(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186975
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】拡張可能なステントを製造する方法及び食道ステントを製造する方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/04 20130101AFI20221208BHJP
【FI】
A61F2/04
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172226
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2021003299の分割
【原出願日】2017-03-06
(31)【優先権主張番号】62/304,739
(32)【優先日】2016-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ハノン、ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】マクメナミン、ナイジェル
(72)【発明者】
【氏名】モンタギュー、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】フォラン、マイケル ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ランベール、アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ジョイス、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ニーブン、メーガン
(72)【発明者】
【氏名】パールマン、アリソン エム.
(57)【要約】
【課題】ステントを製造する方法を提供すること。
【解決手段】本願発明の方法は、管状足場のルーメン内にマンドレルを配置することであって、管状足場は、内部表面と、外部表面と、管状足場の第1端部から第2端部まで延びる複数のフィラメントとを有しており、複数のフィラメントはその間に複数のアパーチャを画定するように配置されており、複数のアパーチャは管状足場の壁を通って内部表面から外部表面まで延びており、マンドレルはその外部表面から半径方向内側に延びる凹部を有している、マンドレルを配置することと、材料が前記管状足場の内部表面の半径方向内側にある前記マンドレルの凹部と接触するように、前記管状足場のアパーチャを通して材料を堆積させることと、前記マンドレルを取り外すことと、を含む。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張可能なステントを製造する方法であって、
管状足場のルーメン内にマンドレルを配置することであって、管状足場は、内部表面と、外部表面と、管状足場の第1端部から第2端部まで延びる複数のフィラメントとを有しており、複数のフィラメントはその間に複数のアパーチャを画定するように配置されており、複数のアパーチャは管状足場の壁を通って内部表面から外部表面まで延びており、マンドレルはその外部表面から半径方向内側に延びる凹部を有している、マンドレルを配置することと、
材料が前記管状足場の内部表面の半径方向内側にある前記マンドレルの凹部と接触するように、前記管状足場のアパーチャを通して材料を堆積させることと、
前記マンドレルを取り外すことと、を含む方法。
【請求項2】
材料を堆積させることが、前記管状足場のルーメン内に材料の内層を形成することを更に含んでおり、材料の内層の一部が、前記管状足場の内部表面の半径方向内側に配置されるとともに該管状足場の内部表面から間隔を隔てた外側表面を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記管状足場の内部表面の半径方向内側に配置されるとともに該管状足場の内部表面から間隔を隔てた前記材料の内層の一部が、前記管状足場の内部表面から半径方向内側に延びる弁を形成する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記管状足場のアパーチャを通して材料を堆積させることが、第1の周方向位置と該管状足場の第1端部との間、及び第2の周方向位置と前記管状足場の第2端部との間において、前記管状足場の内部表面に材料の内層を堆積させることを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記材料の外層を前記管状足場の外部表面に沿って堆積させるとともに、前記第1の周方向位置と第2の周方向位置との間で前記アパーチャに広がって延在させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記管状足場の第1端部から第2端部まで、該管状足場の外部表面に沿って材料の外層を堆積させることを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記内層が、前記第1の周方向位置において前記外層に周方向に取り付けられるとともに、前記第2の周方向位置において前記外層に周方向に取り付けられて、環状チャンバを形成する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記環状チャンバが、前記管状足場の中心長手方向軸を中心に周方向に延在する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記環状チャンバが、前記材料の内層の外面と、前記第1の周方向位置から前記第2の周方向位置まで延在する前記外層の内面とに囲まれている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記弁が、閉鎖構成と開放構成との間で移行するように構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記マンドレルの凹部が、前記内層の内面の少なくとも一部に表面テクスチャを形成するように構成される、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記表面テクスチャが、前記弁の内面の下向き部分のみにある、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記弁の内面の表面テクスチャが、前記内層の外面の反対側にあり、該内層の外面には表面テクスチャがない、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記管状足場のアパーチャを通して材料を堆積させることが、前記アパーチャを通して材料を噴霧することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
