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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187092
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】バス運行管理システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20221212BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20221212BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221212BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221212BHJP
   H01M 10/46 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J7/00 B
G08G1/00 D
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
H01M10/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094908
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】坂柳 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】杉山 緑
(72)【発明者】
【氏名】金子 智洋
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 洋孝
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H181
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503BB02
5G503CA08
5G503DA04
5G503DA19
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB08
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA01
5H030AS08
5H030BB06
5H030BB09
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H181AA06
5H181BB08
5H181CC01
5H181CC09
5H181FF05
5H181FF10
5H181FF13
5H181MA22
5H181MA24
5H181MA25
5H181MA37
5H181MA48
5H181MB02
5H181MC03
(57)【要約】
【課題】電気バスのバッテリの劣化を抑制する。
【解決手段】バス2は、第1地点に設けられた充電設備7から充電ケーブルを介して電力を受電可能に構成されたインレット23と、第1地点から第2の地点までの走行ルートに設けられた送電装置8から非接触で電力を受電可能な受電装置22とをさらに含む。バス2が走行ルートを走行する場合に、サーバ1は、バス2の座席予約情報または運行履歴に基づいて、バス2の乗客数を取得し、乗客数に応じて、走行ルートにおけるバス2の消費電力量を算出する。サーバ1は、消費電力量に基づいて、充電設備7および送電装置8からバス2への充電電力量を、走行ルートの走行中にバッテリ21のSOCが、バッテリ21の劣化が促進されるSOC領域の下限値を上回らないように決定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの供給電力により充電可能なバッテリを含む電気バスと、
前記電気バスの運行管理を行うサーバとを備え、
前記電気バスは、
第1地点に設けられた充電設備から電力を受電可能に構成された第1の受電装置と、
前記第1地点から第2の地点までの走行ルートに設けられた送電装置から非接触で電力を受電可能な第2の受電装置とをさらに含み、
前記電気バスが前記走行ルートを走行する場合に、前記サーバは、
前記電気バスの座席予約情報または運行履歴に基づいて、前記電気バスの乗客数を取得し、
前記乗客数に応じて、前記走行ルートにおける前記電気バスの消費電力量を算出し、
