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特開2022-187011状態解析プログラム、装置、及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187011
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】状態解析プログラム、装置、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20221208BHJP
   G01M 7/02 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01M7/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173273
(22)【出願日】2022-10-28
(62)【分割の表示】P 2020148601の分割
【原出願日】2020-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】520011337
【氏名又は名称】メインマーク・ストラクチュアル・コンサルティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】西村 彰敏
(72)【発明者】
【氏名】川口 太
(57)【要約】
【課題】建築物の揺れの状況にかかわらず一律な解析を行う場合と比べて、より柔軟性が高い運用を実行可能な状態解析プログラム、装置、及びシステムを提供する。
【解決手段】状態解析装置としての解析サーバ12は、建築物の振動状態を示す振動データを取得する取得手段30と、取得された振動データを用いて、建築物の状態に関する1次解析を行う第1解析手段32と、1次解析の結果が所定の条件を満たす場合、振動データを用いて1次解析とは異なる2次解析を行う第2解析手段34と、を備える。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
建築物の振動状態を示す振動データを取得する取得手段、
前記取得手段により取得された前記振動データを用いて、前記建築物の状態に関する1次解析を行う第1解析手段、
前記第1解析手段による前記1次解析の結果が所定の条件を満たす場合、前記振動データを用いて前記1次解析とは異なる2次解析を行う第2解析手段、
として機能させる状態解析プログラム。
【請求項2】
前記第1解析手段は、前記2次解析と比べて、演算量、演算時間、又は項目数が少ない前記1次解析を行う、
請求項1に記載の状態解析プログラム。
【請求項3】
前記コンピュータを、前記1次解析の結果の出力を外部装置に指示する出力指示手段として更に機能させる、
請求項1又は2に記載の状態解析プログラム。
【請求項4】
前記出力指示手段は、前記1次解析の終了後であって前記2次解析の終了前に、前記1次解析の結果の出力を指示する、
請求項3に記載の状態解析プログラム。
【請求項5】
前記所定の条件は、前記建築物が被害を受けた可能性が高いことを示す条件である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の状態解析プログラム。
【請求項6】
建築物の振動状態を示す振動データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記振動データを用いて、前記建築物の状態に関する1次解析を行う第1解析手段と、
前記第1解析手段による前記1次解析の結果が所定の条件を満たす場合、前記振動データを用いて前記1次解析とは異なる2次解析を行う第2解析手段と、
を備える状態解析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の状態解析装置と、
前記状態解析装置と通信可能に構成され、かつ前記建築物の振動状態を測定する測定手段と、
を備える状態解析システム。
【請求項8】
前記測定手段は、前記振動データが示す振動量が閾値よりも大きい場合に、前記1次解析又は前記2次解析に用いられる振動データを前記状態解析装置に送信する、
請求項7に記載の状態解析システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態解析プログラム、装置、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動状態を検出可能な振動センサを建築物に設置し、この振動センサから出力される振動データを用いて、建築物の状態を解析する技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、構造物の所定の位置に加速度センサを設置し、地震の前後においてセンサにより取得された振動データを用いて構造物の各部の剛性を推定し、両者の剛性を比較することで損傷の有無及び箇所を特定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3956302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した解析技術を活用することで、建築物の解析結果をリアルタイムに通知・報告するサービスを、建築物の管理業者向けに提供することが想定される。しかしながら、建築物の揺れの状況にかかわらず一律な解析を行う場合、地震や車両衝突などのイベントの発生時に柔軟な運用ができないという問題がある。例えば、地震が発生したにもかかわらず演算時間が長い詳細な解析を行うと、その分だけ解析結果のフィードバックが遅れてしまう。
