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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187064
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】利用者の移動支援システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20221212BHJP
   B61L 27/00 20220101ALI20221212BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20221212BHJP
   G06Q 50/22 20180101ALI20221212BHJP
【FI】
G05D1/02 P
B61L27/00 A
G06Q50/10
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094870
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲川 実希
(72)【発明者】
【氏名】杉内 勇太
(72)【発明者】
【氏名】太田 智樹
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 謙二
(72)【発明者】
【氏名】丸山 玲
(72)【発明者】
【氏名】吉永 武史
【テーマコード(参考)】
5H161
5H301
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161JJ01
5H161JJ22
5H161JJ40
5H301AA01
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG10
5H301KK02
5H301KK07
5H301KK18
5H301KK19
5L049CC17
5L099AA13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】駅等の施設で目的地までスムーズに移動することができる利用者の移動支援システムを提供する。
【解決手段】所定の施設に配備され自己位置把握手段と無線通信手段と制御手段と走行手段とを有する複数の移動ロボットと、利用者からの移動ロボットの利用要求を受け付ける統括サーバと、を備えた利用者の移動支援システムにおいて、統括サーバは、利用者が入力した利用開始ポイントの情報と利用者の個人情報に基づいて、指定された日時にいずれかの移動ロボットが待機する位置を選択する機能と、前記利用要求の情報および選択した位置の情報を前記施設に配備されている移動ロボットへ送信する機能と、を備えるようにした。移動ロボットは、車椅子を載置可能な車椅子載置部を備え利用者を車椅子に載せた状態で搭載して移動可能に構成しても良いし、利用者が手で掴むことができる把手部を備え利用者を載せずに誘導して移動可能に構成しても良い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の施設に配備され自己位置把握手段と無線通信手段と制御手段と走行手段とを有する複数の移動ロボットと、利用者からの前記移動ロボットの利用要求を受け付ける統括サーバと、を備えた利用者の移動支援システムであって、
前記統括サーバは、
利用者が入力した利用開始ポイントの情報と利用者の個人情報に基づいて、指定された日時にいずれかの前記移動ロボットが待機する位置を選択する機能と、
前記利用要求の情報および選択した位置の情報を前記施設に配備されている前記移動ロボットへ送信する機能と、
を備えることを特徴とする利用者の移動支援システム。
【請求項2】
前記移動ロボットは、車椅子を載置可能な車椅子載置部を備え、利用者を車椅子に載せた状態で搭載して移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の利用者の移動支援システム。
【請求項3】
前記移動ロボットは、歩行可能な利用者が手で掴むことができる把手部を備え、利用者を載せずに誘導して移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の利用者の移動支援システム。
【請求項4】
前記施設は駅であり、
駅ごとに設けられ前記移動ロボットへ動作指令を送信する複数のローカルサーバを備え、前記統括サーバは前記ローカルサーバへ予約に関する情報を送信する機能を有し、