拡張可能なステントを製造する方法であって、
管状足場のルーメン内にマンドレルを配置することであって、管状足場は、内部表面と、外部表面と、管状足場の第1端部から第2端部まで延びる複数のフィラメントとを有しており、複数のフィラメントはその間に複数のアパーチャを画定するように配置されており、複数のアパーチャは管状足場の壁を通って内部表面から外部表面まで延びており、マンドレルはその外部表面から半径方向内側に延びる凹部を有している、マンドレルを配置することと、
前記管状足場に沿って第1の周方向位置から第2の周方向位置まで材料を堆積させて、材料が前記管状足場の複数のアパーチャにまたがるように堆積されるとともに、前記マンドレルの凹部の少なくとも一部に沿って堆積されて、第1の周方向位置と第2の周方向位置との間に環状チャンバを有する弁を形成することと、
前記マンドレルを取り外すことと、を含む方法。
【請求項16】
前記管状足場に沿って第1の周方向位置から第2の周方向位置まで材料を堆積させることが、前記アパーチャを通して材料を噴霧することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記環状チャンバが、前記凹部に沿って形成される材料の内層の外面と、前記管状足場の複数のアパーチャにまたがる外層の内面とによって囲まれている、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記マンドレルの凹部が、前記弁の内面の下向き部分のみに表面テクスチャを形成するように構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
食道ステントを製造する方法であって、
管状足場のルーメン内にマンドレルを配置することであって、管状足場は、その壁を貫通する複数のアパーチャを画定するように配置された複数のフィラメントを有しており、マンドレルはその外部表面から半径方向内側に延びる凹部を有している、マンドレルを配置することと、
前記複数のアパーチャを通して前記マンドレルの凹部の表面に材料の第1の層を堆積させることと、
前記管状足場の外部表面の少なくとも一部に材料の第2の層を堆積させることと、
前記マンドレルの凹部の表面上に堆積された前記材料の第1の層の外面が、前記材料の第2の層の内面から離間されて、これら外面と内面との間に環状チャンバを有する弁を形成し、
前記マンドレルを取り外すことと、を含む方法。
【請求項20】
前記材料の第1の層を堆積させることが、前記複数のアパーチャを通して該材料の第1の層を噴霧することを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療デバイス及び医療デバイスを製造する方法に関する。より具体的には、本開示は、逆流防止弁などの弁を含むステント、並びにこのようなステントを製造及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下部食道括約筋は食道と胃との間にある筋肉である。括約筋は、通常、一方向弁として機能し、食道内を下方に移動する物質(例えば、食物)が胃に入ることを可能にする一方で、塩酸及びその他胃の内容物が食道に還流(逆流)するのを防ぐ。しかしながら、場合によっては、下部食道括約筋が適切に閉じないことで胃酸を食道に逆流させ、胸やけを生じさせる。下部食道括約筋の弱化又は機能不全は胃食道逆流疾患(GERD:gastroesophageal reflux disease)の主因である。
【0003】
このため、下部食道括約筋の機能不全に起因する胃食道疾患を処置するための種々の体内医療デバイスが開発されてきた。例えば、物質(例えば、食物)が食道内を移動して胃に入ることを可能にする一方で、胃酸が食道に逆流することも防ぐ、一方向弁を組み込んだ長尺状のステントが開発されている。しかしながら、胃食道疾患及び他の病態を処置するための、一方向弁を含むステントの別の構成及び/又は一方向弁を含むステントを形成する別の方法が継続して必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0031951号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、医療デバイスの設計、材料、製造方法、及び使用の代替を提供する。例示的な医療デバイスは管状足場を含む。この足場は、長手方向軸線と、内部表面と、外部表面とを含む。医療デバイスはまた、足場の内部表面から半径方向内側に延びる可撓性弁を含む。この弁は、足場の内部表面の周方向に延びる環状チャンバを含み、閉鎖構成から開放構成に移行するように構成されている。
【0007】
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、弁は第1端部及び第2端部を含み、第1端部は、長手方向軸線に沿って第2端部から間隔を開けて配置されており、チャンバは、第1端部と第2端部との間に配置されている。
【0008】
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、弁は、第1端部から第2端部に向かって狭くなっている。
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、弁は、第1端部の近傍の第1の壁厚と、第2端部の近傍の第2の壁厚とを更に含み、第2の壁厚は第1の壁厚よりも厚い。
【0009】
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、足場の内部表面に沿って配置された内層を更に含み、弁は、内層の少なくとも一部分から形成されている。
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、足場の外部表面に沿って配置された外層を更に含み、環状チャンバは、内層と外層との間に画定される。
【0010】
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、足場の内部表面に沿って配置された内層と、足場の外部表面に沿って配置された外層とを更に含み、内層は、第1の位置と第2の位置とにおいて周方向に取り付けられており、外層は、少なくとも第1の位置と第2の位置との間に延び、環状チャンバは、内層と外層との間に画定される。
