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特開2022-186978電気光学ディスプレイおよび駆動方法
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  • 特開-電気光学ディスプレイおよび駆動方法 図1
  • 特開-電気光学ディスプレイおよび駆動方法 図2
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  • 特開-電気光学ディスプレイおよび駆動方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186978
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】電気光学ディスプレイおよび駆動方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1685 20190101AFI20221208BHJP
   G02F 1/167 20190101ALI20221208BHJP
   G02F 1/1681 20190101ALI20221208BHJP
   G02F 1/16757 20190101ALI20221208BHJP
   G09G 3/34 20060101ALI20221208BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G02F1/1685
G02F1/167
G02F1/1681
G02F1/16757
G09G3/34 C
G09G3/20 642J
G09G3/20 642D
G09G3/20 642E
G09G3/20 670K
G09G3/20 611D
G09G3/20 621A
G09G3/20 623C
G09G3/20 623D
G09G3/20 621B
G09G3/20 641A
G09G3/20 624A
G09G3/20 624D
G09G3/20 624E
G09G3/20 622D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022172247
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2021502409の分割
【原出願日】2019-07-16
(31)【優先権主張番号】62/699,117
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516101190
【氏名又は名称】イー インク カリフォルニア, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クレッグ リン
(57)【要約】
【課題】好適な電気光学ディスプレイおよび駆動方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも1タイプのカラー顔料粒子を有する電気泳動材料を備えているディスプレイを駆動する駆動方法であって、当該駆動方法は、少なくとも1つのパルス対を印加し、少なくとも1タイプのカラー顔料粒子をリセットすることと、分離パルスを印加することと、第2のパルス対を印加し、少なくとも1タイプのカラー顔料粒子をリセットすることとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への参照)
本願は、2018年7月17日に出願された米国仮出願第62/699,117号に関連する。
【0002】
前述される出願の開示全体は、参照によって本明細書中に援用される。
【0003】
(本発明の分野)
本明細書中で提示される主題は、電気光学ディスプレイデバイスの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
カラーディスプレイを達成するために、カラーフィルタがしばしば用いられる。最も一般的な手法は、赤色、緑色および青色を表示するために、ピクセル化されたディスプレイの黒/白サブピクセルの上にカラーフィルタを付加することである。赤色が所望されるとき、表示される色が赤のみであるように、緑および青のサブピクセルは黒状態にされる。青色が所望されるとき、表示される色が青のみであるように、緑および赤のサブピクセルは黒状態にされる。緑色が所望されるとき、表示される色が緑のみであるように、赤および青のサブピクセルは、黒状態にされる。黒状態が所望されるとき、3つのサブピクセル全てが黒状態にされる。白状態が所望されるとき、3つのサブピクセルは、それぞれ、赤、緑および青にされ、結果として、白状態が閲覧者によって見られる。
【0005】
そのような技術の最大の欠点は、サブピクセルの各々が、所望される白状態の約3分の1(1/3)の反射性を有するので、白状態がかなりほの暗いことである。これを埋め合わせるために、黒状態および白状態のみを表示し得る第4のサブピクセルが追加され、それによって、赤色、緑色または青色レベルを犠牲にして、白レベルが倍増する(このとき、各サブピクセルは、ピクセルの領域の4分の1のみである)。より明るい色は、白ピクセルからの光を追加することによって達成され得るが、これは、色域を犠牲にして達成され、色を非常に薄くかつ不飽和であることを引き起こす。同様の結果は、3つのサブピクセルの色飽和を低減させることによって達成され得る。これらの手法によってもなお、白レベルは、通常、白黒ディスプレイの白レベルの半分より実質的に小さいので、非常に読みやすい黒-白の明るさおよびコントラストを必要とするe-リーダまたはディスプレイ等のディスプレイデバイスのために、それを受け入れられない選択にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(概要)
本明細書中で開示される主題は、少なくとも1タイプのカラー顔料粒子を有する電気泳動材料を備えているディスプレイを駆動する駆動方法に関する。1つのそのような方法は、少なくとも1つのパルス対を印加して、少なくとも1タイプのカラー顔料粒子をリセットすることと、分離パルスを印加することと、第2のパルス対を印加して、少なくとも1タイプのカラー顔料粒子をリセットすることとを含み得る。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
少なくとも1つのタイプのカラー顔料粒子を有する電気泳動材料を備えているディスプレイを駆動する駆動方法であって、前記駆動方法は、
少なくとも1つのパルス対を印加し、前記少なくとも1つのタイプのカラー顔料粒子をリセットすることと、
分離パルスを印加することと、
第2のパルス対を印加し、前記少なくとも1つのタイプのカラー顔料粒子をリセットすることと
を含む、駆動方法。
(項目2)
前記少なくとも1つのパルス対は、正の振幅を有するパルスと、負の振幅を有するパルスとを含む、項目1に記載の駆動方法。
(項目3)
前記正の振幅を有する前記パルスと前記負の振幅を有する前記パルスとは、同一の持続時間を有する、項目2に記載の駆動方法。
(項目4)
前記分離パルスは、前記少なくとも1つのパルス対より長い持続時間を有する、項目1に記載の駆動方法。
(項目5)
前記少なくとも1つのパルス対は、前記第2のパルス対と異なる持続時間を有する、項目1に記載の駆動方法。
(項目6)
前記パルス対は、DCバランスされる、項目1に記載の駆動方法。
(項目7)
前記駆動方法は、DCバランスされる、項目1に記載の駆動方法。
(項目8)
前記分離パルスは、前記負の振幅を有する前記パルスと同一の振幅を有する、項目2に記載の駆動方法。
