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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187086
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/04 20060101AFI20221212BHJP
   H01T 15/00 20060101ALI20221212BHJP
   H01T 13/20 20060101ALI20221212BHJP
   F02P 13/00 20060101ALI20221212BHJP
   F02P 17/12 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H01T13/04
H01T15/00
H01T13/20 B
F02P13/00 301J
F02P17/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094901
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 馨
(72)【発明者】
【氏名】前田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】水本 幸助
【テーマコード(参考)】
3G019
5G059
【Fターム(参考)】
3G019BA01
3G019KA21
3G019LA05
5G059AA10
5G059CC02
5G059DD02
5G059DD04
5G059DD28
5G059FF02
(57)【要約】
【課題】絶縁性皮膜による接触不良を低減できるスパークプラグを提供する。
【解決手段】スパークプラグは、筒状の絶縁体と、絶縁体の端部に配置される金属製の第1部を含む端子金具と、を備え、端子金具は、点火コイルが電気的に接続される接続部を含む金属製の第2部と、第1部および第2部の一方に設けられためねじと、第1部および第2部の他方に設けられた、めねじに接合するおねじと、を含む。めねじ及びおねじの少なくとも一方は、めねじとおねじとのはめあいにおけるおねじの外径が、はめあいにおけるめねじの谷の径より大きい部分があるテーパねじである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁体と、
前記絶縁体の端部に配置される金属製の第1部を含む端子金具と、を備え、
前記端子金具は、点火コイルが電気的に接続される接続部を含む金属製の第2部と、
前記第1部および前記第2部の一方に設けられためねじと、
前記第1部および前記第2部の他方に設けられた、前記めねじに接合するおねじと、を含むスパークプラグであって、
前記めねじ及び前記おねじの少なくとも一方は、前記めねじと前記おねじとのはめあいにおける前記おねじの外径が、前記はめあいにおける前記めねじの谷の径より大きい部分があるテーパねじであるスパークプラグ。
【請求項2】
前記はめあいにおいて、前記おねじ及び前記めねじの少なくとも一方は塑性変形している請求項1記載のスパークプラグ。
【請求項3】
前記第2部を構成する金属のイオン化傾向は、前記第1部を構成する金属のイオン化傾向より小さい請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
【請求項4】
前記第2部は、前記第2部の外周に設けられた凹みと、
前記凹みに対応して塑性変形によって前記第1部に向かって隆起した凸部と、を備え、
前記凸部は、前記第1部に密着している請求項1から3のいずれかに記載のスパークプラグ。
【請求項5】
前記第2部の外面には、前記めねじ及び前記おねじの軸を中心とする回転方向を向く受け面が設けられている請求項1から4のいずれかに記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は端子金具に点火コイルが電気的に接続されるスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
端子金具に点火コイルが電気的に接続されたスパークプラグは、電極間に放電を生じ、燃料ガスに点火する。燃焼に伴い燃料ガスの原子や分子が電離しイオンが発生する。放電後、スパークプラグの電極間に流れるイオン電流を検出して燃焼状態を判定する方法は知られている。イオン電流の検出精度が低いと、燃焼状態の判定精度が低下する。イオン電流の検出精度が低下する原因に、端子金具の絶縁性皮膜による接触不良がある(特許文献1)。特許文献1には、絶縁性皮膜による接触不良の低減のため、絶縁性皮膜を覆う導電性皮膜を端子金具に設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-89221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記技術には改善の余地がある。