前記消費電力量に基づいて、前記充電設備および前記送電装置から前記電気バスへの充電電力量を、前記走行ルートの走行中に前記バッテリのSOCが、前記バッテリの劣化が促進されるSOC領域の下限値を上回らないように決定する、バス運行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バス運行管理システムに関し、より特定的には、電気バスの運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-181965号公報(特許文献1)は、乗員の操作負担を軽減する電気バスを開示する。電気バスは、少なくとも1つのドアが開いたことを検知した場合、蓄電池への充電の開始を指示し、すべてのドアが閉じられたことを検知した場合、蓄電池への充電の停止を指示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-181965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、電気バス等の電動車両においては、電力不足により走行不能になる事態(いわゆる電欠)を避けるため、SOC(State Of Charge)が高SOC領域内になるまでバッテリを充電する(たとえば満充電する)ことが要望されることがある。その一方で、バッテリのSOCが高SOC領域内に維持された場合には、そうでない場合と比べて、バッテリの劣化が促進され得ることが知られている。このようなバッテリの劣化について、特許文献1では特に考慮されていない。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、電気バスのバッテリの劣化を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うバス運行管理システムは、外部からの供給電力により充電可能なバッテリを含む電気バスと、電気バスの運行管理を行うサーバとを備える。電気バスは、第1地点に設けられた充電設備から電力を受電可能に構成された第1の受電装置と、第1地点から第2の地点までの走行ルートに設けられた送電装置から非接触で電力を受電可能な第2の受電装置とをさらに含む。サーバは、電気バスの座席予約情報または運行履歴に基づいて、電気バスの乗客数を取得し、その乗客数に応じて、走行ルートにおける電気バスの消費電力量を算出する。サーバは、消費電力量に基づいて、充電設備および送電装置から電気バスへの充電電力量を、走行ルートの走行中にバッテリのSOCが、バッテリの劣化が促進されるSOC領域の下限値を上回らないように決定する。
【0007】
上記構成においては、バッテリのSOCが、バッテリの劣化が促進されるSOC領域の下限値を上回らないように(すなわち、高SOC領域に入らないように)、充電設備および送電装置から電気バスへの充電電力量が決定される。電気バスの電費は、電気バスの乗客数(言い換えると積載重量)に応じて変わる。したがって、上記構成では、電気バスの乗客数に応じた消費電力量を考慮して充電電力量を決定することで、第2の地点までの走行に必要な充電電力量を高精度に求めることができる。よって、上記構成によれば、過剰な充電電力量を確保することなく、バッテリのSOCが高SOC領域に入らないようにすることで、電気バスのバッテリの劣化を適切に抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電気バスのバッテリの劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態に係る電気バスの運行管理システムの全体構成を概略的に示す図である。
図2】バスおよび送電装置の構成の一例を概略的に示す図である。
図3】バスの走行ルートの一例を示す図である。
図4】比較例におけるバスの充電制御の一例を説明するためのタイムチャートである。
図5】本実施の形態におけるバスの充電制御の一例を説明するためのタイムチャートである。
図6】本実施の形態におけるバスの充電制御の処理手順を示すフローチャートである。
図7】消費電力量の算出に用いられるマップを説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0011】
[実施の形態]
<システム構成>
図1は、本開示の実施の形態に係る電気バスの運行管理システムの全体構成を概略的に示す図である。バス運行管理システム100は、サーバ1と、複数の電気バス(以下、単に「バス」と記載する)2とを備える。サーバ1は、プロセッサ11と、メモリ12と、予約データベース13と、運行履歴データベース14と、通信モジュール15と、データ線16とを含む。
【0012】
プロセッサ11は、たとえばCPU(Central Processing Unit)であって、プログラムに記述された所定の演算処理を実行するように構成されている。この演算処理は、複数のバス2の運行計画の策定を含む。運行計画の詳細については後述する。