【0011】
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、医療デバイスは、外層、内層、又は内層と外層の両方を貫通する少なくとも1つのアパーチャを含む。
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、チャンバには実質的に空気が充填されている。
【0012】
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、チャンバには、液体、ゲル、発泡体、及びポリマーを含む群から選択される材料が充填されている。
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、弁の少なくとも一部分は、物質が弁内を逆方向に移動するのを妨げるように構成された表面テクスチャを含む。
【0013】
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、弁の少なくとも一部分は、1種以上の酸中和剤を含むコーティングを含む。
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、医療デバイスは、第2の弁を含む。
【0014】
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、弁に適用されたコーティングを更に含み、コーティングは、弁の表面摩擦を最小限にするように構成されている。
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、コーティングはシリコーンコーティングである。
【0015】
食道ステントは、拡張可能な管状足場を含む。この足場は、長手方向軸線と、内部表面とを含む。食道ステントはまた、足場の内部表面に配置された弁を含み、弁は、第1端部と、第2端部とを含む。弁は長手方向軸線に沿って物質を通すように構成されており、閉鎖構成から開放構成へと半径方向に拡張する。
【0016】
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、弁は、弁の第1端部の近傍の拡大部と、弁の第2端部の近傍の閉鎖部とを含む。
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、弁は、拡大部から閉鎖部に向かって狭くなっている。
【0017】
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、弁は、足場の内部表面の周方向に延びる環状チャンバを更に画定する。
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、チャンバには、液体、ゲル、及びポリマーを含む群から選択される材料が充填されている。
【0018】
上記実施形態のいずれかの代わりに又はこれに加えて、ステントの第1端部からステントの第2端部まで延びる内層を更に含み、弁は、内層の少なくとも一部分から形成されている。
【0019】
酸逆流を処置するための例示的な食道ステントは、拡張可能な管状部材を含む。管状部材は、長手方向軸線と、内部表面とを含む。ステントはまた、足場の内部表面に配置された弁を含む。弁は、管状部材の内部表面の周方向に延びる環状チャンバを含む。弁は長手方向軸線に沿って物質を通すように構成されており、物質が弁を第1の方向に通過することを可能にし、物質が弁を第2の方向に通過することを妨げ、第1の方向は第2の方向の逆である。
【0020】
上記一部実施形態の概要は、本開示の開示される各実施形態又は全ての実装形態を記載することを目的とするものではない。以下の図及び詳細な説明は、これら実施形態をより具体的に例示する。
【0021】
本開示は、以下の詳細な説明を添付の図面とともに考慮するとより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】弁を通過している物質を示す、
図1のステントの断面図である。
【
図4】弁を通過している物質を示す、
図1のステントの断面図である。
【
図5】閉鎖構成にある弁を含む、
図1のステントの一部分の拡大断面図である。
【
図6】
図5の線6-6に沿って取られた、
図5のステント及び弁の断面図である。
【
図7】ステント内に配置された別の例示的な弁の断面図である。
【
図8】
図7の線8-8に沿って取られた、
図7のステント及び弁の断面図である。
【
図9】例示的なステント及び弁構成の断面図である。
【
図10】別の例示的なステント及び弁構成の断面図である。
【
図11】別の例示的なステント及び弁構成の断面図である。
【
図12】表面テクスチャを有する、ステント内の別の例示的な弁の断面図である。
【
図13】可変壁厚を有する、ステント内の別の例示的な弁の断面図である。
【
図14】弁を含む別の例示的なステントの断面図である。
【
図15】例示的なステント内に弁を形成するための例示的な製造方法を示す。
【
図16】例示的なステント内に弁を形成するための例示的な製造方法を示す。
【
図17】例示的なステント内に弁を形成するための例示的な製造方法を示す。
【
図18】複数の弁を含む別の例示的なステントの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は種々の変更形態及び代替形態に適用できるが、図面にはその細部は例として示されており、詳細に記載される。しかしながら、記載される特定の実施形態に本開示を限定することを意図するものではない。逆に、本開示の趣旨及び範囲内のあらゆる変更形態、均等物、及び代替物を包含することを意図するものである。
(詳細な説明)
定義される以下の用語に関して、特許請求の範囲又は本明細書の別の場所で異なる定義が与えられない限りはこれら定義が適用される。
【0024】
本明細書中において、明示的に示されているか否かを問わず、全ての数値は「約」という用語によって修飾されると想定される。「約」という用語は、概して、列挙した値に等しい(例えば、同じ機能又は結果を有する)と当業者が考える数の範囲を意味する。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸めた数を含んでもよい。
【0025】