【0005】
本発明はこの要求に応えるためになされたものであり、絶縁性皮膜による接触不良を低減できるスパークプラグを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のスパークプラグは、筒状の絶縁体と、絶縁体の端部に配置される金属製の第1部を含む端子金具と、を備え、端子金具は、点火コイルが電気的に接続される接続部を含む金属製の第2部と、第1部および第2部の一方に設けられためねじと、第1部および第2部の他方に設けられた、めねじに接合するおねじと、を含む。めねじ及びおねじの少なくとも一方は、めねじとおねじとのはめあいにおけるおねじの外径が、はめあいにおけるめねじの谷の径より大きい部分があるテーパねじである。
【発明の効果】
【0007】
第1の態様によれば、端子金具は、金属製の第1部と、点火コイルが電気的に接続される接続部を含む金属製の第2部と、第1部および第2部の一方に設けられためねじと、第1部および第2部の他方に設けられた、めねじに接合するおねじと、を含む。第1部が絶縁性皮膜に覆われていても、ねじが締め付けられるときの摩擦によって、絶縁性皮膜が削られたり薄くなったりする。めねじ及びおねじの少なくとも一方は、めねじとおねじとのはめあいにおけるおねじの外径が、はめあいにおけるめねじの谷の径より大きい部分があるテーパねじだから、めねじとおねじの両方が平行ねじの場合に比べ、ねじが互いに接する部分の面積が大きくなる。ねじが互いに接する部分に、絶縁性皮膜が介在しない部分や絶縁性皮膜が薄い部分が現れ易くなるので、第1部と第2部との間の電気的な接続を確保できる。よって絶縁性皮膜による接触不良を低減できる。
【0008】
第2の態様によれば、第1の態様において、めねじとおねじとのはめあいで、おねじ及びめねじの少なくとも一方は塑性変形しているので、大きい摩擦によって絶縁性皮膜が削れ、第1部と第2部との間が電気的に接続する。よって絶縁性皮膜による接触不良をさらに低減できる。
【0009】
第3の態様によれば、第1又は第2の態様において、第2部を構成する金属のイオン化傾向は、第1部を構成する金属のイオン化傾向より小さい。点火コイルが電気的に接続される接続部を含む第2部は、第1部に比べて還元され易いので、接続部における絶縁性皮膜による接触不良を低減できる。
【0010】
第4の態様によれば、第1から第3のいずれかの態様において、第2部の外周に設けられた凹みに対応して、第2部の塑性変形によって第1部に向かって凸部が隆起する。凸部は第1部に密着しているので、ねじによって結合した第1部と第2部とを分離し難くできる。
【0011】
第5の態様によれば、第1から第4のいずれかの態様において、めねじ及びおねじの軸を中心とする回転方向を向く受け面が、第2部の外面に設けられている。受け面に当たる工具を使ってねじを締め付け易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施の形態におけるスパークプラグの片側断面図である。
図2】端子金具の断面図である。
図3】(a)は図2の矢印IIIa方向から見た端子金具の平面図であり、(b)は変形例における端子金具の平面図である。
図4】イオン電流検出装置の回路図である。
図5】エンジンに取り付けられたスパークプラグの断面図である。
図6】第2実施の形態におけるスパークプラグの端子金具の断面図である。
図7図6の矢印VII方向から見た端子金具の平面図である。
図8】第3実施の形態におけるスパークプラグの端子金具の断面図である。
図9】第4実施の形態におけるスパークプラグの端子金具の断面図である。
図10】第5実施の形態におけるスパークプラグの端子金具の断面図である。
図11】第6実施の形態におけるスパークプラグの端子金具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は第1実施の形態におけるスパークプラグ10の軸線Oを境にした片側断面図である。図1では、紙面下側をスパークプラグ10の先端側、紙面上側をスパークプラグ10の後端側という(図2図5図6図8-11においても同じ)。図1に示すようにスパークプラグ10は、絶縁体11及び端子金具20を備えている。
【0014】
絶縁体11は、軸線Oに沿って貫通する軸孔12を有する略円筒状の部材である。絶縁体11は、機械的特性や高温下の絶縁性に優れるアルミナ等のセラミックスにより形成されている。絶縁体11の端部13に、端子金具20の第1部21が配置されている。
