(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187073
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20221212BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094881
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】志白 純
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA33
2H199DA46
3D344AA19
3D344AA21
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】虚像表示位置の位置精度を高めること。
【解決手段】表示ユニット10と、表示ユニットからの表示光を反射させる可動反射部材20と、モータ31の出力トルクで可動反射部材を回転駆動させる駆動部30と、可動反射部材の反射光をアイポイントEPに反射させる反射体40と、原点位置P0で可動反射部材を係止させる係止部材22と、制御装置50と、を備え、制御装置は、イグニッションオフ信号71を検出した際に、表示可能回転領域Si内の可動反射部材を第1回転トルクT1で原点位置まで回転駆動させる第1原点制御部53と、ウェイクアップ信号73を検出した際に、可動反射部材を係止部材に係止させたままモータが脱調するまで第1回転トルクを出力させる第2原点制御部54と、第2原点制御を終えてから、原点位置の可動反射部材を第2回転トルクT2で表示可能回転領域内の要求回転位置まで回転駆動させる表示復帰制御部55と、を備えること。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の乗員に虚像として視認させる表示情報を表示光として出射する表示ユニットと、
前記表示ユニットから出射された前記表示光を反射させる可動反射部材と、
駆動源たるモータを備え、前記モータの出力トルクで前記可動反射部材を軸周りに回転駆動させる駆動部と、
前記可動反射部材で反射させた前記表示光を前記乗員のアイポイントへと反射させる反射体と、
前記表示ユニットからの前記表示光を前記反射体に反射させて当該表示光に基づく虚像を表示させることが可能な表示可能回転領域から外れた原点位置で前記可動反射部材を係止させる係止部材と、
前記駆動部を制御して、前記可動反射部材を表示可能回転領域内で回転駆動させ、前記可動反射部材における前記表示光の反射光の進行方向を変化させる制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
イグニッションオフ信号を検出した際に、前記駆動部を制御して、表示可能回転領域内の前記可動反射部材を前記モータの第1回転方向の出力トルクで前記原点位置まで回転駆動させる第1原点制御部と、
車両のウェイクアップ信号を検出した際に、前記駆動部を制御して、前記可動反射部材を前記係止部材に係止させたまま前記モータが脱調するまで前記第1回転方向の出力トルクを前記モータに出力させる第2原点制御部と、
前記第2原点制御部の第2原点制御を終えてから、前記駆動部を制御して、前記原点位置の前記可動反射部材を前記モータの前記第1回転方向とは逆向きの第2回転方向の出力トルクで表示可能回転領域内の要求回転位置まで回転駆動させる表示復帰制御部と、
を備えることを特徴とした車両用制御装置。
【請求項2】
前記第2原点制御部は、前記ウェイクアップ信号を検出し、かつ、蓄電池の正極端子の再接続を検出しない場合に、前記可動反射部材が前記原点位置に存在しているとの推定に基づいて、前記駆動部を制御して、前記原点位置の前記可動反射部材を前記係止部材に係止させたまま前記モータを脱調させることが可能な前記第1回転方向の出力トルクを前記モータに出力させる一方、前記ウェイクアップ信号を検出し、かつ、前記蓄電池の前記正極端子の再接続を検出した場合に、前記可動反射部材の回転位置が不確定であるとの推定に基づいて、前記駆動部を制御して、前記原点位置からの回転角度が最も大きい表示可能回転領域の上限回転位置の前記可動反射部材を前記原点位置まで回転駆動させ、かつ、前記原点位置まで移動した前記可動反射部材を前記係止部材に係止させたまま前記モータを脱調させることが可能な前記第1回転方向の出力トルクを前記モータに出力させることを特徴とした請求項1に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、車室内の乗員に提供する情報を虚像表示させる車両用表示装置が搭載されている。