終点による数値範囲の記述は、その範囲内のあらゆる数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、別段の明確な指示のない限り複数形の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、「又は」という用語は、別段の明確な指示のない限り、概して、「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0026】
本明細書における、「一実施形態」、「一部の実施形態」、「他の実施形態」等への言及は、記載される実施形態が1つ以上の特定の特徴、構造、及び/又は特性を含み得ることを示す。しかしながら、このような記述は、全ての実施形態が特定の特徴、構造及び/又は特性を含むことを必ずしも意味するものではない。加えて、特定の特徴、構造及び/又は特性が一実施形態とともに記載されている場合、このような特徴、構造、及び/又は特性は、また、別段の明確な指示のない限り、明示的に記載されているか否かを問わず、他の実施形態とともに使用され得る。
【0027】
以下の詳細な説明は、異なる図面の類似要素に同じ番号が付されている図面を参照しながら読むべきである。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、例証的な実施形態を示し、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0028】
胃食道逆流疾患(GERD)は、下部食道括約筋(胃の入口にある)が適切に閉じないことが原因で胃酸が食道下部に入る病態である。場合によっては、下部食道括約筋の閉鎖不全は疾患又は全身性萎縮に起因する。括約筋は、開いたままの場合、食道に胃酸を逆流させるおそれがあり、ひどい胸やけを引き起こし、また場合によっては、他の疾患の発症に関与する可能性がある。
【0029】
GERDを処置する方法の1つは、胃の入口に逆流防止ステントを配置することである。逆流防止ステントは拡張可能な弁を含んでもよく、拡張可能な弁は、食物及び液体が胃に入ることは可能にするが、液体が弁を通過して戻ることは防ぐ。概して、逆流防止ステントが、胃に開口する滑らかなルーメンを提供すると同時に胃酸が弁を通過して食道に戻らないようにすることが継続して必要とされている。
【0030】
図1は、例示的なステント10を示す。ステント10は、1つ以上のステント支柱部材14を含む。ステント支柱部材14は、ステント10に沿って長手方向に延びる。
図1は、ステント10の全長に沿って延びるステント支柱部材14を示すが、他の例では、ステント支柱部材14はステント10の一部分のみに沿って延びてもよい。
【0031】
加えて、
図1は、ステント10の第1端部及び第2端部の近傍に1つ以上のフレア状端部部分12を含む例示的なステント10を示す。フレア状部分12は、ステント10の端部部分12の1つ又は両方に沿った、外径、内径、又は内径及び外径の両方の増加と定義されてもよい。
【0032】
ステント10は自己拡張ステントであってもよく、又はステント10はバルーン拡張可能なステントであってもよい。自己拡張ステントの例は、組み合わされて剛性及び/又は半剛性のステント構造を形成する1つ以上の支柱14を有するステントを含む。例えば、ステント支柱14は、ステント構造を形成するために編み込む、交絡させる、織り込む、織られる、編まれるなどしたワイヤ又はフィラメントであってもよい。あるいは、ステント10は、単一の円筒形でレーザ切除されたニチノール製管状部材などの筒状管体から形成されたモノリシック構造であってもよく、筒状管体の残部がステント支柱14を形成する。ステント10の壁の開口又は間隙が、隣接するステント支柱14間に画定されてもよい。
【0033】
本明細書中に開示される例におけるステント10は様々な材料で作製されている。例えば、ステント10(例えば、自己拡張又はバルーン拡張可能)は、金属(例えば、ニチノール)で作製されていてもよい。他の例では、ステント10は、高分子材料(例えば、PET)で作製されていてもよい。更に他の例では、ステント10は、金属材料と高分子材料との組み合わせで作製されていてもよい。加えて、ステント10は、生体吸収性及び/又は生分解性材料を含んでもよい。
【0034】
例示的なステント10は、ステント10の外部表面上に及び/又はステント10の外部表面の近傍に配置された1つ以上の層を含む。例えば、
図2は、ステント10の外部表面に沿って配置された外層22を含む例示的なステント10を示す。外層22は、エラストマー又は非エラストマー材料であってもよい。例えば、外層22は、シリコーン、ポリウレタン等などの高分子材料であってもよい。更に、外層22は、ステント10の壁内の空間(例えば、開口、セル、間隙)に広がってもよい。例えば、
図2は、外層22がステント10の壁内の支柱14間の空間(例えば、開口、セル、間隙)の1つ以上に広がるように、ステント10の外部表面から内側に延びる外層22を示す。
【0035】
加えて、例示的なステント10は、ステント10の内部表面上に及び/又はステント10の内部表面の近傍に配置された1つ以上の層を含んでもよい。
図2は、ステント10の内部表面に沿って配置された内層20を含む例示的なステント10を示す。内層20は、エラストマー又は非エラストマー材料であってもよい。例えば、内層20は、シリコーン、ポリウレタン等などの高分子材料であってもよい。更に、内層20は、ステント10の壁内の空間(例えば、開口、セル、間隙)に広がってもよい。例えば、
図2は、内層20がステント10の壁内の支柱14間の空間(例えば、開口、セル、間隙)の1つ以上に広がるように、ステント10の内部表面から外側に延びる内層20を示す。
【0036】
内層20及び外層22がそれぞれ外側及び内側に延びると、内層20と外層22は接する、及び/又はステント10の壁内の空間(例えば、開口、セル、間隙)内に接続領域を形成する。例えば、
図2の詳細図は、内層20と外層22の両方が、隣接するステント支柱14間に画定された開口内に延び、接続領域を形成することを示す。更に、内層20及び外層22は、隣接する支柱14間に延びることで、隣接する支柱部材14間の任意の空間を充填する。
【0037】
図2に示すように、ステント10は、第1端部21及び第2端部23を有する。体管腔(例えば、食道)内に配置されているとき、第1端部21は患者の口に最も近いステント10の端部とすることができ、第2端部23は患者の胃に最も近いステント10の端部とすることができる。
【0038】
図2に示すように、内層20及び外層22は、ステント10の長さに沿って第1端部21から第2端部23まで延びてもよい。言い換えると、内層20及び外層22は、ステント10の第1端部21から第2端部23まで延びる連続層とすることができる。しかしながら、他の例では、内層20及び/又は外層22は、所望であれば、ステント10の全長より短く延びてもよい。