(項目9)
前記分離パルスは、前記正の振幅を有する前記パルスと同一の振幅を有する、項目2に記載の駆動方法。
(項目10)
前記分離パルスは、前記負の振幅を有する前記パルスと異なる振幅を有する、項目2に記載の駆動方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
(図面の簡単な説明)
以下の図を参照して、本出願の種々の側面および実施形態が説明される。図は必ずしも縮尺通りに描かれていないことが認識されるべきである。複数の図に現れる項目は、それらが現れる全ての図において、同一の参照番号で示される。
【0008】
図1図1は、本明細書中で提示される主題による電気光学ディスプレイの概略的表現を図示する。
【0009】
図2図2は、図1に図示される電気光学ディスプレイを表す等価回路を図示する。
【0010】
図3図3は、本明細書中で提示される主題による電気光学ディスプレイの断面図を図示する。
【0011】
図4図4は、本明細書中で提示される主題による電気光学ディスプレイを駆動する駆動方法の一実施形態を図示する。
【0012】
図5図5は、本明細書中で提示される主題による電気光学ディスプレイを駆動する駆動方法の別の実施形態を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(詳細な説明)
本発明は、暗モードである電気光学ディスプレイ、特に双安定電気光学ディスプレイを駆動する方法に関し、そのような方法における使用のための装置に関する。より具体的に、この発明は、低減させられた「焼き付き」およびエッジアーティファクト、ならびに、黒い背景に白いテキストを表示するときのそのようなディスプレイにおける低減させられた発光を可能とし得る駆動方法に関する。この発明は、特に、しかし排他的ではなく、粒子ベースの電気光学ディスプレイでの使用を意図しており、粒子ベースの電気光学ディスプレイでは、1つ以上のタイプの荷電粒子が流体中に存在し、それらが電場の影響下で流体を通って移動させられ、ディスプレイの様相を変化させる。
【0014】
「電気光学」という語は、本明細書中で材料またはディスプレイに適用される場合、少なくとも1つの光学特性の異なる第1および第2のディスプレイ状態を有する材料を指す、画像技術におけるその従来の意味で用いられ、材料は、材料への電場の印加によってその第1のディスプレイ状態からその第2のディスプレイ状態へと変化させられる。光学特性は、典型的には、人間の目に知覚可能な色であるが、光学特性は、光透過性、反射性、発光、または、マシンリーディング向けのディスプレイの場合、可視範囲外の電磁波長の反射性の変化の意味での偽色等の、別の光学特性であり得る。
【0015】
「グレー状態」という語は、本明細書中で、ピクセルの2つの極限光学状態の中間の状態を指す、画像化技術におけるその従来の意味で用いられ、これら2つの極限状態間での黒-白遷移を必ずしも示さない。例えば、上記で参照されるE Inkの特許および公開された出願のいくつかは、極限状態が白および深い青であることにより、中間の「グレー状態」が実際は淡い青であり得る電気泳動ディスプレイを説明する。実際、既に述べられたように、光学状態の変化は、色の変化でないことがある。「黒」および「白」という語は、本明細書中でこれ以降、ディスプレイの2つの極限光学状態を指すために用いられ得、厳密には黒および白でない極限光学状態、例えば前述された白い状態および暗い青の状態を通常含むものとして理解されるべきである。「モノクローム」という語は、本明細書中でこれ以降、介在するグレー状態のないそれらの2つの極限光学状態にピクセルを駆動する駆動スキームを表すためのみに用いられ得る。
【0016】
以下の議論の多くは、初期グレーレベル(または「グレートーン」)から最終グレーレベル(最終グレーレベルは、初期グレーレベルとは異なることも、異ならないこともある)への遷移を通して電気光学ディスプレイの1つ以上のピクセルを駆動する方法に焦点を当てる。「グレー状態」、「グレーレベル」および「グレートーン」という語は、本明細書中で交換可能に用いられ、極限光学状態および中間グレー状態を含む。現在のシステムにおいてあり得るグレーレベルの数は、典型的には、2-16であり、それは、ディスプレイドライバのフレームレートおよび温度敏感性によって課される駆動パルスの離散性等の限定に起因する。例えば、16のグレーレベルを有する白黒ディスプレイでは通常、グレーレベル1は黒であり、グレーレベル16は白である。しかし、黒のグレーレベルおよび白のグレーレベルの指定は、逆であり得る。本明細書中で、グレートーン1は、黒を指定するために用いられる。グレートーン2は、グレートーンがグレートーン16(すなわち白)に向かって進行するより薄い色合いの黒である。
【0017】
「双安定」および「双安定性」という用語は、業界におけるそれらの従来的な意味で本明細書中において用いられ、少なくとも1つの光学特性において異なる第1および第2のディスプレイ状態を有するディスプレイ要素を備えているディスプレイを指し、少なくとも1つの光学特性において異なることによって、有限の持続時間のアドレスパルスによって任意の所与の要素が駆動された後に、その第1または第2のディスプレイ状態のいずれかをとり、アドレスパルスが終了した後に、その状態は、ディスプレイ要素の状態を変化させるために要求されるアドレスパルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば少なくとも4倍の間持続する。グレースケールを可能とするいくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイは、それらの極端な黒色状態および白色状態だけでなく、それらの中間のグレー状態でも安定することが、米国特許第7,170,670号に示されており、いくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイに同一のことが当てはまる。このタイプのディスプレイは、適切には、双安定よりむしろ「複数安定」と呼ばれるが、便宜上、「双安定」という用語が、双安定ディスプレイおよび複数安定ディスプレイの両方をカバーするように本明細書中で用いられ得る。
【0018】
「インパルス」という語は、本明細書中で、時間についての電圧の積分というその従来の意味で用いられる。しかし、いくつかの双安定電気光学媒質は、電荷変換器としての機能を果たし、そのような媒質では、インパルスの代替の定義、すなわち(印加される電荷合計と等しい)時間にわたる電流の積分が用いられ得る。インパルスの適切な定義は、媒質が電圧―時間インパルス変換器としての機能を果たすか、または電荷インパルス変換器としての機能を果たすかに依存して用いられるべきである。
【0019】
「波形」という語は、ある特定の初期グレーレベルから特定の最終グレーレベルへの遷移をもたらすために用いられる時間対全体電圧曲線を表すために用いられる。典型的に、そのような波形は、複数の波形要素を備え、これらの要素は基本的には長方形である(すなわち、所与の要素は、ある期間の間、一定電圧の印加を備えている)。要素は、「パルス」または「駆動パルス」と呼ばれ得る。「駆動スキーム」という語は、特定のディスプレイのグレーレベル間の全てのあり得る遷移をもたらすために十分な波形の組を表す。ディスプレイは、2つ以上の駆動スキームを活用し得る。例えば、前述される米国特許第7,012,600号は、駆動スキームが、ディスプレイの温度、またはその寿命中に動作してきた時間等のパラメータに依存して修正される必要があり得、従って、ディスプレイは、異なる温度等で用いられるべき複数の異なる駆動スキームを提供され得ることを教示する。この態様で用いられる駆動スキームの組は、「関連する駆動スキームの組」と称され得る。前述されるMEDEOD出願のいくつかで説明されるように、同一のディスプレイの異なる領域において2つ以上の駆動スキームを同時に用いることも可能であり、この態様で用いられる駆動スキームの組は、「同時駆動スキームの組」と称され得る。
