(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187106
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】フィルムロール梱包体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/24 20060101AFI20221212BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20221212BHJP
B65D 85/67 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B65D81/24 F
B65D65/40 D
B65D85/67 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094931
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早野 知子
【テーマコード(参考)】
3E037
3E067
3E086
【Fターム(参考)】
3E037AA04
3E037BA09
3E037BC01
3E037CA07
3E067AA16
3E067AB99
3E067AC18
3E067BA20B
3E067BA21C
3E067BB14B
3E067BB25C
3E067BC03C
3E067CA05
3E067DA03
3E067EA03
3E067EA29
3E067EA36
3E067FA04
3E067FC01
3E067FC07
3E067GA11
3E067GA30
3E067GD10
3E086AB01
3E086AD13
3E086BA04
(57)【要約】
【課題】 本発明は、薄膜なフィルムをコアに巻き取ったフィルムロールにおいて、外気温変化や梱包体の水分等の保管環境による影響を軽減し、フィルムのシワの発生を抑制するフィルムロール梱包体を提供することを、その課題とする。
【解決手段】厚みが2μm以上50μm以下のフィルムが繊維強化プラスチックコアに巻かれたフィルムロールのフィルム表面が、熱伝導率が0.100W/m・K以下であり、水分吸収率が0.50g/cm
2以下である樹脂シートAで被覆されていることを特徴とする、フィルムロール梱包体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが2μm以上50μm以下のフィルムが繊維強化プラスチックコアに巻かれたフィルムロールのフィルム表面が、熱伝導率が0.100W/m・K以下であり、水分吸収率が0.50g/cm2以下である樹脂シートAで被覆されていることを特徴とする、フィルムロール梱包体。
【請求項2】
前記樹脂シートAが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルクロライドのいずれか1種を主成分とすることを特徴とする、請求項1に記載のフィルムロール梱包体。
【請求項3】
前記樹脂シートAの表面がさらに樹脂シートBで被覆されたフィルムロール梱包体であって、前記樹脂シートBが少なくとも片面に金属蒸着膜を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のフィルムロール梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シワの発生の抑制に優れたフィルムロール梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からフィルム、特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、および耐薬品性を有するため、光学フィルム、保護フィルム、離型フィルム等として好適に用いられている他、包装材料、転写材料、磁気テープ、電絶フィルム、および金属ラミネートなどの一般工材分野などにも用いられている。このようなポリエステルフィルムは、紙や金属製の巻き取りコアを軸にロール状に巻き取られたフィルムロールの状態で保管されることが一般的である。
【0003】
また、近年におけるフィルムの薄膜化が進む中、フィルムロールの保管状態によってフィルムの物性に影響を与えることが知られており、梱包・保管方法の検討もなされてきた。例えば、フィルムロールの表面を金属膜が積層されたラップフィルムで覆い、その内部にシリカゲルを同梱して湿度環境を一定に保ち、フィルムのオリゴマー析出量を抑制する梱包方法(例えば、特許文献1)や、ラップ蒸着フィルムとポリエチレン樹脂シートでフィルムロールの表面を覆い、フィルムの劣化を抑制する梱包方法(例えば、特許文献2)、及びナイロンやポリエチレン製の積層ラップフィルムと金属膜が積層されたラップフィルムでフィルムロールの表面を覆い、フィルムのヘーズや熱収縮率の変化を抑制する梱包方法(例えば、特許文献3)などが知られている。
【0004】
