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特開2022-187059シミュレーション装置、シミュレーション方法およびシミュレーションプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187059
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】シミュレーション装置、シミュレーション方法およびシミュレーションプログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20221212BHJP
   G05B 19/05 20060101ALI20221212BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20221212BHJP
   G06F 111/10 20200101ALN20221212BHJP
   G06F 119/14 20200101ALN20221212BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/05 D
G06F30/20
G06F111:10
G06F119:14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094862
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩村 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】大貫 はる奈
【テーマコード(参考)】
3C707
5B146
5H220
【Fターム(参考)】
3C707BS09
3C707JU02
3C707KS36
3C707LS09
3C707LS20
5B146AA07
5B146DC04
5B146DJ02
5B146DJ11
5B146DJ14
5H220BB10
5H220CC07
5H220CX09
5H220EE01
5H220GG03
5H220GG05
5H220GG13
5H220HH08
5H220JJ02
5H220JJ12
5H220JJ26
5H220JJ53
5H220KK06
5H220LL06
(57)【要約】
【課題】複数の部品からなる機械を含むシミュレーションを実行する際に、複数の部品の各々に生じる応力を算出する。
【解決手段】シミュレーション装置は、複数の部品151,152,153,154からなる機械150のアセンブリデータと、機械150に接続された駆動部160を制御するためのプログラムとを格納する記憶部と、機械150のシミュレーションを実行する制御部とを備える。制御部は、シミュレーション内で駆動部160を動作させ、駆動部160を動作させたことによりシミュレーション内で複数の部品151,152,153,154の各々に生じる応力を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品からなる機械のアセンブリデータと、前記機械に接続された駆動部を制御するためのプログラムとを格納する記憶部と、
前記機械のシミュレーションを実行する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記シミュレーション内で前記駆動部を動作させ、
前記駆動部を動作させたことにより前記シミュレーション内で前記複数の部品の各々に生じる応力を算出する、シミュレーション装置。
【請求項2】
前記機械は、ワークに接触する機械であり、
前記複数の部品の各々に生じる応力を算出することは、前記機械が前記ワークに接触したことにより、前記複数の部品の各々に生じる応力および前記ワークに生じる応力を算出することを含む、請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の部品の中から、ボトルネックとなる部品があるか否かを判定し、
前記ボトルネックとなる部品があるか否かを判定することは、判定の対象となる部品の許容応力と、前記判定の対象となる部品に生じる応力とを比較することを含む、請求項1または2に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の部品の各々の安全率と、前記複数の部品の最適化のための目的関数とに基づいて、前記複数の部品の組み合わせを提案する、請求項1~3のいずれかに記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記複数の部品の組み合わせを提案することは、前記機械に使用されるネジのネジ径の種類を減らすことを含む、請求項4に記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
前記複数の部品の組み合わせを提案することは、前記機械に使用される材料の種類を減らすことを含む、請求項4に記載のシミュレーション装置。
【請求項7】
前記複数の部品の組み合わせを提案することは、前記機械の製造費用を下げることを含む、請求項4に記載のシミュレーション装置。
【請求項8】
前記制御部は、提案した前記複数の部品の組み合わせのパラメータセットを出力する、請求項4に記載のシミュレーション装置。
【請求項9】
前記パラメータセットを出力することは、前記パラメータセットの表を出力すること、または、シミュレーション画面上に前記パラメータセットを表示することを含む、請求項8に記載のシミュレーション装置。
【請求項10】
複数の部品からなる機械のシミュレーション方法であって、
前記機械のアセンブリデータと、前記機械に接続された駆動部を制御するためのプログラムとを参照するステップと、
シミュレーション内で前記駆動部を動作させるステップと、
前記駆動部を動作させたことにより前記シミュレーション内で前記複数の部品の各々に生じる応力を算出するステップとを含む、シミュレーション方法。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムをコンピュータに実行させるための、シミュレーションプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シミュレーションに関し、より特定的には、複数の部品からなる機械に生じる応力のシミュレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータを用いたシミュレーションは様々な技術分野に応用されている。このようなシミュレーションを用いることで、現実の装置が存在しない状態であっても、様々な事前検討が可能となる。
【0003】
