(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187079
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】自走式移動体、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20221212BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094889
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】小川 文男
(72)【発明者】
【氏名】住本 勝之
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG10
5H301HH10
5H301MM09
(57)【要約】
【課題】自走式移動体が運用計画による移動の途中であっても、容易に運用計画を一時的に中断する。
【解決手段】自走式移動体は、車輪を駆動するモータと、記憶部に記憶されている運用計画に基づいてモータを制御し車輪を駆動する制御部と、操作者による運用計画の実行を一時的に中断する操作を受け付けた後、操作者が所定の方向へ自走式移動体を牽引又は押圧したことを検出する第1のセンサと、を備え、制御部は、第1のセンサにより操作者による牽引又は押圧が検出された場合、操作者が牽引又は押圧した方向への推進力又は制動力をモータに発生させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を駆動するモータと、記憶部に記憶されている運用計画に基づいて前記モータを制御し車輪を駆動する制御部とを備える自走式移動体であって、
操作者による前記運用計画の実行を一時的に中断する操作を受け付けた後、前記操作者が所定の方向へ前記自走式移動体を牽引又は押圧したことを検出する第1のセンサ、
を備え、
前記制御部は、前記第1のセンサにより前記操作者による牽引又は押圧が検出された場合、前記操作者が牽引又は押圧した方向への推進力又は制動力を前記モータに発生させる、
自走式移動体。
【請求項2】
前記自走式移動体の移動速度を検出するための第2のセンサ、をさらに備え、
前記制御部は、前記第2のセンサを用いて検出された移動速度が上限値を超えた場合に、前記移動速度が前記上限値以下となるように前記モータに制動力を発生させる、
請求項1に記載の自走式移動体。
【請求項3】
前記制御部は、
前記操作者による操作により前記運用計画の実行の一時的な中断を終了する場合、前記運用計画の実行を再開可能な位置まで前記モータに推進力を発生させて前記自走式移動体を移動させる、
請求項1または請求項2に記載の自走式移動体。
【請求項4】
車輪を有する付属台車を連結する連結機構、をさらに備え、
前記連結機構により前記自走式移動体と前記付属台車とが連結された状態において、前記操作者が前記自走式移動体又は前記付属台車を牽引又は押圧することによる圧力を検出する位置に感圧センサが前記第1のセンサとして設けられている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自走式移動体。
【請求項5】
前記モータはサーボモータであって、
前記第2のセンサは前記サーボモータの負荷センサである、
請求項2に記載の自走式移動体。
【請求項6】
前記モータはサーボモータであって、
前記第2のセンサは前記サーボモータの電流変化を検出するセンサである
請求項2に記載の自走式移動体。
【請求項7】
車輪を駆動するモータと、記憶部に記憶されている運用計画に基づいて前記モータを制御し車輪を駆動する制御部とを備える自走式移動体における制御方法であって、
操作者による前記運用計画の実行を一時的に中断する操作を受け付けた後、第1のセンサが、前記操作者が所定の方向へ前記自走式移動体を牽引又は押圧したことを検出するステップと、
前記制御部が、前記第1のセンサにより前記操作者による牽引又は押圧が検出された場合、前記操作者が牽引又は押圧した方向への推進力又は制動力を前記モータに発生させるステップと、
を含む制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自走式移動体、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自律走行が可能な自走式移動体は、障害物を検出する検出センサを備え、進行方向に障害物を検出すると、障害物との衝突などの危険を回避するために停止する仕組みを備えているものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような自走式移動体は、人が介在せずに作業(移動や運搬など)を行うことができるが、危険を回避するために人が接近すると作業を停止し、危険が取り除かれるまでの間、停止した状態が継続してしまうことが多い。例えば、予め立案された運用計画に基づいて自律走行を行う自走式移動体において、自ら障害物を回避して進行する制御を行うことも考えられるが、その制御は複雑であり、また障害物の回避を含む運用計画を立案するには多くの時間とコストがかかる。
【0005】