これら特許文献1~3に示す方法では、フィルムからのオリゴマー析出やフィルムの劣化等の軽減が可能ではあるが、例えば、急激な外気温変化によるフィルムの品位低下やシワの発生を抑制することには検討されていない。これらの問題点を軽減する手段として、熱伝導率の低い樹脂シートと金属膜を積層した樹脂シートでフィルムロールを被覆した梱包体とする方法が知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-175440号公報
【特許文献2】特開平6-278775号公報
【特許文献3】特開2014-162550号公報
【特許文献4】特開2020-200044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献4に示す方法は、急激な外気温変化によるフィルムの品位低下やシワの発生を抑制する効果を有するものの、長期間の保管においてシワの問題がより生じやすい薄膜のフィルムに適用するにはより効果を高める必要があった。本発明は、上記課題を解決し、フィルムが薄膜であっても、外気温変化や湿度の保管環境による影響を軽減し、フィルムロールのフィルムのシワの発生を抑制することができるフィルムロール梱包体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、以下の構成によればシワの発生の抑制に有効であることを見出した。すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1) 厚みが2μm以上50μm以下のフィルムが繊維強化プラスチックコアに巻かれたフィルムロールのフィルム表面が、熱伝導率が0.100W/m・K以下であり、水分吸収率が0.50g/cm2以下である樹脂シートAで被覆されていることを特徴とする、フィルムロール梱包体。
(2) 前記樹脂シートAが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルクロライドのいずれか1種を主成分とすることを特徴とする、(1)に記載のフィルムロール梱包体。
(3) 前記樹脂シートAの表面がさらに樹脂シートBで被覆されたフィルムロール梱包体であって、前記樹脂シートBが少なくとも片面に金属蒸着膜を有することを特徴とする、(1)または(2)に記載のフィルムロール梱包体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄膜なフィルムを巻き取ったフィルムロールにおいても、外気温変化や湿度の保管環境による影響を軽減したシワの発生の抑制に優れたフィルムロール梱包体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のフィルムロール梱包体、およびその梱包工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のフィルムロールの梱包体は、厚みが2μm以上50μm以下のフィルムが繊維強化プラスチックコアに巻かれたフィルムロールのフィルム表面が、熱伝導率が0.100W/m・K以下であり、水分吸収率が0.50g/cm2以下である樹脂シートAで被覆されていることを特徴とする、フィルムロール梱包体である。本発明において水分吸収率とは、1cm2あたりの水分吸収量(g)をいう。
【0011】
本発明においてフィルムとは、樹脂を主成分とするシート状の成型体をいい、フィルムロールとはフィルムをコアに巻き取ったものをいう。また、フィルムロールのフィルム表面とは、フィルムロールのコアを除くフィルム部分を円柱に見立てたときに、そのフィルムの側面に相当する面、若しくはこれに片側または両側の底面に相当する面(すなわち、フィルムロールのコアを除くフィルム端面)を加えたものをいう。また、フィルムの樹脂の主成分とは、対象物の全構成成分を100質量%としたときに90質量%より多く含まれる成分をいう。
【0012】
本発明のフィルムロール梱包体のうち、フィルムロールを構成するフィルム(以下、本発明のフィルムロール梱包体におけるフィルムということがある。)に用いることができる樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、およびポリカーボネート等の樹脂が挙げられる。
【0013】
ポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称である。本発明のフィルムロール梱包体におけるフィルムに好適に用いることができるポリエステルとしては、例えば、エチレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、および1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレートから選ばれた少なくとも1種の構成単位を主要構成単位とするものが挙げられる。ここで主要構成単位とは、ポリエステルを構成する全構成単位を100モル%としたときに、50モル%を超えて含まれる構成単位をいう。本発明のフィルムロール梱包体におけるフィルムは、本発明の効果を損なわない限り、これら構成樹脂の1種のみを含んでも2種以上含んでもよい。
【0014】
なお、本発明のフィルムロール梱包体におけるフィルムは、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤および架橋剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
