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特開2022-187103電力ケーブルの終端構造、筒ユニット、及び筒部品
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  • 特開-電力ケーブルの終端構造、筒ユニット、及び筒部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187103
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】電力ケーブルの終端構造、筒ユニット、及び筒部品
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/064 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
H02G15/064
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094927
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】助川 琢也
(72)【発明者】
【氏名】風間 達也
【テーマコード(参考)】
5G375
【Fターム(参考)】
5G375AA02
5G375CB36
5G375CB38
5G375DA32
5G375DA34
(57)【要約】
【課題】直流印加時の電界ストレスを軽減できると共にインパルス特性にも優れる電力ケーブルの終端構造、筒ユニット、及び筒部品を提供する。
【解決手段】電力ケーブルの端末部とストレスコーンと抵抗部と絶縁流体とを備え、前記電力ケーブルの端末部は外部半導電層の第一露出部と絶縁層の露出部とを有し、前記ストレスコーンは絶縁筒部と半導電部とを有し、前記抵抗部は電界の大きさによって抵抗率が変化する傾斜機能材料で構成された筒状体であり、前記絶縁筒部の外周面の全面と接する第一内周面と、前記絶縁層の露出部のうち前記絶縁筒部に覆われていない部分と接する第二内周面と、前記第一露出部と接することなく前記半導電部と接する第一端部とを有し、前記絶縁流体は前記絶縁層の露出部及び前記絶縁筒部と接することなく前記抵抗部の外周面と接する、電力ケーブルの終端構造。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体、絶縁層、外部半導電層及び遮蔽層を内側から順に有する電力ケーブルの端末部と、
前記絶縁層の外側に配置されたストレスコーンと、
前記絶縁層の外側に配置された抵抗部と、
前記ストレスコーンの外側及び前記抵抗部の外側に配置された絶縁流体とを備え、
前記電力ケーブルの端末部は、
前記遮蔽層から露出された前記外部半導電層である第一露出部と、
前記外部半導電層から露出された前記絶縁層である露出部とを有し、
前記ストレスコーンは、
前記絶縁層の露出部の一部と接する絶縁筒部と、
前記第一露出部と接するように前記絶縁筒部の端部に設けられた半導電部とを有し、
前記抵抗部は、
前記絶縁筒部の外周面の全面と接する第一内周面と、
前記絶縁層の露出部のうち前記絶縁筒部に覆われていない部分と接する第二内周面と、
前記第一露出部と接することなく前記半導電部と接する第一端部とを有し、
電界の大きさによって抵抗率が変化する傾斜機能材料で構成された筒状体であり、
前記絶縁流体は、前記絶縁層の露出部及び前記絶縁筒部と接することなく前記抵抗部の外周面と接する、
電力ケーブルの終端構造。
【請求項2】
前記電力ケーブルの端末部は、前記遮蔽層から露出された前記外部半導電層である第二露出部を有し、
前記絶縁層の露出部は、前記第一露出部と前記第二露出部との間に配置されており、
前記第二露出部は、前記絶縁層から露出された前記導体の端部に電気的に接続されており、
前記抵抗部は、前記第二露出部に電気的に接続された第二端部を有する、請求項1に記載の電力ケーブルの終端構造。
【請求項3】
前記抵抗部は成形体である、請求項1又は請求項2に記載の電力ケーブルの終端構造。
【請求項4】
前記絶縁筒部と前記抵抗部とは一体物である、請求項3に記載の電力ケーブルの終端構造。
【請求項5】
前記抵抗部は、前記傾斜機能材料から構成されるテープ材が前記絶縁筒部の外周に筒状に巻回されてなる、請求項1又は請求項2に記載の電力ケーブルの終端構造。
【請求項6】
前記絶縁層の構成材料は無機充填剤を含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電力ケーブルの終端構造。
【請求項7】
前記絶縁層の構成材料は無機充填剤を含まない、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電力ケーブルの終端構造。
【請求項8】
電力ケーブルの端末部と絶縁流体とを備える電力ケーブルの終端構造に用いられる筒ユニットであって、
ストレスコーンと前記ストレスコーンの外側に配置された抵抗部とを備え、
前記ストレスコーンは、絶縁筒部と前記絶縁筒部の端部に設けられた半導電部とを有し、
前記抵抗部は、
前記絶縁筒部の外周面の全面と接する第一内周面と、
前記絶縁筒部の外周面と接していない第二内周面と、
前記半導電部と接する第一端部と、
前記絶縁流体と接するように配置される外周面とを有し、
電界の大きさによって抵抗率が変化する傾斜機能材料で構成された筒状体である、筒ユニット。
【請求項9】
電力ケーブルの端末部とストレスコーンと絶縁流体とを備える電力ケーブルの終端構造に用いられる筒部品であって、
前記ストレスコーンに備えられる絶縁筒部の外周面の全面と接するように配置される第一内周面と、
前記絶縁筒部と接することなく、前記電力ケーブルの端末部に備えられる絶縁層と接するように配置される第二内周面と、
