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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187074
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20221212BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094882
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】志白 純
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA33
2H199DA46
3D344AA19
3D344AA27
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】虚像表示位置を違和感無く変更させること。
【解決手段】表示ユニット10と、アイボックスEBに向けて、表示ユニットからの表示光を反射させる反射体20と、検出したアイポイントEPに対応するアイボックスを虚像表示対象の設定アイボックスEB0として設定し、表示ユニットからの表示光の進行方向を設定アイボックスに応じて変化させ、設定アイボックスに対応させた虚像表示位置に虚像を表示させる制御装置30と、を備え、制御装置は、アイポイントが設定アイボックスとは異なる別のアイボックスに移動して停止した場合、このアイポイントの停止状態での経過時間tpが判定時間tdよりも短ければ、この停止後のアイポイントに対応するアイボックスを新たな設定アイボックスとして切り替えず、経過時間が判定時間となったときに、停止後のアイポイントに対応するアイボックスを新たな設定アイボックスとして設定すること。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の乗員に虚像として視認させる表示情報を表示光として出射する表示ユニットと、
前記乗員が虚像を視認し得るアイポイントの範囲であるアイボックスに向けて、前記表示ユニットから出射された前記表示光を反射させる反射体と、
検出した前記アイポイントに対応する前記アイボックスを虚像表示対象の設定アイボックスとして設定し、前記表示ユニットから出射させる前記表示光の進行方向を前記設定アイボックスに応じて変化させ、前記設定アイボックスに対応させた虚像表示位置に虚像を表示させる制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記アイポイントが前記設定アイボックスとは異なる別のアイボックスに移動して停止した場合、このアイポイントの停止状態での経過時間が判定時間よりも短ければ、この停止後のアイポイントに対応するアイボックスを新たな設定アイボックスとして切り替えず、前記経過時間が前記判定時間となったときに、前記停止後のアイポイントでアイポイント位置が確定したと判定し、この確定したアイポイント位置のアイポイントに対応するアイボックスを新たな設定アイボックスとして設定することを特徴とした車両用制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記表示ユニットからの前記表示光の出射角度を前記設定アイボックスに応じた角度に変更している途中で、現時点の前記設定アイボックスを別の設定アイボックスに切り替えた場合、実行中の前記表示ユニットからの前記表示光の出射角度の変更動作を継続することを特徴とした請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記表示ユニットからの前記表示光の出射角度を前記設定アイボックスに応じた角度に変更している途中で、現時点の前記設定アイボックスを別の設定アイボックスに切り替えた場合、実行中の前記表示ユニットからの前記表示光の出射角度の変更動作を終えてから、前記表示ユニットからの前記表示光の出射角度を切替後の前記設定アイボックスに応じた角度に変更することを特徴とした請求項1又は2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、車両走行中に前記設定アイボックスの切り替えを許可し、停車中に前記設定アイボックスの切り替えを禁止することを特徴とした請求項1,2又は3に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、車室内の乗員に提供する情報を虚像表示させる車両用表示装置が搭載されている。