【0015】
本発明のフィルムロール梱包体におけるフィルムを巻き取るためのコアは、シワの軽減の観点から、繊維強化プラスチックコアを用いる。繊維強化プラスチックコアを用いると、経時によるフィルムロールの巻き締まりによるコアの撓みが抑えられ、フィルムロールの原反形状の変化によるシワを軽減できる。また、繊維強化プラスチックコアとすることで、コアの軸方向弾性率(Ya)を容易に1000kg/mm2以上とすることができ、フィルムの巻取り時にかかる張力と接圧により巻取コアが変形を抑制することができる。繊維強化プラスチックコアの軸方向弾性率(Ya)は、好ましくは1500kg/mm2以上、より好ましくは2000kg/mm2以上である。
【0016】
本発明のフィルムロール梱包体におけるフィルムは、厚みが2μm以上50μm以下のフィルムである。厚みが50μmを超える場合、フィルム自体の厚みが厚いため空気中の水分の吸収も高くなる傾向にはあるが、水分を吸収してもフィルムの厚み変化が小さく、後述する水分の吸収に起因するシワの発生が起こりにくい。それに対し、フィルムの厚みが50μm以下であると空気中の水分の吸収も低くなる傾向にはあるが、水分の吸収によるフィルムの厚み変化が大きくなり、吸水による厚み変化部位にシワが生じやすくなると考えられる。厚みの下限は、本発明のフィルムが使用される用途やフィルムの成膜性の観点から一般的には2μmである。
【0017】
一旦、外気とフィルム間に介在する、空気中の水分を吸収したフィルムは、温湿度の環境変化により空気中に水分を吸湿拡散させ、さらに拡散された水分を空気と接触するフィルム部分が吸水することを繰り返す。フィルムをコアにロールとして巻き取る際、一定の張力をかけながらフィルムロールにコンタクトロールを押圧して空気を排除しながら巻き取るが、少なからずフィルムとフィルムの間には空気が入る。そのため、フィルムロールの表面からコア方面に見て空気がより多く堆積された部位はシワが発生しやすい。さらに、フィルムロールにおけるフィルムの巻き取りの態様から、一度、フィルムにシワが発生するとその表裏に位置するフィルムにもシワの転写が発生しやすくなる。
【0018】
厚みが厚いフィルムは、同じ外径のフィルムロールであっても薄膜に比べてフィルムの巻き回数が少なく、フィルムとフィルムの間の空気中の水分の吸収や吸湿による伸縮が少ない。厚みが50μmを超えるフィルムを巻き取ったフィルムロールは、巻き回数が少ないため上述したような空気の堆積箇所の発生も少なくなる傾向がある。一方、フィルムの厚みが50μm以下であると巻き回数が多くなるため、空気の堆積箇所の発生も多くなる傾向にある。また、フィルムとフィルムの間に含まれる空気が存在する層数も多くなるため、フィルムロールのフィルム端面からフィルムとフィルムの層間に空気が侵入しやすい傾向もある。そのため、フィルムロールのフィルム部分を円柱に見立てたときに、そのフィルムの底面に相当する面も樹脂シートAで被覆されることが好ましい。
【0019】
フィルムロールの表面で吸収された水分は、外層からコア中心部に向かって、また、フィルムロールのフィルム端面で吸収された水分は、徐々にフィルムロールの幅方向に対して、フィルムロールの中心側に伝播していくものと考えられる。また、フィルムロールの端面からフィルムロールの中心側に水分が伝播しながら各フィルムの層間での水分の伝播も繰り返される。空気中の水分は、空気とフィルムとを互いに行き来し、フィルム中の水分が気体となって吸湿拡散することや、空気中の水分がフィルムに吸収されることが知られている。そのため、フィルムロールは外気の温度の変化が起こるとその吸湿拡散・吸水が繰り返され、フィルムに微小な伸縮が繰り返し生じ、シワを発生させる。
【0020】
また、フィルムは一定の張力をかけながら製造され、フィルムロールとして巻き取る際も張力がかけられるため、経時的に巻き締まりが発生する。その巻き締まりにより、空気がフィルムロールのフィルム端面から排出されればよいが、巻き締まりによりフィルムロールのフィルムが積層されたフィルム間でフィルムが密着し、空気が排出される機会を失うことがある。その結果、排出されない空気により吸湿拡散・吸水が繰り返されてフィルムロールの幅方向端部側にシワが発生しやすくなる傾向がある。
【0021】
さらに、フィルムロールの表面のフィルムは外気にさらされる時間がフィルムロールのコア付近の内層側に比べて高く、フィルム表面やその付近にある層は、大気中の水分を吸収しやすい。一旦、表面からフィルムが吸収した水分は、そのフィルムの内側のフィルムにも吸水をもたらす。そのため、フィルムロールの表面側(外層側)と内層側のフィルムとでは吸水量が異なり、外層側は吸湿拡散・吸水によるシワがより発生しやすい。そのため、本発明のフィルムロール梱包体は、フィルムロールの表面が樹脂シートAで被覆されていることが重要である。
【0022】
本発明のフィルムロール梱包体は、フィルムロールの表面が、熱伝導率が0.100W/m・K以下であり、水分吸収率が0.50g/cm2以下である樹脂シートAで被覆されていることが重要である。本発明のフィルムロールの梱包体において、樹脂シートAは、外気温の変化による影響やフィルムロール梱包体中の湿度の吸収を抑制する役割を担う。