【0039】
加えて、
図2は、ステント10のルーメン内に配置された弁部材16を示す。以下でより詳細に説明するように、弁16は、内層20の一部分とすることができる。あるいは、弁16は、内層20とともに形成された一体構造であってもよい。例えば、
図2は、弁16が、内層20の内側に延びる部分であってもよいことを示す。言い換えれば、弁16は、ステント10の内部表面からステント10の中心長手方向軸線25に向かって半径方向内側に延びる内層20の一体部分とすることができる。
【0040】
更に、一部の例では、弁16は、ステント部材10のルーメン内の周方向に延びる内層20の一部分とすることができる。換言すると、弁16は、ステント部材10のルーメンの周りに連続的に延びる環状部材とすることができる。更に、弁16は、中心長手方向軸線25に向かって突出する内層20のとぎれのない延長部とすることができる。
【0041】
以下で更に詳細に説明するように、
図2は、弁16が円錐状の壁を含んでもよく、概ね、第1端部21に最も近い弁16の部分から第2端部23に最も近い弁16の部分まで長手方向にテーパする形状であってもよいことを示す。例えば、
図2に示される弁16の壁は、患者の口に最も近い広い部分から患者の胃に最も近い狭い部分までテーパし、円錐形の漏斗にある程度類似してもよい。更に、
図2に示されるように、弁16は中心長手方向軸線25に向かって内側にテーパしてもよく、物質(例えば、胃酸)の流れがステント10のルーメン内を流れるのを弁16が停止するように、弁16自体で閉鎖(例えば、接触、封止等)してもよい。上記のように、胃酸が患者の胃から患者の口へと流れるのを弁16が防ぐことが望ましい。
図2は、閉鎖部24における弁16を示す。
【0042】
しかしながら、弁16が半径方向外側に拡張し、栄養物質がステント10のルーメンを通過するのを可能にすることが望ましい場合がある。例えば、弁16が半径方向に拡張し、食物が患者の口から弁16を通り胃に送られることを可能にすることが望ましい。
【0043】
図3及び
図4は、半径方向外側に拡張して、栄養物質(例えば、食物)がステント10のルーメンを通過するのを可能にする弁16を示す。
図3の矢印によって示されるように、及び一般に、栄養物質18は第1端部21(例えば、患者の口に最も近い端部)から第2端部23(例えば、患者の胃に最も近い端部)へとステント10内を流れる。
図4に示すように、弁16は、物質18が弁16を通過する際に半径方向外側に拡張することによって、物質18がステント10のルーメンを通過することを可能にする。
図4に示すように、弁16は、物質18が弁16を通過する際、物質18の形状に適合できる。
【0044】
図5は、弁部材16を含む例示的なステント10を示す。上述のように、ステント10は、外層22及び内層20を含んでもよい。更に、弁16は、内層20によって画定されてもよい。例えば、
図5は、内層20が「X」として示される厚さを有することを示す。厚さ「X」は、内層20がステント部材10の内部表面から半径方向内側に延びる深さとすることができる。一部の例では、内層20はシリコーン材料から形成されてもよい。
【0045】
図5は、ステント10のルーメン内の弁16の拡大図である。
図5に示すように、内層20は、2つ以上の位置においてステント部材10の内部表面から離れていてもよい。例えば、
図5は、第1の分離点30及び第2の分離点32を示す。分離点30/32はステント10の周囲に延びる周囲線であり、弁16を形成するために内層20が長手方向軸線25に向かって半径方向内側に近づくと、この周囲線において、内層20がステント10の壁の内部表面から離れる。分離点30/32は、内層20の外部表面がステント部材10の内部表面から離れる位置とすることができる。この位置はまた、弁16を画定する「壁厚」を有する壁を内層20が画定する位置とすることができる。
【0046】
図5は、弁16の壁厚が内層20の厚さ「X」に実質的に等しくてもよいことを示す。換言すると、内層20は、ステント部材10の長さに沿って実質的に均一な壁厚を維持してもよい(弁16の壁厚を含む)。しかしながら、以下でより詳細に説明するように、他の実施形態では、内層20の厚さ、外層22の厚さ及び/又は弁16を画定する壁厚は、ステント部材10の任意の部分に沿って変化してもよい。例えば、内層20、外層22及び/又は弁16を画定する壁厚のいくつかの部分がステント部材10に沿う他の部分より薄くても厚くてもよい。
【0047】
上記のように、内層20は、第1の分離点30及び第2の分離点32においてステント部材10の内部表面から離れていてもよく、第1の分離点30と第2の分離点32との間においてステント10の内部表面の半径方向内側にあり、ステント10の内部表面に付着していなくてもよい。更に、
図5は、ステント部材10の内部表面からの内層20の離隔が、壁厚「X」を有する弁16を画定することを示す。更にまた、
図5は、分離点30と分離点32との間における弁壁とステント部材10(外層22を含んでもよい)との間の空間とすることができる「チャンバ」26(例えば、嚢、空洞、ボイド、ポケット、囲壁等)を示す。チャンバ26は、分離点30と分離点32との間に配置されていてもよい。
図5では、チャンバ26は、参照のためにハッシュマークパターンで示されている。したがって、チャンバ26は、周囲分離点30と周囲分離点32との間におけるステント10の壁(外層22を含む)と弁16の壁(内層20によって形成される)との間の空間とすることができる。
【0048】
弁16の壁に関する上記記載と同様に、チャンバ26は、ステント部材10のルーメン内に周方向に延びるものとすることができる。換言すると、チャンバ26は、ステント壁の半径方向内側に、ステント部材10のルーメンの周りに連続的に延びる環状空洞とすることができる。更に、チャンバ26の形状は弁16の壁の形状に直接関連する。あるいは、弁16の形状はチャンバ26の形状を画定する。
【0049】
チャンバ26には様々な材料が充填されていてもよい。例えば、チャンバ26には、流体(例えば、ガス、空気、液体、ゲル、又は任意の他の類似の材料)が充填されていてもよい。チャンバ26には、食塩水、ゲル、又は空気が充填されていてもよい。他の例では、チャンバ26には、容易に圧縮可能且つその本来の形状に回復可能である連続気泡発泡体又は独立気泡発泡体などの発泡体材料が充填されていてもよい。上述のように、場合によっては、弁16が半径方向外側に拡張する(例えば、食物が弁を通過する際)ことが望ましく、したがって、圧縮可能な、変位可能な及び/又は印加された様々な力に応じて動くことができる材料をチャンバ26に充填することが望ましい。
