のπ電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素
芳香環を有する複素環化合物を用いることもできる。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ
電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ
電子不足型複素芳香環のアクセプター性が共に強くなり、S1とT1のエネルギー差が小
さくなるため、特に好ましい。
【0079】
また、発光層213は、図3(B)に示すような積層構造を有していてもよい。但し、こ
の場合には、積層された各層からそれぞれの発光が得られる構成とする。例えば、1層目
の発光層213(a1)からは、蛍光発光が得られる構成とし、1層目に積層される2層
目の発光層213(a2)からは燐光発光が得られる構成とすればよい。なお、積層順に
ついては、この逆であってもよい。また、燐光発光が得られる層においては、励起錯体か
らドーパントへのエネルギー移動による発光が得られる構成とするのが好ましい。また、
発光色については、一方の層から青色発光が得られる構成とする場合、他方の層からは橙
色発光または黄色発光などが得られる構成とすることができる。また、各層において、複
数種のドーパントが含まれる構成としてもよい。
【0080】
電子輸送層214は、電子輸送性の高い物質(電子輸送性化合物ともいう)を含む層であ
る。電子輸送層214には、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称
:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称
:Almq)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:
BeBq)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アル
ミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス[2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンズ
オキサゾラト]亜鉛(II)(略称:Zn(BOX))、ビス[2-(2-ヒドロキシ
フェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(II)(略称:Zn(BTZ))などの金属錯体
を用いることができる。また、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチル
フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p
-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(
略称:OXD-7)、3-(4’-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-5-(
4’’-ビフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、3-(4-ter
t-ブチルフェニル)-4-(4-エチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,
2,4-トリアゾール(略称:p-EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPh
en)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサ
ゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いること
ができる。また、ポリ(2,5-ピリジンジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9-
ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略
称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-
(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)のような高分子
化合物を用いることもできる。ここに述べた物質は、主に1×10-6cm/Vs以上
の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、
上記以外の物質を電子輸送層214として用いてもよい。
【0081】
また、電子輸送層214は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が2層以上積層
されてなる構造としてもよい。
【0082】
電子注入層215は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層215には、フ
ッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、
リチウム酸化物(LiO)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれら
の化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF)のような希土類金
属化合物を用いることができる。また、電子注入層215にエレクトライドを用いてもよ
い。該エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子
を高濃度添加した物質等が挙げられる。なお、上述した電子輸送層214を構成する物質
を用いることもできる。
【0083】
また、電子注入層215に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材
料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生
するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、
発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電
子輸送層214を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる
。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的に
は、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マ
グネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ
金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、
バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いるこ
ともできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いること
もできる。
【0084】
なお、上述した正孔注入層211、正孔輸送層212、発光層213、電子輸送層214
、電子注入層215は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗
布法等の方法で形成することができる。
【0085】
上述した発光素子は、EL層202において正孔と電子とが再結合することにより発光す
る。そして、この発光は、第1の電極201および第2の電極203のいずれか一方また
は両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極201および第2の電極203
のいずれか一方、または両方が透光性を有する電極となる。
【0086】
なお、本実施の形態で示した発光素子は、励起錯体の発光スペクトルと燐光性化合物(ゲ
スト材料)の吸収スペクトルとの重なりを利用したエネルギー移動を行うことができるた
め、エネルギー移動効率が高く、外部量子効率の高い発光素子を実現することができる。
【0087】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いる
ことができるものとする。
【0088】
(実施の形態2)
本実施の形態では、発光素子に用いることができ、本発明の一態様であるジベンゾ[f,
h]キノキサリン誘導体について説明する。
【0089】
本発明の一態様であるジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体は、下記一般式(G0)で
表される。
【0090】
【化7】
【0091】
但し、式中、Aは、ジベンゾ[f,h]キノキサリニル基を表し、R~R15は、それ
ぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置
換の炭素数5~7のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~13のアリール
基、のいずれかを表し、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリーレン基、
または単結合を表す。なお、Arのアリーレン基として、アントラセニレン基は含まない
ことが好ましい。
【0092】
なお、上記一般式(G0)で表されるジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体は、以下に
示す合成方法により合成することができる。まず、下記合成スキーム(a)に示すように
、ジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体のハロゲン化合物(A1)と、ビカルバゾール
誘導体のアリールボロン酸化合物(A2)とを反応させることにより、ジベンゾ[f,h
]キノキサリン誘導体(G0)が得られる。
【0093】
【化8】
【0094】
なお、式中のAは、ジベンゾ[f,h]キノキサリニル基を表し、R~R15は、それ
ぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置
換の炭素数5~7のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~13のアリール
基、のいずれかを表し、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリーレン基、
または単結合を表す。なお、Arのアリーレン基として、アントラセニレン基は含まない
ことが好ましい。また、Xはハロゲンを表す。また、Arが置換もしくは無置換の炭素数
6~25のアリーレン基である場合、Bはボロン酸またはボロン酸エステルまたは環状ト
リオールボレート塩等を表す。なお、環状トリオールボレート塩としては、リチウム塩の
他に、カリウム塩、ナトリウム塩を用いても良い。また、Arが単結合の場合、Bは水素
を表す。
【0095】
その他、下記合成スキーム(b)に示すように、ジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体
のハロゲン化合物(A1)と、ハロゲンで置換されたアリールボロン酸(B1)とを反応
させることにより、中間体(B2)を得た後、ビカルバゾール誘導体(B3)とを反応さ
せることにより、ジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体(G0)を得ることもできる。
【0096】
【化9】
【0097】
なお、式中のAは、ジベンゾ[f,h]キノキサリニル基を表し、R~R15は、それ
ぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置
換の炭素数5~7のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~13のアリール
基、のいずれかを表し、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリーレン基、
または単結合を表す。なお、Arのアリーレン基として、アントラセニレン基は含まない
ことが好ましい。また、Xはハロゲンを表す。また、Bはボロン酸またはボロン酸エステ
ルまたは環状トリオールボレート塩等を表す。
【0098】
なお、一般式(G0)のArが単結合を表す場合は、(A1)と(B3)をそのまま反応
させればよい。
【0099】
次に、上述した合成方法などにより合成することができる本発明の一態様であるジベンゾ
[f,h]キノキサリン誘導体は、より好ましくは上述の一般式(G1)~(G3)で表
される化合物である。また、一般式(G0)~(G3)で表される本発明の一態様である
ジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体の具体的な構造式を以下に示す(下記構造式(1
00)~(131))。ただし、本発明はこれらに限定されることはない。
【0100】
【化10】
【0101】
【化11】
【0102】
【化12】
【0103】
【化13】
【0104】
【化14】
【0105】
【化15】
【0106】
なお、本発明の一態様であるジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体を本発明の一態様で
ある発光素子に用いることで、発光効率および信頼性の高い発光素子、発光装置、電子機
器、または照明装置を実現することができる。また、消費電力が低い発光素子、発光装置
、電子機器、または照明装置を実現することができる。
【0107】
また、一般式(G0)~(G3)で表されるジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体は、
電子輸送性および正孔輸送性を有するため、発光層のホスト材料として、あるいは電子輸
送層、正孔輸送層として用いることができる。また、蛍光発光を示すため、それ自体、発
光素子の発光物質として使うことも可能である。このように、一般式(G0)~(G3)
で表されるジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体は、発光素子用材料として利用方法が
広範にわたる有用な新規化合物であるため、一般式(G0)~(G3)で表されるジベン
ゾ[f,h]キノキサリン誘導体を含む発光素子は、本発明の一態様の発光素子である。
【0108】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0109】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光素子として、電荷発生層を挟んでEL層を
複数有する構造の発光素子(以下、タンデム型発光素子という)について説明する。なお
、タンデム型発光素子は、図4(A)に示すように一対の電極(第1の電極401および
第2の電極404)間に、複数のEL層(第1のEL層402(1)、第2のEL層40
2(2))を有する。
【0110】
なお、本実施の形態において、第1の電極401は、陽極として機能する電極であり、第
2の電極404は陰極として機能する電極である。また、第1の電極401および第2の
電極404は、実施の形態1と同様な構成を用いることができる。また、複数のEL層(
第1のEL層402(1)、第2のEL層402(2))は、実施の形態1で示したEL
層と同様な構成であっても良いが、いずれかが同様の構成であっても良い。すなわち、第
1のEL層402(1)と第2のEL層402(2)は、同じ構成であっても異なる構成
であってもよく、その構成は実施の形態1と同様なものを適用することができる。さらに
、複数のEL層(第1のEL層402(1)、第2のEL層402(2))のいずれかに
実施の形態2で示したジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体を用いることができる。
【0111】
また、複数のEL層(第1のEL層402(1)、第2のEL層402(2))の間には
、電荷発生層405が設けられている。電荷発生層405は、第1の電極401と第2の
電極404に電圧を印加したときに、一方のEL層に電子を注入し、他方のEL層に正孔