【0023】
熱伝導率については、樹脂シートAに相当するシートが存在しない場合や、樹脂シートAに代えて熱伝導率が0.100W/m・Kよりも大きいシートでフィルムロールのフィルム表面を覆った場合は、外気の温度変化がフィルムロールへ及ぼす影響が大きくなり、保管期間中においてフィルムロールのフィルム部分にシワなどの外観不良を生じさせる。急激な外気温の変化による影響は、フィルムロール梱包体を一定の環境下から他の環境下へ移動した際に表面の梱包材を通してフィルムロールのフィルムに外気温が間接的に伝わることや、一定の環境下から他の環境下へ移動させて梱包材を切開した際にフィルムロールに外気が直接接触すること等によって生じる。このとき、フィルムロールのフィルムが外部環境に比べて高温側であっても低温側であっても、フィルムロールのフィルムにシワが生じる。
【0024】
特に、フィルムロールを覆う樹脂シートAに代えて熱伝導率が0.100W/m・Kを超える樹脂シートを用いた場合は、フィルムロールのフィルムが急激な外気温の変化の影響を受けやすくなり、そのフィルムロールのフィルム外層にシワが発生する。さらに、一度フィルムロールのフィルム外層にシワが発生すると内側に向かってシワの転写が連鎖するため、やがて内層のフィルムにもシワが生じる。このようなシワは、離型用や光学用フィルムのようにフィルム上にセラミックススラリーやハードコートなどの後加工を行う場合においては、特に著しく品位に影響を及ぼす。上記観点から、樹脂シートAの熱伝導率は0.050W/m・K以下が好ましい。また、樹脂シートAの熱伝導率の下限に特に制限はないが、実現可能性の観点から0.010W/m・Kとなる。
【0025】
樹脂シートの熱伝導率は、JIS A 1412-2:1999 6.2に準じて測定することができる。測定機は、測定が可能なものであれば特に制限されず、例えば、英弘精機株式会社製の熱伝導率測定装置HC-074を使用することができ、本測定機を使用する場合の具体的な測定条件、手順は以下のとおりである。先ず、樹脂シートを200mm×200mm角の大きさにカットして測定試料とし、これを温度20℃、湿度65%RHの標準状態にて24hr放置する。その後、測定試料を測定機に入れ、プレートの温度差24℃(高温のプレート温度は37℃、低温のプレート温度は13℃)、平均温度25℃の条件にて熱伝導率(W/m・K)を測定する。
【0026】
樹脂シートAに相当するシートが存在しない場合、フィルムロールの表面に外気を遮断するものがないこととなり、保管中の外気温の上昇や下降が繰り返されるたびフィルムロールにシワを生じさせるきっかけを与えることになる。また、樹脂シートAに代えて水分吸収率が0.50g/cm2よりも大きいシートでフィルムロールの表面を覆った場合は、樹脂シート自体が水分を吸収してフィルムロールのフィルム外層側に水分を吸収させてしまうことや、樹脂シートが保管中の空気中の水分を吸収し、樹脂シートから空気中に吸湿拡散された水分がフィルムロールのフィルムに吸収されることがある。熱伝導率を0.100W/m・K以下又は上記の好ましい範囲としつつ、フィルムロールの水分吸収を軽減するには、樹脂シートAの水分吸収率が0.30g/cm2以下が好ましく、さらには0.05g/cm2以下であることが好ましい。樹脂シートAの水分吸収率の下限に特に制限はないが、シートの組成が樹脂であることから実現可能性を考慮すると0.0001g/cm2程度となる。
【0027】
樹脂シートの水分吸収率は、JIS K 6767:1999に準じて測定することが出来る。あらかじめ試料を乾燥させた後、シートを23℃の水に24時間浸漬した前後の質量変化を算出し差分を水分吸収率とする。詳しくは後述する。
【0028】
樹脂シートAに用いられる樹脂としては、例えば、ポリエチレン(熱伝導率:0.330~0.520W/m・K、吸水率(24h、3.2mm厚):0.015%以下)やポリプロピレン(熱伝導率:0.100W/m・K、吸水率(24h,3.2mm厚);0.03%)等のポリオレフィンの他、ポリスチレン(熱伝導率:0.100W/m・K、吸水率(24h、3.2mm厚):0.05%)、ポリビニルクロライド(PVC軟質)(熱伝導率:0.100W/m・K、吸水率(24h、3.2mm厚):0.15~0.75%)などがあげられる。ここでいう、括弧内に記載する吸水率とは、ASTM D570で求められる吸水率であり、樹脂が有する特性の参考値として記載する。すなわち、これらの樹脂の熱伝導率や吸水率からすると、本発明の梱包体は、樹脂シートAが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルクロライドのいずれか1種を主成分とすることが好ましい。ここで主成分とは、樹脂シートAを構成する全成分を100質量%としたときに、50質量%より多く100質量%以下含まれる成分をいう。
【0029】