シミュレーションに関し、例えば、特開2021-045797号公報(特許文献1)は、「付属機器が装着された第1の機器に対応する仮想空間に配置された第1の対象の挙動を算出する第1の挙動算出部と、第2の機器に対応する仮想空間における第2の対象の挙動を算出する第2の挙動算出部を備え、第2の機器は付属機器を含む。所定のタイムステップ毎に、当該タイムステップにおいて、第1の挙動算出部は付属機器が装着された第1の機器に対応する第1の対象の挙動を算出し、その後に、第2の挙動算出部が当該算出された第1の対象の挙動に基づき第1の機器に装着された付属機器の挙動を算出する」装置を開示している([要約]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-045797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術によると、複数の部品からなる機械を含むシミュレーションを実行する際に、複数の部品の各々に生じる応力を算出することができない。したがって、複数の部品からなる機械を含むシミュレーションを実行する際に、複数の部品の各々に生じる応力を算出するための技術が必要とされている。
【0006】
本開示は、上記のような背景に鑑みてなされたものであって、ある局面における目的は、複数の部品からなる機械を含むシミュレーションを実行する際に、複数の部品の各々に生じる応力を算出するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施の形態に従うと、シミュレーション装置が提供される。シミュレーション装置は、複数の部品からなる機械のアセンブリデータと、機械に接続された駆動部を制御するためのプログラムとを格納する記憶部と、機械のシミュレーションを実行する制御部とを備える。制御部は、シミュレーション内で駆動部を動作させ、駆動部を動作させたことによりシミュレーション内で複数の部品の各々に生じる応力を算出する。
【0008】
この開示によれば、シミュレーション装置は、複数の部品からなる機械を動作させるシミュレーションを実行することで、各部品に生じる応力を算出することができる。その結果、ユーザは、実際の使用条件において、各部品にどのような応力が生じるかを容易に把握することができる。
【0009】
上記の開示において、機械は、ワークに接触する機械である。複数の部品の各々に生じる応力を算出することは、機械がワークに接触したことにより、複数の部品の各々に生じる応力およびワークに生じる応力を算出することを含む。
【0010】
この開示によれば、シミュレーション装置は、複数の部品の各々およびワークに最も負荷が生じるタイミングにおいて、複数の部品の各々に生じる応力およびワークに生じる応力を算出することができる。
【0011】
上記の開示において、制御部は、複数の部品の中から、ボトルネックとなる部品があるか否かを判定する。ボトルネックとなる部品があるか否かを判定することは、判定の対象となる部品の許容応力と、判定の対象となる部品に生じる応力とを比較することを含む。
【0012】
この開示によれば、シミュレーション装置は、実際の使用条件において、ボトルネックとなる部品があるか否かを判定することができる。
【0013】
上記の開示において、制御部は、複数の部品の各々の安全率と、複数の部品の最適化のための目的関数とに基づいて、複数の部品の組み合わせを提案する。
【0014】
この開示によれば、シミュレーション装置は、安全率を満たす範囲において、機械の製造コストを抑えた部品の組み合わせを提案することができる。
【0015】
上記の開示において、複数の部品の組み合わせを提案することは、機械に使用されるネジのネジ径の種類を減らすことを含む。
【0016】
この開示によれば、シミュレーション装置は、機械の製造に使用されるネジの種類を減らすことで、機械の製造コストを抑制し得る。
【0017】
上記の開示において、複数の部品の組み合わせを提案することは、機械に使用される材料の種類を減らすことを含む。
【0018】
この開示によれば、シミュレーション装置は、機械の製造に使用される材料の種類を減らすことで、機械の製造コストを抑制し得る。
【0019】
上記の開示において、複数の部品の組み合わせを提案することは、機械の製造費用を下げることを含む。
【0020】
この開示によれば、シミュレーション装置は、機械の製造費用を抑制し得る。
上記の開示において、制御部は、提案した複数の部品の組み合わせのパラメータセットを出力する。
【0021】
この開示によれば、シミュレーション装置は、提案した複数の部品の組み合わせのパラメータセットをユーザに提示することができる。
【0022】
上記の開示において、パラメータセットを出力することは、パラメータセットの表を出力すること、または、シミュレーション画面上にパラメータセットを表示することを含む。
【0023】
この開示によれば、シミュレーション装置は、ユーザに、パラメータセットの表、または、シミュレーション画面上に表示されたパラメータセットを提示し得る。
【0024】
他の実施の形態に従うと、複数の部品からなる機械のシミュレーション方法が提供される。シミュレーション方法は、機械のアセンブリデータと、機械に接続された駆動部を制御するためのプログラムとを参照するステップと、シミュレーション内で駆動部を動作させるステップと、駆動部を動作させたことによりシミュレーション内で複数の部品の各々に生じる応力を算出するステップとを含む。
【0025】
この開示によれば、複数の部品からなる機械を動作させるシミュレーションを実行することで、各部品に生じる応力を算出することができる。その結果、ユーザは、実際の使用条件において、各部品にどのような応力が生じるかを容易に把握することができる。
【0026】
他の実施の形態に従うと、上記のプログラムをコンピュータに実行させるためのシミュレーションプログラムが提供される。
【0027】
この開示によれば、複数の部品からなる機械を動作させるシミュレーションをコンピュータに実行させることで、各部品に生じる応力を算出することができる。その結果、ユーザは、実際の使用条件において、各部品にどのような応力が生じるかを容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0028】
ある実施の形態に従うと、複数の部品からなる機械を含むシミュレーションを実行する際に、複数の部品の各々に生じる応力を算出することが可能である。
【0029】
この開示内容の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本開示に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ある実施の形態に従うシミュレーション技術を適用可能な機械の一例を示す図である。
図2】ある実施の形態に従うシミュレーション技術を適用可能な機械を含む制御システム2のユニット構成の一例を示す図である。
図3】機械に生じる応力のシミュレーションを実行する装置の構成の一例を示す図である。
図4】材料に生じる応力の一例を示す図である。
図5】シミュレーションの設定画面500の一例を示す図である。
図6】シミュレーション画面680の一例を示す図である。
図7】シミュレーション画面780の一例を示す図である。
図8】シミュレーション画面880の一例を示す図である。
図9】シミュレーション画面980の一例を示す図である。
図10】シミュレーション画面1080の一例を示す図である。
図11】シミュレーション画面1180の一例を示す図である。
図12】最適化処理によって変更された部品の構成の一例を示す図である。