この車両用表示装置は、表示情報に関わる表示光を出射する表示ユニットと、この表示ユニットから出射された表示光を反射させる反射部材と、この反射部材からの反射光を乗員のアイポイントへと反射させる反射体と、を備えた所謂ヘッドアップディスプレイ装置であり、その表示光に応じた表示情報を乗員に虚像として視認させる。また、この車両用表示装置は、その反射部材を回転駆動させるモータを備えており、この反射部材を表示光に基づく虚像を表示させることが可能な回転領域(表示可能回転領域)の中で回転駆動させることによって、虚像表示位置を変化させることができる。この種の車両用表示装置については、例えば、下記の特許文献1から3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-312312号公報
【特許文献2】特開2003-335148号公報
【特許文献3】特開2004-090713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この車両用表示装置においては、反射部材をモータの出力トルクで表示可能回転領域外の原点位置まで一旦移動させ、その原点位置から反射部材を再び表示可能回転領域内の所定位置まで復帰させることによって、虚像表示位置の位置ずれを解消させることができる。このため、この車両用表示装置においては、虚像表示位置の位置精度を高めるため、適切なタイミングで反射部材の原点位置出しと表示可能回転領域内への復帰を実施することが望ましい。
【0005】
そこで、本発明は、虚像表示位置の位置精度を高めることが可能な車両用表示装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明は、車室内の乗員に虚像として視認させる表示情報を表示光として出射する表示ユニットと、前記表示ユニットから出射された前記表示光を反射させる可動反射部材と、駆動源たるモータを備え、前記モータの出力トルクで前記可動反射部材を軸周りに回転駆動させる駆動部と、前記可動反射部材で反射させた前記表示光を前記乗員のアイポイントへと反射させる反射体と、前記表示ユニットからの前記表示光を前記反射体に反射させて当該表示光に基づく虚像を表示させることが可能な表示可能回転領域から外れた原点位置で前記可動反射部材を係止させる係止部材と、前記駆動部を制御して、前記可動反射部材を表示可能回転領域内で回転駆動させ、前記可動反射部材における前記表示光の反射光の進行方向を変化させる制御装置と、を備え、前記制御装置は、イグニッションオフ信号を検出した際に、前記駆動部を制御して、表示可能回転領域内の前記可動反射部材を前記モータの第1回転方向の出力トルクで前記原点位置まで回転駆動させる第1原点制御部と、車両のウェイクアップ信号を検出した際に、前記駆動部を制御して、前記可動反射部材を前記係止部材に係止させたまま前記モータが脱調するまで前記第1回転方向の出力トルクを前記モータに出力させる第2原点制御部と、前記第2原点制御部の第2原点制御を終えてから、前記駆動部を制御して、前記原点位置の前記可動反射部材を前記モータの前記第1回転方向とは逆向きの第2回転方向の出力トルクで表示可能回転領域内の要求回転位置まで回転駆動させる表示復帰制御部と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用表示装置においては、車両側がイグニッションオフ状態になると可動反射部材を原点位置に戻し、車両側が再びイグニッションオン状態になってから再度可動反射部材の原点位置を確立させた上で、この可動反射部材を表示可能回転領域内の要求回転位置まで回転させる。この車両用表示装置においては、これを車両側がイグニッションオフ状態になる度に繰り返す。よって、この車両用表示装置は、虚像表示位置の位置精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の車両用表示装置について示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態の車両用表示装置の動作について説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1原点制御について説明する説明図である。
【
図4】
図4は、+B再接続が無いときの第2原点制御について説明する説明図である。
【
図5】