前記ローカルサーバは、
前記統括サーバが送信した情報を受信し記憶装置に記憶する機能と、
受信した前記日時の情報が示す日時の前に、前記移動ロボットが待機する位置として改札口の情報を移動目標地の情報として移動ロボットへ送信して前記改札口へ移動させる機能と、
利用者が乗車した列車の到着時刻および号車番号を利用者が指定した降車駅のローカルサーバへ送信する機能と、
を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の利用者の移動支援システム。
【請求項5】
前記統括サーバは、
移動ロボットの利用予約を行なった利用者が予約要求時に入力した移動目的地に関する情報に基づいて、降車駅で使用する改札口を選択する機能と、
予約日時の情報と共に選択した降車駅の改札口の情報を乗車駅の前記ローカルサーバへ送信する機能と、を備え、
前記ローカルサーバは、前記統括サーバより予約日時の情報と共に選択された降車駅の改札口の情報を受信した場合には、当該改札口の情報を、降車駅のローカルサーバへ利用者が乗車した列車の到着時刻および号車番号を送信する際に送信することを特徴とする請求項4に記載の利用者の移動支援システム。
【請求項6】
前記統括サーバは、
利用者が保有する端末からの前記移動ロボットの利用予約を受け付ける機能と、
移動ロボットの予約サービスを利用する利用者の住所に関する情報を含む個人情報を登録する機能と、を備え、
利用者が保有する端末から前記移動ロボットの利用予約の要求を受けた際に、登録されている利用者の住所に基づいて、乗車駅および使用する改札口を判定することを特徴とする請求項4または5に記載の利用者の移動支援システム。
【請求項7】
前記統括サーバは、
管轄内を走行している列車の運行に関する情報を収集する機能を有する列車運行情報サーバとデータ通信する機能を備え、
乗車駅の前記ローカルサーバは、利用者が列車に乗車した際に前記統括サーバより当該列車の降車駅への到着時刻を取得し、乗車した号車番号の情報と共に到着時刻を降車駅のローカルサーバへ送信することを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載の利用者の移動支援システム。
【請求項8】
前記ローカルサーバは、
前記移動ロボットが備える前記自己位置把握手段により把握した位置情報を収集する機能と、
自身が配置されている駅の構内の3Dマップデータを記憶した記憶装置と、を備え、
前記記憶装置より読み出された3Dマップデータと前記移動ロボットより収集した位置情報とを比較して、当該移動ロボットへ走行方向に関する情報および指令を高速無線通信で送信し、
前記移動ロボットは前記ローカルサーバより受信した情報および指令に基づいて移動することを特徴とする請求項4~7のいずれかに記載の利用者の移動支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の移動支援システムに関し、例えば鉄道を利用して移動する車椅子利用者や弱視者等の利用者の移動支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車椅子利用者など列車の乗降に介助が必要な利用者が鉄道を利用して移動する場合、利用者が乗車駅の改札口に到着した際に、乗車駅の駅係員が利用者から降車駅名を聞き取って降車駅の駅係員へ連絡を行い、降車駅の駅係員が駅ホームで利用者が乗車した列車が到着するまで待機し、利用者を希望の改札口まで案内するようにしており、これまで乗車駅から降車駅への連絡手段は電話とメモが中心であった。
また、近年においては、利用者が乗車駅の改札口に到着した際に、スマートフォンやタブレット端末を利用して介助内容を駅係員が入力することで、関係する駅と乗務員に自動的に入力情報が通知されるようにした乗降連絡アプリが開発され利用されており、このようなアプリにより、利用者の待ち時間の短縮と確実な案内が可能になっている。
【0003】
また、介助が必要な利用者が駅構内で移動するのを支援する移動支援システムに関する発明としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1の移動支援システムは、経路情報と位置情報とを参照しながら、予め入力操作により指定された目的地まで利用者を車椅子ごと乗せて走行する案内ロボットと、駅に設置され案内ロボットと通信して取得した該案内ロボットの出発地及び目的地の情報と、予め保存された地図情報とに基づいて出発地から目的地までの経路を計算し、該計算に基づく経路情報を案内ロボットへ送信する駅サーバと、を備えるというものである