【0006】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、建築物の揺れの状況にかかわらず一律な解析を行う場合と比べて、より柔軟性が高い運用を実行可能な状態解析プログラム、装置、及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明における状態解析プログラムは、コンピュータを、建築物の振動状態を示す振動データを取得する取得手段、前記取得手段により取得された前記振動データを用いて、前記建築物の状態に関する1次解析を行う第1解析手段、前記第1解析手段による前記1次解析の結果が所定の条件を満たす場合、前記振動データを用いて前記1次解析とは異なる2次解析を行う第2解析手段、として機能させる。
【0008】
また、前記第1解析手段は、前記2次解析と比べて、演算量、演算時間、又は項目数が少ない前記1次解析を行ってもよい。
【0009】
また、前記状態解析プログラムは、前記コンピュータを、前記1次解析の結果の出力を外部装置に指示する出力指示手段として更に機能させてもよい。
【0010】
また、前記出力指示手段は、前記1次解析の終了後であって前記2次解析の終了前に、前記1次解析の結果の出力を指示してもよい。
【0011】
また、前記所定の条件は、前記建築物が被害を受けた可能性が高いことを示す条件であってもよい。
【0012】
第2の本発明における状態解析装置は、建築物の振動状態を示す振動データを取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記振動データを用いて、前記建築物の状態に関する1次解析を行う第1解析手段と、前記第1解析手段による前記1次解析の結果が所定の条件を満たす場合、前記振動データを用いて前記1次解析とは異なる2次解析を行う第2解析手段と、を備える。
【0013】
第3の本発明における状態解析システムは、上記した状態解析装置と、前記状態解析装置と通信可能に構成され、かつ前記建築物の振動状態を測定する測定手段と、を備える。
【0014】
また、前記測定手段は、前記建築物の振動量が閾値よりも大きい場合に、前記1次解析又は前記2次解析に用いられる振動データを前記状態解析装置に送信してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、建築物の揺れの状況にかかわらず一律な解析を行う場合と比べて、より柔軟性が高い運用が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態における状態解析システムの全体構成図である。
図2図1における解析サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】解析サーバの機能ブロックの一例を示す図である。
図4】測定システムと解析サーバの間における処理の流れを例示するフローチャートである。
図5図3の運用テーブルが有するデータ構造の一例を示す図である。
図6図3の判定テーブルが有するデータ構造の一例を示す図である。
図7図3の解析結果DBが有するデータ構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明における状態解析システムについて、状態解析装置及び状態解析プログラムとの関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素及びステップに対して可能な限り同一の符号を付するとともに、重複する説明を省略する場合がある。
【0018】
[状態解析システム10の構成]
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態における状態解析システム10の全体構成図である。この状態解析システム10は、建築物BDの振動データを収集し、得られた振動データを用いて建築物BDの状態を解析する「状態解析サービス」を提供するためのシステムである。ここで、「建築物」は、例えば、建築基準法で定義される用語に相当し、建物、工作物又は建築設備を含む広い概念である。また、図1の例では、1棟の建築物BDのみを表記しているが、複数の建築物BDに適用することができる。
【0019】
この状態解析システム10は、具体的には、解析サーバ12(状態解析装置)と、測定システム14(測定手段)と、管理者端末16(外部装置)と、を含んで構成される。各々の装置は、インターネットや電話回線等の通信ネットワークNTを通じて、有線又は無線により相互に通信可能である。