図5は、+B再接続が有ったときの第2原点制御の一例について説明する説明図である。
【
図6】
図6は、+B再接続が有ったときの第2原点制御の一例について説明する説明図である。
【
図7】
図7は、表示復帰制御について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る車両用表示装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[実施形態]
本発明に係る車両用表示装置の実施形態の1つを
図1から
図7に基づいて説明する。
【0011】
図1の符号1は、実施形態の車両用表示装置を示す。この車両用表示装置1は、車両(自動車等)の車室内の乗員に提供する情報を虚像表示させる所謂ヘッドアップディスプレイ装置である。
【0012】
車両用表示装置1は、車室内の乗員に虚像として視認させる表示情報を表示光として出射する表示ユニット10を備える(
図1)。更に、この車両用表示装置1は、その表示ユニット10から出射された表示光を反射させる可動反射部材20と、駆動源たるモータ31を備え、このモータ31の出力トルクで可動反射部材20を軸周りに回転駆動させる駆動部30と、を備える(
図1)。また更に、この車両用表示装置1は、その可動反射部材20で反射させた表示光を乗員のアイポイントEPへと反射させる反射体40を備える(
図1)。また更に、この車両用表示装置1は、表示ユニット10と駆動部30に対する制御を行う制御装置50を備える(
図1)。
【0013】
この車両用表示装置1は、表示ユニット10と可動反射部材20と駆動部30を内方に収容させる筐体61と、この筐体61の開口を塞ぐ透明のカバー62と、を備える(
図1)。そして、この車両用表示装置1においては、カバー62を露出させた状態で車室内のインスツルメントパネルPiの中に表示ユニット10と可動反射部材20と駆動部30とが収容される(
図1)。この車両用表示装置1においては、表示ユニット10から出射された表示光の虚像を乗員に視認させるときに、可動反射部材20で反射された表示光をカバー62から筐体61の外に出射させ、その先に存在している反射体40に投影させる。
【0014】
表示ユニット10は、表示情報を表示光として可動反射部材20に向けて出射させるものであれば、如何様な形態や構成のものであってもよい。この例示の表示ユニット10は、図示しないが、バックライトとしての光源と、表示情報を表示する表示器と、を備える。この表示ユニット10においては、光源から表示器に向けて光を出射させ、その光源からの入射光に応じた表示情報の表示光を表示器から出射させる。
【0015】
例えば、表示器は、光源の出射光を裏面から入射させ、その裏面からの入射光に応じた表示光を表面から出射させるものとして構成されている。例えば、この表示器としては、光透過型のTFT液晶(Thin Film Transistor Liquid Crystal Display)等が用いられる。この表示器は、例えば、文字、数字、図形等の画像情報を表示情報として表示させる。制御装置50には、この表示器を制御して、その表示情報の表示制御を行う表示光制御部51が設けられている(
図1)。
【0016】
この表示ユニット10は、例えば、その表示器から可動反射部材20に向けて表示光を出射させる。但し、この表示ユニット10は、表示器から出射された表示光を可動反射部材20に向けて反射させる反射部材を備えるものであってもよい。その反射部材は、表示器から出射された表示光を拡大させて反射させる拡大ミラーである。この反射部材としては、例えば、非球面(自由曲面)ミラーが用いられる。
【0017】
可動反射部材20は、表示ユニット10から出射された表示光を反射体40に向けて反射させる反射面20aを有する(
図1)。例えば、この可動反射部材20には、表示ユニット10の反射部材と同じように、表示ユニット10から出射された表示光を拡大させて反射させる拡大ミラーが用いられる。この可動反射部材20としては、例えば、非球面(自由曲面)ミラーが用いられる。
【0018】
反射体40は、可動反射部材20で反射された表示光をアイポイントEPへと反射させる反射面40aを有する(
図1)。ここで示す反射体40は、その反射面40aで可動反射部材20からの反射光をアイポイントEPへと反射させると共に、車外からの光を乗員側に出射させるハーフミラーとして形成されている。例えば、この反射体40は、フロントウインドシールドWfの曲面形状に沿わせた板状に形成され、合せガラスのフロントウインドシールドWfの中に中間膜と共に封止される。また、この反射体40は、フロントウインドシールドWfの曲面形状に沿わせた板状に形成され、フロントウインドシールドWfの車室内側の壁面に接着剤で貼り付けられたものであってもよい。また、この反射体40は、フロントウインドシールドWfを車室内側から覆うコンバイナであってもよい。