この車両用表示装置は、表示情報に関わる表示光を出射する表示ユニットと、この表示ユニットから出射された表示光を反射させる反射部材と、この反射部材からの反射光を乗員のアイポイントへと反射させる反射体と、を備えた所謂ヘッドアップディスプレイ装置であり、その表示光に応じた表示情報を乗員に虚像として視認させる。また、この車両用表示装置は、その反射部材を回転駆動させるモータを備えており、この反射部材を表示光に基づく虚像を表示させることが可能な回転領域(表示可能回転領域)の中で回転駆動させることによって、虚像表示位置を変化させることができる。この種の車両用表示装置については、例えば、下記の特許文献1及び2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-015936号公報
【特許文献2】国際公開第2017/138242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この車両用表示装置においては、虚像の視認が可能なアイポイントの範囲を示すアイボックスが複数設定されており、或るアイボックスの中でアイポイントが移動したとしても、このアイボックスに対応させた虚像表示位置に虚像を表示させる。一方、この車両用表示装置においては、アイポイントが別のアイボックスに移動した際に、新たなアイボックスに対応させた虚像表示位置に虚像を表示させる。このため、従来の車両用表示装置は、例えば、複数のアイボックスに跨がってアイポイントが移動した場合、又は、アイポイントの移動に伴ってアイボックスを切り替えた後、直ぐに別のアイボックスにアイポイントが移動した場合、アイボックスを切り替える度に虚像表示位置の変更が繰り返されるので、虚像が虚像表示位置の移動と停止を繰り返しながらカクカクした引っ掛かりのある動きをしてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、虚像表示位置を違和感無く変更させることが可能な車両用表示装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明は、車室内の乗員に虚像として視認させる表示情報を表示光として出射する表示ユニットと、前記乗員が虚像を視認し得るアイポイントの範囲であるアイボックスに向けて、前記表示ユニットから出射された前記表示光を反射させる反射体と、検出した前記アイポイントに対応する前記アイボックスを虚像表示対象の設定アイボックスとして設定し、前記表示ユニットから出射させる前記表示光の進行方向を前記設定アイボックスに応じて変化させ、前記設定アイボックスに対応させた虚像表示位置に虚像を表示させる制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記アイポイントが前記設定アイボックスとは異なる別のアイボックスに移動して停止した場合、このアイポイントの停止状態での経過時間が判定時間よりも短ければ、この停止後のアイポイントに対応するアイボックスを新たな設定アイボックスとして切り替えず、前記経過時間が前記判定時間となったときに、前記停止後のアイポイントでアイポイント位置が確定したと判定し、この確定したアイポイント位置のアイポイントに対応するアイボックスを新たな設定アイボックスとして設定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用表示装置は、アイポイントが現時点の設定アイボックスとは異なる別のアイボックスへと移動する度に、虚像表示位置の変更を繰り返さず、現時点の設定アイボックスとは異なる別のアイボックスへと移動したアイポイントが所定時間(判定時間)の間その場所で止まったときに、設定アイボックスを切り替えて、この新たな設定アイボックスに応じた虚像表示位置に虚像を表示させる。従って、この車両用表示装置においては、虚像表示位置の移動と停止を繰り返しながらカクカクした引っ掛かりのある虚像の動きが抑制され、虚像表示位置の変化が煩わしさのない滑らかなものとなる。よって、この車両用表示装置は、乗員にとって違和感の無い虚像表示位置の変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の車両用表示装置について示す模式図である。
図2図2は、設定アイボックス切替処理の動作について説明するフローチャートである。
図3図3は、設定アイボックス切替処理について説明する説明図である。
図4図4は、モータ回転制御処理の動作について説明するフローチャートである。