【0020】
解析サーバ12は、上記した状態解析サービスに関する各種制御を行うサーバコンピュータである。図1の例では、解析サーバ12を単体のコンピュータとして示しているが、これに代わって、解析サーバ12は、分散システムを構築するコンピュータ群であってもよい。また、解析サーバ12は、クラウド型のサーバ(いわゆる、クラウドサーバ)であってもよいし、オンプレミス型のサーバであってもよい。
【0021】
測定システム14は、建築物BDの内部に設置されるとともに、建築物BDの振動状態を測定する。具体的には、測定システム14は、1又は複数の振動センサ18と、振動センサ18と電気的に接続される監視装置20と、を含んで構成される。図1の例では、1つの監視装置20につき4つの振動センサ18が一括接続されているが、これに代わって、測定システム14は、1つの監視装置20につき1つの振動センサ18が接続される構成であってもよい。
【0022】
振動センサ18は、設置箇所の振動状態を検出可能に構成され、振動状態を示す振動データを出力する。測定対象の物理量は、振動の変位、速度、加速度又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0023】
監視装置20は、振動センサ18からの振動データを逐次取得し、建築物BDの振動状態を監視する。監視装置20は、建築物BDを損壊させ得るイベントの発生を検知した場合、通信ネットワークNTを介して、解析対象の振動データを解析サーバ12に送信する。このイベントは、地震を含む天災、車両衝突を含む人災のいずれであってもよい。イベントの検知条件は、例えば、振動データが示す振動量が閾値よりも大きいことが挙げられる。
【0024】
管理者端末16は、建築物BDの管理者が利用する据置型又は携帯型の端末装置であり、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォン、ウェアラブルデバイスなどから構成される。管理者端末16は、人間の視聴覚を通じて認識可能な各種情報を出力する出力手段16oを含んで構成される。具体的には、出力手段16oは、ディスプレイ、スピーカを含むデバイスからなる。
【0025】
<ハードウェア構成>
図2は、図1における解析サーバ12のハードウェア構成の一例を示す図である。この解析サーバ12は、通信I/F22と、プロセッサ24と、メモリ26と、記憶装置28と、を含んで構成される。
【0026】
通信I/F22は、外部装置に対して電気信号を送受信するインターフェースである。これにより、解析サーバ12は、建築物BDの振動データを監視装置20から受信可能であり、あるいは、振動データの解析結果を管理者端末16に送信可能である。
【0027】
プロセッサ24は、CPU(Central Processing Unit)を含む汎用プロセッサであってもよいし、GPU(Graphics Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)を含む専用プロセッサであってもよい。メモリ26は、非一過性の記憶媒体であり、プロセッサ24が各構成要素を制御するのに必要なプログラム及びデータを記憶している。記憶装置28は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)やソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)を含む非一過性の記憶媒体である。
【0028】
<機能ブロック>
図3は、解析サーバ12の機能ブロックの一例を示す図である。この解析サーバ12は、状態解析プログラムを実行することで、取得手段30、第1解析手段32、第2解析手段34、判定手段36、出力指示手段38、及び記憶手段40として機能する。取得手段30は、図2の通信I/F22、プロセッサ24及びメモリ26によって実現される手段である。第1解析手段32、第2解析手段34、及び判定手段36はそれぞれ、図2のプロセッサ24がプログラムを実行することにより実現される手段である。出力指示手段38は、図2の通信I/F22、プロセッサ24及びメモリ26によって実現される手段である。記憶手段40は、図2の記憶装置28によって実現される手段である。
【0029】
取得手段30は、測定システム14から送信されたデータの受信により、建築物BDの振動状態を示す振動データを取得する。取得手段30は、この振動データを、監視装置20を経由して間接的に取得してもよいし、振動センサ18から直接的に取得してもよい。
【0030】
第1解析手段32は、取得手段30により取得された振動データを用いて、建築物BDの状態に関する1次解析を行う。第2解析手段34は、取得手段30により取得された振動データを用いて、建築物BDの状態に関する2次解析を行う。1次解析はリアルタイム性を重視した解析である一方、2次解析は解析精度や情報量を重視した解析である。そのため、1次解析は、2次解析と比べて、演算量、演算時間、又は項目数が相対的に少なく設けられる。項目の具体例として、震度・損傷率・剛性を含む定量的な評価項目、揺れ方・弱点を含む定性的な評価項目などが挙げられる。