例えば、ポリアミド/ナイロン610(熱伝導率:0.220W/m・K)は、熱伝導率には比較的低いが、分子内に親水基(アミド基)を有するため、樹脂シートとした際の吸収性が高く上記ASTM D570の測定での吸水率は、24h、3.2mm厚で1.0%を超えるものがほとんどである。また、ポリエチレンテレフタレート(熱伝導率:0.140W/m・K)も熱伝導率には優れるが、分子内に水酸基を有するため、水分を吸収しやすい。よって、これらの樹脂を主成分とするシートは、フィルムの厚みが2μm以上50μm以下であるフィルムロールの梱包には適さないことがある。
【0030】
特に、上記樹脂の中でもポリオレフィンは、耐熱性や耐寒性に優れるためフィルムロールのフィルムへの熱影響を与えにくい点や、さらには紫外線の遮断性にも優れるためフィルムロールのフィルムの紫外線劣化を軽減できる点で好適である。すなわち、上記観点から樹脂シートAはポリオレフィン樹脂シートであることがより好ましい。
【0031】
但し、前述した樹脂は、樹脂シートとしたときの熱伝導率が0.100W/m・Kを超えるものが多く、より好ましくは、熱伝導率が0.050W/m・K以下となるように樹脂シートに熱伝導率を下げる処置を施すことがすることが好ましい。熱伝導率を調整する処置としては、例えば、樹脂シートの内部に空隙を形成させる方法を用いることができる。なお、樹脂シートの内部に空隙を形成させる方法については後述する。
【0032】
一方で、樹脂シートの内部に空隙を形成させる方法においては、空隙形成時に樹脂シートの表面にも空隙が形成されてしまう傾向が高い。このような樹脂シートは、その表面や切断面から内部に水分が侵入し易く、水分吸収率が高くなる傾向にある。
【0033】
樹脂シートAの内部に空隙を構成する方法としては、例えば、樹脂シート製造時に、樹脂シートのマトリックスとなる樹脂中に当該樹脂とは非相溶な樹脂等を核材として添加し、製膜した樹脂シートを少なくとも一方向に延伸する方法、樹脂シートのマトリックスとなる樹脂中に発泡剤を添加して押出形成する方法、樹脂を化学架橋剤で気泡させる方法、などが挙げられる。また、このとき、樹脂シート内の空隙率を高くすることによりシートの熱伝導率を低くすることができ、樹脂シート内の空隙率を高くするには、非相溶な樹脂等を核材とする場合においては核材の量を増やせばよく、発泡剤を用いる場合は発泡剤の量を増やせばよい。
【0034】
但し、空隙率を高くしすぎると樹脂シートAの表面や断面に空隙部分が多くなり、空隙がない樹脂シートに比べて表面積が大きくなるため水分を吸収しやすく、また、空隙と空隙が連結され、表面の空隙から樹脂シートの内部に水分が浸透・滞留しやすく水分吸収率が高くなる傾向がある。吸収された水分は、フィルムロール梱包体として保管した際、高温環境下では樹脂シートAから水分が空気中に吸湿拡散され、フィルムロール表面や端面からフィルムに吸収されることで、シワを発生させやすくする。そのため、水分吸収率を管理した樹脂シートAを用いることが重要となり、樹脂シートAが空隙を有する場合には、連続気泡のシートとするよりも独立気泡のシートとすることが好ましい。
【0035】
フィルムロールの表面に樹脂シートAを被覆する方法としては、フィルムロールが外気から遮断され、フィルムロールと樹脂シートAに空間が生まれないように被覆することができれば特段に限定されるものではなく、例えば、以下の方法を使用することができる。フィルムロールの表面フィルムロールのフィルムと同じ幅にした樹脂シートAを巻いて、巻きはじめと巻き終わりに隙間が生じないよう(必要であれば必要な分だけオーバーラップさせて)被覆した境目をセロハンテープで貼り付けて固定する。
【0036】
別の方法としては、以下の手順で被覆する方法を用いてもよい。樹脂シートAを、上記のようにフィルムロールの表面に被覆した後、フィルムロールの端面のフィルム部分に相当する外周をオーバーラップできるサイズの円形状に切り出し、切り出し部の略中央にコア部分が通るだけの開口部を設け、開口部からコアを通してフィルムロールのフィルム端面まで貫通させる。その後、円形に切り出した樹脂シートAの外周部からフィルムロールのフィルム部分の端部にオーバーラップさせてセロハンテープで固定する。
【0037】
さらに、別の方法としては、一旦フィルムロールのフィルム部分の表面を樹脂シートAで被覆した後、フィルムロールのコアの幅よりも大きくした樹脂シートAをもう一度上から被覆し、フィルムロールのフィルム部分の端部から飛び出た部分を、フィルムロールのフィルム部分の端部付近においてコアにゴムバンドで固定させる方法が挙げられる。また、コアと巻きはじめ部分の間における空気の介入を考慮するのであれば、コアの幅より樹脂シートAの幅を大きくし、上記ゴムバンドで固定させた後、樹脂シートAの端部をコアロールの内側に折り曲げてコアの端部をゴムバンドで固定させる方法も好ましい態様である。
【0038】
通常、フィルムロールは、外部からの熱や湿気の影響を抑制するために、樹脂シートや、金属膜が積層された樹脂シートなどで梱包された状態で保管されている。フィルムロールに温度変化が生じる例として、例えば、温度管理がなされていない常温環境下での保管の際に外部温度の変化によってフィルムロールが昇温・降温する例や、フィルムロールを温度の異なる他の環境下に移動することで環境の温度差によってフィルムロールが昇温・降温する例が挙げられる。
【0039】