図5図5は、モータ回転制御処理について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る車両用表示装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[実施形態]
本発明に係る車両用表示装置の実施形態の1つを図1から図5に基づいて説明する。
【0011】
図1の符号1は、実施形態の車両用表示装置を示す。この車両用表示装置1は、車両(自動車等)の車室内の乗員に提供する情報を虚像表示させる所謂ヘッドアップディスプレイ装置である。
【0012】
車両用表示装置1は、車室内の乗員に虚像として視認させる表示情報を表示光として出射する表示ユニット10と、乗員が虚像を視認し得るアイポイントEPの範囲であるアイボックスEBに向けて、表示ユニット10から出射された表示光を反射させる反射体20と、を備える(図1)。この例示では、そのアイボックスEBとして、車両下方から車両上方に向けて並べられた第1アイボックスEB1と第2アイボックスEB2と第3アイボックスEB3の3つが用意されている。更に、この車両用表示装置1は、表示ユニット10に対する制御を行う制御装置30を備える(図1)。
【0013】
この車両用表示装置1は、表示ユニット10を内方に収容させる筐体41と、この筐体41の開口を塞ぐ透明のカバー42と、を備える(図1)。そして、この車両用表示装置1においては、カバー42を露出させた状態で車室内のインスツルメントパネルPiの中に表示ユニット10が収容される(図1)。この車両用表示装置1においては、表示ユニット10から出射された表示光の虚像を乗員に視認させるときに、その表示光をカバー42から筐体41の外に出射させ、その先に存在している反射体20に投影させる。
【0014】
表示ユニット10は、表示情報を表示光として反射体20に向けて出射させるものであれば、如何様な形態や構成のものであってもよい。この例示の表示ユニット10は、表示情報の表示光を出射させる表示装置11を少なくとも備える(図1)。この表示装置11は、図示しないが、バックライトとしての光源と、表示情報を表示する表示器と、を備える。この表示装置11においては、光源から表示器に向けて光を出射させ、その光源からの入射光に応じた表示情報の表示光を表示器から出射させる。
【0015】
例えば、表示器は、光源の出射光を裏面から入射させ、その裏面からの入射光に応じた表示光を表面から出射させるものとして構成されている。例えば、この表示器としては、光透過型のTFT液晶(Thin Film Transistor Liquid Crystal Display)等が用いられる。この表示器は、例えば、文字、数字、図形等の画像情報を表示情報として表示させる。制御装置30には、この表示器を制御して、その表示情報の表示制御を行う表示光制御部31が設けられている(図1)。
【0016】
この表示ユニット10は、その表示装置11から出射された表示光を反射させる反射部材を少なくとも1つ備えており、1つの反射部材を回転させることによって、反射体20に向けて出射させる表示光の出射角度を変化させる。ここで示す表示ユニット10においては、その回転可能な反射部材(以下、「可動反射部材」という。)12を1つ備えている(図1)。そして、この表示ユニット10は、駆動源たるモータ13aを備え、このモータ13aの出力トルクで可動反射部材12を軸周りに回転駆動させる駆動部13を備える(図1)。この表示ユニット10は、表示装置11から可動反射部材12に向けて表示光を出射させ、この可動反射部材12に投影された表示装置11からの表示光を反射体20に向けて反射させる。
【0017】
可動反射部材12は、表示装置11から出射された表示光を反射体20に向けて反射させる反射面12aを有する(図1)。例えば、この可動反射部材12には、表示装置11から出射された表示光を拡大させて反射させる拡大ミラーが用いられる。この可動反射部材12としては、例えば、非球面(自由曲面)ミラーが用いられる。
【0018】
この可動反射部材12は、車幅方向を軸線方向とする回転軸14を有している(図1)。この可動反射部材12は、その回転軸14の軸周りに回転させることによって、表示装置11から出射された表示光の反射面12aへの入射角度を変化させ、かつ、この反射面12aから反射体20に向けて反射させる表示光の出射角度を変化させる。そして、この可動反射部材12は、その反射体20に向けた表示光の出射角度を変化させることによって、その表示光に関わる虚像の結像位置(表示位置)を車両上下方向で変化させる。