【0031】
判定手段36は、第1解析手段32による1次解析の結果が、所定の条件を満たすか否かを判定する。所定の条件は、例えば、第1解析手段32の解析を通じて算出される指標に関し、建築物BDが被害を受けた可能性が高いことを示す条件である。また、判定手段36は、所定の条件を満たす場合にのみ、第2解析手段34に対して2次解析の実行を指示する。
【0032】
出力指示手段38は、第1解析手段32による1次解析の結果の出力を外部装置に指示する。1次解析の結果には、例えば、指標の算出結果のみならず、建築物BDの被害があるか否かの判断結果が含まれる。なお、出力指示手段38は、建築物BDの被害があると判定した場合、その被害の度合いや、その度合いに応じた行動指針を判定・提案してもよい。また、出力指示手段38は、第2解析手段34による2次解析の結果の出力を外部装置に指示する。2次解析の結果には、例えば、指標の算出結果のみならず、指標に基づく分析・助言の内容が含まれる。
【0033】
記憶手段40は、いずれも後述する運用テーブル42及び判定テーブル44を記憶する。また、記憶手段40は、第1解析手段32による1次解析、及び/又は、第2解析手段34による2次解析の結果を逐次記憶することで、解析結果に関するデータベース(以下、「解析結果DB46」という)を構築する。
【0034】
[状態解析システム10の動作]
本発明の一実施形態における状態解析システム10は、以上のように構成される。続いて、この状態解析システム10の動作について、図4のフローチャートを主に参照しながら説明する。このフローチャートのステップSP10,SP12,SP14は、測定システム14により実行される一方、残りのステップは解析サーバ12により実行される。
【0035】
ステップSP10において、測定システム14の振動センサ18は、建築物BDの振動量(ここでは、加速度)を所定の時間間隔で測定し、得られたセンサ信号を監視装置20に向けて出力する。そうすると、監視装置20は、各々の振動センサ18から出力されたセンサ信号をそれぞれ取得する。
【0036】
ステップSP12において、監視装置20は、ステップSP10で測定された加速度と閾値の間の大小関係を判定する。加速度が閾値を下回る場合(ステップSP12:NO)、ステップSP10に戻って振動状態の監視を継続する。一方、加速度が閾値以上である場合(ステップSP12:YES)、次のステップSP14に進む。
【0037】
ステップSP14において、監視装置20は、該当する振動センサ18から解析対象の振動データを収集し、得られた振動データをセンサIDと紐付けて解析サーバ12に送信する。この振動データは、例えば、ステップSP12の判定時を起点とし、所定の継続時間(一例として、30秒間)だけ計測を継続して得られた加速度の時系列データである。
【0038】
ステップSP16において、解析サーバ12の取得手段30は、監視装置20からの受信によって振動データを取得したか否かを確認する。振動データをまだ取得していない場合(ステップSP16:NO)、取得するまでステップSP16に留まって待機する。一方、振動データを取得した場合(ステップSP16:YES)、次のステップSP18に進む。
【0039】
ステップSP18において、第1解析手段32は、ステップSP16で取得された振動データを用いて、建築物BDの状態に関する1次解析を行う。具体的には、第1解析手段32は、様々な算出手法を用いて、加速度の時系列データから、震度及び損傷率をそれぞれ概算する。この解析に先立ち、第1解析手段32は、記憶手段40に記憶されている運用テーブル42を読み出し参照することで、振動データに紐付けされたセンサIDに対応する各種情報(つまり、1次解析に必要な情報)を取得する。
【0040】
図5は、図3の運用テーブル42が有するデータ構造の一例を示す図である。この運用テーブル42は、[1]顧客の識別情報である「顧客ID」と、[2]建築物BDに関する「建築物情報」と、[3]解析結果の通知先に関する「通知先情報」と、[4]振動センサ18に関する「センサ情報」との間の対応関係を示すテーブル形式のデータである。
【0041】
建築物情報には、建築物BDの名称・所在の他に、状態の解析に必要な情報、例えば、構造(例えば、W造、S造、RC造など)、高さ、階数、天井情報、階別床面積、用途別床面積、用途の区分、耐久年数、又は/及び、築年数などが含まれる。通知先には、管理者端末16のネットワーク情報、例えば、ホスト名、IPアドレス、又はメールアドレスなどが含まれる。センサ情報には、例えば、振動センサ18の識別情報(以下、センサID)、設置場所、又は機種などが含まれる。
【0042】
図4のステップSP20において、判定手段36は、ステップSP18の1次解析で得られた概算値を用いて、所定の条件(以下、被害判定条件)を満たすか否かを判定する。この判定に先立ち、判定手段36は、記憶手段40に記憶されている判定テーブル44を読み出し参照することで、振動データに紐付けされたセンサIDに対応する判定情報を取得する。