図13】装置100のシミュレーションの実行手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る技術思想の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0032】
<A.適用例>
図1は、本実施の形態に従うシミュレーション技術を適用可能な機械の一例を示す図である。図1を参照して、本実施の形態に従うシミュレーション技術の適用例について説明する。本実施の形態に従うシミュレーション技術は、一例として、装置100(図3参照)により実現され得る。当該シミュレーション技術は、3D(Three-Dimensional)空間において、複数の部品からなる機械を動作させると共に、複数の部品の各々に生じる応力を求めることができる。ここでの「機械」とは、例えば、ロボットに装着されるツール、ワークの押さえ部品、または、その他の治具等の主に工場のライン等で使用される任意の機器を含む。
【0033】
(a.シミュレーションの画面構成)
画面180は、本実施の形態に従うシミュレーション技術が提供する画面の一例であり、シミュレーションが実行される3D空間を写す。図1に示す例では、画面180には、ロボット160と、機械150と、ワーク170とが表示されている。
【0034】
機械150は、部品151と、部品152と、部品153と、部品154とから構成される。このように複数の部品からなる機械150は、部品151,152,153,154からなるアセンブリであるとも言える。同様に、ロボット160およびその他の複数の部品からなる機械は全てアセンブリであると言える。
【0035】
ロボット160は、例えば、垂直多関節ロボット、水平多関節ロボットまたはその他の任意のロボットであり、駆動部を備える。図1に示す例では、機械150は、ロボット160の先端のツール取り付け部に取り付けられている。機械150は、ロボット160(駆動装置)により、下方向190に動いてワーク170を押さえる。
【0036】
(b.シミュレーション技術が提供する機能)
本実施の形態に従うシミュレーション技術は、主に以下の2つの機能を提供する。1つ目の機能は、3D空間におけるアセンブリの動作を再現する機能である。2つ目の機能は、3D空間に存在する機械150(アセンブリ)を構成する各部品に生じる応力と、ワーク170に生じる応力とを算出する機能である。
【0037】
まず、1つ目の機能(3D空間におけるアセンブリの動作を再現する機能)について説明する。装置100は、ストレージ111(図3参照)に、少なくとも、シミュレーション用のプログラムと、シミュレーションで使用する3Dデータ(機械150,ロボット160,ワーク170およびその他の任意の機械等の3Dデータ)と、ロボット160のプログラムとを格納する。
【0038】
装置100は、ロボット160のプログラムに基づいて、ロボット160を3D空間内で動作させる。ロボット160が動作することにより機械150も動作する。図1に示す例では、機械150は、下に移動して、ワーク170を押さえる。ユーザは、この1つ目の機能(3D空間におけるアセンブリの動作を再現する機能)を用いることにより、設計した機械およびプログラムが問題無く動作するか否かを確認し得る。
【0039】
次に、2つ目の機能(3D空間に存在する機械150を構成する各部品に生じる応力と、ワーク170に生じる応力とを算出する機能)について説明する。装置100は、シミュレーションの実行時に、機械150を構成する部品151,152,153,154に生じる応力と、ワーク170に生じる応力とを算出する。
【0040】
より具体的には、装置100は、シミュレーション内のシーン毎に(スナップショット毎に)、機械150を構成する部品151,152,153,154に生じる応力と、ワーク170に生じる応力とを算出し得る。例えば、装置100は、シミュレーション内の時間(A)~(Z)ごとに、機械150を構成する部品151,152,153,154に生じる応力と、ワーク170に生じる応力とを算出し得る。
【0041】
また、装置100は、特定の条件を満たすスナップショットでのみ、機械150を構成する部品151,152,153,154に生じる応力と、ワーク170に生じる応力とを算出してもよい。例えば、機械150を構成する部品151,152,153,154に最も大きな応力が生じるのは、機械150とワーク170とが接触しているときである。そこで、例えば、装置100は、機械150とワーク170とが接触しているという条件を満たすスナップショットにおいてのみ、機械150を構成する部品151,152,153,154に生じる応力と、ワーク170に生じる応力とを算出してもよい。なお、装置100は、設定画面を介して、ユーザから応力を算出するスナップショットの条件の入力を受け付けてもよい。
【0042】
装置100は、各部品151,152,153,154に生じる応力を、斜線の密度または色等で視覚的に表示し得る。ある局面において、装置100は、各部品151,152,153,154に生じる応力を数値で表示してもよい。
【0043】
なお、応力は1つの部品に均一に生じるわけではないため、装置100は、ある部品の部分毎に応力の表示を変更してもよい。例えば、図1に示す例では、部品152の領域163には大きな応力が生じていることを示し、部品152の領域164には小さな応力が生じていることを示している。
【0044】
ある局面において、装置100は、設定画面においてユーザに指定されたアセンブリの各部品に生じる応力のみを算出してもよい。他の局面において、装置100は、3D空間内に存在する全ての部品に生じる応力を算出してもよい。
【0045】
ユーザは、この2つ目の機能(3D空間に存在する機械150を構成する各部品に生じる応力と、ワーク170に生じる応力とを算出する機能)を用いることにより、各部品およびワーク170に生じる負荷を確認し、特定の部品またはワーク170に許容応力以上の応力が生じることを抑制し得る。
【0046】
上記した本実施の形態に従うシミュレーション技術は、従来の応力計算技術が1つの部品に生じる応力を算出していたのに対して、ある機械(アセンブリ)を構成する複数の部品の各々に生じる応力を算出する点で異なる。
【0047】
本実施の形態に従うシミュレーション技術は、シミュレーションの実行を通じて、アセンブリを構成する各部品に伝搬する応力を算出する。これにより、ユーザは、シミュレーションを実行するだけで、各部品の負荷を確認し、さらには、アセンブリのボトルネックとなる部分を容易に発見し得る。
【0048】
<B.システム構成>
次に図2を参照して、本実施の形態に従うシミュレーション技術の適用対象である機械を含むシステムについて説明する。また、図3を参照して、実施の形態に従うシミュレーション技術を実行する装置100について説明する。
【0049】
図2は、本実施の形態に従うシミュレーション技術を適用可能な機械を含む制御システム2のユニット構成の一例を示す図である。図1に示すロボット160および機械150は、制御システム2の一部として機能し得る。例えば、ロボット160は、ロボットコントローラ310およびサーボモータ1301,1302,1303,1304等によって制御されるロボットハンド210であってもよい。また、機械150は、ロボットハンド210の先端に取り付けられてもよいし、サーボモータ41,42等によって駆動される治具等であってもよい。