【0019】
この可動反射部材12の回転を担う駆動部13は、例えば、先のモータ13aの出力トルクを回転軸14に伝える動力伝達機構(図示略)を備えている。その動力伝達機構は、例えば、歯車群から成る。ここで示すモータ13aには、ステッピングモータを用いている。
【0020】
反射体20は、可動反射部材12で反射された表示光をアイポイントEPに対応するアイボックスEBへと反射させる反射面20aを有する(図1)。ここで示す反射体20は、その反射面20aで可動反射部材12からの反射光をアイポイントEPに対応するアイボックスEBへと反射させると共に、車外からの光を乗員側に出射させるハーフミラーとして形成されている。例えば、この反射体20は、フロントウインドシールドWfの曲面形状に沿わせた板状に形成され、合せガラスのフロントウインドシールドWfの中に中間膜と共に封止される。また、この反射体20は、フロントウインドシールドWfの曲面形状に沿わせた板状に形成され、フロントウインドシールドWfの車室内側の壁面に接着剤で貼り付けられたものであってもよい。また、この反射体20は、フロントウインドシールドWfを車室内側から覆うコンバイナであってもよい。
【0021】
この車両用表示装置1においては、基本的に、検出したアイポイントEPに対応するアイボックスEB(図1の例示では第1アイボックスEB1)を設定し、この設定されたアイボックスEBに対応させた虚像表示位置に虚像を表示させる。よって、制御装置30には、検出したアイポイントEPに対応するアイボックスEBを虚像表示対象の設定アイボックスEB0として設定するアイボックス設定部32と、表示ユニット10から出射させる表示光の進行方向を設定アイボックスEB0に応じて変化させ、この設定アイボックスEB0に対応させた虚像表示位置に虚像を表示させる表示位置制御部33と、が設けられている(図1)。
【0022】
アイボックス設定部32は、乗員のアイポイントEPの検出が可能なアイポイント検出部51(図1)の検出信号に基づいて、現時点のアイポイントEPの情報を得る。アイポイント検出部51としては、例えば、乗員の目の位置の撮影が可能な撮像装置を用いる。アイボックス設定部32は、例えば、その撮像装置の画像情報から両目の位置を検知し、その両目の位置に基づき算出した眉間の位置をアイポイントEPの位置として検出する。そして、このアイボックス設定部32は、検出したアイポイントEPに対応するアイボックスEBを複数のアイボックスEB(ここでは、第1アイボックスEB1、第2アイボックスEB2、第3アイボックスEB3)の中から選び出し、これを設定アイボックスEB0として設定する。ここで、この車両用表示装置1は、自らがアイポイント検出部51を備えていてよく、車両が具備するアイポイント検出部51の検出信号を利用するものであってもよい。
【0023】
表示位置制御部33は、駆動部13を制御し、可動反射部材12を回転駆動させ、この可動反射部材12における表示光の反射光の進行方向を変化させることによって、虚像表示位置を制御する。具体的に、この表示位置制御部33は、駆動部13を制御し、反射体20で反射した表示ユニット10からの出射光(つまり、可動反射部材12の反射光)が設定アイボックスEB0に向かう位置へと可動反射部材12を回転駆動させることによって、その設定アイボックスEB0に対応させた虚像表示位置に虚像を表示させる。
【0024】
ここで、アイボックス設定部32は、アイポイント検出部51の検出信号に基づいてアイポイントEPの位置を検出し始めると、図2に示す如く、その検出したアイポイントEPが現時点の設定アイボックスEB0とは異なる別のアイボックスEBに移動したのか否かを判定する(ステップST1)。
【0025】
例えば、ここで示すアイボックス設定部32は、アイポイント検出部51の検出信号に基づいて、所定のサンプリング周期でアイポイントEPの位置を検出している。そして、この車両用表示装置1においては、アイポイントEPの位置とアイボックスEBとの対応関係が予めマップデータ等として用意されている。このため、アイボックス設定部32は、ステップST1において、検出したアイポイントEPの位置に対応するアイボックスEBを算出し、このアイボックスEBと現時点の設定アイボックスEB0とを比較して、検出したアイポイントEPに対応するアイボックスEBが現時点の設定アイボックスEB0とは異なるものであるのか否かを判定する。
【0026】