【0020】
いくつかのタイプの電気光学ディスプレイが公知である。1タイプの電気光学ディスプレイは、例えば米国特許第5,808,783号、第5,777,782号、第5,760,761号、第6,054,071号、第6,055,091号、第6,097,531号、第6,128,124号、第6,137,467号および第6,147,791号で説明されるような、回転式2色部材タイプである(このディスプレイのタイプはしばしば、「回転する2色ボール」ディスプレイと称されるが、上記で述べられる特許のいくつかにおいては、回転する部材は球状ではないので、「回転式2色部材」という語がより正確なものとして好ましい)。そのようなディスプレイは、光学特性を異にする2またはそれより多いセクションおよび内部の双極子を有する数多くの(典型的には球状または柱状の)小さなボディを用いる。これらのボディは、マトリクス内の液体で満たされた液胞内に浮遊させられ、液胞は、ボディが自由に回転するように液体で満たされている。ディスプレイの様相は、液体に電場を印加し、それによってボディを種々の位置へ回転させ、どのボディのセクションが閲覧面を通して見られるかを変化させることにより変化させられる。このタイプの電気光学媒質は典型的に双安定である。
【0021】
別の電気光学ディスプレイのタイプは、エレクトロクロミック媒質、例えば、少なくとも部分的に半導体金属酸化物から形成される電極と、電極へ取り付けられ裏表の色変化を可能とする複数の染料モジュールとを備えているナノクロミックフィルムの形式のエレクトロクロミック媒質を用いる。例えば、O’Regan, B., et al., Nature, 1991年,353,737、および、Wood,D., Information Display, 2002年3月, 18(3),24を参照されたい。また、Bach, U., Adv.Mater, 2002年, 14(11), 845も参照されたい。このタイプのナノクロミックフィルムは、例えば、米国特許第6,301,038号、第6,870,657号および第6,950,220号でも説明される。このタイプの媒質は、典型的に双安定でもある。
【0022】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、Philipsにより開発され、Hayes,R.A.,et al.,「Video-Speed Electronic Paper Based on Electrowetting」, Nature, 2003年, 425, 383-385で説明されるエレクトロウェッティングディスプレイである。そのようなエレクトロウェッティングディスプレイは、双安定で作製され得ることが米国特許第7,420,549号において示される。
【0023】
長年にわたる熱心な研究および開発の主題であった1タイプの電気光学ディスプレイは、粒子ベースの電気泳動ディスプレイであり、このディスプレイでは、複数の荷電粒子が電場の影響下で流体を通って移動する。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較すると、良い明るさおよびコントラスト、幅広い閲覧角度、状態双安定性、および、低い電力消費という属性を有し得る。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期的な画像の質についての問題がそれらの広範な使用を妨げてきた。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は沈殿する傾向にあり、この傾向は、これらのディスプレイのための不十分な耐用年数となる。
【0024】
上記で指摘されたように、電気泳動媒質は流体の存在を要求する。ほとんどの先行技術の電気泳動媒質において、この流体は液体であるが、電気泳動媒質は気体の流体を用いて生み出され得る。例えばKitamura,T., et al., “Electrical toner movement for electronic paper-like display”, IDW Japan,2001年,Paper HCS1-1、および、Yamaguchi,Y., et al., “Toner display using insulative particles charged triboelectrically”, IDW Japan,2001年,Paper AMD4-4を参照されたい)。米国特許第7321459号および第7236291号も参照されたい。媒質が、粒子の沈殿を許容する向き、例えば媒質が垂直面に配置される標識において用いられるとき、そのような気体ベースの電気泳動媒質は、粒子の沈殿に起因する液体ベースの電気泳動媒質と同一のタイプの問題に影響されやすいと思われる。実際は、液体の粘性と比較して流体を浮遊させる気体のより低い粘性は、電気泳動粒子のより速い沈殿を可能とするため、粒子の沈殿は、液体ベースの電気泳動媒質より気体ベースの電気泳動媒質においてより深刻な問題であるように思われる。
【0025】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationへ譲渡されまたはその名における非常に多くの特許および出願は、カプセル化された電気泳動媒質および他の電気光学媒質において用いられる種々のテクノロジを説明する。そのようなカプセル化された媒質は、非常に多くの小さなカプセルを備え、各カプセル自体は、流体媒質内の電気泳動可動粒子を含む内相と、内相を囲むカプセル壁とを備えている。典型的には、2つの電極間に位置付けられる干渉性の層を形成するために、ポリマバインダ内にカプセル自体が保持される。これらの特許および出願において説明されるテクノロジは、
(a)電気泳動粒子、流体および流体添加剤(例えば、米国特許第7,002,728号および第7,679,814号参照)と、
(b)カプセル、バインダおよびカプセル化プロセス(例えば、米国特許第6,922,276号および第7,411,719号参照)と、
(c)電気光学材料を含むフィルムおよびサブアセンブリ(例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号参照)と、
(d)バックプレーン、接着剤層および他の補助層、ならびにディスプレイにおいて用いられる方法(例えば、米国特許第7,116,318号および第7,535,624号参照)と、
(e)色形成および色調節(例えば、米国特許第7,075,502号および米国特許出願公報第2007/0109219号参照)と、