【0043】
図6は、図3の判定テーブル44が有するデータ構造の一例を示す図である。この判定テーブル44は、[1]振動センサ18の識別情報である「センサID」と、[2]損傷率の「基準値」と、[3]被害の有無を判定するための「被害判定条件」との間の対応関係を示すテーブル形式のデータである。基準値は、例えば、建築物BDに損傷がない状態にて過去に算出された損傷率に相当する。被害判定条件は、例えば、上記した建築物情報(図5参照)に基づいて定められてもよい。
【0044】
なお、被害判定条件は、建築物BDが被害を受けた可能性が高いことを示す条件であり、例えば、[条件1]震度が第1閾値を上回ること、[条件2]損傷率の変化量(つまり、測定値と基準値の差分)が第2閾値を上回ること、の両方を満たすことであってもよい。まず、この被害判定条件を満たさない場合(ステップSP20:被害なし)、ステップSP22に進む。
【0045】
図4のステップSP22において、出力指示手段38は、建築物BDの被害がないか軽微であり、建築物BD内が安全である旨を出力する指示を行う。具体的には、出力指示手段38は、通知先情報により特定される管理者端末16に向けて、安全である旨の通知内容を含む通知信号を送信する。そうすると、管理者端末16の出力手段16oは、解析サーバ12から受信した通知信号に含まれる通知内容を出力する。管理者は、出力された画面又は音声などを通じて、建築物BD内が安全であることを把握する。その後、後述するステップSP32に進む。
【0046】
これに対して、ステップSP20に戻って、上記した被害判定条件を満たす場合(ステップSP20:被害あり)、ステップSP24に進む。この場合、判定手段36は、建築物BDの被害の度合い(例えば、小破/中破/大破/崩壊など)や、その度合いに応じた行動指針(例えば、屋内待機/屋外避難/営業停止など)を併せて判定する。
【0047】
ステップSP24において、出力指示手段38は、建築物BDの被害があった可能性が高く、建築物BD内から避難すべき旨を出力する指示を行う。具体的には、出力指示手段38は、通知先情報により特定される管理者端末16に向けて、建築物BDから避難すべき旨の通知内容を含む通知信号を送信する。そうすると、管理者端末16の出力手段16oは、解析サーバ12から受信した通知信号に含まれる通知内容を出力する。これにより、管理者は、出力された画面又は音声などを通じて、建築物BDの入居者に対して避難勧告があることを把握する。その後、次のステップSP26に進む。
【0048】
ステップSP26において、第2解析手段34は、ステップSP16で取得された振動データを用いて、建築物BDの状態に関する2次解析を行う。具体的には、第2解析手段34は、加速度の時系列データから、震度及び損傷率を高精度に算出するとともに、揺れ方の分析、総合的な判断結果の導出、助言内容の決定などを行う。この解析に先立ち、ステップSP18の場合と同様に、第2解析手段34は、2次解析に必要な情報を運用テーブル42から適宜読み出してもよい。
【0049】
ステップSP28において、第2解析手段34は、ステップSP26の2次解析で得られた結果を含む電子レポートを作成する。
【0050】
ステップSP30において、出力指示手段38は、ステップSP28で作成された電子レポートを出力する指示を行う。具体的には、出力指示手段38は、通知先情報により特定される管理者端末16に向けて電子レポートを送信する。そうすると、管理者端末16の出力手段16oは、解析サーバ12から受信した電子レポートを出力する。これにより、管理者は、出力された画面又は音声などを通じて、建築物BDの現状及び採るべき対応を把握する。その後、後述するステップSP32に進む。
【0051】
ステップSP32において、記憶手段40は、ステップSP20及び/又はステップSP26による解析結果を記憶し、解析結果DB46を更新する。ステップSP20で「被害なし」が選択された場合には1次解析による結果のみが、ステップSP20で「被害あり」が選択された場合には1次解析及び2次解析による両方の結果が保存される。
【0052】
図7は、図3の解析結果DB46が有するデータ構造の一例を示す図である。この解析結果DB46を構成するレコードは、[1]解析の実行日時を示す「解析時点」と、[2]振動センサ18の「センサID」と、[3]1次解析による「結果/判定」と、[4]2次解析による「結果/判定」と、[5]管理者端末16に対する「通知内容」と、含んで構成される。
【0053】
このようにして、状態解析システム10の動作が終了する。解析サーバ12が図4のフローチャートに示すステップSP16~SP32を適時に実行することで、建築物BDの解析結果が記憶手段40に蓄積される。
【0054】
[実施形態による効果]
以上のように、この解析サーバ12は、建築物BDの振動状態を示す振動データを取得する取得手段30と、取得された振動データを用いて、建築物BDの状態に関する1次解析を行う第1解析手段32と、1次解析の結果が所定の条件を満たす場合、振動データを用いて1次解析とは異なる2次解析を行う第2解析手段34を備える。また、状態解析システム10は、上記した解析サーバ12と、解析サーバ12と通信可能に構成され、かつ建築物BDの振動状態を測定する測定システム14を備える。
