(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187063
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】垂直共振器型発光素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
H01S5/183
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094869
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 有三
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AC03
5F173AC14
5F173AC35
5F173AC42
5F173AC53
5F173AC61
5F173AG17
5F173AH22
5F173AP05
5F173AP33
5F173AP35
5F173AR23
5F173AR61
(57)【要約】
【課題】閾値電流が低く、素子破壊が発生しにくい垂直共振器型発光素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
基板と、基板上に形成された第1の多層膜反射鏡と、第1の多層膜反射鏡上に形成された第1の導電型を有する第1の半導体層と、第1の半導体層上に形成された第1の導電型を有する第2の半導体層と、第2の半導体層の上面の外縁を含む領域を露出するように第2の半導体層上に形成された発光層と、発光層上に形成されかつ第1の導電型と反対の第2の導電型を有する第3の半導体層と、を含む窒化物半導体からなる半導体構造層と、第2の半導体層の上面に形成された電極と、第3の半導体層の上面の1の領域において第3の半導体層と電気的に接触している電極層と、第1の多層膜反射鏡との間で共振器を構成する第2の多層膜反射鏡と、を有し、第2の半導体層は、第1の半導体層よりも抵抗が大きいことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された第1の多層膜反射鏡と、
前記第1の多層膜反射鏡上に形成された第1の導電型を有する第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に形成された前記第1の導電型を有する第2の半導体層と、前記第2の半導体層の上面の外縁を含む領域を露出するように前記第2の半導体層上に形成された発光層と、前記発光層上に形成されかつ前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有する第3の半導体層と、を含む窒化物半導体からなる半導体構造層と、
前記第2の半導体層の上面に形成された電極と、
前記第3の半導体層の上面の1の領域において前記第3の半導体層と電気的に接触している電極層と、
前記第1の多層膜反射鏡との間で共振器を構成する第2の多層膜反射鏡と、を有し、
前記第2の半導体層は、前記第1の半導体層よりも抵抗が大きいことを特徴とする垂直共振器型発光素子。
【請求項2】
前記第2の半導体層は、前記第1の半導体層よりもバンドギャップエネルギーが大きいことを特徴とする、請求項1に記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項3】
前記第2の半導体層は、前記第1の半導体層よりも層厚が薄いことを特徴とする、請求項1又は2に記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項4】
前記第1の半導体層はGaNの組成を有し、
前記第2の半導体層はAlGaNの組成を有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項5】
前記第2の半導体層の下面に接して形成されたノンドープのGaNの組成を有する第4の半導体層を有することを特徴とする、請求項4に記載の垂直共振器型発光素子。
【請求項6】
垂直共振器型発光素子の製造方法であって、
基板上に第1の多層膜反射鏡を形成する第1の多層膜反射鏡形成ステップと、
前記第1の多層膜反射鏡上に第1の導電型を有するGaN層、前記第1の導電型を有するAlGaN層、発光層及び前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有する窒化物半導体層をこの順で積層させる半導体層積層ステップと、
前記窒化物半導体層の上面の1の領域にマスクを形成し、前記上面の前記1の領域を除く他の領域にレーザ光を照射した際の反射光の強度を測定しつつ前記他の領域をドライエッチング法によりエッチング処理して前記AlGaN層の上面の外縁を含む領域を露出させるエッチング処理ステップであって、前記反射光の強度の変化に基づいて前記エッチング処理を停止するエッチング処理ステップと、
前記AlGaN層の上面に電極を形成する電極形成ステップと、
前記窒化物半導体層の上面の1の領域において前記窒化物半導体層と電気的に接触する電極層を形成する電極層形成ステップと、