図3は、サンプリング時間ts(n)を横軸とし、縦軸に、アイポイントEPの位置の検出値Pepと、その検出値Pepの最新値Pep(n)と前回値Pep(n-1)の差分Pepdiffと、を表している(n=0,1,2,3,・・・)。この図3の例示では、第1アイボックスEB1が現時点の設定アイボックスEB0として設定されている。この図3の例示のアイポイントEPは、サンプリング時間ts(1)からts(2)の間で第1アイボックスEB1の中で車両上方に移動し、サンプリング時間ts(2)からts(3)の間で第1アイボックスEB1の中で車両下方に移動している。また、この図3の例示のアイポイントEPは、サンプリング時間ts(3)からts(4)の間で第1アイボックスEB1から第2アイボックスEB2に移動している。
【0027】
よって、この図3の例示において、アイボックス設定部32は、サンプリング時間ts(1)からts(3)の間で、検出したアイポイントEPに対応するアイボックスEBが現時点の設定アイボックスEB0と同じであると判定する。一方、この図3の例示において、アイボックス設定部32は、サンプリング時間ts(4)のときに、検出したアイポイントEPに対応するアイボックスEBが現時点の設定アイボックスEB0(第1アイボックスEB1)とは異なる別のアイボックスEB(第2アイボックスEB2)であると判定する。
【0028】
アイボックス設定部32は、図2に示す如く、検出したアイポイントEPに対応するアイボックスEBが現時点の設定アイボックスEB0と同じであり、アイポイントEPが現時点の設定アイボックスEB0とは異なる別のアイボックスEBに移動していないとステップST1で判定した場合、このステップST1を繰り返す。
【0029】
一方、このアイボックス設定部32は、図2に示す如く、検出したアイポイントEPに対応するアイボックスEBが現時点の設定アイボックスEB0とは異なる別のアイボックスEBであり、アイポイントEPが現時点の設定アイボックスEB0とは異なる別のアイボックスEBに移動したとステップST1で判定した場合、このアイポイントEPの移動が止まったのか否かを判定する(ステップST2)。
【0030】
このアイボックス設定部32は、所定のサンプリング周期でアイポイントEPの位置を検出する度に、その検出値Pepの最新値Pep(n)と前回値Pep(n-1)の差分Pepdiffを算出している(図3)。アイボックス設定部32は、ステップST2において、その差分Pepdiffが「0」であれば、アイポイントEPの移動が無かったと判定し、その差分Pepdiffが「0」以外であれば、アイポイントEPの移動が有ったと判定する。この図3の例示において、アイボックス設定部32は、サンプリング時間ts(13)とts(16)のときに、その差分Pepdiffが「0」になったので、アイポイントEPの移動が無かったと判定する。一方、この図3の例示において、アイボックス設定部32は、サンプリング時間ts(1)からts(12)まで、その差分Pepdiffが「0」にならないので、アイポイントEPの位置を検出する度に、アイポイントEPの移動が有ったと判定する。
【0031】
アイボックス設定部32は、図2に示す如く、アイポイントEPの移動が有り、その移動が止まっていないとステップST2で判定した場合、ステップST1に戻る。ステップST1に戻したアイボックス設定部32は、このステップST1において、次のサンプリング周期で検出したアイポイントEPに対応するアイボックスEBが1つ前のステップST1で算出されたアイボックスEBのままであれば、そのアイポイントEPが現時点の設定アイボックスEB0とは異なる別のアイボックスEBに移動しているので、ステップST2に進む。図3の例示では、サンプリング時間ts(5)のときに相当する。また、ステップST1に戻したアイボックス設定部32は、このステップST1において、次のサンプリング周期で検出したアイポイントEPに対応するアイボックスEBが1つ前のステップST1で算出されたアイボックスEBとも現時点の設定アイボックスEB0とも異なる場合、そのアイポイントEPが現時点の設定アイボックスEB0とは異なる別のアイボックスEBに移動しているので、ステップST2に進む。図3の例示では、サンプリング時間ts(6)のときに相当する。一方、このステップST1に戻したアイボックス設定部32は、このステップST1において、次のサンプリング周期で検出したアイポイントEPに対応するアイボックスEBが現時点の設定アイボックスEB0と同じ場合(つまり、アイポイントEPが現時点の設定アイボックスEB0に戻った場合)、このステップST1を繰り返す。
【0032】