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-32292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の乗降連絡アプリは、利用者が乗車駅の改札口に到着してから、係員が利用者から降車駅名を聞き取ってスマートフォンやタブレット端末に情報を入力するため、情報入力操作中は利用者を待たせることになるので改善の余地がある。
一方、特許文献1に記載されている発明は、乗車駅の改札口に到着した利用者が駅員に依頼して案内ロボットが到着するのを待ち、到着した案内ロボットに設けられている操作部を利用者自身が操作して降車駅等を入力する必要がある。また、この際、案内ロボットに不慣れな利用者あるいは手に障害のある利用者は情報の入力に時間がかかる。そのため、目的地に到着するまでの所要時間が長くなるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題に着目してなされたもので、駅等の施設で目的地までスムーズに移動することができる利用者の移動支援システムを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、出発駅の改札口から目的地の駅まで少ない待ち時間でスムーズに移動することができる利用者の移動支援システムを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、利用者が駅へ向かって出発する前に使い慣れた携帯端末に情報を入力することで、乗車駅に着いてから不慣れなロボットの操作部を操作して目的地に関する情報を入力する必要のない移動支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の利用者の移動支援システムは、
所定の施設に配備され自己位置把握手段と無線通信手段と制御手段と走行手段とを有する複数の移動ロボットと、利用者からの前記移動ロボットの利用要求を受け付ける統括サーバと、を備えた利用者の移動支援システムであって、
前記統括サーバは、
利用者が入力した利用開始ポイントの情報と利用者の個人情報に基づいて、指定された日時にいずれかの前記移動ロボットが待機する位置を選択する機能と、
前記利用要求の情報および選択した位置の情報を前記施設に配備されている前記移動ロボットへ送信する機能と、を備えるように構成したものである。
【0008】
上記のような構成の移動支援システムによれば、利用者は駅等の施設で目的地までスムーズに移動することができる。
ここで、前記移動ロボットは、車椅子を載置可能な車椅子載置部を備え、利用者を車椅子に載せた状態で搭載して移動可能に構成しても良い。また、歩行可能な利用者が手で掴むことができる把手部を備え、利用者を載せずに誘導して移動可能に構成しても良い。これにより、車椅子利用者はもちろんのこと、車椅子を使用しない弱視者等の歩行可能な利用者を目標地点まで誘導することができる。
【0009】
ここで、望ましくは、前記施設は駅であり、
駅ごとに設けられ前記移動ロボットへ動作指令を送信する複数のローカルサーバを備え、前記統括サーバは前記ローカルサーバへ予約に関する情報を送信する機能を有し、
前記ローカルサーバは、
前記統括サーバが送信した情報を受信し記憶装置に記憶する機能と、
受信した前記日時の情報が示す日時の前に、前記移動ロボットが待機する位置として改札口の情報を移動目標地の情報として移動ロボットへ送信して前記改札口へ移動させる機能と、
利用者が乗車した列車の到着時刻および号車番号を利用者が指定した降車駅のローカルサーバへ送信する機能と、を備えるようにする。
【0010】
上記のような構成によれば、鉄道を利用して出かけたい場合に、前もって駅構内を移動するロボットの利用予約を行うと、予約した日時に所望の乗車駅の改札口に移動ロボットが待機しているとともに、待機している移動ロボットは利用者の降車駅の情報が知らされているため、利用者は速やかにホームへ案内してもらえる。
また、乗車駅から降車駅へ利用者が乗車した列車の到着時刻および号車番号の情報がサーバにより送信されるため、降車駅では列車到着前に利用者を案内するロボットを向わせることができるので、利用者は出発駅の改札口から目的地の駅の改札口まで、少ない待ち時間でスムーズに移動することができる。