前記第1の多層膜反射鏡との間で共振器を構成する第2の多層膜反射鏡を形成する第2の多層膜反射鏡形成ステップと、を有することを特徴とする垂直共振器型発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直共振器型発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直共振器型発光素子として、例えば、特許文献1には、半導体層と当該半導体層を挟んで互いに対向する2つの多層膜反射鏡とを有する垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているようなVCSELにおいては、当該VCSEL内に流れ込む電流を活性層のレーザ光の利得に寄与する領域にできるだけ多く流し、レーザ光の発振に必要な閾値電流をなるべく低減することが課題の1つとしてあげられる。また、半導体層内における過度な電流集中による素子破壊を防止することも課題の1つとしてあげられる。
【0005】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、閾値電流が低く、素子破壊が発生しにくい垂直共振器型発光素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による垂直共振器型発光素子は、基板と、前記基板上に形成された第1の多層膜反射鏡と、前記第1の多層膜反射鏡上に形成された第1の導電型を有する第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に形成された前記第1の導電型を有する第2の半導体層と、前記第2の半導体層の上面の外縁を含む領域を露出するように前記第2の半導体層上に形成された発光層と、前記発光層上に形成されかつ前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有する第3の半導体層と、を含む窒化物半導体からなる半導体構造層と、前記第2の半導体層の上面に形成された電極と、前記第3の半導体層の上面の1の領域において前記第3の半導体層と電気的に接触している電極層と、前記第1の多層膜反射鏡との間で共振器を構成する第2の多層膜反射鏡と、を有し、前記第2の半導体層は、前記第1の半導体層よりも抵抗が大きいことを特徴としている。
【0007】
また、本発明による垂直共振器型発光素子の製造方法は、基板上に第1の多層膜反射鏡を形成する第1の多層膜反射鏡形成ステップと、前記第1の多層膜反射鏡上に第1の導電型を有するGaN層、前記第1の導電型を有するAlGaN層、発光層及び前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有する窒化物半導体層をこの順で積層させる半導体層積層ステップと、前記窒化物半導体層の上面の1の領域にマスクを形成し、前記上面の前記1の領域を除く他の領域にレーザ光を照射した際の反射光の強度を測定しつつ前記他の領域をドライエッチング法によりエッチング処理して前記AlGaN層の上面の外縁を含む領域を露出させるエッチング処理ステップであって、前記反射光の強度の変化に基づいて前記エッチング処理を停止するエッチング処理ステップと、前記AlGaN層の上面に電極を形成する電極形成ステップと、前記窒化物半導体層の上面の1の領域において前記窒化物半導体層と電気的に接触する電極層を形成する電極層形成ステップと、前記第1の多層膜反射鏡との間で共振器を構成する第2の多層膜反射鏡を形成する第2の多層膜反射鏡形成ステップと、を有することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1に係る垂直共振器型面発光レーザの斜視図である。
【
図2】実施例1に係る垂直共振器型面発光レーザの上面図である。
【
図3】実施例1に係る垂直共振器型面発光レーザの断面図である。
【
図4】実施例1に係る垂直共振器型面発光レーザの製造方法のフローチャートである。
【
図5】実施例1に係る垂直共振器型面発光レーザの製造工程の一部を示す図である。
【
図6】実施例1に係る垂直共振器型面発光レーザの製造工程の一部を示す図である。
【
図7】実施例1に係る垂直共振器型面発光レーザの製造工程の一部を示す図である。
【
図8】実施例1に係る垂直共振器型面発光レーザの製造工程の一部を示す図である。
【
図9】実施例2に係る垂直共振器型面発光レーザの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例0010】
図1は、実施例1に係る垂直共振器型面発光レーザ(以下、単に面発光レーザと称する)10の斜視図である。
【0011】
基板11は、上面形状が矩形の平板状の基板である。本願の図面においては、一例として、基板11の上面形状が正方形である場合を示している。基板11は、その上面において半導体結晶を成長させることが可能な成長用基板である。本実施例において、基板11は、窒化ガリウム(GaN)からなる。
【0012】
第1の多層膜反射鏡13は、基板11上において低屈折率半導体膜と当該低屈折率半導体膜よりも屈折率が高い高屈折率半導体膜とが交互に積層された半導体多層膜反射鏡である。第1の多層膜反射鏡13は、基板11の上面を覆うように形成されている。従って、第1の多層膜反射鏡13は、基板11の上面形状と同一の、すなわち矩形の上面形状を有している。本実施例において、第1の多層膜反射鏡13は、半導体材料からなるいわゆる分布ブラッグ反射器(DBR:Distributed Bragg Reflector)である。