前記電力ケーブルに備えられる外部半導電層と接することなく、前記ストレスコーンに備えられる半導電部と接するように配置される第一端部と、
前記絶縁流体と接するように配置される外周面とを有し、
電界の大きさによって抵抗率が変化する傾斜機能材料で構成された成形体である、
筒部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力ケーブルの終端構造、筒ユニット、及び筒部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、高電圧の直流が印加される電力ケーブルの終端部として、電力ケーブルに備えられる絶縁層の上に順に電界緩和アダプタ及びストレスコーンが配置された構造を開示する。以下、特許文献1に開示されている上記の構造を第一従来構造と呼ぶ。
【0003】
上記の電界緩和アダプタは、線形又は非線形の抵抗性電界緩和材料(FGM、Functionally Graded Material)から構成された筒体である。上記電界緩和アダプタは、100%電位から0%電位をとるように電力ケーブルに電気的に接続される。詳しくは上記電界緩和アダプタの二つの端部のうち一つの端部は電力ケーブルに備えられる導体と同電位の部位に電気的に接続される。上記二つの端部のうち別の端部は電力ケーブルに備えられる外部半導電層と接する。上記導体に電気的に接続される端部は、100%電位の端部、即ち高電位側の端部である。上記外部半導電層と接する端部は、0%電位の端部、即ち接地電位となる低電位側の端部である。上記電界緩和アダプタに直流が印加されると、電界緩和アダプタの抵抗率は電界の大きさによって線形又は非線形に変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017-529815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の第一従来構造では、電界緩和アダプタを備えていない第二従来構造に比較して、高電圧の直流が印加された際に三重接触部に負荷される電界ストレスが軽減される。しかし、上記第一従来構造はインパルス特性に劣る。
【0006】
上記の三重接触部は、三つの異なる材料が接触する部分であり、ストレスコーンの高電位側の端部に生じる。上述の第二従来構造では、三重接触部は、電力ケーブルに備えられる絶縁層とストレスコーンに備えられる電気絶縁性のゴム部とストレスコーンの外側に充填された絶縁油とが接する部分である。上述の第一従来構造では、三重接触部は、上記ゴム部と上記電界緩和アダプタと上記絶縁油とが接する部分である。
【0007】
本開示は、直流印加時の電界ストレスを軽減できると共にインパルス特性にも優れる電力ケーブルの終端構造を提供することを目的の一つとする。また、本開示は、電力ケーブルの終端構造に用いられる筒ユニット及び筒部品を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る電力ケーブルの終端構造は、導体、絶縁層、外部半導電層及び遮蔽層を内側から順に有する電力ケーブルの端末部と、前記絶縁層の外側に配置されたストレスコーンと、前記絶縁層の外側に配置された抵抗部と、前記ストレスコーンの外側及び前記抵抗部の外側に配置された絶縁流体とを備える。
前記電力ケーブルの端末部は、前記遮蔽層から露出された前記外部半導電層である第一露出部と、前記外部半導電層から露出された前記絶縁層である露出部とを有する。
前記ストレスコーンは、前記絶縁層の露出部の一部と接する絶縁筒部と、前記第一露出部と接するように前記絶縁筒部の端部に設けられた半導電部とを有する。
前記抵抗部は、電界の大きさによって抵抗率が変化する傾斜機能材料で構成された筒状体である。前記抵抗部は、前記絶縁筒部の外周面の全面と接する第一内周面と、前記絶縁層の露出部のうち前記絶縁筒部に覆われていない部分と接する第二内周面と、前記第一露出部と接することなく前記半導電部と接する第一端部とを有する。
前記絶縁流体は、前記絶縁層の露出部及び前記絶縁筒部と接することなく前記抵抗部の外周面と接する。
【0009】
本開示の一態様に係る筒ユニットは、電力ケーブルの端末部と絶縁流体とを備える電力ケーブルの終端構造に用いられる筒ユニットであって、ストレスコーンと前記ストレスコーンの外側に配置された抵抗部とを備える。
前記ストレスコーンは、絶縁筒部と前記絶縁筒部の端部に設けられた半導電部とを有する。
前記抵抗部は、電界の大きさによって抵抗率が変化する傾斜機能材料で構成された筒状体である。前記抵抗部は、前記絶縁筒部の外周面の全面と接する第一内周面と、前記絶縁筒部の外周面と接していない第二内周面と、前記半導電部と接する第一端部と、前記絶縁流体と接するように配置される外周面とを有する。
【0010】
本開示の一態様に係る筒部品は、電力ケーブルの端末部とストレスコーンと絶縁流体とを備える電力ケーブルの終端構造に用いられる筒部品である。この筒部品は、電界の大きさによって抵抗率が変化する傾斜機能材料で構成された成形体である。この筒部品は、前記ストレスコーンに備えられる絶縁筒部の外周面の全面と接するように配置される第一内周面と、前記絶縁筒部と接することなく、前記電力ケーブルの端末部に備えられる絶縁層と接するように配置される第二内周面と、前記電力ケーブルに備えられる外部半導電層と接することなく、前記ストレスコーンに備えられる半導電部と接するように配置される第一端部と、前記絶縁流体と接するように配置される外周面とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の電力ケーブルの終端構造は、直流印加時の電界ストレスを軽減できると共にインパルス特性にも優れる。本開示の筒ユニット及び筒部品は、直流印加時の電界ストレスを軽減できると共にインパルス特性にも優れる電力ケーブルの終端構造を構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は実施形態1の電力ケーブルの終端構造を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