を注入する機能を有する。本実施の形態の場合には、第1の電極401に第2の電極40
4よりも電位が高くなるように電圧を印加すると、電荷発生層405から第1のEL層4
02(1)に電子が注入され、第2のEL層402(2)に正孔が注入される。
【0112】
なお、電荷発生層405は、光の取り出し効率の点から、可視光に対して透光性を有する
(具体的には、電荷発生層405に対する可視光の透過率が、40%以上)ことが好まし
い。また、電荷発生層405は、第1の電極401や第2の電極404よりも低い導電率
であっても機能する。
【0113】
電荷発生層405は、正孔輸送性の高い有機化合物に電子受容体(アクセプター)が添加
された構成であっても、電子輸送性の高い有機化合物に電子供与体(ドナー)が添加され
た構成であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。
【0114】
正孔輸送性の高い有機化合物に電子受容体が添加された構成とする場合において、正孔輸
送性の高い有機化合物としては、例えば、NPBやTPD、TDATA、MTDATA、
4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N―フェニルア
ミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる
。ここに述べた物質は、主に1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質で
ある。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い有機化合物であれば、上記以外の物質を用い
ても構わない。
【0115】
また、電子受容体としては、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフ
ルオロキノジメタン(略称:F-TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。ま
た、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に
属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、
酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レ
ニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定
であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0116】
一方、電子輸送性の高い有機化合物に電子供与体が添加された構成とする場合において、
電子輸送性の高い有機化合物としては、例えば、Alq、Almq、BeBq、B
Alqなど、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることが
できる。また、この他、Zn(BOX)、Zn(BTZ)などのオキサゾール系、チ
アゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外に
も、PBDやOXD-7、TAZ、BPhen、BCPなども用いることができる。ここ
に述べた物質は、主に1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。
なお、正孔よりも電子の輸送性の高い有機化合物であれば、上記以外の物質を用いても構
わない。
【0117】
また、電子供与体としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属または希土類金属また
は元素周期表における第2、第13族に属する金属およびその酸化物、炭酸塩を用いるこ
とができる。具体的には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)
、カルシウム(Ca)、イッテルビウム(Yb)、インジウム(In)、酸化リチウム、
炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化
合物を電子供与体として用いてもよい。
【0118】
なお、上述した材料を用いて電荷発生層405を形成することにより、EL層が積層され
た場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0119】
本実施の形態では、EL層を2層有する発光素子について説明したが、図4(B)に示す
ように、n層(ただし、nは、3以上)のEL層(402(1)~402(n))を積層
した発光素子についても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素
子のように、一対の電極間に複数のEL層を有する場合、EL層とEL層との間にそれぞ
れ電荷発生層(405(1)~405(n-1))を配置することで、電流密度を低く保
ったまま、高輝度領域での発光が可能である。電流密度を低く保てるため、長寿命素子を
実現できる。また、大きな発光面を有する発光装置、電子機器、及び照明装置等に応用し
た場合は、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光が可
能となる。
【0120】
また、それぞれのEL層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望
の色の発光を得ることができる。例えば、2つのEL層を有する発光素子において、第1
のEL層の発光色と第2のEL層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素
子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合する
と無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色の光を互いに混合する
と、白色発光を得ることができる。具体的には、第1のEL層から青色発光が得られ、第
2のEL層から黄色発光(または橙色発光)が得られる組み合わせが挙げられる。この場
合、青色発光と黄色発光(または橙色発光)が両方とも同じ蛍光発光、または燐光発光で
ある必要はなく、青色発光が蛍光発光であり、黄色発光(または橙色発光)が燐光発光で
ある組み合わせや、その逆の組み合わせとしてもよい。さらに、発光素子における光路長
の調整に適した積層構造(例えば、第1の発光層から黄色発光が得られ、第2の発光層か
ら青色発光が得られる構成)とすることで、さらに素子特性を向上させることができるの
で好ましい。
【0121】
また、3つのEL層を有する発光素子の場合でも同様であり、例えば、第1のEL層の発
光色が赤色であり、第2のEL層の発光色が緑色であり、第3のEL層の発光色が青色で
ある場合、発光素子全体としては、白色発光を得ることができる。
【0122】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0123】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1で説明した発光素子に着色層(カラーフィルタ等)を組
み合わせる場合の発光装置の一態様について説明する。なお、本実施の形態では、発光装
置の画素部の構成について図5を用いて説明する。
【0124】
図5では、基板501上に複数のFET(トランジスタ)502が形成されており、各F
ET502は、各発光素子(507R、507G、507B、507Y)と電気的に接続
されている。具体的には、各FET502が発光素子の画素電極である第1の電極503
と電気的に接続されている。また、隣り合う第1の電極503の端部を埋めるべく隔壁5
04が設けられている。
【0125】
なお、本実施の形態における第1の電極503は、反射電極としての機能を有する。また
、第1の電極503上には、EL層505が形成されており、EL層505上には第2の
電極510が形成されている。また、EL層505は、複数の単色光を呈する複数の発光
層を有する構成であり、第2の電極510は、半透過・半反射電極として機能する電極で
ある。
【0126】
各発光素子(507R、507G、507B、507Y)からは、それぞれ異なる発光が
得られる。具体的には、発光素子507Rは、赤色発光が得られるように光学調整されて
おり、506Rで示される領域において着色層508Rを通って矢印の方向に赤色の光が
射出される。また、発光素子507Gは、緑色発光が得られるように光学調整されており
、506Gで示される領域において着色層508Gを通って矢印の方向に緑色の光が射出
される。また、発光素子507Bは、青色発光が得られるように光学調整されており、5
06Bで示される領域において着色層508Bを通って矢印の方向に青色の光が射出され
る。また、発光素子507Yは、黄色発光が得られるように光学調整されており、506
Yで示される領域において着色層508Yを通って矢印の方向に黄色の光が射出される。
【0127】
なお、各着色層(508R、508G、508B、508Y)は、図5に示すように各発
光素子(507R、507G、507B、507Y)が設けられた基板501の上方に配
置された透明な封止基板511に設けられている。なお、各着色層(508R、508G
、508B、508Y)は、それぞれの発光色を呈する各発光素子(507R、507G
、507B、507Y)と重なる位置にそれぞれ設けられている。
【0128】
また、隣り合う各着色層(508R、508G、508B、508Y)の端部を埋めるべ
く黒色層(ブラックマトリックス)509が設けられている。なお、各着色層(508R
、508G、508B、508Y)と黒色層509は、透明な材料を用いたオーバーコー
ト層で覆われていても良い。
【0129】
以上に説明した構成では、封止基板511側に発光を取り出す構造(トップエミッション
型)の発光装置となるが、FETが形成されている基板501側に光を取り出す構造(ボ
トムエミッション型)の発光装置としても良い。なお、本実施の形態で示したトップエミ
ッション型の発光装置の場合には、基板501として遮光性の基板および透光性の基板を
用いることができるが、ボトムエミッション型の発光装置の場合には、基板501として
透光性の基板を用いる必要がある。
【0130】
例えば、本明細書等において、様々な基板を用いて、トランジスタや発光素子を形成する
ことが出来る。基板の種類は、特定のものに限定されることはない。その基板の一例とし
ては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石
英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・
ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基
板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどがある。ガラス
基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソー
ダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例
としては、以下のものがあげられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、
ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリテトラ
フルオロエチレン(PTFE)に代表されるプラスチックがある。または、アクリル等の
合成樹脂、または、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニルなど
からなるフィルムや、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシなどからなるフィル
ム、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。特に、半導体基板、単結晶基板、又はSO
I基板などを用いてトランジスタを製造することによって、特性、サイズ、又は形状など
のばらつきが少なく、電流供給能力が高く、サイズの小さいトランジスタを製造すること
ができる。このようなトランジスタによって回路を構成すると、回路の低消費電力化、又
は回路の高集積化を図ることができる。
【0131】
また、基板として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタや発光素子を
形成してもよい。または、基板とトランジスタ等の間に剥離層を設けてもよい。剥離層は
、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板より分離し、他の基板に転
載するために用いることができる。その際、トランジスタ等は耐熱性の劣る基板や可撓性
の基板にも転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコ
ン膜との無機膜の積層構造の構成や、基板上にポリイミド等の有機樹脂膜が形成された構
成等を用いることができる。
【0132】
つまり、ある基板を用いてトランジスタや発光素子を形成し、その後、別の基板にトラン
ジスタや発光素子を転置し、別の基板上にトランジスタや発光素子を配置してもよい。ト
ランジスタや発光素子が転置される基板の一例としては、上述したトランジスタ等を形成
することが可能な基板に加え、紙基板、セロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイ
ミドフィルム基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(
ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レ
ーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などがある。これら
の基板を用いることにより、特性のよいトランジスタ等の形成、消費電力の小さいトラン
ジスタ等の形成、壊れにくい装置の製造、耐熱性の付与、軽量化、又は薄型化を図ること
ができる。
【0133】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いる
ことができるものとする。
【0134】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様であるジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体をEL
層に用いた発光素子を有する発光装置について説明する。
【0135】
また、上記発光装置は、パッシブマトリクス型の発光装置でもアクティブマトリクス型の
発光装置でもよい。なお、本実施の形態に示す発光装置には、他の実施形態で説明した発
光素子を適用することが可能である。
【0136】
本実施の形態では、アクティブマトリクス型の発光装置について図6を用いて説明する。
【0137】
なお、図6(A)は発光装置を示す上面図であり、図6(B)は図6(A)を一点鎖線A
-A’で切断した断面図である。本実施の形態に係るアクティブマトリクス型の発光装置
は、素子基板601上に設けられた画素部602と、駆動回路部(ソース線駆動回路)6
03と、駆動回路部(ゲート線駆動回路)604a及び604bと、を有する。画素部6
02、駆動回路部603、及び駆動回路部604は、シール材605によって、素子基板
601と封止基板606との間に封止されている。
【0138】
また、素子基板601上には、駆動回路部603、及び駆動回路部604a及び604b
に外部からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、又はリセット信
号等)や電位を伝達する外部入力端子を接続するための引き回し配線607が設けられる
。ここでは、外部入力端子としてFPC(フレキシブルプリントサーキット)608を設
ける例を示している。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプ
リント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には
、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含む