【0013】
本実施例において、第1の多層膜反射鏡13は、窒化アルミニウムインジウム(AlInN)の組成を有する低屈折率半導体膜と、GaNの組成を有する高屈折率半導体膜とが交互に積層されて形成される。例えば、基板11の上面には、GaN組成を有するバッファ層(図示せず)が設けられ、当該バッファ層上に上記した高屈折率半導体膜と低屈折半導体膜とを交互に成膜することで第1の多層膜反射鏡13が形成される。
【0014】
半導体構造層EMは、第1の多層膜反射鏡13上に形成された複数の半導体層からなる積層構造体である。本実施例において、半導体構造層EMは、第1の半導体層15と、第2の半導体層16と、第3の半導体層17と、活性層18と、第4の半導体層19とから構成される。
【0015】
第1の半導体層15は、第1の多層膜反射鏡13上に形成され、かつ第1の導電型であるn型を有する窒化物半導体層である。第1の半導体層15は、第1の多層膜反射鏡13の上面を覆うように形成されている。従って、第1の半導体層15は、第1の多層膜反射鏡13の上面形状と同一の、すなわち矩形の上面形状を有している。本実施例において、第1の半導体層15は、GaNの組成を有し、n型不純物としてシリコン(Si)がドーピングされている。
【0016】
第2の半導体層16は、第1の半導体層15上に形成され、かつn型を有する窒化物半導体層である。第2の半導体層16は、第1の半導体層15の上面を覆うように形成されている。従って、第2の半導体層16は、第1の半導体層15の上面形状と同一の、すなわち矩形の上面形状を有している。
【0017】
本実施例において、第2の半導体層16は、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)の組成を有し、n型不純物としてSiがドーピングされている。第2の半導体層16は、その組成故に第1の半導体層15よりもバンドギャップエネルギーが大きくなっている。
【0018】
また、本実施例において、第2の半導体層16は、第1の半導体層15よりも層厚が薄く形成されている。具体的には、本実施例において、第1の半導体層15は層厚が1400nmであり、第2の半導体層16は層厚が10nmである。
【0019】
また、第2の半導体層16は、第1の半導体層15よりも抵抗が高く構成されている。面発光レーザ10において、第2の半導体層16は、第1の半導体層15よりも材料の抵抗値が高くかつ層厚が薄く形成されている。よって、第2の半導体層16は、シート抵抗が第1の半導体層15よりも高くなっている。
【0020】
第3の半導体層17は、第2の半導体層16の上面16Tの略中央において形成され、かつn型を有する窒化物半導体層である。第3の半導体層17は、上面形状が円形を有し、第2の半導体層16の上面16Tの外縁を含む領域を露出するように形成されている。本実施例において、第3の半導体層17は、GaNの組成を有し、n型不純物としてSiがドーピングされている。
【0021】
活性層18は、第3の半導体層17の上面を覆うように形成されている半導体層である。従って、活性層18は、第3の半導体層17の上面形状と同一の、すなわち円形の上面形状を有している。
【0022】
本実施例において、活性層18は、窒化インジウムガリウム(InGaN)の組成を有する井戸層及びGaNの組成を有する障壁層を含む量子井戸構造を有する。活性層18は、当該活性層18内において電子と正孔との再結合によって光を発生させる層である。言い換えれば、活性層18は、当該活性層18から光を放出させる発光層である。
【0023】
第4の半導体層19は、活性層18上に形成され、第2の導電型であるp型を有する窒化物半導体層である。第4の半導体層19は、活性層18の上面を覆うように形成されている。従って、第4の半導体層19は、活性層18の上面形状と同一の、すなわち円形の上面形状を有している。本実施例において、第4の半導体層19は、GaNの組成を有し、p型の不純物としてマグネシウム(Mg)がドーピングされている。
【0024】
なお、本実施例において、活性層18と第4の半導体層19との間には、キャリアブロック層としてのp型のAlGaN層(図示せず)が形成され、第4の半導体層19上にはコンタクト層としてのp型のGaN層(図示せず)が形成されている。
【0025】
本実施例において、半導体構造層EMは、第2の半導体層16の上面16T上に第3の半導体層17、活性層18及び第4の半導体層19がこの順で積層されることによって、当該第2の半導体層16の上面16Tから上方に伸長する円柱状の部分を形成している。言い換えれば、半導体構造層EMは、第2の半導体層16の上面16Tから突出する第3の半導体層17を含むメサ形状の構造(以下、メサ構造とも称する)を有し、当該メサ構造上に活性層18及び第4の半導体層19が積層されている。
【0026】
n電極NEは、第2の半導体層16の上面16Tに形成され、当該第2の半導体層16と電気的に接続されている環状の金属電極である。n電極NEは、第2の半導体層16の上面16Tにおいて、第3の半導体層17を囲むように当該第3の半導体層17と離隔して形成されている。本実施例において、n電極NEは、第2の半導体層16の上面16Tにチタン(Ti)及びアルミニウム(Al)がこの順で形成されている。