【0050】
制御システム2は、一例として、PLC(Programmable Logic Controller)200と、PLC200とフィールドネットワーク22を介して接続されるサーボモータドライバ531,532およびIOリモートターミナル5と、ロボットコントローラ310と、フィールドに設けられたIOデバイスである、光電センサ6、ストッパ等が備える近接スイッチ(または近接センサ)87およびエンコーダ236、238を含む。
【0051】
PLC200は、主たる演算処理を実行する演算ユニット13、1つ以上のIOユニット14および特殊ユニット17を含む。これらのユニットは、システムバス81を介して、データを互いに遣り取りできるように構成されるとともに、電源ユニット12から電源が供給される。演算ユニット13には、シミュレーション用の装置100が接続され得る。
【0052】
装置100は、3D空間で動作検証を行ったプログラムを演算ユニット13にインストールし得る。演算ユニット13は、インストールされたプログラムに基づいて、制御システム2に含まれる各装置を制御し得る。装置100は、ネットワーク80を介して、演算ユニット13に接続され得る。
【0053】
IOユニット14は、光電センサ6、ストッパ等の近接スイッチ87、エンコーダ236,238等を含むIOデバイスから検出値61,71,237および239を収集する。近接スイッチ87は、例えばストッパに対するトレイが所定距離まで接近したことを非接触で検出する。各IOデバイスからの検出値は、例えばIOユニット14が備えるメモリの対応ビットに設定(書込)される。
【0054】
演算ユニット13は、IOユニット14により収集された値を用いて制御プログラムの演算を実行し、演算結果の値をIOユニット14の対応のビットに設定(書込)する。周辺機器またはIOデバイスは、IOユニット14の各ビットの値を参照して動作する。このように、PLC200は、IOユニット14を介してIOデバイスおよび周辺機器と相互にデータを遣り取りしながら、制御対象であるロボットまたはコンベア等を制御することができる。
【0055】
特殊ユニット17は、アナログデータの入出力、温度制御、特定の通信方式による通信といった、IOユニット14ではサポートされない機能を有する。
【0056】
フィールドネットワーク22には、例えば、ロボットコントローラ310、サーボモータドライバ531,532、およびIOリモートターミナル5等が接続されてもよい。
【0057】
IOリモートターミナル5は、基本的には、IOユニット14と同様に、一般的な入出力処理に関する処理を行う。より具体的には、IOリモートターミナル5は、フィールドネットワーク22でのデータ伝送に係る処理を行うための通信カプラ52と、1つ以上のIOユニット53とを含む。これらのユニットは、IOリモートターミナルバス51を介して、データを互いに遣り取りできるように構成される。
【0058】
サーボモータドライバ531,532は、フィールドネットワーク22を介して演算ユニット13と接続されるとともに、演算ユニット13からの指令値に従ってサーボモータ41,42を駆動する。具体的には、サーボモータドライバ531,532は、PLC200から、制御周期等の一定周期で、位置指令値、速度指令値、トルク指令値といった指令値を受ける。演算ユニット13は、エンコーダ236,238からの検出値237,239に基づいて、これらの指令値を生成する。
【0059】
演算ユニット13は、上記に述べたIOデバイスからの検出値を参照して、所定の制御プログラムを実行することで、ロボットハンド210(図1のロボット160等)に、ワーク170のピックアンドプレース、ワーク170の押さえ等の操作を実行させることができる。
【0060】
具体的には、演算ユニット13は、ロボットアームのための制御指令211と、ロボットハンド210のための制御指令222とを生成し、ロボットコントローラ310を介して、ロボットハンド210にこれらの制御信号を出力する。また、演算ユニット13は、制御指令211を生成する際には、上記に述べたIOデバイスからの検出値61,71に加えて、ロボットハンド210の状態値を参照し得る。ロボットアームは、例えば、サーボモータ1301~1304等の任意の数のサーボモータを含んでいてもよい。
【0061】
また、演算ユニット13は、サーボモータドライバ531,532と、サーボモータ41,42とを介して、治具として実現された機械150を制御し得る。
【0062】
図3は、機械に生じる応力のシミュレーションを実行する装置の構成の一例を示す図である。図1を参照して説明されたシミュレーションは、装置100上で動作するソフトウェアにより実行され得る。
【0063】
装置100は、主たるコンポーネントとして、オペレーティングシステム(OS:Operating System)および後述するような各種プログラムを実行するプロセッサ102と、プロセッサ102によるプログラムの実行に必要なデータを格納するための作業領域を提供する主メモリ104と、キーボードやマウス等のユーザ操作を受付ける操作ユニット106(操作受付部)と、ディスプレイ109、各種インジケータ、プリンタ等の処理結果を出力する出力ユニット108と、ネットワーク80を含む各種ネットワークに接続されるネットワークインターフェイス110と、光学ドライブ112と、外部装置と通信するローカル通信インターフェイス116と、ストレージ111とを含む。これらのコンポーネントは、内部バス118等を介してデータ通信可能に接続される。
【0064】
装置100は、光学ドライブ112を有しており、コンピュータ読取可能なプログラムを非一過的に格納する光学記録媒体(例えば、DVD(Digital Versatile Disc)等)を含むコンピュータ読取可能な記録媒体114から各種プログラムを読み取って、ストレージ111等に当該各種プログラムをインストールしてもよい。
【0065】
装置100で実行される各種プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体114を介して装置100にインストールされてもよいが、ネットワーク上の図示しないサーバ装置等からネットワークインターフェイス110を介して装置100にインストールされてもよい。
【0066】
ストレージ111は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Flash Solid State Drive)等で構成され、プロセッサ102で実行されるプログラムを格納する。
【0067】
より具体的には、ストレージ111は、本実施の形態に従うシミュレーションを実現するためのシミュレーションプログラムとして、仮想時刻生成プログラム120と、中継プログラム121と、物理シミュレーションプログラム122と、PLCシミュレーションプログラム126と、ロボットエミュレーションプログラム130と、統合プログラム134とを格納する。ストレージ111は、さらに、仮想空間に配置されたオブジェクトを表示する画像を生成する画像処理プログラム136を格納する。