【0013】
メモリ12は、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを含む。ROMは、プロセッサ11により実行されるプログラムを格納する。RAMは、プロセッサ11におけるプログラムの実行により生成されるデータと、通信モジュール15を介して入力されたデータとを一時的に格納する。RAMは、作業領域として利用される一時的なデータメモリとしても機能する。
【0014】
予約データベース13は、複数のバス2の各々の座席予約状況に関するデータを格納する。
【0015】
運行履歴データベース14は、複数のバス2の各々の運行履歴、より詳細には、各バス2の走行時に測定された消費電力に関するデータを様々な運行条件(走行ルート、日付、曜日、天候、気温など)毎に格納する。運行履歴データベース14は、過去にバス2に実際に乗車した乗客数に関するデータを様々な運行条件毎に格納していてもよい。
【0016】
通信モジュール15は、インターネット等のネットワークとの通信インターフェースを含む。通信モジュール15は、サーバ1の外部機器(複数のバス2、複数のユーザ端末9、ならびに、後述する充電設備7および送電装置8等)との間で双方向の通信が可能に構成されている。
【0017】
データ線16は、サーバ1を構成する機器間で相互にデータをやり取りできるように構成されている。
【0018】
複数のバス2の各々は、複数の乗客を運送可能な車両である。本実施の構成において、各バス2は、充電設備7から延びる充電ケーブルを介した接触式の充電が可能であるとともに、送電装置8からの非接触での充電も可能に構成されている。以下、充電設備7による接触式の充電を「接触充電」とも称し、送電装置8による非接触式の充電を「非接触充電」とも称する。バス2の、より詳細な構成については図2にて説明する。
【0019】
ユーザ端末9は、バス2を利用する乗客が操作する端末であって、たとえばスマートホンまたはPC(Personal Computer)である。乗客は、ユーザ端末9を操作することにより、所望の時間帯に所望のルートを走行するバス2の座席を予約できる。そうすると、予約データベース13に格納された座席予約状況に関するデータが更新される。
【0020】
<非接触での電力伝送>
図2は、バス2および送電装置8の構成の一例を概略的に示す図である。バス2は、バッテリ21と、受電装置22と、インレット23と、DCM(Data Communication Module)24と、GPS(Global Positioning System)受信器25と、ECU(Electronic Control Unit)26とを含む。
【0021】
バッテリ21は、複数のセルを含む組電池である。各セルは、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池などの二次電池である。バッテリ21は、バス2の駆動力を発生させるための電力を供給する。また、バッテリ21は、車載のモータジェネレータ(図示せず)により発電された電力を蓄える。バッテリ21には、ECU26がバッテリ21のSOC(State Of Charge)を算出するための電圧センサおよび電流センサ(いずれも図示せず)が設けられている。
【0022】
受電装置22は、図2に示す例では、バス2の底面を形成するフロアパネルの下面に配置されている。受電装置22内には受電コイル221が収容されている。受電コイル221は、送電装置8から伝送される電力を非接触で受電する。受電装置22は、本開示に係る「第2の受電装置」に相当する。
【0023】
インレット23は、嵌合等の機械的な連結を伴って充電設備7(図3参照)の充電コネクタを挿入可能に構成されている。充電コネクタの挿入に伴い、バス2と充電設備7とが電気的に接続され、充電設備7から供給される電力によってバッテリ21を充電することが可能になる。なお、インレット23は、本開示に係る「第1の受電装置」に相当する。
【0024】
DCM24は、バス2とサーバ1とが双方向に通信可能なように構成されている。また、DCM24は、バス2と送電装置8とが双方向に通信可能なように構成されている。
【0025】
GPS受信器25は、人工衛星(図示せず)から送信される電波に基づいて、バス2の位置を特定する。サーバ1は、複数のバス2の各々の位置情報を通信により取得する。
【0026】
ECU26は、メモリ(図示せず)に格納されたプログラムおよび各センサからの信号等に基づいて、バス2が所望の状態となるように機器類を制御する。
【0027】