【0015】
主体金具14は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成された略円筒状の部材である。主体金具14は絶縁体11の外周に配置されている。主体金具14に接地電極15が接続されている。接地電極15は導電性を有する金属製の部材である。
【0016】
絶縁体11の軸孔12に中心電極16が配置されている。中心電極16は、導電性を有する棒状の金属製の部材である。中心電極16は、例えばNiを主成分とする有底円筒状の母材が、銅を主成分とする芯材を覆っている。芯材を省略することは可能である。中心電極16と接地電極15との間に火花ギャップが作られている。中心電極16は、導電性を有するガラス17によって絶縁体11の軸孔12に固定されている。
【0017】
ガラス17は非晶質材料、及び、導電性粉末を含む。非晶質材料は例えばB-SiO系、BaO-B系、SiO-B-CaO-BaO系などが採用され得る。導電性粉末は例えば炭素粒子(カーボンブラック等)、TiC粒子、TiN粒子などの非金属導電性材料や、Al,Mg,Ti,Zr,Cu及びZn等の金属が採用され得る。
【0018】
抵抗体18は、非晶質材料、セラミック粉末、及び、導電性粉末を含む。非晶質材料は例えばB-SiO系、BaO-B系、SiO-B-CaO-BaO系などが採用され得る。セラミック粉末は例えばTiO,ZrO等が採用され得る。導電性粉末は例えば炭素粒子(カーボンブラック等)、TiC粒子、TiN粒子などの非金属導電性材料や、Al,Mg,Ti,Zr及びZn等の金属が採用され得る。
【0019】
ガラス19は非晶質材料、及び、導電性粉末を含み、導電性を有する。非晶質材料は例えばB-SiO系、BaO-B系、SiO-B-CaO-BaO系などが採用され得る。導電性粉末は例えば炭素粒子(カーボンブラック等)、TiC粒子、TiN粒子などの非金属導電性材料や、Al,Mg,Ti,Zr,Cu及びZn等の金属が採用され得る。ガラス17,19は抵抗体18に接続されている。
【0020】
端子金具20は、第1部21に固定された第2部22と、絶縁体11の軸孔12に配置された軸23と、を備えている。端子金具20は導電性を有する。軸23はガラス19によって絶縁体11の軸孔12に固定されている。端子金具20は、ガラス17,19及び抵抗体18を介して中心電極16に電気的に接続されている。
【0021】
図2は端子金具20の断面図である。図2では絶縁体11の端部13の付近が図示されている(図6図8-11においても同じ)。端子金具20の第1部21は金属製であり、軸23につながっている。本実施形態では、第1部21及び軸23は低炭素鋼で一体に作られている。第1部21及び軸23の表面に、Ni等の導電材料からなる防食用皮膜を設けても良い。
【0022】
第1部21は、軸23の周囲に張り出す鍔24を含む。鍔24の直径は、軸孔12の直径よりも大きい。第1部21には、めねじ25が設けられている。めねじ25のねじ穴の底は、絶縁体11の軸孔12の中に位置する。めねじ25は、軸線O(図1参照)を中心とするテーパねじである。
【0023】
端子金具20の第2部22は、頭部26と、頭部26から先端側に向かって延びる軸部27と、を含む。第2部22は金属製である。軸部27は外周におねじ28が設けられている。おねじ28は、軸線O(図1参照)を中心とするテーパねじである。おねじ28はめねじ25に締め付けられている。頭部26の後端面29(外面)には、おねじ28の軸(軸線O)を中心とする回転方向を向く受け面29aが設けられている。
【0024】
図3(a)は図2の矢印IIIa方向から見た端子金具20の平面図である。第2部22の後端面29に設けられた受け面29aは、後端面29に設けられた溝(凹み)の一部である。受け面29aに当てたドライバー等の工具(図示せず)を、軸線Oを中心に回転させて、第2部22(図2参照)のおねじ28を第1部21のめねじ25に締め付けることができる。
【0025】
図3(b)は変形例における端子金具20の平面図である。後端面29に設けられた受け面29bは、後端面29に設けられた、互いに交わる溝の一部である。受け面29a,29bは一例である。受け面29a,29bは、ねじの軸を中心とする回転方向を向く面であれば形状や大きさに制限はない。従って受け面29a,29bを含む凹みの形状や大きさは任意に設定できる。
【0026】
図2に戻って説明する。めねじ25及びおねじ28は、めねじ25とおねじ28とのはめあいにおけるおねじ28の外径D1が、めねじ25とおねじ28とのはめあいにおけるめねじ25の谷の径D2よりも大きい部分がある。めねじ25とおねじ28との「はめあい」とは、めねじ25とおねじ28とがはまり合って互いに接触している部分をいう。はめあいの長さ(軸線方向の長さ)は、本実施形態では、おねじ28の軸線方向の長さに等しい。