(f)ディスプレイを駆動する方法(例えば、米国特許第5,930,026号、第6,445,489号、第6,504,524号、第6,512,354号、第6,531,997号、第6,753,999号、第6,825,970号、第6,900,851号、第6,995,550号、第7,012,600号、第7,023,420号、第7,034,783号、第7,061,166号、第7,061,662号、第7,116,466号、第7,119,772号、第7,177,066号、第7,193,625号、第7,202,847号、第7,242,514号、第7,259,744号、第7,304,787号、第7,312,794号、第7,327,511号、第7,408,699号、第7,453,445号、第7,492,339号、第7,528,822号、第7,545,358号、第7,583,251号、第7,602,374号、第7,612,760号、第7,679,599号、第7,679,813号、第7,683,606号、第7,688,297号、第7,729,039号、第7,733,311号、第7,733,335号、第7,787,169号、第7,859,742号、第7,952,557号、第7,956,841号、第7,982,479号、第7,999,787号、第8,077,141号、第8,125,501号、第8,139,050号、第8,174,490号、第8,243,013号、第8,274,472号、第8,289,250号、第8,300,006号、第8,305,341号、第8,314,784号、第8,373,649号、第8,384,658号、第8,456,414号、第8,462,102号、第8,537,105号、第8,558,783号、第8,558,785号、第8,558,786号、第8,558,855号、第8,576,164号、第8,576,259号、第8,593,396号、第8,605,032号、第8,643,595号、第8,665,206号、第8,681,191号、第8,730,153号、第8,810,525号、第8,928,562号、第8,928,641号、第8,976,444号、第9,013,394号、第9,019,197号、第9,019,198号、第9,019,318号、第9,082,352号、第9,171,508号、第9,218,773号、第9,224,338号、第9,224,342号、第9,224,344号、第9,230,492号、第9,251,736号、第9,262,973号、第9,269,311号、第9,299,294号、第9,373,289号、第9,390,066号、第9,390,661号、および第9,412,314号、ならびに、米国特許出願公報第2003/0102858号、第2004/0246562号、第2005/0253777号、第2007/0070032号、第2007/0076289号、第2007/0091418号、第2007/0103427号、第2007/0176912号、第2007/0296452号、第2008/0024429号、第2008/0024482号、第2008/0136774号、第2008/0169821号、第2008/0218471号、第2008/0291129号、第2008/0303780号、第2009/0174651号、第2009/0195568号、第2009/0322721号、第2010/0194733号、第2010/0194789号、第2010/0220121号、第2010/0265561号、第2010/0283804号、第2011/0063314号、第2011/0175875号、第2011/0193840号、第2011/0193841号、第2011/0199671号、第2011/0221740号、第2012/0001957号、第2012/0098740号、第2013/0063333号、第2013/0194250号、第2013/0249782号、第2013/0321278号、第2014/0009817号、第2014/0085355号、第2014/0204012号、第2014/0218277号、第2014/0240210号、第2014/0240373号、第2014/0253425号、第2014/0292830号、第2014/0293398号、第2014/0333685号、第2014/0340734号、第2015/0070744号、第2015/0097877号、第2015/0109283号、第2015/0213749号、第2015/0213765号、第2015/0221257号、第2015/0262255号、第2016/0071465号、第2016/0078820号、第2016/0093253号、第2016/0140910号、および第2016/0180777号参照)と、
(g)ディスプレイの用途(例えば、米国特許第7,312,784号および米国特許出願公報第2006/0279527号参照)と、
(h)米国特許第6,241,921号、第6,950,220号、および第7,420,549号、ならびに、米国特許出願公報第2009/0046082号で説明されるような非電気光学ディスプレイとを含む。
【0026】
上述される特許および出願の多くは、カプセル化された電気泳動媒質内の個別のマイクロカプセルを囲む壁が、連続相によって取り替えられ得、従っていわゆるポリマ分散型電気泳動ディスプレイを生産し、電気泳動媒質は、複数の電気泳動流体の複数の個別の液滴と、ポリマ材料の連続相とを備えていること、および、いずれの個別のカプセル膜も各々の個々の液滴に関連付けられないとしても、そのようなポリマ分散型電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の個別の液滴は、カプセルまたはマイクロカプセルとみなされ得ることを認めている(例えば、上述される米国特許第6,866,760号参照)。よって、本出願の目的のために、そのようなポリマ分散型電気泳動媒質は、カプセル化された電気泳動媒質の亜種とみなされる。
【0027】
関連するタイプの電気泳動ディスプレイは、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」である。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されないが、その代わりに、キャリア媒質、典型的にはポリマフィルム内に形成される複数の空洞内に保有される。例えば、共にSipix Imaging,Incへ譲渡された米国特許第6,672,921号および第6,788,449号を参照されたい。
【0028】
電気泳動媒質はしばしば(例えば多くの電気泳動媒質においては、粒子がディスプレイを通して可視光の透過を実質的に遮蔽するので、)不透明であり、反射モードで動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、1つのディスプレイ状態が実質的に不透明であり1つのディスプレイ状態が透光性であるいわゆる「シャッターモード」で動作するように作製され得る。例えば、米国特許第5,872,552号、第6,130,774号、第6,144,361号、第6,172,798号、第6,271,823号、第6,225,971号および第6,184,856号を参照されたい。電気泳動ディスプレイと同様であるが電場の強さの変化に依存する誘電泳動ディスプレイは、同様のモードで動作し得る。米国特許第4,418,346号を参照されたい。他の電気光学ディスプレイのタイプもまた、シャッターモードで動作することが可能である。シャッターモードで動作する電気光学媒質は、フルカラーディスプレイのための多層構造において役立ち得る。そのような構造において、ディスプレイの閲覧面に隣接する少なくとも1つの層は、閲覧面からより遠い第2の層を曝露しまたは隠蔽するようにシャッターモードで動作する。
【0029】