【0027】
絶縁層21は、第4の半導体層19上に形成されている絶縁体からなる透光性絶縁層である。絶縁層21は、当該絶縁層21の中央において第4の半導体層19を露出させる円形の開口を有する(
図1では図示せず)。本実施例において、絶縁層21は、二酸化ケイ素(SiO
2)から構成される。
【0028】
透光性電極層23は、上記した開口を覆うように絶縁層21上に形成されている透光性を有する導電膜である。透光性電極層23は、円形の上面形状を有している。本実施例において、透光性電極層23は、酸化インジウムスズ(ITO)から構成される。
【0029】
p電極PEは、透光性電極層23の上面23Tの外縁に沿って形成され、当該透光性電極層23と電気的に接続されている環状の金属電極である。本実施例において、p電極PEは、金(Au)から構成される。
【0030】
第2の多層膜反射鏡25は、透光性電極層23の上面23Tにおいて低屈折率誘電体膜と当該低屈折率誘電体膜よりも屈折率が高い高屈折率誘電体膜とが交互に積層された誘電体多層膜反射鏡である。第2の多層膜反射鏡25は、透光性電極層23の上面よりも小さい円形の上面形状を有する。
【0031】
本実施例において、第2の多層膜反射鏡25は、誘電体材料からなるいわゆる分布ブラッグ反射器(DBR)である。第2の多層膜反射鏡25は、p電極PEと離隔して形成されている。
【0032】
本実施例において、第2の多層膜反射鏡25は、SiO2からなる低屈折率誘電体膜と、酸化ニオブ(Nb2O5)からなる高屈折率誘電体膜とが交互に積層されて形成される。なお、第2の多層膜反射鏡25は、低屈折率誘電体膜として五酸化タンタル(Ta2O5)を用いてもよく、また、高屈折率誘電体膜としてAl2O3を用いてもよい。
【0033】
本実施例において、第1の多層膜反射鏡13及び第2の多層膜反射鏡25は、図中上下方向において上記した半導体構造層EMを挟むように配されており、当該半導体構造層EMの活性層18から放出される光を発振させるための共振器として構成される。
【0034】
面発光レーザ10において、n電極NE及びp電極PEとの間に電圧が印加されると、上記した電流狭窄層を介して活性層18に電流が流れ、この電流値が、出力光の強度が急激に増加する一定の電流値、すなわち閾値電流に達すると当該活性層18から誘導放出光が放出される。活性層18から放出された光は、第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡25との間において反射を繰り返し、共振状態に至る(レーザ発振する)。
【0035】
本実施例において、第1の多層膜反射鏡13は、第2の多層膜反射鏡25よりもわずかに低い反射率を有する。従って、第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡25との間で共振した光は、その一部が第1の多層膜反射鏡13及び基板11を透過して外部に取り出される。すなわち、第1の多層膜反射鏡13と第2の多層膜反射鏡25との間で共振した光は、図中下方に向けて出射される。
【0036】
なお、本実施例において、基板11の下面には、Nb2O5とSiO2とを積層させた反射防止膜(図示せず)が形成されている。反射防止膜は、基板11から出射される光が当該基板11の下面で反射することを抑制する、いわゆるARコートである。
【0037】
図2は、面発光レーザ10の上面図である。
図2において、上面視における面発光レーザ10の中心を図中奥行き方向に通る軸を中心軸CAとして示す。本実施例において、中心軸CAは、面発光レーザ10から出射されるレーザ光の光軸に対応する。
【0038】
面発光レーザ10は、上記したように、上面形状が矩形の第1の半導体層15及び第2の半導体層16と、第2の半導体層16の上面16Tに形成された上面形状が円形の第3の半導体層17、活性層18及び第4の半導体層19とを含む半導体構造層EMを有している。
【0039】
また、面発光レーザ10は、上記したように、第4の半導体層19上に形成された絶縁層21と、当該絶縁層21上に形成された透光性電極層23と、当該透光性電極層23の上面23Tに形成された第2の多層膜反射鏡25とを有している。
【0040】
絶縁層21は、上記したように、当該絶縁層21の中央において第4の半導体層19を露出させる円形の開口21Oを有する。言い換えれば、絶縁層21は、第4の半導体層19上に形成されている環状の絶縁層である。開口21Oは、
図2に示すように、上面視において第2の多層膜反射鏡25に覆われている。
【0041】
また、面発光レーザ10は、上記したように、第2の半導体層16の上面16Tに形成されているn電極NE及び透光性電極層23の上面23Tに形成されているp電極PEを有している。上面視において、n電極NE及びp電極PEは、中心軸CAに対して互いに同心円である円環形状を有しており、n電極NEは、p電極PEよりも径が大きく構成されている。
【0042】
図3は、