アイボックス設定部32は、図2に示す如く、アイポイントEPの移動が無く、その移動が止まったとステップST2で判定した場合(つまり、アイポイントEPが現時点の設定アイボックスEB0から別のアイボックスEBに移動して停止した場合)、このアイポイントEPの停止状態での経過時間tpのカウントを開始する(ステップST3)。そして、このアイボックス設定部32は、図2に示す如く、アイポイントEPの移動の有無を判定する(ステップST4)。このステップST4の判定は、先のステップST2で説明したものと同じように行う。
【0033】
アイボックス設定部32は、図2に示す如く、アイポイントEPの移動が有ったとステップST4で判定した場合、経過時間tpのカウントをキャンセルし(ステップST5)、ステップST1に戻る。図3の例示では、サンプリング時間ts(14)のときに相当する。このアイボックス設定部32は、ステップST1に戻した後、先の例示と同じステップST1の処理を行う。
【0034】
一方、アイボックス設定部32は、図2に示す如く、アイポイントEPの移動が無かったとステップST4で判定した場合、経過時間tpが判定時間tdになったのか否か(tp=td?)を判定する(ステップST6)。つまり、このアイボックス設定部32は、アイポイントEPの移動が無かったとステップST4で判定した場合、このアイポイントEPの停止状態が判定時間tdになるまで続いたのか否かを判定する。その判定時間tdは、現時点の設定アイボックスEB0とは異なる別のアイボックスEBに移動して停止したアイポイントEPが直ぐに更に別のアイボックスEBに移動する場合と、そのアイポイントEPが停止後のアイボックスEBに止まる場合と、を判別するための閾値であり、サンプリング周期の倍数が設定される。図3の例示では、3周期分のサンプリング時間ts(n)が判定時間tdとして設定されている。
【0035】
アイボックス設定部32は、図2に示す如く、経過時間tpが判定時間tdよりも短く、経過時間tpが判定時間tdに達していないとステップST6で判定した場合、ステップST4に戻る。図3の例示では、サンプリング時間ts(17)からts(18)のときに相当する。
【0036】
一方、アイボックス設定部32は、図2に示す如く、経過時間tpが判定時間tdになったとステップST6で判定した場合、停止後のアイポイントEPでアイポイント位置が確定したと判定する(ステップST7)。図3の例示では、サンプリング時間ts(19)のときに相当する。そして、このアイボックス設定部32は、図2に示す如く、この確定したアイポイント位置のアイポイントEPに対応するアイボックスEBを新たな設定アイボックスEB0として設定し(ステップST8)、この設定アイボックス切替処理を終了する。
【0037】
表示位置制御部33は、このようにして設定された設定アイボックスEB0に基づいて、この設定アイボックスEB0に対応する回転駆動位置へと可動反射部材12を回転駆動させる。図4には、設定アイボックスEB0の切り替えが行われたときのモータ回転制御処理について示している。
【0038】
この表示位置制御部33は、図4に示す如く、設定アイボックスEB0の切り替えが有ったときに(ステップST11)、駆動部13を制御し、その新たな設定アイボックスEB0に対応する回転駆動位置に可動反射部材12を回転駆動させるべく、モータ13aの回転制御を開始する(ステップST12)。
【0039】
図5は、サンプリング時間ts(n)を横軸とし、縦軸に、アイポイントEPの位置の検出値Pepと、その検出値Pepの最新値Pep(n)と前回値Pep(n-1)の差分Pepdiffと、モータ13aに対する制御コマンドと、を表している(n=0,1,2,3,・・・)。この図5の例示では、第1アイボックスEB1が現時点の設定アイボックスEB0として設定されている。この図5の例示のアイポイントEPは、サンプリング時間ts(1)からts(2)の間で第1アイボックスEB1から第2アイボックスEB2に移動している。この図5の例示では、サンプリング時間ts(6)になるまで設定アイボックスEB0の切り替えが行われないので、モータ13aが停止したままになっている。そして、この図5の例示において、アイボックス設定部32は、サンプリング時間ts(6)のときに、停止後のアイポイントEPでアイポイント位置が確定したと判定し、この確定したアイポイント位置のアイポイントEPに対応するアイボックスEB(第2アイボックスEB2)を新たな設定アイボックスEB0として設定する。このため、この図5の例示では、サンプリング時間ts(6)のときに駆動部13の制御を開始し、モータ13aを回転させ始める。そして、この図5の例示では、その後、サンプリング時間ts(17)のときに、切替後の設定アイボックスEB0に対応する回転駆動位置に可動反射部材12が移動し終えるので、このときに駆動部13の制御を終了し、モータ13aを停止させる。