【0027】
第2部22の材料は適宜選択される。第1部21の材料が炭素鋼の場合に、第2部22の材料を炭素鋼とすることは当然可能である。第1部21の材料が炭素鋼の場合に、炭素鋼にNi,Cr,Al,Ti,Nb,Cu等の元素が1種または2種以上添加された合金鋼を、第2部22の材料とすることは当然可能である。
【0028】
本実施形態では、第2部22を構成する金属のイオン化傾向は、第1部21を構成する金属のイオン化傾向より小さい。第1部21に比べて第2部22を還元し易くするためである。第1部21の材料が炭素鋼(Fe-C合金)の場合に、第2部22の材料は、例えばFeよりイオン化傾向が小さいNi,Pb,Cu,Pt,Au等の元素から選ばれる1種を主成分とする合金、又は、Ni,Cu,Pt,Au等の元素から選ばれる1種からなる純金属である。
【0029】
スパークプラグ10は、例えば以下の方法により製造される。まず絶縁体11の軸孔12の外に中心電極16の先端が位置するように、軸孔12に中心電極16を配置する。次にガラス17の原料粉末を軸孔12に入れて、中心電極16の周りに充填する。ガラス17の原料粉末はガラス粉末および導電性粉末を含む。ガラス17の原料粉末の充填後、圧縮用棒材(図示せず)を用いて軸孔12内の原料粉末を予備圧縮する。
【0030】
次いで抵抗体18の原料粉末を軸孔12に入れて、ガラス17の原料粉末の上に充填する。抵抗体18の原料粉末はガラス粉末、ガラス以外のセラミック粉末、及び、導電性粉末を含む。抵抗体18の原料粉末の充填後、圧縮用棒材(図示せず)を用いて軸孔12内の原料粉末を予備圧縮する。次にガラス19の原料粉末を軸孔12に入れて、抵抗体18の原料粉末の上に充填する。ガラス19の原料粉末はガラス粉末および導電性粉末を含む。ガラス19の原料粉末の充填後、圧縮用棒材(図示せず)を用いて軸孔12内の原料粉末を予備圧縮する。
【0031】
溶着工程において、絶縁体11を加熱炉(図示せず)の中に入れ、例えば軸孔12内の各原料粉末に含まれるガラス粉末のガラス転移点より高い温度(800~1000℃)まで絶縁体11を加熱する。加熱されて軸孔12内で軟化した各原料粉末を、第1部21に第2部22が固定される前の端子金具20の軸23を使って軸線方向へ圧縮する。軸孔12内の各原料粉末を熱間で圧縮することにより、ガラス17,19及び抵抗体18が形成される。ガラス17,19は抵抗体18を溶着する。ガラス17は中心電極16を絶縁体11の軸孔12に溶着し、ガラス19は端子金具20の軸23を絶縁体11の軸孔12に溶着する。
【0032】
第1部21のねじに第2部22のねじを締め付ける固定工程は、ガラス17,19を溶着した加熱炉(図示せず)の外で行われる。加熱炉の中で酸化膜などの絶縁性皮膜が第1部21に作られても、ねじが締め付けられるときの摩擦によって絶縁性皮膜が削られたり薄くなったりする。めねじ25及びおねじ28は、めねじとおねじとのはめあいにおけるおねじ28の外径D1が、はめあいにおけるめねじ25の谷の径D2より大きい部分があるテーパねじだから、めねじとおねじの両方が直径D2の平行ねじの場合に比べ、ねじが互いに接する部分の面積が大きくなる。ねじが互いに接する部分に、絶縁性皮膜が介在しない部分や絶縁性皮膜が薄い部分が現れ易くなるので、第1部21と第2部22との間の電気的な接続を確保できる。
【0033】
第1部21に第2部22を固定した後、予め接地電極15(図1参照)が接続された主体金具14を絶縁体11に組み付け、接地電極15を曲げ加工し、スパークプラグ10を得る。なお、主体金具14を絶縁体11に組み付けた後、第1部21に第2部22を固定しても良い。
【0034】
図4はスパークプラグ10を含むイオン電流検出装置30の回路図である。イオン電流検出装置30は一次巻線32及び二次巻線33を含む点火コイル31を備える。スパークプラグ10の端子金具20(図2参照)は点火コイル31に電気的に接続されている。一次電流を断続するパワートランジスタ34は一次巻線32に接続されている。スパークプラグ10の中心電極16は二次巻線33の第1端に接続されている。コンデンサ35及びツェナーダイオード36は並列に二次巻線33の第2端に接続されている。抵抗37及びダイオード38は並列にコンデンサ35に接続されている。抵抗37に発生する電圧は出力端子39において検出される。
【0035】