上述の第一従来構造がインパルス特性に劣る理由の一つとして、以下のように考えられる。電力ケーブルの終端部にインパルスが印加されると、電力ケーブルの外部半導電層において遮蔽層から露出された部分及びその周囲に電界が集中する。上述の電界緩和アダプタの低電位側の端部が上記外部半導電層の露出部分と接していることで、上記低電位側の端部に電界が集中する。電界の集中によって上記低電位側の端部が絶縁破壊し得る。そこで、本開示は上述の低電位側の端部の配置が上記第一従来構造と異なる構造を提案する。最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0014】
(1)本開示の一態様に係る電力ケーブルの終端構造は、導体、絶縁層、外部半導電層及び遮蔽層を内側から順に有する電力ケーブルの端末部と、前記絶縁層の外側に配置されたストレスコーンと、前記絶縁層の外側に配置された抵抗部と、前記ストレスコーンの外側及び前記抵抗部の外側に配置された絶縁流体とを備える。
前記電力ケーブルの端末部は、前記遮蔽層から露出された前記外部半導電層である第一露出部と、前記外部半導電層から露出された前記絶縁層である露出部とを有する。
前記ストレスコーンは、前記絶縁層の露出部の一部と接する絶縁筒部と、前記第一露出部と接するように前記絶縁筒部の端部に設けられた半導電部とを有する。
前記抵抗部は、電界の大きさによって抵抗率が変化する傾斜機能材料で構成された筒状体である。前記抵抗部は、前記絶縁筒部の外周面の全面と接する第一内周面と、前記絶縁層の露出部のうち前記絶縁筒部に覆われていない部分と接する第二内周面と、前記第一露出部と接することなく前記半導電部と接する第一端部とを有する。
前記絶縁流体は、前記絶縁層の露出部及び前記絶縁筒部と接することなく前記抵抗部の外周面と接する。
【0015】
抵抗部によって、絶縁層の露出部は絶縁流体と接しない。抵抗部が絶縁流体と接する。そのため、本開示の電力ケーブルの終端構造では、三重接触部は、絶縁層の露出部とストレスコーンの絶縁筒部と抵抗部とが接する部分である。このような本開示の電力ケーブルの終端構造は、抵抗部によって三重接触部に負荷される電界ストレスを軽減できる。
【0016】
抵抗部の第一端部は、ストレスコーンの半導電部と接することで外部半導電層の第一露出部に電気的に接続される。外部半導電層は接地されているため、この接続によって抵抗部の第一端部は接地電位をとる。即ち、抵抗部の第一端部は低電位側の端部である。しかし、抵抗部の第一端部はインパルス印加時に電界が集中する上記第一露出部と直接接しない。このような本開示の電力ケーブルの終端構造は、上述の第一従来構造に比較してインパルス特性に優れる。
【0017】
(2)本開示の電力ケーブルの終端構造の一例として、前記電力ケーブルの端末部は、前記遮蔽層から露出された前記外部半導電層である第二露出部を有し、前記絶縁層の露出部は、前記第一露出部と前記第二露出部との間に配置されており、前記第二露出部は、前記絶縁層から露出された前記導体の端部に電気的に接続されており、前記抵抗部は、前記第二露出部に電気的に接続された第二端部を有する。
【0018】
上記形態は、第二端部が電力ケーブルの導体に直接接続される場合に比較して、抵抗部の長さを短くできる。
【0019】
(3)本開示の電力ケーブルの終端構造の一例として、前記抵抗部は成形体である。
【0020】
上記形態は、絶縁層の露出部及びストレスコーンの外周に抵抗部を嵌め込むことで電力ケーブルの終端構造を構築できる。
【0021】
(4)上記(3)の電力ケーブルの終端構造の一例として、前記絶縁筒部と前記抵抗部とは一体物である。
【0022】
上記形態は、絶縁層の露出部の外周にストレスコーン及び抵抗部を一度に嵌め込める。
【0023】
(5)本開示の電力ケーブルの終端構造の一例として、前記抵抗部は、前記傾斜機能材料から構成されるテープ材が前記絶縁筒部の外周に筒状に巻回されてなる。
【0024】
上記形態は、絶縁層の露出部の大きさ及びストレスコーンの大きさによらず抵抗部を形成できる。
【0025】
(6)本開示の電力ケーブルの終端構造の一例として、前記絶縁層の構成材料は無機充填剤を含む。
【0026】
上記形態は、直流印加時の特性の低下を低減できる。
【0027】
(7)本開示の電力ケーブルの終端構造の一例として、前記絶縁層の構成材料は無機充填剤を含まない。
【0028】
上記形態は、無機充填剤が不要である点で製造コストを低減できる。
【0029】
(8)本開示の一態様に係る筒ユニットは、電力ケーブルの端末部と絶縁流体とを備える電力ケーブルの終端構造に用いられる筒ユニットであって、ストレスコーンと前記ストレスコーンの外側に配置された抵抗部とを備える。
前記ストレスコーンは、絶縁筒部と前記絶縁筒部の端部に設けられた半導電部とを有する。
前記抵抗部は、電界の大きさによって抵抗率が変化する傾斜機能材料で構成された筒状体である。前記抵抗部は、前記絶縁筒部の外周面の全面と接する第一内周面と、前記絶縁筒部の外周面と接していない第二内周面と、前記半導電部と接する第一端部と、前記絶縁流体と接するように配置される外周面とを有する。
【0030】
本開示の筒ユニットは、電力ケーブルの絶縁層において外部半導電層から露出された部分を覆うように配置される。本開示の筒ユニットを備える電力ケーブルの終端構造では、三重接触部は、絶縁層の露出部とストレスコーンの絶縁筒部と抵抗部とが接する部分となる。このような本開示の筒ユニットは、三重接触部に負荷される電界ストレスを軽減できる電力ケーブルの終端構造を構築できる。
【0031】