【0068】
また、ストレージ111は、シミュレーションプログラムの実行に必要となる、部品最適化パラメータ137と、物理シミュレーションパラメータ124と、PLCパラメータ128と、ロボットパラメータ132と、3Dビジュアライズデータ135とを格納する。
【0069】
仮想時刻生成プログラム120は、シミュレーションのための仮想時刻を生成する。装置100は、仮想時刻に基づき、一定の周期でシミュレーションを実行する。プロセッサ102は、仮想時刻に基づいて、スナップショットを生成し、当該スナップショットにおける各部品151,152,153,154およびワーク170の応力を算出し得る。
【0070】
物理シミュレーションプログラム122は、ワーク170の移動に関連して動作する機器(オブジェクト)の挙動を算出する。物理シミュレーションプログラム122により挙動が算出される機器は、例えば、図2に示す制御システム2に含まれる光電センサ6、コンベア、トレイ、ストッパおよびロボットハンド210等と、これらの構成により実現され得るロボット160および機械150も含む。また、物理シミュレーションプログラム122は、例えば、複数の部品を含む機器(機械)の挙動に基づいて、当該機器に含まれる各部品に生じる応力を算出し得る。
【0071】
物理シミュレーションパラメータ124は、シミュレーション上での各機器(オブジェクト)の挙動を規定するためのパラメータであり、物理シミュレーションプログラム122により参照される。物理シミュレーションパラメータ124の値は、ユーザの操作または統合プログラム134等により適宜変更されてもよい。
【0072】
物理シミュレーションパラメータ124は、ワーク170の搬送または移動に関連した機器およびワーク170のCAD(Computer Aided Design)データを含んでいてもよい。CADデータを用いることで、プロセッサ102は、シミュレーション上で、現実の機器の挙動をより正確に再現し得る。
【0073】
PLCシミュレーションプログラム126は、物理シミュレーションプログラム122により挙動が算出される機器およびワーク170の位置を算出する。PLCシミュレーションプログラム126は、算出した機器およびワーク170の位置を物理シミュレーションプログラム122に出力する。
【0074】
PLCパラメータ128は、物理シミュレーションプログラム122により挙動が算出される機器およびワーク170の位置を算出するためのパラメータであり、PLCシミュレーションプログラム126により参照される。
【0075】
ロボットエミュレーションプログラム130は、シミュレーション上で、制御システム2に接続されるロボットの挙動を再現する。ロボットエミュレーションプログラム130は、オブジェクト(CADデータ等)を用いて、制御システム2に接続されるロボットの挙動を再現する。
【0076】
制御システム2が含むロボットは、ワーク170を加工または搬送するロボットを含んでいてもよい。また、制御システム2が含むロボットは、図1に示す機械150が取り付けられているロボット160(例えば、治具として動作するロボット)を含んでいてもよい。ロボットエミュレーションプログラム130は、物理シミュレーションプログラム122により算出される結果(オブジェクトの挙動)に基づいて、ロボットの動作を再現する。
【0077】
ロボットパラメータ132は、オブジェクトを用いてロボットの挙動を再現するために必要なパラメータを含み、ロボットエミュレーションプログラム130により参照される。
【0078】
中継プログラム121は、物理シミュレーションプログラム122とロボットエミュレーションプログラム130とが互いのデータを遣り取りするための中継機能を提供する。中継プログラム121は、一例として、スクリプトで記述されていてもよいし、他の任意のフォーマットで記述されていてもよい。
【0079】
統合プログラム134は、物理シミュレーションプログラム122と、PLCシミュレーションプログラム126と、ロボットエミュレーションプログラム130と、中継プログラム121とを互いに連携させるための機能を提供する。より具体的には、統合プログラム134は、典型的には主メモリ104上に、仮想空間のオブジェクトの状態を記述する仮想空間情報を生成および更新する。物理シミュレーションプログラム122、PLCシミュレーションプログラム126、および、ロボットエミュレーションプログラム130は、仮想空間情報を参照(読出)して各シミュレーションの処理を実行するとともに、その実行結果のうち必要な情報を仮想空間情報に反映する。言い換えれば、統合プログラム134は、各プログラムを連携させることで、シミュレーション内での各機器の挙動および処理を再現する。
【0080】
画像処理プログラム136は、シミュレーションの実行状況をユーザに視覚的に提示する。画像処理プログラム136は、仮想空間情報に基づいて、3Dビジュアライズデータ135をディスプレイ109に表示する。3Dビジュアライズデータ135は、軌跡データと画像データを含む。画像データは、シミュレートされる機器に対応するオブジェクトを描画するためのデータ(CADデータ等)を含む。軌跡データは、仮想空間情報の各機器の位置に所定関数を用いて算出された3次元座標P(x,y,z)およびその時系列データを含む。画像処理プログラム136は、3Dビジュアライズデータ135を用いて、ワーク170、ロボット160、および、機械150等のオブジェクトの挙動を、3D空間内で立体的に描画するための画像データを生成し、当該画像データをディスプレイ109に出力する。
【0081】
部品最適化パラメータ137は、部品の材料、部品の許容応力、部品の規格情報、部品のコスト情報等を含み、物理シミュレーションプログラム122により参照される。物理シミュレーションプログラム122は、シミュレーションの結果(各部品に生じる応力)と、部品最適化パラメータ137とを比較することで、求められる安全率を満たし、かつ、コストの低い部品の構成を選定し得る。一例として、物理シミュレーションプログラム122は、可能な限り同じ径のネジを使用するように部品の構成を決定(または提案)してもよいし、可能な限り同じ種類の材料を使用するように部品の構成を決定(または提案)してもよいし、可能な限り部品点数が少なくなるように部品の構成を決定(または提案)してもよい。ある局面において、物理シミュレーションプログラム122以外のプログラムが、部品の構成の最適化処理を実行してもよい。
【0082】
ある局面において、図1を参照して説明したシミュレーションは、複数の装置100、装置100のハードウェア構成の少なくとも一部を備えるシステム、装置100のハードウェア構成の少なくとも一部を備えるクラウド環境上の仮想マシンにより、ソフトウェアとして実行されてもよい。
【0083】
また、装置100は、図1を参照して説明したシミュレーションを実現するために必要な処理および機能の一部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を用いて実現してもよい。
【0084】
<C.シミュレーション>