エンジン(図示せず)の点火時期に、パワートランジスタ34がOFFになり一次巻線32の一次電流が遮断されると、二次巻線33に点火用高電圧が生じ、スパークプラグ10の中心電極16と接地電極15との間に放電を生じる。これにより燃料ガスに点火する。このときの放電電流によってコンデンサ35が充電される。燃焼に伴い燃料ガスの原子や分子が電離しイオンが発生すると、コンデンサ35の電圧によりスパークプラグ10の中心電極16と接地電極15との間にイオン電流が流れる。イオン電流の発生による出力端子39の電圧を検出することで、燃料ガスの燃焼を検出できる。
【0036】
図5はエンジン(図示せず)に取り付けられたスパークプラグ10の断面図である。図5では主体金具14の図示が省略されている。スパークプラグ10にプラグキャップ40が取り付けられている。プラグキャップ40は、端子金具20の第2部22に点火コイル31(図4参照)を電気的に接続するための部材である。
【0037】
プラグキャップ40は、軸線方向に延びる内筒41、内筒41の軸線方向の先端側に接続された外筒42、内筒41の内側に配置された金属筒43、及び、金属筒43の先端側に接続されたばね端子44を備えている。内筒41は電気絶縁性を有する合成樹脂製の部材である。外筒42は電気絶縁性を有するゴム製の部材である。外筒42の中にスパークプラグ10の絶縁体11がはめ込まれる。プラグキャップ40は、外筒42と絶縁体11との間に生じる摩擦によってスパークプラグ10に固定される。
【0038】
金属筒43は導電性を有する金属製の部材である。点火コイル31(図4参照)は金属筒43に電気的に接続されている。ばね端子44は圧縮コイルばねであり、第2部22の後端面29と金属筒43との間に配置される。ばね端子44は軸線方向の力(復元力)を第2部22の後端面29に加える。端子金具20の第2部22の後端面29は、点火コイル31が電気的に接続される接続部である。第2部22の後端面29にばね端子44が接触する状態は、線接触、面接触または点接触のいずれかである。
【0039】
スパークプラグ10の製造工程では、第1部21がつながる軸23が、ガラス19の溶着によって絶縁体11の軸孔12に固定される溶着工程の後、固定工程において、第1部21のめねじ25に第2部22のおねじ28が締め付けられる。固定工程以後の製造工程において、溶着工程において第1部21が加熱される温度以上の温度に第2部22が加熱されないようにすると、第2部22の後端面29(接続部)、とりわけ点火コイル31と端子金具20とが電気的に接続するためのばね端子44が接触する部分において、作られる絶縁性皮膜を薄くしたり絶縁性皮膜が作られないようにしたりできる。これにより第2部22の後端面29(接続部)の絶縁性皮膜が原因の、ばね端子44の接触不良を低減できる。イオン電流検出装置30によるイオン電流の検出精度を向上できるので、燃焼状態の判定精度を向上できる。
【0040】
第2部22を構成する金属のイオン化傾向は、第1部21を構成する金属のイオン化傾向より小さい。点火コイル31が電気的に接続される後端面29(接続部)を含む第2部22は、第1部21に比べて還元され易いので、第2部22の後端面29に酸化膜などの絶縁性皮膜を作り難い。よって後端面29における絶縁性皮膜による接触不良をさらに低減できる。
【0041】
第1部21及び第2部22に設けられたねじの軸はスパークプラグ10の軸線Oと一致するので、ねじの軸が、軸線Oと交わったり軸線Oとねじれの位置にあったりする場合に比べ、ねじが互いに接する面積を大きくできる。ねじが互いに接する部分に、絶縁性皮膜が介在しない部分や絶縁性皮膜が薄い部分が現れ易くなるので、第1部21と第2部22との間の電気的な接続を向上できる。
【0042】
図6及び図7を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では、端子金具20の第1部21のめねじ25に第2部22のおねじ28が取り付けられる場合について説明した。これに対し第2実施形態では、端子金具50の第1部51のおねじ53に第2部54のめねじ55が取り付けられる場合について説明する。なお第1実施形態において説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0043】
図6は第2実施の形態におけるスパークプラグの端子金具50の断面図である。端子金具50は、スパークプラグ10(図1参照)の端子金具20に代えて、絶縁体11に配置されている。
【0044】
端子金具50は、軸23につながる金属製の第1部51と、第1部51に固定される金属製の第2部54と、を含む。本実施形態では、軸23及び第1部51は低炭素鋼で一体に作られている。第2部54を構成する金属のイオン化傾向は、第1部51を構成する金属のイオン化傾向より小さい。第1部51は、鍔24と、軸線O(図1参照)に沿って延びる軸部52と、を含む。軸部52におねじ53が設けられている。おねじ53はテーパねじである。