本開示の筒ユニットを備える電力ケーブルの終端構造ではストレスコーンの半導電部は、電力ケーブルの外部半導電層において遮蔽層から露出された部分と接するように配置される。抵抗部の第一端部は、上記半導電部と接することで上記外部半導電層の露出部分に電気的に接続される。上記外部半導電層は接地されているため、この接続によって抵抗部の第一端部は接地電位をとる。即ち、抵抗部の第一端部は低電位側の端部である。しかし、抵抗部の第一端部はインパルス印加時に電界が集中する上記外部半導電層の露出部分と直接接しない。このような本開示の筒ユニットは、上述の第一従来構造に比較してインパルス特性に優れる電力ケーブルの終端構造を構築できる。
【0032】
(9)本開示の一態様に係る筒部品は、電力ケーブルの端末部とストレスコーンと絶縁流体とを備える電力ケーブルの終端構造に用いられる筒部品である。この筒部品は、電界の大きさによって抵抗率が変化する傾斜機能材料で構成された成形体である。この筒部品は、前記ストレスコーンに備えられる絶縁筒部の外周面の全面と接するように配置される第一内周面と、前記絶縁筒部と接することなく、前記電力ケーブルの端末部に備えられる絶縁層と接するように配置される第二内周面と、前記電力ケーブルに備えられる外部半導電層と接することなく、前記ストレスコーンに備えられる半導電部と接するように配置される第一端部と、前記絶縁流体と接するように配置される外周面とを有する。
【0033】
本開示の筒部品は、電力ケーブルの絶縁層において外部半導電層から露出された部分とストレスコーンの絶縁筒部とを覆うように配置される。本開示の筒部品を備える電力ケーブルの終端構造では、三重接触部は、絶縁層の露出部とストレスコーンの絶縁筒部と本開示の筒部品とが接する部分となる。このような本開示の筒部品は、三重接触部に負荷される電界ストレスを軽減できる電力ケーブルの終端構造を構築できる。
【0034】
本開示の筒部品を備える電力ケーブルの終端構造ではストレスコーンの半導電部は、電力ケーブルの外部半導電層において遮蔽層から露出された部分と接するように配置される。筒部品の第一端部は、上記半導電部と接することで上記外部半導電層の露出部分に電気的に接続される。上記外部半導電層は接地されているため、この接続によって本開示の筒部品の第一端部は接地電位をとる。即ち、本開示の筒部品の第一端部は低電位側の端部である。しかし、本開示の筒部品の第一端部はインパルス印加時に電界が集中する上記外部半導電層の露出部分と直接接しない。このような本開示の筒部品は、上述の第一従来構造に比較してインパルス特性に優れる電力ケーブルの終端構造を構築できる。
【0035】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して本開示の実施の形態を詳細に説明する。図中、同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0036】
[実施形態1]
(概要)
図1を参照して、実施形態1の電力ケーブルの終端構造を説明する。
図1は、実施形態1の電力ケーブルの終端構造を電力ケーブルの長手方向に平行な平面で切断した断面である。ただし、電力ケーブルは断面ではなく外観を示す。また、図1は、実施形態1の電力ケーブルの終端構造においてストレスコーンが配置された部分及びその周辺部分のみを示す。なお、図1は、上記終端構造の右半分のみを示し、上記終端構造の左半分を省略する。左半分の構造は右半分の構造と同様である。図1の上側が電力ケーブルの先端側に相当する。図1の下側が電力ケーブルの後端側に相当する。電力ケーブルの先端側は、後述する絶縁層から露出された導体の端部が配置される側である。また、図1は、説明の便宜上、各構成部材の大きさ及び大きさの比率が実際とは異なる場合がある。なお、電力ケーブルの長手方向は図1では上下方向に相当する。
【0037】
実施形態1の電力ケーブルの終端構造1は、電力ケーブルと図示しない外部の接続対象とを接続するために電力ケーブルの端末部2に設けられる。上記外部の接続対象は、例えば電力機器、架空送電線等である。
【0038】
実施形態1の電力ケーブルの終端構造1は、気中終端接続部であって電力ケーブルの端末部2の周囲に絶縁油5が充填された構造である。実施形態1の電力ケーブルの終端構造1における基本構成は、公知の電力ケーブルの気中終端接続部を参照できる。以下、まず基本構成を説明する。実施形態1の電力ケーブルの終端構造1は電力ケーブルの端末部2とストレスコーン3と抵抗部4と絶縁油5とを備える。電力ケーブルの端末部2は、遮蔽層23から露出された外部半導電層22である第一露出部221と外部半導電層22から露出された絶縁層21である露出部210とを備える。この絶縁層21の露出部210の外側にストレスコーン3が配置されている。また、絶縁層21の露出部210の外側に抵抗部4も配置されている。抵抗部4は筒状体であり、電界の大きさによって抵抗率が変化する傾斜機能材料(FGM)で構成されている。抵抗部4の第一端部41はストレスコーン3に備えられる半導電部36に接する。ストレスコーン3の外側及び抵抗部4の外側に絶縁油5が配置されている。
【0039】
上述の第一従来構造ではストレスコーンの内側に上述の電界緩和アダプタが配置されている。また、電界緩和アダプタの低電位側の端部が電力ケーブルの外部半導電層の露出部分と接している。これに対して、実施形態1の電力ケーブルの終端構造1ではストレスコーン3の内側ではなく、ストレスコーン3の外側に抵抗部4が配置されていることを特徴の一つとする。また、抵抗部4の低電位側の端部である第一端部41が外部半導電層22の第一露出部221と接していないことを別の特徴の一つとする。
【0040】
以下、まず構成部材を説明する。次に電力ケーブルの終端構造1の具体的な構造を説明する。
【0041】
(構成部材)
〈電力ケーブル〉