なお、利用者が乗車駅の改札口に到着した際に予約した利用者であることを確認する機能やその際に改札の入場処理を実行する機能、降車駅の改札口に到着した際に出場処理(運賃の電子決済を含む)を実行する機能をロボットに持たせるようにしても良い。
【0011】
さらに、駅構内で移動ロボットを利用したい利用者は、自身が保有する携帯端末(スマートフォン)等を用いて駅や日時等の情報を入力することで予約を行えるため、予約をした利用者が乗車駅の改札口に到着した際に、降車駅等に関する情報を移動ロボットに入力する必要がない。そのため、利用者は不慣れなロボットの操作部を操作することなく速やかに目的の駅へ移動することができる。
【0012】
また、望ましくは、前記統括サーバは、
移動ロボットの利用予約を行なった利用者が予約要求時に入力した移動目的地に関する情報に基づいて、降車駅で使用する改札口を選択する機能と、
予約日時の情報と共に選択した降車駅の改札口の情報を乗車駅の前記ローカルサーバへ送信する機能と、を備え、
前記ローカルサーバは、前記統括サーバより予約日時の情報と共に選択された降車駅の改札口の情報を受信した場合には、当該改札口の情報を、降車駅のローカルサーバへ利用者が乗車した列車の到着時刻および号車番号を送信する際に送信するようにする。
【0013】
上記のような構成によれば、移動ロボットの利用予約者が予約要求時に入力した目的地に関する情報に基づいて、統括サーバによって降車駅で使用する改札口が選択され、予約当日に予約した乗車駅にて列車に乗ると、乗車駅から降車駅へ利用者が乗車した列車の到着時刻および号車番号と共に降車駅で使用する改札口の情報が送信される。そのため、利用者は出発駅の改札口から目的地の駅改札口までよりスムーズに移動することができる。
【0014】
さらに、望ましくは、前記統括サーバは、
利用者が保有する端末からの前記移動ロボットの利用予約を受け付ける機能と、
移動ロボットの予約サービスを利用する利用者の住所に関する情報を含む個人情報を登録する機能と、を備え、
利用者が保有する端末から前記移動ロボットの利用予約の要求を受けた際に、登録されている利用者の住所に基づいて、乗車駅および使用する改札口を判定するようにする。
かかる構成によれば、ロボットの利用予約をする利用者は、予め登録しておけば、予約の際に自身の住所または利用したい改札口に関する情報を入力する必要がないため、簡単に予約が行えるとともに、予約当日には予約者にとって便利な最寄りの改札口でロボットに待機してもらうことができる。
【0015】
また、望ましくは、前記統括サーバは、
管轄内を走行している列車の運行に関する情報を収集する機能を有する列車運行情報サーバとデータ通信する機能を備え、
乗車駅の前記ローカルサーバは、利用者が列車に乗車した際に前記統括サーバより当該列車の降車駅への到着時刻を取得し、乗車した号車番号の情報と共に到着時刻を降車駅のローカルサーバへ送信するようにする。
かかる構成によれば、各移動ロボットに列車ダイヤ情報を持たせておく必要がないとともに、予約当日に列車に遅延等が発生したとしても正確な到着時刻を降車駅のローカルサーバを介して移動ロボットへ伝えることができる。
【0016】
また、望ましくは、前記ローカルサーバは、
前記移動ロボットが備える前記自己位置把握手段により把握した位置情報を収集する機能と、
自身が配置されている駅の構内の3Dマップデータを記憶した記憶装置と、を備え、
前記記憶装置より読み出された3Dマップデータと前記移動ロボットより収集した位置情報とを比較して、当該移動ロボットへ走行方向に関する情報および指令を高速無線通信(ローカル5G等)で送信し、
前記移動ロボットは前記ローカルサーバより受信した情報および指令に基づいて移動するようにする。
【0017】
上記構成によれば、各駅に設置されているローカルサーバの記憶装置に駅構内の3Dマップデータが記憶され、移動ロボットはローカルサーバからの指令で走行するため、各移動ロボットに3Dマップデータを持たせておく必要がなく、例えば駅構内の改修工事で3Dマップに修正が生じた場合にはローカルサーバが記憶する3Dマップデータを変更すればよいので、3Dマップの変更が容易に行え、変更に伴い発生するコストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の移動支援システムによれば、駅等の施設で目的地までスムーズに移動することができる。また、本発明を駅に適用した場合には、利用者は出発駅の改札口から目的地の駅改札口まで少ない待ち時間でスムーズに移動することができる。さらに、利用者が駅へ向かって出発する前に使い慣れた携帯端末に情報を入力することで、乗車駅に着いてから不慣れなロボットの操作部を操作して目的地に関する情報を入力する必要のない移動支援システムを提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る利用者の移動支援システムの構成例を示すシステム構成図である。