【0019】
ここで、可動反射部材20は、車幅方向を軸線方向とする回転軸21を有している。この可動反射部材20は、その回転軸21の軸周りに回転させることによって、表示ユニット10から出射された表示光の反射面20aへの入射角度を変化させ、かつ、この反射面20aから反射体40に向けて反射させる表示光の出射角度を変化させる。そして、この可動反射部材20は、その反射体40に向けた表示光の出射角度を変化させることによって、その表示光に関わる虚像の結像位置(表示位置)を車両上下方向で変化させる。
【0020】
この可動反射部材20の回転を担う駆動部30は、例えば、先のモータ31の出力トルクを回転軸21に伝える動力伝達機構(図示略)を備えている。その動力伝達機構は、例えば、歯車群から成る。ここで示すモータ31には、ステッピングモータを用いている。
【0021】
この車両用表示装置1においては、虚像を乗員に視認させないとき及び虚像を乗員に視認させる必要がないときに、表示ユニット10からの表示光を反射体40に向けて反射させることができず、規定された虚像表示位置の上限位置と下限位置の範囲(以下、「虚像表示範囲」という。)の中で虚像を表示させることができない原点位置P0に可動反射部材20を配置しておく。虚像を乗員に視認させないときとは、例えば、乗員が虚像を表示させぬよう車両側に指令を行ったときなどである。また、虚像を乗員に視認させる必要がないときとは、車両を駐車させるときなどである。
【0022】
駆動部30は、表示ユニット10から出射された表示光の虚像を乗員に視認させるときに、表示ユニット10からの表示光を反射体40に反射させて当該表示光に基づく虚像を表示させることが可能な回転領域(以下、「表示可能回転領域」という。)Siまで原点位置P0から可動反射部材20を回転駆動させる。具体的に、その表示可能回転領域Siとは、表示ユニット10からの表示光を反射体40に向けて反射させることが可能で、かつ、規定された虚像表示範囲内で虚像を表示させることが可能な可動反射部材20の回転位置の範囲のことである。駆動部30は、その表示可能回転領域Si内で可動反射部材20を回転駆動させることによって、虚像表示範囲内で虚像表示位置を変化させる。
【0023】
制御装置50には、この駆動部30を制御し、表示可能回転領域Si内で可動反射部材20を回転駆動させることによって、虚像の表示位置を制御する表示位置制御部52が設けられている(
図1)。この表示位置制御部52は、駆動部30を制御して、可動反射部材20を表示可能回転領域Si内で回転駆動させ、この可動反射部材20における表示光の反射光の進行方向を変化させる。
【0024】
例えば、ここで示す車両用表示装置1においては、可動反射部材20を表示可能回転領域Siの下限回転位置Pminまで回転させることによって、虚像を下限位置で表示させ、可動反射部材20を表示可能回転領域Siの上限回転位置Pmaxまで回転させることによって、虚像を上限位置で表示させる。よって、駆動部30は、要求虚像表示位置が下限位置の場合、その要求虚像表示位置に応じた要求回転位置が表示可能回転領域Siの下限回転位置Pminとなり、この下限回転位置Pminまで可動反射部材20を回転駆動させる。また、駆動部30は、要求虚像表示位置が上限位置の場合、その要求虚像表示位置に応じた要求回転位置が表示可能回転領域Siの上限回転位置Pmaxとなり、この上限回転位置Pmaxまで可動反射部材20を回転駆動させる。また、駆動部30は、要求虚像表示位置が虚像表示範囲内の何れかの場所となった場合、その要求虚像表示位置に応じた要求回転位置まで可動反射部材20を回転駆動させる。
【0025】
また、この駆動部30は、虚像を乗員に視認させないとき及び虚像を乗員に視認させる必要がないときに、表示可能回転領域Siから外れた原点位置P0まで可動反射部材20を回転駆動させる。この車両用表示装置1は、その原点位置P0への可動反射部材20の回転駆動が行われたときに、その原点位置P0で可動反射部材20を係止させる係止部材22を備えている(
図1)。
【0026】