電力ケーブルは、導体20、絶縁層21、外部半導電層22及び遮蔽層23を内側から順に有する。更に電力ケーブルは絶縁層21の内側に図示しない内部半導電層を備えると共に遮蔽層23の外側に図示しないシースを備える。このような電力ケーブルの代表例は架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CVケーブル)である。
【0042】
絶縁層21の構成材料は電気絶縁材料である。電気絶縁材料の具体例は上述の架橋ポリエチレンといった樹脂組成物である。上記構成材料は1種又は複数種の充填剤を含む樹脂組成物でもよい。本例の絶縁層21の構成材料は無機充填剤を含む架橋ポリエチレンである。無機充填剤は例えば酸化ケイ素、酸化マグネシウム等である。無機充填剤は、直流印加時に絶縁層21内に空間電荷が生成されることで絶縁層21の直流特性が低下することを低減する効果を有する。上記直流特性は体積抵抗率、直流破壊電界強度、空間電荷特性等である。無機充填剤はナノオーダーの粒径を有する微細な粒子であるとベースである樹脂中に均一的に分散し易い。その結果、上記直流特性の低下が低減され易い。
【0043】
導体20、内部半導電層及び外部半導電層22、遮蔽層23、及びシースの構成材料は公知の材料を利用できる。
【0044】
実施形態1の電力ケーブルの終端構造1は、電力ケーブルの送電電圧が例えば250kV以上、400kV以上、更には500kV以上といった高電圧送電に利用される。送電電圧に応じて、導体断面積、絶縁層21の厚さ等が設定される。
【0045】
〈ストレスコーン〉
ストレスコーン3は、絶縁筒部30と半導電部36とを有する。本例のストレスコーン3は、絶縁筒部30と半導電部36とが一体化された成形体である。
【0046】
絶縁筒部30は代表的には紡錘状の外形を有する。詳しくは、絶縁筒部30における第一端部31側の部分及び第二端部32側の部分が先細りしている。絶縁筒部30における中間部の厚さが両端部31,32側の部分の最小厚さよりも厚い。絶縁筒部30は、上述の二つの端部31,32と円筒状の孔と内周面301と外周面300とを備える。上記孔は、第一端部31から第二端部32に貫通する。内周面301はこの孔を形成する。
【0047】
絶縁筒部30の構成材料は例えば電気絶縁性のゴムである。上記ゴムの具体例はエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等である。上記構成材料がゴムであれば、ゴムの弾性力によって絶縁筒部30の内周面301は絶縁層21の露出部210に密着する。絶縁筒部30の構成材料、後述する半導電部36の構成材料は公知の材料を利用できる。ストレスコーン3の製造には公知の成形方法等を利用することができる。
【0048】
絶縁筒部30の第一端部31側に半導電部36が設けられている。詳しくは半導電部36は第一端部31側における内周側に設けられている。半導電部36の一部は絶縁筒部30に覆われている。半導電部36の残部は絶縁筒部30から露出されている。半導電部36における絶縁筒部30から露出された部分の一部は、絶縁筒部30の内周面301と共にストレスコーン3の内周面を構成する。
【0049】
半導電部36の構成材料は半導電材料である。半導電材料の具体例は以下のゴム組成物である。このゴム組成物は上述のEPDM等の電気絶縁性のゴムとカーボン等の導電性材料とを含む。上記構成材料がゴムを含むことで、ゴムの弾性力によって半導電部36における上述の露出部分の一部は外部半導電層22の第一露出部221に密着できる。
【0050】
〈抵抗部〉
抵抗部4は、上述のように筒状体である。本例の抵抗部4は成形体である。また、本例の抵抗部4は後述するようにストレスコーン3と一体化されている。
【0051】
抵抗部4は、第一端部41と第二端部42と筒状の孔と内周面と外周面400とを有する。上記孔は第一端部41から第二端部42に貫通する。内周面はこの孔を形成する。また、内周面は、第一端部41側に配置された第一内周面401と第二端部42側に配置された第二内周面402とを有する。外周面400は上記内周面とは反対側に配置されている。
【0052】
抵抗部4の厚さは適宜選択できる。本例の抵抗部4は抵抗部4の全長にわたって一様な厚さを有するが、抵抗部4は局所的に厚い部分又は局所的に薄い部分を有してもよい。ここでの厚さは、抵抗部4の内周面と外周面400との間の距離である。抵抗部4の長さは、絶縁層21の露出部210の長さに応じて調整される。抵抗部4の長さは絶縁筒部30の長さよりも長い。ここでの長さは電力ケーブルの長手方向に沿った大きさである。
【0053】
抵抗部4の構成材料である上述の傾斜機能材料の具体例は以下のゴム組成物である。このゴム組成物は上述のEPDM等の電気絶縁性のゴムとカーボン等の導電性材料と1種又は複数種の電気絶縁性のセラミックスとを含む。上記セラミックスの具体例は炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等である。上記傾斜機能材料は公知の材料を利用できる。本例の成形体からなる抵抗部4の製造には公知の成形方法等を利用することができる。なお、抵抗部4を構成する筒状体は、本例の成形体の他、後述する変形例1に示すようにテープ材が筒状に巻回されたものを含む。
【0054】
抵抗部4は、電圧印加時に第二端部42が100%電位となり、第一端部41が0%電位となるように電力ケーブルの端末部2に電気的に接続される。この接続によって、電圧印加時に抵抗部4に電界が負荷されると、抵抗部4の抵抗率が線形又は非線形に変化する。特に、ある程度大きな電界が負荷された際に抵抗部4の抵抗率が大きく低下するように上記傾斜機能材料の組成を調整するとよい。このような抵抗部4を備える電力ケーブルの終端構造1は、高電圧の直流が印加された際に三重接触部9に負荷される電界を効果的に低減できる。
【0055】