カプセル化された電気泳動ディスプレイは、典型的には、伝統的な電気泳動デバイスのクラスタリングおよび沈殿破壊モードを被らず、多種多様な可撓性かつ硬い基板上にディスプレイを印刷または被覆する能力等のさらなる利点を提供する。(「印刷する(printing)」という語の使用は、パッチダイコーティング、スロットまたは押出コーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング等の前計量コーティング、ナイフオーバーロールコーティング、正逆方向ロールコーティング等のロールコーティング、グラビアコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、メニスカスコーティング、スピンコーティング、ブラシコーティング、エアナイフコーティング、シルクスクリーン印刷加工、静電印刷加工、熱印刷加工、インクジェット印刷加工、電気泳動堆積(米国特許第7,339,715号を参照されたい)、および他の同様の技術を含むがこれら限定されない印刷およびコーティングの全ての形式を含むように意図される。)従って、結果的にディスプレイは可撓性であり得る。さらに、ディスプレイ媒質が(各種の方法を用いて)印刷され得るので、ディスプレイ自体は安価に作製され得る。
【0030】
他のタイプの電気光学媒質も、本発明のディスプレイにおいて用いられ得る。
【0031】
粒子ベースの電気泳動ディスプレイの双安定および複数安定の振る舞いおよび同様の振る舞いを表示する他の電気光学ディスプレイ(本明細書においてこれ以降、そのようなディスプレイは便宜上「インパルス駆動型ディスプレイ」と称され得る)は、従来の液晶(「LC」)ディスプレイの振る舞いと顕著に対照的である。ねじれネマチック液晶は双安定または複数安定ではないが、電圧変換器として作用することによって、そのようなディスプレイのピクセルへ所与の電場を印加することは、ピクセルにおいて以前に存在したグレーレベルに関係なく、そのピクセルにおいて特定のグレーレベルを生み出す。さらに、LCディスプレイは、(非透光性のまたは「暗い」方から透光性または「明るい」方へ)一方向においてのみ駆動され、より明るい状態からより暗い状態への逆遷移は、電場を低減しまたは取り除くことによってもたらされる。最終的に、LCディスプレイのピクセルのグレーレベルは、電場の極性に対して敏感でなく、その大きさにのみ敏感であり、実際は、技術的理由のため、商業用LCディスプレイは通常、頻繁な間隔で駆動する電場の極性を逆にする。対照的に、双安定電気光学ディスプレイは、第1次近似へのインパルス変換器として作用し、これによってピクセルの最終状態は、印加される電場およびこの電場が印加される時間だけでなく、電場の印加より前のピクセル状態にも依存する。
【0032】
用いられる電気光学媒質が双安定か否かにかかわらず、高解像度ディスプレイを得るためには、ディスプレイの個々のピクセルは、隣接するピクセルからの干渉を受けずにアドレス指定可能でなければならない。この目的を達成する1つの方法は、トランジスタまたはダイオードなどの非線形要素のアレイに各ピクセルと関連付けられる少なくとも1つの非線形要素を設けて、「アクティブマトリクス」ディスプレイを生み出すことである。1つのピクセルをアドレス指定するアドレス電極またはピクセル電極は、関連付けられた非線形要素を通して適切な電圧源へ接続される。典型的には、非線形要素がトランジスタであるとき、ピクセル電極はトランジスタのドレインへ接続される。配置は本質的には任意であり、ピクセル電極はトランジスタのソースへ接続され得るが、以下の説明においてはこの配置が想定される。従来的には、高解像度アレイにおいて、ピクセルは行および列の2次元アレイ中に配列され、これにより、任意の特定のピクセルは、1つの特定の行および1つの特定の列の交差によって一意に画定される。各列内の全てのトランジスタのソースは、単一の列電極へ接続され、各行内の全てのトランジスタのゲートは、単一の行電極へ接続される。また、行へのソースおよび列へのゲートの配置は、従来的であるが本質的に任意であり、所望に逆にされ得る。行電極は行ドライバに接続され、これにより、任意の所与の瞬間に1つの行のみが選択されることを本質的に確実にする。つまり、選択された行内の全てのトランジスタが導電性であることを確実にするように、電圧が選択された行電極へ印加される一方で、他の全ての行における全てのトランジスタが非導電性のままであるように、電圧がこれらの選択されなかった行へ印加される。列電極は列ドライバへ接続され、列ドライバは、選択された行におけるピクセルをそれらの所望の光学状態へ駆動するために選択される種々の列電極電圧上に位置付けられる。(前述された電圧は、従来的には非線形アレイから電気光学媒質の反対側面上に提供され、かつ、ディスプレイ全体にわたって延在する共通の前面電極に関連する。)「ラインアドレス時間」として知られる予め選択された間隔の後、選択された行が選択解除され、次の行が選択され、列ドライバの電圧は、ディスプレイの次のラインが記されるように充電される。この処理は、ディスプレイ全体が行ごとに記されるように繰り返される。
【0033】
以下で提示される種々の実施形態は、本明細書中で提示される主題による動作原理を図示するためにマイクロセルを有する電気泳動材料を用いるが、同一の原理は、マイクロカプセル型粒子(例えば顔料粒子)を有する電気泳動材料のために容易に適応させられ得ることが認識されるはずである。マイクロセルを有する電気泳動材料は、本明細書中で図示のために用いられ、限定としての役割を果たすためではない。
【0034】
図1は、本明細書中で提示される主題による電気光学ディスプレイのディスプレイピクセル100の概略的モデルを図示する。ピクセル100は、画像フィルム110を含み得る。いくつかの実施形態では、画像フィルム110は、電気泳動材料の層であり、双安定性質であり得る。この電気泳動材料は、複数の荷電カラー顔料粒子(例えば、黒、白、または赤)を含み、複数の荷電カラー顔料粒子は、流体中に配置され、電場の影響下で流体を通って移動することが可能であり得る。いくつかの実施形態では、画像フィルム110は、荷電顔料粒子を有するマイクロセルを有する電気泳動フィルムであり得る。いくつかの他の実施形態では、画像フィルム110は、カプセル化された電気泳動画像フィルムを含み得るが、これに限定されず、カプセル化された電気泳動画像フィルムは、例えば、荷電顔料粒子を含み得る。以下で提示される駆動方法は、いずれかのタイプの電気泳動材料(例えば、カプセル化されたもの、またはマイクロセルを有するフィルム)のために容易に適応され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、画像フィルム110は、前面電極102と、背面電極またはピクセル電極104との間に配置され得る。前面電極102は、画像フィルムとディスプレイの前面との間に形成され得る。いくつかの実施形態では、前面電極102は、透明で光透過性であり得る。いくつかの実施形態では、前面電極102は、酸化インジウム錫(ITO)を含むがこれに限定されない任意の適切な透明材料で形成され得る。背面電極104は、前面電極102と画像フィルム110の反対側に形成され得る。いくつかの実施形態では、寄生容量(示されず)が、前面電極102と背面電極104との間に形成され得る。
【0036】
ピクセル100は、複数のピクセルのうちの1つであり得る。複数のピクセルは、行および列の2次元配列で配列されてマトリクスを形成し得、それによって、どの特定のピクセルも、1つの特定の行および1つの特定の列の交差によって固有に画定される。いくつかの実施形態では、ピクセルのマトリクスは、「アクティブマトリクス」であり得、各ピクセルは、少なくとも1つの非線形回路素子120に関連付けられる。非線形回路素子120は、バックプレーン電極104とアドレス電極108との間に結合され得る。いくつかの実施形態では、非線形素子120は、MOSFETまたは薄膜トランジスタ(TFT)を含むがこれに限定されないダイオードおよび/またはトランジスタであり得る。MOSFETまたはTFTのドレイン(またはソース)は、バックプレートまたはピクセル電極104に結合され得、MOSFETまたはTFTのソース(またはドレイン)は、アドレス電極108に結合され得、MOSFETまたはTFTのゲートは、MOSFETまたはTFTの作動および休止を制御するように構成されたドライバ電極106に結合され得る。(単純化のために、バックプレート電極104に結合されたMOSFETまたはTFTの端子は、MOSFETまたはTFTのドレインと称され、アドレス電極108に結合されたMOSFETまたはTFTの端子は、MOSFETまたはTFTのソースと称される。しかし、当業者は、いくつかの実施形態において、MOSFETまたはTFTのソースとドレインとが、交替させられ得ることを認識するであろう)。