図2】実施形態の移動支援システムを構成する移動ロボットの構成例を示すブロック図である。
図3】実施形態の移動支援システムにおける移動ロボットの予約の手順を示すフローチャートである。
図4】実施形態の移動支援システムにおける乗車駅のエッジサーバの予約実行処理手順を示すフローチャートである。
図5】実施形態の移動支援システムにおける降車駅のエッジサーバの予約実行処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る利用者の移動支援システム(以下、移動支援システムと略す)を主として車椅子利用者の移動支援に適用した場合の一実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る移動支援システムの構成例を示す。
本実施形態に係る移動支援システムは、車椅子に載った利用者を車椅子ごと載せて移動する介助用の移動ロボット10の駅構内での移動を支援するシステムに適用したもので、図1に示すように、各駅A,B,C,D……に配設されたエッジサーバ20A,20B,20C,20D……と、専用回線または通信ネットワーク等の伝送手段を介して前記エッジサーバ20A,20B,20C,20D……(以下、各サーバを区別しないときは単に「20」と記す)と接続された統括サーバ30等によって構成されている。
【0021】
統括サーバ30は、データセンタまたは拠点駅等に配設されている。ただし、移動支援システムを提供する企業(鉄道事業者)等が自ら保有することを要せず、例えばクラウドサービスを提供する企業等が保有するサーバ(クラウドサーバ)、PC(パーソナルコンピュータ)、WS(ワークステーション)等の情報処理装置を利用してもよい。
また、統括サーバ30は、通信ネットワーク21を介して、一般ユーザが保有するスマートフォンのような携帯端末22および管轄内を走行している列車の遅延情報等列車の運行に関する情報を収集する機能を有する列車運行情報サーバ23と通信する機能を備えている。
【0022】
移動ロボット10は各駅に配備されており、エッジサーバ20は、移動ロボット10との間でローカル5GやWiFi等で通信する無線通信手段と記憶装置を備えている。各駅に配備される移動ロボットは1台に限定されず、2台以上であっても良い。
また、特に限定されるものでないが、移動ロボット10は階段昇降用のクローラーおよび階段昇降時に車椅子を載置した台(床)を水平に維持する機構、車椅子を固定するストッパ等を備えている。なお、移動ロボット10がクローラーを備えていない場合、エレベータを使用して移動するようにルートを設定することで、改札口とホームのフロアが異なる駅に対応することができる。
【0023】
エッジサーバ20は、自駅に配備されている移動ロボット10の台数および識別コード、自駅構内の3Dマップデータ(3次元点群データ)を記憶しているとともに、各移動ロボット10から受信したデータに基づいて各移動ロボットの位置や動作を把握する機能および各移動ロボットに対して指令を送信して動作を指示する機能を有している。
具体的には、移動ロボット10には、LiDAR(Light Detection and Ranging)のようなレーザスキャナを用いた距離計測器(距離センサ)が搭載されており、各移動ロボットの距離計測器(LiDAR)の3D計測データは自駅のエッジサーバ20へ送信され、エッジサーバ20は、LiDARの計測データと3Dマップデータとを比較して移動ロボットの位置を把握して予め設定されているルート情報に基づいて移動方向等を指示する。
【0024】
また、エッジサーバ20は自駅に配備されている複数の監視カメラ24からの画像データを、伝送ケーブルを介して受信し、受信した画像データに基づいて自駅構内の人や物の流動状況を把握する機能を有している。
さらに、エッジサーバ20は、監視カメラ24からの画像データに基づいて移動ロボット10を認識し、周辺および載っている車椅子利用者の状態を把握する機能を有しており、自駅の移動ロボットに対して移動方向等を指示する際に、周囲の状況および駅構内の利用者の流動状態に応じて移動方向を決定し指示するように構成されている。
【0025】
図2には、移動ロボット10の構成例が示されている。