本開示は、上記した事情に鑑みてなされたもので、運用計画による移動の途中であっても、容易に運用計画を一時的に中断できる自走式移動体、及び制御方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、車輪を駆動するモータと、記憶部に記憶されている運用計画に基づいて前記モータを制御し車輪を駆動する制御部とを備える自走式移動体であって、操作者による前記運用計画の実行を一時的に中断する操作を受け付けた後、前記操作者が所定の方向へ前記自走式移動体を牽引又は押圧したことを検出する第1のセンサ、を備え、前記制御部は、前記第1のセンサにより前記操作者による牽引又は押圧が検出された場合、前記操作者が牽引又は押圧した方向への推進力又は制動力を前記モータに発生させる。
【0007】
また、本開示の一態様は、車輪を駆動するモータと、記憶部に記憶されている運用計画に基づいて前記モータを制御し車輪を駆動する制御部とを備える自走式移動体における制御方法であって、操作者による前記運用計画の実行を一時的に中断する操作を受け付けた後、第1のセンサが、前記操作者が所定の方向へ前記自走式移動体を牽引又は押圧したことを検出するステップと、前記制御部が、前記第1のセンサにより前記操作者による牽引又は押圧が検出された場合、前記操作者が牽引又は押圧した方向への推進力又は制動力を前記モータに発生させるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、自走式移動体が運用計画による移動の途中であっても、容易に運用計画を一時的に中断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る自走式移動体の外観構成の一例を示す斜視図。
【
図2】実施形態に係る自走式移動体と付属台車とが連結された状態の一例を示す図。
【
図3】実施形態に係る自走式移動体のシステム構成の一例を示すブロック図。
【
図4】実施形態に係る自走式移動体のセンサの構成の一例を説明する図。
【
図5】実施形態に係る自走式移動体と付属台車との連結機構を説明する図。
【
図6】実施形態に係る自走式移動体と付属台車とが連結された状態の連結機構を説明する図。
【
図7】実施形態に係るアシストモードにおける制御処理の一例を示すフローチャート。
【
図8】実施形態に係る感圧センサの検出値のパターンを説明する図。
【
図9】実施形態に係る運用復帰モードにおける制御処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
[自走式移動体の構成]
図1は、本実施形態に係る自走式移動体1の外観構成の一例を示す斜視図である。この図に示す自走式移動体1は、移動が可能なように、底面に複数の車輪2を備えている。また、自走式移動体1は、付属台車4と結合するための連結機構3を備えている。付属台車4は、底面の四隅のそれぞれに設けられた支持脚5と、各支持脚5の下端に設けられた車輪6とを備え、筐体の内部に物品を格納して移動可能である。また、付属台車4は、操作者が把持する把持部として取っ手7を備えている。この取っ手7を操作者が把持して付属台車4を単独で移動させることができる。
【0011】
さらに、取っ手7には、図示しないロックボタンが設けられている。このロックボタンは、付属台車4と連結機構3との結合をロック又は結合を解除するための操作子である。例えば、このロックボタンを操作者が操作することにより、付属台車4と連結機構3との脱着が可能である。付属台車4と連結機構3との結合をロックした状態で自走式移動体1を移動させることにより、自走式移動体1と付属台車4とを連結して移動させることができる。
【0012】
図2は、本実施形態に係る自走式移動体1と付属台車4とが連結された状態の一例を示す図である。付属台車4の下方には支持脚5によって空間が形成されており、この空間に自走式移動体1の一部が格納された状態で付属台車4と連結される。これにより、自走式移動体1と付属台車4とをコンパクトな状態で連結させることが可能であり、例えば狭い空間でも移動させやすくすることができる。
【0013】
図3は、本実施形態に係る自走式移動体1のシステム構成の一例を示すブロック図である。この図に示す自走式移動体システムSYSは、自走式移動体1と管制サーバ50とを備え、それぞれが無線ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。管制サーバ50は、自走式移動体1の運用管理を行う管制システムが稼働しており、無線ネットワークNWを介して自走式移動体1と情報や信号の送受信が可能である。例えば、管制サーバ50は、自走式移動体1の運用管理すなわち運用計画の送受信や運行状況の管理などを行う。
【0014】
自走式移動体1は、運用計画記憶部11、マップ記憶部12.センサ13、制御部14、及びサーボモータ15などを備える。運用計画記憶部11は、自走式移動体1の作業(移動や運搬など)の実行や、作業ごとの作業内容や手順、移動目的地などが含まれる運用計画のデータを記憶する。運用計画のデータは、管制サーバ50から送信されて更新される。
【0015】
マップ記憶部12は、自走式移動体1が移動や運搬などの作業を行う建屋や構内の通路や壁、柱等の障害物の配置などの情報と目的地の位置の情報とが含まれるマップデータを記憶する。なお、マップ記憶部12が記憶するマップデータは、屋内に限らず屋外の通路や障害物の配置などの情報と目的地の位置の情報とが含まれてもよい。マップ記憶部12が記憶するマップデータについても、管制サーバ50から送信されて更新される。