【0045】
第2部54にめねじ55が設けられている。めねじ55はテーパねじである。本実施形態では、めねじ55のねじ穴は、第2部54の後端面56に突き抜けている。はめあいの長さは、めねじ55の軸線方向の長さに等しい。めねじ55及びおねじ53は、めねじ55とおねじ53とのはめあいにおけるおねじ53の外径D1が、めねじ55とおねじ53とのはめあいにおけるめねじ55の谷の径D2よりも大きい部分がある。第2部54の後端面56は、点火コイル31(図4参照)が電気的に接続される接続部である。
【0046】
図7図6の矢印VII方向から見た端子金具50の平面図である。第2部54の外周57(外面)には、おねじ53及びめねじ55の軸(軸線O)を中心とする回転方向を向く受け面57aが設けられている。受け面57aに当てたレンチ等の工具(図示せず)を、軸線Oを中心に回転させて、第2部54(図6参照)のめねじ55を第1部51のおねじ53に締め付けることができる。受け面57aは、ねじの軸を中心とする回転方向を向く面であれば形状や大きさに制限はない。従って受け面57aを含む外周57の形状や大きさは任意に設定できる。
【0047】
図6に戻って説明する。第2部54の外周57には、軸部52を挟む位置に、凹み58が設けられている。第2部54は、凹み58に対応して塑性変形によって第1部51の軸部52に向かって凸部59が隆起している。凸部59は、第1部51の軸部52に密着している。凸部59により、おねじ53とめねじ55とによって結合した第1部51と第2部54とを分離し難くできる。
【0048】
第2実施形態におけるスパークプラグの製造工程では、第1部51がつながる軸23が、ガラス19の溶着によって絶縁体11の軸孔12に固定される溶着工程の後、固定工程において、第1部51のおねじ53に第2部54のめねじ55が締め付けられる。溶着工程において酸化膜などの絶縁性皮膜が第1部51に作られても、ねじを締め付けるときの摩擦によって、おねじ53の表面の絶縁性皮膜が削られたり薄くなったりする。従って第1実施の形態と同様に、第1部51と第2部54との間の電気的な接続を確保できる。
【0049】
固定工程以後の製造工程において、溶着工程において第1部51が加熱される温度以上の温度に第2部54が加熱されないようにすると、第2部54の後端面56(接続部)、とりわけ点火コイル31と電気的に接続するためのばね端子44が接触する部分において、作られる絶縁性皮膜を薄くしたり絶縁性皮膜が作られないようにしたりできる。これにより第2部54の後端面56(接続部)の絶縁性皮膜が原因の、ばね端子44の接触不良を低減できる。
【0050】
図8を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施形態ではおねじ28の長さがはめあいの長さに等しく、第2実施形態ではめねじ55の長さがはめあいの長さに等しい場合について説明した。これに対し第3実施形態では、おねじ64の一部がめねじ25の一部に接する場合について説明する。なお第1実施形態において説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図8は第3実施の形態におけるスパークプラグの端子金具60の断面図である。端子金具60は、スパークプラグ10(図1参照)の端子金具20に代えて、絶縁体11に配置されている。
【0051】
端子金具60は、軸23につながる金属製の第1部21と、第1部21に固定される金属製の第2部61と、を含む。第2部61を構成する金属のイオン化傾向は、第1部21を構成する金属のイオン化傾向より小さい。
【0052】
第2部61は、頭部62と、頭部62から先端側に向かって延びる軸部63と、を含む。軸部63は外周におねじ64が設けられている。おねじ64は平行ねじである。めねじ25は、めねじ25とおねじ64とのはめあい65におけるめねじ25の谷の径D2が、おねじ64の外径D1よりも小さい部分があるテーパねじである。はめあい65において、おねじ64及びめねじ25の少なくとも一方は塑性変形している。第2部61の後端面66は、点火コイル31(図4参照)が電気的に接続される接続部である。
【0053】
端子金具60によれば、めねじ25とおねじ64とのはめあい65において、おねじ64及びめねじ25の少なくとも一方は塑性変形しているので、ねじ同士の大きい摩擦によって第1部21の絶縁性皮膜が削れ、第1部21と第2部61との間が電気的に接続する。よって第1部21の絶縁性皮膜による接触不良を低減できる。
【0054】