図2に示すように、移動ロボット10は、上記エッジサーバ20との間でWiFi等の無線による通信を行う無線通信機11、駅構内に設けられている複数のビーコン(もしくはWiFiルータ)25またはGPS衛星からの位置情報信号を受信する信号受信機12、レーザスキャナを用いた距離計測器(LiDAR)13A,13B、左右の走行輪をそれぞれ回転駆動する走行用モータ14A,14B、距離計測器13A,13Bを制御したりデータを処理したりする制御系コントローラ15、走行用モータ14A,14Bを制御する駆動系コントローラ16、上記機器に対して電力を供給するバッテリ17などを備え、自己の位置と周囲環境をリアルタイムに認識しながら、移動することができるように構成されている。
【0026】
なお、距離計測器は前方用と後方用のほか、左方向と右方向や斜め方向をそれぞれスキャンするため4個以上設けるようにしても良い。また、図示しないが、周囲を撮影する撮像手段(カメラ)や赤外線センサ、超音波センサなど他の種類のセンサを搭載しても良い。
また、移動ロボット10がクローラーを備える場合、上記走行用モータ14A,14Bとは別個にクローラー駆動用のモータもしくは上記走行用モータ14A,14Bの回転力を走行輪またはクローラーに選択的に伝達可能な切替え機構が設けられる。
【0027】
走行輪は、左右の車輪の同一方向への駆動によって前進または後進を、また左右の車輪の逆方向駆動によって向き変更を行うことができるように構成されている。また、各々の車輪にはロータリエンコーダが設けられており、駆動系コントローラ16はロータリエンコーダからの信号に基づいて車輪の回転方向および回転数を計測し、車輪の直径や車輪間距離等の既知データから前進/後進移動量及び回転角度を計算して、自己の位置及び向きを把握することができる。
【0028】
次に、移動ロボット10を用いて車椅子利用者の移動を支援する上記移動支援システムの利用手順の一例を、図3のフローチャートを用いて説明する。
なお、本移動支援システムを利用するにあたっては、利用者の携帯端末(スマートフォン)に当該システムを利用するためのアプリ(移動ロボット利用予約アプリ)がインストールされているものとする。この移動ロボット利用予約アプリは、鉄道事業者が提供している既存のアプリに一機能として追加的に設けたものでも良い。また、移動ロボット利用予約アプリは会員登録が可能であり、会員登録を行うと、利用者のメールアドレスや住所などの個人情報が統括サーバ30のデータベースに記憶される。
【0029】
本移動支援システムを利用する場合、利用者は携帯端末上で移動ロボット利用予約アプリを立ち上げ、乗車駅と日時を指定してロボットの利用予約を統括サーバ30に対して要求する(ステップS1)。このとき、利用予約の画面には、目的地(降車駅もしくは周辺施設またはその住所)の情報を入力する欄が設けられており、目的地も同時に統括サーバ30へ送信される。なお、上記予約要求は音声によって行えるようにしても良い。
【0030】
統括サーバ30は、ロボットの利用予約要求があると、データベース内の予約テーブル等を参照して予約状況を確認し、指定された条件での予約受付の可否を判定する(ステップS2)。そして、指定された駅および日時に該当駅の複数台のロボットのすべてが予約で埋まっている場合には、代案を提案する(ステップS3)一方、指定された駅および日時に予約がないあるいは該当駅の複数台のロボットのすべてが予約で埋まっておらず利用が可能なものがある場合には、ステップS4へ移行する。
【0031】
ステップS4では、統括サーバ30は、ロボットの利用予約を要求してきた利用者が会員登録しているか否か判定する。そして、会員登録がない(No)と判定すると、ステップS5へ移行して、利用したい改札口を入力する画面を表示して入力を待ち、入力があるとステップS7へ移行する。
一方、ステップS4で会員登録あり(Yes)と判定すると、統括サーバ30は、データベースより利用者の住所を検索する(ステップS6)。そして、検索した住所に基づいて最寄りの改札口(例えば西口、北口等)を選択またはステップS5で入力された改札口を設定し、予約を受け付けた旨およびロボットが待機している駅、改札口および目的地の情報を、データベースに記憶するとともに利用者の携帯端末へ送信する(ステップS7)。
【0032】