ものとする。
【0139】
次に、断面構造について図6(B)を用いて説明する。素子基板601上には駆動回路部
及び画素部が形成されているが、ここでは、ソース線駆動回路である駆動回路部603と
、画素部602が示されている。
【0140】
駆動回路部603はFET609とFET610とを組み合わせた構成について例示して
いる。なお、駆動回路部603は、単極性(N型またはP型のいずれか一方のみ)のトラ
ンジスタを含む回路で形成されても良いし、N型のトランジスタとP型のトランジスタを
含むCMOS回路で形成されても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形
成したドライバー一体型を示すが、外部に駆動回路を形成することもできる。
【0141】
また、画素部602はスイッチング用FET611と、電流制御用FET612と電流制
御用FET612の配線(ソース電極又はドレイン電極)に電気的に接続された第1の電
極(陽極)613とを含む複数の画素により形成される。また、本実施の形態においては
、画素部602はスイッチング用FET611と、電流制御用FET612との2つのF
ETにより画素部602を構成する例について示したが、これに限定されない。例えば、
3つ以上のFETと、容量素子とを組み合わせた画素部602としてもよい。
【0142】
FET609、610、611、612としては、例えば、スタガ型や逆スタガ型のトラ
ンジスタを適用することができる。FET609、610、611、612に用いること
のできる半導体材料としては、例えば、第13族(ガリウム等)半導体、第14族(ケイ
素等)半導体、化合物半導体、酸化物半導体、有機半導体材料を用いることができる。ま
た、該半導体材料の結晶性については、特に限定されず、例えば、非晶質半導体膜、また
は結晶性半導体膜を用いることができる。特に、FET609、610、611、612
としては、酸化物半導体を用いると好ましい。該酸化物半導体としては、例えば、In-
Ga酸化物、In-M-Zn酸化物(Mは、Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、または
Nd)等が挙げられる。FET609、610、611、612として、例えば、エネル
ギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、さらに好ましくは3eV以上の
酸化物半導体材料を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0143】
また、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、絶縁
物614として、ポジ型の感光性アクリル樹脂を用いることにより形成する。また、本実
施の形態においては、第1の電極613を陽極として用いる。
【0144】
また、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにするの
が好ましい。絶縁物614の形状を上記のように形成することで、絶縁物614の上層に
形成される膜の被覆性を良好なものとすることができる。例えば、絶縁物614の材料と
して、ネガ型の感光性樹脂、或いはポジ型の感光性樹脂のいずれかを使用することができ
、有機化合物に限らず無機化合物、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリ
コン等を使用することができる。
【0145】
第1の電極(陽極)613上には、EL層615及び第2の電極(陰極)616が積層形
成されている。EL層615は、少なくとも発光層が設けられている。また、EL層61
5には、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層等
を適宜設けることができる。
【0146】
なお、第1の電極(陽極)613、EL層615及び第2の電極(陰極)616との積層
構造で、発光素子617が形成されている。第1の電極(陽極)613、EL層615及
び第2の電極(陰極)616に用いる材料としては、実施の形態2に示す材料を用いるこ
とができる。また、ここでは図示しないが、第2の電極(陰極)616は外部入力端子で
あるFPC608に電気的に接続されている。
【0147】
また、図6(B)に示す断面図では発光素子617を1つのみ図示しているが、画素部6
02において、複数の発光素子がマトリクス状に配置されているものとする。画素部60
2には、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子をそれぞれ選択的に形成し、フ
ルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、3種類(R、G、B)の発
光が得られる発光素子の他に、例えば、ホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M
)、シアン(C)等の発光が得られる発光素子を形成してもよい。例えば、3種類(R、
G、B)の発光が得られる発光素子に上述の数種類の発光が得られる発光素子を追加する
ことにより、色純度の向上、消費電力の低減等の効果が得ることができる。また、カラー
フィルタと組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光装置としてもよい。さら
に、量子ドットとの組み合わせにより発光効率を向上させ、消費電力を低減させた発光装
置としてもよい。
【0148】
さらに、シール材605で封止基板606を素子基板601と貼り合わせることにより、
素子基板601、封止基板606、およびシール材605で囲まれた空間618に発光素
子617が備えられた構造になっている。なお、空間618には、不活性気体(窒素やア
ルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される構成も含むものとする。
【0149】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。また
、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、
封止基板606や素子基板601に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP
(Fiber-Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロラ
イド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる
。シール材としてガラスフリットを用いる場合には、接着性の観点から素子基板601及
び封止基板606はガラス基板であることが好ましい。
【0150】
以上のようにして、アクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0151】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0152】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置を適用して完成させた様々な電子機器
の一例について、図7を用いて説明する。
【0153】
発光装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジ
ョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオ
カメラなどのカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置と
もいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム
機などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図7に示す。
【0154】
図7(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置7100は、筐
体7101に表示部7103が組み込まれている。表示部7103により、映像を表示す
ることが可能であり、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)
であってもよい。なお、本発明の一態様である発光装置を表示部7103に用いることが
できる。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示して
いる。
【0155】
テレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモ
コン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー
7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示され
る映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機
7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0156】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機に
より一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線又は無線によ
る通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(送
信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0157】
図7(B)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キー
ボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。
なお、コンピュータは、本発明の一態様である発光装置をその表示部7203に用いるこ
とにより作製することができる。また、表示パネル7203は、タッチセンサ(入力装置
)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。
【0158】
図7(C)は、スマートウオッチであり、筐体7302、表示パネル7304、操作ボタ
ン7311、7312、接続端子7313、バンド7321、留め金7322、等を有す
る。
【0159】
ベゼル部分を兼ねる筐体7302に搭載された表示パネル7304は、非矩形状の表示領
域を有している。表示パネル7304は、時刻を表すアイコン7305、その他のアイコ
ン7306等を表示することができる。また、表示部7304は、タッチセンサ(入力装
置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。
【0160】
なお、図7(C)に示すスマートウオッチは、様々な機能を有することができる。例えば
、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネ
ル機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラ
ム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュ
ータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信又は受信を
行う機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示す
る機能、等を有することができる。
【0161】
また、筐体7302の内部に、スピーカ、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速
度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電
圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むも
の)、マイクロフォン等を有することができる。なお、スマートウオッチは、発光装置を
その表示パネル7304に用いることにより作製することができる。
【0162】
図7(D)は、携帯電話機(スマートフォンを含む)の一例を示している。携帯電話機7
400は、筐体7401に、表示部7402、マイク7406、スピーカ7405、カメ
ラ7407、外部接続部7404、操作用ボタン7403などを備えている。また、本発
明の一態様に係る発光素子を、可撓性を有する基板に形成して発光装置を作製した場合、
図7(D)に示すような曲面を有する表示部7402に適用することが可能である。
【0163】
図7(D)に示す携帯電話機7400は、表示部7402を指などで触れることで、情報
を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、
表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0164】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表
示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示
モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0165】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を
主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合
、表示部7402の画面のほとんどにキーボード又は番号ボタンを表示させることが好ま
しい。
【0166】
また、携帯電話機7400内部に、ジャイロセンサや加速度センサ等の検出装置を設ける
ことで、携帯電話機7400の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示
を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0167】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作
用ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類
によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画
のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0168】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示
部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モード
から表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0169】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部74
02に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。ま
た、表示部に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光源
を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0170】
さらに、携帯電話機(スマートフォンを含む)の別の構成として、図7(D’-1)や図
7(D’-2)のような構造を有する携帯電話機に適用することもできる。
【0171】
なお、図7(D’-1)や図7(D’-2)のような構造を有する場合には、文字情報や
画像情報などを筐体7500(1)、7500(2)の第1面7501(1)、7501
(2)だけでなく、第2面7502(1)、7502(2)に表示させることができる。
このような構造を有することにより、携帯電話機を胸ポケットに収納したままの状態で、
第2面7502(1)、7502(2)などに表示された文字情報や画像情報などを使用