次に、図4図11を参照して、装置100が、機械150を構成する各部品151,152,153および154に生じる応力と、ワーク170に生じる応力とを求める手順と、部品の最適化処理について説明する。
【0085】
図4は、材料に生じる応力の一例を示す図である。画面400は、1つの部品(または材料)に生じる応力を示している。治具等の機械の設計担当者は、図4に示すように、機械を構成する複数の部品の各々の応力を個別に確認してもよい。しかしながら、複数の部品の応力を個別に確認する方法は、非常に時間が生じる場合がある。また、部品の応力を個別に確認する方法には、シミュレーション実行時に、各部品に具体的にどのような応力が生じるのかがわかりにくいという問題があった。そこで、装置100は、シミュレーションの設定に応力計算の処理を含めることで、設計担当者の負担を大幅に軽減している。
【0086】
図5は、シミュレーションの設定画面500の一例を示す図である。設定画面500は、設定メニュー501と、3D空間の表示502とを含む。
【0087】
設定メニュー501は、ユーザから、シミュレーションの各種設定の入力を受け付ける。設定メニュー501は、設定項目の一部として、安全な材料の厚みの割合(Safe Material Thickness Ratio)510と、安全なネジの割合(Safe Screw Ratio)520とを含む。
【0088】
安全な材料の厚みの割合510は、最低限必要な材料の厚みを定義する。例えば、安全な材料の厚みの割合510が、「4mm」であれば、ユーザはシミュレーションにおいて4mm未満の厚みの部品を使用できない。または、装置100は、シミュレーションの実行時または実行前に、4mm未満の厚みの部品を検出した場合、警告をディスプレイ109に出力してもよい。
【0089】
安全なネジの割合520は、最低限必要なネジ径を定義する。例えば、安全なネジの割合520が、「3mm」であれば、ユーザはシミュレーションにおいて3mm未満の径のネジを使用できない。または、装置100は、シミュレーションの実行時または実行前に、3mm未満の径のネジを検出した場合、警告をディスプレイ109に出力してもよい。
【0090】
上記の安全な材料の厚みの割合510および安全なネジの割合520は、図10および図11を参照して説明する最適化処理において使用され得る。
【0091】
3D空間の表示502は、シミュレーションに必要なオブジェクト(機械150)を表示する。ある局面において、装置100が機械150を構成する各部品151,152,153および154に生じる応力を調べることが目的のシミュレーションを実行する場合、3D空間の表示502は、機械150と、当該機械150に接触するオブジェクト(ロボット160およびワーク170等)とのみを表示してもよい。
【0092】
図6は、シミュレーション画面680の一例を示す図である。シミュレーション画面680は、例えば、装置100が設定画面500の設定に基づいて実行するシミュレーションを表示する。図6に示す例では、応力を算出する対象である機械150が、ロボット160の駆動に基づいて下方向190に移動して、ワーク170に接触する瞬間に対応するスナップショットを表示している。
【0093】
図7は、シミュレーション画面780の一例を示す図である。シミュレーション画面780は、機械150を構成する部品151に生じる応力を視覚的に表示する画面である。シミュレーション画面780は、図6に示すスナップショットにおける、部品151に生じる応力を表示している。このように、装置100は、機械150全体に代えて、特定の部品のみをディスプレイ109に表示することで、ある部品が他の部品により隠されてユーザから見えなくなることを防ぎ得る。これにより、ユーザは特定の部品に注目することができる。
【0094】
図8は、シミュレーション画面880の一例を示す図である。シミュレーション画面880は、機械150を構成する部品153,154に生じる応力を視覚的に表示する画面である。シミュレーション画面880は、図6に示すスナップショットにおける、部品153,154に生じる応力を表示している。
【0095】
図9は、シミュレーション画面980の一例を示す図である。シミュレーション画面980は、機械150を構成する部品152に生じる応力を視覚的に表示する画面である。シミュレーション画面980は、図6に示すスナップショットにおける、部品152に生じる応力を表示している。
【0096】
図10は、シミュレーション画面1080の一例を示す図である。シミュレーション画面1080は、ワーク170に生じる応力を視覚的に表示する画面である。シミュレーション画面1080は、図6に示すスナップショットにおける、ワーク170に生じる応力を表示している。
【0097】
装置100は、図1に示すように、全ての部品に生じる応力をディスプレイ109に表示してもよい。また、装置100は、図7図10に示すように特定の部品151,152,153および154、またはワーク170に生じる応力をディスプレイ109に表示してもよい。ある局面において、装置100は、ユーザからの操作に基づいて、ディスプレイ109への表示内容を適宜切り替えてもよい。
【0098】
図11は、シミュレーション画面1180の一例を示す図である。シミュレーション画面1180は、最適化実行ボタン1110を含む。装置100は、最適化実行ボタン1110が押されたことを検知した場合、機械150を構成する各部品151,152,153および154の最適化処理を実行する。最適化処理は、主に2つの観点に基づいて実行される。
【0099】
1つ目の観点は「安全率」である。装置100は、設定メニュー501において設定された各種安全率を満たすように、各部品151,152,153および154を最適化する。また、装置100は、各部品に生じる応力が各部品の許容応力を超えないように、各部品151,152,153および154を最適化する。
【0100】
一例として、シミュレーションを実行した結果、部品151に生じる応力が部品151の許容応力を上回る場合、装置100は、最適化処理の一部として、部品151の厚みを増やし、部品151の材料を変更し、またはその両方を実行し得る。
【0101】
2つ目の観点は「コスト」である。装置100は、機械150が定められた安全率を満たす範囲において、機械150の製造にかかるコストを可能な限り削減するために、材料の変更、部品の規格の統一、ネジ径の統一、部品点数の削減等の処理を実行する。ある製造物を組み立てる場合、一般的に使用する部品の種類が少なければ少ない程製造コストは下がるため、装置100は、可能な限り、機械150を構成する各部品の材料および種類を統一するように最適化処理を実行し得る。ある局面において、コストとは、例えば、装置100の製造費用であってもよいし、装置100の製造工数(時間)であってもよい。
【0102】
一例として、部品153がM5(直径5mm)のネジであり、部品154がM4(直径4mm)のネジであるとする。そして、シミュレーションを実行した結果、部品153,154は、両方ともM4のネジであっても定められた安全率を満たすことが判明したとする。この場合、装置100は、最適化処理により、部品153,154をM4のネジに統一し得る。
【0103】