図2における面発光レーザ10の3-3線に沿った断面図である。面発光レーザ10は、上記したように、基板11上に形成された第1の多層膜反射鏡13と、第1の多層膜反射鏡13上に形成された半導体構造層EMと、当該半導体構造層EMを挟んで第1の多層膜反射鏡13との間で共振器を構成する第2の多層膜反射鏡25とを有する。
【0043】
本実施例において、第4の半導体層19は、当該第4の半導体層19の中央から突出している上面形状が円形の突出部19Pを有している。突出部19Pは、当該突出部19Pの上面19PTが透光性電極層23の下面に接している。
【0044】
絶縁層21は、第4の半導体層19の上面において突出部19Pの上面を露出せしめる開口21Oを有している。言い換えれば、絶縁層21は、突出部19Pを囲繞するように環状に形成されている。本実施例において、絶縁層21の層厚と突出部19Pの層厚とは略同一である。
【0045】
透光性電極層23は、絶縁層21の上面及び当該絶縁層21の開口21Oから露出している突出部19Pの上面を覆うように形成されている。すなわち、透光性電極層23は、突出部19Pの上面19PTを介して第4の半導体層19と電気的に接触している。言い換えれば、透光性電極層23は、突出部19Pの上面と接触していない領域において、第4の半導体層19と電気的に絶縁されている。
【0046】
本実施例において、第4の半導体層19の突出部19Pを囲繞している絶縁層21は、活性層18に対する電流の供給範囲を制限する、いわゆる電流狭窄層となっている。すなわち、p電極PEから透光性電極層23に流れた電流は、当該透光性電極層23と電気的に接触している突出部19Pの上面19PTを介して活性層18へと流入していく。
【0047】
[半導体構造層内を流れる電流の経路]
以下に、半導体構造層EM内を流れる電流の経路について
図3を用いて詳細に説明する。
【0048】
面発光レーザ10において、第2の半導体層16は、上記したように、第1の半導体層15よりも材料の抵抗値が高くかつ層厚が薄く形成されている。よって、第2の半導体層16は、シート抵抗が第1の半導体層15より高くなっている。
【0049】
本実施例によれば、面発光レーザ10が上記構成を有していることにより、p電極PEから透光性電極層23を介して第4の半導体層19の突出部19Pの上面19PTに到達した電流は、当該上面19PTから第1の半導体層15への最短経路を通って当該第1の半導体層15内を進行し、n電極NEへと流れていく。
【0050】
具体的には、突出部19Pの上面19PTに到達した電流は、第4の半導体層19、活性層18、第3の半導体層17及び第2の半導体層16の各々を厚み方向に進行して第1の半導体層15へと流れていく。第1の半導体層15に到達した電流は、当該第1の半導体層15内で面内方向に拡散してn電極NEへと流れていく。
【0051】
言い換えれば、半導体構造層EM内を流れる電流の流れは、第4の半導体層19、活性層18、第3の半導体層17及び第2の半導体層16内において、縦方向ベクトルが支配的になっており、第1の半導体層15内においては、横方向ベクトルが支配的になっている。従って、上面19PTから流入した電流は、上面19PTから第1の半導体層15に至るまで直下の方向に主に流れ、第1の半導体層15に入った後に横方向に流れる。
【0052】
例えば、p電極PEから突出部19Pの上面19PTに到達した電流は、
図3中の電流経路CP1に示すように、主に、第4の半導体層19、活性層18、第3の半導体層17及び第2の半導体層16の各々の中央領域を通って第1の半導体層15へと流れる。
【0053】
本実施例によれば、電流が上面19PTから第3の半導体層17の下端のメサ構造の立ち上がり部分近傍の領域である領域RA(図中破線の領域)に集中することを防止することができる。そのため、本実施例によれば、上記した領域RAへの電流集中に起因する素子破壊等を防ぐことができる。
【0054】
また、本実施例によれば、上面19PTから流れる電流は、活性層18における第4の半導体層19の突出部19Pの直下の領域LA(図中二点鎖線の領域)を厚み方向に流れていく。当該領域LAは、注入された電流(キャリア)がレーザ光の利得に寄与する領域である。
【0055】
そのため、本実施例によれば、例えば、電流が上記した領域LAの周囲のレーザ光の利得に寄与しない領域、すなわち光損失が発生してしまう領域に流れることを防ぐことができる。従って、本実施例によれば、光損失が発生してしまう領域に電流が不必要に流れることを防ぐことができるため、レーザ光の発振に必要な閾値電流を低下させることができる。
【0056】
このように、本実施例によれば、上記した領域RA等への電流集中に起因する素子破壊を防ぐことができ、また、レーザ光の発振に必要な閾値電流を低下させることができる。
【0057】
ここで、面発光レーザ10において、上記したような素子破壊防止効果または閾値電流低下効果をもたらす電流の流れを生むために好ましい、半導体構造層EM内の各層の具体的な構成について説明する。
【0058】
本実施例において、第1の半導体層15は、電流が当該第1の半導体層15内を面内方向に流れる経路とするために、第2の半導体層16よりも10倍以上の層厚を有していることが好ましい。具体的には、第1の半導体層15は、500nm以上且つ1600nm以下の層厚であることが好ましい。
【0059】