者が容易に確認することができる。
【0172】
また、図8(A)~(C)に、折りたたみ可能な携帯情報端末9310を示す。図8(A
)に展開した状態の携帯情報端末9310を示す。図8(B)に展開した状態又は折りた
たんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の携帯情報端末9310を示す。図8
C)に折りたたんだ状態の携帯情報端末9310を示す。携帯情報端末9310は、折り
たたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表
示の一覧性に優れる。
【0173】
表示パネル9311はヒンジ9313によって連結された3つの筐体9315に支持され
ている。なお、表示パネル9311は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネ
ル(入出力装置)であってもよい。また、表示パネル9311は、ヒンジ9313を介し
て2つの筐体9315間を屈曲させることにより、携帯情報端末9310を展開した状態
から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。本発明の一態様の発光装置を
表示パネル9311に用いることができる。表示パネル9311における表示領域は折り
たたんだ状態の携帯情報端末9310の側面に位置する表示領域である。表示領域には、
情報アイコンや使用頻度の高いアプリやプログラムのショートカットなどを表示させるこ
とができ、情報の確認やアプリなどの起動をスムーズに行うことができる。
【0174】
以上のようにして、本発明の一態様である発光装置を適用して電子機器を得ることができ
る。なお、適用できる電子機器は、本実施の携帯に示したものに限らず、あらゆる分野の
電子機器に適用することが可能である。
【0175】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0176】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置を適用した照明装置の一例について、
図9を用いて説明する。
【0177】
図9は、発光装置を室内の照明装置8001として用いた例である。なお、発光装置は大
面積化も可能であるため、大面積の照明装置を形成することもできる。その他、曲面を有
する筐体を用いることで、筐体、カバー、または支持台を有し、発光領域が曲面を有する
照明装置8002を形成することもできる。本実施の形態で示す発光装置に含まれる発光
素子は薄膜状であり、筐体のデザインの自由度が高い。したがって、様々な意匠を凝らし
た照明装置を形成することができる。さらに、室内の壁面に大型の照明装置8003を備
えても良い。
【0178】
また、発光装置をテーブルの表面に用いることによりテーブルとしての機能を備えた照明
装置8004とすることができる。なお、その他の家具の一部に発光装置を用いることに
より、家具としての機能を備えた照明装置とすることができる。
【0179】
以上のように、発光装置を適用した様々な照明装置が得られる。なお、これらの照明装置
は本発明の一態様に含まれるものとする。
【0180】
また、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【実施例0181】
≪合成例1≫
本実施例では、本発明の一態様である合成方法として、2-{4-[3-(N-フェニル
-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベン
ゾ[f,h]キノキサリン(略称:2PCCzPDBq)(構造式(100))の合成方
法について説明する。なお、2PCCzPDBqの構造を以下に示す。
【0182】
【化16】
【0183】
<2PCCzPDBqの合成>
まず、2-(4-クロロフェニル)ジベンゾ[f,h]キノキサリン1.0g(2.8m
mol)、3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール
1.1g(2.8mmol)、ナトリウム tert-ブトキシド0.54g(5.6m
mol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(S-
Phos)23mg(0.10mmol)を200mL三口フラスコに入れ混合し、フラ
スコを窒素置換した。この混合物に14mLのメシチレンを加え、フラスコ内を減圧下と
し、攪拌することで脱気した。
【0184】
次に、この混合物に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(略称:Pd(
dba))16mg(0.028mmol)を加えた。この混合物を窒素気流下、15
0℃で5時間攪拌したところ、固体が析出した。析出した固体を吸引ろ過により回収した
。回収した固体を約400mLの熱したトルエンに溶解し、この溶液をセライトとアルミ
ナの積層物を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮して得た固体をトルエンで再結晶
し、目的物の黄色粉末を1.6g、収率80%で得た。
【0185】
得られた目的物の黄色粉末状固体1.4gをトレインサブリメーション法により昇華精製
した。昇華精製条件は、圧力3.8Pa、アルゴンガスを流量10mL/minで流しな
がら、380℃で加熱して行った。昇華精製後、2PCCzPDBqの黄色ガラス状固体
を1.1g、収率79%で得た。本ステップの合成スキームを下記(a-1)に示す。
【0186】
【化17】
【0187】
上記ステップで得られた黄色粉末状固体の核磁気共鳴分光法(H-NMR)による分析
結果を下記に示す。また、H-NMRチャートを図10(A)(B)に示す。なお、図
10(B)は、図10(A)に対して横軸(δ)を7.0(ppm)から10(ppm)
の範囲とした拡大図である。このことから、上記ステップにおいて、2PCCzPDBq
(構造式(100))が得られたことがわかった。
【0188】
δ=7.32(t,J=5.7Hz,1H),7.37(t,J=8.0Hz,1H),
7.43-7.53(m,5H),7.58-7.66(m,6H),7.72-7.8
9(m,8H),8.25(d,J=7.4Hz,1H),8.30(d,J=8.1H
z,1H),8.44(d,J=7.5Hz,1H),8.50(d,J=5.4Hz,
2H),8.64-8.67(m,3H),9.25(d,J=8.0Hz,1H),9
.37(d,J=6.3Hz,1H),9.47(s,1H)。
【0189】
次に、2PCCzPDBqのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを図11
に、薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを図12に示す。スペクトルの測定には紫
外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。トルエン溶液のスペク
トルは、2PCCzPDBqのトルエン溶液を石英セルに入れて測定した。また、薄膜の
スペクトルは、2PCCzPDBqを石英基板に蒸着してサンプルを作製し、測定した。
なお、トルエン溶液の吸収スペクトルは石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収ス
ペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図示し、薄膜の吸収スペクトルは石英基板の吸収
スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図示した。
【0190】
図11より、2PCCzPDBqのトルエン溶液は305nm、385nm付近に吸収ピ
ークが見られ、発光波長のピークは450nm(励起波長305nm)であった。また、
図12より2PCCzPDBqの薄膜は209nm、258nm、307nm、336n
m、及び396nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは502nm(励起波
長396nm)であった。
【実施例0191】
≪合成例2≫
本実施例では、本発明の一態様である合成方法として、2-{3-[3-(N-フェニル
-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベン
ゾ[f,h]キノキサリン(略称2mPCCzPDBq)(構造式(101))の合成方
法について説明する。なお、2mPCCzPDBqの構造を以下に示す。
【0192】
【化18】
【0193】
<2mPCCzPDBqの合成>
まず、2-(3-クロロフェニル)ジベンゾ[f,h]キノキサリン1.7g(5.0m
mol)、3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール
2.0g(5.0mmol)、ナトリウム tert-ブトキシド0.96g(10mm
ol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(S-P
hos)41mg(0.10mmol)を200mL三口フラスコに入れ混合し、フラス
コを窒素置換した。この混合物に25mLのメシチレンを加え、フラスコ内を減圧下とし
、攪拌することで脱気した。
【0194】
次に、この混合物に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(略称:Pd(
dba))29mg(0.050mmol)を加えた。この混合物を窒素気流下、15
0℃で5時間攪拌したところ、固体が析出した。析出した固体を吸引ろ過により回収した
。回収した固体を約400mLの熱したトルエンに溶解し、この溶液をセライトとアルミ
ナの積層物を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮して得た固体をトルエンで再結晶
し、目的物の黄色粉末を2.8g、収率79%で得た。
【0195】
得られた目的物の黄色粉末状固体2.2gをトレインサブリメーション法により昇華精製
した。昇華精製条件は、圧力2.5Pa、アルゴンガスを流量10mL/minで流しな
がら、360℃で加熱して行った。昇華精製後、2mPCCzPDBqの黄色ガラス状固
体を1.2g、回収率55%で得た。本ステップの合成スキームを下記(b-1)に示す
【0196】
【化19】
【0197】
上記ステップで得られた黄色粉末状固体の核磁気共鳴分光法(H-NMR)による分析
結果を下記に示す。また、H-NMRチャートを図13(A)(B)に示す。なお、図
13(B)は、図13(A)に対して横軸(δ)を7.0(ppm)から10(ppm)
の範囲とした拡大図である。このことから、上記ステップにおいて、2-{3-〔3-(
N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル〕フェ
ニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mPCCzPDBq)(構造式(10
1))が得られたことがわかった。
【0198】
H NMR(CDCl,500MHz):δ(ppm)=7.31-7.54(m,
7H),7.58-7.67(m,6H),7.73-7.90(m,8H),8.25
(d,J=8.0Hz,1H),8.30(d,J=8.1Hz,1H),8.45(d
,J=6.3Hz,1H),8.49(d,J=3.7Hz,2H),8.65-8.6
8(m,3H),9.25(d,J=2.0Hz,1H),9.37(d,J=6.9H
z,1H),9.48(s,1H)。
【0199】
次に、2mPCCzPDBqのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを図1
4に、薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを図15に示す。スペクトルの測定には
紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。トルエン溶液のスペ
クトルは、2mPCCzPDBqのトルエン溶液を石英セルに入れて測定した。また、薄
膜のスペクトルは、2mPCCzPDBqを石英基板に蒸着してサンプルを作製し、測定
した。なお、トルエン溶液の吸収スペクトルは石英セルにトルエンのみを入れて測定した
吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図示し、薄膜の吸収スペクトルは石英基板
の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図示した。
【0200】
図14より、2mPCCzPDBqのトルエン溶液は305nm、374nm付近に吸収
ピークが見られ、発光波長のピークは480nm(励起波長305nm)であった。また
図15より2mPCCzPDBqの薄膜は208nm、257nm、308nm、36
1nm、及び379nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは515nm(励
起波長380nm)であった。
【実施例0201】
≪合成例3≫
本実施例では、本発明の一態様である合成方法として、2-{4-[2-(N-フェニル
-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベン
ゾ[f,h]キノキサリン(略称:2PCCzPDBq-02)(構造式(102))の
合成方法について説明する。なお、2PCCzPDBq-02の構造を以下に示す。
【0202】
【化20】
【0203】
<2PCCzPDBq-02の合成>
まず、2-(4-クロロフェニル)ジベンゾ[f,h]キノキサリン1.4g(4.2m
mol)、2-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール
1.7g(4.2mmol)、ナトリウム tert-ブトキシド0.81g(8.4m
mol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(S-
Phos)34mg(0.10mmol)を200mL三口フラスコに入れ混合し、フラ
スコを窒素置換した。この混合物に21mLのメシチレンを加え、フラスコ内を減圧下と
し、攪拌することで脱気した。
【0204】
次に、この混合物に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(略称:Pd(
dba))24mg(0.042mmol)を加えた。この混合物を窒素気流下、15
0℃で5時間攪拌したところ、固体が析出した。析出した固体を吸引ろ過により回収した
。回収した固体を約400mLの熱したトルエンに溶解し、この溶液をセライトとアルミ
ナの積層物を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮して得た固体をトルエンで再結晶
し、目的物の黄色粉末を2.5g、収率84%で得た。
【0205】
得られた目的物の黄色粉末状固体2.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製
した。昇華精製条件は、圧力3.7Pa、アルゴンガスを流量10mL/minで流しな
がら、390℃で加熱して行った。昇華精製後、2PCCzPDBq-02の黄色ガラス
状固体を1.7g、回収率85%で得た。本ステップの合成スキームを下記(c-1)に
示す。
【0206】
【化21】
【0207】
上記ステップで得られた黄色粉末状固体の核磁気共鳴分光法(H-NMR)による分析
結果を下記に示す。また、H-NMRチャートを図16(A)(B)に示す。なお、図
16(B)は、図16(A)に対して横軸(δ)を7.0(ppm)から10(ppm)
の範囲とした拡大図である。このことから、上記ステップにおいて、2-{4-〔2-(
N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル〕フェ
ニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2PCCzPDBq-02)(構造式(
102))が得られたことがわかった。
【0208】
δ=7.25-7.48(m,7H),7.71-7.75(m,2H),7.71-7
.75(m,5H),7.91(d,J=8.6Hz,2H),8.21(d,J=7.