次に、統括サーバ30は、利用者の携帯端末から確認の応答があった否か判定し(ステップS8)、確認の応答があった場合には、予約の日時と待機改札口の情報および目的地(降車駅もしくは利用施設やその住所)の情報を乗車駅のエッジサーバ20へ送信し、エッジサーバ20は受信した情報を自己の記憶装置内の予約テーブルに記憶して(ステップS9)、予約処理を終了する。ステップS8で、確認の応答がなかった場合には、予約の不成立を知らせるメッセージを送信して(ステップS10)、予約処理を終了する。
【0033】
図4および図5には、移動ロボット10の利用予約があった場合におけるエッジサーバ20の処理手順の一例が示されている。このうち図4は乗車駅のエッジサーバの処理、図5は降車駅のエッジサーバの処理である。
【0034】
乗車駅のエッジサーバは、図4に示すように、先ず記憶装置内の予約テーブルを読み込み(ステップS11)、統括サーバ30より受信し記憶した予約時間よりも所定時間前の予約実行開始時刻(例えば5分前)になったか否か判定する(ステップS12)。そして、予約実行開始時刻になったと判定した場合には、使用する移動ロボットを選択し、そのロボットに対して予約の際に決定された改札口へ向かう指令を利用者に関する情報と共に送信する(ステップS13)。
すると、上記情報を受信したロボットは、指定された改札口で待機し、予約した利用者が携帯端末22もしくは交通系ICカードをロボットの所定部位にかざすなどの所定の行為を行うと、携帯端末22から利用者の個人情報やQRコード(登録商標)などを読み込んで、予約を行った利用者であるか否かの確認処理を行う。
【0035】
そして、予約を行った利用者であることの確認がとれると、当該ロボットは車椅子ごと載せて移動を開始し、確認がとれたことを乗車駅のエッジサーバへ送信する。なお、ロボットは、利用者の確認処理を行った際に、携帯端末22もしくは交通系ICカード等による改札の入場処理(運賃の電子決済を含む)を実行するようにしても良い。
一方、エッジサーバは、選択指定したロボットから利用者を確認し移動を開始したことを示す情報を受信したか否か判定し(ステップS14)、利用者を確認した(Yes)と判定すると、予約の際に指定された降車駅名に基づいて乗車する列車と利用番線(ホーム)を判別し、当該利用番線(ホーム)の情報を移動目標地情報としてステップS13で選択したロボットへ送信する(ステップS15)。
【0036】
その後、乗車駅のエッジサーバは、指令を与えたロボットから受信した位置信号情報と計測データとから位置を把握して走行方向などの動作指示制御を開始する(ステップS16)。また、駅構内の映像カメラからの画像データに基づいて、指令を与えたロボットの監視を開始する(ステップS17)。
そして、当該ロボットが利用者を載せて目的の番線(ホーム)に到着し、利用者が列車に乗ったか否か判定する(ステップS18)。なお、映像カメラからの画像に基づいて移動途中でトラブルが発生したと判断した場合には、当該駅の駅係員の携帯端末等へトラブルの発生を送信するようにしてもよい。
【0037】
次に、乗車駅のエッジサーバは、統括サーバ30より列車運行情報を取得し(ステップS19)、利用者が乗車した列車の降車駅への到着予定時刻を判定して、利用者の降車予定駅のエッジサーバに対して到着予定時刻と乗車した号車番号等の情報を送信する(ステップS20)。また、乗車駅のエッジサーバは、ステップS20において、予約の際の情報より、利用者が向かう施設や建物の情報または住所が分かるときは、その情報に基づいて降車駅で使用する改札口を決定し改札口の情報も送信する。
【0038】
一方、降車駅のエッジサーバは、図5に示すように、乗車駅のエッジサーバが上記ステップS20で送信した利用者の降車情報を受信する(ステップS21)と、利用者が乗車した列車が到着する番線(ホーム)を判定し(ステップS22)、使用する移動ロボットを選択する(ステップS23)。そして、ステップS22で判定した番線情報と乗車した号車情報および使用する改札口の情報を、選択したロボットへ送信する(ステップS24)。
【0039】
その後、降車駅のエッジサーバは、指令を与えたロボットから受信した位置信号情報と計測データとから位置を把握して走行方向などの動作指示を開始する(ステップS25)。また、駅構内の映像カメラからの画像データに基づいて指令を与えたロボットの監視を開始する(ステップS26)。そして、当該ロボットが利用者を載せて指定の改札口へ到着したのを確認すると処理を終了する(ステップS27)。なお、ロボットは、改札口へ到着した際に、利用者の携帯端末22もしくは交通系ICカード等による改札の出場処理(運賃の電子決済を含む)を実行するようにしても良い。