【0037】
アクティブマトリクスのいくつかの実施形態では、各列内の全てのピクセルのアドレス電極108は、同一の列電極に接続され得、各行内の全てのピクセルのドライバ電極106は、同一の行電極に接続され得る。行電極は、行ドライバに接続され得、行ドライバは、選択された行(単数または複数)内の全てのピクセル100の非線形素子120を作動させるために十分な電圧を選択された行電極に印加することによって、ピクセルの1つ以上の行を選択し得る。列電極は、列ドライバに接続され得、列ドライバは、ピクセルを所望の光学状態に駆動するために適した電圧を選択された(作動させられた)ピクセルのアドレス電極106に与え得る。アドレス電極108に印加された電圧は、ピクセルの前面板電極102に印加された電圧(およそ0ボルトの電圧)に対応し得る。いくつかの実施形態では、アクティブマトリクス内の全てのピクセルの前面板電極102は、共通の電極に結合され得る。
【0038】
使用中、アクティブマトリクスのピクセル100は、行ごとに書き込まれ得る。例えば、ピクセルの行は、行ドライバによって選択され得、ピクセルの行に関する所望の光学状態に対応する電圧が、列ドライバによってピクセルに印加され得る。「ラインアドレス時間」として知られる予め選択された間隔の後、選択された行が選択解除され得、別の行が選択され得、列ドライバにおける電圧が、ディスプレイの別のラインが書き込まれるように変更され得る。
【0039】
図2は、本明細書中で提示される主題による前面電極102と背面電極104との間に配置された電気光学画像層110の回路モデルを示す。抵抗202およびコンデンサ204は、任意の接着剤層を含む電気光学画像層110、前面電極102および背面電極104の抵抗および静電容量を表し得る。抵抗212およびコンデンサ214は、積層接着剤層の抵抗および静電容量を表し得る。コンデンサ216は、前面電極102と背面電極104との間、例えば、画像層と複層接着剤層との間の界面、および/または複層接着剤層と背面板電極との間の界面等の層間の界面接触領域に生じ得る静電容量を表し得る。ピクセルの画像フィルム110を横断する電圧Vは、ピクセルの残留電圧を含み得る。
【0040】
図1に示される画像層110と同様の例示的画像フィルム310(例えば、電気泳動フィルム)の断面図が、図3に図示される。画像フィルム310は、電気泳動流体を囲うマイクロセルを含み得る。本明細書中で提示される主題の概略的な動作原理を図示するために、本明細書中でマイクロセルを有する電気泳動材料が用いられ、同一の原理が、カプセルを有する電気泳動フィルムのために動作し得ることが認識されるはずである。図示されるように、画像フィルム310は、誘電性溶媒または溶媒混合物内に分散させられた3タイプの顔料粒子を含み得る。図示の容易さのために、3タイプの顔料粒子は、白粒子311、黒粒子312およびカラー粒子313と称され得、カラー粒子は、白でも黒でもない。
【0041】
しかし、本明細書中で提示される主題の範囲は、3タイプの顔料粒子が視覚的に識別可能な色を有する限り、任意の色の顔料粒子を幅広く含むことが認識されるべきである。従って、3タイプの顔料粒子は、第1タイプの顔料粒子、第2タイプの顔料粒子および第3タイプの顔料粒子とも称され得る。
【0042】
3粒子システムは、本明細書中で図示される主題の概略的原理に用いられるが、同一の原理は、異なる数の粒子(例えば、4粒子、5粒子、6粒子等)を有するシステムのために容易に適用され得る。
【0043】
白粒子に関して、それらは、TiO、ZrO、ZnO、Al、Sb、BaSO、PbSO等の無機顔料から形成され得る。黒顔料に関して、それらは、Cl pigment black26もしくは28等(例えば、マンガンフェライトブラックスピネル、または銅クロムブラックスピネル)、または、カーボンブラックから形成され得る。
【0044】
第3タイプの粒子は、赤、緑、青、マゼンタ、シアンまたは黄色等の色であり得る。このタイプの粒子の顔料は、CI pigment PR254、PR122、PR149、PG36、PG58、PG7、PB28、PB15:3、PY138、PY150、PY155またはPY20を含み得るが、これらに限定されない。それらは、色指数ハンドブック「New Pigment Application Technology」(CMC Publishing Co,Ltd,1986)および「Printing Ink Technology」(CMC Publishing Co, Ltd,1984)で説明される一般的に用いられる有機物顔料である。特定の例は、Clariant Hostaperm Red D3G 70-EDS、Hostaperm Pink E-EDS、PV fast red D3G、Hostaperm red D3G 70、Hostaperm Blue B2G-EDS、Hostaperm Yellow H4G-EDS、Hostaperm Green GNX、BASF Irgazine red L 3630、Cinquasia Red L 4100 HD、およびIrgazin Red L 3660 HD、Sun Chemical phthalocyanine blue、phthalocyanine green、diarylide yellow、またはdiarylide AAOT yellowを含む。
【0045】
色に加えて、第1、第2および第3タイプの粒子は、光透過性、反射性、発光、または、マシンリーディング向けのディスプレイの場合、可視範囲外の電磁波長の反射性の変化の意味での偽色等の他の異なる光学特性を有し得る。
【0046】
3タイプの顔料粒子が分散させられる溶媒は、透明かつ無色であり得る。溶媒は、好ましくは低粘性を有し、高い粒子移動性のために、約2から約30の範囲の誘電率、好ましくは約2から約15の範囲の誘電率を有する。好適な誘電性溶媒の例は、アイソパー、デカヒドロナフタレン(DECALIN)、5-エチリデン-2-ノルボルネン、脂肪油、パラフィン油、シリコン流体、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン、フェニルキシリルエタン、ドデシルベンゼンまたはアルキルナフタレン等)、ハロゲン化溶媒(ペルフルオロデカリン、ペルフルオロトルエン、ペルフルオロオキシレン、ジクロロベンゾトリフルオリド、3,4,5-トリクロロベンゾトリフルオリド、クロロペンタフルオロ-ベンゼン、ジクロロノナンまたはペンタクロロベンゼン等)、およびペルフルオロ化溶媒(ミネソタ州St.Paulの3M CompanyのFC-43、FC-70またはFC-5060等)、低分子量ハロゲンを含むポリマ(オレゴン州PortlandのTCI Americaのポリ(ペルフルオロプロピレン酸化物)等)、ポリ(クロロトリフルオロ-エチレン)(ニュージャージー州River EdgeのHalocarbon Product Corp.のHalocarbon Oil等)、ペルフルオロポリアルキルエーテル(AusimontのGalden、または、デラウェア州のDuPontのKrytox Oil and Grease K-Fluid Series、およびDow-corningのポリジメチルシロキサンベースのシリコーンオイル(DC-200)等)等の炭化水素を含む。