4Hz,1H),8.26(d,J=8.0Hz,2H),8.42(sd,J=1.7
Hz,2H),8.63-8.69(m,4H),9.27(d,J=8.0Hz,1H
),9.46(d,J=6.3Hz,1H),9.51(s,1H)。
【0209】
次に、2PCCzPDBq-02のトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを
図17に、薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを図18に示す。スペクトルの測定
には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。トルエン溶液の
スペクトルは、2PCCzPDBq-02のトルエン溶液を石英セルに入れて測定した。
また、薄膜のスペクトルは、2PCCzPDBq-02を石英基板に蒸着してサンプルを
作製した。なお、トルエン溶液の吸収スペクトルは石英セルにトルエンのみを入れて測定
した吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図示し、薄膜の吸収スペクトルは石英
基板の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図示した。
【0210】
図17より、2PCCzPDBq-02のトルエン溶液は323nm、381nm付近に
吸収ピークが見られ、発光波長のピークは421nm(励起波長320nm)であった。
また、図18より2PCCzPDBq-02の薄膜は209nm、257nm、311n
m、326nm、351nm及び389nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピー
クは473nm(励起波長396nm)であった。
【実施例0211】
≪合成例4≫
本実施例では、本発明の一態様である2-{3-[2-(N-フェニル-9H-カルバゾ
ール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノ
キサリン(略称2mPCCzPDBq-02)(構造式(103))の合成方法について
説明する。なお、2mPCCzPDBq-02の構造を以下に示す。
【0212】
【化22】
【0213】
<2mPCCzPDBq-02の合成>
まず、2-(3-クロロフェニル)ジベンゾ[f,h]キノキサリン1.7g(5.0m
mol)、2-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール
2.0g(5.0mmol)、ナトリウム tert-ブトキシド0.96g(10mm
ol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(S-P
hos)41mg(0.10mmol)を200mL三口フラスコに入れ混合し、フラス
コを窒素置換した。この混合物に25mLのメシチレンを加え、フラスコ内を減圧下とし
、攪拌することで脱気した。
【0214】
次に、この混合物に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(略称:Pd(
dba))29mg(0.050mmol)を加えた。この混合物を窒素気流下、15
0℃で4時間攪拌したところ、固体が析出した。析出した固体を吸引ろ過により回収した
。回収した固体を約400mLの熱したトルエンに溶解し、この溶液をセライトとアルミ
ナおよびフロリジールの積層物を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮して得た固体
をトルエンで再結晶し、目的物の白色粉末を3.1g、収率87%で得た。
【0215】
得られた目的物の白色粉末状固体3.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製
した。昇華精製条件は、圧力10Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しな
がら、360℃で加熱して行った。昇華精製後、2mPCCzPDBq-02の黄色ガラ
ス状固体を2.0g、回収率65%で得た。本ステップの合成スキームを下記(d-1)
に示す。
【0216】
【化23】
【0217】
上記ステップで得られた白色粉末状固体の核磁気共鳴分光法(H-NMR)による分析
結果を下記に示す。また、H-NMRチャートを図19(A)(B)に示す。なお、図
19(B)は、図19(A)に対して横軸(δ)を7.0(ppm)から10(ppm)
の範囲とした拡大図である。このことから、上記ステップにおいて、2mPCCzPDB
q-02(構造式(103))が得られたことがわかった。
【0218】
H NMR(DMSO-d,500MHz):δ(ppm)=7.17(t,J1=
7.5Hz,1H),7.31-7.39(m,4H),7.47-7.52(m,2H
),7.56-7.57(m,3H),7.63-7.66(m,3H),7.75-7
.92(m,7H),7.98(t,J1=2.5Hz,1H),8.19(d,J1=
7.5Hz,1H),8.30(d,J1=7.5Hz,1H),8.37(d,J1=
8.0Hz,1H),8.54(sd,J1=1.5Hz,1H),8.62(d,J1
=8.0Hz,1H),8.79-8.82(m,3H),9.19(d,J1=8.0
Hz,1H),9.25(d,J1=9.0Hz,1H),9.75(s,1H)。
【0219】
次に、2mPCCzPDBq-02のトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトル
図20に、薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを図21に示す。スペクトルの測
定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。トルエン溶液
のスペクトルは、2mPCCzPDBq-02のトルエン溶液を石英セルに入れて測定し
た。また、薄膜のスペクトルは、2mPCCzPDBq-02を石英基板に蒸着してサン
プルを作製し、測定した。なお、トルエン溶液の吸収スペクトルは石英セルにトルエンの
みを入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図示し、薄膜の吸収ス
ペクトルは石英基板の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図示した。
【0220】
図20より、2mPCCzPDBq-02のトルエン溶液は281nm、305nm、3
19nm、及び374nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは389nm、
及び410nmであった。また、図21より2mPCCzPDBq-02の薄膜は209
nm、257nm、309nm、327nm、354nm、及び386nm付近に吸収ピ
ークが見られ、発光波長のピークは484nm(励起波長381nm)であった。
【実施例0221】
本実施例では、本発明の一態様であるジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体を用いた発
光素子1、発光素子2、および比較発光素子3を作製した。なお、各発光素子の構成につ
いては、図22を用いて説明する。また、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0222】
【化24】
【0223】
【化25】
【0224】
≪発光素子1、発光素子2、および比較発光素子3の作製≫
まず、ガラス製の基板1100上に酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をス
パッタリング法により成膜し、陽極として機能する第1の電極1101を形成した。なお
、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0225】
次に、基板1100上に発光素子1、発光素子2、および比較発光素子3を形成するため
の前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理
を370秒行った。
【0226】
その後、10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着
装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を3
0分程度放冷した。
【0227】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、基板1100を真空蒸着
装置内に設けられたホルダーに固定した。本実施例では、真空蒸着法により、EL層11
02を構成する正孔注入層1111、正孔輸送層1112、発光層1113、電子輸送層
1114、電子注入層1115が順次形成される場合について説明する。
【0228】
真空蒸着装置内を10-4Paに減圧した後、1,3,5-トリ(ジベンゾチオフェン-
4-イル)-ベンゼン(略称:DBT3P-II)と酸化モリブデンとを、DBT3P-
II:酸化モリブデン=4:2(質量比)となるように共蒸着することにより、第1の電
極1101上に正孔注入層1111を形成した。膜厚は20nmとした。なお、共蒸着と
は、異なる複数の物質をそれぞれ異なる蒸発源から同時に蒸発させる蒸着法である。
【0229】
次に、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン
(略称:BPAFLP)を20nm蒸着することにより、正孔輸送層1112を形成した
【0230】
次に、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。発光素子1の場合は、2-{
3-[2-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9
-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mPCCzPDBq-0
2(構造式(103)))、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9
-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フ
ルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、(アセチルアセトナト)ビス(6-te
rt-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tB
uppm)(acac)])を、2mPCCzPDBq-02:PCBBiF:[Ir
(tBuppm)(acac)]=0.7:0.3:0.05(質量比)となるよう共
蒸着し、20nmの膜厚で形成した後、2mPCCzPDBq-02:PCBBiF:[
Ir(tBuppm)(acac)]=0.8:0.2:0.05(質量比)となるよ
う共蒸着し、20nmの膜厚で形成することにより積層構造を有する発光層1113を4
0nmの膜厚で形成した。
【0231】
発光素子2の場合は、2-{3-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル
)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称
:2mPCCzPDBq(構造式(101)))、PCBBiF、[Ir(tBuppm
(acac)]を、2mPCCzPDBq:PCBBiF:[Ir(tBuppm)
(acac)]=0.7:0.3:0.05(質量比)となるよう共蒸着し、20nm