【0016】
センサ13は、自走式移動体1が作業(移動や運搬など)を行う際に周囲の障害物を検出するセンサである。例えば、センサ13は、周囲を撮像するカメラ、周囲に存在する物体までの距離を検出する距離センサなどの少なくとも一つを含む。センサ13については、
図4を参照して後述する。
【0017】
制御部14は、運用計画記憶部11、マップ記憶部12、センサ13などからの情報に基づいて自走式移動体1の移動制御を行う。制御部14は、自走式移動体1の移動制御を行う際には、サーボモータ15を制御することにより自走式移動体1の移動速度や移動方向を制御する。サーボモータ15は、少なくとも2つのモータを含んで構成され、それぞれのモータが左右の車輪2に独立して連結されている。制御部14は、それぞれのモータを制御することにより左右の車輪2の回転方向や回転速度を制御し、自走式移動体1を左右前後に移動させることが可能である。また、サーボモータ15は、電流負荷検出部151を備えている。電流負荷検出部151は、サーボモータの電流変化を検出する電流センサ、サーボモータ15の負荷トルクを検出する負荷センサなどを含んで構成されている。電流負荷検出部151は、速度情報を出力する。
【0018】
運用記録ファイル100は、自走式移動体1の移動距離(変位)や移動方向などのデータを所定の期間ごとに区切って記憶するファイルである。制御部14は、所定の期間ごとにレコードを追加し、自走式移動体1の移動距離や移動方向などのデータを時系列順に書き込み運用記録ファイル100を更新する。例えば、運用記録ファイル100は、自走式移動体1内のメモリに記憶される。
【0019】
図4は、本実施形態に係る自走式移動体1のセンサ13の構成の一例を説明する図である。この図は、自走式移動体1と付属台車4とが連結された状態を示す斜視図であり、自走式移動体1側を示している。自走式移動体1は、フロントパネル16と、底面に車輪2(
図1参照)が備えられているメインボディ17とを含んで構成されている。図示するように、フロントパネル16は、メインボディ17の端に直立するように設けられている。この図においてメインボディ17にフロントパネル16が設けられている側の面(すなわち、フロントパネル16の視認できる面を)を、以下では前面と称する。また、自走式移動体1において、フロントパネル16のある方向を前方、その反対方向を後方と称する。
【0020】
センサ13は、3Dカメラ18とLiDAR(Light Detection and Ranging)19を含んで構成されている。3Dカメラ18は、フロントパネル16の前面に設けられている。LiDAR19は、メインボディ17の前面に設けられている。
【0021】
3Dカメラ18は、複数の方向に向けられたカメラ群から構成されており、自走式移動体1の周囲を撮像することが可能である。LiDAR19は、パルス状に発光するレーザー照射に対する散乱光を測定し、物体までの距離や方向を計測酢するセンサである。なお、LiDAR19に代えて又は加えて、赤外線センサやソナーなどを用いてもよい。3Dカメラに代えて、2Dカメラを用いてもよい。
【0022】
なお、センサ13を構成するものではないが、フロントパネル16には表示装置20が設けられている。表示装置20は、例えば液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイなどを含んで構成されている。表示装置20には、各種の情報が表示される。
【0023】
図5は、本実施形態に係る自走式移動体1と付属台車4との連結機構3を説明する図である。
図5(A)は自走式移動体1の側面図、
図5(B)は自走式移動体1を上方から見た平面図である。連結機構3は、自走式移動体1に設けられた切欠部21、22と、付属台車4に設けられたラッチ31、32及び係止板33、34とを含む。また、この連結機構3には、感圧センサ23~26が設けられている。切欠部21、22は、自走式移動体1のメインボディ17の上面に形成された凹部である。切欠部21、22のそれぞれには、フロントパネル16から見て遠い側に感圧センサ23、24がそれぞれ設けられている。また、切欠部21の後方であって、メインボディ17の後方側面には感圧センサ25が設けられている。さらに切欠部22の後方であって、メインボディ17の後方側面には感圧センサ26が設けられている。
【0024】
一方、付属台車4にはメインボディ17の切欠部21、22に対応する位置にそれぞれラッチ31、32が設けられている。付属台車4のラッチ31、32のさらに後方には係止板33、34が突設されている。ラッチ31と係止板33との間隔は、切欠部21の後方側面からメインボディ17の後方側面までの間隔よりやや大きい。ラッチ32と係止板34の間隔も同様に、切欠部22の後方側面からメインボディ17の後方側面までの間隔よりやや大きい。
【0025】