〈筒ユニット〉
実施形態1の電力ケーブルの終端構造1は、筒ユニット6を備える。筒ユニット6は、ストレスコーン3と抵抗部4とを備える。筒ユニット6は絶縁筒部30と抵抗部4とが一体化された一体物である。
【0056】
絶縁筒部30を覆うように抵抗部4が配置されている。即ち、抵抗部4の内側に絶縁筒部30が配置されている。また、絶縁筒部30の第一端部31と半導電部36と抵抗部4の第一端部41とが接するようにストレスコーン3と抵抗部4とが一体化されている。そのため、筒ユニット6の第一端部は、絶縁筒部30の第一端部31と半導電部36と抵抗部4の第一端部41とを含む。また、上述のように絶縁筒部30の長さが抵抗部4の長さよりも短い。そのため、絶縁筒部30の第二端部32と抵抗部4の第二端部42とは筒ユニット6の長手方向にずれている。筒ユニット6の第二端部は、抵抗部4の第二端部42に相当する。
【0057】
上述のように絶縁筒部30の長さが抵抗部4の長さよりも短いことで、絶縁筒部30は絶縁筒部30の全長にわたって抵抗部4に覆われている。抵抗部4の第一内周面401は絶縁筒部30の外周面300の全面と接する。抵抗部4の第二内周面402は絶縁筒部30の外周面300に接しない。絶縁筒部30が抵抗部4の第一端部41側にずれて配置されていることで、筒ユニット6の内周面は、主として絶縁筒部30と抵抗部4とから構成される。筒ユニット6における第一端部31,41側の内周面は主として絶縁筒部30の内周面301である。筒ユニット6における第二端部42側の内周面は抵抗部4の第二内周面402である。また、絶縁筒部30の外周面300の全面が抵抗部4に覆われていることで、筒ユニット6の外周面は主として抵抗部4の外周面400である。
【0058】
筒ユニット6は例えば以下のようにして製造する。ストレスコーン3を成形した後、ストレスコーン3の外周面300に抵抗部4の構成材料を射出成形等によって成形する。
【0059】
〈絶縁油〉
絶縁油5は絶縁流体の一例である。絶縁油5の具体例はシリコーン油等である。絶縁油5は公知の組成のものを利用できる。
【0060】
絶縁油5は碍管8内に充填される。碍管8は、電力ケーブルの端末部2を収納する容器として利用される。碍管8の構成材料は樹脂等の電気絶縁材料である。なお、図1は碍管8を二点鎖線で仮想的に示す。また、図1は碍管8が二層構造である場合を例示するが単層構造でもよい。
【0061】
(具体的な構造)
〈電力ケーブルの端末部〉
電力ケーブルの端末部2は段剥ぎされている。そのため、電力ケーブルを構成する上述の各部材の端部は露出されている。具体的には、電力ケーブルの端末部2は、上述の絶縁層21の露出部210及び外部半導電層22の第一露出部221と絶縁層21から露出された導体20の端部とを備える。更に、電力ケーブルの端末部2は、遮蔽層23においてシースから露出された部分等を備える。本例の電力ケーブルの端末部2は、遮蔽層23から露出された外部半導電層22である第二露出部222を備える。第一露出部221と第二露出部222とは電力ケーブルの長手方向に間隔をあけて配置されている。第一露出部221が電力ケーブルの後端側に配置されている。第二露出部222が電力ケーブルの先端側に配置されている。そのため、絶縁層21の露出部210は、第一露出部221と第二露出部222との間に配置されている。
【0062】
第二露出部222は、抵抗部4と導体20の端部とを電気的に接続するための導通部として利用される。そのため、第二露出部222は導体20の端部と電気的に接続されている。なお、導体20の端部は図示を省略する。
【0063】
絶縁層21の露出部210はストレスコーン3と抵抗部4とに覆われる。本例では絶縁層21の露出部210は筒ユニット6に覆われる。詳しくは絶縁層21の露出部210における電力ケーブルの先端側の部分が抵抗部4に覆われる。絶縁層21の露出部210における電力ケーブルの後端側の部分が絶縁筒部30に覆われる。
【0064】
外部半導電層22の第一露出部221は、ストレスコーン3の半導電部36と抵抗部4の第一端部41とを接地電位とするための導通部として利用される。
【0065】
〈筒ユニット〉
絶縁筒部30の内周面301は、絶縁層21の露出部210の一部である後端側の部分と接するように配置されている。半導電部36における絶縁筒部30から露出された部分の一部は、外部半導電層22の第一露出部221と接するように配置されている。外部半導電層22は接地されることから、第一露出部221との接触により半導電部36は接地電位をとる。
【0066】
抵抗部4の第一内周面401は上述のように絶縁筒部30の外周面300と接している。抵抗部4の第二内周面402は絶縁層21の露出部210のうち絶縁筒部30に覆われていない部分である先端側の部分と接するように配置されている。この配置によって、絶縁筒部30の第二端部32には、絶縁層21の露出部210とストレスコーン3の絶縁筒部30と絶縁油5とが接する三重接触部が生じない。また、絶縁筒部30の第二端部32には、絶縁筒部30と抵抗部4と絶縁油5とで構成された三重接触部も生じない。
【0067】
抵抗部4の第一端部41は電力ケーブルの後端側に配置されている。詳しくは第一端部41は、外部半導電層22の第一露出部221と接することなく半導電部36と接するように配置されている。上述のように接地電位である半導電部36と接することで、抵抗部4の第一端部41も接地電位である。そのため、抵抗部4の第一端部41は抵抗部4における低電位側の端部である。
【0068】
抵抗部4の第二端部42は電力ケーブルの先端側に配置されている。詳しくは第二端部42は、外部半導電層22の第二露出部222と電気的に接続されている。本例では第二端部42と第二露出部222とは接合部49によって接続されている。接合部49は導電性材料から構成されている。第二露出部222及び接合部49によって抵抗部4の第二端部42は導体20の端部と電気的に接続される。この接続によって抵抗部4の第二端部42は100%電位をとることで抵抗部4における高電位側の端部である。