送電装置8は、複数の送電ユニット81~86と、コントローラ80とを含む。なお、図2には送電ユニットの台数が6台の例が示されているが、送電ユニットの台数は特に限定されるものではなく、より多くてもよい。
【0028】
複数の送電ユニット81~86は、バス2の走行ルートの路面(側壁であってもよい)に一列に配置されている。複数の送電ユニット81~86は、送電コイル811~861をそれぞれ含む。各送電コイル811~861は、交流電源(図示せず)に電気的に接続されている。図示しないが、複数の送電ユニット81~86の各々には、バス2の通過を検出するためのセンサ(光学センサ、重量センサ等)が設けられている。
【0029】
コントローラ80は、各センサからの検出信号に基づいて、バス2の走行位置を特定する。そして、コントローラ80は、送電ユニット81~86のうちバス2が上方に位置している送電ユニット内の送電コイルに、交流電源からの交流電力を供給する。
【0030】
より詳細には、たとえば送電ユニット81の上方にバス2が検出された場合、コントローラ80は、送電コイル811に交流電力を供給する。そうすると、送電コイル811に交流電流が流れることで送電コイル811の周囲に電磁界が形成される。受電装置2内の受電コイル221は、当該電磁界を通して非接触で電力を受電する。その後、送電ユニット81の上方にバス2が検出されなくなると、コントローラ80は、送電コイル811への交流電力の供給を停止する。このような一連の制御が送電ユニット81~86毎に行われることで、走行中のバス2に対して非接触で電力を伝送できる。当然ながら、送電ユニット上で停車中のバス2に対する非接触での電力伝送も可能である。
【0031】
図3は、バス2の走行ルートの一例を示す図である。この例では、バス2が現在地点(出発地点)から休憩地点を経由して目的地点まで走行する状況を想定する。現在地点と休憩地点との間のバス2の走行予定ルートをR1と記載する。現在地点および休憩地点には、たとえば接触式の充電設備7が設置されている。休憩地点と目的地点との間のバス2の走行予定ルートをR2と記載する。各走行ルートR1,R2には非接触式の送電装置8が設置されている。
【0032】
なお、現在地点および休憩地点に、接触式の充電設備7に代えて、停車中のバス2を充電するための非接触式の送電装置8が設置されていてもよい。つまり、バス2に対して、出発前にも走行中にも送電装置8による非接触充電が行われてもよい。この場合、受電装置22が本開示に係る「第1の受電装置」および「第2の受電装置」の両方に相当する。
【0033】
<バッテリの劣化>
以下では、本実施の形態におけるバス2の充電制御の理解を容易にするため、まず、比較例における充電制御について説明する。ここでは、バス2が現在地点から走行ルートR1を走行して休憩地点へと至る場合を例に説明する。この場合、現在地点が本開示に係る「第1地点」に相当し、休憩地点が本開示に係る「第2地点」に相当する。
【0034】
図4は、比較例におけるバス2の充電制御の一例を説明するためのタイムチャートである。図4および後述する図5において、横軸は経過時間を表す。縦軸は、バッテリ21のSOCを表す。
【0035】
初期時刻t10において、バスは現在地点において接触式の充電設備7に接続されているものとする。比較例では、出発前に充電設備7を用いて満充電に至るまでバッテリが充電される(時刻t12参照)。その後、走行ルートR1の走行中には、非接触式の送電装置8によるバッテリの充電も行われる(時刻t14と時刻t15との間を参照)
このような場合、バッテリのSOCが高SOC領域内にある期間中にバッテリの劣化が促進され得る。高SOC領域とは、上限UL(たとえばSOC=100%)と下限LL(たとえばSOC=80%)とにより規定されるSOC領域である。比較例においては、走行途中での電欠を確実に防ぐことが重視されている一方で、バッテリ21の劣化については特に考慮されていない。電欠を防止しつつ、バッテリ21の劣化の抑制を図ることが望ましい。
【0036】
本発明者らは、バス2においては走行ルートが予め定められているとともに、連続運転時間に制限が設けられている点に着目した。たとえばバス2が高速バスである場合、4時間以上の連続運転を避けて15分以上の休憩を取得することが求められるので、通常は事前に休憩地点が決められている。さらに、本発明者らは、バス2の消費電力がバス2の乗客数に依存する点にも着目した。バス2の乗客数が多くなるほど、バス2の積載重量が重くなるため、バス2の消費電力が増大する。このような着眼に基づき、本実施の形態においては以下のような充電制御が採用される。
【0037】