装置100は、例えば、以下の式101F~105Fの部品の最適化のための目的関数に基づいて最適化処理を実行する。なお、式101F~105Fは、プログラムとして提供され得る。
【0104】
【数1】
【0105】
式101F~105Fに含まれる変数は以下の通りである。
x:材料、部品の規格等ごとに定められたパラメータ
N:部品点数
n:部品番号
Force:各部品に生じる応力の最大値
Volume:部品の体積
Price:部品の材料価格
式101Fは、応力が最小となる部品構成を求める。式102Fは、材料価格が最小となる部品構成を求める。式103Fは、部品点数が最小となる部品構成を求める。式104Fは、各部品の共通度が最も高くなる(使用する部品の種類が最も少ない)部品構成を求める。式105Fは、最も機械150の質量が小さくなる部品構成を求める。
【0106】
装置100は、上記の式101F~105Fの全てまたは一部に基づいて最適化処理を実行し得る。また、装置100は、安全率、質量、部品点数等の任意の項目に対して、重みを設定してもよい。ある局面において、装置100は、操作ユニット106を介して、ユーザから、使用する式の選択、重み入力等の操作を受け付けてもよい。例えば、ユーザは、製造費用、部品点数、部品の種類等の各項目について重みを設けてもよい。
【0107】
装置100は、最適化処理の実行後に、シミュレーション画面1180に最適化処理の結果(部品のパラメータセット(各部品の種類等)、製造費用、製造工数、部品点数、部品の種類数等の情報)を表示し得る。最適化処理の結果は、テキスト情報、3Dデータ、またはその両方を含み得る。一例として、装置100は、推奨素材の情報1120と、推奨厚みの情報1130と、推奨ネジ径の情報1140とをテキスト情報としてシミュレーション画面1180に表示してもよい。ある局面において、装置100は、推奨する構成となるように、部品の画像(3Dデータ)の表示を変更してもよい。また、他の局面において、装置100は、シミュレーション画面1180に、提案されたパラメータセットに基づく製造費用、製造工数、部品点数、部品の種類数等の任意の情報をさらに表示してもよい。
【0108】
図12は、最適化処理によって変更された部品の構成の一例を示す図である。部品表1210は、最適化処理の実行前の部品表である。部品表1220は、最適化処理の実行後の部品表である。部品表1210および部品表1220を比較すると、装置100は、コスト削減のために、部品151,152の材料をアルミニウムに統一していることがわかる。さらに、装置100は、定められた安全率を満たすために、部品152の材料をジュラルミンから強度の低いアルミニウムに変更すると共に、部品152の厚みを増やしていることがわかる。
【0109】
装置100は、最適化後の部品表1220をディスプレイ109に表示する。ある局面において、装置100は、最適化前の部品表1210および最適化後の部品表1220の両方をディスプレイ109に表示してもよい。他の局面において、装置100は、ユーザから最適化処理のやり直し指示の入力を受け付けてもよい。この場合、装置100は、例えば、ユーザによって新たに指定されたパラメータセットに基づいて、最適化処理を実行し得る。
【0110】
図11および図12を参照して説明したように、装置100は、安全率およびコストの観点に基づいて、機械150の部品構成の最適化処理を実行する。これにより、ユーザは、定められた安全率を満たしつつ製造コストの低い部品構成を選択し得る。
【0111】
<D.フローチャート>
図13は、装置100のシミュレーションの実行手順の一例を示すフローチャートである。ある局面において、プロセッサ102は、図12の処理を行うためのプログラムをストレージ111から主メモリ104に読み込んで、当該プログラムを実行してもよい。他の局面において、当該処理の一部または全部は、当該処理を実行するように構成された回路素子の組み合わせとしても実現され得る。
【0112】
ステップS1305において、プロセッサ102は、機械150の材質(材料)、ロボット等の軸の設定、IEC(International Electrotechnical Commission)プログラム、ロボットプログラムを取得する。ある局面において、プロセッサ102は、操作ユニット106、ネットワークインターフェイス110、光学ドライブ112またはローカル通信インターフェイス116を介して、機械150の材質、ロボット等の軸の設定、IECプログラム、ロボットプログラムを取得してもよい。
【0113】
ステップS1310において、プロセッサ102は、IECプログラム、ロボットプログラムを動作させることにより、部品に生じる応力を算出する。
【0114】
ステップS1315において、プロセッサ102は、3D空間上に部品に生じる応力、歪みを表示する。なお、プロセッサ102は、動力源から順番に接続されている部品に加わる力を解析することでワーク170までに至る全ての部品に加わる応力を算出し得る。
【0115】
ステップS1320において、プロセッサ102は、歪みが最大の場所(ボトルネック)をディスプレイ109に表示する。ある局面において、プロセッサ102は、許容応力および実際に生じた応力の差が最も小さい部品、または、実際に生じた応力が許容応力を上回っている部品をボトルネックとして、ディスプレイ109に表示してもよい。他の局面において、プロセッサ102は、判定の対象となる部品の許容応力と、判定の対象となる部品に生じる応力とを比較することで、ボトルネックとなる部品があるか否かを判定してもよい。この場合、プロセッサ102は、ボトルネックとなる部品がある場合のみ、ボトルネックとなる部品をディスプレイ109に表示してもよい。
【0116】
ステップS1325において、プロセッサ102は、ボトルネックに基づいて、最適化手法を提示する。より具体的には、プロセッサ102は、ボトルネックに基づいて、式101F~105Fの組み合わせ、式101F~105Fに対する重み付け設定等を提示し得る。
【0117】
ステップS1330において、プロセッサ102は、最適化するパラメータセットを生成する。より具体的には、プロセッサ102は、ステップS1315において求めた各部品に生じる応力と、部品最適化パラメータ137に基づいて、パラメータセットを生成する。パラメータセットは、例えば部品151,152,153および154のサイズ、規格、材料、最小厚み、ネジ径、単価等の項目を含み得る。
【0118】
ステップS1335において、プロセッサ102は、ステップS1325にて生成したパラメータセットの全組み合わせを生成する。
【0119】
ステップS1340において、プロセッサ102は、生成した最適化パラメータセットの中から、予め定められた安全率を満たし、目的関数の計算結果が最良のものを選択する。より具体的には、プロセッサ102は、生成した最適化パラメータセットを式101F~105Fに代入して、式101F~105Fを計算することで各最適化パラメータセットのコストを算出する。
【0120】
ステップS1345において、プロセッサ102は、最適化処理を実行し、応力、歪みから部品の推奨材料、推奨厚み、推奨ネジ径の一部または全てを3D画面および/または一覧表(部品表1220)に表示する。
【0121】