の膜厚で形成した後、2mPCCzPDBq:PCBBiF:[Ir(tBuppm)
(acac)]=0.8:0.2:0.05(質量比)となるよう共蒸着し、20nmの
膜厚で形成することにより積層構造を有する発光層1113を40nmの膜厚で形成した
【0232】
また、比較発光素子3の場合は、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェ
ニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II
)、PCBBiF、[Ir(tBuppm)(acac)]を、2mDBTBPDBq
-II:PCBBiF:[Ir(tBuppm)(acac)]=0.7:0.3:0
.05(質量比)となるよう共蒸着し、20nmの膜厚で形成した後、2mDBTBPD
Bq-II:PCBBiF:[Ir(tBuppm)(acac)]=0.8:0.2
:0.05(質量比)となるよう共蒸着し、20nmの膜厚で形成することにより積層構
造を有する発光層1113を40nmの膜厚で形成した。
【0233】
次に、発光素子1の場合は、発光層1113上に2mPCCzPDBq-02を20nm
蒸着した後、バソフェナントロリン(略称:Bphen)を10nm蒸着することにより
、電子輸送層1114を形成した。また、発光素子2の場合は、発光層1113上に2m
PCCzPDBqを20nm蒸着した後、バソフェナントロリン(略称:Bphen)を
10nm蒸着することにより、電子輸送層1114を形成した。また、比較発光素子3の
場合は、発光層1113上に2mDBTBPDBq-IIを20nm蒸着した後、バソフ
ェナントロリン(略称:Bphen)を10nm蒸着することにより、電子輸送層111
4を形成した。
【0234】
さらに電子輸送層1114上に、フッ化リチウムを1nm蒸着することにより、電子注入
層1115を形成した。
【0235】
最後に、電子注入層1115上にアルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着し、
陰極となる第2の電極1103を形成し、発光素子1、発光素子2、および比較発光素子
3を得た。なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0236】
以上により得られた発光素子1、発光素子2、および比較発光素子3の素子構造を表1に
示す。
【0237】
【表1】
【0238】
また、作製した発光素子1、発光素子2、および比較発光素子3は、大気に曝されないよ
うに窒素雰囲気のグローブボックス内において封止した(具体的には、素子の周囲へのシ
ール材塗布、UV処理、及び80℃にて1時間の熱処理を行った)。
【0239】
≪発光素子1、発光素子2、および比較発光素子3の動作特性≫
作製した発光素子1、発光素子2、および比較発光素子3の動作特性について測定した。
なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。また、結果を図23図26
示す。
【0240】
また、1000cd/m付近における発光素子1、発光素子2、および比較発光素子3
の主な初期特性値を以下の表2に示す。
【0241】
【表2】
【0242】
また、発光素子1、発光素子2、および比較発光素子3に2.5mA/cmの電流密度
で電流を流した際の発光スペクトルを図27に示す。図27に示す通り、発光素子1、発
光素子2、および比較発光素子3は、いずれも[Ir(tBuppm)(acac)]
に由来した546nm付近にピークを有するスペクトルを示した。
【0243】
また、発光素子1、発光素子2、および比較発光素子3についての信頼性試験の結果を図
28(A)に示す。図28(A)において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化
輝度(%)を示し、横軸は素子の駆動時間(h)を示す。なお、信頼性試験は、初期輝度
を5000cd/mに設定し、電流密度一定の条件で発光素子1、発光素子2、および
比較発光素子3を駆動させた。
【0244】
その結果、本発明の一態様である2mPCCzPDBq-02を用いた発光素子1および
2mPCCzPDBqを用いた発光素子2は、2mDBTBPDBq-IIを用いた比較
発光素子3に比べて高い信頼性を有する長寿命な発光素子であることがわかった。
【0245】
また、信頼性試験時の電圧変化量を測定した結果を図28(B)に示す。縦軸は電圧変化
量(V)を示し、横軸は素子の駆動時間(h)を示す。この結果からわかるように、発光
素子1および発光素子2は、定電流駆動した際の電圧上昇が、比較発光素子3に比べて小
さいことが分かる。例えば約500時間駆動後の電圧上昇量を見ると、比較発光素子3が
約0.08Vであるのに対し、発光素子1は約0.05Vであり、発光素子2は約0.0
2Vである。つまり、比較発光素子3に比べ、発光素子1の電圧上昇量は半分程度、発光
素子2の電圧上昇量は4分の1程度に抑制されており、顕著な効果であることが分かる。
【0246】
なお、2mPCCzPDBq-02、2mPCCzPDBq、2mDBTBPDBq-I
Iはいずれも、PCBBiFと励起錯体を形成する(これらのジベンゾキノキサリン化合
物とPCBBiFとの混合膜は、いずれも、各ジベンゾキノキサリン化合物単膜やPCB
BiF単膜よりも長波長な黄緑色の発光を示すため)。また、2mPCCzPDBq-0
2、2mPCCzPDBq、2mDBTBPDBq-II、およびPCBBiFのHOM
O準位は、それぞれ-5.69eV、-5.63eV、-6.22eV、-5.36eV
である。なお、HOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定より算出した
【0247】
HOMO準位の測定結果から、各発光素子の発光層におけるΔEHOMOを算出した。結
果を表3にまとめる。
【0248】
【表3】
【0249】
この結果から、ΔEHOMOは0.4eV以下、より好ましくは0.3eV以下とするこ
とが重要であることが分かる。
【0250】
また、ホール輸送層に用いているBPAFLPのHOMO準位は、-5.51eVである
。したがって、ホール輸送層に用いている第3の有機化合物のHOMO準位は、第2の有
機化合物であるPCBBiFのHOMO準位よりも低く、また、第2の有機化合物である
PCBBiFのHOMO準位と第1の有機化合物(2mPCCzPDBq-02あるいは
2mPCCzPDBq)のHOMO準位との間に位置することがわかる。このことは、正
孔を第2の有機化合物だけでなく、一部第1の有機化合物にも注入する観点で重要である
【実施例0251】
本実施例では、本発明の一態様であるジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体を用いた発
光素子4を作製した。なお、発光素子の構成については、実施例5で示した図22を用い
て説明する。また、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0252】
【化26】
【0253】
≪発光素子4の作製≫
まず、ガラス製の基板1100上に酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をス
パッタリング法により成膜し、陽極として機能する第1の電極1101を形成した。なお
、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0254】
次に、基板1100上に発光素子4を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄
し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0255】
その後、10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着
装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を3
0分程度放冷した。
【0256】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、基板1100を真空蒸着
装置内に設けられたホルダーに固定した。本実施例では、真空蒸着法により、EL層11
02を構成する正孔注入層1111、正孔輸送層1112、発光層1113、電子輸送層
1114、電子注入層1115が順次形成される場合について説明する。
【0257】
真空蒸着装置内を10-4Paに減圧した後、1,3,5-トリ(ジベンゾチオフェン-
4-イル)ベンゼン(略称:DBT3P-II)と酸化モリブデンとを、DBT3P-I
I:酸化モリブデン=4:2(質量比)となるように共蒸着することにより、第1の電極
1101上に正孔注入層1111を形成した。膜厚は20nmとした。なお、共蒸着とは
、異なる複数の物質をそれぞれ異なる蒸発源から同時に蒸発させる蒸着法である。
【0258】
次に、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン
(略称:BPAFLP)を20nm蒸着することにより、正孔輸送層1112を形成した
【0259】
次に、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。2-{4-[2-(N-フェ
ニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジ
ベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2PCCzPDBq-02(構造式(102))
)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カル
バゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(
略称:PCBBiF)、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト
)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)(acac)])を、2PCCz
PDBq-02:PCBBiF:[Ir(dppm)(acac)]=0.7:0.3
:0.05(質量比)となるよう共蒸着し、20nmの膜厚で形成した後、2PCCzP
DBq-02:PCBBiF:[Ir(dppm)(acac)]=0.8:0.2:
0.05(質量比)となるよう共蒸着し、20nmの膜厚で形成することにより積層構造
を有する発光層1113を40nmの膜厚で形成した。
【0260】
次に、発光層1113上に2PCCzPDBq-02を20nm蒸着した後、バソフェナ
ントロリン(略称:Bphen)を10nm蒸着することにより、電子輸送層1114を
形成した。
【0261】
さらに電子輸送層1114上に、フッ化リチウムを1nm蒸着することにより、電子注入
層1115を形成した。
【0262】
最後に、電子注入層1115上にアルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着し、
陰極となる第2の電極1103を形成し、発光素子4を得た。なお、上述した蒸着過程に
おいて、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0263】
以上により得られた発光素子4の素子構造を表4に示す。
【0264】
【表4】
【0265】
また、作製した発光素子4は、大気に曝されないように窒素雰囲気のグローブボックス内
において封止した(具体的には、素子の周囲へのシール材塗布、UV処理、及び80℃に
て1時間の熱処理を行った)。
【0266】
≪発光素子4の動作特性≫
作製した発光素子4の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた
雰囲気)で行った。また、結果を図29図32に示す。
【0267】
また、1000cd/m付近における発光素子4の主な初期特性値を以下の表5に示す
【0268】
【表5】
【0269】
また、発光素子4に2.5mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを
図33に示す。図33に示す通り、発光素子4は、[Ir(dppm)(acac)]
に由来した581nm付近にピークを有するスペクトルを示した。
【0270】
また、発光素子4についての信頼性試験の結果を図34(A)に示す。図34(A)にお
いて、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し、横軸は素子の駆動
時間(h)を示す。なお、信頼性試験は、初期輝度を5000cd/mに設定し、電流
密度一定の条件で発光素子4を駆動させた。
【0271】
その結果、本発明の一態様である2PCCzPDBq-02を用いた発光素子4は、高い
信頼性を有する長寿命な発光素子であることがわかった。
【0272】
また、信頼性試験時の電圧変化量を測定した結果を図34(B)に示す。縦軸は電圧変化
量(V)を示し、横軸は素子の駆動時間(h)を示す。この結果からわかるように、発光
素子4は、定電流駆動した際の電圧上昇が小さいことが分かる。例えば約500時間駆動
後の電圧上昇量を見ると、発光素子4は約0.01Vである。一方、発光素子4の2PC
CzPDBq-02に替えて、2mDBTBPDBq-IIを用いた比較発光素子9を作
製し、同様に駆動した場合、約500時間駆動後の電圧上昇量は約0.06Vであった。
つまり、比較発光素子9に比べ、発光素子4の電圧上昇量は6分の1程度に抑制されてお
り、顕著な効果であることが分かる。
【0273】
なお、2PCCzPDBq-02は、PCBBiFと励起錯体を形成する(このジベンゾ
キノキサリン化合物とPCBBiFとの混合膜は、ジベンゾキノキサリン化合物単膜ある
いはPCBBiF単膜よりも長波長な緑色の発光を示すため)。また、2PCCzPDB
q-02のHOMO準位は、-5.68eVであるので、発光素子4の発光層におけるΔ
HOMOは0.32eVとなる。この結果から、ΔEHOMOは0.4eV以下とする
ことが重要であることが分かる。
【0274】
また、ホール輸送層に用いているBPAFLPのHOMO準位は、-5.51eVである
。したがって、ホール輸送層に用いている第3の有機化合物のHOMO準位は、第2の有
機化合物であるPCBBiFのHOMO準位よりも低く、また、第2の有機化合物である
PCBBiFのHOMO準位と第1の有機化合物(2PCCzPDBq-02)のHOM
O準位との間に位置することがわかる。このことは、正孔を第2の有機化合物だけでなく
、一部を第1の有機化合物にも注入する観点で重要である。
【実施例0275】
≪合成例5≫
本実施例では、本発明の一態様である合成方法として、2-{3’-[3-(N-フェニ
ル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]ビフェニル-3
-イル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称2mPCCzBPDBq)(構造式(1
22))の合成方法について説明する。なお、2mPCCzBPDBqの構造を以下に示
す。
【0276】
【化27】
【0277】
<2-{3’-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバ
ゾール-9-イル]ビフェニル-3-イル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称2m
PCCzBPDBq)の合成>
まず、2-(3’-ブロモビフェニル-3-イル)ジベンゾ[f,h]キノキサリン2.
0g(4.3mmol)、3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H
-カルバゾール1.8g(4.3mmol)、ナトリウム tert-ブトキシド0.8
3g(8.6mmol)、を100mL三口フラスコに入れ混合し、フラスコを窒素置換
した。この混合物に22mLのメシチレンを加え、フラスコ内を減圧下とし、攪拌するこ
とで脱気した。
【0278】
次に、この混合物に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(略称:Pd(
dba))25mg(0.040mmol)と2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’
,6’-ジメトキシビフェニル(S-Phos)35mg(0.09mmol)を加えた
。この混合物を窒素気流下、150℃で23時間攪拌した所定時間経過後、この混合物に
水とトルエンを加え、得られたろ液の水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層を合わ
せて、炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。
得られた混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。油状物をトルエンに溶解し
、この溶液をセライトとアルミナの積層物を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮し
て褐色油状物を得た。この油状物を高速液体クロマトグラフィーにより精製した。カラム
クロマトグラフィーはクロロホルムを展開溶媒として用いることによって行った(カラム
圧4.5MPa、流速100mL/分、保持時間45分、注入量0.9g/30mL)。
得られたフラクションを濃縮し、ヘキサンで再結晶したところ、目的物の黄色粉末を0.
66g、収率18%で得た。
【0279】
得られた目的物の黄色粉末状固体0.66gをトレインサブリメーション法により昇華精
製した。昇華精製条件は、圧力2.6Pa、アルゴンガスを流量5mL/minで流しな
がら、385℃で加熱して行った。昇華精製後、2mPCCzBPDBqの黄色ガラス状
固体を0.5g、回収率83%で得た。本ステップの合成スキームを下記(e-1)に示
す。
【0280】
【化28】
【0281】
上記ステップで得られた黄色粉末状固体の核磁気共鳴分光法(H-NMR)による分析
結果を下記に示す。また、H-NMRチャートを図35(A)(B)に示す。なお、図
35(B)は、図35(A)に対して横軸(δ)を7.0(ppm)から10(ppm)
の範囲とした拡大図である。このことから、上記ステップにおいて、2-{3’-[3-
(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]ビ
フェニル-3-イル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称2mPCCzBPDBq)
(構造式(122))が得られたことがわかった。
【0282】
H NMR(CDCl,500MHz):δ(ppm)=7.30-7.37(m、
2H)、7.41-7.53(m、5H)、7.59-7.89(m、18H)、8.0
4(dd、J=1.7Hz、1H)、8.23(d、J=7.5Hz、1H)、8.28
(d、8.0Hz、1H)、8.35(d、J=8.0Hz、1H)、8.48(dd、
J=11.4Hz、J=1.7Hz、2H)、8.66(d、J=8.1Hz、1H)、
8.70(s、1H)、9.25(dd、J=6.3Hz、J=1.1Hz、1H)、9
.43(dd、J=7.5Hz、J=1.7Hz、1H)、9.47(s、1H)。
【実施例0283】
本実施例では、本発明の一態様であるジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体2mPCC
zPDBq(構造式(101))を用いた発光素子5、比較材料2-[3-(9H-カル
バゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTP
DBq-II)を用いた比較発光素子6、および比較材料2mCzPDBqを用いた比較
発光素子7を作製した。なお、各発光素子の作製については基本的には実施例5と同様で
あるので省略する。また、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0284】
【化29】
【0285】
≪発光素子5、比較発光素子6、および比較発光素子7の作製≫
本実施例で作製した発光素子5、比較発光素子6、および比較発光素子7の素子構造を表
6に示す。
【0286】
【表6】
【0287】
また、作製した発光素子5、比較発光素子6、および比較発光素子7は、大気に曝されな
いように窒素雰囲気のグローブボックス内において封止した(シール材を素子の周囲に塗
布し、封止時にUV処理、及び80℃にて1時間熱処理)。
【0288】
≪発光素子5、比較発光素子6、および比較発光素子7の動作特性≫
作製した発光素子5、比較発光素子6、および比較発光素子7の動作特性について測定し
た。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0289】
各発光素子の電流密度-輝度特性を図36、電圧-輝度特性を図37、輝度-電流効率特
性を図38、電圧-電流特性を図39にそれぞれ示す。
【0290】
また、1000cd/m付近における発光素子5、比較発光素子6、および比較発光素
子7の主な初期特性値を以下の表7に示す。
【0291】
【表7】
【0292】
また、発光素子5、比較発光素子6、および比較発光素子7に2.5mA/cmの電流
密度で電流を流した際の発光スペクトルを図40に示す。図40に示す通り、発光素子5
、比較発光素子6、および比較発光素子7は、いずれも[Ir(tBuppm)(ac
ac)]に由来した544nm付近にピークを有するスペクトルを示した。
【0293】
また、発光素子5、比較発光素子6、および比較発光素子7についての信頼性試験の結果
図41(A)に示す。図41(A)において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規
格化輝度(%)を示し、横軸は素子の駆動時間(h)を示す。なお、信頼性試験は、初期
輝度を5000cd/mに設定し、電流密度一定の条件で発光素子5、比較発光素子6
、および比較発光素子7を駆動させた。
【0294】
その結果、本発明の一態様である2mPCCzPDBqを用いた発光素子5は、2mDB
TPDBq-IIを用いた比較発光素子6、および2mCzPDBqを用いた比較発光素
子7に比べて高い信頼性を有する長寿命な発光素子であることがわかった。
【0295】
また、信頼性試験時の電圧変化量を測定した結果を図41(B)に示す。縦軸は電圧変化
量(V)を示し、横軸は素子の駆動時間(h)を示す。この結果からわかるように、発光
素子5は、定電流駆動した際の電圧上昇が、比較発光素子6、比較発光素子7に比べて小
さいことが分かる。例えば約1000時間駆動後の電圧上昇量を見ると、比較発光素子6
が約0.31V、比較発光素子7が約0.50Vであるのに対し、発光素子5は約0.0
4Vである。つまり、比較発光素子6や比較発光素子7に比べ、発光素子5の電圧上昇量
は非常に抑制されており、顕著な効果であることが分かる。
【0296】
また、2mPCCzPDBq、2mDBTPDBq-II、2mCzPDBqはいずれも
、PCBBiFと励起錯体を形成する(これらのジベンゾキノキサリン化合物とPCBB
iFとの混合膜は、いずれも、各ジベンゾキノキサリン化合物単膜やPCBBiF単膜よ
りも長波長な黄緑色の発光を示すため)。また、2mPCCzPDBq、2mDBTPD
Bq-II、2mCzPDBq、およびPCBBiFのHOMO準位は、それぞれ-5.