【0069】
筒ユニット6は絶縁層21の露出部210を覆う。また、上述のように筒ユニット6では抵抗部4は絶縁筒部30を覆う。そのため、筒ユニット6の外周面である抵抗部4の外周面400は絶縁油5と接するように配置されている。絶縁層21の露出部210とストレスコーン3の絶縁筒部30とは絶縁油5と接しない。
【0070】
(電力ケーブルの終端構造の製造方法)
実施形態1の電力ケーブルの終端構造1は、例えば以下のようにして構築される。
(1)電力ケーブルの端部を段剥ぎする等の端末処理を行う。
(2)段剥ぎされた電力ケーブルの端末部2に筒ユニット6を導体20の端部側から嵌め込む。筒ユニット6を予め拡径させた状態としておけば、電力ケーブルの端末部2が筒ユニット6の孔内を挿通し易い。筒ユニット6の半導電部36が外部半導電層22の第一露出部221と接するまで嵌め込み作業を行う。
(3)絶縁層21の露出部210の上に筒ユニット6が配置されたら、第二端部42と第二露出部222とを接続する。
その他の処理は公知の手順を参照することができる。
【0071】
(作用効果)
ストレスコーン3の絶縁筒部30における高電位側の第二端部32側に生じる三重接触部9は、絶縁層21の露出部210と絶縁筒部30と抵抗部4とで構成されている。実施形態1の電力ケーブルの終端構造1は、絶縁層21の露出部210と絶縁筒部30と絶縁油5とで構成された三重接触部を有さない。実施形態1の電力ケーブルの終端構造1では、絶縁油5は抵抗部4に接するが、絶縁層21及び絶縁筒部30に接触しない。このような実施形態1の電力ケーブルの終端構造1に高電圧の直流が印加された際には抵抗部4によって三重接触部9に負荷される電界ストレスが軽減される。
【0072】
抵抗部4における低電位側の第一端部41は外部半導電層22の第一露出部221に直接接せず、ストレスコーン3の半導電部36と接する。このような実施形態1の電力ケーブルの終端構造1にインパルスが印加された際には、上述の第一従来構造に比較して低電位側の第一端部41に電界が集中することが軽減される。そのため、第一端部41が絶縁破壊し難い。従って、実施形態1の電力ケーブルの終端構造1は、上述の第一従来構造に比較してインパルス特性にも優れる。
【0073】
本例の電力ケーブルの終端構造1は、以下の効果も奏する。
(A)本例では、抵抗部4の第二端部42が外部半導電層22の第二露出部222に接続されている。この構造は、第二端部42が導体20の端部に直接接続された構造に比較して抵抗部4の長さを短くできる。電力ケーブルの使用電圧等にもよるが、抵抗部4の長さを例えば1m以下にすることができる。抵抗部4の長さが短い抵抗部4は成形し易い。このような抵抗部4は製造性に優れる。
【0074】
(B)本例では、ストレスコーン3と抵抗部4とが一体化された成形体、即ち筒ユニット6である。そのため、絶縁層21の露出部210にストレスコーン3と抵抗部4とを一度に嵌め込むことができる。このような本例の構造は、ストレスコーン3と抵抗部4とがそれぞれ独立した成形体である場合に比較して、終端構造の構築時間を短縮できる。また、構築作業が単純である。
【0075】
(C)本例では、絶縁層21が無機充填剤を含む。このような本例の構造は、直流印加時に、体積抵抗率、直流破壊電界強度、空間電荷特性等の直流特性の低下を低減できる。
【0076】
[試験例]
電力ケーブルの終端構造においてFGM部材の有無、FGM部材の配置の相違によって電界ストレスの分布状態がどのように変化するかを調べた。上記FGM部材とは、電界の大きさによって抵抗率が変化する傾斜機能材料で構成された筒状体である。
【0077】
(試料の説明)
試料No.1,No.101の終端構造は上述のFGM部材を備える。
試料No.1の終端構造は上述の実施形態1の電力ケーブルの終端構造1に相当する。即ち、試料No.1の終端構造はストレスコーンの外側にFGM部材を備える。FGM部材の低電位側の端部は、電力ケーブルの外部半導電層と接しておらず、ストレスコーンの半導電部と接する。
試料No.101の終端構造は上述の第一従来構造に相当する。即ち、試料No.101の終端構造はストレスコーンの内側にFGM部材を備える。FGM部材の低電位側の端部は、電力ケーブルの外部半導電層と接すると共にストレスコーンの半導電部と接する。即ち、FGM部材の低電位側の端部は、電力ケーブルの外部半導電層とストレスコーンの半導電部とに挟まれている。
試料No.102の終端構造は、FGM部材を備えておらず、上述の第二従来構造に相当する。そのため、試料No.102の終端構造では、三重接触部が電力ケーブルの絶縁層とストレスコーンの絶縁筒部と絶縁油とで構成される。
【0078】
(測定方法)
この試験では、電界解析を行うことで電界ストレスの分布を求めた。電界解析には、有限要素法(FEM、Finite Element Method)を利用する公知の電界解析ソフトウエアを用いた。FGM部材を備える試料No.1,No.101の終端構造では、使用電圧が525kVである電力ケーブルを想定して解析を行った。FGM部材を備えていない試料No.102の終端構造では、使用電圧が400kV級以下の電力ケーブルを想定して解析を行った。
【0079】
(解析結果)
〈直流印加時〉
各試料の終端構造について、直流印加時に三重接触部に負荷される電界ストレスの絶対値(kV/mm)を求めた。試料No.102の終端構造の三重接触部に印加される電界ストレスを基準として相対値で比較する。試料No.102の電界ストレスを1とすると、試料No.1,No.101の終端構造の三重接触部に印加される電界ストレスは0.65以下である。試料No.1の上記電界ストレスは0.46であり、試料No.101の上記電界ストレスよりも更に低かった。このことから、FGM部材を備えることで直流印加時に三重接触部に負荷される電界ストレスが低減されることがわかる。