また、本発明のフィルムロール梱包体は、樹脂シートAの表面がさらに樹脂シートBで被覆されたフィルムロール梱包体であることが好ましい。樹脂シートBとしては、酸素透過度(20℃90%RH)で5ml/(m2・d・MPa)以下、水蒸気透過度(40℃、90%RH)で5g/(m2/d)以下であることが好ましい。このような樹脂シートBとしては、金属膜を蒸着させたフィルムがあげられる。すなわち、樹脂シートBが少なくとも片面に金属蒸着膜を有することが好ましい。上述したようなポリエチレンやポリプロピレンは、熱伝導率や吸水抑制に優れる材料ではあるが、水蒸気透過度や酸素透過度は低くても500~600ml/(m2・d・MPa)であり、樹脂シートAの表面から外気を浸透させやすい傾向がある。そのため、このような態様とすることで、樹脂シートBの金属膜により酸素や水蒸気の透過が抑えられ、樹脂シートAにより外気温の変化や吸水による影響が低減されるため、フィルムロールを構成するフィルムにシワが発生するのを軽減することができる。
【0040】
なお、本発明において、樹脂シートAの表面がさらに樹脂シートBで被覆されたとは、面積換算でフィルムロールの外周面の99.9%以上が樹脂シートAおよび/または樹脂シートBで被覆されており、樹脂シートAの外側に樹脂シートBが位置する状態をいう。
【0041】
さらに、樹脂シートAをフィルムロールに巻き付ける際の作業性を向上させる観点から、樹脂シートAの厚みが0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましい。樹脂シートAの厚みが0.1mm以上であることにより、外気温の変化による影響を低減させる効果が保たれ、樹脂シートAの厚みが5.0mm以下であることにより、樹脂シートAの厚みが過多となることによる梱包作業の作業性低下が抑えられる。また、水蒸気透過率の観点から、厚みは1.0mm以上5.0mm以下であることが好ましい。
【0042】
樹脂シートAの厚みは、ダイヤルゲージを用い、JIS K 7130:1992 A-2法に準じて、樹脂シートを10枚重ねた状態で測定した厚みの値を10で除することにより測定することができる。
【0043】
本発明のフィルムロールの保管方法において、樹脂シートBは、主に酸素や水蒸気の透過を抑制する役割を担う。樹脂シートBを構成する樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリパラフィン、ポリエステル等の各樹脂を単独でまたは複数組み合わせて用いることができる。さらに、これら樹脂を主成分とするシート上の少なくとも片面に金属膜を積層することにより、樹脂シートBを得ることができる。金属膜としては、例えばアルミニウム箔、銀箔、銅箔等を用いることができ、金属膜の樹脂シートへの積層方法としては、上記金属箔をラミネートする方法や、これらの金属を蒸着させる方法を用いることができる。
【0044】
次に、本発明のフィルムロールの保管方法について、フィルムロールが二軸配向ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムロールである例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下PETの融点をTm(℃)、PETのガラス転移温度をTg(℃)ということがある。
【0045】
先ずPETペレットを押出機にて加熱溶融し、押出し口金ダイよりTm~(Tm+70)℃の温度でシート状に冷却ドラム上へ吐出し、20~90℃の冷却ドラムで急冷固化して無配向フィルムを得る。無配向フィルムを得た後、これを走行方向(縦方向)に(Tg-10)~(Tg+70)℃の温度で2.0~15.0倍、好ましくは3.0~8.0倍に延伸し、次いで走行方向と面内で直交する方向(横方向、若しくは幅方向ということがある。)にTg~(Tg+70)℃の温度で2.0~15.0倍、好ましくは3.0~8.0倍に延伸する。さらに必要に応じて、縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。延伸終了後、二軸延伸後のフィルムを(Tg+70)~(Tm-10)℃の温度(例えば180~250℃)で1~60秒間、熱固定結晶化を行って寸法安定性を付与し、二軸配向PETフィルムを得る。
【0046】
得られた二軸配向PETフィルムを、フィルムの走行張力を200~300N/mとして巻き取りコアに巻き、PETフィルムロールを得る。巻き取りコアとしては、繊維強化プラスチック製のものを用いる。PETフィルムの幅は、フィルムの製造装置やフィルムの幅方向のスリット条件によるため、特段限定されるものではないが、一般的にフィルムロールとして保管される場合は300mm以上であり、フィルムの製造設備の観点から2,000mm以下であることが一般的である。巻き取るフィルムの長さも特段限定されず、例えば、5,000mm以上、さらには10,000mm以上とすることができる。
【0047】
以下、得られたフィルムロールを梱包することで、フィルムロール梱包体を得る。以下、本発明のフィルムロールの保管方法におけるフィルムロール梱包体、およびその梱包工程を示す模式図である
図1を参照しながら、フィルムロール梱包体を得る方法について説明する。先ず、フィルム(符号1)が繊維強化プラスチックコア(符号2)に巻かれたフィルムロール(符号3)のフィルム表面(符号4)の全面に、樹脂シートA(符号9)として空隙が形成された発泡ポリエチレン樹脂シート(熱伝導率が0.10W/m・K以下であり、水分吸収率が0.50g/cm