【0050】
他の例では、チャンバ26は、空気又は別の種類のガスのみを含んでもよい。上記と同様に、ガス充填チャンバ26は半径方向外側に拡張することができてもよく(例えば、食物が弁を通過する際)、したがって、印加された様々な力に応じて弁16が動くことができる圧力でガスをチャンバ26に充填することが望ましい。
【0051】
図2に示す例と同様に、
図5に示される弁16は、円錐形の漏斗にある程度類似している。例えば、弁16の壁の半径方向内側表面は、分離点30から閉鎖点24まで半径方向内側にテーパしている。加えて、
図5は、分離点30から中心長手方向軸線25に向かって延びるテーパ状壁部分27を含む弁16を示す。更に、弁16は、より狭い部分(
図5に寸法「Z」として示される)へとテーパする広い部分(
図5に寸法「Y」として示される)を含んでもよい。
図5に示すように、弁16の広い部分は第1の分離点30の近傍に配置されていてもよく、より狭い部分は閉鎖点24の近傍に配置されていてもよい。更に、上で
図2に関して記載したように、弁16の連続的な周方向の(例えば、環状)形状は漏斗状部分34を画定してもよい。
【0052】
加えて、弁16は、丸みのある部分29と、下向き部分28とを含んでもよい。簡略化のために、本明細書中では「下向き」という用語は、全般的に、閉鎖点24の遠位側である胃の方を向いた弁16の部分について使用される。
図5に示されるように、丸みのある部分29は、テーパ状部分27と下向き部分28との間に配置されている。換言すると、一部の例では、弁16は、テーパ状部分27と、丸みのある部分29と、下向き部分28(第2の分離点32で終端する)とを含むものとすることができる。場合によっては、テーパ状部分27は第1の分離点30の近傍の点でテーパし始める。下向き部分28は、丸みのある部分29から第2の分離点32まで延びてもよい。一部の例では、閉鎖点24は、丸みのある部分29の一部分に沿って配置されていてもよい。閉鎖点24は、第1の分離点30と第2の分離点32との間の、中心長手方向軸線25の近傍に配置されていてもよい。例えば、閉鎖点24は中心長手方向軸線25にあってもよい。
【0053】
加えて、
図5は、ステント10に沿って弁16の全長にわたり延びている外層22を示す。言い換えると、ステント10は、少なくとも分離点30から分離点32まで延びる外層22を含んでもよい。しかしながら、一部の例では、外層22はステント10の全長に延びてもよく、他の例では、外層22はステント10の全長に延びなくてもよい。一部の例では、外層22は、細胞の内殖を防ぐように構成されていてもよい。例えば、外層22は、細胞の内殖を阻止するためにポリウレタン又はシリコーン(例えば、高デュロメータシリコーン)などの高分子材料を含んでもよい。チャンバ26の半径方向外側範囲は外層22によって境界が定められてもよく、これに対して、チャンバ26の半径方向内側範囲は内層20によって境界が定められてもよい。
【0054】
図6は、
図5の線6-6に沿った断面図を示す。特に、
図5の線6-6は上述の閉鎖点24に交差する。したがって、
図6に示すように、閉鎖点24はステント10のルーメンの中心に配置されている。更に、
図6は、外層22、ステント10、チャンバ26、及び内層20を示す。加えて、
図6は、チャンバ26及び内層20が中心長手方向軸線25(
図6の閉鎖点24に一致する)を中心に周方向に延びることを示す。上述のように、
図6は、チャンバ26及び内層20(弁16の壁を画定する)が中心長手方向軸線25の周りに連続的に延びることを示す。また、上記のように、チャンバ26の半径方向外側範囲は外層22によって境界が定められてもよく、チャンバ26の半径方向内側範囲は内層20によって境界が定められてもよい。
【0055】
図7は、上述のものに類似する特徴及び/又は要素を含む例示的なステント10を示す。例えば、
図7は、ステント10と、外層22と、内層20とを含み、内層20は、テーパ状円錐部分27と、丸みのある部分29と、下向き部分28とを画定する弁16を示す。加えて、弁16はチャンバ26を画定し、チャンバ26は、第1の分離点30と第2の分離点32との間に延び、内層20と外層22とによって境界が定められている。即ち、チャンバ26の半径方向外側範囲は外層22によって境界が定められてもよく、チャンバ26の半径方向内側範囲は内層20によって境界が定められてもよい。しかしながら、
図7の弁16の構成は閉鎖点を含まない。むしろ、
図7は、場合によっては、弁16のテーパ状部分27は中心長手方向軸線25に向かって半径方向内側にテーパするが、閉鎖点24は形成しないことを示す。また、
図7は、一部の例では、弁16が中心長手方向軸線25に位置する弁開口36を含むことを示す。
【0056】
図8は、
図7に示される例示的なステント10及び弁16の断面図を示す。
図8に示される断面図は、
図7の線8-8に沿って取られたものである。
図7の線8-8は、上述の弁開口36を横断している。上述のように、チャンバ26の半径方向外側範囲は外層22によって境界が定められてもよく、チャンバ26の半径方向内側範囲は内層20によって境界が定められてもよい。
図8に示すように(及び
図6に示される例示的な弁に対して)、弁開口36は、ステント10のルーメンの中心長手方向軸線25を中心にして位置決めされたアパーチャ及び/又は開口とすることができる。しかしながら、本明細書中に記載される図は中心長手方向軸線を中心にして位置決めされた例示的な弁及び関連要素を示すものの、本明細書中に記載される例のいずれも、ステント10及び/又は弁16の任意の部分を画定する構造的要素が中心から外れ得るように設計してもよい。換言すると、本明細書中に記載される1つ以上の例では、弁16は中心長手方向軸線25の周りで非対称であってもよい。
【0057】
図9~
図11は、例示的な弁16の可能な種々の形状のいくつかを示す。円錐状壁部分27は中心長手方向軸線25に対し遠ざかる方に任意の所望の角度でテーパしてもよい。加えて、下向き部分28は、ステント10の管状壁から任意の所望の角度で中心長手方向軸線25に向かって延びてもよい。
図9~
図11に示されるものなどの一部の例では、弁16の下向き部分28の軌跡は、下向き部分28に正接させて描いた線とステント10との間に広がる角度θを画定することを特徴としてもよい。
【0058】
例えば、
図9は、ステント部材10によって画定される、分離点32より下(分離点32の遠位側)の表面により成された鋭角である角度θを示す。即ち、