【0047】
本発明のディスプレイ流体を活用するディスプレイ層は、2つの表面を有し、第1の表面316は、視認側にあり、第2の表面317は、第1の表面316の反対側にある。従って、第2の表面は、非閲覧側にある。「閲覧側」という語は、画像が閲覧される側を指す。
【0048】
ディスプレイ流体は、2表面間に挟まれる。第1の表面316の側には、透明な電極層(例えば、ITO)でありディスプレイ層の頂部全体にわたって広がる共通電極314が存在する。第2の表面317の側には、複数のピクセル電極315aを備えている電極層315が存在する。
【0049】
ディスプレイ流体は、ディスプレイセル内に充填される。ディスプレイセルは、ピクセル電極と位置合わせさせられることも、されないこともある。「ディスプレイセル」という語は、電気泳動流体で充填されたマイクロコンテナを指す。「ディスプレイセル」の例は、米国特許第6,930,818号で説明されるコップ様マイクロセル、および米国特許第5,930,026号で説明されるマイクロカプセルを含み得る。マイクロコンテナは、任意の形状またはサイズであり得、その全てが本出願の範囲内にある。
【0050】
ピクセル電極に対応する領域は、ピクセル(またはサブピクセル)と称され得る。ピクセル電極に対応する領域の駆動は、共通電極とピクセル電極との間の電位差(または駆動電圧もしくは電場として知られるもの)を印加することによって有効化される。
【0051】
ピクセル電極は、薄膜トランジスタ(TFT)背面板を有するアクティブマトリクス駆動システムであるか、または、電極が所望の機能を果たしさえすれば、他のタイプの電極アドレッシングであり得る。
【0052】
2つの鉛直破線間の空間は、ピクセル(またはサブピクセル)を表す。簡潔さのために、駆動方法において「ピクセル」が言及されるとき、この語は「サブピクセル」も含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、3タイプの顔料粒子のうちの2つは反対の電荷極性を帯び得、第3タイプの顔料粒子は、わずかに帯電し得る。「わずかに帯電する」または「より低い電荷強度」という語は、より強く帯電した粒子の電荷レベルより約50%、好ましくは約5%から約30%小さい粒子の電荷レベルを指すように意図される。一実施形態では、電荷強度は、ゼータ電位の観点から測定され得る。一実施形態では、ゼータ電位は、Colloidal Dynamics AcoustoSizer IIM with a CSPU-100 signal processing unit,ESA flow through cell(K:127)によって決定される。試料で用いられる溶媒の密度、溶媒の誘電率、溶媒中の音の速さ、溶媒の粘性等の機器定数は、試験温度(25度)におけるこれら全ての値が、試験前に入力される。顔料試料は、(通常12より少ない炭素原子を有する炭化水素流体である)溶媒中で分散させられ、重量の5-10%の間に希釈される。試料は、電荷制御剤(Lubrizol Corporation,Berkshire Hathaway companyから利用可能なSolsperse 17000(「Solsperse」は登録商標である))も含み、電荷制御剤と粒子との重量比は1:10である。希釈された試料の質量が決定され、その後、試料は、ゼータ電位の決定のためにフロースルーセル内に入れられる。
【0054】
例えば、黒粒子が正に帯電し、白粒子が負に帯電する場合、カラー顔料粒子は、わずかに帯電し得る。つまり、この例では、黒粒子および白粒子によって帯びられた電荷レベルは、カラー粒子によって帯びられた電荷レベルより高い。
【0055】
加えて、わずかな電荷を帯びるカラー粒子は、他の2タイプのより強く帯電した粒子のいずれか1つによって帯びられた電荷極性と同一の電荷極性を有する。
【0056】
3タイプの顔料粒子のうち、1タイプのわずかに帯電した粒子は、好ましくはより大きいサイズを有し得る。
【0057】
加えて、本明細書中で提示される主題のコンテキストにおいては、高駆動電圧は、1つの極限色状態から別の極限色状態にピクセルを駆動するために十分な駆動電圧として定義され得る。第1タイプの顔料粒子および第2タイプの顔料粒子がより高く帯電した粒子である場合、高駆動電圧は、第1タイプの顔料粒子の色状態から、第2タイプの顔料粒子の色状態に、またはその逆にピクセルを駆動するために十分な駆動電圧を指す。
【0058】
実務上、白顔料粒子311は、負に帯電し得るのに対し、黒顔料粒子312は、正に帯電し、両タイプの顔料粒子は、カラー粒子313より小さくあり得る。カラー粒子313は、黒粒子と同一の電荷極性を帯び得るが、わずかに帯電している。結果として、黒粒子は、特定の駆動電圧下でカラー粒子313より速く移動する。
【0059】
実務上、3つの色状態の各々の質に影響を及ぼし得るいくつかの問題が生じ得る。問題の1つは、黒状態および白状態の着色である。例えば、カラー粒子が赤である場合、白状態は、白粒子から十分に分離されていない赤粒子から生じる赤の着色(すなわち、高いa値)を有することを被り得る。白粒子と赤粒子とは、反対の電荷極性を帯び得るが、白状態において閲覧側に示される少量の赤粒子は、閲覧者にとって好ましくない赤の着色を引き起こし得る。黒状態も、赤の着色を被る。黒粒子および赤粒子は、同一の電荷極性を帯びているが、異なるレベルの電荷強度である。より高く帯電している黒粒子は、より低く帯電している赤粒子より速く移動して、赤の着色のない良い黒状態を示すことが期待されるが、実務上、赤の着色は、回避することが難しい。
【0060】
生じ得る第2の問題は、ゴースト現象であり、ゴースト現象は、異なる色状態から同一の色状態に駆動されるピクセルによって引き起こされ得、以前の状態が異なる色であることにより、結果的な色状態はしばしば、Lにおける差(すなわち、ΔL)および/またはaにおける差(すなわち、Δa)を示す。
【0061】
一例では、2つの群のピクセルが、同時に黒状態に駆動され得る。白状態から黒状態に駆動される第1群のピクセルは、15のLを示し得、黒状態から最終黒状態に駆動されるもう一方の群のピクセルは、10のLを示し得る。この場合、最終黒状態は5のΔLを有する。
【0062】
3色システムの別の例では、3つの群のピクセルが同時に黒状態に駆動される。赤状態から黒状態に駆動される第1群のピクセルは、17のLおよび7のa値(ここで、高いa値は着色も示す)を示し得る。黒状態から最終黒状態に駆動される第2の群のピクセルは、10のLおよび1のa値を示し得る。白状態から最終黒状態に駆動される第3群のピクセルは、15のLおよび3のaを示し得る。この場合、最も激しいゴーストは、ΔLが7でありΔaが6であることから生じる。
【0063】
生じ得る別の問題は、経時的な色の劣化である。例えば、50回ほどの画像更新後、高抵抗封止材料を有する前面積層ディスプレイは、段階的な色劣化を経験し得る。この劣化は、通常永久的ではないが、それでも非常に反復性が高い。
【0064】
本明細書中で提示される主題は、上述される問題の全ての改善を提供し得る駆動方法を含む。つまり、本明細書中で提示される駆動方法は、色の純度を向上させ、経時的に発生し得る色劣化を低減させながら、着色(すなわち、黒状態および/または白状態のa値を低下させること)のみならずゴースト効果(すなわち、ΔLおよびΔaを低下させること)も低減させ/除去し得る。