2以下である樹脂シート)を巻き始め部(図示しない)から巻き終わり部(符号6)まで長手方向に50mm以上重なるように巻き、セロハンテープ(符号7)で取り付ける。なお、このとき必要に応じて、樹脂シートA(符号9)の巻き始めをフィルムロールのフィルム表面にセロハンテープで固定してもよい。
【0048】
さらに、フィルム端面(符号5)から空気が入ることによるシワの発生を軽減するために、図示しないが、フィルムロールの外径より10mm以上大きな円形状にカットした樹脂シートAに、繊維強化プラスチックコアが貫通するよう略中心部位に開口部を設け、フィルム端面に樹脂シートAを通し密着させてもよく、フィルムロールのフィルム部分の外径から幅方向内側に樹脂シートAを折り、先に被覆した樹脂シートAとセロハンテープで密着さてもよい。
【0049】
次に、樹脂シートA(符号9)の表面(梱包体の表面)に吸湿材(符号8)をセロハンテープ(符号7)(図示しない)で貼り付ける。吸湿材(符号8)としては、公知のもの、例えばシリカゲル、塩化カリウム、および酸化カリウムなどを用いることができ、より具体的な例としては、OZO化学技研のOZO(吸湿率180~200%)等が挙げられる。吸湿剤(符号8)を設けるか否かは任意であるが、吸湿剤(符号8)を設けることにより樹脂シートA(符号9)および樹脂シートB(符号10)(後述)を透過した酸素や水蒸気に起因するフィルム(符号1)のシワを軽減できるため、設けることが好ましい。また、吸湿材(符号8)の貼付位置も任意であるが、直接フィルムロール(符号3)の上に貼り付けるとフィルム表面(符号4)上に設ける樹脂シートA(符号9)で圧迫され、フィルム(符号1)の外観が損なわれるため、樹脂シートA(符号9)と樹脂シートB(符号10)との間が好ましい。このような態様とすることで、樹脂シートA(符号9)と樹脂シートB(符号10)の間に介在する空気、フィルムロール(符号3)のフィルム(符号1)間中に巻き込まれた空気、および樹脂シートB(符号10)や樹脂シートA(符号9)を透過した空気が除湿され、湿気によるフィルムロール(符号3)のフィルム(符号1)のシワの発生が軽減される。
【0050】
その後、樹脂シートA(符号9)による被覆と吸湿剤(符号8)の貼付が済んだフィルムロール(符号3)(以下、フィルムロール梱包体(符号11)ということがある。)を少なくとも片面に金属膜が積層された樹脂シートB(符号10)で覆う。樹脂シートB(符号10)は、フィルムロール(符号3)を覆うものであれば、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、最終的な梱包体を隙間がない状態とするために、両端面が開放されたチューブ状、コの字型の袋状のものを好適に用いることができる(
図1においては後者の態様を表示)。これらの樹脂シートBの開口部を輪ゴムや紐等の留め具で縛って塞ぐことで、樹脂シートB被覆後のフィルムロール梱包体(符号12)を得ることができる。なお、樹脂シートB(符号10)は、水蒸気バリア製の観点から、その透湿度が5.0g/(m
2・24h)以下であることが好ましい。
【0051】
このようなフィルムロール梱包体とすることにより外部環境の変化や吸湿・吸水に起因するフィルムロールのシワの発生の抑制が可能となる。
【実施例0052】
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。各項目の測定方法等は以下のとおりである。
【0053】
(評価方法)
<フィルムロールの保管温度及び最大保管温度変化>
フィルムロールの表面に積層した樹脂シートA表面上で、藤田電機製作所製の表示付温湿度データロガー(スティックタイプ)を用いて、記録間隔を10分間に設定し温度を観測した。観測結果より、最も大きく温度が変化したタイミングにおける温度変化を最大保管温度変化(℃)とした。
【0054】
<樹脂シートの熱伝導率>
JIS A 1412-2:1999 6.2に準じて測定した。測定機は、英弘精機株式会社製の熱伝導率測定装置HC-074を使用し、具体的な測定条件、手順は以下のとおりである。先ず、樹脂シートを200mm×200mm角の大きさにカットして測定試料とし、これを温度20℃、湿度65%RHの標準状態にて24hr放置した。その後、測定試料を測定機に入れ、プレートの温度差24℃(高温のプレート温度は37℃、低温のプレート温度は13℃)、平均温度25℃の条件にて熱伝導率の測定を行った。同様の測定を合計3回行い、得られた値の平均値を樹脂シートの熱伝導率(W/m・K)とした。
【0055】
<樹脂シートの水分吸収率>
JIS K 6767:1999のB法に準じ、厚みを増減調整することなく10cmm×10cmmサイズに試料を切り出し、切り出し試料を得た。この切り出し試料を、金網を用いて浮上しないよう水中50mmの位置に保持し、24時間浸漬した後取り出して、濃度95%以上のアルコールに5秒間浸漬した。その後、切り出し試料をアルコールから取り出し、ただちにその質量A(g)を測定した。次に、その試料を60℃の恒温室に試料を入れ、24時間経過後に取り出して、ただちにその質量B(g)を測定した。質量Aから質量Bを引いた値(質量A―質量B)(g)を試験前の試料の面積(100cm2)で割り、樹脂シートの水分吸収率(g/cm2)とした。