図9を参照して第4実施の形態について説明する。第3実施形態では第1部21にめねじ25が設けられ、第2部61におねじ64が設けられる場合について説明した。これに対し第4実施形態では、第1部71におねじ73が設けられ、第2部74にめねじ75が設けられる場合について説明する。なお第1実施形態において説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図9は第4実施の形態におけるスパークプラグの端子金具70の断面図である。端子金具70は、スパークプラグ10(図1参照)の端子金具20に代えて、絶縁体11に配置されている。
【0055】
端子金具70は、軸23につながる金属製の第1部71と、第1部71に固定される金属製の第2部74と、を含む。第2部74を構成する金属のイオン化傾向は、第1部71を構成する金属のイオン化傾向より小さい。第1部71は、軸23から後端側に向かって延びる軸部72を含む。軸部72は外周におねじ73が設けられている。おねじ73は平行ねじである。
【0056】
第2部74にはめねじ75が設けられている。めねじ75は、めねじ75とおねじ73とのはめあい76におけるめねじ75の谷の径D2が、おねじ73の外径D1よりも小さい部分があるテーパねじである。はめあい76において、おねじ73及びめねじ75の少なくとも一方は塑性変形している。第2部74の後端面77は、点火コイル31(図4参照)が電気的に接続される接続部である。
【0057】
端子金具70によれば、めねじ75とおねじ73とのはめあい76において、おねじ73及びめねじ75の少なくとも一方は塑性変形しているので、ねじ同士の大きい摩擦によって第1部71の絶縁性皮膜が削れ、第1部71と第2部74との間が電気的に接続する。よって第1部71の絶縁性皮膜による接触不良を低減できる。
【0058】
図10を参照して第5実施の形態について説明する。第3実施形態および第4実施形態ではおねじ64,73が平行ねじの場合について説明した。これに対し第5実施形態では、めねじ81が平行ねじの場合について説明する。なお第1実施形態において説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図10は第5実施の形態におけるスパークプラグの端子金具80の断面図である。端子金具80は、スパークプラグ10(図1参照)の端子金具20に代えて、絶縁体11に配置されている。
【0059】
端子金具80は、軸23につながる金属製の第1部21と、第1部21に固定される金属製の第2部82と、を含む。第2部82を構成する金属のイオン化傾向は、第1部21を構成する金属のイオン化傾向より小さい。第1部21には、めねじ81が設けられている。めねじ81は、軸線O(図1参照)を中心とする平行ねじである。
【0060】
第2部82は、頭部83と、頭部83から先端側に向かって延びる軸部84と、を含む。軸部84は外周におねじ85が設けられている。おねじ85は、めねじ81とおねじ85とのはめあい86におけるおねじ85の外径D1が、めねじ81の谷の径D2よりも小さい部分があるテーパねじである。はめあい86において、おねじ85及びめねじ81の少なくとも一方は塑性変形している。第2部82の後端面87は、点火コイル31(図4参照)が電気的に接続される接続部である。
【0061】
端子金具80によれば、めねじ81とおねじ85とのはめあい86において、おねじ85及びめねじ81の少なくとも一方は塑性変形しているので、ねじ同士の大きい摩擦によって第1部21の絶縁性皮膜が削れ、第1部21と第2部82との間が電気的に接続する。よって第1部21の絶縁性皮膜による接触不良を低減できる。
【0062】
図11を参照して第6実施の形態について説明する。第5実施形態では第1部21にめねじ81が設けられ、第2部82におねじ85が設けられる場合について説明した。これに対し第6実施形態では、第1部91におねじ93が設けられ、第2部94にめねじ95が設けられる場合について説明する。なお第1実施形態において説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図11は第6実施の形態におけるスパークプラグの端子金具90の断面図である。端子金具90は、スパークプラグ10(図1参照)の端子金具20に代えて、絶縁体11に配置されている。
【0063】
端子金具90は、軸23につながる金属製の第1部91と、第1部91に固定される金属製の第2部94と、を含む。第2部94を構成する金属のイオン化傾向は、第1部91を構成する金属のイオン化傾向より小さい。第1部91は、軸23から後端側に向かって延びる軸部92を含む。軸部92は外周におねじ93が設けられている。
【0064】