また、映像カメラからの画像に基づいて移動途中でトラブルが発生したと判断した場合には、当該駅の駅係員の携帯端末等へトラブルの発生を通知するようにしてもよい。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、統括サーバ30に、エッジサーバ20A,20B,20C,20D……からの情報に基づいて、各駅の混雑状況や移動ロボット10の利用状況を把握するとともにAI(人工知能)で人の流動等を推定、予測して、各駅への移動ロボット10の配分や割り振りを決定する機能を持たせるように構成しても良い。また、統括サーバ30が備えるデータベースに周辺のイベントに関する情報を記憶して、移動ロボットの予約を要求してきた利用者が目的地としてイベントを指定した場合に、当該イベントの開催地の情報(住所)をデータベースより読み出して、利用者が使用する駅の改札口を選択するようにしても良い。
【0041】
また、上記実施形態では、移動ロボット10が自分の周りに何があるのか(動く人や日々変わる掲示物など)を把握し自分の進む方向等を決めるための情報を取得するために距離計測器(LiDAR)13A,13Bを設け、駅の3Dマップと距離計測器13A、13Bで計測した距離の情報と照合し、移動しているが、利用者数が少ない駅や広い空間を有する施設であれば、GPSやビーコンなどだけでも自己位置を把握して移動することができるので、距離計測器は必ずしも必要ではなく、省略することが可能である。
【0042】
さらに、上記実施形態では、各駅にエッジサーバ(ローカルサーバ)20を設置しているが、統括サーバ30で各駅の移動ロボット10を制御する構成や、複数の駅の移動ロボット10を共通のエッジサーバ20で制御する構成を採用することも可能である。
また、上記実施形態では、利用者が前もって自己の携帯端末22を用いて移動ロボット10の利用予約を行う場合について説明したが、予約ではなく改札口等で直接移動ロボット10に指令を与え、車椅子利用者を載せてあるいは誘導して移動する機能を有するように構成しても良い。
【0043】
また、移動ロボット10に故障や異常の判定機能を設けて、故障または異常が発生したと判定した場合に、駅員の携帯端末等へ故障や異常の発生を通知するようにしても良い。また、移動ロボット10に、車椅子利用者が操作可能なスイッチボタンもしくは操作パネルあるいはマイクと音声認識機能を設けて、車椅子利用者が利用したい改札口を選択もしくは指定できるように構成しても良い。
さらに、上記実施形態では、エッジサーバ20が移動ロボット10から計測データ等を受信して移動方向を決定し指令を送信するようにしているが、移動ロボット10が3次元計測データとビーコン、WiFiルータまたはGPSから受信した情報および自身の記憶装置に記憶しているマップとルートの情報に基づいて、自から移動方向を決定して移動するようにしても良い。
【0044】
また、上記実施形態では、移動ロボット10が車椅子利用者を載せて移動できるように構成されているが、利用者が手で掴むことができるグリップバー(把手部)をロボットに設けて、歩行する弱視者等を誘導して移動を補助するシステムに応用することも可能である。把手部を設けた場合、移動ロボット10は車椅子を載せる載置部を備えていなくても良い。また、移動ロボット10が載置部を備えている場合においても、車椅子の利用者が歩行可能であれば、利用者をロボットに乗せずに誘導して移動するようにしても良い。
さらに、上記実施形態では、本発明を、駅構内における車椅子利用者の移動を支援するシステムに適用した場合について説明したが、本発明はそれに限定されるものでなく、イベント会場やショッピングモールのような大型店舗、アミューズメント施設内において車椅子利用者の移動を支援するシステムにも利用することができる。なお、イベント会場や大型店舗、アミューズメント施設に適用する場合、乗車駅は利用開始ポイントと、また降車駅は利用終了ポイントと読み替えることで前記実施例を適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 移動ロボット
11 無線通信機(WiFi)
12 信号受信機(WiFiルータ/ビーコン/GPSの受信機)
13A,13B 距離計測器(LiDAR)
14A,14B 走行駆動装置(走行手段:走行用モータ)
15 制御系コントローラ(制御手段)
16 駆動系コントローラ(走行手段)
20 エッジサーバ(ローカルサーバ)
21 通信ネットワーク
22 利用者携帯端末
23 列車運行情報サーバ
24 監視カメラ
30 統括サーバ(クラウドサーバ)
図1
図2
図3
図4
図5