【0040】
ここで、そのモータ13aの回転制御中に乗員がアイポイントEPを現時点の設定アイボックスEB0とは異なる別のアイボックスEBまで移動させないとは限らない。このため、この車両用表示装置1においては、その移動後のアイポイントEPが所定時間(判定時間td)の間その場所に止まっており、かつ、その所定時間(判定時間td)の間に可動反射部材12が要求回転駆動位置に到達していない場合、モータ13aの回転制御中に別の設定アイボックスEB0への切り替えが行われる。図5の例示では、アイポイントEPがサンプリング時間ts(8)からts(9)の間で第2アイボックスEB2から第3アイボックスEB3に移動している。そして、この図5の例示において、アイボックス設定部32は、サンプリング時間ts(13)のときに、その第3アイボックスEB3を新たな設定アイボックスEB0として設定する。
【0041】
そこで、表示位置制御部33は、モータ13aの回転制御中に現時点の設定アイボックスEB0を別の設定アイボックスEB0に切り替えた場合、実行中のモータ13aの回転制御を継続する。つまり、表示位置制御部33は、表示ユニット10からの表示光の出射角度を設定アイボックスEB0に応じた角度に変更している途中で、その現時点の設定アイボックスEB0を別の設定アイボックスEB0に切り替えた場合、実行中の表示ユニット10からの表示光の出射角度の変更動作を継続する。
【0042】
そして、表示位置制御部33は、モータ13aの回転制御中に現時点の設定アイボックスEB0を別の設定アイボックスEB0に切り替えた場合、実行中のモータ13aの回転制御を終えてから、切替後の設定アイボックスEB0に応じたモータ13aの回転制御を実行する。つまり、表示位置制御部33は、表示ユニット10からの表示光の出射角度を設定アイボックスEB0に応じた角度に変更している途中で、その現時点の設定アイボックスEB0を別の設定アイボックスEB0に切り替えた場合、実行中の表示ユニット10からの表示光の出射角度の変更動作を終えてから、表示ユニット10からの表示光の出射角度を切替後の設定アイボックスEB0に応じた角度に変更する。
【0043】
例えば、表示位置制御部33は、図4に示す如く、モータ13aの回転制御を開始した後に、現時点の設定アイボックスEB0とは異なる別の設定アイボックスEB0(現状とは別の設定アイボックスEB0)への切り替えが有ったのか否かを判定する(ステップST13)。図5の例示において、表示位置制御部33は、アイポイントEPがサンプリング時間ts(7)からts(12)の間で現時点の設定アイボックスEB0とは異なる別の設定アイボックスEB0への切り替えが無かったと判定し、サンプリング時間ts(13)のときに現時点の設定アイボックスEB0とは異なる別の設定アイボックスEB0への切り替えが有ったと判定する。
【0044】
表示位置制御部33は、図4に示す如く、現時点の設定アイボックスEB0とは異なる別の設定アイボックスEB0への切り替えが無かったとステップST13で判定した場合、モータ13aの回転制御が終了したのか否かを判定する(ステップST14)。
【0045】
表示位置制御部33は、図4に示す如く、モータ13aの回転制御が終了していないとステップST14で判定した場合、ステップST13に戻る。
【0046】
一方、この表示位置制御部33は、図4に示す如く、モータ13aの回転制御が終了したとステップST14で判定した場合、現時点の設定アイボックスEB0とは異なる別の設定アイボックスEB0への切り替えが行われずに、その現時点の設定アイボックスEB0に応じたモータ13aの回転制御が終了したので、このモータ回転制御処理を終了する。
【0047】
また、この表示位置制御部33は、図4に示す如く、現時点の設定アイボックスEB0とは異なる別の設定アイボックスEB0への切り替えが有ったとステップST13で判定した場合、モータ13aの回転制御が終了したのか否かを判定する(ステップST15)。
【0048】
表示位置制御部33は、図4に示す如く、モータ13aの回転制御が終了していないとステップST15で判定した場合、更に別の設定アイボックスEB0への切り替えが有ったのか否かを判定する(ステップST16)。