駆動部30は、表示可能回転領域Siから原点位置P0まで可動反射部材20を回転駆動させるとき、そして、表示可能回転領域Siの上限回転位置Pmax側から下限回転位置Pmin側まで可動反射部材20を回転駆動させるときに、モータ31に第1回転方向の出力トルク(以下、「第1回転トルク」という。)T1を発生させる。また、駆動部30は、原点位置P0から表示可能回転領域Siまで可動反射部材20を回転駆動させるとき、そして、表示可能回転領域Siの下限回転位置Pmin側から上限回転位置Pmax側まで可動反射部材20を回転駆動させるときに、モータ31に第1回転方向とは逆向きの第2回転方向の出力トルク(以下、「第2回転トルク」という。)T2を発生させる。例えば、ここで示すモータ31においては、第2回転方向を正転とし、第1回転方向を逆転とする。
【0027】
ここで、制御装置50は、虚像表示位置の位置ずれの発生の有無に拘わらず、その可動反射部材20を所定のタイミングで原点位置P0に戻すことによって、改めて可動反射部材20を表示可能回転領域Siまで回転駆動させた際の虚像表示位置の位置精度を向上させる。この制御装置50は、車両のイグニッションオフを契機にして、虚像表示位置の位置ずれ解消制御を実行する。
【0028】
制御装置50は、イグニッションオフ信号(IG信号)71(
図1)を検出した際に、駆動部30を制御して、表示可能回転領域Si内の可動反射部材20をモータ31の第1回転トルクT1で原点位置P0まで回転駆動させる第1原点制御部53を備える(
図1)。この第1原点制御部53は、この表示可能回転領域Si内の可動反射部材20を原点位置P0まで戻す第1原点制御を次のようにして行う。
【0029】
第1原点制御部53は、
図2に示す如く、車両がイグニッションオフになったのか否かを判定する(ステップST1)。この第1原点制御部53は、ステップST1において、車両側からのイグニッションオフ信号71の入力を検出することによって、車両がイグニッションオフになったのか否かを判定する。この第1原点制御部53は、例えば、イグニッションオフ信号71が検出されるまでステップST1の判定を繰り返す。
【0030】
第1原点制御部53は、
図2に示す如く、イグニッションオフ信号71を検出した際に、イグニッションオフ状態の継続を判定するためのタイマー処理を行う(ステップST2)。この第1原点制御部53は、ステップST2において、イグニッションオフ信号71を検出してからの経過時間(以下、「イグニッションオフ経過時間」という。)tが所定時間(以下、「イグニッションオフ判定時間」という。)t0を超えたのか否かを判定する(t>t0?)。ここで、車両においては、イグニッションオフになってから所定時間経過後にシステムのスリープ処理が行われる。このため、ステップST2で用いるイグニッションオフ判定時間t0は、そのイグニッションオフ後にシステムのスリープ処理に入るまでの設定時間から第1原点制御の実行に要する時間を減算した時間又はそれよりも短い時間に設定する。
【0031】
この第1原点制御部53は、例えば、イグニッションオフ信号71を検出してからイグニッションオフ判定時間t0を超えるまでにイグニッションオン信号を検出したならば、
図2に示す如く、タイマー処理を止めて、ステップST1に戻る。一方、この第1原点制御部53は、例えば、イグニッションオフ信号71を検出してからイグニッションオフ判定時間t0を超えるまでにイグニッションオン信号を検出しなければ、
図2に示す如く、イグニッションオフ経過時間tがイグニッションオフ判定時間t0を超えたと判定し、システムのスリープ処理が行われる前に第1原点制御を実行する(ステップST3)。
【0032】
第1原点制御部53は、ステップST3において、駆動部30を制御して、可動反射部材20を表示可能回転領域Si内における現時点の回転位置Pnから原点位置P0まで回転させることが可能な第1回転トルクT1をモータ31に出力させる(
図3)。この第1原点制御部53は、ステップST3において、可動反射部材20を表示可能回転領域Si内における現時点の回転位置Pnから原点位置P0まで回転させるために必要なモータ31の第1回転方向のステップ数を演算し、そのステップ数でモータ31を駆動制御する。これにより、可動反射部材20は、表示可能回転領域Si内における現時点の回転位置Pnから原点位置P0まで回転させられる。そして、この可動反射部材20は、この回転に伴い係止部材22に当接して、この係止部材22に原点位置P0で係止される。
【0033】
車両においては、この第1原点制御を終えた後、スリープ処理が実行される。このため、制御装置50には、
図2に示す如く、車両側からスリープ信号72(
図1)が入力される(ステップST4)。