図6は、本実施形態に係る自走式移動体1と付属台車4とが連結された状態の連結機構3を説明する図である。自走式移動体1と付属台車4とが連結された状態では、付属台車4の下部空間に自走式移動体1のメインボディ17が格納され、ラッチ31、32のそれぞれが切欠部21、22のそれぞれと係合して連結される。具体的には、切欠部21、22の凹部のそれぞれの面積は、切欠部21、22に対面するラッチ31、32のそれぞれの面積よりも大きく、切欠部21、22の凹部のそれぞれの空間の中にラッチ31、32のそれぞれが嵌ることで、自走式移動体1と付属台車4とが連結される。これにより、連結された状態では、自走式移動体1と付属台車4とが水平方向の移動において一体的に移動するようになる。例えば、自走式移動体1が付属台車4の前方から下部空間に移動してきたときには、ラッチ31、32は、メインボディ17の後方側面に当接することに応じて上方へ自動的に引っ込み、さらに切欠部21、22の位置まで移動すると凹みに応じて自動的に突出して切欠部21、22のそれぞれと嵌合される。切欠部21、22のそれぞれとラッチ31、32のそれぞれとが嵌合された状態において、切欠部21とラッチ31との間、及び切欠部22とラッチ32との間のそれぞれには少なくとも隙間が存在するように構成されている。
【0026】
また、自走式移動体1のメインボディ17を付属台車4の下部空間に収納して連結しようとした場合に、メインボディ17の後方側面が付属台車4に設けられている係止板33、34に当接して、その位置で係止されるため、連結作業が容易である。なお、自走式移動体1と付属台車4との連結作業をさらに容易にするために、左右方向のガイドレールを設けて、自走式移動体1と付属台車4との位置合わせをしやすくしてもよい。
【0027】
なお、取っ手7(取っ手7-1、7-2)を操作者が握ることにより、ラッチ31、32が上方へ引っ込み、ラッチ31、32と切欠部21、22との係合が解除される。例えば、取っ手7(取っ手7-1、7-2)を操作者が握ることにより、前述した不図示のロックボタンが操作され、ロックボタンと機構的に接続されたラッチ31、32が上方へ引っ込む。
【0028】
自走式移動体1と付属台車4とが連結された状態において、感圧センサ23~26は、操作者が自走式移動体1又は付属台車4を牽引又は押圧することにより生じる圧力を検出する位置に設けられている。例えば制御部14は、感圧センサ23~26(第1のセンサの一例)が検出する圧力に基づいて、操作者が所定の方向へ自走式移動体1を牽引又は押圧したことを検出する。感圧センサ23~26を用いた牽引又は押圧の検出について詳しくは、後述の
図8を参照して説明する。
【0029】
[自走式移動体の動作]
次に、自走式移動体1の動作について説明する。
制御部14は、操作者による自走式移動体1に対する牽引又は押圧が検出された場合、操作者が牽引又は押圧した方向への推進力又は制動力をサーボモータ15に発生させる。これにより、自走式移動体1は、操作者による牽引又は押圧をアシストすることができる。なお、以下では、自走式移動体1が操作者による牽引又は押圧をアシストする動作モードのことを「アシストモード」と称する。
【0030】
(アシストモードへの移行)
まず、運用計画に基づく制御を行う通常の動作モードからアシストモードへの移行について説明する。アシストモードへの移行の方法は、各種の方法を適用することができる。例えば、制御部14は、操作者が取っ手7を把持したことを検出した場合に、アシストモードへ移行してもよい。具体的には、取っ手7の取り付け部分に感圧センサを設けておくことや、取っ手7の表面に静電容量センサを設けておくことにより、制御部14は、これらの感圧センサ又は静電容量センサが人の接触を検出した場合に、操作者が取っ手7を把持したことを検出してアシストモードへ移行してもよい。
【0031】
なお、制御部14は、表示装置20に表示させた操作ボタン、自走式移動体1の筐体に設けられた操作ボタン、或いは自走式移動体1を遠隔操作するためのリモコン(リモートコントローラ)などに対して操作が行われることにより、アシストモードへ移行してもよい。また、制御部14は、センサ13(3Dカメラ18又はLiDAR19)が人の接近を検出した場合にアシストモードへ移行してもよい。また、自走式移動体1が音声認識機能を備え、制御部14は、操作者による音声による指示を受け付けることによりアシストモードへ移行してもよい。
【0032】
また、フロントパネル16とメインボディ17との接合部分に感圧センサを設けてもよく、制御部14は、この感圧センサが圧力を検出した場合にアシストモードへ移行してもよい。例えば、操作者がフロントパネル16を直接押して自走式移動体1させようとする場合に、このフロントパネル16とメインボディ17との接合部分に設けた感圧センサが圧力を検出することにより、制御部14はアシストモードへ移行してもよい。フロントパネル16の面は比較的に広いため、操作者は咄嗟の状況でも直接触れやすく、自走式移動体1を移動させやすい。
【0033】
(アシストモード)
上述のいずれかの方法によりアシストモードへ移行すると、制御部14はアシストモードにおける自走式移動体1の制御を開始する。アシストモードに移行した後、操作者が自走式移動体1を牽引又は押圧するまでの間は待機状態(停止している状態)となる。なお、アシストモードに移行した後、操作者が自走式移動体1を牽引や押圧するまでの間、積極的に制動動作が行われてもよい。不用意に意図せず移動してしまうと危険であるため、制動動作が行われた方が好適な場合がある。そして、制御部14は、所定の方向への操作者による牽引又は押圧を検出すると、牽引又は押圧された方向への推進力を発生する。
【0034】