<樹脂シートの水蒸気透過率>
温度40℃、湿度90%RH、測定面積50cm2の条件でテクノロックス社製の水蒸気透過率測定装置(機種名:“DELTAPERM”(登録商標))を使用して、差圧法により測定した。測定サンプル数は水準当たり2つ、測定回数は各測定サンプルについて5回とし、得られた10回の測定値の平均値を樹脂シートの水蒸気透過率(g/(m2・24h))とした。
【0056】
<樹脂シートの厚み>
ダイヤルゲージを用い、JIS K 7130:1992 A-2法に準じて、樹脂シートを10枚重ねた状態で任意の5ヶ所について厚みを測定し、その平均値を10で除して得られた値を樹脂シートの厚み(mm)とした。
【0057】
<ヒートショックによるシワ発生試験>
本試験により、梱包材を切開した際に、フィルムロールに外気が直接接触することによる影響を評価した。以下、試験方法について説明する。先ず、フィルムロール梱包体を気温10℃の状態で一晩保管し、その後30℃に設定された恒温槽へ瞬時に搬入した。5時間後に恒温槽からフィルムロール梱包体を取り出し、その場で梱包をはがしてフィルムロールのフィルム表層のシワの有無を目視で確認し、その発生本数を数えた。シワの発生が観察された場合は、さらにフィルムを10m以上巻き出して目視でシワの有無を確認した。得られた結果より以下の基準で評価し、○と△を合格とした。
〇:シワの発生本数が0本であった。
△:シワの発生本数が1~2本であり、かつ巻きだし長10m以内ですべてのシワが消失していた。
×:シワの発生本数が3本以上、もしくは巻きだし長10m以上でも消失しないシワが少なくとも1本観測された。
【0058】
<長期保管後検査>
本検査により、保管環境の変化がフィルムロールに及ぼす影響を評価した。以下、検査方法について説明する。先ず、フィルムロール梱包体を常温環境温度に設定した恒温槽に搬入した。その後、保管条件として、恒温槽の温度を3℃/2時間の昇温速度で24℃昇温させ、その温度を4時間維持した後、3℃/2時間の降温速度で常温環境温度との差が1℃未満になるまで降温させその温度を4時間維持した。この保管条件を連続して合計3回となるよう繰り返し、恒温槽と常温環境温度(外部の温度)との差が1℃未満となった状態で、フィルムロール梱包体を取り出し、その場で梱包をはがしてフィルムロールのフィルム表層のシワの有無を目視で確認し、その発生本数を数えた。シワの発生が観察された場合は、さらにフィルムを10m以上巻き出して目視でシワの有無を確認した。得られた結果より以下の基準で評価し、○と△を合格とした。
〇:シワの発生本数が0本であった。
△:シワの発生本数が1~2本であり、かつ巻きだし長10m以内ですべてのシワが消失していた。
×:シワの発生本数が3本以上、もしくは巻きだし長10m以上でも消失しないシワが少なくとも1本観察された。
【0059】
(実施例1)
幅1,400mm、直径7mmの繊維強化プラスチック(FRP)製のコアに、ポリエチレンテレフタレートフィルムとして厚み38μm、幅1,300mm、長さ5,000mの二軸配向ポリエステルフィルム(東レ株式会社製“ルミラー”(登録商標))を巻き付け、2本のポリエステルフィルムロールを取得した。その後、独立気泡を有する発泡ポリエチレンシート(幅1,300mm、長さ2.2m、厚み0.5mm、熱伝導率0.035W/m・K、水分吸収率0.035g/cm2(樹脂シートAに相当))を、ポリエステルフィルムロールのフィルム表面およびフィルム端面を全て覆い、かつ巻き始めと巻き終わりが長手方向に50mm重なるように巻き付けた。なお、このとき巻き始め部分と巻き終わり部分をテープで動かないよう固定した。その上に吸湿剤OZO(OZO化学技研製)をフィルムロールの端面からフィルムロールの幅方向200mm内側を中心として表面にセロハンテープで取り付けた。その後、フィルム部分を樹脂シートAですべて被覆したポリエステルフィルムロールを、片面にアルミ蒸着を施したチューブ状の防湿シート(樹脂シートBに相当)中に挿入し、ポリエステルフィルムロールの両端面を輪ゴムで固定して2本のポリエステルフィルムロール梱包体を10℃の環境下で得た。得られたフィルムロール梱包体を、それぞれ、ヒートショックによるシワ発生試験および長期保管後検査を行った。その評価結果を表1に示す。
【0060】
(実施例2~6、比較例1~4)
樹脂シートAを表1に記載のシートで被覆する以外は実施例1と同様にしてフィルムロール梱包体とし、フィルムロールを評価した。評価結果を表1に示す。
【0061】
本発明により、薄膜なフィルムを巻き取ったフィルムロールにおいても、シワの発生の抑制に優れたフィルムロール梱包体を提供することができる。本発明のフィルムロール梱包体のフィルムは、シワの発生が少なく高品位な状態を維持しているため、離型フィルム、光学フィルム、保護フィルム等として好適に用いることができる他、包装材料、転写材料、磁気テープ、電絶フィルム、および金属ラミネートなどの一般工材分野などにも用いることができる。