【0065】
実務上、上述される望ましくない光学的欠陥(例えば、着色、ゴースト、および色劣化)を低減させ、または除去する1つの方法は、所望の色状態にピクセルを駆動する前に粒子を「リセット」または「事前調整」することである。図4および図5は、本明細書中で開示される主題によって「リセット」または「事前調整」を遂行するために用いられ得る駆動方法を図示する。
【0066】
本明細書中で用いられる「msec」という表記は、ミリ秒の略である。
【0067】
いくつかの実施形態では、粒子のリセットまたは事前調整は、振動波形を含み得、そのような振動波形は、多くのサイクルの間反対の極性を有する対の駆動パルスを繰り返すことを含み得る。例えば、図4に図示されるように、振動波形400は、20msec間の+15Vパルスと20msec間の-15Vパルスとを有するパルス対から成り得、そのようなパルス対は、80回より多く繰り返され得、この振動波形の全体の持続時間は、3200msecより長い。
【0068】
いくつかの実施形態では、振動波形中の駆動パルスの各々は、完全な黒状態から白状態に、またはその逆にディスプレイピクセルを駆動するために要求される駆動時間の半分を超えない間印加され得る。例えば、完全な黒状態から完全な白状態に、またはその逆にピクセルを駆動するために300msec要する場合、振動波形は、正のパルスと負のパルスとから成り得、各々が150msecより長くない間印加される。実務上、これらのパルスは、持続時間においてより短いことが通常好ましい。
【0069】
いくつかの他の実施形態では、振動波形は、1または複数の分離パルスを含むことが好ましいことがある。つまり、図4に図示されるように+15V/-15Vパルス対を繰り返し継続して印加する代わりに、パルス対をリセットまたは分離するために分離パルスが導入され得る。本明細書中で用いられる場合、「分離パルス」という語は、上記で説明されるパルス対とは異なる一定の電圧振幅および極性を有するパルスを指す。つまり、一定電圧パルスが、繰り返し+15V/-15Vパルス対の間に配置され得、リセットパルスまたは分離パルスの持続時間は、+15V/-15Vパルス対より長いことも、短いこともあり、意図されるディスプレイ用途に依存する。例えば、+15V/-15Vパルス対は、20msec間の+15Vパルスおよび20msec間の-15Vパルスの合計40msecの持続時間から成り得る。分離パルスは、パルス対の2倍もしくは3倍、またはそれより長い持続時間を有し得る。分離パルスの持続時間は、極限光学状態(例えば、完全な黒または完全な白)にディスプレイピクセルを駆動するために十分長くないことが好ましい。図5に示される一実施形態では、複数の+15V/-15Vパルス対を有する振動波形は、群を分離する分離パルスで8群に分割され得る。この実施形態では、振動パルス対は、+15Vパルスと-15Vパルスとから成る。
【0070】
いくつかの他の実施形態では、上で説明される信号波形は、均等に間隔を置かれたパルス対の群を有している必要はない。つまり、振動波形内の各パルス対の群は、異なる数のパルス対(例えば、上述される+15V/-15Vパルス対)を含み得る。例えば、1つの群は、20パルス対を有し得るが、別の群は、30のそのようなパルス対を有し得る。
【0071】
さらにいくつかの他の実施形態では、分離パルスは、ディスプレイ性能を最適化する目的で、異なる持続時間を有し得る。例えば、1つの分離パルスは第1の持続時間を有し得るが、同一の振動波形内の別の分離パルスは、第1の持続時間と異なる第2の持続時間を有し得る。さらに、分離パルスは、異なる電圧振幅を有し得る。例えば、第1の分離パルスは、第1の電圧振幅を有し得るが、同一の振動波形内の第2の分離パルスは、第1の振幅と異なる第2の振幅を有し得る。
【0072】
分離パルスは、図5に図示されるような異なる極性を帯び得ることがさらに認識されるべきである。図5は、負の極性(例えば、マイナス15ボルト)を有する分離パルス510を図示する。分離パルスが正の極性(例えば、プラス15ボルト)を帯び得ることが十分にあり得ることを留意される必要がある。そして、振動波形内の分離パルスは、別の分離パルスと反対の極性を帯び得ることがさらに留意される必要がある。例えば、第1の分離パルスは、プラス15ボルトの振幅および極性であり得るのに対し、同一の振動波形内の異なる分離パルスは、マイナス15ボルトの振幅および極性であり得る。同様に、分離パルスは、別の分離パルスと異なる電圧振幅を有し得る。例えば、1つの分離パルスは、プラス10ボルトの振幅であり得るのに対し、第2の分離パルスは、15ボルトの振幅であり得る。
【0073】
振動パルスの持続時間または長さは、電気泳動材料および/またはディスプレイ自体の物理的属性に依存し得ることも留意されるべきである。例えば、振動パルスの持続時間は、ディスプレイで用いられる封止材料の抵抗に依存して増加または減少し得る。
【0074】
図4および図5において振動波形が短縮され得る(すなわち、パルスの数は、いくつかの駆動方法における実際の数より少ない)ことがさらに留意される。
【0075】
振動を用いた「リセット」または「事前調整」が完了した後、3タイプの粒子は、ディスプレイ流体中の混合された状態にあるはずである。続いて、ピクセルはそれから、所望の色状態(例えば、黒、赤または白)に駆動され得る。例えば、正のパルスが、ピクセルを黒に駆動するために印加され得るか、負のパルスが、ピクセルを白に駆動するために印加され得るか、または、より小さい振幅の正のパルスに先行する負のパルスが、ピクセルを赤に駆動するために印加され得る。
【0076】
本発明の「リセット」または「事前調整」を有する方法と有しない方法とを比較すると、本発明の「リセット」または「事前調整」を有する方法は、同一のレベルの光学性能(ゴーストを含む)を達成することにおいてより短い波形時間というさらなる利点を有する。
【0077】
実務上、図4および図5に図示される振動波形は、ピクセルが所望の色状態(例えば、赤)に駆動される前、0ボルト駆動の期間が続き得る。
【0078】
図4および図5に図示されるパルス対は、DCバランスされていること、つまり、正のパルス(例えば、+15ボルトパルス)と負のパルス(例えば、-15ボルトパルス)とが、振幅において等しく、DCバランスされた全体の振動波形をもたらすことが留意されるべきである。そのため、過剰な電荷は、振動波形の印加に起因してディスプレイ媒質(例えば、電気泳動媒質)またはディスプレイ自体に導入されず、それは、ディスプレイ性能の劣化を防ぎ得る。しかし、いくつかの用途では、種々の目的(例えば、よりよい粒子分離)を達成するために、DCバランスされていないパルス対が用いられ得る。例えば、パルス対は、+15ボルトの正のパルスと-10ボルトの負のパルスとから成り得る。そして、図4および図5に提示される主題と同様、そのようなパルス対から成る振動波形は、分離パルスも含み得る。パルス対および振動波形がDCバランスされない場合、電荷放電プロセス(例えば、残留電圧放電プロセス)が、更新の終わりに印加され得る。残留電圧および電荷を放電する例示的方法は、米国特許出願第15/266,554号でより詳細に議論されており、その全体が本明細書中に援用される。
【0079】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記で説明される本発明の特定の実施形態において、多数の変更および修正がなされ得ることが当業者に明らかであろう。よって、前述の説明の全体は、例示的な意味で解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】