図7は、本実施形態に係るアシストモードにおける制御処理の一例を示すフローチャートである。まず、制御部14は、現在アシストモードがONしているか否かを判定する(ステップS001)。例えば、制御部14は、操作者による取っ手7の把持を契機としてアシストモードへ移行する場合には、取っ手7の把持を継続して検出している間はアシストモードが継続してONしていると判定してもよい。一方、制御部14は、取っ手7の把持が検出されなくなった場合には、アシストモードがOFFされたと判定してもよい。
【0035】
なお、制御部14は、操作ボタンやリモコンに対する操作者の操作を契機としてアシストモードへ移行する場合には、操作ボタンやリモコンに対して停止の操作がされるまでの間はアシストモードが継続してONしていると判定し、停止の操作がされた場合にアシストモードがOFFされたと判定してもよい。また、制御部14は、センサ13が人(例えば、操作者)の接近を検出したことを契機にアシストモードへ移行した場合は、人の接近を検出している間はアシストモードが継続してONしていると判定し、人の接近が検出されなくなってから所定の時間が経過した場合にアシストモードがOFFされたと判定してもよい。
【0036】
制御部14は、アシストモードがOFFされたと判定した場合(ステップS001:NO)、ステップS002へ進み、運用復帰モード(ステップS002)へ移行する。この運用復帰モードについては後述する。一方、制御部14は、アシストモードがONしていると判定した場合(ステップS001:YES)、ステップS003へ進み、アシストモードの制御を行う。
【0037】
アシストモードの制御において、制御部14は、感圧センサ23~26が検出した圧力の検出値を取得する(ステップS003)。ここで、操作者が自走式移動体1を押圧又は牽引することにより前進、後進、又は旋回させようとすると、感圧センサ23~26は圧力を検出する。制御部14は、この自走式移動体1への押圧又は牽引よる圧力の検出値を感圧センサ23~26から取得する。
【0038】
次に、制御部14は、感圧センサ23~26の検出値を前回取得した時点からの移動距離(変位)及び移動方向のデータを運用記録ファイル100に記録する(ステップS004)。運用記録ファイル100には、アシストモードの開始時点からの移動距離及び移動方向のデータが時系列順に記録される。この記録されたデータは後に運用復帰モードにおいて参照される。
【0039】
なお、制御部14は、例えばオドメトリを用いて自走式移動体1の移動距離及び移動方向を検出する。一例として、制御部14は、各車輪2の回転量を検出し、検出した各車輪2の回転量に基づいて移動距離及び移動方向を求めてもよい。また、工場などを移動経路とする場合には、工場内の床などにひかれている白線などを検知することにより、移動距離及び移動方向を検出してもよい。また、制御部14は、衛星測位システムなどを用いて移動距離及び移動方向を検出してもよい。
【0040】
続いて、制御部14は、感圧センサ23~26のすべての検出値が「非0」(「感圧センサ検出値>0」)であるか否かを判定する(ステップS005)。制御部14は、感圧センサ23~26のすべての検出値が「0」であると判定した場合(ステップS005:No)、制動動作を行う(ステップS006)。
【0041】
制動動作とは、サーボモータ15の出力値を小さくする、或いは出力値がすでに「0の」場合は自走式移動体1の現在の移動方向と逆方向にわずかな推進力を発生するように出力値を調整する動作である。これにより、操作者が自走式移動体1を押したり引いたりする際に、適切な荷重を感じさせることが可能となる。また、自走式移動体1が停止している場合には、制動動作により自走式移動体1が停止している状態を維持させることが可能である。制御部14は、この制動動作を行った後、ステップS001へ戻り、再びアシストモードがONであるか否かを判定する。
【0042】
一方、制御部14は、感圧センサ23~26の検出値のいずれかが「0」でないと判定した場合(ステップS005:YES)、感圧センサ23~26の検出値のパターンを分類する(ステップS007)。
【0043】
図8は、本実施形態に係る感圧センサ23~26の検出値のパターンを説明する図である。前述したように、感圧センサ23、24は、連結された状態で付属台車4のラッチ31、32が嵌合される切欠部21、22の後方側面に設けられているため、付属台車4を後進させる力が加わると、当該力に応じた圧力値を検出する。また、感圧センサ25、26は、連結された状態で付属台車4の係止板33、34の前方側に対面する位置となるメインボディ17の後方側面に設けられているため、付属台車4を前進させる力が加わると、当該力に応じた圧力値を検出する。
【0044】
図8(A)は、前進時の感圧センサ23~26の検出値のパターンを説明する図である。例えば、付属台車4の取っ手7が操作者により押されたときの反作用を連結機構3に設けられている感圧センサで検出する。付属台車4の取っ手7が押されることにより付属台車4を前進させる力(符号201が示す矢印の方向への力)が加わると、感圧センサ25、26に係止板33、34が当接して圧力がかかり、感圧センサ23、24には圧力がかからない。よって、符号202に示す感圧センサの検出結果のように、感圧センサ23、24の検出値が「0」となり、感圧センサ25、26の検出値が圧力に応じた値(「非0」)となる。すなわち、感圧センサ23~26の検出値が符号202に示すようなパターンである場合は、操作者は自走式移動体1を前進させようとしていることとなる。なお、ここでは操作者が取っ手7を把持して付属台車4を後方側から前方へ押す(押圧する)ことにより自走式移動体1を前進させる場合を想定しているが、仮に付属台車4を前方側から前方へ引いた(牽引した)場合も、同様の検出値のパターンとなる。