本実施例において、第2の半導体層16は、7nm以上且つ20nm以下の層厚であることが好ましい。これは、第2の半導体層16の層厚が7nm未満である場合、第3の半導体層17と第1の半導体層15との間の距離が短くなり、上記した領域RAへの電流集中を防ぎにくくなるためである。また、第2の半導体層16の層厚が20nmを超える場合、素子に印加される電圧の上昇を招く恐れがあるためである。
【0060】
本実施例において、GaNからなる第1の半導体層15には、n型ドーパントとして2×1018~5×1018atoms/cm3の濃度を有するSiをドーピングさせることが好ましい。これは、Siの濃度が2×1018atoms/cm3未満である場合、第1の半導体層15内に電流が流れにくくなるためであり、5×1018atoms/cm3を超える場合、光吸収による光の内部損失が増加する恐れがあるためである。
【0061】
本実施例において、AlGaNからなる第2の半導体層16は、Alの含有率が8%以上且つ35%以下であることが好ましい。これは、Alの含有率が8%未満である場合、上記した領域RAへの電流集中を防ぎにくくなるためであり、Alの含有率が35%を超える場合、第2の半導体層16と当該第2の半導体層16の上面16Tに形成されたn電極NEとの間のコンタクト抵抗が増加するためである。
【0062】
本実施例において、AlGaNからなる第2の半導体層16には、n型ドーパントとして3×1018~8×1019atoms/cm3の濃度を有するSiをドーピングさせることが好ましい。これは、Siの濃度が3×1018atoms/cm3未満である場合、第2の半導体層16の上面16Tに形成されたn電極NEと当該第2の半導体層16とのコンタクト抵抗が増加するためであり、8×1019atoms/cm3を超える場合、AlGaN層としての結晶性が悪化する恐れがあるためである。
【0063】
本実施例において、第2の半導体層16の形成位置は、レーザ光の吸収による光の内部損失を低減させるために、共振器内部における光電界強度が小さくなる部分、すなわち光電界分布の節部分に形成することが好ましい。また、活性層18は、厚み方向の中心が光電界分布の腹部分に形成することが好ましい。
【0064】
具体的には、第2の半導体層16は、活性層18の厚み方向の中心から距離aの位置に当該第2の半導体層16の厚み方向の中心が位置するように形成されることが好ましい。ここで、距離aは、a=(2m+1)×0.25λ/nとして表すことができ、mは任意の整数、λはレーザ光の発振波長、nは当該発振波長でのGaNの屈折率を示している。
【0065】
なお、本実施例において、コンタクト層である第4の半導体層19はp型のGaN層であるとしたが、p型のInGaN層としてもよい。
【0066】
[面発光レーザの製造方法]
以下に、
図4を用いて面発光レーザ10の製造方法について説明する。
図4は、面発光レーザ10の例示的な製造工程を示したフローチャートである。本実施例において、半導体構造層EMにおける各々の半導体層の形成は、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いて実施される。
【0067】
まず、第1の多層膜反射鏡13を形成する工程として、MOCVD装置内でGaNからなる基板11上に、III族原料のトリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMIn)及びアンモニアガスを導入してAlInNを形成する。続いて、TMA及びTMInの代わりにIII族原料のトリメチルガリウム(TMGa)を導入してGaNを形成する。この工程を41回繰り返して41組のAlInN/GaNからなる第1の多層膜反射鏡13を形成する(ステップS101)。
【0068】
なお、このとき、AlInN及びGaNは、基板11の結晶面の(0001)面上に層状に形成され、各々の層厚が所望の波長に対する光学的層厚の1/4になるように形成される。
【0069】
次に、半導体層積層工程として、第1の多層膜反射鏡13上に第1のn型GaN層である第1の半導体層15、n型AlGaN層である第2の半導体層16、第2のn型GaN層、活性層及びp型GaN層をこの順で積層させる(ステップS102)。
【0070】
具体的な積層工程として、まず、TMGa及びSiを含むドーピングガスSiH4を導入して、層厚が1400nm且つSiドープ量が3×1018atoms/cm3の第1の半導体層15(第1のn型GaN層)を形成する。
【0071】
続いて、第1のn型GaN層上にTMAの原料供給を加えて、層厚が10nm且つSiドープ量が1×1019atoms/cm3の第2の半導体層16(n型AlGaN層)を、Al組成が20%となるように形成する。
【0072】
続いて、第2の半導体層16上に層厚が100nm且つSiドープ量が3×1018atoms/cm3の第2のn型GaN層を形成する。第2のn型GaN層は、第2の半導体層16と当該第2のn型GaN層上に形成するノンドープのInGaN層との間の格子不整合差を緩和させるために形成する。
【0073】
続いて、第2のn型GaN層上にTMGとトリメチルインジウム(TMI)を供給してIn組成が5%のノンドープのInGaN層を形成する。ノンドープのInGaN層は、その上に形成する活性層の歪を緩和させるために形成する。なお、当該InGaN層は、1×1017~1×1018atoms/cm3の範囲でSiをドープし、活性層へのキャリア注入を促進させるための層として使用してもよい。