【0034】
制御装置50は、その後、車両側がイグニッションオン状態になり、車両のシステムの再起動処理(所謂ウェイクアップ処理)が行われて、そのウェイクアップ信号73(
図1)が車両側から入力されたときに、可動反射部材20を表示可能回転領域Siに復帰させる。この車両用表示装置1においては、その復帰の前に可動反射部材20を原点位置P0に存在させておくことで、可動反射部材20が表示可能回転領域Siに移動した際の要求回転位置の位置精度(つまり、虚像表示位置の位置精度)が正確なものとなる。このため、制御装置50は、復帰前の可動反射部材20を原点位置P0に確実に存在させておくべく、車両のウェイクアップ信号73を検出した際に、駆動部30を制御して、可動反射部材20を係止部材22に係止させたままモータ31が脱調するまで第1回転トルクT1をモータ31に出力させる第2原点制御部54を備える(
図1)。この第2原点制御部54は、この可動反射部材20を原点位置P0に確実に存在させるための第2原点制御を次のようにして行う。
【0035】
第2原点制御部54は、
図2に示す如く、車両のウェイクアップ信号73を検出した際に(ステップST5)、車両の蓄電池の正極端子の再接続(+B再接続)が有ったか否か(例えば、その蓄電池の交換があったか否か等)を判定する(ステップST6)。
【0036】
蓄電池の交換が無い等、+B再接続が無かった場合には、車両の常時電源(+B)が接続状態のままで、例えば、制御装置50のRAM(Random access memory)に可動反射部材20が原点位置P0に存在しているなどの情報が残っている。このため、第2原点制御部54は、車両側からの+B信号74が入力されたままの場合、又は、そのような情報がRAMに残っている場合、ステップST6で+B再接続が無かったと判定し、その情報に基づいて可動反射部材20が原点位置P0に存在していると推定する。一方、蓄電池の交換があった場合等、+B再接続が有った場合には、車両の常時電源(+B)が一旦断たれて、例えば、制御装置50のRAMに記録された情報(可動反射部材20が原点位置P0に存在しているなどの情報)が消去されている。このため、第2原点制御部54は、そのような情報がRAMに残っていなければ、ステップST6で+B再接続が有ったと判定し、可動反射部材20の回転位置が不確定であると推定する。
【0037】
第2原点制御部54は、
図2に示す如く、ウェイクアップ信号73を検出し、かつ、+B再接続を検出しない場合に、可動反射部材20が原点位置P0に存在しているとの推定に基づいて、可動反射部材20が原点位置P0のときの第2原点制御を実行する(ステップST7)。この第2原点制御部54は、ステップST7において、駆動部30を制御して、原点位置P0の可動反射部材20を係止部材22に係止させたままモータ31を脱調させることが可能な第1回転トルクT1をモータ31に出力させる(
図4)。この第2原点制御部54は、ステップST7において、原点位置P0の可動反射部材20を係止部材22に係止させたままモータ31を脱調させるために必要なモータ31の第1回転方向のステップ数を演算し、そのステップ数でモータ31を駆動制御する。これにより、このときの車両用表示装置1においては、確実に可動反射部材20が原点位置P0に存在することになる。
【0038】
一方、第2原点制御部54は、
図2に示す如く、ウェイクアップ信号73を検出し、かつ、+B再接続を検出した場合に、可動反射部材20の回転位置が不確定であるとの推定に基づいて、可動反射部材20の回転位置が不確定のときの第2原点制御を実行する(ステップST8)。この第2原点制御部54は、ステップST8において、駆動部30を制御して、原点位置P0からの回転角度が最も大きい表示可能回転領域Siの上限回転位置Pmaxに可動反射部材20が存在していたとしても、この可動反射部材20を原点位置P0まで移動させることが可能な第1回転トルクT1をモータ31に出力させる(
図5及び
図6)。よって、この第2原点制御部54は、上限回転位置Pmaxの可動反射部材20を原点位置P0まで回転駆動させ、かつ、原点位置P0まで移動した可動反射部材20を係止部材22に係止させたままモータ31を脱調させることが可能な第1回転トルクT1をモータ31に出力させる。この第2原点制御部54は、ステップST8において、可動反射部材20を表示可能回転領域Siの上限回転位置Pmaxから原点位置P0まで回転させるために必要なモータ31の第1回転方向のステップ数を演算し、かつ、原点位置P0の可動反射部材20を係止部材22に係止させたままモータ31を脱調させるために必要なモータ31の第1回転方向のステップ数を演算し、これらのステップ数の合計値でモータ31を駆動制御する。これにより、このときの車両用表示装置1においては、確実に可動反射部材20が原点位置P0に存在することになる。例えば、