【0045】
図8(B)は、後進時の感圧センサ23~26の検出値のパターンを説明する図である。例えば、付属台車4の取っ手7が操作者により引かれたときの反作用を連結機構3に設けられている感圧センサで検出する。付属台車4の取っ手7が引かれることにより付属台車4を後進させる力(符号301が示す矢印の方向への力)が加わると、感圧センサ23、24にラッチ31、32が当接して圧力がかかり、感圧センサ25、26には圧力がかからない。よって、符号302に示す感圧センサの検出結果のように、感圧センサ23、24の検出値が圧力に応じた値(「非0」)となり、感圧センサ25、26の検出値が「0」となる。すなわち、感圧センサ23~26の検出値が符号302に示すようなパターンである場合は、操作者は自走式移動体1を後進させようとしていることとなる。なお、ここでは操作者が取っ手7を把持して付属台車4を後方側から後方へ引く(牽引する)ことにより自走式移動体1を前進させる場合を想定しているが、仮に付属台車4を前方側から後方へ押した(押圧した)場合も、同様の検出値のパターンとなる。
【0046】
図8(C)は、右旋回時の感圧センサ23~26の検出値のパターンを説明する図である。例えば、操作者が取っ手7を把持して付属台車4を右旋回させたときの反作用を連結機構3に設けられている感圧センサで検出する。付属台車4を右旋回させる際には、操作者の右手に把持されている取っ手7-1が引かれ、操作者の左手に把持されている取っ手7-2が押される。取っ手7-1が引かれることにより付属台車4を後進させる力(符号401Rが示す矢印の方向への力)が加わると、感圧センサ23にラッチ31が当接して圧力がかかり、感圧センサ24には圧力がかからない。また、取っ手7-2が押されることにより付属台車4を前進させる力(符号401Lが示す矢印の方向への力)が加わると、感圧センサ26に係止板34が当接して圧力がかかり、感圧センサ25には圧力がかからない。よって、符号402に示す感圧センサの検出結果のように、感圧センサ23、26の検出値が圧力に応じた値(「非0」)となり、感圧センサ24、25の検出値が「0」となる。すなわち、感圧センサ23~26の検出値が符号402に示すようなパターンである場合は、操作者は自走式移動体1を右旋回させようとしていることとなる。
【0047】
なお、左旋回させた場合には、取っ手7-1が押され左側の取っ手7-2が引かれるため、
図8(C)の符号402に示す感圧センサ23~26の検出値のパターンとは逆に、感圧センサ24、25の検出値が圧力に応じた値(「非0」)となり、感圧センサ23、26の検出値が「0」となる。
【0048】
このように、感圧センサ23~26からの検出値をパターン分けすることで、感圧センサ23~26を通じて操作者が自走式移動体1をどのように動かしたいのかなどを感知することが可能となる。
【0049】
なお、上述の説明において、感圧センサ23~26の検出値を「0」と「非0」とで判別しているが、感圧センサ23~26の検出値が「0」とは予め設定された第1の閾値未満であることとし、感圧センサ23~26の検出値が「非0」とは予め設定された第2の閾値以上(第1の閾値<第2の閾値)とすることができる。
【0050】
図7に戻り、制御部14は、ステップS007で分類した感圧センサ23~26の検出値のパターンが、前回の検出値のパターンに対して変化したか否かを判定する(ステップS008)。制御部14は、前回の検出値のパターンに対して変化したと判定した場合(ステップS008:YES)、操作者が自走式移動体1の動きを止めようとしたり、微調整しようとしたものと推測されるため、サーボモータ15の出力値を一旦初期値にリセットし、検出値のパターンに応じた最小値に設定する(ステップS009)。
【0051】
一方、制御部14は、前回の検出値のパターンに対して変化がなかったと判定した場合(ステップS008:NO)、操作者が自走式移動体1を移動させようとする方向が変わらないと推測して、操作者が自走式移動体1を押す、あるいは引く力を軽減するためにサーボモータ15の出力値を所定値分のみ上昇させて調整する(ステップS010)。
【0052】
これにより、自走式移動体1をわずかな労力で操作者が移動させることが可能となるため、予め定められた運用計画に基づく運行の合間であっても、自走式移動体1の動作と操作者の作業を共存させることが容易となる。また自走式移動体1の運用計画の細かな調整を現場での操作者の操作に任せられるので、自走式移動体1の運用計画の立案が容易となり、自走式移動体1の導入から実運用までの期間を短縮でき、運用コストの低減につなげることができる。
【0053】
続いて、制御部14は、自走式移動体1の速度が上限値を超えているか否かを判定する(ステップS011)。例えば、制御部14は、サーボモータ15における電流負荷検出部151から自走式移動体1の速度情報を取得することができる。この場合、電流負荷検出部151は、自走式移動体1の速度を検出する速度検出部に相当する。
【0054】