【0074】
続いて、ノンドープのInGaN層上に層厚が4nmのノンドープのGaN障壁層及び層厚が3nmのノンドープのInGaN井戸層の積層を5回繰り返した後に、層厚が5nmのノンドープのGaN障壁層を積層することで活性層を形成させる。
【0075】
その後、Mgがドープされた層厚が20nmのp型AlGaNキャリアブロック層(Al組成比20%)、p型GaN層及びp型GaNコンタクト層を活性層上にこの順で形成して半導体層積層工程を終了する。
【0076】
次に、ステップS102にて積層した半導体層に対してドライエッチング法を用いてエッチング処理を実施する(ステップS103)。ここで、
図5~
図8を用いてエッチング処理工程について詳細に説明する。
【0077】
図5は、ステップS102において第1の多層膜反射鏡13上に各半導体層を積層した後の製造途中の面発光レーザ10の断面図である。製造途中の面発光レーザ10は、第1の多層膜反射鏡13上に第1の半導体層15、第2の半導体層16、第2のn型GaN層17M、活性層18M及びp型GaN層19Mがこの順で積層されている。
【0078】
図6は、p型GaN層19Mにおいて突出部19P(本実施例における電流狭窄層)を形成した後の製造途中の面発光レーザ10の断面図である。当該突出部19Pは、ステップS102の後に、公知のフォトリソグラフィ技術を用いてp型GaN層19Mの一部を除去することによって形成される。本実施例において、当該突出部19Pは、p型GaN層19Mの上面の略中央の領域にΦ5.5μmのマスクを形成し、当該マスクの形成領域を除く領域に対してエッチング装置を用いてエッチング処理することで形成される。
【0079】
図7は、突出部19Pを形成した後に、p型GaN層19Mの上面に対してエッチング処理を開始する際の製造途中の面発光レーザ10の断面図である。
図7に示すように、p型GaN層19Mの上面にはマスクMSが形成されている。マスクMSは、p型GaN層19Mの上面にレジストを塗布し、突出部19Pに相当する部分の径よりも大きな同心円が残るように当該レジストの一部を除去することによって形成される。
【0080】
エンドポイント検出装置26は、半導体層のエッチング処理時において所望のエッチング深さ(エンドポイント)を検出するための装置である。エンドポイント検出装置26は、例えば、エッチング装置に組み込まれる。エンドポイント検出装置26は、投受光部27と制御部28とを含んで構成される。
【0081】
投受光部27は、レーザ光を出射する投光部と当該レーザ光を対象物に照射した際の反射光を受光する受光部とを備える投受光部である。制御部28は、投受光部27に接続されており、例えば、投受光部27の位置や当該投受光部27からのレーザ光の照射強度等の制御を行う部分である。
【0082】
上記したエンドポイント検出装置26の投受光部27を用いて、p型GaN層19Mの上面のマスクMSを形成した領域を除く領域、すなわちp型GaN層19Mの上面が露出している領域に対してレーザ光を照射しつつ、当該領域のエッチング処理を開始する。
図7において、投受光部27からp型GaN層19Mの上面に向けて照射した光をレーザ光L1として示し、当該レーザ光L1が反射した光を反射光L2として示す。
【0083】
図8は、上記したエッチング処理によって第2の半導体層16の上面の外縁を含む領域を露出させた後の製造途中の面発光レーザ10の断面図である。
図8に示す製造途中の面発光レーザ10の構成は、投受光部27から照射したレーザ光L1の反射光L2の強度を測定しつつ、上記したマスクを形成した領域を除くp型GaN層19M、活性層18M及び第2のn型GaN層17Mの各々をエッチング処理によって除去することによりなされる。このとき、エッチング処理によって第2の半導体層16が露出されたことは、反射光L2の強度に基づいて判定することができる。
【0084】
具体的には、エンドポイント検出装置26の投受光部27を用いて、第2の半導体層16上に形成されている第2のn型GaN層17Mにレーザ光L1が照射されている際の反射光L2の強度と、第2の半導体層16にレーザ光L1が照射された際の反射光L2の強度との違いを検出したことで、当該第2の半導体層16が露出されたと判定することができる。
【0085】
上記したエッチング処理によって第2の半導体層16が露出された後に、マスクMSを除去することで、上記したメサ構造を有する半導体構造層EMを形成することができる。
【0086】
このように、エンドポイント検出装置26を用いて、半導体層に照射されたレーザ光L1の反射光L2の強度に基づいてエッチング処理を行うことにより、上面の外縁を含む領域が露出した第2の半導体層16及び当該第2の半導体層16上に形成されたメサ構造を有する半導体構造層EMを形成することができる。
【0087】
再び
図4を参照する。ステップS103の後に、当該ステップS103によって露出された第2の半導体層16の上面に層厚が10nmのTi及び層厚が500nmのAlをこの順で積層して環状のn電極NEを形成する(ステップS104)。
【0088】