【0049】
表示位置制御部33は、図4に示す如く、更に別の設定アイボックスEB0への切り替えが無かったとステップST16で判定した場合、ステップST15に戻る。
【0050】
一方、表示位置制御部33は、図4に示す如く、更に別の設定アイボックスEB0への切り替えが有ったとステップST16で判定した場合、その設定アイボックスEB0の切り替えがモータ回転制御開始時の設定アイボックスEB0への切り替えであるのか否かを判定する(ステップST17)。
【0051】
表示位置制御部33は、図4に示す如く、モータ回転制御開始時の設定アイボックスEB0への切り替えであるとステップST17で判定した場合、ステップST14に進む。
【0052】
この表示位置制御部33は、図4に示す如く、モータ回転制御開始時の設定アイボックスEB0への切り替えではないとステップST17で判定した場合、ステップST15に戻る。
【0053】
表示位置制御部33は、図4に示す如く、モータ13aの回転制御が終了したとステップST15で判定した場合、別の設定アイボックスEB0への切り替えが行われているので、ステップST12に戻り、駆動部13を制御して、切替後の新しい設定アイボックスEB0に対応する回転駆動位置に可動反射部材12を回転駆動させるべく、再びモータ13aの回転制御を開始し、ステップST14でモータ13aの回転制御が終了したと判定されるまで、このモータ回転制御処理を継続する。
【0054】
図5の例示では、サンプリング時間ts(13)で切り替えた設定アイボックスEB0から変更がないので、サンプリング時間ts(17)でモータ13aの回転制御を終えた後、サンプリング時間ts(18)のときに、切替後の設定アイボックスEB0に対応する回転駆動位置に可動反射部材12を回転駆動させるべく、再びモータ13aの回転制御を開始する。
【0055】
以上示したように、アイボックス設定部32は、アイポイントEPが設定アイボックスEB0から別のアイボックスEBに移動して停止した場合、このアイポイントEPの停止状態での経過時間tpが判定時間tdよりも短ければ、この停止後のアイポイントEPに対応するアイボックスEBを新たな設定アイボックスEB0として切り替えない。一方、このアイボックス設定部32は、アイポイントEPが設定アイボックスEB0から別のアイボックスEBに移動して停止した場合、その経過時間tpが判定時間tdとなったときに、停止後のアイポイントEPでアイポイント位置が確定したと判定し、この確定したアイポイント位置のアイポイントEPに対応するアイボックスEBを新たな設定アイボックスEB0として設定する。そして、表示位置制御部33は、その新たな設定アイボックスEB0に基づいて、この設定アイボックスEB0に対応する回転駆動位置へと可動反射部材12を回転駆動させる。つまり、この車両用表示装置1は、アイポイントEPが現時点の設定アイボックスEB0とは異なる別のアイボックスEBへと移動する度に、虚像表示位置の変更を繰り返さず、現時点の設定アイボックスEB0とは異なる別のアイボックスEBへと移動したアイポイントEPが所定時間(判定時間td)の間その場所で止まったときに、設定アイボックスEB0を切り替えて、この新たな設定アイボックスEB0に応じた虚像表示位置に虚像を表示させる。従って、この車両用表示装置1においては、虚像表示位置の移動と停止を繰り返しながらカクカクした引っ掛かりのある虚像の動きが抑制され、虚像表示位置の変化が煩わしさのない滑らかなものとなる。よって、この車両用表示装置1は、乗員にとって違和感の無い虚像表示位置の変更を行うことができる。例えば、この車両用表示装置1は、車両が段差を乗り越えるときなど、アイポイントEPが瞬間的に移動して直ぐに元に戻るような場合に、アイボックスEBの切り替えに伴う虚像表示位置の変更を行わないので、乗員の虚像の視認性という観点で安定した虚像の表示を可能にする。
【0056】
ここで、乗員は、車両走行中よりも停車中にアイポイントEPを頻繁に移動させることがある。このため、制御装置30は、停車中の虚像表示位置の変更に伴う煩わしさを軽減させるべく、車両走行中に設定アイボックスEB0の切り替えを許可し、停車中に設定アイボックスEB0の切り替えを禁止することが望ましい。
【符号の説明】
【0057】
1 車両用表示装置
10 表示ユニット
20 反射体
30 制御装置
32 アイボックス設定部
33 表示位置制御部
51 アイポイント検出部
EB アイボックス
EB0 設定アイボックス
EP アイポイント
td 判定時間
tp 経過時間
図1
図2
図3
図4
図5