【0055】
また、この状態解析方法及びプログラムでは、解析サーバ12が、建築物BDの振動状態を示す振動データを取得する取得ステップ(SP16)と、取得された振動データを用いて、建築物BDの状態に関する1次解析を行う1次解析ステップ(SP18)と、1次解析の結果が所定の条件を満たす場合(SP20:被害あり)、振動データを用いて1次解析とは異なる2次解析を行う2次解析ステップ(SP26)を実行する。
【0056】
このように構成したので、1次解析の結果が所定の条件を満たすか否かに応じて、追加の2次解析を選択的に実行可能となる。これにより、建築物BDの揺れの状況にかかわらず一律な解析を行う場合と比べて、より柔軟性が高い運用が行われる。
【0057】
また、第1解析手段32は、2次解析と比べて、演算量、演算時間、又は項目数が少ない1次解析を行ってもよい。これにより、2次解析と比べてより短時間に解析可能となり、リアルタイム性が確保しやすくなる。
【0058】
また、解析サーバ12は、1次解析の結果の出力を外部装置(例えば、管理者端末16)に指示する出力指示手段38を更に備えてもよい。そして、出力指示手段38は、1次解析の終了後であって2次解析の終了前に、第1解析の結果の出力を指示してもよい。これにより、2次解析の終了を待たずに、速やかに解析結果の出力がなされる。
【0059】
また、所定の条件は、建築物BDが被害を受けた可能性が高いことを示す条件であってもよい。これにより、建築物BDが被害を受けた可能性が低い場合にまで2次解析を行わなくて済み、解析サーバ12の処理負荷を低減することができる。
【0060】
また、測定システム14は、建築物BDの振動量が閾値よりも大きい場合に、1次解析又は2次解析に用いられる振動データを解析サーバ12に送信してもよい。これにより、建築物BDの振動量が小さい場合にまで振動データを送信することが抑制され、その分だけ解析サーバ12の通信負荷を減らすことができる。
【0061】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。あるいは、技術的に矛盾が生じない範囲で各々の構成を任意に組み合わせてもよい。あるいは、状態解析システム10の各動作の順序は、図4に示すフローチャートの順序のみに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更され得る。
【0062】
また、上記した実施形態では、第1解析手段32は、振動データ及び建築物BD固有の建築物情報等に基づいて、建築物BDの状態に関する1次解析を行う場合を説明したが、第1解析手段32は、振動データ及び建築物BDの周囲の環境情報に基づいて、1次解析を行ってもよい。具体的には、第1解析手段32は、周囲の地盤が弱いことを示す場合には、振動データの閾値を低く設定したり、周囲の地盤が強いことを示す場合には、振動データや震度の閾値を高く設定して、1次解析を行ったりしてもよい。また、第1解析手段32は、周囲の天候が晴れを示す場合には、振動データや震度の閾値を高く設定したり、周囲の天候が雨を示す場合には、振動データや震度の閾値を低く設定して、1次解析を行ったりしてもよい。なお、当該環境情報は、取得手段30が、適宜、通信ネットワークNTを介して不図示のサーバ装置から取得してもよい。また、第1閾値や第2閾値等は、第1解析手段32が、建築物BDの築年数等に応じて適宜変更してもよい。
【0063】
また、上記した実施形態では、外部装置が、管理者端末16である場合を説明したが、建築物BDに設けられているスピーカや表示装置等であってもよい。ここで、出力指示手段38は、第1解析手段32による1次解析の結果の出力を外部装置に指示する場合を説明したが、1次解析の内容に応じて複数の外部装置のうちどの外部装置に指示するか選択してもよい。例えば、出力指示手段38は、1次解析の結果が、損傷率が低いことを示す場合には建築物BD内部にある外部装置にのみ指示し、1次解析の結果が、損傷率が高いことを示す場合には、対応する建築物BDだけでなく、その周囲の建築物にも影響を与え得るため、建築物BD内部にある外部装置だけでなく、建築物BD外部にある外部装置にも指示してもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 状態解析システム、12 解析サーバ(状態解析装置)、14 測定システム(測定手段)、16 管理者端末(外部装置)、18 振動センサ、20 監視装置、30 取得手段、32 第1解析手段、34 第2解析手段、36 判定手段、38 出力制御手段、40 記憶手段、42 運用テーブル、44 判定テーブル、46 解析結果データベース、BD 建築物、NT 通信ネットワーク

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7