なお、制御部14は、3Dカメラ18又はLiDAR19を用いて速度情報を取得してもよい。この場合、3Dカメラ18又はLiDAR19が自走式移動体1の速度を検出する速度検出部に相当する。また、制御部14は、車輪2の回転角から自己位置を推定するオドメトリを備えている場合には、オドメトリを用いて推定した自己位置の時間変位に基づいて自走式移動体1の速度情報を取得してもよい。この場合、制御部14自身が自走式移動体1の速度を検出する速度検出部の機能を兼ねることとなる。
【0055】
制御部14は、自走式移動体1の速度が上限値を超えていないと判定した場合(ステップS011:NO)、ステップS001へ戻り、再びアシストモードがONであるか否かを判定する。一方、制御部14は、自走式移動体1の速度が上限値を超えていると判定した場合(ステップS011:YES)、制動動作を行う(ステップS012)。この制動動作は、上述したステップS006の制動動作と同様としてもよい。
【0056】
このように、制御部14は、自走式移動体1が速度超過しないように制御するので、操作者は自走式移動体1を安全に移動させることができる。例えば、自走式移動体1が運用されている場所にはスロープなどもあり、自走式移動体1を操作者が押しながら下り坂を下ると速度が上がりすぎてしまう恐れもある。自走式移動体1がロボットである場合、転倒防止を防ぐために自重は非常に重いことが多く、重量が100kgを超えることもあるため、速度が出すぎてしまった場合には操作者が制動することは困難であり、また危険でもある。さらには操作者が自走式移動体1を強く押しすぎてしまった場合にも速度超過となる危険性があり、その場合は事故の要因にもなる。本実施形態では、アシストモードにおいて、速度制限を設けることで、より安全な操作を可能とする。
【0057】
制御部14は、このステップS012における制動動作を行った後、ステップS001へ戻り、再びアシストモードがONであるか否かを判定し、以上述べた処理を繰り返す。
【0058】
(運用復帰モード)
次に、運用復帰モードにおける制御部14の処理を説明する。アシストモードが終了した後、自走式移動体1は運用復帰モードによって元の地点に自ら移動し、中断していた運用計画の実行を再開する。
図9は、本実施形態に係る運用復帰モードにおける制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0059】
図7のステップS002で運用復帰モードへ移行すると、制御部14は、運用記録ファイル100のレコード数を取得し、取得したレコード数を変数Nに設定する(ステップS101)。そして、制御部14は、運用記録ファイル100のN番目のレコードを読み込み、変位と方向を取得する(ステップS102)。
【0060】
続いて、制御部14は、N番目のレコードに保持されている変位の分だけ、同レコードに保持される方向に対して180°の方向へ、サーボモータ15を制御して移動させる(ステップS103)。これにより、N番目のレコードが記録される前の位置(N-1番目のレコードまでが記録されている位置)に、自走式移動体1を移動させることができる。
【0061】
次に、制御部14は、変数Nの値を1減じる(ステップS104)。そして、制御部14は、変数Nが0になったか否かを判定し(ステップS105)、変数Nが0になっていないと判定した場合(ステップS105:NO)、ステップS102~S104の処理を繰り返す。
【0062】
一方、制御部14は、変数Nが0になったと判定した場合(ステップS105:YES)、それ以上処理すべきレコードがないため、運用復帰モードを終了し、通常の運用計画を再開する。これにより、制御部14は、運用計画を中断してアシストモードへ移行する直前の位置まで自走式移動体1を移動させてから運用計画の実行を再開させる。すなわち、制御部14は、アシストモードを終了するときには、運用計画の実行を再開可能な位置まで自走式移動体1を戻してから運用計画の実行を再開させる。
【0063】
[実施形態のまとめ]
以上説明してきたように、本実施形態に係る自走式移動体1は、車輪2を駆動するサーボモータ15(モータの一例)と、メモリ(記憶部)に記憶されている運用計画に基づいてサーボモータ15を制御し車輪2を駆動する制御部14とを備える。また、自走式移動体1は、操作者による運用計画の実行を一時的に中断する操作を受け付けた後、操作者が所定の方向へ自走式移動体1を牽引又は押圧したことを検出する感圧センサ23~26(第1のセンサの一例)を備える。運用計画の実行を一時的に中断する操作とは、例えば上述のアシストモードへの移行の方法で説明した操作である。そして、制御部14は、感圧センサ23~26により操作者による牽引又は押圧が検出された場合、操作者が牽引又は押圧した方向への推進力又は制動力をサーボモータ15に発生させる。
【0064】
これにより、自走式移動体1は、運用計画による移動の途中であっても、操作者が押したり引いたりするだけで容易に運用計画を一時的に中断することができる。
【0065】
また、自走式移動体1は、自走式移動体1の移動速度を検出する電流負荷検出部151(第2のセンサの一例)を備える。制御部14は、検出された移動速度が上限値を超えた場合に、移動速度が上限値以下となるようにサーボモータ15に制動力を発生させる。
【0066】