図9に示される角度θは、ステント部材10によって画定される、分離点32より下(分離点32の遠位側)の表面から90°未満に広がる。したがって、下向き部分28が中心長手方向軸線25に向かって延びるにつれて、下向き部分28は分離点32から遠位側に延びる。更に、
図9から、弁16の丸みのある部分29は分離点32より下(分離点32の遠位側)に延びることが分かる。
【0059】
図10は、ステント部材10によって画定される、分離点32より下(分離点32の遠位側)の表面に略垂直な角度である角度θを示す。即ち、
図10に示される角度θは、ステント部材10によって画定される、分離点32より下の表面から約90°広がる。したがって、下向き部分28が中心長手方向軸線25に向かって延びるにつれて、下向き部分28は分離点32から中心長手方向軸線25に対して垂直に延びる。更に、
図10から、弁16の丸みのある部分29は分離点32より下に延びなくてもよいことが分かる。
【0060】
図11は、ステント部材10によって画定される、分離点32より下(分離点32の遠位側)の表面により成された鈍角である角度θを示す。即ち、
図11に示される角度θは、ステント部材11によって画定される、分離点32より下(分離点32の遠位側)の表面から90°を超えて広がる。したがって、下向き部分28が中心長手方向軸線25に向かって延びるにつれて、下向き部分28は分離点32から近位側に延びる。更に、
図11から、弁16の丸みのある部分29は分離点32より上(分離点32の近位側)に延びてもよいことが分かる。
【0061】
一部の例では、ステント16は、物質が弁16内を逆方向に(即ち、患者の口に向かって)移動するのを防ぐ若しくは妨げるように設計及び/又は構成された1つ以上の表面テクスチャ、パターン、微細パターン、微細テクスチャ、粗面、隆起等を含んでもよい。特に、物質(例えば、胃酸)が患者の胃から、例示的な弁を通過し、弁16及びステント10の近位側の患者の食道に移動するのを防ぐ表面テクスチャを弁16の一部分に沿って含むことが望ましい。
【0062】
図12は、例示的な弁16を含む例示的なステント10を示す。更に、
図12は、弁16の下向き部分28に沿って配置された表面テクスチャ38を示す。表面テクスチャ38は、胃から移動する物質が接触し得る弁16の最初の部分であるように配置される。更に、表面テクスチャ38は、胃の上方から移動する物質の流れを変えるように構成された要素及び/又は形状を含む。例えば、表面テクスチャ38は、点、先端、凹み、空洞、穴、フック、突起等、又はこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。表面テクスチャ38は、胃酸等が、弁12の下向き部分28の表面に沿って近位側に移動するのを防ぐように構成されていてもよい。更に、一部の例では、表面テクスチャ38は、弁16及び/又はステント10の他の部分に位置していてもよい。例えば、表面テクスチャ38は、丸みのある部分29及び/又はテーパ状部分27に配置されていてもよい。場合によっては、表面テクスチャは、テクスチャを施したシリコーンを含んでもよい。
【0063】
更に、場合によっては、ステント10(例示的な弁16を含む)の1つ以上の部分にコーティングを含むことが望ましい。コーティングは、弁16内の物質の通過を補助するように構成されていてもよい。例えば、コーティングは、弁16の1つ以上の部分の表面摩擦を低減してもよい。即ち、コーティングは、物質に接する弁16の表面をより滑りやすくしてもよい。コーティングはシリコーンを含んでもよい。
【0064】
他の例では、表面テクスチャ(上述の)又は表面コーティング(上述の)のいずれかは、親水性要素(例えば、親水性表面テクスチャ)を含んでもよく、マイクロビーズ(例えば、マイクロビーズ表面テクスチャ)を含んでもよい。一部の例では、マイクロビーズには酸中和剤が充填されていてもよい。
【0065】
上記のように、内層20は弁16を画定する。更に、内層20は弁16の1つ以上の部分の壁厚を画定する。上述のように、内層20によって画定される壁厚は、ステント10(弁16を画定する内層20の部分を含む)に沿って実質的に均一なままであってもよい。しかしながら、場合によっては、内層20の厚さはステント10に沿って変化してもよい。例えば、弁16を画定する壁厚の1つの部分は、弁16を画定する壁厚の別の部分と異なってもよい。
【0066】
図13は、「X」として示される壁厚を含む弁16の第1部分を示す。更に、
図13は、「W」として示される壁厚を含む弁16の第2部分を示す。場合によっては、壁厚「W」は壁厚「X」よりも厚い。加えて、弁16の下向き部分28に沿って弁16のより厚い部分を含むことが望ましい場合がある。しかしながら、これは限定を意図するものではない。したがって、弁16の下向き部分28に沿う弁のより厚い部分を下に引く重力は弁16を閉鎖する傾向にある。一部の例では、弁16の任意の部分は、別の部分より厚い(又は別の部分とは異なる)壁厚を含んでもよい。
【0067】
一部の例では、ステント16は移動防止要素を含んでもよい。移動防止要素は、開口、フレア、フィン、微細パターン、制御された内殖特徴部(ingrowth feature)、クイル等を含んでもよい。移動防止特徴部は、体管腔内に留置中及び/又は留置後のステント16の移動量の制御において有利である。
【0068】
いくつかの例において、ステント10の1つ以上の部分は、ステント支柱間の開口又は間隙への細胞の内殖を可能にするように構成された開口を含んでもよい。細胞の内殖によってステントの移動を防止してもよい。
図14は、外層22に開口40を含むステント10を示す。開口40は、その中に組織の内殖を可能にするように構成されている。
図14は、外層22を貫通する4つの例示的な開口40を示す。ステント10は、外層22の開口に一致する開口を内層20に含んでもよい。しかしながら、4つより多い又は少ない開口が外層22及び/又は内層20に含まれてもよい。加えて、開口40は外層22内に延びて、ステント10の壁及び内層20の開口又は間隙と一列に並んでもよい。
【0069】
一部の例では、内層20及び/又は外層22は、噴霧する、浸漬させる、スピンさせる、又はステント10の内部表面及び/若しくは外部表面にポリマー材料を付着させることによって適用されてもよい。一部の例では、被覆材はステントフィラメント14を被覆してもよい。更に、上述のように、内層20及び/又は外層22は、隣接するステントフィラメント14間に延びる1つ以上の開口、セル、又は間隙間に延びてもよい。
【0070】
図15は、ステント10内に内層20を作製するための例示的な方法を示す。