次に、絶縁層21の形成工程として、ステップS103によって形成された第4の半導体層19の突出部19P(電流狭窄層)を囲繞するように、当該第4の半導体層19の突出部19Pの周囲にSiO2からなる誘電体膜を設ける(ステップS105)。ステップS105により、当該絶縁層21の開口21Oから突出部19Pの上面が露出される。
【0089】
次に、ステップS105によって露出された突出部19Pの上面及び絶縁層21の上面を覆うように、当該突出部19P及び絶縁層21上にITOからなる透光性電極層23を形成する(ステップS106)。
【0090】
次に、透光性電極層23の上面の突出部19P上の領域を覆うように、当該透光性電極層23にNb2O5及びSiO2の積層を10回繰り返して10組のNb2O5/SiO2からなる第2の多層膜反射鏡25を形成する(ステップS107)。このとき、Nb2O5及びSiO2は、各々の層厚が所望の波長に対する光学的層厚の1/4になるように形成される。
【0091】
次に、透光性電極層23の上面の外縁に沿ってAuを形成することで環状のp電極PEを形成する(ステップS108)。
【0092】
最後に、基板11の裏面(第1の多層膜反射鏡13の形成面の反対面)に反射防止膜(図示せず)を形成して、
図3に示した面発光レーザ10が製造される。なお、上記した製造工程は例示的に過ぎず、半導体にドープする元素や各々の部材の寸法等は適宜変更可能である。
第5の半導体層29は、第1の半導体層15の上面を覆うように形成されている。従って、第5の半導体層29は、第1の半導体層15の上面形状と同一の、すなわち矩形の上面形状を有している。本実施例において、第5の半導体層29は、GaNの組成を有する。
本実施例において、ノンドープのGaNからなる第5の半導体層29とAlGaNからなる第2の半導体層16との界面には電子が充満しており、当該界面は、他の領域に比べて電導度が高い状態となっている。
具体的には、本実施例において、第5の半導体層29と第2の半導体層16との界面の第5の半導体層29側の領域には、面内方向への移動度が高い自由電子が層状に広がっている状態、すなわち2次元電子ガス層が形成されている。
本実施例によれば、突出部19Pの上面19PTに到達した電流は、第4の半導体層19、活性層18、第3の半導体層17及び第2の半導体層16の各々を厚み方向に進行して第5の半導体層29へと流れていく。第5の半導体層29に到達した電流は、当該第5の半導体層29内の上記した2次元電子ガス層を面内方向に拡散し、n電極NEへと流れていく。
このように、本実施例によれば、電流が上記した経路に沿って流れることにより、当該電流が上面19PTからn電極への最短経路を通るような挙動、例えば、電流が上面19PTから第3の半導体層17の下端近傍の領域RAに集中するような経路を進行することがなくなる。言い換えれば、本実施例によれば、電流がメサ構造の立ち上がり部分の近傍に集中することを防ぐことができる。そのため、本実施例によれば、上記した領域RAへの電流集中に起因する素子破壊等を防ぐことができる。
また、本実施例によれば、上面19PTから流れる電流は、実施例1と同様に、活性層18における第4の半導体層19の突出部19Pの直下の領域LA(電流がレーザ光の利得に寄与する領域)を厚み方向に流れていく。
そのため、本実施例によれば、例えば、電流が上記した領域LAの周囲のレーザ光の利得に寄与しない領域、すなわち光損失となる領域に流れることを防ぐことができる。従って、本実施例によれば、電流が光損失となる領域に不必要に流れることを防ぐことができ、レーザ光の発振に必要な閾値電流を低減させることができる。
このように、本実施例によれば、実施例1と同様に、面発光レーザ10の半導体構造層EM内において、電流が半導体層内のレーザ光の利得に寄与する領域を進行しつつ、レーザ光の発振に必要な閾値電流を低減させることができる。
なお、第5の半導体層29は、第2の半導体層16との間において2次元電子ガスを生成する観点から層厚が10~50nmであることが好ましい。すなわち、第5の半導体層29は、第1の半導体層15よりも層厚が薄く構成されている。
なお、本実施例において、第5の半導体層29が電流を面内方向に拡散させる経路とするために、当該第5の半導体層29の下に形成されている第1の半導体層は、ドープされるSiの濃度が実施例1と異なっていてもよい。例えば、第1の半導体層にドープされるSiの濃度は、動作電圧が不安定にならない程度の濃度である5×1017~3×1018atoms/cm3の範囲であってもよい。
なお、上述した実施例及び変形例における種々の数値、寸法、材料等は、例示に過ぎず、用途及び製造される面発光レーザに応じて、適宜選択することができる。例えば、上記実施例においては、垂直共振器型面発光レーザについて説明したが、本発明の上記構成の適用対象は、面発光レーザに限定されず、垂直共振器型発光ダイオード等、垂直共振器型の他の発光装置にも適用することができる。
また、上述した実施例及び変形例において、「第1の」、「第2の」などとして付される序数詞は、便宜上用いているものであり、部材の積層順などを示さない場合がある。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」と適宜置き換えて説明することができる。