63eV、-6.22eV、-5.91eV、-5.36eVである。なお、HOMO準
位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定より算出した。
【0297】
HOMO準位の測定結果から、各発光素子の発光層におけるΔEHOMOを算出した。結
果を表8にまとめる。
【0298】
【表8】
【0299】
この結果から、ΔEHOMOは0.4eV以下、より好ましくは0.3eV以下とするこ
とが重要であることが分かる。
【0300】
また、ホール輸送層に用いているBPAFLPのHOMO準位は、-5.51eVである
。したがって、ホール輸送層に用いている第3の有機化合物のHOMO準位は、第2の有
機化合物であるPCBBiFのHOMO準位よりも低く、また、第2の有機化合物である
PCBBiFのHOMO準位と第1の有機化合物(2mPCCzPDBq)のHOMO準
位との間に位置することがわかる。このことは、正孔を第2の有機化合物だけでなく、一
部第1の有機化合物にも注入する観点で重要である。
【実施例0301】
本実施例では、本発明の一態様であるジベンゾ[f,h]キノキサリン誘導体2mPCC
zBPDBqを用いた発光素子8を作製した。なお、発光素子8の作製については基本的
には実施例5と同様であるので省略する。また、本実施例で用いる材料の化学式を以下に
示す。
【0302】
【化30】
【0303】
≪発光素子8の作製≫
本実施例で作製した発光素子8の素子構造を表9に示す。
【0304】
【表9】
【0305】
また、作製した発光素子8は、大気に曝されないように窒素雰囲気のグローブボックス内
において封止した(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時にUV処理、及び80℃にて
1時間熱処理)。
【0306】
≪発光素子8の動作特性≫
作製した発光素子8の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた
雰囲気)で行った。
【0307】
発光素子8の電流密度-輝度特性を図42、電圧-輝度特性を図43、輝度-電流効率特
性を図44、電圧-電流特性を図45にそれぞれ示す。
【0308】
また、1000cd/m付近における発光素子8の主な初期特性値を以下の表10に示
す。
【0309】
【表10】
【0310】
また、発光素子8に2.5mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを
図46に示す。図46に示す通り、発光素子8は、[Ir(dppm)(acac)]
に由来した584nm付近にピークを有するスペクトルを示した。
【実施例0311】
本実施例では、本発明の一態様である発光素子を作製し、保存試験を行った。
【0312】
なお、本実施例では、発光素子1A、発光素子2A、比較発光素子3A、発光素子4A、
発光素子8Aを作製した。発光素子1Aは、実施例5の発光素子1と同じ構成で、同じ作
製方法により作製した。なお、発光素子2Aは、実施例5の発光素子2、比較発光素子3
Aは、実施例5の比較発光素子3、発光素子4Aは、実施例6の発光素子4、発光素子8
Aは、実施例9の発光素子8と、それぞれ同じ構成で、同じ作製方法により作製した。
【0313】
本実施例における保存試験では、各発光素子を、100℃に保たれた恒温槽で保存し、所
定の時間経過した後、動作特性を測定した。なお、測定は、恒温槽から取り出した後、室
温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0314】
まず、100℃で所定の時間保存した際の発光素子1Aの電圧-電流特性を図47に示し
、輝度-外部量子効率特性を図48に示す。なお、図47では、横軸は電圧(V)、縦軸
は電流(mA)を表す。また、図48では、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は外部量
子効率(%)を表す。
【0315】
次に、100℃で所定の時間保存した際の発光素子2Aの電圧-電流特性を図49に示し
、輝度-外部量子効率特性を図50に示す。なお、図49では、横軸は電圧(V)、縦軸
は電流(mA)を表す。また、図50では、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は外部量
子効率(%)を表す。
【0316】
次に、100℃で所定の時間保存した際の比較発光素子3Aの電圧-電流特性を図51
示し、輝度-外部量子効率特性を図52に示す。なお、図51では、横軸は電圧(V)、
縦軸は電流(mA)を表す。また、図52では、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は外
部量子効率(%)を表す。なお、図52では、20時間を超える保存で発光が観測されな
かったため、20時間を超える保存でのデータが得られなかった。
【0317】
次に、100℃で所定の時間保存した際の発光素子4Aの電圧-電流特性を図53に示し
、輝度-外部量子効率特性を図54に示す。なお、図53では、横軸は電圧(V)、縦軸
は電流(mA)を表す。また、図54では、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は外部量
子効率(%)を表す。
【0318】
次に、100℃で所定の時間保存した際の発光素子8Aの電圧-電流特性を図55に示し
、輝度-外部量子効率特性を図56に示す。なお、図55では、横軸は電圧(V)、縦軸
は電流(mA)を表す。また、図56では、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は外部量
子効率(%)を表す。
【0319】
図47~50および図53~56より、発光素子1A、発光素子2A、発光素子4Aおよ
び発光素子8Aは、100℃で500時間保存したにも関わらず、電圧-電流特性および
輝度-外部量子効率特性の変化が少なく、高温保存による素子特性の劣化が少ないことが
わかる。一方で、図51および図52より、比較発光素子3Aは、100℃で保存するこ
とで、電圧-電流特性および輝度-外部量子効率特性が大きく変化し、高温保存により素
子特性が劣化していることがわかる。図51より、比較発光素子3Aは100時間で初期
の絶縁性が保持できておらず、リーク電流が発生しており、図52より、非発光となる不
良が生じていることがわかる。ゆえに、本発明の化合物を用いることで発光素子の高温保
存における耐熱性が飛躍的に向上することがわかる。
【符号の説明】
【0320】
100 発光層
101 第1の有機化合物(h)
102 第2の有機化合物(a)
103 燐光性化合物(g)
104 正孔輸送層
105 正孔輸送性化合物(p)
201 第1の電極
202 EL層
203 第2の電極
211 正孔注入層
212 正孔輸送層
213 発光層
214 電子輸送層
215 電子注入層
401 第1の電極
402(1) 第1のEL層
402(2) 第2のEL層
402(n-1) 第(n-1)のEL層
402(n) 第(n)のEL層
404 第2の電極
405 電荷発生層
405(1) 第1の電荷発生層
405(2) 第2の電荷発生層
405(n-1) 第(n-1)の電荷発生層
501 基板
502 FET
503 第1の電極
504 隔壁
505 EL層
506R、506G、506B、506Y 発光領域
507R、507G、507B、507Y 発光素子
508R、508G、508B、508Y 着色層
509 黒色層(ブラックマトリクス)
510 第2の電極
511 封止基板
601 素子基板
602 画素部
603 駆動回路部(ソース線駆動回路)
604a、604b 駆動回路部(ゲート線駆動回路)
605 シール材
606 封止基板
607 配線
608 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
609 FET
610 FET
611 スイッチング用FET
612 電流制御用FET
613 第1の電極(陽極)
614 絶縁物
615 EL層
616 第2の電極(陰極)
617 発光素子
618 空間
1100 基板
1101 第1の電極
1102 EL層
1103 第2の電極
1111 正孔注入層
1112 正孔輸送層
1113 発光層
1114 電子輸送層
1115 電子注入層
7100 テレビジョン装置
7101 筐体
7103 表示部
7105 スタンド
7107 表示部
7109 操作キー
7110 リモコン操作機
7201 本体
7202 筐体
7203 表示部
7204 キーボード
7205 外部接続ポート
7206 ポインティングデバイス
7302 筐体
7304 表示パネル
7305 時刻を表すアイコン
7306 その他のアイコン
7311 操作ボタン
7312 操作ボタン
7313 接続端子
7321 バンド
7322 留め金
7400 携帯電話機
7401 筐体
7402 表示部
7403 操作用ボタン
7404 外部接続部
7405 スピーカ
7406 マイク
7407 カメラ
8001 照明装置
8002 照明装置
8003 照明装置
8004 照明装置
9310 携帯情報端末
9311 表示パネル
9313 ヒンジ
9315 筐体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56