図5は、+B再接続が行われるまでに可動反射部材20が表示可能回転領域Si内まで動いてしまった場合の第2原点制御を示すものある。また、
図6は、+B再接続が行われても、第1原点制御の実行に伴う可動反射部材20の原点位置P0が維持されている場合の第2原点制御を示すものある。
【0039】
制御装置50は、ステップST7又はステップST8の第2原点制御を終えてから、原点位置P0の可動反射部材20を表示可能回転領域Si内の要求回転位置まで回転させる。よって、この制御装置50は、その第2原点制御を終えてから、駆動部30を制御して、原点位置P0の可動反射部材20をモータ31の第2回転トルクT2で表示可能回転領域Si内の要求回転位置まで回転駆動させる表示復帰制御部55を備える(
図1)。この表示復帰制御部55は、この原点位置P0の可動反射部材20を表示可能回転領域Si内に回転させて、虚像表示を復帰させる表示復帰制御を次のようにして行う。
【0040】
表示復帰制御部55は、
図2に示す如く、ステップST7又はステップST8の第2原点制御を終えた後、可動反射部材20における表示可能回転領域Si内の要求回転位置を演算して、表示復帰制御を実行する(ステップST9)。この表示復帰制御部55は、ステップST9において、例えば、乗員が車室内から行った虚像表示位置の指令値又は乗員のアイポイントEPの検出値(撮像装置等でアイポイントEPの位置を検出できる場合)に基づいて要求虚像表示位置を演算し、この要求虚像表示位置に応じた可動反射部材20における表示可能回転領域Si内の要求回転位置を演算する。そして、この表示復帰制御部55は、ステップST9において、駆動部30を制御して、原点位置P0の可動反射部材20を表示可能回転領域Si内の要求回転位置まで回転させることが可能な第2回転トルクT2をモータ31に出力させる(
図7)。この表示復帰制御部55は、ステップST9において、原点位置P0の可動反射部材20を表示可能回転領域Si内の要求回転位置まで回転させるために必要なモータ31の第2回転方向のステップ数を演算し、そのステップ数でモータ31を駆動制御する。これにより、この車両用表示装置1においては、可動反射部材20が表示可能回転領域Si内の要求回転位置に存在することになり、要求虚像表示位置に位置精度の高い虚像を表示させることができる。
【0041】
以上示したように、この車両用表示装置1においては、車両側がイグニッションオフ状態になると可動反射部材20を原点位置P0に戻し、車両側が再びイグニッションオン状態になってから再度可動反射部材20の原点位置P0を確立させた上で、この可動反射部材20を表示可能回転領域Si内の要求回転位置まで回転させる。この車両用表示装置1においては、これを車両側がイグニッションオフ状態になる度に繰り返す。よって、この車両用表示装置1は、虚像表示位置の位置精度を向上させることができる。
【0042】
更に、この車両用表示装置1においては、車両側がイグニッションオフ状態のときに可動反射部材20を原点位置P0に戻しているので、この可動反射部材20の反射面20aに太陽光が当たり難くなっている。よって、この車両用表示装置1は、その反射面20aの太陽光集熱による耐久性の低下を抑制することができる。
【0043】
また更に、この車両用表示装置1においては、+B再接続が無い場合、+B再接続が有った場合よりも第2原点制御の実行時間を短くしているので、車両がウェイクアップ状態になってから虚像を表示させるまでの時間の短縮が可能になる。そして、この車両用表示装置1は、その第2原点制御の実行時間をシステム構成に合わせて設定するだけなので、光学系等のシステム構成が異なる車種に適用するに際して、その設定が容易なものとなる。
【符号の説明】
【0044】
1 車両用表示装置
10 表示ユニット
20 可動反射部材
22 係止部材
30 駆動部
31 モータ
40 反射体
50 制御装置
53 第1原点制御部
54 第2原点制御部
55 表示復帰制御部
71 イグニッションオフ信号
73 ウェイクアップ信号
74 +B信号
EP アイポイント
P0 原点位置
Pmax 上限回転位置
Si 表示可能回転領域
T1 第1回転トルク(第1回転方向の出力トルク)
T2 第2回転トルク(第2回転方向の出力トルク)