図15に示すように、ステント10のルーメンにマンドレル42が挿入される。マンドレル42は様々な形状及び/又は構成であってもよい。例えば、マンドレル42は略円筒状部材であってもよく、ステント10のフレア状端部領域を形成するように構成された第1及び/又は第2のフレア状端部領域を含んでもよい。更に、マンドレル42の形状は内層20の形状を画定してもよい。例えば、
図15は、ステント10と、ステント10のルーメン内に延びるマンドレル42とにスプレー50を適用する噴霧要素44を示す。スプレー50はステント部材10のセルを通過し、ステント10及び/又はマンドレル42の内部表面上に材料層を形成する。ステント10及び/又はマンドレル42の内部表面に適用される材料層は、上記の例で記載した内層20に相当する。更に、
図15に示すように、ステント10とマンドレル42を共に回転させる間、噴霧要素44はステント10の全長にわたり並進し、適宜、内層20に相当する材料を堆積させる。
【0071】
加えて、
図15は、1つ以上の凹部54を含むマンドレル42を示す。凹部54は、マンドレル42の周りに全体的に延びる。凹部54は、ステント部材10の内部表面から半径方向内側に延びる内層20の1つ以上の部分の形成を容易にする。したがって、弁16を形成している内層20の形状/輪郭は、凹部54の表面プロファイルによって決定される。
図15は、場合によっては、マンドレル42の外部表面はステント10の内部表面と実質的に「面一」に配置される及び/又は揃えられることを示す。ステント10の内部表面と実質的に面一のマンドレル42の部分に沿って層を堆積させることで、内層20をステント部材10の内部表面に付着させ、及び/又は、内層20をステント部材10の内部表面とともに一体接続部(integral interface)を形成させることができる。
【0072】
しかしながら、ステント10の内部表面と実質的に面一でないマンドレル50の部分(例えば、凹部54)に沿ってスプレー50を適用すると、スプレー50がステント10のセル開口を通過して、マンドレル42の凹部54の表面に沿って堆積されることがある。内層20が凹部54の全体にわたりステント10に接しないように、マンドレル42の凹部54は、スプレー50用の空間がステント10の内部表面を越えて半径方向内側に延びることができる。更に、
図15から、凹部54の表面に沿って適用される内層20は、弁16の半径方向内側に延びる部分を形成してもよい。
【0073】
図16は、製造用のマンドレル42(例えば、
図15に関して記載したマンドレル42)が取り外された後のステント10を示す。弁16は、マンドレル42がステント10から取り外されると変形するような、曲げることが可能な及び/又は圧縮可能な材料から形成される。換言すると、
図15に関して記載した製造方法に従って弁16を組み立てた後、マンドレル42はステント10のルーメン内を長手方向に引くことによって取り外される。弁16の可撓性によって、適宜、マンドレル42を取り外すことが可能である。
図16に示すように、内層20を含むステント10は、
図1~
図14に関して上述した全ての特徴及び/又は要素を含んでもよい。
【0074】
図17は、
図1~
図14に関して上述したステント10の外層22を作製する及び/又は形成するための例示的な方法を示す。
図17に示されるように、ステント10に第2の製造用マンドレル46が挿入される。第2のマンドレル46は環状凹部を含まなくてもよく、そのため、弁16を形成する内層20を半径方向外側に押す。一部の例では、マンドレル46は、内層20(その構造は上で
図15及び
図16に関して記載した)を半径方向外側に強制的に押し、ステント10の内部表面に沿って内層20を実質的に揃えるように構成されていてもよい。特に、マンドレル46は、弁部16(ステント10の内部表面から半径方向内側に延びる)を強制的に押し、ステント10の内部表面に付着させた内層20の部分と揃えてもよい。
【0075】
加えて、
図17は、ステント10の外部表面にスプレー52を適用する噴霧要素44を示す。ステント10の外部表面に適用される材料層は、上記例に記載した外層22に相当する。更に、
図17に示すように、ステント10とマンドレル46が共に回転する間、噴霧要素44はステント10の全長にわたり並進し、適宜、外層22に相当する材料を堆積させる。
【0076】
一部の例では、内層20の一部分は、マスキングされても、スプレー52(外層22に相当する)の適用前に処理されてもよい。例えば、弁16に相当する内層20の部分(即ち、第1の分離点30と第2の分離点32との間の周囲部分)は、ステント10に沿って外層22を堆積させている間、ステント10の内部表面及び/又は外層22に付着しないようにマスキングされても処理されてもよい(例えば、内層20の部分にタルクが適用される)。しかしながら、第1の分離点30の近位側及び第2の分離点32の遠位側における外層22の周囲部分は内層20及び/又はステント10に付着し、内層20と外層22との間に、第1の分離点30と第2の分離点32との間の長手方向距離に広がる周囲チャンバ26を形成してもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、ステント10は複数の弁を含んでもよい。例えば、
図18は、2つの弁16/48を含む例示的なステント10を示す。弁16/48は、同じ形状を有しても異なる形状を有してもよい。更に、弁16/48は、ステント部材10の任意の部分に沿って配置されてもよい。例えば、弁16/48は、
図18に示されるものより更に間隔を開けて配置されてもよい。加えて、弁16/48の1つ以上は、本明細書中に開示されるいずれの例示的なステントのいずれの特徴及び/又は要素を組み込んでもよい。
【0078】
一部の例では、酸逆流による不快感を軽減する及び/又は緩和するように意図された1つ以上の治療薬を含むことが望ましい場合がある。例えば、本明細書中に開示される例のいずれも、食道内の胃酸を中和することを目的とした酸中和剤を含むコーティングを含んでもよい。例えば、弁の下に向いた部分は、酸中和剤を含むコーティングを含んでもよい。胃から漏れる胃酸は酸中和剤と接触すると中和され得る。
【0079】
本開示は、多くの点で、単なる例示であることを理解すべきである。本開示の範囲を超えることなく、特に形状、大きさ、及び工程の配置の点において細部に変更を施してもよい。これには、適切な程度まで、他の実施形態で使用されている1つの例示的実施形態の特徴のいずれかの使用を含んでもよい。本開示の範囲は、当然、添付の特許請求の範囲が表現される言語で定義される。