図5は、本実施の形態におけるバス2の充電制御の一例を説明するためのタイムチャートである。本実施の形態において、サーバ1は、充電設備7を用いた接触充電の開始に先立ち、バス2が現在地点から休憩地点まで走行する場合の消費電力量(Wh3)をバス2の乗客数を考慮して算出する。図5には、乗客数が多い場合(実線参照)と、乗客数が少ない場合(破線参照)の2通りのSOCの推移が模式的に示されている。サーバ1は、算出された消費電力量(Wh3)に基づき、出発前における接触充電による充電電力量(Wh2)と、走行ルートR1の走行中における非接触充電による充電電力量(Wh1)とを算出する。
【0038】
これらの充電電力量の和(Wh1+Wh2)は、以下に詳細に説明するように、バス2のバッテリ21のSOCが、バス2が休憩地点に到達可能した時点で所定の目標SOCになるように決定される。目標SOCは、高SOC領域の下限LLよりも低い。したがって、走行ルートR1の走行中にバッテリ21のSOCが高SOC領域内に入ることを回避できる。さらに、目標SOCは、バス2が休憩地点に到達した時点でSOC=0に対して一定程度のマージンを有するように定められているので、走行ルートR1の走行中の電欠も防止できる。よって、本実施の形態によれば、電欠を防止しつつ、バッテリ21の劣化を抑制できる。
【0039】
<制御フロー>
図6は、本実施の形態におけるバス2の充電制御の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、たとえば予め定められた条件成立時にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて実行される。図中、サーバ1(プロセッサ11)により実行される処理を左側に示し、バス2(ECU26)により実行される処理を右側に示す。各ステップは、サーバ1またはECU26によるソフトウェア処理により実現されるが、サーバ1またはECU26内に配置されたLSI(Large Scale Integration)等のハードウェアにより実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。
【0040】
S21において、バス2は、充電設備7によるバス2の接触充電の準備ができているかどうかを判定する。バス2は、たとえば、充電ケーブル(図示せず)によってバス2と充電設備7とが接続された場合に接触充電の準備ができたと判定できる。接触充電の準備ができていない場合(S21においてNO)には、バス2は、以降の処理を実行することなく処理をメインルーチンに戻す。接触充電の準備ができている場合(S21においてYES)、バス2は、電力量の演算要求をサーバ1に出力する(S22)。なお、バス2の休憩地点は予め定められていてもよいが、休憩地点を指定する情報がバス2からサーバ1に出力されてもよい。
【0041】
S11において、サーバ1は、バス2から演算要求を受けたかどうかを判定する。演算要求を受けていない場合(S11においてNO)、サーバ1は、処理をメインルーチンに戻す。演算要求を受けた場合(S11においてYES)、サーバ1は、処理をS12に進める。
【0042】
S12において、サーバ1は、予約データベース13に格納されたバス2の座席予約状況に関するデータを参照することで、走行ルートR1におけるバス2の乗客数を取得する。なお、予約データベース13がサーバ1に設けられていない場合、サーバ1は、バス2の運行履歴データベース14を参照することで、過去にバス2と同じ運行条件で走行したバスの乗客数を用いてもよい。
【0043】
S13において、サーバ1は、S12にて取得された乗客数と、バス2の走行ルートとに応じて、休憩地点(図3の休憩地点から目的地点に向かう他の例では目的地点)までのバス2の消費電力量Wh3を算出する。この算出には、たとえば、以下に説明するようなマップMPを用いることができる。
【0044】
図7は、消費電力量Wh3の算出に用いられるマップMPを説明するための概念図である。マップMPにおいては走行ルート毎に、乗客数に応じた消費電力量Wh3が定められている。消費電力量Wh3としては、これから走行予定の走行ルート(この例ではR1)を、対象とするバス2(バス2と同型のバスであってもよい)が過去に走行した場合に得られた実測値を用いることができる。同一の走行ルートに関する消費電力量Wh3は、図7に示すように、乗客数が多いほど大きくなるように定められている。
【0045】
なお、図7には乗客数と消費電力量Wh3との間の関係が定められた例が示されているが、マップMPは、乗客数以外のパラメータを含む多次元マップであってもよい。つまり、マップMPは、たとえば、走行ルートの気温、走行ルートにおける交通渋滞の度合いを表す指数などのパラメータをさらに含んでもよい。
【0046】