第2部94にはめねじ95が設けられている。めねじ95は平行ねじである。おねじ93は、めねじ95とおねじ93とのはめあい96におけるおねじ93の外径D1が、めねじ95の谷の径D2よりも大きい部分があるテーパねじである。はめあい96において、おねじ93及びめねじ95の少なくとも一方は塑性変形している。第2部94の後端面97は、点火コイル31(図4参照)が電気的に接続される接続部である。
【0065】
端子金具90によれば、めねじ95とおねじ93とのはめあい96において、おねじ93及びめねじ95の少なくとも一方は塑性変形しているので、ねじ同士の大きい摩擦によって第1部91の絶縁性皮膜が削れ、第1部91と第2部94との間が電気的に接続する。よって第1部91の絶縁性皮膜による接触不良を低減できる。
【0066】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば端子金具20,50,60,70,80,90の第1部21,51,71,91及び第2部22,54,61,74,82,94の形状は一例であり適宜設定できる。
【0067】
実施形態では、絶縁体11の軸孔12に抵抗体18が配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。抵抗体18を省略することは当然可能である。抵抗体18を省略する場合には、ガラス17を省略して、軸23を軸孔12に溶着するガラス19によって中心電極16を軸孔12に溶着する。
【0068】
イオン電流検出装置30(図4参照)は一例である。他のイオン電流検出装置を採用することは当然可能である。他のイオン電流検出装置としては、例えば特開平4-191465号公報に開示されたものが挙げられる。
【0069】
プラグキャップ40(図5参照)は一例である。第2部22,54,61,74,82,94に接する端子を備えるプラグキャップが適宜採用される。実施形態では、第2部22,54,61,74,82,94の後端面29,56,66,77,87,97を、プラグキャップの端子が接する接続部にする場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2部22,54,61,74,82,94の外周を、プラグキャップの端子が接する接続部にすることは当然可能である。
【0070】
実施形態では、端子金具20,50,60,70,80,90の第1部21,51,71,91に鍔24が設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。鍔24を省略することは当然可能である。
【0071】
実施形態では、第2部54,74,94のめねじ55,75,95のねじ穴が、第2部54,74,94の後端面56,77,97に突き抜けている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。めねじ55,75,95のねじ穴の後端が閉じていて、ねじ穴が貫通していない第2部を採用することは当然可能である。
【0072】
ねじ穴が貫通していない第2部によれば、ねじ穴が貫通した第2部に比べ、第2部の後端面の面積を大きくできるので、第2部の後端面の一部を、プラグキャップの端子が接する接続部にする場合に有利である。ねじ穴が貫通していない第2部を採用する場合に、ねじの軸を中心とする回転方向を向く受け面29a,29bを、第2部の後端面に設けることは当然可能である。
【0073】
第1実施形態および変形例における受け面29a,29bを、第3実施形態および第5実施形態における第2部61,82に設けることは当然可能である。第2実施形態における受け面57aを、第1実施形態、第3-第6実施形態における第2部22,61,74,82,94に設けることは当然可能である。
【0074】
第2実施形態における第2部54の凹み58及び凸部59を、第4実施形態および第6実施形態における第2部74,94に設けることは当然可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 スパークプラグ
11 絶縁体
13 端部
20,50,60,70,80,90 端子金具
21,51,71,91 第1部
22,54,61,74,82,94 第2部
25,55,75,81,95 めねじ
28,53,64,73,85,93 おねじ
29,56,66,77,87,97 後端面(外面、接続部)
29a,29b 受け面
31 点火コイル
57 外周
57a 受け面
58 凹み
59 凸部
65,76,86,96 はめあい
D1 おねじの外径
D2 めねじの谷の径
O 軸線(軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11