【0080】
〈交流インパルス印加時〉
各試料の終端構造について、交流インパルス印加時にFGM部材の低電位側の端部に負荷される電界ストレスの分担割合(%/mm)を求めた。試料No.101の終端構造の上記端部に負荷される電界ストレスの分担割合を基準として相対値で比較する。試料No.101の電界ストレスの分担割合を1とすると、試料No.1の電界ストレスの分担割合は0.15である。このことから、ストレスコーンの外側にFGM部材が配置されると共にFGM部材の低電位側の端部が電力ケーブルの外部半導電層と接しないことで、交流インパルス印加時に上記低電位側の端部に負荷される電界ストレスが大幅に低減されることがわかる。
【0081】
以上のことから、実施形態1の電力ケーブルの終端構造1は、直流印加時の電界ストレスを軽減できると共にインパルス特性にも優れることが定量的に示された。
【0082】
[変形例]
実施形態1の電力ケーブルの終端構造1について、以下の少なくとも一つの変更が可能である。
(変形例1)
抵抗部4が成形体ではない。例えば、抵抗部4は、上述の傾斜機能材料から構成されるテープ材がストレスコーン3の絶縁筒部30の外周に筒状に巻回されてなる。テープ材の図示は省略する。
【0083】
変形例1では、絶縁層21の露出部210の大きさ及びストレスコーン3の大きさに適合した大きさを有するように抵抗部4を成形する必要がない。テープ材を巻回する領域、テープ材の幅や厚さ、テープ材の回数等の変更が容易である。そのため、露出部210の大きさ及びストレスコーン3の大きさによらず、抵抗部4を形成することができる。このような変形例1は、任意の大きさの電力ケーブルに対して適用できるため、設計の自由度が高い。
【0084】
(変形例2)
抵抗部4とストレスコーン3とがそれぞれ独立した成形体である。例えば、抵抗部4は以下の筒部品40である。筒部品40は、第一端部41と第二端部42と第一内周面401と第二内周面402と外周面400とを有する。また、筒部品40は第一端部41から第二端部42に貫通する筒状の孔を有する。第一内周面401及び第二内周面402はこの孔を形成する。
【0085】
第一端部41は、電力ケーブルに備えられる外部半導電層22と接することなく、ストレスコーン3に備えられる半導電部36と接するように配置される。第二端部42は電力ケーブルに備えられる導体20の端部と電気的に接続される。第一内周面401は、ストレスコーン3に備えられる絶縁筒部30の外周面300の全面と接するように配置される。第二内周面402は絶縁筒部30と接しないように配置される。また、第二内周面402は電力ケーブルに備えられる絶縁層21の露出部210であって絶縁筒部30に覆われていない部分と接するように配置される。外周面400は、絶縁油5と接するように配置される。
【0086】
このような筒部品40の一例は筒部品40の長手方向に一様な内径及び外径を有する円筒状の成形体であって、加熱によって収縮及び変形が可能なものである。熱収縮前の筒部品40の内径は絶縁筒部30の最大外径よりも大きければ、絶縁層21の露出部210に配置された絶縁筒部30が筒部品40の孔内を挿通し易い。絶縁筒部30及び絶縁層21の露出部210の外側に筒部品40を配置した後に筒部品40を加熱する。筒部品40が熱収縮することで、絶縁筒部30及び絶縁層21の露出部210に密着することができる。別例として、筒部品40は、二つ割れの部品を組み合わせることで筒状に構成されるものでもよい。更に別例として、筒部品40は、複数の帯状材が絶縁筒部30の外周に筒状に配置されることで構成されたものでもよい。例えば、複数の帯状材は、絶縁筒部30の外周に巻回されることによって、又は絶縁筒部30の外周を囲むように縦添えされることによって筒状に配置される。隣り合う帯状材の間に隙間が生じないように、隣り合う帯状材の一部が重なり合っていてもよい。隣り合う帯状材の合わせ目を覆うように別の帯状材が積層されてもよい。隣り合う帯状材同士や積層された帯状材同士が接着剤で接合されてもよい。帯状材は、種々の大きさ、形状の絶縁筒部30を覆うことができる。
【0087】
変形例2の筒部品は、電力ケーブルの終端構造1に備えられることで、実施形態1で説明した抵抗部4と同様の効果を奏する。即ち、変形例2の筒部品を利用すれば、三重接触部9に負荷される電界ストレスを軽減できる電力ケーブルの終端構造1を構築することができる。また、変形例2の筒部品を利用すれば、上述の第一従来構造に比較してインパルス特性に優れる電力ケーブルの終端構造1を構築することができる。なお、筒部品40が電力ケーブルの終端構造1に備えられた状態では、筒部品40の外形は、絶縁層21の露出部210とストレスコーン3とがつくる外形に沿った形状である。
【0088】
(変形例3)
絶縁層21の構成材料が無機充填剤を含まない。変形例3は無機充填剤が不要である点で製造コストを低減できる。
【0089】
(変形例4)
絶縁流体が絶縁ガスである。絶縁ガスは絶縁油よりも軽量である点で、変形例4は電力ケーブルの終端構造の軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 電力ケーブルの終端構造
2 電力ケーブルの端末部
3 ストレスコーン
4 抵抗部
5 絶縁油
6 筒ユニット
8 碍管
9 三重接触部
20 導体、21 絶縁層、22 外部半導電層、23 遮蔽層
30 絶縁筒部、31 第一端部、32 第二端部、36 半導電部
40 筒部品、41 第一端部、42 第二端部、49 接合部
210 露出部、221 第一露出部、222 第二露出部
300 外周面、301 内周面、
400 外周面、401 第一内周面、402 第二内周面
図1