これにより、自走式移動体1は、操作者は自走式移動体1を安全に移動させることができる。例えば、自走式移動体1を操作者が押しながら下り坂を下る場合に速度が上がりすぎてしまう恐れや、自走式移動体1を操作者が強く押しすぎてしまった場合に速度が上がりすぎてしまう危険性などがあるが、自走式移動体1は、速度制限を設けることで、より安全な操作を可能とする。
【0067】
制御部14は、操作者による操作により運用計画の実行の一時的な中断を終了する場合、運用計画の実行を再開可能な位置までサーボモータ15に推進力を発生させて自走式移動体1を移動させる。運用計画の実行の一時的な中断の終了とは、例えば上述のアシストモードの終了のことである。
【0068】
これにより、自走式移動体1は、操作者によって一時的に移動させられても、自ら元の位置に戻り運用計画を再開するので、少ない労力で運用することが可能となる。
【0069】
また、自走式移動体1は、車輪6を有する付属台車4を連結する連結機構3をさらに備えている。連結機構3により自走式移動体1と付属台車4とが連結された状態において、操作者が自走式移動体1又は付属台車4を牽引又は押圧することによる圧力を検出する位置に感圧センサ23~26が、当該牽引又は押圧したことを検出する第1のセンサの一例として設けられている。
【0070】
これにより、自走式移動体1は、特殊なセンサや複雑な処理を用いることなく、簡易な構成で操作者による牽引又は押圧の操作を検出することができる。
【0071】
また、自走式移動体1の移動速度を検出する電流負荷検出部151は、例えば、サーボモータ15の負荷センサ又はサーボモータ15の電流変化を検出する電流センサである。
【0072】
これにより、自走式移動体1は、特別な構成を追加することなく、自走式移動体1の移動速度を精度よく検出することができる。
【0073】
なお、上記実施形態では、アシストモード中の自走式移動体1の変位(移動距離)と移動方向を記録し、その記録を用いてアシストモード終了後に自走式移動体1が元の位置に戻る方法を示したが、これ以外の方法を用いて自走式移動体1が元の位置に戻るようにしてもよい。例えば、アシストモードへ移行した地点の位置情報を記憶しておき、マップ記憶部12が記憶するマップデータに基づいて自走して元の位置に戻るようにしてもよい。
また、自走式移動体1の現在位置から運用計画上の経路に法線を仮想的に引き、その法線上に障害物がない場合は、法線上を移動するようにし、運用計画上の経路に到達したら運用計画を再開するようにしてもよい。このようにすることで、自走式移動体1は、直線的に移動可能となるので、省エネルギー化や省時間化が可能となる。また、車輪2の回転角から自走式移動体1の自己位置を推定するオドメトリを用いて元の位置又は経路るようにしてもよい。
【0074】
なお、上記実施形態では、自走式移動体1を牽引又は押圧したことを検出する感圧センサ23~26を、自走式移動体1と付属台車4との連結機構3の付近に配置したが、付属台車4の取っ手7の付近に配置することも可能である。例えば、操作者が取っ手7を把持して、自走式移動体1を前進又は後進、旋回させようとすると、取っ手7には力が加わる。自走式移動体1は、その取っ手7に加わる力を感圧センサで検出し、その検出値に基づいて前進、後進、又は旋回のいずれであるかを検出してもよい。このように、取っ手7の付近に感圧センサを配置することでも、操作者の意図を汲んで少ない労力で自走式移動体1を移動させることが可能となる。
【0075】
また、本実施形態では、付属台車4と自走式移動体1が連結及び脱着できる構成として説明をしたが、この構成に限られるものではない。例えば自走式移動体1自身に取っ手7を設け、ここに上述の感圧センサを設ければ、自走式移動体1単体で同様のアシストモードを実現できる。
【0076】
なお、上述した自走式移動体1は、内部にコンピュータシステムを有している。そして、上述した自走式移動体1が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述した自走式移動体1が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0077】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に自走式移動体1が備える各構成で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0078】
また、上述した実施形態における自走式移動体1が備える各機能の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0079】
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本開示の実施形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 自走式移動体、2 車輪、3 連結機構、4 付属台車、5 支持脚、6 車輪、7 取っ手、11 運用計画記憶部、12 マップ記憶部、13 センサ、14 制御部、15 サーボモータ、16 フロントパネル、17 メインボディ、18 3Dカメラ、19 LiDAR、21,22 切欠部、23,24,25,26 感圧センサ、31,32 ラッチ、33,34 係止板、151 電流負荷検出部、100 運用記録ファイル、50 管制サーバ、SYS 自走式移動体システム、NW 無線ネットワーク