ステップS1350において、プロセッサ102は、パラメータの再設定要求を受け付けたか否かを判定する。プロセッサ102は、パラメータの再設定要求を受け付けたと判定した場合(ステップS1350にてYES)、制御をステップS1330に移す。そうでない場合(ステップS1350にてNO)、プロセッサ102は、処理を終了する。
【0122】
ある局面において、プロセッサ102は、パラメータの再設定要求を受け付けた場合、ユーザから、新しいパラメータセットの入力を受け付け得る。
【0123】
以上説明した通り、本実施の形態に従う装置100は、シミュレーションにより、機械150を構成する複数の部品の各々に生じる応力を算出できる。これにより、ユーザは、シミュレーションを実行するだけで、各部品に生じる応力を確認し、安全率を満たす機械150を設計し得る。
【0124】
また、装置100は、機械150のボトルネックに基づいて、最適化処理を実行する。これにより、ユーザは、予め定められた安全率を満たしつつ低コストになるように、機械150の設計を容易に変更し得る。
【0125】
<E.付記>
以上のように、本実施の形態は以下のような開示を含む。
[構成1]
複数の部品(151,152,153,154)からなる機械(150)のアセンブリデータと、上記機械(150)に接続された駆動部を制御するためのプログラムとを格納する記憶部(111)と、
上記機械(150)のシミュレーションを実行する制御部(102)とを備え、
上記制御部(102)は、
上記シミュレーション内で上記駆動部を動作させ、
上記駆動部を動作させたことにより上記シミュレーション内で上記複数の部品(151,152,153,154)の各々に生じる応力を算出する、シミュレーション装置(100)。
[構成2]
上記機械(150)は、ワークに接触する機械(150)であり、
上記複数の部品(151,152,153,154)の各々に生じる応力を算出することは、上記機械(150)が上記ワークに接触したことにより、上記複数の部品(151,152,153,154)の各々に生じる応力および上記ワークに生じる応力を算出することを含む、構成1に記載のシミュレーション装置(100)。
[構成3]
上記制御部(102)は、上記複数の部品(151,152,153,154)の中から、ボトルネックとなる部品(151,152,153,154)があるか否かを判定し、
上記ボトルネックとなる部品(151,152,153,154)があるか否かを判定することは、判定の対象となる部品(151,152,153,154)の許容応力と、上記判定の対象となる部品(151,152,153,154)に生じる応力とを比較することを含む、構成1または2に記載のシミュレーション装置(100)。
[構成4]
上記制御部(102)は、上記複数の部品(151,152,153,154)の各々の安全率と、上記複数の部品(151,152,153,154)の最適化のための目的関数とに基づいて、上記複数の部品(151,152,153,154)の組み合わせを提案する、構成1~3のいずれかに記載のシミュレーション装置(100)。
[構成5]
上記複数の部品(151,152,153,154)の組み合わせを提案することは、上記機械(150)に使用されるネジのネジ径の種類を減らすことを含む、構成4に記載のシミュレーション装置(100)。
[構成6]
上記複数の部品(151,152,153,154)の組み合わせを提案することは、上記機械(150)に使用される材料の種類を減らすことを含む、構成4に記載のシミュレーション装置(100)。
[構成7]
上記複数の部品(151,152,153,154)の組み合わせを提案することは、上記機械の製造費用を下げることを含む、構成4に記載のシミュレーション装置(100)。
[構成8]
上記制御部(102)は、提案した上記複数の部品(151,152,153,154)の組み合わせのパラメータセットを出力する、構成4に記載のシミュレーション装置(100)。
[構成9]
上記パラメータセットを出力することは、上記パラメータセットの表を出力すること、または、シミュレーション画面上に上記パラメータセットを表示することを含む、構成8に記載のシミュレーション装置。
[構成10]
複数の部品(151,152,153,154)からなる機械(150)のシミュレーション方法であって、
上記機械(150)のアセンブリデータと、上記機械(150)に接続された駆動部を制御するためのプログラムとを参照するステップと、
シミュレーション内で上記駆動部を動作させるステップと、
上記駆動部を動作させたことにより上記シミュレーション内で上記複数の部品(151,152,153,154)の各々に生じる応力を算出するステップとを含む、シミュレーション方法。
[構成11]
構成10に記載のプログラムをコンピュータに実行させるための、シミュレーションプログラム。
【0126】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された開示内容は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。
【符号の説明】
【0127】
2 制御システム、5 IOリモートターミナル、6 光電センサ、12 電源ユニット、13 演算ユニット、14,53 IOユニット、17 特殊ユニット、22 フィールドネットワーク、41,42,1301,1302,1303,1304 サーボモータ、51 IOリモートターミナルバス、52 通信カプラ、61,71,237,239 検出値、80 ネットワーク、81 システムバス、87 近接スイッチ、100 装置、102 プロセッサ、104 主メモリ、106 操作ユニット、108 出力ユニット、109 ディスプレイ、110 ネットワークインターフェイス、111 ストレージ、112 光学ドライブ、114 記録媒体、116 ローカル通信インターフェイス、118 内部バス、120 仮想時刻生成プログラム、121 中継プログラム、122 物理シミュレーションプログラム、124 物理シミュレーションパラメータ、126 PLCシミュレーションプログラム、128 PLCパラメータ、130 ロボットエミュレーションプログラム、132 ロボットパラメータ、134 統合プログラム、135 3Dビジュアライズデータ、136 画像処理プログラム、137 部品最適化パラメータ、150 機械、151,152,153,154 部品、160 ロボット、163,164 領域、170 ワーク、180,400 画面、190 方向、200 PLC、210 ロボットハンド、211,222 制御指令、236,238 エンコーダ、310 ロボットコントローラ、500 設定画面、501 設定メニュー、502 3D空間の表示、510 安全な材料の厚みの割合、520 安全なネジの割合、531,532 サーボモータドライバ、680,780,880,980,1080,1180 シミュレーション画面、1110 最適化実行ボタン、1120 推奨素材の情報、1130 推奨厚みの情報、1140 推奨ネジ径の情報、1210,1220 部品表。
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