図6を再び参照して、S14において、サーバ1は、休憩地点までの非接触充電による充電電力量Wh1を算出する。どのような送電装置8が走行ルートR1に設置されているかは既知であるので、サーバ1は、たとえば図示しないマップを参照することで、走行ルートR1に応じた充電電力量Wh1を読み出すことができる。サーバ1は、運行履歴データベース14を参照することで、対象とするバス2(または同型バス)が走行ルートに過去に走行した場合の充電電力量の実測値を用いてもよい。サーバ1は、算出された充電電力量Wh1をバス2に送信する。
【0047】
S15において、サーバ1は、バッテリ21の休憩地点におけるSOCが目標SOCになるように、接触充電による充電電力量Wh2を算出する。より具体的には、サーバ1は、現在地点でバッテリ21に蓄えられている電力量Wh0を現在地点でのSOCから算出する。また、サーバ1は、目標SOCに対応する目標電力量Wh(tag)を算出する。前述のように、目標SOCは、高SOC領域の下限LLよりも低いものの、バス2が休憩地点に到達するまでの電欠が生じないようにある程度は高く定められている。
【0048】
下記式(1)に示すように、現在地点での電力量Wh0に、非接触充電による充電電力量Wh1と、接触充電による充電電力量Wh2とを加算し、走行中の消費電力量Wh3を減算したものが目標電力量Wh(tag)に一致する。よって、サーバ1は、上記式(1)に基づいて、接触充電による充電電力量Wh2を算出できる。サーバ1は、算出された充電電力量Wh2をバス2に送信する。
【0049】
Wh0+Wh1+Wh2-Wh3=Wh(tag) ・・・(1)
S23において、バス2は、S15にて算出された充電電力量がバス2に充電されるように、充電設備7によるバス2の接触充電を実行する。接触充電が完了し、出発時刻が到来すると、バス2は、休憩地点に向けて走行を開始する(S24)。
【0050】
走行中のバス2は、バッテリ21のSOCが高SOC領域に入らないように、送電装置8による非接触充電の充電電力量を調整する。より具体的には、バッテリ21のSOCが高SOC領域に近付いた場合には、バス2は、給電電力を0にするように送電装置8に対して要求する。バス2は、バス2に非接触充電により実際に充電された電力量が、サーバ1から受けた充電電力量Wh1を超えた場合に、給電電力を0にするように送電装置8に対して要求してもよい。これにより、バス2が送電装置8の上方を走行しても、バッテリ21の劣化を促進し得る過剰な電力が送電装置8から受電装置22へと伝送されることを防止できる。
【0051】
なお、複数の走行レーンのうちの一部の走行レーンにのみ送電装置8が設置されている場合もある。バス2は、送電装置8の上方の走行を避けて走行する(送電装置8が非設置の走行レーンを走行する)ようにドライバに報知してもよい。
【0052】
休憩地点に到着するまで(S26においてNO)、バス2は、非接触充電による充電電力量の調整を継続する。休憩地点に到着すると(S26においてYES)、バス2は、一連の処理を終了し、処理をメインルーチンに戻す。
【0053】
以上のように、本実施の形態においては、現在地点から休憩地点への走行ルートR1の走行中に、バス2のバッテリ21のSOCが高SOC領域の下限LLを上回らないように、非接触充電による充電電力量Wh1および接触充電による充電電力量Wh2が決定される。この際、バス2の電費がバス2の乗客数(積載重量)の影響を強く受けることから。バス2の乗客数に応じた消費電力量Wh3を考慮することで、休憩地点までの走行に必要な充電電力量(Wh1+Wh2)を高精度に決定できる。これにより、バッテリ21のSOCが高SOC領域内に入らなくなるので、バッテリ21の劣化を抑制できる。さらに、本実施の形態においては、バス2が休憩地点に到達するまでの走行中に電欠が生じない程度に高い値に休憩地点における目標SOCが設定される。よって、本実施の形態によれば、バス2の電欠を防止しつつ、バッテリ21の劣化を抑制できる。
【0054】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1 サーバ、2 バス、11 プロセッサ、12 メモリ、13 予約データベース、14 運行履歴データベース、15 通信モジュール、16 データ線、21 バッテリ、22 受電装置、221 受電コイル、23 インレット、24 DCM、25 受信器、26 ECU、7 充電設備、8 送電装置、9 ユーザ端末、80 コントローラ、81~86 送電ユニット、811~861 送電コイル、100 運行管理システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7